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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092781
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】呼吸音測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/08 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
A61B5/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208933
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000101204
【氏名又は名称】株式会社oneA
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越智 優
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038SS09
4C038SV05
4C038SX01
(57)【要約】
【課題】被験者の睡眠時等の呼吸音を測定するネックバンド型の呼吸音測定装置において、マイクロフォンの防水性能を高めつつ、マイクロフォンの集音部分が被験者の被測定部分から外れにくいようにして、被験者の呼吸音を確実に測定できる呼吸音測定装置を提供する。
【解決手段】被験者の呼吸音を計測するマイクロフォン72を備えた計測部4と、その計測部4に設定された集音口53を覆うように設けられた防水性を有する防水カバーキャップ6と、その防水カバーキャップ6の被験者との当接面に、吸盤形状部61を形成したことを特徴とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の首の外周に沿うように装着されて、被験者の睡眠時等の呼吸音を測定するネックバンド型の呼吸音測定装置であって、
被験者の首の外周に装着されて、その装着時に該首の内周側に向かって付勢力を付与する略円弧形状の装着部と、
該装着部の一端に連続的に設けられて、被験者の呼吸音を計測するマイクロフォンを備えた計測部と、
該計測部に設けられた集音部分を覆うように設けられた防水性を有する弾性カバー部材と、
該弾性カバー部材の被験者との当接面に、吸盤形状部を形成したことを特徴とする呼吸音測定装置。
【請求項2】
前記吸盤形状部は、中央の凹部と周囲の環状凸部とで形成されており、
前記弾性カバー部材は、前記凹部の厚みが前記環状凸部の厚みよりも薄膜に形成されていることを特徴とする
請求項1記載の呼吸音測定装置。
【請求項3】
前記弾性カバー部材が覆う前記計測部に設定された集音部分は、前記中央の凹部と連なるように、被験者側に広がったテーパー形状に形成された集音口で構成されていることを特徴とする
請求項2記載の呼吸音測定装置。
【請求項4】
前記弾性カバー部材は、前記吸盤形状部より外側位置に設けられた係合部で、前記計測部に係止固定されていることを特徴とする
請求項1乃至3何れか一記載の呼吸音測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の睡眠時等の呼吸音を測定するネックバンド型の呼吸音測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、睡眠時にイビキをかくと、周囲に迷惑をかけてしまうという問題が発生し、また、そのイビキから無呼吸になり、睡眠時無呼吸症候群を発症するおそれもある。そこで、下記特許文献1に記載されているように、被験者の睡眠時に呼吸音を測定するネックバンド型の呼吸音測定装置が提案されている。
【0003】
ところで、このネックバンド型の呼吸音測定装置では、睡眠時の呼吸音をマイクロフォンで測定しているが、睡眠中に被験者が寝汗等をかいた場合や、梅雨等で環境湿度が高い場合には、このマイクロフォンの集音部分に水分等が付着してマイクロフォンのマイク感度が悪化するという問題が生じる。
【0004】
そこで、例えば、下記特許文献2に記載されているように、マイクロフォンの集音部分に水分等が付着しないように防水性能があるカバー部材を設けて、マイクロフォンを水分等から保護することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-88956号公報
【特許文献2】実用新案登録第3145323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
確かに、前述の特許文献1に記載されたネックバンド型の呼吸音測定装置に対して、特許文献2に記載されたカバー部材を装着することで、防水性能を高めつつ、マイクロフォンで被験者の呼吸音を測定することが考えられる。
【0007】
しかし、単に、特許文献2に記載されたカバー部材をマイクロフォンの集音部分に装着しても、被験者の肌(被測定部分)に当接するカバー部材の面が平坦であると、マイクロフォンの集音部分が被験者の被測定部分から外れて、被験者の呼吸音を測定できなくなるおそれがあった。特に、睡眠中は、何度も寝返りを打つため、マイクロフォンの集音部分が、被験者の被測定部分から外れるおそれが大きいという問題があった。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、被験者の睡眠時等の呼吸音を測定するネックバンド型の呼吸音測定装置において、マイクロフォンの防水性能を高めつつ、マイクロフォンの集音部分が被験者の被測定部分から外れにくいようにして、被験者の呼吸音を確実に測定できる呼吸音測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
その目的を達成するために、この発明では、被験者の睡眠時等の呼吸音を測定するネックバンド型の呼吸音測定装置であって、マイクロフォンの集音部分に防水性能を高めた弾性カバー部材を設けると共に、該弾性カバー部材の被験者との当接面に、吸盤形状部を形成したことを特徴とするものである。
【0010】
具体的に、第1の発明では、被験者の首の外周に沿うように装着されて、被験者の睡眠時等の呼吸音を測定するネックバンド型の呼吸音測定装置であって、被験者の首の外周に装着されて、その装着時に該首の内周側に向かって付勢力を付与する略円弧形状の装着部と、該装着部の一端に連続的に設けられて、被験者の呼吸音を計測するマイクロフォンを備えた計測部と、該計測部に設定された集音部分を覆うように設けられた防水性を有する弾性カバー部材と、該弾性カバー部材の被験者との当接面に、吸盤形状部を形成したことを特徴とするものである。
【0011】
この構成によれば、計測部に設定された集音部分を覆うように、防水性を有する弾性カバー部材を設けて、この弾性カバー部材の被験者との当接面に吸盤形状部を形成したことで、弾性カバー部材が、吸盤形状部の働きにより、被験者の被測定部に吸着されることになる。
【0012】
このため、弾性カバー部材が被験者の被測定部から外れにくくなり、これにより、マイクロフォンの集音部分が、被験者の被測定部から外れにくくなる。
【0013】
なお、弾性カバー部材を構成する素材としては、例えば、シリコーンゴムや、熱硬化性ゴム、熱可塑性ゴム、フッ素ゴムなどの合成樹脂素材が考えられる。
【0014】
また、吸盤形状部とは、例えば、中央の凹部と周囲の環状凸部等で構成されており、被験者側に押し込まれることで、中央の凹部と被験者の間の間隙から環状凸部の外方側に空気が流れ出て、中央の凹部内の圧力が、環状凸部の外方側の圧力よりも低くなって(負圧化して)、被験者との間で吸引力が発生されるものであれば、どのような形状であっても良い。
【0015】
第2の発明では、前記吸盤形状部は、中央の凹部と周囲の環状凸部で形成されており、前記弾性カバー部材は、前記凹部の厚みが前記環状凸部の厚みよりも薄膜に形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
この構成によれば、吸盤形状部の凹部の厚みが環状凸部の厚みよりも、薄膜に形成されていることで、凹部の変形が環状凸部に比較してより生じやすくなる。このため、凹部と被験者との間の間隙が変形しやすくなり、その凹部内の圧力変動が生じやすくなる。
【0017】
このため、凹部内の圧力と、環状凸部の外方の圧力との差が、より大きくなり、被験者との間の吸引力が、より発生しやすくなる。
【0018】
よって、より弾性カバー部材が被験者の被測定部から外れにくくなり、それにより、さらにマイクロフォンの集音部分が被験者の被測定部から外れにくくできる。
【0019】
第3の発明では、前記弾性カバー部材が覆う前記計測部に設定された集音部分は、前記中央の凹部と連なるように、被験者側に広がったテーパー形状に形成された集音口で構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
この構成によれば、弾性カバー部材が覆う集音部分が、中央の凹部と連なるように被験者側に広がったテーパー形状の集音口であることで、中央の凹部の薄膜部分を、音の振動板(いわゆるダイヤフラム)として機能させることができる。
【0021】
このため、弾性カバー部材の中央の凹部が、被験者の音(呼吸音)を減衰することなく、そのままの振動状態で、マイクロフォンに伝達することができる。
【0022】
よって、弾性カバー部材を設けて防水性能を高めつつ、マイクロフォンのマイク性能を維持することができる。
【0023】
第4の発明では、前記弾性カバー部材は、前記吸盤形状部より外側位置に設けられた係合部で、前記計測部に、係止固定されていることを特徴とするものである。
【0024】
この構成によれば、弾性カバー部材が、吸盤形状部より外側位置に設けられた係合部で計測部に係止固定されていることで、吸盤形状部が吸引力を発生する際に生じる弾性カバー部材の変形を許容しやすくなる。すなわち、弾性カバー部材を計測部に強固に貼着固定等した場合は、弾性カバー部材が変形しにくくなるが、単に係合部で係止固定しているだけなので、弾性カバー部材が変形しやすくなるのである。
【0025】
このため、弾性カバー部材の吸盤形状部も変形しやすくなり、より確実に吸盤形状部に吸引力を発生させることができる。
【0026】
よって、より確実に、吸盤形状部の吸引力を発生させることができ、マイクロフォンの集音部分が被験者の被測定部分から外れにくくすることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上、説明したように、本発明によれば、弾性カバー部材が被験者の被測定部から外れにくくなり、これにより、マイクロフォンの集音部分が、被験者の被測定部分から外れにくくなる。
【0028】
よって、被験者の睡眠時等の呼吸音を測定するネックバンド型の呼吸音測定装置において、マイクロフォンの防水性能を高めつつ、マイクロフォンの集音部分が被験者の被測定部分から外れにくくなり、被験者の呼吸音を確実に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態1に係る呼吸音計測装置の装着状態を示す模式図である。
図2】実施形態1の呼吸音計測装置を右斜め上方から見た斜視図である。
図3】実施形態1の呼吸音測定装置の装着状態を示す図である。
図4】実施形態1の呼吸音測定装置のシステムブロック図である。
図5図2のA-A線矢視断面図である。
図6】防水カバーキャップの単品斜視図である。
図7図6のB-B線矢視断面図である。
図8】実施形態1の当接部材が被験者に当接した状態を説明する図である。
図9】比較例の当接部材が被験者に当接した状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0031】
(実施形態1)
図1に示すように、本実施形態の呼吸音測定装置1は、被験者Pが就寝前に被験者Pの首Pnに装着して、睡眠時の吸気・呼気の気流音(以下、単に呼吸音とする)を、計測するためのものである。
【0032】
この呼吸音測定装置1は、いわゆるネックバンド型の装置であり、被験者Pの首Pnの周囲に周方向に沿って装着可能に構成されている。具体的には、図3に示すように、呼吸音測定装置1は、円弧状(略C形状)に形成された樹脂製のネックバンド型の装着部2と、その一端にヒンジ部3を介して連設された呼吸音を計測する計測部4と、を備えている。そして、そのヒンジ部3は、計測部4を、実線で示す展開位置4Aと二点鎖線で示す折曲位置4Bとの間で、装着部2に対して回動するように構成している。
【0033】
言い換えると、呼吸音計測装置1の一方の開放端部11が、装着部2の一方の端部2aを構成して、呼吸音計測装置1の他方の開放端部12が、計測部4の先端部4aを構成しており、装着部2の他方の端部2bと計測部4の基端部4bが、ヒンジ部3を介して連結されている。
【0034】
前述の装着部2は、被験者Pが、両手で呼吸音計測装置1の両方の開放端部11,12を両側で広げて、首Pnの後ろ側から首Pnに向かって装着できるように構成しており、被験者Pが手を離すと、呼吸音計測装置1の内側面13が被験者Pの首Pnに密着するように、首Pnの周囲を外側から挟み込むようにしている。
【0035】
すなわち、装着部2は、図3に示すように、被験者Pの首Pnに装着していないときは、二点鎖線で示すように、首よりもやや小さい円弧形状に形成されており、被験者Pの首Pnに装着したときは、円弧形状がやや広がって、首Pnの周囲の外周側から内周側に向かって、付勢力を与えるようになっているのである。
【0036】
この装着部2の具体的な構造及び材料は、特に限定されないが、例えば、板バネ部材の周囲をエラストマー樹脂で取り巻いた弾性構造を採用したり、弾性があるポリプロピレンの樹脂を採用することが考えられる。
【0037】
前述の計測部4は、図2に示すように、内ケース41と外ケース42とをインロー嵌合で嵌め合わせることで、内部に収容空間S(図5参照)を形成する収容ケース40を備えている。
【0038】
このうち、内ケース41は、内周側に凹となるように丸みを帯びて形成された底面41aと、収容空間Sを取り囲むように底面41aの周縁端から外周側に向かって立ちあがる側面41bとを備えている。そして、内ケース41の底面41aには、先端側に円形状の第1開口部43が形成されて、周方向の略中央には、矩形状の第2開口部44が形成されている。
【0039】
そして、第1開口部43には、出没自在の当接部材5が、収容ケース40の内部から挿通されている。そして、この当接部材5は、基端に形成されたフランジ部51(図5参照)により、収容ケース40からの抜け落ちを防止している。
【0040】
また、第2開口部44は、呼吸音計測装置1が被験者Pの首Pnに装着されたか否かを検出する近接センサ73(図4参照)の測定光を通過させる測定窓として用いられる。
【0041】
一方、外ケース42は、内ケース41の底面41aと対向するように配置されて外周側に凸となるように丸みを帯びて形成された上面42aと、収容空間S(図5参照)を取り囲むように上面42aの周縁端から内周側に向かって立ちあがる側面42bとを備える。
【0042】
収容ケース40は、これら内ケース41と外ケース42を嵌め合わせた後に、図示しないねじ部材により、ねじ止め固定されることで、組立てられる。
【0043】
収容ケース40内部の収容空間S(図5参照)には、詳細には図示しないが、マイクロフォン72が取り付けられる第1基板70(図5参照)と、マイクロフォン72で取得された呼吸音を処理する電子部品等が実装される第2基板(図示せず)と、呼吸音計測装置1の各構成要素に電源を供給するバッテリー79(図4参照)等と、が収容される。なお、第1基板70と第2基板とは、フレキシブルケーブルF(図5参照)で接続される。
【0044】
この収容ケース40の材料は、前述した装着部2の材料と同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0045】
前述のヒンジ部3は、図3に示すように、計測部4の回動動作の中心軸である回動軸AXと、計測部4を折曲位置4Bに向かって付勢する付勢手段31とを備える。なお、付勢手段31は、例えば、ねじりコイルばね等で構成される。
【0046】
ここで、付勢手段31の付勢力は、後述する当接部材5の圧縮コイルばね52の付勢力よりも大きくなるように設定される。このような設定にすることで、被験者Pの体型(特に、首Pnの大きさ)に応じた大枠の位置合わせを付勢手段31の作用により行い、圧縮コイルばね52の作用により、被験者Pの首Pnの被計測部分(皮膚表面)に沿うように、当接部材5の当接角度を自動調節する、という動作をより好適に実現することができる。
【0047】
また、図3に示すように、収容ケース40の側面、具体的には内ケース41の側面41bには、USBコネクター45と、モニタランプ46を設けている。なお、反対側の側面には、図示しない押ボタン式の電源ボタンを設けている。USBコネクター45は、呼吸音計測装置1に対して充電等を行う場合に用いる。また、モニタランプ46は、呼吸器測定装置1の電源のオン/オフや通信状態、充電状態等を表示するように構成される。さらに、電源ボタンは、被験者Pが押すことで、呼吸器計測装置1の電源のオン/オフを切り替えることができる。
【0048】
また、計測部4には、前述のように、内ケース41の底面41aから内周側(被験者Pの首pn側)に向かって突出するように設けられた当接部材5を備える。この当接部材5は、圧縮コイルばね52の付勢力によって、内周側(被験者Pの首Pn側)に突出するように付勢されており、収容ケース40にいわゆるフローティング支持されている。このため、当接部材5は、被験者Pの首Pnの形に沿って、出没量や傾き角度等が自由に変化するようになっている。
【0049】
この当接部材5は、防水性を有する弾性カバー部材としての防水カバーキャップ6に覆われている。この防水カバーキャップ6の詳細構造については後述する。
【0050】
また、この当接部材5の内部には、被験者の呼吸音を測定するマイクロフォン72(図5参照)が設けられている。このマイクロフォン72の詳細構造等についても後述する。
【0051】
次に、この呼吸音測定装置1のシステム構造について、図4を参考にして説明する。この呼吸音測定装置1のシステムは、加速度センサ71、マイクロフォン72、近接センサ73、バイブレータ74、モニタランプ46、通信モジュール75、マイクロプロセッサ等の電子部品と、これら電子部品に電源を供給するバッテリー79等によって構成される。これら電子部品とバッテリー79は、前述の収容ケース40の収容空間S(図5参照)に収容される。
【0052】
前述のマイクロプロセッサは、CPUとメモリ等を有している。メモリには、CPUで実行されるプログラムが格納されて、マイクロフォン72で取得された呼吸音のデータが保存される。CPUは、メモリに格納されたプログラムに基づいて呼吸音計測装置の動作を制御する。CPUは、呼吸音計測装置1の全体動作を制御する制御部76の一例であり、メモリは、マイクロフォン72で取得された呼吸音データを記憶するための記憶部77の一例である。
【0053】
前述の加速度センサ71は、被験者Pの体位/体動を検出するものである。加速度センサ71で検出された被験者Pの体位/体動は、スマートフォン等の端末装置8に送信されて、その表示画面81に呼吸音データと時間軸を揃えて表示される。これにより、被験者Pに対して、いびきや無呼吸の状態のときの体位/体動を知らせることができる。
【0054】
前述の近接センサ73は、収容ケース40の第2開口部44から、被験者Pの首Pnに向かって計測光を照射して、その反射光に基づいて、呼吸音計測装置1が被験者Pの首Pnに装着されているか否かを検出する。
【0055】
前述のバイブレータ74は、制御部76の制御を受けて振動する。具体的には、被験者Pが無呼吸状態のときや、被験者Pのいびきが大きいときに、被験者Pの首Pnに振動を伝えて、被験者Pに姿勢の変化を促す。このバイブレータ74は、振動を被験者Pに伝えやすくするために、収容ケース40と密着するように取り付けられる。
【0056】
前述の通信モジュール75は、周知構造の無線/有線のモジュールであって、端末装置8の通信モジュール82との間で双方向通信ができるように構成されている。
【0057】
次に、当接部材5の構造について、図5を使って説明する。この当接部材5は、前述のように、計測部4の収容ケース40の第1開口部43から、内周側(被験者Pの首Pn側)に突出するように設けられた円柱ハット型部材で構成されている。そして、当接部材5の先端側には、前述の防水カバーキャップ6が装着されている。
【0058】
当接部材5の先端には、被験者Pの呼吸音を導入して集音する集音部分である集音口53が形成されている。一方、当接部材5の基端面54は、中央部分が略矩形状に凹んでいて、略矩形状の第1基板70が嵌め込まれている。そして、第1基板70の外周側面の略中央に、マイクロフォン72が取り付けられている。
【0059】
なお、ここでのマイクロフォン72とは、音波を電気信号に変換する機器や装置や回路、及び、そのような機器等に用いるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)マイクロフォンのような音センサ等を広く含む概念である。なお、本実施形態では、マイクロフォン72をMEMSマイクロフォンで構成している。
【0060】
当接部材5を構成する材料は、第2導音空間55の円筒形状を維持するのに十分な硬度があればよく、特に限定されない。例えば、プラスティック樹脂(例えば、ポリオキシメチレン)を用いることができる。また、例えば、硬度50以上のポリプロピレンやシリコーン樹脂、フッ素ゴムを用いてもよい。
【0061】
当接部材5には、集音口53から導入された呼吸音をマイクロフォン72に導くための導音空間RSが設けられている。導音空間RSは、第1導音空間RS1、第2導音空間RS2、及び第3導音空間RS3で構成される。第1導音空間RS1は、第1基板70のマイクロフォン72と対応する位置に表裏方向に貫通形成された導音孔70aで形成される空間である。導音口には、マイクロフォンに向かって内径が次第に狭まるテーパー状の集音部56が形成され、この集音部56の内側の空間を第3導音空間RS3と呼ぶ。そして、第1導音空間RS1と第3導音空間RS3との間が、円筒状の第2導音空間RS2で接続されている。この第2導音空間RS2の内壁面に当接するように円筒状の遮音材57を設けている。
【0062】
この遮音材57を設けることで、呼吸音計測装置1に外部から与えられた衝撃等により生じた振動が伝搬し、導音空間RS内に固体伝搬音が発生するのを抑えることができる。呼吸音計測装置1の振動は、例えば、被験者Pが就寝中に寝返りした場合等に呼吸音計測装置1が寝具や被験者の手などでこすれることにより生じる。
【0063】
なお、遮音材57を形成する材料は、特に限定されないが、装着部2からの固体振動を吸収しつつ、被験者Pの首Pnから取得されて第2導音空間RS2を通過する呼吸音の音波は、吸収しにくいような素材、例えば、シリコーンゴムのような素材で構成するのが望ましい。
【0064】
当接部材5の基端には、第1基板70を覆うカバー58が取り付けられる。また、カバー58と外ケース42の上面42aとの間には、圧縮コイルばね52が設けられる。この圧縮コイルばね52を設けることで、前述したように、当接部材5は、収容ケース40にフローティング支持されることになり、被験者Pの首Pnへの密着性が高まるとともに、被験者Pの装着感が向上して、被験者Pの肌への食い込みの痕も残り難くなる。
【0065】
前述の防水カバーキャップ6は、図6図7に示すように、円形のキャップ状ゴム製部材で構成している。なお、素材としてはシリコーンゴムで構成しているが、柔軟性がある弾性部材であれば、硬化性ゴム、熱可塑性ゴム、フッ素ゴムなどの合成樹脂材料であっても良い。
【0066】
防水カバーキャップ6は、具体的には、被験者Pの首Pn側の当接面に吸盤形状部61としての中央の凹部61aと周縁の環状凸部61bを設けて、周縁の環状凸部61bから連なる外周側には縦方向に伸びる側壁部62を設けている。そして、凹部61aと環状凸部61bとの間には、環状の傾斜テーパー面61cを設けている。
【0067】
中央の凹部61aの厚みt1は、図7に示すように、環状凸部61bの厚みt2に比して薄膜となるように形成しており、例えば、厚みt1を0.2mm~0.3mmを狙って0.25mm程度に形成している。このように凹部61aの厚みt1を薄く形成することで、この凹部61aがいわゆる「ダイヤフラム」のように音の振動膜として機能する。また、後述するように、この凹部61aが、より変形しやすいようになっている。
【0068】
側壁部62の基端側の内周面には、環状に設けた係合凸部63を形成している。この係合凸部63は、図5に示すように、当接部材5の外周に形成された環状の係止凹部59に対して、係合するように構成されている。防水カバーキャップ6は、この係合凸部63によって、当接部材5の先端側に装着固定される。
【0069】
この防水カバーキャップ6が、当接部材5の先端側に装着固定されることで、当接部材5の先端に設けた集音口53に対して、外部からの水分等の侵入を防いでいる。
【0070】
次に、この防水カバーキャップ6に、前述の吸盤形状部61を設けた理由について、図8図9を利用して説明する。
【0071】
図8は本実施形態の当接部材5が被験者の首Pnに当接した状態の断面図であるが、この図に示すように、吸盤形状部61を備えた防水カバーキャップ6の場合には、被験者の首Pnが、吸盤形状部61の凹部61aの位置では凹部61a内に入り込む一方、環状凸部61bの位置では、被験者の首Pnが環状凸部61bと密着することになる。これは、前述のように、圧縮コイルばね52(図5参照)の付勢力や、付勢手段31(図3参照)の付勢力によって、当接部材5に対して、被験者の首Pn側への押圧力が発生しているため、こうした状態で被験者の首Pnと当接しているのである。
【0072】
このように、防水カバーキャップ6が被験者の首Pnと当接することで、凹部61a内(間隙)の空気が環状凸部61bを超えて外周側に流れ出ることになる。このため、凹部61a内の圧力が周囲の圧力よりも低下(負圧化)して、その結果として、被験者の首Pnと吸盤形状部61との間で吸引力が発生して、防水カバーキャップ6が被験者の首Pnの被測定部位から外れにくくなるのである。また特に、凹部61aの厚みt1(図7参照)が薄膜であることで、凹部61aが変形しやすくなり、凹部61a内の負圧化が生じやすくなる。
【0073】
一方、図9は、比較例の当接部材105が被験者の首Pnに当接した状態の断面図である。この図に示すように、この比較例の防水カバーキャップ106の場合には、吸盤形状部が設けられておらず、当接面161が平坦であるため、被験者の首Pnは、防水カバーキャップ106の先端に全体で密着するだけとなる。
【0074】
このため、圧縮コイルばね52(図5参照)の付勢力や、付勢手段31(図3参照)の付勢力によって、当接部材105に対して、被験者の首Pn側への押圧力が発生しても、被験者の首Pnと防水カバーキャップ106の間には、なんら負圧化する部分が存在せず、吸引力が発生しない。
【0075】
よって、防水カバーキャップ106が被験者の首Pnの被測定部位から、外れ(浮き)やすくなり、被験者Pが寝返り等をした場合には、当接部材105が被験者の首Pnから外れて(浮いて)、呼吸音の測定ができなくなるおそれがある。
【0076】
このように、本実施形態の防水カバーキャップ6の場合には、吸盤形状部61が設けられていることにより、当接部材5が被験者の首Pnから外れにくくなり、呼吸音の測定を確実に行うことができるのである。
【0077】
以上のように、本実施形態では、被験者の首Pnの外周に沿うように装着されて、被験者Pの睡眠時等の呼吸音を測定するネックバンド型の呼吸音測定装置1であって、被験者Pの首Pnの外周に装着されて、その装着時に首Pnの内周側に向かって付勢力を付与する略円弧形状の装着部2と、その装着部2の一端に連続的に設けられて、被験者Pの呼吸音を計測するマイクロフォン72を備えた計測部4と、その計測部4に設定された集音口53を覆うように設けられた防水性を有する防水カバーキャップ6と、その防水カバーキャップ6の被験者Pとの当接面に、吸盤形状部61を形成したことを特徴としている。
【0078】
これにより、防水カバーキャップ6が、吸盤形状部61の働きにより、被験者Pの首Pnの被測定部に吸着されることになる。
【0079】
このため、防水カバーキャップ6が被験者Pの首Pnの被測定部から外れにくくなり、これにより、マイクロフォン72の集音部分である当接部材5の集音口53が、被験者Pの首Pnの被測定部から外れにくくなる。
【0080】
よって、被験者Pの睡眠時等の呼吸音を測定するネックバンド型の呼吸音測定装置1において、マイクロフォン72の防水性能を高めつつ、マイクロフォン72の集音部分である当接部材5の集音口53が被験者Pの首Pnの被測定部分から外れにくくなり、被験者Pの呼吸音を確実に測定することができる。
【0081】
また、本実施形態では、吸盤形状部61は、中央の凹部61aと周囲の環状凸部61bとで形成されており、その凹部61aの厚みt1が、環状凸部61bの厚みt2(図7参照)よりも、薄膜に形成されていることを特徴としている。
【0082】
これにより、凹部61aの変形が環状凸部61bに比較してより生じやすくなる。このため、凹部61aと被験者Pとの間の間隙が変形しやすくなり、その凹部61a内(間隙内)の圧力がより変動しやすくなる。
【0083】
このため、凹部61a内の圧力と環状凸部61bの外方の圧力との差がより大きくなり、被験者Pとの間の吸引力がより発生しやすくなる。
【0084】
よって、より防水カバーキャップ6が被験者Pの首Pnの被測定部から外れにくくなり、それにより、さらにマイクロフォン72の集音部分である当接部材5の集音口53が、被験者Pの首Pnの被測定部から外れにくくなる。
【0085】
また、本実施形態では、防水カバーキャップ6が覆う計測部4に設定された集音部分は、中央の凹部61aと連なるように、被験者側に広がったテーパー形状の集音口53で構成されていることを特徴としている。
【0086】
これにより、中央の凹部61aの薄膜部分を、音の振動板(いわゆるダイヤフラム)として機能させることができる。
【0087】
このため、防水カバーキャップ6の中央の凹部61aが、被験者の音(呼吸音)を減衰することなく、そのままの振動状態で、マイクロフォン72に伝達することができる。
【0088】
よって、防水カバーキャップ6を設けて防水性能を高めつつ、マイクロフォン72のマイク性能を維持することができる。
【0089】
また、本実施形態では、防水カバーキャップ6は、吸盤形状部61より外側位置に設けられた係合凸部63で、計測部4の当接部材5の係止凹部59に、係止固定されていることを特徴としている。
【0090】
これにより、吸盤形状部61が吸引力を発生する際に生じる、防水カバーキャップ6の変形を、許容しやすくなる。すなわち、防水カバーキャップ6を当接部材5に強固に貼着固定等した場合は、防水カバーキャップ6が変形しにくくなるが、単に係合凸部63で係止固定しているだけなので、防水カバーキャップ6が変形しやすいのである。
【0091】
このため、防水カバーキャップ6の吸盤形状部61も変形しやすくなり、より確実に吸盤形状部61に吸引力を発生させることができる。
【0092】
よって、より確実に、吸盤形状部61の吸引力を発生させることができ、マイクロフォン72の集音部分である当接部材5の集音口53が被験者Pの首Pnの被測定部分から外れにくくすることができる。
【0093】
なお、防水カバーキャップ6は、このように係合凸部63で、単に係止固定されているだけので、防水カバーキャップ6に経年劣化等が生じた場合には、簡単に交換することもできる。
【0094】
(その他の実施形態)
次に、その他の実施形態について説明する。
【0095】
まず、防水カバーキャップの吸盤形状部については、必ずしも、実施形態1のような環状凸部61bの形状だけに限定されず、例えば、外周側に広がるフィン状の突出部や、カップ状の突出部であっても良い。すなわち、被験者の首側に押し込まれることで、中央の凹部の圧力が低下(負圧化)して、吸引力が発生するような構造であれば、どのような構造であっても良い。
【0096】
また、この防水カバーキャップの当接部材5への固定構造も、係合凸部63に限定されず、例えば、ねじ込み式の螺合固定でも良いし、接着剤等での接着固定でも良いし、また、加熱をすることで溶着して固定する溶着固定であっても良い。
【0097】
その他、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本実施形態の呼吸音測定装置を改良して構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0098】
以上、説明したように、本発明は、被験者の睡眠時等の呼吸音を測定するネックバンド型の呼吸音測定装置において有用である。
【符号の説明】
【0099】
P…被験者
Pn…被験者の首
1…呼吸音測定装置
2…装着部
4…計測部
5…当接部材
53…集音口(集音部分)
6…防水カバーキャップ(弾性カバー部材)
61…吸盤形状部
61a…凹部
61b…環状凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9