(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092782
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】タイヤ摩耗モニタリング装置及びタイヤ摩耗モニタリング方法
(51)【国際特許分類】
G01M 17/02 20060101AFI20240701BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20240701BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C19/00 H
G01B11/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208934
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100211395
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】勝野 弘之
【テーマコード(参考)】
2F065
3D131
【Fターム(参考)】
2F065AA22
2F065AA25
2F065AA63
2F065CC13
2F065FF04
2F065JJ03
2F065JJ26
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB04
3D131BB05
3D131BB06
3D131BB16
3D131BC55
3D131EB11X
3D131EB27V
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3D131EC12V
3D131EC12X
3D131EC24V
3D131EC24X
3D131GA01
3D131LA06
3D131LA21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】タイヤの摩耗度合いをモニタリングする技術の有用性を向上させることができる、タイヤ摩耗モニタリング装置及びタイヤ摩耗モニタリング方法を提供することにある。
【解決手段】本開示に係るタイヤ摩耗モニタリング装置は、タイヤのトレッド部を撮像した画像を取得し、前記画像内に写された前記トレッド部の摩耗度合いを定量化し、前記摩耗度合いが前記タイヤの耐久性の許容範囲から外れているか否かを判定し、前記摩耗度合いが前記許容範囲から外れていると判定された場合に、前記タイヤの摩耗情報を出力する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ摩耗モニタリング装置であって、
タイヤのトレッド部を撮像した画像を取得し、
前記画像内に写された前記トレッド部の摩耗度合いを定量化し、
前記摩耗度合いが前記タイヤの耐久性の許容範囲から外れているか否かを判定し、
前記摩耗度合いが前記許容範囲から外れていると判定された場合に、前記タイヤの摩耗情報を出力するように構成された、制御部を備える、タイヤ摩耗モニタリング装置。
【請求項2】
前記摩耗度合いを定量化することは、前記画像内に写された前記トレッド部における所定の溝の幅又は長さの少なくとも一方から、前記所定の溝の深さを推定することを含む、請求項1に記載のタイヤ摩耗モニタリング装置。
【請求項3】
前記所定の溝は、溝の深さに応じて段階的に異なる幅を有しており、
前記制御部は、前記所定の溝の深さと幅との対応付け情報を用いて、前記所定の溝の幅から前記所定の溝の深さを推定するように更に構成されている、請求項2に記載のタイヤ摩耗モニタリング装置。
【請求項4】
前記所定の溝は、溝の長さ方向に向かって段階的に異なる深さを有しており、
前記制御部は、前記所定の溝の深さと長さとの対応付け情報を用いて、前記所定の溝の長さから前記所定の溝の深さを推定するように更に構成されている、請求項2に記載のタイヤ摩耗モニタリング装置。
【請求項5】
前記タイヤは、前記所定の溝として、タイヤ幅方向において、前記タイヤの赤道面を境界として前記トレッド部の一方に設けられた第1の溝と、他方に設けられた第2の溝を有しており、
前記摩耗度合いを定量化することは、前記第1の溝の深さと前記第2の溝の深さとの差分を算出することを含む、請求項2に記載のタイヤ摩耗モニタリング装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記タイヤを装着した車両の走行距離又は走行時間を取得し、
前記摩耗度合いと、前記車両の前記走行距離又は前記走行時間とに基づいて、前記摩耗度合いが前記タイヤの耐久性の許容範囲から外れているか否かを判定するように更に構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のタイヤ摩耗モニタリング装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記タイヤの熱履歴を取得し、
前記摩耗度合いと、前記タイヤの前記熱履歴とに基づいて、前記摩耗度合いが前記タイヤの耐久性の許容範囲から外れているか否かを判定するように更に構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のタイヤ摩耗モニタリング装置。
【請求項8】
1つ以上のコンピュータが実行するタイヤ摩耗モニタリング方法であって、
タイヤのトレッド部を撮像した画像を取得することと、
前記画像内に写された前記トレッド部の摩耗度合いを定量化することと、
前記摩耗度合いが前記タイヤの耐久性の許容範囲から外れているか否かを判定することと、
前記摩耗度合いが前記許容範囲から外れていると判定された場合に、前記タイヤの摩耗情報を出力することと、
を含む、タイヤ摩耗モニタリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤ摩耗モニタリング装置及びタイヤ摩耗モニタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの摩耗度合いをモニタリングする技術が知られている。例えば、特許文献1には、タイヤのトレッドの溝部に摩耗インジケータを設けることで、タイヤのトレッド部の摩耗を検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2011-5063652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、タイヤの摩耗度合いをモニタリングする技術の有用性の更なる向上が求められている。例えば、鉱山サイトにおいて利用される鉱山車両では、突発的なタイヤの故障が生じると、鉱山車両の運搬及びタイヤ交換等の作業の発生により、生産性が低下してしまう。また、突発的な故障を予防するために作業員によりタイヤの検品を行うことは、コスト面で負担となっている。そのため、タイヤの摩耗度合いのモニタリングを自動化することが求められている。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、タイヤの摩耗度合いをモニタリングする技術の有用性を向上させる、タイヤ摩耗モニタリング装置及びタイヤ摩耗モニタリング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕本開示の一実施形態に係るタイヤ摩耗モニタリング装置は、タイヤのトレッド部を撮像した画像を取得し、前記画像内に写された前記トレッド部の摩耗度合いを定量化し、前記摩耗度合いが前記タイヤの耐久性の許容範囲から外れているか否かを判定し、前記摩耗度合いが前記許容範囲から外れていると判定された場合に、前記タイヤの摩耗情報を出力するように構成された、制御部を備える。
本開示の一実施形態に係るタイヤ摩耗モニタリング装置によれば、自動により、タイヤのトレッド部の摩耗度合いをモニタリングし、摩耗度合いの程度に応じてタイヤの摩耗情報を出力することができる。このため、当該タイヤ摩耗モニタリング装置によれば、タイヤの摩耗度合いをモニタリングする技術の有用性を向上させることができる。
【0007】
〔2〕本開示の一実施形態に係るタイヤ摩耗モニタリング装置は、上記〔1〕に記載のタイヤ摩耗モニタリング装置であって、前記摩耗度合いを定量化することは、前記画像内に写された前記トレッド部における所定の溝の幅又は長さの少なくとも一方から、前記所定の溝の深さを推定することを含むことが好ましい。かかる構成を有するタイヤ摩耗モニタリング装置によれば、タイヤの摩耗度合いを精度よく把握することができる。
【0008】
〔3〕本開示の一実施形態に係るタイヤ摩耗モニタリング装置は、上記〔2〕に記載のタイヤ摩耗モニタリング装置であって、前記所定の溝は、溝の深さに応じて段階的に異なる幅を有しており、前記制御部は、前記所定の溝の深さと幅との対応付け情報を用いて、前記所定の溝の幅から前記所定の溝の深さを推定するように更に構成されていることが好ましい。かかる構成を有するタイヤ摩耗モニタリング装置によれば、タイヤの摩耗度合いを簡易な方法で且つ精度よく把握することができる。
【0009】
〔4〕本開示の一実施形態に係るタイヤ摩耗モニタリング装置は、上記〔2〕に記載のタイヤ摩耗モニタリング装置であって、前記所定の溝は、溝の長さ方向に向かって段階的に異なる深さを有しており、前記制御部は、前記所定の溝の深さと長さとの対応付け情報を用いて、前記所定の溝の長さから前記所定の溝の深さを推定するように更に構成されていることが好ましい。かかる構成を有するタイヤ摩耗モニタリング装置によれば、タイヤの摩耗度合いを簡易な方法で且つ精度よく把握することができる。
【0010】
〔5〕本開示の一実施形態に係るタイヤ摩耗モニタリング装置は、上記〔2〕から〔4〕のいずれか一項に記載のタイヤ摩耗モニタリング装置であって、前記タイヤは、前記所定の溝として、タイヤ幅方向において、前記タイヤの赤道面を境界として前記トレッド部の一方に設けられた第1の溝と、他方に設けられた第2の溝を有しており、前記摩耗度合いを定量化することは、前記第1の溝の深さと前記第2の溝の深さとの差分を算出することを含むことが好ましい。かかる構成を有するタイヤ摩耗モニタリング装置によれば、タイヤの摩耗度合いをより精度よく把握することができる。
【0011】
〔6〕本開示の一実施形態に係るタイヤ摩耗モニタリング装置は、上記〔1〕から〔5〕のいずれか一項に記載のタイヤ摩耗モニタリング装置であって、前記制御部は、前記タイヤを装着した車両の走行距離又は走行時間を取得し、前記摩耗度合いと、前記車両の前記走行距離又は前記走行時間とに基づいて、前記摩耗度合いが前記タイヤの耐久性の許容範囲から外れているか否かを判定するように更に構成されていることが好ましい。かかる構成を有するタイヤ摩耗モニタリング装置によれば、タイヤの摩耗度合いがタイヤの耐久性の許容範囲を超えているか否かの判定精度を向上させることができる。
【0012】
〔7〕本開示の一実施形態に係るタイヤ摩耗モニタリング装置は、上記〔1〕から〔5〕のいずれか一項に記載のタイヤ摩耗モニタリング装置であって、前記制御部は、前記タイヤの熱履歴を取得し、前記摩耗度合いと、前記タイヤの前記熱履歴とに基づいて、前記摩耗度合いが前記タイヤの耐久性の許容範囲から外れているか否かを判定するように更に構成されていることが好ましい。かかる構成を有するタイヤ摩耗モニタリング装置によれば、タイヤの摩耗度合いがタイヤの耐久性の許容範囲を超えているか否かの判定精度を向上させることができる。
【0013】
〔8〕本開示の一実施形態に係るタイヤ摩耗モニタリング方法は、1つ以上のコンピュータが実行するタイヤ摩耗モニタリング方法であって、タイヤのトレッド部を撮像した画像を取得することと、前記画像内に写された前記トレッド部の摩耗度合いを定量化することと、前記摩耗度合いが前記タイヤの耐久性の許容範囲から外れているか否かを判定することと、前記摩耗度合いが前記許容範囲から外れていると判定された場合に、前記タイヤの摩耗情報を出力することと、を含む。
本開示の一実施形態に係るタイヤ摩耗モニタリング方法によれば、自動により、タイヤのトレッド部の摩耗度合いをモニタリングし、摩耗度合いの程度に応じてタイヤの摩耗情報を出力することができる。このため、当該タイヤ摩耗モニタリング方法によれば、タイヤの摩耗度合いをモニタリングする技術の有用性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、タイヤの摩耗度合いをモニタリングする技術の有用性を向上させることができる、タイヤ摩耗モニタリング装置及びタイヤ摩耗モニタリング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の一実施形態に係るタイヤ摩耗モニタリングシステムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図1に示されるサーバの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示されるタイヤ摩耗モニタリングシステムの動作を示すフローチャートである。
【
図4】タイヤを撮像した画像の一例を示す図である。
【
図5】タイヤのトレッド部の外表面の一例を示す図である。
【
図6】
図5に示されるA-A’断面を示した断面図である。
【
図7】
図5に示されるB-B’断面を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の一実施形態に係るタイヤ摩耗モニタリングシステムについて、図面を参照して説明する。各図において共通する部材及び部位には同一の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合があることに留意されたい。
【0017】
(タイヤ摩耗モニタリングシステムの構成)
はじめに、
図1を参照して、本実施形態に係るタイヤ摩耗モニタリングシステム1の概要について説明する。
図1は、タイヤ摩耗モニタリングシステム1の概略構成を示す図である。
図1に示されるように、タイヤ摩耗モニタリングシステム1は、サーバ10と、撮像装置20と、計測装置30と、端末装置40とを含む。なお、
図1では、それぞれ1つのサーバ10、撮像装置20、計測装置30、及び端末装置40が示されている。しかしながら、タイヤ摩耗モニタリングシステム1は、任意の数のサーバ10、撮像装置20、計測装置30、及び端末装置40を含んでいてもよい。
【0018】
サーバ10は、1つ以上のコンピュータで構成されている。本実施形態では、サーバ10は、1つのコンピュータで構成されているものとして説明する。しかしながら、サーバ10は、クラウドコンピューティングシステム等、複数のコンピュータによって構成されていてもよい。本開示において、サーバ10は、「タイヤ摩耗モニタリング装置」とも称される。
【0019】
撮像装置20は、1つ以上のカメラを含むコンピュータで構成されている。カメラは、例えば、可視光カメラ、サーモグラフィカメラ、赤外線カメラ等、画像を撮像可能な任意のカメラであってもよい。撮像装置20が撮像する画像は、写真等の静止画であってもよく、動画であってもよい。撮像装置20は、タイヤ2を撮像した画像を生成し、サーバ10に送信する。タイヤ2を撮像した画像には、タイヤ2の少なくとも一部が写されている。なお、タイヤ2を撮像した画像には、タイヤ2の少なくとも一部に加え、タイヤ2を装着した車両3の少なくとも一部が写されていてもよい。
【0020】
撮像装置20は、例えば、鉱山サイトにおける車両3の走行経路に設置された固定式の撮像装置20であってもよい。これにより、撮像装置20は、走行経路を走行中の車両3を撮像することができ、車両3の稼働率及び鉱山における生産性を低下させにくい。ただし、撮像装置20は、固定式の撮像装置20に限られず、ドローンに搭載された撮像装置20、或いは、人間により携帯可能なタブレット端末等の、移動可能な撮像装置20であってもよい。
【0021】
計測装置30は、1つ以上のセンサを含むコンピュータで構成されている。センサは、デジタルタコグラフ、タイヤ空気圧監視システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、ECU(Electronic Control Unit)、又はカーナビゲーション装置等であるが、これらに限られない。
【0022】
例えば、車両3に装着されたタイヤ2に関する計測データは、タイヤ2のタイヤ状態データを含む。タイヤ状態データは、例えば、タイヤ2の内圧(空気圧)、内腔温度、又は熱履歴等を含むが、これらに限られない。タイヤ2の熱履歴は、タイヤ2の使用に伴いタイヤ2に加えられた熱の履歴である。タイヤ2の熱履歴は、タイヤ2の使い始めからのタイヤ2にどのくらいのエネルギーが加えられたかを評価するために用いられる。一般的に、熱履歴が大きくなるほど、タイヤ2の劣化が進む。熱履歴は、例えば、タイヤ2の内腔温度をアレニウスの式に適用することで算出され得る。また、車両3に装着されたタイヤ2に関する計測データは、車両3の走行データを含む。車両3の走行データは、例えば、車両3の走行時間、走行距離、速度、加速度、又はタイヤ2の回転数を含む、これらに限られない。なお、車両3に装着されたタイヤ2に関する計測データは、各計測値とその計測日時等を含む時系列データであってもよい。
【0023】
計測装置30は、車両3に装着されたタイヤ2に関する計測データを計測し、サーバ10に送信する。そのため、計測装置30は、車両3又はタイヤ2に設置されていてもよい。
【0024】
端末装置40は、例えばスマートフォン、タブレット端末、又はパーソナルコンピュータ等の、コンピュータである。
【0025】
ネットワーク50は、サーバ10、撮像装置20、計測装置30、及び端末装置40が相互に通信可能な、任意の通信網である。本実施形態におけるネットワーク50は、例えばインターネット、移動体通信網、LAN(Local Area Network)、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0026】
タイヤ摩耗モニタリングシステム1は、1つ以上のタイヤ2の摩耗度合いをモニタリングするために用いられる。タイヤ摩耗モニタリングシステム1において、サーバ10は、例えば撮像装置20からタイヤ2のトレッド部2Aを撮像した画像60を取得する。そして、サーバ10は、画像60内に写されたトレッド部2Aの摩耗度合いを定量化する。サーバ10は、摩耗度合いがタイヤ2の耐久性の許容範囲から外れているか否かを判定し、摩耗度合いが許容範囲から外れていると判定された場合に、タイヤ2の摩耗情報を出力する。例えば、このタイヤ2の摩耗情報は、サーバ10から端末装置40に送信され、端末装置40によって表示されてもよい。このように、タイヤ摩耗モニタリングシステム1によれば、撮像装置20から取得した画像60に基づいて、サーバ10が、自動により、タイヤ2のトレッド部2Aの摩耗度合いをモニタリングし、摩耗度合いの程度に応じてタイヤ2の摩耗情報を出力することができる。
【0027】
本開示において、タイヤ2の「摩耗度合い」とは、タイヤ2の使用に伴い変化する摩耗の程度を表す指標である。本実施形態では、タイヤ2の摩耗度合いは、タイヤ2の使用に伴い増加する指標で表わされるものとする。例えば、タイヤ2の摩耗度合いは、タイヤ2の初期状態における値を0とし、タイヤ2の限界状態における値を100として、0~100の数値で表すことができる。ただし、タイヤ2の摩耗度合いは、タイヤ2の使用に伴い減少する指標で表わされてもよい。
【0028】
本開示において、タイヤ2は、特に限定されないが、鉱山サイト等において利用される運搬車両、建設車両、工事車両又は重機車両等の鉱山車両に装着されるOR(Off The Road)タイヤであってもよい。ただし、タイヤ2は、ORタイヤ以外のタイヤであってもよい。
【0029】
また、本開示において、車両3は、例えば、鉱山サイト等において利用される鉱山車両である。ただし、車両3は、上述した鉱山車両に限られず、例えば、運搬車両、建設車両、工事車両又は重機車両、バス、乗用車、バイク、自転車、又は飛行機等、タイヤ2を装着可能な任意の車両であってもよい。
【0030】
次に、
図2を参照して、タイヤ摩耗モニタリング装置であるサーバ10の構成について、詳細に説明する。
図2は、サーバ10の構成を示すブロック図である。
図2に示されるように、サーバ10は、通信部11と、出力部12と、入力部13と、記憶部14と、制御部15と、を備える。サーバ10において、通信部11、出力部12、入力部13、記憶部14、及び制御部15は、有線又は無線で互いに通信可能に接続されている。
【0031】
通信部11は、ネットワーク50に接続するための通信モジュールを含む。通信モジュールは、例えば4G(4th Generation)又は5G(5th Generation)等の移動体通信規格に対応した通信モジュールである。通信モジュールは、例えば有線LAN又は無線LAN等の規格に対応した通信モジュールであってもよい。通信モジュールは、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、又は赤外線通信等の近距離無線通信規格に対応した通信モジュールであってもよい。本実施形態において、サーバ10は、通信部11を介してネットワーク50に接続される。これによって、サーバ10は、撮像装置20、計測装置30、端末装置40、又は他のコンピュータ等と通信することができる。
【0032】
出力部12は、1つ以上の出力装置を含む。出力装置は、例えばディスプレイ、スピーカ又はランプ等である。これにより、出力部12は、画像、音又は光等を出力する。
【0033】
入力部13は、1つ以上の入力装置を含む。入力装置は、例えばタッチパネル、カメラ又はマイク等である。入力部13は、例えば、サーバ10の利用者による入力操作を受け付ける。
【0034】
記憶部14は、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等である。記憶部14は、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部14は、サーバ10の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部14は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、組み込みソフトウェア、又はデータベース等を記憶する。記憶部14に記憶された情報は、例えば通信部11を介してネットワーク50から取得される情報で更新可能であってもよい。
【0035】
例えば、記憶部14は、摩耗度合いモニタリングの対象となる1つ以上のタイヤ2のタイヤ識別情報を記憶していてもよい。タイヤ2のタイヤ識別情報は、タイヤ2を一意に識別可能な情報である。タイヤ識別情報は、例えば、サーバ10によって一意に払い出されたタイヤ2のID(Identifier)であるが、これに限られず、タイヤ2の製造番号、或いは、タイヤ2を装着する車両3の車両番号等であってもよい。さらに、記憶部14は、タイヤ2のタイヤ識別情報と関連付けて、タイヤ2に関する情報を記憶していてもよい。
【0036】
タイヤ2に関する情報は、例えば、タイヤ2の摩耗情報、タイヤ2に関する計測データ、タイヤ2の構成情報、タイヤ2を装着する車両3の情報、又は車両3におけるタイヤ2が装着されている位置情報の少なくとも1つを含む。タイヤ2の摩耗情報は、例えば、タイヤ2が過去に計測された摩耗度合い及び登録日時等を含む時系列データであってもよい。タイヤ2の構成情報は、例えば、タイヤ2の種類、型番、材料物性、ベルト角度、トレッドパターン、サイズ、又は重量等を含む。タイヤ2を装着する車両3の情報は、車両3の識別情報、種類、型番、排気量、装着タイヤ数、又はシャフト数等を含む。
【0037】
制御部15は、1つ以上のプロセッサを含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサ等であってもよい。制御部15は、プロセッサに限られず、1つ以上の専用回路を含んでもよい。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)であってもよい。制御部15は、上述した、通信部11、出力部12、入力部13、及び記憶部14等の構成要素の機能を含む、サーバ10の機能を実現させるために、それぞれの構成要素を制御する。
【0038】
(タイヤ摩耗モニタリングシステムの動作)
図3、
図4、
図5、
図6、及び
図7を参照して、タイヤ摩耗モニタリングシステム1の動作を説明する。
図3は、タイヤ摩耗モニタリングシステム1の動作を示すフローチャートである。
図4は、タイヤ2を撮像した画像60の一例を示す図である。
図5は、タイヤ2のトレッド部2Aの外表面の一例を示す図である。
図6は、
図5に示されるA-A’断面を示した断面図である。
図7は、
図5に示されるB-B’断面を示した断面図である。
【0039】
図3に示されるフローチャートには、タイヤ摩耗モニタリングシステム1に含まれる、サーバ10、撮像装置20、計測装置30、及び端末装置40の動作が示されている。そのため、本動作の説明は、タイヤ摩耗モニタリングシステム1が実行するタイヤ摩耗モニタリング方法に相当するとともに、タイヤ摩耗モニタリングシステム1に含まれる、サーバ10、撮像装置20、計測装置30、及び端末装置40のそれぞれが実行するタイヤ摩耗モニタリング方法に相当する。
【0040】
本動作の説明にあたり、サーバ10の制御部15は、記憶部14に、タイヤ2のタイヤ識別情報と、タイヤ2のタイヤ識別情報に関連付けられた、タイヤ2に関する情報と、を記憶しているものとする。
【0041】
また、本動作例では、一例として、
図4に示される画像60に基づいて、サーバ10が、タイヤ2のトレッド部2Aの摩耗度合いをモニタリングする動作を説明する。かかる場合、撮像装置20は、タイヤ2のトレッド部2Aを撮像可能な位置に設置されていてもよい。本実施形態では、撮像装置20は、車両3の走行経路において、タイヤ2のトレッド部2Aを斜め前方から撮像可能な位置に設置されているものとして説明する。ただし、撮像装置20は、車両3の正面又は背面を撮像可能な位置であってもよく、車両3が走行する走行経路の路面に設置されていてもよい。
【0042】
図3を参照すると、ステップS101において、計測装置30は、センサを用いて計測した、タイヤ2に関する計測データをサーバ10に送信する。
【0043】
具体的には、計測装置30は、センサを用いて、タイヤ2に関する計測データを計測する。計測装置30は、タイヤ2に関する計測データが計測されるたびに、当該タイヤ2に関する計測データをサーバ10に送信してもよく、或いは、所定の期間に計測されたタイヤ2に関する計測データをまとめてサーバ10に送信してもよい。本動作例では、計測装置30は、デジタルタコグラフ及びTPMSを備えている。そのため、タイヤ2に関する計測データは、タイヤ2の内圧(空気圧)、内腔温度、及び熱履歴等のタイヤ2のタイヤ状態データと、車両3の走行時間及び走行距離等の車両3の走行データとを含む。ただし、計測装置30から送信される計測データは、上述したデータ以外のデータを含んでいてもよい。
【0044】
ステップS102において、サーバ10の制御部15は、タイヤ2に関する計測データを取得する。
【0045】
具体的には、サーバ10の制御部15は、通信部11を介して、タイヤ2に関する計測データを計測装置30から受信する。ただし、制御部15は、計測装置30以外のコンピュータを介して、計測装置30によって計測されたタイヤ2に関する計測データを受信してもよい。制御部15は、受信したタイヤ2に関する計測データを、タイヤ2の識別情報と関連付けて記憶部14に記憶してもよい。
【0046】
ステップS103において、撮像装置20は、カメラにより、タイヤ2を撮像した画像60をサーバ10に送信する。
【0047】
具体的には、撮像装置20は、カメラを用いて、タイヤ2を撮像し、タイヤ2を撮像した画像60を生成する。画像60は、連続的に撮像された複数の静止画又は動画であることが好ましい。ただし、画像60は、1枚の静止画であってもよい。画像60は、例えば、可視光カメラで撮影された写真である。ただし、画像60は、サーモグラフィカメラで撮影されたサーモグラフィ画像等、任意の画像であってもよい。また、タイヤ2を撮像した画像60には、タイヤ2の少なくとも一部に加え、タイヤ2を装着した車両3の少なくとも一部も写されていてもよい。本動作例では、写真の一例として、
図4に示される画像60が撮像装置20からサーバ10に送信される。画像60には、タイヤ2とタイヤ2を装着した車両3の一部とが写されている。
【0048】
再び
図3を参照すると、ステップS104において、サーバ10の制御部15は、タイヤ2を撮像した画像60を取得する。
【0049】
具体的には、サーバ10の制御部15は、通信部11を介して、タイヤ2を撮像した画像60を撮像装置20から受信する。ただし、制御部15は、撮像装置20以外のコンピュータを介して、撮像装置20によって撮像された画像60を受信してもよい。制御部15は、受信した画像60を、タイヤ2の識別情報と関連付けて記憶部14に記憶してもよい。
【0050】
ステップS104において、更に、サーバ10の制御部15は、画像60内に写された、タイヤ2又はタイヤ2を装着している車両3に表示されたタイヤ2の識別情報を特定してもよい。これにより、画像60内に写されたタイヤ2が予め特定されていない場合でも、制御部15が画像60からタイヤ2を特定することができる。具体的には、制御部15は、画像処理により、画像60内のタイヤ2の識別情報を示す表示部分61を特定する。
図4に示されるように、表示部分61は、例えば、QR(Quick Response)コード(登録商標)またはAR(Augmented Reality)マーカー等の二次元コードであってもよい。かかる場合、制御部15は、二次元コードである表示部分61からタイヤ2の識別情報を読み取ることができる。ただし、表示部分61は、二次元コードに限られず、文字列、記号、図形、色、模様、又は一次元コード等任意の表示とされてもよい。
【0051】
タイヤ2の識別情報を示す表示部分61は、任意の位置に表示されていてもよい。例えば、
図4では、表示部分61A及び61Bが示されている。表示部分61Aは、タイヤ2のサイド部に設けられている。かかる場合、タイヤローテーション等により、タイヤ2が他の車両3に装着された場合でも、同じ表示部分61に基づいてタイヤ2の識別情報を特定することができる。表示部分61Bは、タイヤ2を装着した車両3の車体に設けられている。かかる場合、表示部分61が車両3の車体に設けられていることで、タイヤ2の外表面が泥で汚れた場合、或いは傷付いた場合であっても、表示部分61の視認性が低下しにくい。
【0052】
再び
図3を参照すると、ステップS105において、サーバ10の制御部15は、画像60における単位ピクセルあたりの実際の長さを判定する。
【0053】
単位ピクセルあたりの実際の長さの判定には、任意の手法が採用可能である。例えば、サーバ10の制御部15は、記憶部14に、画像60内に写された対象物の実際の長さを算出するために、画像60における単位ピクセルあたりの実際の長さを記憶していてもよい。
【0054】
或いは、サーバ10の制御部15は、当該判定に用いられるタイヤ2に関連付けられた基準部材62を、記憶部14に記憶していてもよい。タイヤ2に関連付けられた基準部材62は、タイヤ2の外表面上に設けられた溝、文字、記号、図形、色、又は模様とされてもよい。
図4に示される例では、基準部材62は、タイヤ2のサイド部の外表面上に設けられた文字である。制御部15は、タイヤ2に関連付けられた基準部材62の実際の長さと、画像60内に写された基準部材62の長さとに基づいて、画像60における単位ピクセルあたりの実際の長さを判定してもよい。
【0055】
例えば、サーバ10の制御部15は、画像60内に写された基準部材62の輪郭を特定する。制御部15は、特定した基準部材62の輪郭のうち、最も距離が離れている2点間の距離を画像60内に写された基準部材62の長さとして特定する。画像60内に写された基準部材62の長さは、ピクセル数で表わされてもよい。制御部15は、画像60内に写された基準部材62の長さに相当するピクセル数と、タイヤ2に関連付けられた基準部材62の実際の長さとから、画像60における単位ピクセルあたりの実際の長さを判定することができる。これにより、後続の処理におけるタイヤ2のトレッド部2Aの溝の深さを推定する精度を向上させることができる。ただし、基準部材62は、タイヤ2のリムであってもよい。かかる場合、基準部材62の長さは、例えばタイヤ2のリム径であってもよい。
【0056】
再び
図3を参照すると、ステップS106において、サーバ10の制御部15は、画像60内に写されたタイヤ2のトレッド部2Aの外表面を検出する。
【0057】
トレッド部2Aの外表面の検出には、任意の手法が採用可能である。例えば、サーバ10の制御部15は、画像60内に写されたタイヤ2のトレッド部2Aの外表面を特定するための画像解析アルゴリズムを記憶部14に予め記憶していてもよい。
【0058】
本実施形態では、画像解析アルゴリズムは、機械学習又はディープラーニング等の統計的手法により構築されていてもよい。例えば、画像解析アルゴリズムは、タイヤ2を撮像した画像60と、人間等により特定されたタイヤ2のトレッド部2Aの外表面と、を教師データとして、統計的手法により構築されてもよい。これにより、教師データの蓄積により、トレッド部2Aの外表面の検出精度を向上させることができる。ただし、画像解析アルゴリズムは、統計的手法によらない、所定の演算処理を含んでいてもよい。
【0059】
サーバ10の制御部15は、
図5に示されるような、検出されたタイヤ2のトレッド部2Aの外表面を、タイヤ2の摩耗情報として、タイヤ2の識別情報と関連付けて記憶部14に記憶してもよい。このとき、制御部15は、画像60がトレッド部2Aの外表面を正面から撮像した画像でない場合、検出されたタイヤ2のトレッド部2Aの外表面が正面から見た状態になるように、台形補正等の補正を行ってもよい。これにより、後続の処理におけるタイヤ2のトレッド部2Aの溝の深さを推定する精度を向上させることができる
【0060】
再び
図3を参照すると、ステップS107において、サーバ10の制御部15は、画像60内に写されたタイヤ2のトレッド部2Aの摩耗度合いを定量化する。
【0061】
摩耗度合いの定量化には、任意の手法が採用可能である。サーバ10の制御部15は、摩耗度合いを定量化するにあたり、トレッド部2Aにおける所定の溝4の深さDを指標として用いてもよい。サーバ10の制御部15は、画像60内に写されたタイヤ2のトレッド部2Aにおける所定の溝4の幅W又は長さLの少なくとも一方から、所定の溝4の深さDを推定してもよい。そのために、制御部15は、タイヤ2の所定の溝4の幅W又は長さLの少なくとも一方から所定の溝4の深さDを推定するための対応付けアルゴリズムを記憶部14に予め記憶していてもよい。制御部15は、ステップS106において検出されたトレッド部2Aの外表面から、所定の溝4を特定する。例えば、制御部15は、所定の溝4を特定するために、タイヤ2のトレッドパターンと、トレッドパターンにおける所定の溝4の位置とを対応付けて記憶部14に記憶していてもよい。
【0062】
そして、サーバ10の制御部15は、特定された所定の溝4の幅W及び長さLを算出する。制御部15は、所定の溝4の幅W及び長さLを算出する際に、ステップS105で算出された画像60における単位ピクセルあたりの実際の長さを用いてもよい。そして、制御部15は、対応付けアルゴリズムを用いて、所定の溝4の幅W又は長さLの少なくとも一方から所定の溝4の深さDを推定する。所定の溝4の深さDは、例えば、タイヤ2の外表面から所定の溝4の最も深い部分までの距離である。制御部15は、推定された所定の溝4の深さDの所定の溝4の深さの初期値に対する比を、タイヤ2のトレッド部2Aの摩耗度合いとして、タイヤ2の識別情報と関連付けて記憶部14に記憶してもよい。なお、所定の溝4が複数ある場合、後続の処理において、複数の所定の溝4の深さDのうち最も浅いもの(摩耗が進んでいるもの)が、タイヤ2の所定の溝4の深さDとされてもよい。
【0063】
以下、
図5、
図6、及び
図7を参照して、所定の溝4の幅W又は長さLの少なくとも一方から所定の溝4の深さDを推定する方法の具体例を示す。
図5に示される例では、タイヤ2のトレッド部2Aにおいて、所定の溝4として2種類の溝4A及び4Bが設けられている。そして、所定の溝4A及び4Bは、タイヤ2の周方向に所定の間隔で設けられている。さらに、所定の溝4A及び4Bは、タイヤ幅方向において、タイヤ2の赤道面CLを境界としてトレッド部2Aの両側に設けられている。ただし、トレッド部2Aに設けられる所定の溝4の種類、数、及び位置は、任意に定められていてもよい。なお、以降の説明において、所定の溝4A及び4Bを特に区別しない場合、単に所定の溝4と総称する。
【0064】
第一例として、タイヤ2の所定の溝4として、溝の深さDに応じて段階的に異なる幅Wを有している溝4Aが、推定に用いられてもよい。所定の溝4Aの幅Wは、所定の溝4Aの深さDと相関関係を有するように構成されている。具体的には、
図6に示されるように、所定の溝4Aは、所定の溝4Aの長さ方向(延在方向)に垂直な断面において、左右の溝壁が傾斜しており、溝底からトレッド部2Aの外表面に向かうに従い、幅Wが広くなるように構成されている。そのため、新品時(0%摩耗時)から摩耗が進み、33%摩耗時、66%摩耗時と、所定の溝4Aの深さDが浅くなるに伴い、トレッド部2Aの外表面に露出する所定の溝4Aの幅Wが狭くなる。これにより、サーバ10の制御部15は、対応付けアルゴリズムとして、所定の溝4Aの深さDと幅Wとの対応付け情報を用いて、所定の溝4Aの幅Wから深さDを推定することができる。
【0065】
第二例として、タイヤ2の所定の溝4として、溝の長さ方向に向かって段階的に異なる深さDを有している溝4Bが推定に用いられてもよい。所定の溝4Bの長さ方向における位置は、所定の溝4Aの深さDと相関関係を有するように構成されている。具体的には、
図7に示されるように、所定の溝4Bは、溝の長さ方向に沿って溝底に所定の傾斜が設けられている。すなわち、所定の溝4Bは、長さ方向の一端側から他端側に向かうに従い、深さDが浅くなるように構成されている。そのため、新品時(0%摩耗時)から摩耗が進み、33%摩耗時、66%摩耗時と、所定の溝4Aの深さDが浅くなるに伴い、トレッド部2Aの外表面に露出する所定の溝4Bの長さLが短くなる。これにより、サーバ10の制御部15は、対応付けアルゴリズムとして、所定の溝4Bの深さDと長さLとの対応付け情報を用いて、所定の溝4Bの長さLから深さDを推定することができる。
【0066】
本実施形態では、対応付けアルゴリズムは、機械学習又はディープラーニング等の統計的手法により構築されていてもよい。例えば、対応付けアルゴリズムは、タイヤ2の所定の溝4の幅W又は長さLの少なくとも一方と、人間等により計測された所定の溝4の深さDと、を教師データとして、統計的手法により構築されてもよい。これにより、教師データの蓄積により、タイヤ2の所定の溝4の深さDを推定する精度を向上させることができる。ただし、対応付けアルゴリズムは、統計的手法によらない、所定の演算処理を含んでいてもよい。
【0067】
また、サーバ10の制御部15は、摩耗度合いを定量化するにあたり、トレッド部2Aにおける所定の溝4の深さDに加えて/代えて、タイヤ幅方向における赤道面CLを挟んだ両側におけるトレッド部2Aの摩耗度合いの偏りを指標として用いてもよい。具体的には、制御部15は、摩耗度合いの定量化として、タイヤ幅方向において、タイヤ2の赤道面CLを境界としてトレッド部の一方(例えば、
図5において赤道面CLよりも左側)に設けられた第1の溝4の深さDと、他方(赤道面CLよりも右側)に設けられた第2の溝4の深さDとの差分を算出してもよい。このように、制御部15は、第1の溝4の深さDと第2の溝4の深さDとの差を算出することで、タイヤ2における偏摩耗の程度を判断することができる。
【0068】
再び
図3を参照すると、ステップS108において、サーバ10の制御部15は、タイヤ2の摩耗度合いがタイヤ2の耐久性の許容範囲から外れているか否かを判定する。
【0069】
タイヤ2の耐久性の許容範囲は、任意に定められてもよい。例えば、タイヤ2の耐久性の許容範囲は、タイヤ2の摩耗度合いとして上述した、所定の溝4の深さDに応じて定められていてもよい。サーバ10の制御部15は、例えば、所定の溝4の深さDが、タイヤ2の耐久性の許容範囲として定められた値よりも浅い場合に、タイヤ2の摩耗度合いがタイヤ2の耐久性の許容範囲から外れたと判定することができる。
【0070】
さらに、タイヤ2の耐久性の許容範囲は、タイヤ2の摩耗度合いに加えて、他の要素を用いて複合的に定められていてもよい。他の要素は、例えば、計測装置30から取得したタイヤ2に関する計測データに含まれる情報である。一例として、サーバ10の制御部15は、タイヤ2の摩耗度合いと、タイヤ2を装着した車両3の走行距離又は走行時間とに基づいて、摩耗度合いがタイヤ2の耐久性の許容範囲から外れているか否かを判定してもよい。具体的には、車両3の走行距離又は走行時間が大きい場合、既にタイヤ2が劣化しており、タイヤ2の摩耗の進行が早いと考えられる。そのため、許容範囲は、タイヤ2の摩耗度合いが大きく、且つ、タイヤ2を装着した車両3の走行距離又は走行時間が大きいほど、摩耗度合いが許容範囲を超えやすいように設定されていてもよい。これにより、タイヤ2の摩耗度合いがタイヤ2の耐久性の許容範囲を超えているか否かの判定精度を向上させることができる。
【0071】
他の例として、サーバ10の制御部15は、タイヤ2の摩耗度合いと、タイヤ2の熱履歴とに基づいて、摩耗度合いがタイヤ2の耐久性の許容範囲から外れているか否かを判定してもよい。具体的には、タイヤ2の熱履歴が大きい場合、既にタイヤ2が劣化しており、タイヤ2の摩耗の進行は早いと考えられる。そのため、許容範囲は、タイヤ2の摩耗度合いが大きく、且つ、タイヤ2の熱履歴が大きいほど、摩耗度合いが許容範囲を超えやすいように設定されていてもよい。これにより、タイヤ2の摩耗度合いがタイヤ2の耐久性の許容範囲を超えているか否かの判定精度を向上させることができる。
【0072】
なお、タイヤ2の耐久性の許容範囲は、複数段階設定されていてもよい。例えば、タイヤ2の耐久性の許容範囲は、タイヤ2の交換、リトレッド、又はローテーションの少なくとも1つと対応付けられていてもよい。例えば、許容範囲が、2回のローテーションのタイミングと対応付けられている場合、制御部15は、摩耗度合いが33%を超えた場合及び66%を超えた場合に、許容範囲から外れたと判定してもよい。
【0073】
ステップS109において、サーバ10の制御部15は、タイヤ2の摩耗度合いが許容範囲から外れていると判定された場合に、タイヤ2の摩耗情報を出力する。
【0074】
タイヤ2の摩耗情報の出力には、任意の手法が採用可能である。例えば、サーバ10の制御部15は、ディスプレイ等の出力部12を介して、タイヤ2の摩耗情報を表示させてもよい。或いは、制御部15は、通信部11を介して、タイヤ2の摩耗情報を表示させる要求を、端末装置40に送信してもよい。かかる場合、端末装置40は、ステップS110において、サーバ10から受信した要求に基づいて、ディスプレイ等を介して、タイヤ2の摩耗情報を表示することができる。タイヤ2の摩耗情報は、例えば、タイヤ2の摩耗度合いを含む。ただし、タイヤ2の摩耗情報は、タイヤ2の摩耗度合いに限られず、摩耗度合いが外れた許容範囲の内容、警告メッセージ等、任意の情報が含まれていてもよい。その結果、タイヤ摩耗モニタリングシステム1の利用者は、タイヤ2のトレッド部2Aの摩耗度合いを容易に把握することができ、タイヤ2が故障する前に、タイヤ2の交換、リトレッド、ローテーション等を計画することができる。
【0075】
以上述べたように、本実施形態において、タイヤ摩耗モニタリング装置であるサーバ10は、タイヤ2のトレッド部2Aを撮像した画像60を取得する。そして、サーバ10は、画像60内に写されたトレッド部2Aの摩耗度合いを定量化する。サーバ10は、摩耗度合いがタイヤ2の耐久性の許容範囲から外れているか否かを判定し、摩耗度合いが許容範囲から外れていると判定された場合に、タイヤ2の摩耗情報を出力する。
【0076】
かかる構成によれば、サーバ10は、取得した画像60に基づいて、自動により、タイヤ2のトレッド部2Aの摩耗度合いをモニタリングし、摩耗度合いの程度に応じてタイヤ2の摩耗情報を出力することができる。これにより、鉱山サイトにおけるタイヤ2の突発的な故障による生産性の低下、及び、タイヤ2の検品のための作業員の負担の増加を抑制することができる。したがって、本実施形態によれば、タイヤ2の摩耗度合いをモニタリングする技術の有用性を向上させることができる。
【0077】
本開示を諸図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが可能であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各実施形態に含まれる構成又は機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能である。また、各実施形態に含まれる構成又は機能等は、他の実施形態に組み合わせて用いることができ、複数の構成又は機能等を1つに組み合わせたり、分割したり、或いは一部を省略したりすることが可能である。
【0078】
また例えば、汎用のコンピュータを、上述した実施形態に係るサーバ10として機能させる実施形態も可能である。具体的には、上述した実施形態に係るサーバ10の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、汎用のコンピュータのメモリに格納し、プロセッサによって当該プログラムを読み出して実行させる。したがって、本開示は、プロセッサが実行可能なプログラム、又は当該プログラムを記憶する非一時的なコンピュータ読取可能な媒体としても実現可能である。非一時的なコンピュータ読取可能な媒体には、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、又は半導体メモリ等が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本開示によれば、タイヤの摩耗度合いをモニタリングする技術の有用性を向上させることができる、タイヤ摩耗モニタリング装置及びタイヤ摩耗モニタリング方法を提供することができる。
【0080】
[国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
持続可能な社会の実現に向けて、SDGsが提唱されている。本発明の一実施形態は「No.9_産業と技術革新の基盤を作ろう」などに貢献する技術となり得ると考えられる。
【符号の説明】
【0081】
1:タイヤ摩耗モニタリングシステム、 2:タイヤ、 2A:トレッド部、 3:車両、 4(4A、4B):溝、 10:サーバ(タイヤ摩耗モニタリング装置)、 11:通信部、 12:出力部、 13:入力部、 14:記憶部、 15:制御部、 20:撮像装置、 30:計測装置、 40:端末装置、 50:ネットワーク、 60:画像、 61(61A、61B):表示部分、62:基準部材、 CL:赤道面、 D:溝の深さ、 W:溝の幅、 L:溝の長さ