(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092778
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】光学部材
(51)【国際特許分類】
G02B 5/00 20060101AFI20240701BHJP
G02B 5/04 20060101ALI20240701BHJP
G02B 17/08 20060101ALI20240701BHJP
G02B 6/00 20060101ALI20240701BHJP
B60R 1/08 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G02B5/00 Z
G02B5/04 A
G02B17/08
G02B6/00 D
B60R1/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208929
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 真俊
(72)【発明者】
【氏名】安藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】舘 鋼次郎
【テーマコード(参考)】
2H038
2H042
2H087
【Fターム(参考)】
2H038AA41
2H038BA06
2H042AA02
2H042AA03
2H042AA07
2H042AA21
2H042CA12
2H042CA17
2H087TA01
2H087TA02
(57)【要約】
【課題】ユーザに外景を視認させる領域を広く確保しつつも、薄型化がされた光学部材とする。
【解決手段】入射部2aと、対向する射出面2cおよび平滑面2dとを有する導光体2は、屈折率が異なる複数の層で構成されている。複数の層のうち入射部2aおよび平滑面2dを構成する部分を第1層、射出面2cを構成する部分を第2層、第1層と第2層との間を中間層として、中間層は、第1層および第2層よりも屈折率が小さい。第1層、第2層、中間層の屈折率をn
21、n
23、n
22とし、第1層および第2層における入射光の平滑面2dに対する入射角度をφ1として、sinφ1<n
22/n
21、およびsinφ1<n
22/n
23、を満たす。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外景光を内部で反射させて導光する光学部材であって、
前記外景光が入射する入射面(2a)と、複数の平坦部(4)および複数のプリズム部(5)を有し、前記入射面から入射した入射光が最初に到達する射出面(2c)と、複数の前記平坦部に対して対向配置された平滑面(2d)とを有する導光体(2)を備え、
前記導光体は、屈折率が異なる複数の層(21~23、251)を有し、
前記複数の層のうち前記平滑面を構成する層(21)を第1層とし、前記射出面を構成する層(23)を第2層とし、前記第1層と前記第2層との間に位置する層を中間層(22、251)として、
前記中間層は、前記第1層および前記第2層よりも屈折率が低い低屈折率層であり、
前記第1層、前記第2層および前記中間層の屈折率をそれぞれn21、n23、n22とし、前記第1層および前記第2層における前記入射光の進む方向と前記平坦部に対する法線方向とのなす角度である導光角度をφ1として、
sinφ1<n22/n21、およびsinφ1<n22/n23、を満たす光学部材。
【請求項2】
前記法線方向に沿って前記平坦部と前記平滑面とを繋ぐ方向を厚み方向(D2)として、前記複数の層は、前記厚み方向において屈折率が一定である、請求項1に記載の光学部材。
【請求項3】
前記法線方向に沿って前記平坦部と前記平滑面とを繋ぐ方向を厚み方向(D2)として、
少なくとも前記第1層および前記第2層は、前記厚み方向において屈折率が一定であり、
前記中間層は、前記厚み方向において屈折率が連続的に変化した構成である、請求項1に記載の光学部材。
【請求項4】
前記中間層は、前記厚み方向における中心位置が最も屈折率が小さく、
前記第1層および前記第2層は、屈折率が同じである、請求項3に記載の光学部材。
【請求項5】
前記平滑面に貼り付けられる第1の1/4波長板(7)と、
前記中間層と前記第2層との間に配置される第2の1/4波長板(8)と、をさらに備え、
前記第1の1/4波長板は、前記第2の1/4波長板とは反対方向に前記入射光の偏光方向をずらし、
前記中間層は、前記入射光のうち前記第2の1/4波長板を透過し、前記平滑面に向かう光を選択的に屈折させる偏光依存性を有する、請求項1に記載の光学部材。
【請求項6】
外景光を内部で反射させて導光する光学部材であって、
前記外景光が入射する入射面(2a)と、複数の平坦部(4)および複数のプリズム部(5)を有し、前記入射面から入射した入射光が最初に到達する射出面(2c)と、複数の前記平坦部に対して対向配置された平滑面(2d)とを有する導光体(2)を備え、
前記導光体は、屈折率が異なる複数の層(22、24)を有し、
前記複数の層のうち前記入射面から離れた位置に配置され、かつ前記平滑面を構成する層(22)を第1層とし、前記入射面および前記射出面を構成する層(24)を第2層として、
前記第1層は、前記第2層よりも屈折率が低い低屈折率層であり、
前記第1層および前記第2層の屈折率をそれぞれn22、n24とし、前記第2層における前記入射光の進む方向と前記平坦部に対する法線方向とのなす角度である導光角度をφ1として、
sinφ1<n22/n24を満たす光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射面から入射した光の一部を内部で反射させ、入射した光およびその反射光を入射面とは異なる面から外部に射出する光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の光学部材としては、例えば特許文献1に記載のものが挙げられる。特許文献1に記載の光学部材は、外景光が入射する入射面、入射面から入射した外景光が最初に向かう第一の面、および第一の面に対向する第二の面を有する導光体と、第一の面側に配置される半透過ミラーと、第二の面に配置されるミラーとを有する。この光学部材は、入射面から入射した外景光の一部が半透過ミラーで第二の面に反射され、残部が半透過ミラーにおいて吸収または透過すると共に、第二の面において半透過ミラーで反射した光を第二の面側に反射させる。そして、この光学部材は、第一の面の側に複数のプリズムを有するプリズムシートが配置されており、半透過ミラーを透過した光が複数のプリズムを介して外部に射出される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、この種の光学部材は、導光体のうち外景光を外部に射出する射出面において、ユーザに外景を視認させる領域を広く確保しつつ、薄型化することも求められている。このニーズを満たすには、外景光が導光体の入射面に向かう角度を入射角度とし、入射光が第二の面に向かう角度を導光角度として、導光角度を入射角度よりも大きくし、入射光が第一、第二の面の間での一往復により進む距離をできるだけ大きくする必要がある。
【0005】
しかしながら、入射面における一回の屈折では導光角度を大きくすることに限界がある。また、入射面の傾斜角度を変更することも考えられるが、入射面における外景光の反射が大きくなり、光線の損失により効率が低下してしまう。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑み、ユーザに外景を視認させる領域を広く確保しつつも、薄型化がされた光学部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の光学部材は、外景光を内部で反射させて導光する光学部材であって、外景光が入射する入射面(2a)と、複数の平坦部(4)および複数のプリズム部(5)を有し、入射面から入射した入射光が最初に到達する射出面(2c)と、複数の平坦部に対して対向配置された平滑面(2d)とを有する導光体(2)を備え、導光体は、屈折率が異なる複数の層(21~23、251)を有し、複数の層のうち平滑面を構成する層(21)を第1層とし、射出面を構成する層(23)を第2層とし、第1層と第2層との間に位置する層(22、251)を中間層として、中間層は、第1層および第2層よりも屈折率が低い低屈折率層であり、第1層、第2層および中間層の屈折率をそれぞれn21、n23、n22とし、第1層および第2層における入射光の進む方向と平坦部に対する法線方向とのなす角度である導光角度をφ1として、sinφ1<n22/n21、およびsinφ1<n22/n23、を満たす。
【0008】
これによれば、光学部材を構成する導光体は、入射面および平滑面を構成する第1層から外景光が入射し、入射した光が第1層よりも低屈折率の中間層を介して、中間層よりも屈折率が高い第2層の射出面に到達する構成となっている。このため、中間層に入射する光は、屈折により、第1層および第2層よりも導光角度が大きくなり、中間層において第1層および第2層よりも進む距離が大きくなる。よって、導光体の厚みを薄くしても、射出面の広い領域に入射光が到達し、ユーザに外景を視認させる領域を広く確保できる。そして、第1層、第2層、中間層の屈折率をn21、n23、n22とし、第1層および第2層の入射光の導光角度をφ1として、sinφ1<n22/n21、sinφ1<n22/n23、を満たすため、中間層と第1層または第2層との界面で全反射が生じない。
【0009】
請求項6に記載の光学部材は、外景光を内部で反射させて導光する光学部材であって、外景光が入射する入射面(2a)と、複数の平坦部(4)および複数のプリズム部(5)を有し、入射面から入射した入射光が最初に到達する射出面(2c)と、複数の平坦部に対して対向配置された平滑面(2d)とを有する導光体(2)を備え、導光体は、屈折率が異なる複数の層(22、24)を有し、複数の層のうち入射面から離れた位置に配置され、かつ平滑面を構成する層(22)を第1層とし、入射面および射出面を構成する層(24)を第2層として、第1層は、第2層よりも屈折率が低い低屈折率層であり、第1層および第2層の屈折率をそれぞれn22、n24とし、第2層における入射光の進む方向と平坦部に対する法線方向とのなす角度である導光角度をφ1として、sinφ1<n22/n24を満たす。
【0010】
これによれば、光学部材を構成する導光体は、第2層のうち入射面から外景光が入射し、入射した光の一部が第2層よりも屈折率が小さく、平滑面を構成する第1層に到達し、その後に射出面に到達する構成となっている。このため、第1層に入射する光は、屈折により、第2層よりも導光角度が大きくなり、第1層において第2層よりも進む距離が大きくなる。よって、導光体の厚みを薄くしても、射出面の広い領域に入射光が到達し、ユーザに外景を視認させる領域を広く確保できる。そして、第1層、第2層の屈折率をn22、n24とし、第2層の入射光の導光角度をφ1として、sinφ1<n22/n24を満たすため、第1層と第2層との界面で全反射が生じず、光線の損失が抑制される。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態の光学部材を示す断面図である。
【
図2】第1実施形態の光学部材における導光を示す説明図である。
【
図3】第1実施形態の光学部材における導光を示す他の説明図である。
【
図4】射出面における平坦部とプリズム部の幅についての説明図である。
【
図5】比較例の光学部材および平坦部および平滑面での一往復において入射光が進む幅を示す模式図である。
【
図6】第1実施形態の光学部材における平坦部および平滑面での一往復において入射光が進む幅を示す模式図である。
【
図7】第1実施形態の光学部材の変形例を示す断面図である。
【
図8】第2実施形態の光学部材を示す断面図である。
【
図9】第2実施形態の光学部材における導光の説明図である。
【
図10】第3実施形態の光学部材を示す断面図である。
【
図11】第3実施形態の光学部材における導光の説明図である。
【
図12】第4実施形態の光学部材を示す断面図である。
【
図13】第4実施形態の光学部材における導光の説明図である。
【
図14】第4実施形態の光学部材における第1領域および第2領域の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態の光学部材1について、図面を参照して説明する。本実施形態の光学部材1は、例えば、ユーザの視界を遮り、死角を生じさせる部材や障害物等に取り付けられ、当該死角の領域の光景を当該ユーザに視認させる死角補助装置として用いられうる。光学部材1は、例えば、車載用途の場合には、搭載される車両のピラーなどに取り付けられ、当該ピラーにより死角になる領域からの外景光をユーザの側に導光し、死角領域の光景をユーザに視認させる。
【0015】
光学部材1は、例えば
図1に示すように、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、アクリル等の任意の透光性材料で構成された導光体2を備える。導光体2は、外部からの光を内部に入射させる入射面3aを有する入射部2aと、入射側面2bと、射出面2cと、入射部2aと共に、射出面2cに対して対向配置される平滑面2dと、射出面2cと平滑面2dとを繋ぐ終端面2eとを備える。光学部材1は、例えば
図2や
図3に示すように、入射面3aから外部の光を導光体2の内部に入射させ、入射した光の一部を射出面2cと平滑面2dとの間で反射を繰り返させつつ、射出面2cの一部で光を外部に射出させる。これにより、光学部材1は、射出面2c側にいるユーザに死角領域の光景をユーザに視認させる。
【0016】
光学部材1は、例えば、屈折率が異なる複数の層を有する導光体2で構成されている。導光体2は、第1高屈折率層21と、低屈折率層22と、第2高屈折率層23とを有し、各層21~23がこの順に積層されてなる。光学部材1は、例えば、第1高屈折率層21に入射部2aおよび平滑面2dが形成され、第2高屈折率層23に射出面2cが形成されている。光学部材1は、高屈折率層21、23の間に低屈折率層22が配置されている。なお、第1高屈折率層21のうち低屈折率層22側の面、低屈折率層22のうち高屈折率層21、23と向き合う上下の面、および第2高屈折率層23のうち低屈折率層22側の面は、例えば、後述する平坦部4および平滑面2dに対して平行になっている。
【0017】
光学部材1は、例えば、図示しない金型などを用いて、各層21~23を個別に成形した後、OCAやOCRなどの任意の図示しない光学接着剤により各層21~23を貼り合わせることにより形成される。OCAとはOptical Clear Adhesiveの略称であり、OCRとはOptical Clear Resinの略称である。また、光学部材1は、例えば、二色成形などの手法により、第1高屈折率層21、低屈折率層22、第2高屈折率層23を順次、直前の工程で成形した層上に直接成形する方法によっても形成されうる。
【0018】
以下、説明の便宜上、例えば
図2に示すように、外部から導光体2に入射する光を「外景光L
1」と称し、外景光L
1のうち入射部2aから導光体2の内部に入射した光を「入射光L
2」と称する。また、例えば
図3に示すように、射出面2cの一部から外部に射出される光を「射出光L
3」と称し、入射光L
2のうち終端面2eから外部に抜ける光を「残光L
4」と称する。
【0019】
さらに、
図1等に示すように、射出面2cのうち複数の平坦部4のなす平面に沿った方向であって、入射側面2b側の端部から終端面2e側の端部に向かう方向を「導光方向D1」と称し、当該平面に対する法線方向を「厚み方向D2」と称する。つまり、導光方向D1とは導光体2内における入射光L
2の進行方向に沿った方向とも言え、厚み方向D2とは平坦部4に対して平行な平滑面2dに対する法線方向とも言える。また、入射部2aに向かう外景光L
1の進む方向と厚み方向D2とのなす角度をθとして、θを「入射角」と称することがある。
【0020】
導光体2は、入射光L2が平坦部4および平滑面2dで全反射し、内部で導光されるように設計されている。具体的には、第1高屈折率層21および第2高屈折率層23の構成材料の屈折率をn21、n23(>1)とし、導光体2の外部が空気(屈折率:1)とする。また、高屈折率層21、23における入射光L2の進む方向と厚み方向D2とのなす角度、すなわち導光角度をφ1とする。このとき、導光体2は、以下の(1)、(2)式を満たす設計となっている。
【0021】
sinφ1≧1/n21・・・(1)
sinφ1≧1/n23・・・(2)
これにより、導光体2は、導光体2とは異なる材料で構成された半透過ミラーおよびミラーを有さずとも、入射部2aからの入射光L2の一部が平坦部4および平滑面2dで全反射し、後述するプリズム部5から外部に射出される構成となっている。なお、高屈折率層21、23は、例えば、同一の透光性樹脂材料で構成され、屈折率n21、n23および導光角度φ1が同一となっている。
【0022】
導光体2は、第1高屈折率層21または第2高屈折率層23から低屈折率層22に入射光L2が入射したとき、屈折により、入射光L2の入射角度がφ1よりも大きいφ2に変化する構成となっている。つまり、導光体2は、導光方向D1における入射光L2の進む距離が低屈折率層22で大きくなる構成である。これにより、入射光L2は、低屈折率層22において屈折し、導光角度がφ2(>φ1)に変化するため、高屈折率層21、23よりも低屈折率層22のほうが導光方向D1において進む距離が大きくなっている。
【0023】
また、導光体2は、低屈折率層22の屈折率をn22(<n21、n23)として、以下の(3)、(4)式を満たす設計となっている。
【0024】
sinφ1<n22/n21・・・(3)
sinφ1<n22/n23・・・(4)
これにより、高屈折率層21または23から低屈折率層22に入射光L2が侵入する際に、これらの界面で全反射が生じることがなくなり、当該界面での全反射による光線の損失を防ぐことができる。
【0025】
なお、「高屈折率層」および「低屈折率層」とは、導光体2を構成する各層のうち相対的に屈折率が高い層または低い層であることを意味する。
【0026】
続いて、導光体2を構成する外表面について説明する。
【0027】
入射部2aは、本実施形態では、外景光L1を導光体2の内部に侵入させる入射面3aと、入射面3aに隣接する他面3bとを有してなる複数のプリズム部3により構成されている。入射部2aは、複数のプリズム部3が導光方向D1に沿って繰り返し配列されてなるプリズムアレイとなっている。入射部2aは、例えば、平滑面2dのなす平面上に位置し、平滑面2dと共に、射出面2cと対向している。入射部2aは、例えば、図示しない金型などを用いた公知のプラスチック成形方法により形成される。
【0028】
入射側面2bは、入射部2aと射出面2cとを繋ぐ側面である。入射側面2bは、例えば、入射光L2が入射しないように、厚み方向に対する傾斜角度が導光角度φ1以下となっている。
【0029】
射出面2cは、入射面3aからの入射光L2が最初に到達する面であり、複数の平坦部4と、複数のプリズム部5とを有する。射出面2cは、例えば、入射側面2bと交差する部分がプリズム部5であると共に、終端面2e側に向かって平坦部4とプリズム部5とが交互に繰り返し配列された構成となっている。なお、平坦部4およびプリズム部5を有する射出面2cは、例えば、入射部2aと同様に、図示しない金型などを用いた公知のプラスチック成形方法により形成される。
【0030】
複数の平坦部4は、例えば
図2に示すように、平坦部4に到達した入射光L
2を全反射により平滑面2dの側に反射する第1反射面として機能する部位である。これにより、導光体2は、金属材料あるいは誘電体材料によりなる半透過ミラーを有さずとも、内部で入射光L
2を導光可能であると共に、平坦部4において入射光L
2の吸収による損失が生じない構成となっている。複数の平坦部4は、例えば、同一平面上に位置すると共に、平滑面2dに対して平行となっている。
【0031】
複数の平坦部4は、例えば
図4に示すように、導光方向D1における幅をW
Sとして、射出面2cにおける入射光L
2の反射率が所定以上となる幅W
Sとされる。具体的には、射出面2cのうち複数の平坦部4が入射光L
2の反射部、複数のプリズム部5が入射光L
2の射出部であることから、射出面2cの反射率R
Wは、平坦部4の割合で決まる。射出面2cの反射率R
Wは、幅W
Sの平坦部4に隣接するプリズム部5の導光方向D1における幅をW
Pとして、以下の(5)式で表される。
【0032】
RW=WS/(WP+WS)・・・(5)
複数の平坦部4は、RW≧0.5、すなわち射出面2cにおける入射光L2の反射が射出以上となる幅WS、つまりWP/WS≦1を満たす幅とされることが好ましい。この場合、導光体2は、射出面2cにおいて入射光L2の半分以上を導光させ、射出面2cのより広い範囲で射出光L3を射出することとなり、射出光L3の明るさを確保することが可能となる。
【0033】
また、導光体2が上記(1)、(2)式を満たし、導光角度φ1が全反射角度である場合には、射出面2cにおける反射率RWは、上記(5)式に示すように、平坦部4およびプリズム部5の幅の比のみにより定まる。つまり、光学部材1は、導光体2の反射率RWが入射光L2の角度や波長に依存しないため、半透過ミラーを用いた従来の光学部材に比べて、射出光L3の色調や明るさの変化が抑制された構造となっている。
【0034】
複数のプリズム部5は、平坦部4に隣接して配置され、平坦部4から外部に突出する部位である。複数のプリズム部5は、入射光L
2の一部を外部に射出する射出部5aを有する。複数のプリズム部5は、例えば
図1に示すように、射出部5aと、射出部5aに対向し、射出部5aと交差する対向面5bとを有する突出形状であり、互いに相似している。
【0035】
複数のプリズム部5のうち射出部5aは、入射面3aと略平行となっている。射出部5aが入射面3aと平行である場合には、射出部5aからの射出光L3の射出角が入射角θと同じになるため、光学部材1は、外景光L1と同じ光線を射出面2cの側にいるユーザに視認させることができる。なお、略平行とは、入射面3aと射出部5aとが平行である場合に加えて、導光体2の加工精度の関係上、不可避の誤差により入射面3aと射出部5aとがおよそ平行となっている場合を含む。以下の本明細書における「略平行」についても同様である。
【0036】
複数のプリズム部5のうち対向面5bは、厚み方向D2に対して所定の角度で傾斜しており、射出部5aと交差している。対向面5bは、厚み方向D2に対する傾斜角度が射出光L3の射出角以上とされる。これにより、射出光L3は、対向面5bに遮られることなく、外部に射出される。また、対向面5bは、上記の傾斜角度が平坦部4における導光角度φ1よりも小さいことが好ましい。これにより、入射光L2が対向面5bに入射して干渉することが抑制され、対向面5bにおける入射光L2の意図しない反射やこれに起因するノイズを抑制できる。
【0037】
なお、対向面5bは、例えば、図示しない光吸収膜で覆われることが好ましい。これにより、入射光L2の対向面5bにおける反射や射出面2c側からの外光の侵入を防ぎ、射出光L3に当該外光が重なって見えるゴーストや対向面5bにおける対向面5bでの意図しない反射光に起因するノイズを抑制することができる。なお、図示しない光吸収膜は、任意の遮光性の樹脂材料や金属材料などにより構成され、印刷や蒸着などの任意の工程により形成されうる。
【0038】
平滑面2dは、射出面2cのうち平坦部4と略平行な平滑面である。平滑面2dは、複数の平坦部4で反射された入射光L2を全反射により射出面2cの側に反射させる反射面として機能する。つまり、平滑面2dは、複数の平坦部4を第一反射面として、第一反射面と対をなす第二反射面である。
【0039】
終端面2eは、射出面2cと平滑面2dとを繋ぐ面であり、例えば、厚み方向D2に対して所定の角度で傾斜した傾斜面となっている。終端面2eからは、平坦部4および平滑面2dで繰り返し反射されてプリズム部5に到達しなかった、入射光L2の一部が残光L4として外部に抜けることとなる。
【0040】
なお、終端面2eは、図示しない光吸収膜を配置する等の遮光処理が施され、残光L4の射出が防止された構成であってもよい。これにより、残光L4の漏れ出しによるゴーストの発生を抑制することができる。また、終端面2eは、射出面2cのうち最も終端面2e側に位置するプリズム部5の射出部5aと同じ傾斜とされ、一部が当該射出部5aを構成してもよい。この場合、終端面2eは、残光L4が射出光L3となり、光線の損失が抑制される。
【0041】
以上が、本実施形態の光学部材1の基本的な構成である。光学部材1は、導光体2が2つの高屈折率層21、23とこれに挟まれた低屈折率層22とにより構成されることで、入射光L2が導光方向D1において進む距離が大きくなっている。これにより、光学部材1は、射出面2cにおいてユーザに外景を視認させる領域を所定以上に確保しつつも、薄型化された構成となっている。
【0042】
〔低屈折率層による効果〕
次に、低屈折率層22による厚みの低減効果について、例えば
図5に示すように、1つの高屈折率材料のみにより構成された導光体101を有する比較例の光学部材100と、本実施形態の光学部材1とを対比して説明する。
【0043】
まず、比較例の光学部材100について、光学部材1との差異を主に説明する。比較例の光学部材100は、透光性のある1つの高屈折率材料により構成された導光体101を有し、他の材料によりなる半透過ミラーやミラーを有さずに、全反射により外景光L1を導光する構成となっている。光学部材100は、入射面101a、射出面101b、反射面101cおよび終端面101dを備え、射出面101bと反射面101cとが平行かつ対向して配置され、入射面101aと終端面101dとが対向している。射出面101bは、入射光を外部に射出する面を有するプリズム部102と、入射光を全反射により反射する平坦部103とが繰り返し配列されてなる。プリズム部102は、入射光を外部に射出する射出部102aと、入射面101a側の平坦部103に隣接する隣接面102bとを有してなる。光学部材100は、入射光L2が平坦部103にて導光角度φ1で入射および反射した後、反射面101cにおいて導光角度φ1で入射および反射し、射出面101bに戻る構成となっている。
【0044】
光学部材100は、射出面101bのうち光の反射部分である平坦部103と反射面101cとの対向部分の厚みがTとなっている。ここで、光学部材100において、入射光L2が全反射によって平坦部103および反射面101cの間の一往復で導光方向D1に沿って進む距離を往復幅W0として、往復幅W0は、2Ttanφ1となる。射出面101bにおいてユーザに外景を視認させる領域を広く確保するためには、往復幅W0を大きくする必要がある。そして、往復幅W0を大きくするためには、厚みTを大きくするか、導光角度φ1を大きくしなければならない。
【0045】
しかしながら、厚みTを大きくすることは、薄型化のニーズに反する。また、導光角度φ1を大きくするためには、入射面101aに対する法線方向と外景光L1の入射方向とのなす角度が大きくなるように、入射面101aの傾斜角度を調整する必要がある。しかしながら、このように入射面101aの傾斜角度を調整すると、入射面101aにおいて外景光L1の反射割合が大きくなってしまい、光線の損失が生じるため、この損失を抑えつつ、導光角度φ1を大きくすることは困難である。
【0046】
これに対して、本実施形態の光学部材1は、例えば
図6に示すように、導光体2のうち第1高屈折率層21と低屈折率層22との界面、および第2高屈折率層23と低屈折率層22との界面にて入射光L
2が屈折する構成である。言い換えると、光学部材1は、導光体2内において入射光L
2が複数回屈折し、低屈折率層22における導光角度φ2が高屈折率層21、23における導光角度φ1よりも大きくなる構成である。
【0047】
ここで、第1高屈折率層21、低屈折率層22、第2高屈折率層23のそれぞれの厚みをT21、T22、T23ととし、平坦部4および平滑面2dでの一往復で導光方向D1に沿って進む距離、すなわち往復幅をW1とする。このとき、W1は、以下の(6)式で表される。
【0048】
W1=2T21tanφ1+2T22tanφ2+2T23tanφ1・・・(6)
φ2>φ1であるため、tanφ2>tanφ1である。ここで、仮に、T=T21+T22+T23であるとき、tanφ2>tanφ1であるため、W1>W0が成り立つ。つまり、光学部材1は、低屈折率層22を有することにより、往復幅W1=W0としたときには、厚みがTよりも小さくなる。このため、光学部材1は、射出面2cにおいてユーザに外景を視認させる領域(表示視域)の面積を所定以上に確保しつつも、比較例よりも薄型化が可能な構成となっている。
【0049】
なお、例えば、高屈折率層21、23の厚みT21、T23については0.5mm程度、低屈折率層22の厚みT22については5mm程度とされるが、薄型化の観点からはT22>T21、T23となればよく、各層の厚みについては適宜変更されうる。
【0050】
本実施形態によれば、導光体2が高屈折率層21、23に低屈折率層22が挟まれてなり、低屈折率層22における入射光L2の導光角度が高屈折率層21、23の導光角度φ1よりも大きいφ2となる構成となっている。このため、平坦部4と平滑面2dとの間における入射光L2の往復幅が低屈折率層22を有しない場合に比べて大きくなり、この往復幅の増加分だけ厚みを薄くすることが可能となる。したがって、光学部材1は、射出面2cにおける表示視域を所定以上の面積に確保しつつも、従来よりも薄型化されたものとなる。また、光学部材1は、導光体2の構成材料とは異なる材料によりなる半透過ミラーやミラーを有さず、全反射により入射光L2の導光がなされるため、吸収による損失や反射率の波長依存がなく、表示視域における外景の視認性が向上する効果も得られる。
【0051】
(第1実施形態の変形例)
上記第1実施形態では、導光体2が2つの高屈折率層21、23および1つの低屈折率層22の合計3つの層で構成された例について説明したが、これに限定されるものではなく、4つ以上の層で構成されていてもよい。
【0052】
導光体2は、例えば
図7に示すように、低屈折率層22が3つの層221~223で構成され、合計5つの層で構成されてもよい。例えば、低屈折率層22は、第1高屈折率層21に接する上層222と、第2高屈折率層23に接する下層223と、上層222および下層223に挟まれた主層221とにより構成されうる。この場合、主層221は、低屈折率層22の中で最も低屈折率とされる。上層222は、屈折率が主層221よりも大きく、第1高屈折率層21よりも小さくされる。下層223は、屈折率が主層221よりも大きく、第2高屈折率層23よりも小さくされる。このように、導光体2は、4つ以上の層によりなり、かつ厚み方向D2における中心位置に向かって階段状に屈折率が小さくなる構成であってもよい。この場合であっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる光学部材1となる。
【0053】
つまり、光学部材1は、導光体2のうち入射部2aおよび平滑面2dを構成する部分を第1層、射出面2cを構成する部分を第2層、第1層および第2層の間に位置するものを中間層として、層数がm(m:3以上の自然数)とされうる。そして、中間層は、単層または複数層で構成され、第1層の屈折率n21および第2層の屈折率n23よりも低屈折率n22の層とされる。また、光学部材1は、第1層および第2層における入射光L2の導光角度をφ1として、sinφ1<n22/n21、およびsinφ1<n22/n23を満たす。
【0054】
本変形例によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる光学部材1となる。また、高屈折率の層から低屈折率の層に入射光L2が向かう際に、これらの界面における反射がより抑制され、光線の損失がより低減される効果も得られる。
【0055】
(第2実施形態)
第2実施形態の光学部材1について、図面を参照して説明する。
図8、
図9では、低屈折率層22における屈折率の連続的な変化を、便宜上、ハッチングの濃淡の異なる3層で示しているが、これは低屈折率層22が3層で構成されることを意味するものではない。
【0056】
本実施形態の光学部材1は、例えば
図8に示すように、低屈折率層22の屈折率が連続的に変化する構成である点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0057】
低屈折率層22は、本実施形態では、厚み方向D2において連続的に変化する構成となっている。具体的には、低屈折率層22は、厚み方向D2における中心位置(以下、単に「中心位置」という)が最も屈折率が小さく、第1高屈折率層21および第2高屈折率層23に向かって屈折率が連続的に大きくなっている。つまり、低屈折率層22は、第1実施形態では、厚み方向D2において屈折率が一定であったのに対し、本実施形態では、例えば、高屈折率層21、23から厚み方向D2の中心位置に向かって徐々に屈折率が小さくなっている。低屈折率層22は、厚み方向D2の中心位置から第1高屈折率層21までの屈折率の変化度合いと、該中心位置から第2高屈折率層23までの屈折率の変化度合いとが略同一、すなわち屈折率の分布が厚み方向D2において対称であることが好ましい。
【0058】
なお、本実施形態では、導光体2は、例えば、アクリル樹脂等の透光性樹脂材料により構成される板状の屈折率分布型レンズ(GRINレンズ)を用意し、図示しない金型を用いてプリズム部3、5を形成することにより得られる。GRINレンズとしては、例えば、特許第3332922号公報に記載の界面ゲル重合法により製造されたものが用いられうるが、他の公知の方法により製造されたものであってもよい。また、高屈折率層21、23の厚みは、例えば、0.1mm程度とされるが、これに限定されるものではない。
【0059】
入射光L
2は、本実施形態では、例えば
図9に示すように、第1高屈折率層21から低屈折率層22に入射すると、導光角度がφ1から屈折により徐々に大きくって、中心位置において最大のφ2となり、その後、第2高屈折率層23に向かうにつれてφ1に戻る。そして、入射光L
2は、一部が第2高屈折率層23の射出面2cのプリズム部5から射出され、残部が平坦部4で反射して低屈折率層22に入射する。また、入射光L
2は、第2高屈折率層23から低屈折率層22に入射したとき、導光角度がφ1からφ2、φ2からφ1に連続的に変化し、その後に第1高屈折率層21の平滑面2dに到達して全反射をし、射出面2cに再度向かう。
【0060】
本実施形態によっても、低屈折率層22において入射光L2の導光角度が高屈折率層21、23よりも大きくなり、導光方向D1に沿って進む距離が大きくなるため、上記第1実施形態と同様の効果が得られる光学部材1となる。また、本実施形態の光学部材1は、屈折率が連続的に変化した構成の板状の樹脂材料を用いることにより、第1高屈折率層21、低屈折率層22、第2高屈折率層23の個別の成形や貼付けを行う必要がなく、工法が簡便となる。
【0061】
(第3実施形態)
第3実施形態の光学部材1について、図面を参照して説明する。
図10、
図11では、低屈折率層22にハッチングを施している。
【0062】
本実施形態の光学部材1は、例えば
図10に示すように、導光体2のうち外景光L
1を入射させる部位の構成および低屈折率層22の配置が変更されている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0063】
導光体2は、本実施形態では、平滑面2dを除く部位を構成する高屈折率層24と、平滑面2dを構成する低屈折率層22とにより構成されている。導光体2は、平坦部4と平滑面2dとが対向する部分の厚みよりも大きい厚みとされた1つの大プリズム部6を有しており、大プリズム部6のうち射出面2cに隣接する一面が入射部2aとなっている。入射部2aは、本実施形態では、射出面2cおよび平滑面2dと交差する方向に延設され、平滑面2dよりも突出した1つの平面となっている。大プリズム部6のうち入射部2aと平滑面2dとを繋げる面は、例えば、1つの一様な傾斜の背面2fとなっている。
【0064】
低屈折率層22は、本実施形態では、入射部2aから離れた位置に配置され、平滑面2d、および終端面2eの一部を構成している。そして、導光体2のうち低屈折率層22以外の残部は、高屈折率層24となっている。
【0065】
この光学部材1は、例えば
図11に示すように、入射部2aからの入射光L
2が低屈折率層22を経由せずに射出面2cに直接入射すると共に、入射光L
2のうち平坦部4で反射した光が低屈折率層22に入射する構成となっている。このため、射出面2cは、本実施形態では、入射部2a側の所定領域には低屈折率層22を経由しない入射光L
2が到達するため、該所定領域においてユーザに視認させる外景の歪みが低減される。
【0066】
また、低屈折率層22は、高屈折率層24の平坦部4で反射した入射光L2が到達し、屈折により入射光L2の導光角度がφ1よりも大きいφ2となる。また、低屈折率層22は、本実施形態では、例えば、導光体2の外部の空気(屈折率:1)よりも屈折率が大きい材料で構成され、sinφ2≧1/n22を満たす。これにより、低屈折率層22は、入射光L2の導光方向D1において進む距離を大きくしつつ、平滑面2dでの入射光L2の全反射を生じさせる。このため、平滑面2dと平坦部4との対向部分の厚みを薄くしつつも、射出面2cの広い領域においてユーザに外景を視認させることが可能となる。なお、低屈折率層22の厚みは、例えば1mm程度とされるが、これに限定されるものではない。
【0067】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られると共に、射出面2cのうち入射部2a側の端部から所定領域においてユーザに視認させる外景の像の歪みを低減する効果も得られる光学部材1となる。
【0068】
(第4実施形態)
第4実施形態の光学部材1について、図面を参照して説明する。
図12~
図14では、低屈折率層251と他の高屈折率の領域との境界を便宜的に破線で示している。
図14では、見易くするため、後述する第1領域2caおよび第2領域2cbに到達する入射光L
2の一部のみを示すと共に、第2領域2cbに到達する入射光L
2を太破線で示している。
【0069】
本実施形態の光学部材1は、例えば
図12に示すように、導光体2が低屈折率層251を有する主部25と、第1、第2の1/4波長板7、8と、射出面2cを構成するプリズムシート26とにより構成されている点で上記第3実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0070】
主部25は、導光方向D1に沿って形成された低屈折率層251を有し、他の領域が低屈折率層251よりも高屈折率の領域となっている。主部25は、入射部2aおよび終端面2eの一部と、背面2fとを構成する部位である。主部25は、導光方向D1において背面2fに隣接する面に、平滑面2dを構成する第2の1/4波長板8が図示しない光学接着剤により貼り付けられている。主部25は、第2の1/4波長板8が貼り付けられる面の反対面に、第1の1/4波長板7が図示しない光学接着剤により貼り付けられている。
【0071】
低屈折率層251は、本実施形態では、入射光L2のうち所定の偏光成分の光に対して主部25のうち低屈折率層251以外の残部よりも低屈折率を示し、他の成分の光については残部と同様の屈折率を示す偏光依存性の屈折率を有する層となっている。低屈折率層251は、例えば、高屈折率の残部とは構成材料の配列方向が異なる状態となっており、複屈折性を示す。低屈折率層251は、例えば、図示しない金型による主部25の成形時において、低屈折率層251となる領域と他の領域との間に大きな温度勾配が生じるように当該金型を急冷することにより形成される。
【0072】
低屈折率層251は、第1の1/4波長板7を通過して所定の偏光成分とされた入射光L2に対して選択的に低屈折率を示すことで、射出面2cから平滑面2dに向かう光を導光角度がφ1よりも大きくなるように屈折させる。低屈折率層251は、入射光L2のうち入射部2aから射出面2cに向かうものおよび第2の1/4波長板8を通過して射出面2cに向かうものには、主部25のうち低屈折率層251以外の部位と略同一の高屈折率となり、これらの光を屈折させずに直進させる。これにより、射出面2cにおいてユーザに視認させる外景の連続性が確保され、視認性が向上する効果が得られる。
【0073】
具体的には、
図14に示すように、射出面2cのうち入射部2aからの入射光L
2が平坦部4で一度も反射せずに外部に射出される領域を第1領域2caとし、平坦部4および平滑面2dで一回だけ反射した光が外部に射出される領域を第2領域2cbとする。このとき、入射部2aまたは平滑面2dから射出面2cに向かう光については低屈折率層251の影響を受けずに直進することから、第1領域2caと第2領域2cbとの間に射出光L
3を射出しないプリズム部5が存在しないこととなる。このため、第1領域2caから第2領域2cbまでの領域では、すべてのプリズム部5から射出光L
3が射出され、ユーザに視認させる外景の視認性が向上する。
【0074】
第1、第2の1/4波長板7、8は、主部25を挟んで対向配置されており、入射光L
2の偏光方向を変える役割を果たす。第1の1/4波長板7と第2の1/4波長板8は、入射光L
2の偏光方向をずらす向きが逆になっている。言い換えると、第1の1/4波長板7により偏光方向をずらされた入射光L
2は、第2の1/4波長板8に入射すると、第1の1/4波長板7とは逆方向に偏光方向がずらされ、第1の1/4波長板7を通過する前の状態に戻ることとなる。これにより、入射光L
2は、
図13に示すように、射出面2cの平坦部4で反射し、第1の1/4波長板7を通過して第2の1/4波長板8側に向かう光だけが低屈折率層251により屈折させられ、他の光については低屈折率層251で屈折することがなくなる。第1、第2の1/4波長板7、8は、主部25のうち低屈折率層251とは異なる部位と略同一の屈折率とされた高屈折率層となっている。そして、第2の1/4波長板8は、主部25と向き合う面とは反対面が平滑面2dを構成し、入射光L
2を全反射により第1の1/4波長板7側に反射する。
【0075】
プリズムシート26は、例えば、主部25と同じ透光性の樹脂材料で構成され、複数の平坦部4およびプリズム部5を有する。プリズムシート26は、主部25のうち低屈折率層251とは異なる部分と略同一の屈折率とされた高屈折率層となっている。プリズムシート26は、屈折率をn26とし、入射光L2のプリズムシート26における導光角度をφ1として、sinφ1≧1/n26を満たし、平坦部4で入射光L2を全反射させる。プリズムシート26は、例えば、図示しない金型により成形され、図示しない光学接着剤により第1の1/4波長板7のうち主部25とは反対側の面に貼り付けられる。
【0076】
本実施形態によれば、上記第3実施形態と同様の効果が得られる光学部材1となる。また、低屈折率層251の偏光依存性により、入射部2aまたは平滑面2dから射出面2cに向かう入射光L2を直進させるため、射出面2cのうち第1領域と第2領域との間に光線の隙間が生じず、射出面2cでの外景の視認性がより向上する効果も得られる。
【0077】
(他の実施形態)
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらの一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0078】
(1)上記各実施形態の光学部材は、例えば、導光体2とは異なる材料で構成される半透過ミラーやミラーを有する構成としてもよい。この場合、半透過ミラーを有することで光学部材の製造コストが増加するものの、導光体2が低屈折率層22を有するため、表示視域の確保および薄型化の効果が得られる光学部材1となる。なお、半透過ミラーは、例えば、金属材料を蒸着して得られる単層の金属蒸着膜や誘電材料を多層にコーティングして得られる誘電体多層コート膜で構成されうる。ミラーは、例えば、平滑面2dに金属材料を蒸着するなどの方法により形成される。
【0079】
(2)上記第3実施形態の光学部材1は、低屈折率層22と高屈折率層24との間に、屈折率が低屈折率層22より大きく、高屈折率層24よりも小さい他の屈折率層が1つ以上配置された構成であってもよい。つまり、上記第3実施形態の光学部材1は、3層以上の屈折率が異なる層を有し、低屈折率層22から高屈折率層24に向かって、順に高屈折率となるように階段状に屈折率が変化する構成とされうる。これにより、第1実施形態の変形例と同様に、高屈折率層24から低屈折率層22に向かう入射光L2が、隣接する層の界面で反射することが抑制され、光線の損失をより抑制できる効果が得られる。
【0080】
(3)なお、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0081】
2…導光体、2a…入射面、2c…射出面、2d…平滑面、21…第1高屈折率層
22、251…低屈折率層、23…第2高屈折率層、24…高屈折率層、4…平坦部
5…プリズム部、7…第1の1/4波長板、8…第2の1/4波長板、D2…厚み方向