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特開2024-92800樹脂材料、硬化物及び多層プリント配線板
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  • 特開-樹脂材料、硬化物及び多層プリント配線板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092800
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】樹脂材料、硬化物及び多層プリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20240701BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240701BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20240701BHJP
   C08F 292/00 20060101ALI20240701BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240701BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C08F2/44 A
C08L101/00
C08K3/34
C08F292/00
B32B15/08 J
H05K1/03 610H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208972
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大當 悠太
(72)【発明者】
【氏名】馬場 奨
(72)【発明者】
【氏名】脇岡 さやか
(72)【発明者】
【氏名】増井 良平
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J011
4J026
【Fターム(参考)】
4F100AB01C
4F100AB17C
4F100AH01B
4F100AH06B
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA23B
4F100CA30B
4F100EJ64B
4F100GB41
4F100JB12B
4F100JG04B
4F100JG05B
4F100YY00B
4J002AA001
4J002BG121
4J002CM041
4J002DJ006
4J002FD016
4J002GQ01
4J011AA05
4J011CA01
4J011PA13
4J011PA99
4J011PB22
4J011PC02
4J011PC08
4J026AC00
4J026BA06
4J026BA40
4J026DA13
4J026DB06
4J026GA07
(57)【要約】
【課題】硬化物の誘電率及び誘電正接を低くすることができ、かつ、HAST試験後の絶縁信頼性を高めることができる樹脂材料を提供する。
【解決手段】本発明に係る樹脂材料は、ラジカル重合性化合物(A)と、中空アルミノシリケート粒子(B)と、硬化促進剤(C)とを含み、下記の第1の構成又は下記の第2の構成を備える。
第1の構成:樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、ラジカル重合性化合物(A)の含有量が、20重量%以上である。
第2の構成:樹脂材料を180℃で30分間加熱した後、200℃で60分間加熱して得られた樹脂材料の硬化物(1)の誘電正接と、樹脂材料の硬化物(1)を130℃及び85%RHで100時間静置した後の樹脂材料の硬化物(2)の誘電正接とをそれぞれ測定したときに、特定の式(Df)で算出される誘電正接の変化率が225%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性化合物(A)と、
中空アルミノシリケート粒子(B)と、
硬化促進剤(C)とを含み、
下記の第1の構成又は下記の第2の構成を備える、樹脂材料。
第1の構成:樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、前記ラジカル重合性化合物(A)の含有量が、20重量%以上である。
第2の構成:樹脂材料を180℃で30分間加熱した後、200℃で60分間加熱して得られた樹脂材料の硬化物(1)の誘電正接と、前記樹脂材料の硬化物(1)を130℃及び85%RHで100時間静置した後の樹脂材料の硬化物(2)の誘電正接とをそれぞれ測定したときに、下記式(Df)で算出される誘電正接の変化率が225%以下である。
誘電正接の変化率(%)=(|Df1-Df2|/Df1)×100 ・・・(Df)
Df1:前記樹脂材料の硬化物(1)の誘電正接
Df2:前記樹脂材料の硬化物(2)の誘電正接
【請求項2】
前記第1の構成を備える、請求項1に記載の樹脂材料。
【請求項3】
前記第2の構成を備える、請求項1に記載の樹脂材料。
【請求項4】
前記第1の構成と前記第2の構成とを備える、請求項1に記載の樹脂材料。
【請求項5】
樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、前記中空アルミノシリケート粒子(B)の含有量が、55重量%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項6】
前記中空アルミノシリケート粒子(B)が、表面処理された中空アルミノシリケート粒子である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項7】
樹脂フィルムである、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項8】
多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために用いられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項9】
樹脂材料の硬化物であって、
前記樹脂材料が、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂材料である、硬化物。
【請求項10】
回路基板と、
前記回路基板の表面上に配置された複数の絶縁層と、
複数の前記絶縁層間に配置された金属層とを備え、
複数の前記絶縁層の内の少なくとも1層が、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂材料の硬化物である、多層プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジカル重合性化合物を含む樹脂材料に関する。また、本発明は、上記樹脂材料の硬化物に関する。さらに、本発明は、上記樹脂材料を用いた多層プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置、積層板及びプリント配線板等の電子部品を得るために、様々な樹脂材料が用いられている。例えば、多層プリント配線板では、内部の層間を絶縁するための絶縁層を形成したり、表層部分に位置する絶縁層を形成したりするために、樹脂材料が用いられている。上記絶縁層の表面には、一般に金属である配線が積層される。また、上記絶縁層を形成するために、フィルム状の樹脂材料(樹脂フィルム)が用いられることがある。上記樹脂材料は、ビルドアップフィルムを含む多層プリント配線板用の絶縁材料等として用いられている。
【0003】
下記の特許文献1には、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)中空無機粒子を含み、(C)中空無機粒子が特定の構成を満たす樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-083966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のように、エポキシ化合物と中空無機粒子とを含む樹脂材料が知られている。中空無機粒子を用いることにより、樹脂材料の硬化物の誘電率及び誘電正接をある程度低くすることができる。
【0006】
また、プリント配線板等の電子部品では、HAST試験(High Accelerated Stress Test)が行われることがある。しかしながら、上記特許文献1に記載のような中空無機粒子を含む従来の樹脂材料では、HAST試験後に絶縁信頼性が低下することがある。
【0007】
本発明の目的は、硬化物の誘電率及び誘電正接を低くすることができ、かつ、HAST試験後の絶縁信頼性を高めることができる樹脂材料を提供することである。また、本発明は、上記樹脂材料の硬化物を提供することも目的とする。さらに、本発明は、上記樹脂材料を用いた多層プリント配線板を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書において、以下の樹脂材料、硬化物及び多層プリント配線板を開示する。
【0009】
項1.ラジカル重合性化合物(A)と、中空アルミノシリケート粒子(B)と、硬化促進剤(C)とを含み、下記の第1の構成又は下記の第2の構成を備える、樹脂材料。
【0010】
第1の構成:樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、前記ラジカル重合性化合物(A)の含有量が、20重量%以上である。
【0011】
第2の構成:樹脂材料を180℃で30分間加熱した後、200℃で60分間加熱して
得られた樹脂材料の硬化物(1)の誘電正接と、前記樹脂材料の硬化物(1)を130℃及び85%RHで100時間静置した後の樹脂材料の硬化物(2)の誘電正接とをそれぞれ測定したときに、下記式(Df)で算出される誘電正接の変化率が225%以下である。
【0012】
誘電正接の変化率(%)=(|Df1-Df2|/Df1)×100 ・・・(Df)
【0013】
Df1:前記樹脂材料の硬化物(1)の誘電正接
Df2:前記樹脂材料の硬化物(2)の誘電正接
【0014】
項2.前記第1の構成を備える、項1に記載の樹脂材料。
【0015】
項3.前記第2の構成を備える、項1に記載の樹脂材料。
【0016】
項4.前記第1の構成と前記第2の構成とを備える、項1に記載の樹脂材料。
【0017】
項5.樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、前記中空アルミノシリケート粒子(B)の含有量が、55重量%以下である、項1~4のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【0018】
項6.前記中空アルミノシリケート粒子(B)が、表面処理された中空アルミノシリケート粒子である、項1~5のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【0019】
項7.樹脂フィルムである、項1~6のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【0020】
項8.多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために用いられる、項1~7のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【0021】
項9.樹脂材料の硬化物であって、前記樹脂材料が、項1~8のいずれか1項に記載の樹脂材料である、硬化物。
【0022】
項10.回路基板と、前記回路基板の表面上に配置された複数の絶縁層と、複数の前記絶縁層間に配置された金属層とを備え、複数の前記絶縁層の内の少なくとも1層が、項1~8のいずれか1項に記載の樹脂材料の硬化物である、多層プリント配線板。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る樹脂材料は、ラジカル重合性化合物(A)と、中空アルミノシリケート粒子(B)と、硬化促進剤(C)とを含み、特定の第1の構成又は特定の第2の構成を備える。本発明に係る樹脂材料では、上記の構成が備えられているので、硬化物の誘電率及び誘電正接を低くすることができ、かつ、HAST試験後の絶縁信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂材料を用いた多層プリント配線板を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0026】
(樹脂材料)
本発明に係る樹脂材料は、ラジカル重合性化合物(A)と、中空アルミノシリケート粒子(B)と、硬化促進剤(C)とを含み、下記の第1の構成又は下記の第2の構成を備える。
【0027】
第1の構成:樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、上記ラジカル重合性化合物(A)の含有量が、20重量%以上である。
【0028】
第2の構成:樹脂材料を180℃で30分間加熱した後、200℃で60分間加熱して得られた樹脂材料の硬化物(1)の誘電正接と、上記樹脂材料の硬化物(1)を130℃及び85%RHで100時間静置した後の樹脂材料の硬化物(2)の誘電正接とをそれぞれ測定したときに、下記式(Df)で算出される誘電正接の変化率が225%以下である。
【0029】
誘電正接の変化率(%)=(|Df1-Df2|/Df1)×100 ・・・(Df)
【0030】
Df1:上記樹脂材料の硬化物(1)の誘電正接
Df2:上記樹脂材料の硬化物(2)の誘電正接
【0031】
本発明に係る樹脂材料では、上記の構成が備えられているので、硬化物の誘電率及び誘電正接を低くすることができ、かつ、HAST試験後の絶縁信頼性を高めることができる。本発明に係る樹脂材料では、ラジカル重合性化合物(A)と、中空無機粒子である中空アルミノシリケート粒子(B)と、硬化促進剤(C)とが組み合わせ用いられており、かつ、特定の第1の構成又は特定の第2の構成が備えられているので、上記の効果を発揮することができる。
【0032】
また、本発明に係る樹脂材料では、吸湿後のメッキピール強度の低下を抑えることができる。さらに、本発明に係る樹脂材料では、吸湿後の誘電正接の低下を抑えることができる。
【0033】
従って、本発明に係る樹脂材料は、これらの性能が求められる用途(例えばプリント配線板用途等)に好適に用いることができる。
【0034】
本発明に係る樹脂材料は、上記第1の構成を備えていてもよく、上記第2の構成を備えていてもよく、上記第1の構成と上記第2の構成とを備えていてもよい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点並びに吸湿後のメッキピール強度及び誘電正接の低下をより一層抑える観点からは、本発明に係る樹脂材料は、上記第1の構成と上記第2の構成とを備えることが好ましい。
【0035】
以下、上記第2の構成について、より詳細に説明する。
【0036】
樹脂材料を180℃で30分間加熱した後、200℃で60分間加熱して得られた樹脂材料の硬化物(1)を得る。より具体的には、厚み40μmの樹脂材料(樹脂フィルム)を180℃で30分間加熱した後、200℃で60分間加熱して、樹脂材料の硬化物(1)を得る。得られた樹脂材料の硬化物(1)を130℃及び85%RHで100時間静置して、樹脂材料の硬化物(2)を得る。樹脂材料の硬化物(1)の誘電正接と樹脂材料の硬化物(2)の誘電正接とをそれぞれ測定する。
【0037】
樹脂材料の硬化物(1)の誘電正接及び樹脂材料の硬化物(2)の誘電正接は、例えば、関東電子応用開発社製「空洞共振摂動法誘電率測定装置CP521」及びキーサイトテクノロジー社製「ネットワークアナライザーN5224A PNA」を用いて、空洞共振法で常温(23℃)及び周波数10GHzの条件で測定される。
【0038】
上記第2の構成を備える上記樹脂材料では、上記式(Df)で算出される誘電正接の変化率が225%以下である。上記式(Df)で算出される誘電正接の変化率は、好ましくは225%以下、より好ましくは200%以下、更に好ましくは180%以下、特に好ましくは150%以下である。上記誘電正接の変化率が上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0039】
上記誘電正接の変化率を効果的に小さくする方法としては、表面処理された中空アルミノシリケート粒子(B)を用いる方法、及びラジカル重合性化合物を用いる方法等が挙げられる。
【0040】
樹脂材料の硬化物(1)の誘電正接(Df1)は、好ましくは0.007以下、より好ましくは0.005以下、更に好ましくは0.003以下である。
【0041】
樹脂材料の硬化物(1)の誘電正接(Df1)は、樹脂材料の硬化物(2)の誘電正接(Df2)よりも、大きくてもよく、小さくてもよい。樹脂材料の硬化物(1)の誘電正接(Df1)は、樹脂材料の硬化物(2)の誘電正接(Df2)と同じであってもよい。ただし、通常、樹脂材料の硬化物(1)の誘電正接(Df1)は、樹脂材料の硬化物(2)の誘電正接(Df2)よりも小さい。
【0042】
本発明に係る樹脂材料は、樹脂組成物であってもよく、樹脂フィルムであってもよい。上記樹脂組成物は、流動性を有する。上記樹脂組成物は、ペースト状であってもよい。上記ペースト状には液状が含まれる。取扱性に優れることから、本発明に係る樹脂材料は、樹脂フィルムであることが好ましい。
【0043】
本発明に係る樹脂材料は、熱硬化性樹脂材料であることが好ましい。上記樹脂材料が樹脂フィルムである場合には、該樹脂フィルムは、熱硬化性樹脂フィルムであることが好ましい。
【0044】
なお、以下の説明において、「上記樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%」は、上記樹脂材料が溶剤を含む場合には、上記樹脂材料中の上記溶剤を除く成分100重量%を意味し、上記樹脂材料が溶剤を含まない場合には、上記樹脂材料100重量%を意味する。「上記樹脂材料中の中空アルミノシリケート粒子(B)及び溶剤を除く成分100重量%」は、上記樹脂材料が中空アルミノシリケート粒子(B)及び溶剤を含む場合には、上記樹脂材料中の上記中空アルミノシリケート粒子(B)及び上記溶剤を除く成分100重量%を意味する。「上記樹脂材料中の中空アルミノシリケート粒子(B)及び溶剤を除く成分100重量%」は、上記樹脂材料が中空アルミノシリケート粒子(B)を含みかつ溶剤を含まない場合には、上記樹脂材料中の上記中空アルミノシリケート粒子(B)を除く成分100重量%を意味する。
【0045】
以下、本発明に係る樹脂材料に用いられる各成分の詳細、及び本発明に係る樹脂材料の用途などを説明する。
【0046】
[ラジカル重合性化合物(A)]
上記樹脂材料は、ラジカル重合性化合物(ラジカル重合性化合物(A))を含む。ラジカル重合性化合物は、熱硬化性化合物であることが好ましい。ラジカル重合性化合物(A)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0047】
ラジカル重合性化合物(A)は、ラジカル重合性不飽和基を有することが好ましい。上記ラジカル重合性不飽和基としては、マレイミド基、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びスチリル基等が挙げられる。ラジカル重合性化合物(A)は、ラジカル重合性不飽和基を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0048】
ラジカル重合性化合物(A)は、マレイミド基、ビニル基、スチリル基、又はアリル基を有することが好ましく、マレイミド基、ビニル基、又はスチリル基を有することがより好ましい。ラジカル重合性化合物(A)は、マレイミド化合物、ビニル化合物、スチリル化合物又はアリル化合物であることが好ましく、マレイミド化合物、ビニル化合物又はスチリル化合物であることがより好ましい。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0049】
ラジカル重合性化合物(A)の分子量は、好ましくは100以上、より好ましくは200以上、更に好ましくは300以上、好ましくは20万以下、より好ましくは10万以下、更に好ましくは5万以下である。上記分子量が上記下限以上及び上記上限以下であると、絶縁層の形成時に流動性が高い樹脂材料が得られやすく、ラミネート性を良好にすることができる。また、ラミネート性を良好にすることができるので、硬化物のメッキピール強度をより一層高めることができる。
【0050】
ラジカル重合性化合物(A)の分子量は、ラジカル重合性化合物(A)が重合体ではない場合、及びラジカル重合性化合物(A)の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、ラジカル重合性化合物(A)が重合体である場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を意味する。
【0051】
上記第1の構成を備える上記樹脂材料では、上記樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、ラジカル重合性化合物(A)の含有量が、20重量%以上である。上記樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、ラジカル重合性化合物(A)の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは40重量%以上、好ましくは70重量%以下、より好ましくは65重量%以下である。ラジカル重合性化合物(A)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。また、ラミネート性をより一層良好にすることができる。さらに、粗化処理後の表面粗度をより一層小さくすることができ、またさらに、硬化物のメッキピール強度をより一層高めることもできる。
【0052】
上記樹脂材料中の中空アルミノシリケート粒子(B)及び溶剤を除く成分100重量%中、ラジカル重合性化合物(A)の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、好ましくは100重量%未満、より好ましくは98重量%以下である。ラジカル重合性化合物(A)の含有量が上記下限以上及び上記上限未満(又は上記上限以下)であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。また、ラミネート性をより一層良好にすることができる。さらに、粗化処理後の表面粗度をより一層小さくすることができ、またさらに、硬化物のメッキピール強度をより一層高めることもできる。
【0053】
以下、ラジカル重合性化合物(A)について、更に説明する。
【0054】
<マレイミド化合物>
ラジカル重合性化合物(A)は、マレイミド化合物を含むことが好ましい。ラジカル重合性化合物(A)である上記マレイミド化合物は、マレイミド基を1個有していてもよく、2個有していてもよく、2個以上有していてもよく、3個以上有していてもよく、4個以上有していてもよく、800個以下有していてもよく、500個以下有していてもよく
、300個以下有していてもよい。上記マレイミド化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0055】
樹脂材料の硬化性をより一層高くする観点からは、ラジカル重合性化合物(A)は、マレイミド基を2個以上有するマレイミド化合物を含むことが好ましい。
【0056】
上記マレイミド化合物は、脂肪族骨格又は脂環式骨格を有することが好ましく、脂肪族骨格と脂環式骨格とを有することがより好ましい。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。また、デスミア性及びメッキピール強度も良好にすることができる。
【0057】
上記脂肪族骨格としては、鎖状脂肪族骨格等が挙げられ、例えば、飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基等が挙げられる。上記脂肪族骨格は、炭素数4以上の脂肪族骨格であることが好ましい。炭素数4以上の脂肪族骨格が有する炭素数は、好ましくは5以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは7以上、好ましくは60以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは40以下である。上記脂肪族骨格としては、より具体的には、炭素数4以上60以下のアルキル基(好ましくは炭素数6以上40以下のアルキル基)等が挙げられる。上記マレイミド化合物は、上記脂肪族骨格を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0058】
上記脂環式骨格としては、モノシクロアルカン環、ビシクロアルカン環、トリシクロアルカン環、テトラシクロアルカン環、及びジシクロペンタジエン環等が挙げられる。上記マレイミド化合物は、上記脂環式骨格を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0059】
硬化物のガラス転移温度をより一層大きくする観点からは、上記マレイミド化合物は、芳香族骨格を有することが好ましい。
【0060】
上記芳香族骨格としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、クリセン環、トリフェニレン環、テトラフェン環、ピレン環、ペンタセン環、ピセン環及びペリレン環等が挙げられる。上記マレイミド化合物は、上記芳香族骨格を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0061】
上記マレイミド化合物は、ダイマージアミンに由来する骨格を有することが好ましい。ダイマージアミンに由来する骨格を有するマレイミド化合物(A)は脂肪族骨格及び脂環式骨格を有するため、該マレイミド化合物(A)を用いることにより、硬化物の誘電率及び誘電正接をより一層低くすることができる。
【0062】
上記ダイマージアミン(上記ダイマージアミンの市販品)としては、BASFジャパン社製「バーサミン551」(3,4-ビス(1-アミノヘプチル)-6-ヘキシル-5-(1-オクテニル)シクロヘキセン)、コグニクスジャパン社製「バーサミン552」(バーサミン551の水添物)、並びに、クローダジャパン社製「PRIAMINE1075」及び「PRIAMINE1074」等が挙げられる。上記ダイマージアミンは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0063】
上記マレイミド化合物は、ダイマージアミンに由来する骨格と、ダイマージアミン以外の第2のジアミン化合物に由来する骨格とを有することが好ましい。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0064】
上記第2のジアミン化合物としては、トリシクロデカンジアミン、ノルボルナンジアミ
ン、イソホロンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、1,4-ジアミノブタン、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,7-ジアミノヘプタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,5-ジアミノペンタン、1,8-ジアミノオクタン、1,3-ジアミノプロパン、1,11-ジアミノウンデカン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、2,7-ジアミノフルオレン、4,4’-エチレンジアニリン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)、及び4,4’-メチレンビス(2-エチル-6-メチルアニリン)等が挙げられる。上記第2のジアミン化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0065】
上記第2のジアミン化合物は、脂肪族骨格を有していてもよく、有していなくてもよい。上記第2のジアミン化合物は、脂環式骨格を有していてもよく、有していなくてもよい。上記第2のジアミン化合物は、芳香族骨格を有していてもよく、有していなくてもよい。
【0066】
上記第2のジアミン化合物は、ダイマージアミン以外の脂環式骨格を有するジアミン化合物を含むことが好ましい。上記マレイミド化合物は、ダイマージアミンに由来する骨格と、ダイマージアミン以外の脂環式骨格を有するジアミン化合物に由来する骨格とを有することが好ましい。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0067】
上記ダイマージアミン以外の脂環式骨格を有するジアミン化合物は、トリシクロデカンジアミン、ノルボルナンジアミン又はイソホロンジアミンであることが好ましい。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0068】
上記マレイミド化合物は、酸二無水物に由来する骨格を有することが好ましく、ジアミン化合物と酸二無水物との反応物に由来する骨格を有することがより好ましく、ダイマージアミンと酸二無水物との反応物に由来する骨格を有することが更に好ましい。
【0069】
上記酸二無水物としては、テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。上記テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’-パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルエーテル二無水物、及びビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルメタン二無水物等が挙げられる。上記酸二無水物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0070】
上記マレイミド化合物の分子量は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、更に好ましくは1000以上、好ましくは20万以下、より好ましくは10万以下、更に好ましくは5万以下である。上記分子量が上記下限以上及び上記上限以下であると、絶縁層の形成時に流動性が高い樹脂材料が得られやすく、ラミネート性を良好にすることができる。また、ラミネート性を良好にすることができるので、硬化物のメッキピール強度をより一層高めることができる。
【0071】
上記マレイミド化合物の分子量は、上記マレイミド化合物が重合体ではない場合、及び上記マレイミド化合物の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、上記マレイミド化合物が重合体である場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を意味する。
【0072】
上記マレイミド化合物の市販品としては、日本化薬社製「MIR-5000-60T」及び「MIR-3000-70MT」、DIC社製「NE-X-9470S」、Designer Molecules Inc.製「BMI-3000J」、「BMI-2500」、「BMI-1500」及び「BMI-689」、並びに、ケイ・アイ化成社製「BMI」、「BMI-70」及び「BMI-80」等が挙げられる。
【0073】
また、上記マレイミド化合物は、例えば、テトラカルボン酸二無水物等の酸二無水物と、ジアミン化合物とを反応させて反応物を得た後、該反応物と無水マレイン酸とを反応させて得ることもできる。
【0074】
上記樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、上記マレイミド化合物の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは15重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、更に好ましくは70重量%以下である。上記マレイミド化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。また、ラミネート性をより一層良好にすることができる。さらに、粗化処理後の表面粗度をより一層小さくすることができ、またさらに、硬化物のメッキピール強度をより一層高めることもできる。
【0075】
上記樹脂材料中の中空アルミノシリケート粒子(B)及び溶剤を除く成分100重量%中、上記マレイミド化合物の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、好ましくは100重量%未満、より好ましくは90重量%以下である。上記マレイミド化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限未満(又は上記上限以下)であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。また、ラミネート性をより一層良好にすることができる。さらに、粗化処理後の表面粗度をより一層小さくすることができ、またさらに、硬化物のメッキピール強度をより一層高めることもできる。
【0076】
<ビニル化合物>
ラジカル重合性化合物(A)は、ビニル化合物を含むことが好ましい。ラジカル重合性化合物(A)である上記ビニル化合物は、ビニル基を1個有していてもよく、2個有していてもよく、2個以上有していてもよく、3個以上有していてもよく、5個以上有していてもよく、800個以下有していてもよく、500個以下有していてもよく、300個以下有していてもよい。上記ビニル化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0077】
上記ビニル化合物としては、ジビニルベンジルエーテル化合物が挙げられる。
【0078】
上記樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、上記ビニル化合物の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。上記ビニル化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の誘電率及び誘電正接をより一層低くすることができ、また、硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることができる。
【0079】
<スチリル化合物>
ラジカル重合性化合物(A)は、スチリル化合物を含むことが好ましい。ラジカル重合性化合物(A)である上記スチリル化合物は、スチリル基を1個有していてもよく、2個有していてもよく、2個以上有していてもよく、3個以上有していてもよく、5個以上有していてもよく、800個以下有していてもよく、500個以下有していてもよく、300個以下有していてもよい。上記スチリル化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0080】
上記スチリル化合物の市販品としては、三菱ガス化学社製「OPE-2St」及び「OPE-1200」等が挙げられる。
【0081】
上記樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、上記スチリル化合物の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。上記スチリル化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の誘電率及び誘電正接をより一層低くすることができ、また、硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることができる。
【0082】
[中空アルミノシリケート粒子(B)]
上記樹脂材料は、中空アルミノシリケート粒子(中空アルミノシリケート粒子(B))を含む。中空アルミノシリケート粒子(B)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0083】
中空アルミノシリケート粒子(B)は、中空を有するアルミノシリケート粒子である。中空アルミノシリケート粒子(B)は、中空と、該中空を囲む外殻とを有する。上記外殻で囲まれた上記中空の個数は、1個であることが好ましいが、2個以上であってもよい。
【0084】
中空アルミノシリケート粒子(B)は、アルミノシリケートにより形成されている。より具体的には、中空アルミノシリケート粒子(B)の上記外殻は、アルミノシリケートにより形成されている。
【0085】
中空アルミノシリケート粒子(B)100重量%中、アルミノシリケートの含有量は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、更に好ましくは98重量%以上、特に好ましくは99重量%以上である。なお、中空アルミノシリケート粒子(B)100重量%中、アルミノシリケートの含有量は、100重量%以下であってもよく、100重量%未満であってもよく、99重量%以下であってもよい。
【0086】
中空アルミノシリケート粒子(B)の平均粒径は、好ましくは50nm以上、より好ましくは75nm以上、更に好ましくは100nm以上、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは2μm以下である。上記平均粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、エッチング後の表面粗度を小さくし、かつメッキピール強度を高くすることができ、また、絶縁層と金属層との密着性をより一層高めることができる。
【0087】
中空アルミノシリケート粒子(B)の平均粒径として、50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を
用いて測定可能である。なお、中空アルミノシリケート粒子(B)が凝集粒子の場合には、中空アルミノシリケート粒子(B)の平均粒径は、一次粒子径を意味する。
【0088】
中空アルミノシリケート粒子(B)の形状は特に限定されないが、中空アルミノシリケート粒子(B)は、球状であることが好ましい。この場合には、硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、更に硬化物と金属層との接着強度が効果的に高くなる。中空アルミノシリケート粒子(B)が球状である場合には、中空アルミノシリケート粒子(B)のアスペクト比は、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下である。
【0089】
中空アルミノシリケート粒子(B)の空孔率は、好ましくは20体積%以上、より好ましくは30体積%以上、更に好ましくは50体積%以上、好ましくは90体積%以下、より好ましくは85体積%以下、更に好ましくは80体積%以下である。上記空孔率が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂材料の硬化物の誘電率及び誘電正接をより一層低くすることができる。
【0090】
中空アルミノシリケート粒子(B)の内部に含まれる空孔の数(中空の数)が1個の場合の上記空孔率は以下のようにして算出することができる。透過電子顕微鏡(TEM)を用いて、中空アルミノシリケート粒子(B)を撮影する。得られた顕微鏡写真から、任意の中空アルミノシリケート粒子(B)50個の粒子径をそれぞれ測定し、その平均値を平均粒子径(X)とする。また、中空アルミノシリケート粒子(B)を半分に切断し、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて、切断された中空アルミノシリケート粒子(B)を撮影する。得られた顕微鏡写真から、任意の切断された中空アルミノシリケート粒子(B)50個の切断面の空洞部の直径を測定し、その平均値を空洞部の平均直径(Y)とする。下記式により、空孔率を算出する。
【0091】
空孔率(体積%)=(Y/X)×100
X:平均粒子径(X)
Y:空洞部の平均直径(Y)
【0092】
中空アルミノシリケート粒子(B)の内部に含まれる空孔の数(中空の数)が2個以上の場合の上記空孔率も、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて、中空アルミノシリケート粒子(B)の粒子径から求められる中空アルミノシリケート粒子(B)の体積と、空洞部の直径から求められる空洞部の体積とから求めることができる。
【0093】
中空アルミノシリケート粒子(B)は、表面処理された中空アルミノシリケート粒子であることが好ましく、カップリング剤により表面処理された中空アルミノシリケート粒子であることがより好ましい。中空アルミノシリケート粒子(B)が表面処理されていることにより、上記誘電正接の変化率をより一層小さくすることができ、また、HAST試験後の絶縁信頼性をより一層高めることができる。また、中空アルミノシリケート粒子(B)が表面処理されていることにより、粗化硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。また、中空アルミノシリケート粒子(B)が表面処理されていることにより、硬化物の表面により一層微細な配線を形成することができ、かつより一層良好な配線間絶縁信頼性及び層間絶縁信頼性を硬化物に付与することができる。
【0094】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、メタクリルシラン、アクリルシラン、フェニルアミノシラン、フェニルシラン、イミダゾールシラン、ビニルシラン、及びエポキシシラン等が挙げられる。
【0095】
中空アルミノシリケート粒子(B)は、シランカップリング剤により表面処理された中空アルミノシリケート粒子であることが好ましく、ビニルシラン、フェニルアミノシラン又はフェニルシランにより表面処理された中空アルミノシリケート粒子であることがより好ましい。この場合には、上記誘電正接の変化率をより一層小さくすることができ、また、HAST試験後の絶縁信頼性をより一層高めることができる。また、ラミネート性をより一層良好にすることができる。また、ラミネート性を良好にすることができるので、硬化物のメッキピール強度をより一層高めることができる。
【0096】
中空アルミノシリケート粒子(B)の市販品としては、太平洋セメント社製「セルスフィアーズ」及び「セルスフィアーズNF」等が挙げられる。
【0097】
上記樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、中空アルミノシリケート粒子(B)の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、好ましくは60重量%以下、より好ましくは55重量%以下である。中空アルミノシリケート粒子(B)の含有量が上記下限以上であると、樹脂材料の硬化物の誘電率及び誘電正接をより一層低くすることができる。中空アルミノシリケート粒子(B)の含有量が上記下限以上であると、熱寸法安定性を高め、硬化物の反りを効果的に抑えることができる。中空アルミノシリケート粒子(B)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくすることができ、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成することができる。さらに、この中空アルミノシリケート粒子(B)の含有量であれば、硬化物の熱膨張率を低くすることと同時に、スミア除去性を良好にすることも可能である。
【0098】
上記樹脂材料において、中空アルミノシリケート粒子(B)の含有量の、ラジカル重合性化合物(A)の含有量に対する重量比(中空アルミノシリケート粒子(B)の含有量/ラジカル重合性化合物(A)の含有量)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下である。上記重量比(中空アルミノシリケート粒子(B)の含有量/ラジカル重合性化合物(A)の含有量)が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0099】
[硬化促進剤(C)]
上記樹脂材料は、硬化促進剤(硬化促進剤(C))を含む。硬化促進剤(C)の使用により、硬化速度がより一層速くなる。樹脂材料を速やかに硬化させることで、硬化物における架橋構造が均一になるとともに、未反応の官能基数が減り、結果的に架橋密度が高くなる。また、硬化促進剤(C)の使用により、樹脂材料を比較的低い温度でも良好に硬化させることができる。硬化促進剤(C)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0100】
硬化促進剤(C)としては、イミダゾール化合物等のアニオン性硬化促進剤;アミン化合物等のカチオン性硬化促進剤;有機リン化合物及び有機金属化合物等のアニオン性及びカチオン性硬化促進剤以外の硬化促進剤;過酸化物等のラジカル性硬化促進剤等が挙げられる。
【0101】
上記イミダゾール化合物としては、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリ
メリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2-フェニル-4-メチル-5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0102】
上記アミン化合物としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、m-キシリレンジ(ジメチルアミン)、N,N’-ジメチルピペラジン、N-メチルピロリジン、N-メチルハイドロオキシピペリジン、m-キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、N-アミノエチルピペラジン、ポリオキシプロピレンポリアミン、及び4,4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。また、アミン化合物は、これらのアミン化合物の変性品であってもよい。
【0103】
上記有機リン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリベンジルホスフィン、ジフェニル(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、及びアルキルジアリールホスフィン等の有機ホスフィン化合物、並びに、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のホスホニウム塩化合物等が挙げられる。
【0104】
上記有機金属化合物としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)及びトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。
【0105】
上記過酸化物としては、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカボネート、モノパーオキシカーボネート、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ジベンジルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、及びケトンパーオキサイド等が挙げられる。
【0106】
硬化促進剤(C)は、アミン化合物、イミダゾール化合物、過酸化物又は有機リン化合物を含むことが好ましく、イミダゾール化合物又は過酸化物を含むことがより好ましい。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0107】
上記樹脂材料において、ラジカル重合性化合物(A)100重量部に対する、硬化促進剤(C)の含有量は、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。硬化促進剤(C)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0108】
[溶剤]
上記樹脂材料は、溶剤を含まないか又は含む。上記樹脂材料は、溶剤を含んでいてもよ
く、含んでいなくてもよい。上記溶剤の使用により、樹脂材料の粘度を好適な範囲に制御でき、樹脂材料の塗工性を高めることができる。また、上記溶剤は、中空アルミノシリケート粒子(B)を含むスラリーを得るために用いられてもよい。上記溶剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0109】
なお、上記樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%は、上記樹脂材料が溶剤を含む場合には、上記樹脂材料中の上記溶剤を除く成分100重量%を意味し、上記樹脂材料が溶剤を含まない場合には、上記樹脂材料100重量%を意味する。
【0110】
上記溶剤としては、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2-プロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、2-アセトキシ-1-メトキシプロパン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N-メチル-ピロリドン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン及び混合物であるナフサ等が挙げられる。
【0111】
上記溶剤の多くは、上記樹脂組成物をフィルム状に成形するときに除去されることが好ましい。従って、上記溶剤の沸点は、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。上記樹脂組成物中の上記溶剤の含有量は特に限定されない。上記樹脂組成物の塗工性などを考慮して、上記溶剤の含有量は適宜変更可能である。
【0112】
上記樹脂材料がBステージフィルムである場合には、上記Bステージフィルム100重量%中、上記溶剤の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
【0113】
[他の成分]
耐衝撃性、耐熱性、樹脂の相溶性及び作業性等の改善を目的として、上記樹脂材料は、上述した成分(ラジカル重合性化合物(A)、中空アルミノシリケート粒子(B)、硬化促進剤(C)及び溶剤)以外の他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、アニオン重合性化合物;アニオン重合性化合物の硬化剤;熱可塑性樹脂;有機充填材及び無機充填材等の充填材;レベリング剤;難燃剤;カップリング剤;着色剤;酸化防止剤;紫外線劣化防止剤;消泡剤;増粘剤;揺変性付与剤等が挙げられる。上記他の成分は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0114】
上記アニオン重合性化合物としては、エポキシ化合物、ラクトン化合物及び炭酸エステル化合物等が挙げられる。上記アニオン重合性化合物の硬化剤としては、活性エステル硬化剤、シアネート硬化剤、カルボジイミド硬化剤、フェノール硬化剤、チオール硬化剤及びアミン硬化剤等が挙げられる。
【0115】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリイミド樹脂、フェノキシ樹脂及びポリビニルアセタール樹脂等が挙げられる。
【0116】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、ビニルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
【0117】
上記充填材としては、中実シリカ、中空シリカ、中実有機粒子及び中空有機粒子等が挙げられる。
【0118】
上記樹脂材料は、ガラスクロスを含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。上記樹脂
材料は、ガラスクロスを含まないことが好ましい。上記樹脂材料は、プリプレグではないことが好ましい。
【0119】
(樹脂フィルム)
上述した樹脂組成物をフィルム状に成形することにより樹脂フィルム(Bステージ化物/Bステージフィルム)が得られる。上記樹脂材料は、樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムは、Bステージフィルムであることが好ましい。
【0120】
樹脂組成物をフィルム状に成形して、樹脂フィルムを得る方法としては、以下の方法が挙げられる。押出機を用いて、樹脂組成物を溶融混練し、押出した後、Tダイ又はサーキュラーダイ等により、フィルム状に成形する押出成形法。溶剤を含む樹脂組成物をキャスティングしてフィルム状に成形するキャスティング成形法。従来公知のその他のフィルム成形法。薄型化に対応可能であることから、押出成形法又はキャスティング成形法が好ましい。フィルムにはシートが含まれる。
【0121】
樹脂組成物をフィルム状に成形し、熱による硬化が進行し過ぎない程度に、例えば50℃~150℃で1分間~10分間加熱乾燥させることにより、Bステージフィルムである樹脂フィルムを得ることができる。
【0122】
上述のような乾燥工程により得ることができるフィルム状の樹脂組成物をBステージフィルムと称する。上記Bステージフィルムは、半硬化状態にある。半硬化物は、完全に硬化しておらず、硬化がさらに進行され得る。
【0123】
上記樹脂フィルムは、プリプレグでなくてもよい。上記樹脂フィルムがプリプレグではない場合には、ガラスクロス等に沿ってマイグレーションが生じなくなる。また、樹脂フィルムをラミネート又はプレキュアする際に、表面にガラスクロスに起因する凹凸が生じなくなる。
【0124】
上記樹脂フィルムは、金属箔又は基材フィルムと、該金属箔又は基材フィルムの表面に積層された樹脂フィルムとを備える積層フィルムの形態で用いることができる。上記金属箔は銅箔であることが好ましい。
【0125】
上記積層フィルムの上記基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルム等のオレフィン樹脂フィルム、並びにポリイミド樹脂フィルム等が挙げられる。上記基材フィルムの表面は、必要に応じて、離型処理されていてもよい。
【0126】
樹脂フィルムの硬化度をより一層均一に制御する観点からは、上記樹脂フィルムの厚さは、好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下である。上記樹脂フィルムを回路の絶縁層として用いる場合、上記樹脂フィルムにより形成された絶縁層の厚さは、回路を形成する導体層(金属層)の厚さ以上であることが好ましい。上記絶縁層の厚さは、好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下である。
【0127】
(樹脂材料の他の詳細)
上記樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、ラジカル重合性化合物(A)と中空アルミノシリケート粒子(B)との合計含有量は、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、好ましくは100重量%未満、より好ましくは99重量%以下である。上記合計含有量が上記下限以上及び上記上限未満(又は上記上限以下)であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0128】
上記樹脂材料を180℃で30分間加熱した後、200℃で60分間加熱して得られた樹脂材料の硬化物(1)の10GHzでの誘電率(Dk)は、好ましくは2.8以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.2以下である。
【0129】
樹脂材料の硬化物(1)の10GHzでの誘電率(Dk)は、以下のようにして測定することができる。樹脂材料を180℃で30分間加熱した後、200℃で60分間加熱して樹脂材料の硬化物(1)を得る。得られた硬化物(1)の誘電率(Dk)を、誘電率測定装置(例えば、関東電子応用開発社製「空洞共振摂動法誘電率測定装置CP521」)を用いて、空洞共振法で常温(23℃)及び周波数10GHzの条件で測定する。
【0130】
なお、上記樹脂材料を用いて多層基板等の部品等を製造する際には、180℃で30分間加熱した後、200℃で60分間加熱して硬化物を得てもよく、この加熱条件以外の加熱条件で樹脂材料を加熱して硬化物を得てもよい。
【0131】
上記樹脂材料は、様々な用途に用いることができる。上記樹脂材料は、例えば、半導体装置において半導体チップを埋め込むモールド樹脂を形成するために好適に用いられる。また、上記樹脂材料は、液晶ポリマー(LCP)の代替用途、ミリ波アンテナ用途、再配線層用途に好適に用いられる。上記樹脂材料は、上記用途に限られず、配線形成用途全般に好適に用いられる。
【0132】
上記樹脂材料は、接着材料として好適に用いられる。上記樹脂材料は、例えば、パワーオーバーレイパッケージ用接着材料、プリント配線基板用接着材料、フレキシブルプリント回路基板のカバーレイ用接着材料、半導体接合用接着材料として好適に用いられる。上記樹脂材料は、接着材料であることが好ましい。
【0133】
上記樹脂材料は、絶縁材料として好適に用いられる。上記樹脂材料は、プリント配線板において絶縁層を形成するために好適に用いられ、多層プリント配線板において絶縁層を形成するためにより好適に用いられる。上記樹脂材料は、絶縁材料であることが好ましく、層間絶縁材料であることがより好ましい。上記絶縁材料は、接着材料としての役割も備え得る。
【0134】
本発明に係る硬化物は、上述した樹脂材料が硬化された樹脂材料の硬化物である。本発明に係る硬化物は、樹脂材料の硬化物であって、該樹脂材料が上述した樹脂材料である。本発明に係る硬化物は、上述した樹脂材料を硬化させることにより得ることができる。本発明に係る硬化物を得る際の、上記樹脂材料の加熱条件は、樹脂材料が硬化する限り、特に限定されない。
【0135】
(積層構造体及び銅張積層板)
上記樹脂フィルムに対して、片面又は両面に金属層を表面に有する積層対象部材を積層することにより、積層構造体を得ることができる。上記積層構造体は、金属層を表面に有する積層対象部材と、上記金属層の表面上に積層された樹脂フィルムとを備え、上記樹脂フィルムが上述した樹脂材料である。上記樹脂フィルムと上記積層対象部材とを積層する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、平行平板プレス機又はロールラミネーター等の装置を用いて、加熱しながら又は加熱せずに加圧しながら、上記樹脂フィルムを、上記積層対象部材に積層可能である。
【0136】
上記金属層の材料は銅であることが好ましい。
【0137】
上記金属層を表面に有する積層対象部材は、銅箔等の金属箔であってもよい。
【0138】
上記樹脂材料は、銅張積層板を得るために好適に用いられる。上記銅張積層板の一例として、銅箔と、該銅箔の一方の表面に積層された樹脂フィルムとを備え、上記樹脂フィルムが上述した樹脂材料である、銅張積層板が挙げられる。
【0139】
上記銅張積層板の上記銅箔の厚さは特に限定されない。上記銅箔の厚さは、1μm以上100μm以下であることが好ましい。また、上記樹脂材料の硬化物と銅箔との接着強度を高めるために、上記銅箔は微細な凹凸を表面に有することが好ましい。凹凸の形成方法は特に限定されない。上記凹凸の形成方法としては、公知の薬液を用いた処理による形成方法、公知のプラズマ処理による形成方法、及び公知のUV処理による形成方法等が挙げられる。
【0140】
(絶縁層付き回路基板)
上記樹脂材料は、絶縁層付き回路基板を得るために好適に用いられる。上記絶縁層付き回路基板の一例として、回路基板と、該回路基板の表面上に配置された絶縁層とを備え、上記絶縁層が、上述した樹脂材料の硬化物である絶縁層付き回路基板が挙げられる。
【0141】
上記絶縁層付き回路基板において、上記絶縁層は、回路基板の回路が設けられた表面上に積層されていることが好ましい。上記絶縁層付き回路基板において、上記絶縁層の一部は、上記回路間に埋め込まれていることが好ましい。
【0142】
上記絶縁層付き回路基板は、従来公知の方法により得ることができる。
【0143】
(多層基板及び多層プリント配線板)
上記樹脂材料は、多層基板を得るために好適に用いられる。上記多層基板の一例として、回路基板と、該回路基板上に積層された絶縁層とを備える多層基板が挙げられる。上記多層基板の絶縁層が、上述した樹脂材料の硬化物である。上記絶縁層は、回路基板の回路(金属層)が設けられた表面上に積層されていることが好ましい。上記絶縁層の一部は、上記回路間に埋め込まれていることが好ましい。
【0144】
上記多層基板では、上記絶縁層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面が粗化処理されていることが好ましい。
【0145】
粗化処理方法は、従来公知の粗化処理方法を用いることができ、特に限定されない。上記絶縁層の表面は、粗化処理の前に膨潤処理されていてもよい。
【0146】
また、上記多層基板は、上記絶縁層の粗化処理された表面に積層された銅めっき層をさらに備えることが好ましい。
【0147】
上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された絶縁層と、該絶縁層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面に積層された銅箔とを備える多層基板が挙げられる。上記絶縁層が、銅箔と該銅箔の一方の表面に積層された樹脂フィルムとを備える銅張積層板を用いて、上記樹脂フィルムを硬化させることにより形成されていることが好ましい。さらに、上記銅箔はエッチング処理されており、銅回路であることが好ましい。
【0148】
上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された複数の絶縁層とを備える多層基板が挙げられる。上記回路基板上に配置された上記複数の絶縁層の内の少なくとも1層が、上記樹脂材料を用いて形成される。上記多層基板は、上記樹脂フ
ィルムを用いて形成されている上記絶縁層の少なくとも一方の表面に積層されている回路をさらに備えることが好ましい。
【0149】
上記樹脂材料は、多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために好適に用いられる。
【0150】
上記多層プリント配線板は、例えば、回路基板と、上記回路基板の表面上に配置された複数の絶縁層と、複数の上記絶縁層間に配置された金属層とを備える。上記多層プリント配線板では、上記絶縁層の内の少なくとも1層が、上述した樹脂材料の硬化物である。
【0151】
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂材料を用いた多層プリント配線板を模式的に示す断面図である。
【0152】
図1に示す多層プリント配線板11では、回路基板12の上面12aに、複数の絶縁層13~16が積層されている。絶縁層13~16は、硬化物層である。回路基板12の上面12aの一部の領域には、金属層17が形成されている。複数の絶縁層13~16のうち、回路基板12側とは反対の外側の表面に位置する絶縁層16以外の絶縁層13~15には、上面の一部の領域に金属層17が形成されている。金属層17は回路である。回路基板12と絶縁層13の間、及び積層された絶縁層13~16の各層間に、金属層17がそれぞれ配置されている。下方の金属層17と上方の金属層17とは、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続の内の少なくとも一方により互いに接続されている。
【0153】
多層プリント配線板11では、絶縁層13~16が、上記樹脂材料の硬化物により形成されている。本実施形態では、絶縁層13~16の表面が粗化処理されているので、絶縁層13~16の表面に図示しない微細な孔が形成されている。また、微細な孔の内部に金属層17が至っている。また、多層プリント配線板11では、金属層17の幅方向寸法(L)と、金属層17が形成されていない部分の幅方向寸法(S)とを小さくすることができる。また、多層プリント配線板11では、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続で接続されていない上方の金属層と下方の金属層との間に、良好な絶縁信頼性が付与されている。
【0154】
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0155】
以下の材料を用意した。
【0156】
(ラジカル重合性化合物(A))
マレイミド化合物(A1)(Designer Molecules Inc.製「BMI3000J」、重量平均分子量:3000)
マレイミド化合物(A2)(DIC社製「NE-X-9470S」)
マレイミド化合物(A3)(日本化薬社製「MIR-3000-70MT」)
オリゴフェニレンエーテル・スチレン化合物(スチリル化合物、三菱ガス化学社製「OPE-2St」)
【0157】
(アニオン重合性化合物)
エポキシ化合物(DIC社製「830」)
【0158】
(中空アルミノシリケート粒子(B))
中空アルミノシリケート粒子1(市販品(太平洋セメント社製「セルスフィアーズNF」粒子を下記の表面処理法Bに従って表面処理した粒子、ビニルシランによる表面処理物
、平均粒径:1μm、空孔率:75体積%)
中空アルミノシリケート粒子2(太平洋セメント社製「セルスフィアーズNF」、表面処理なし、平均粒径:1μm、空孔率:75体積%)
【0159】
(中空アルミノシリケート粒子に相当しない無機粒子)
中空シリカ粒子(下記の作製方法Bに従って作製した粒子を下記の表面処理法Bに従って表面処理した粒子、ビニルシランによる表面処理物、平均粒径:1μm、空孔率:50体積%)
中実シリカ粒子(アドマテックス社製「SC2050-HNF」、ビニルシランによる表面処理物、平均粒径:0.5μm)
【0160】
<作製方法B>
純水965.5gにEO-PO-EO型ブロックコポリマー(EO80-PO30-EO80,ADEKA社製「プルロニックF68」)4.5gを添加し溶解するまで撹拌した。得られた水溶液にn-ドデカン30gを加えた後、シャフトジェネレータ(IKA社製「T50 digital ULTRA TURRAX」)を用いて予備乳化を行った。次いで、高圧乳化機(エスエムテー社製「LAB2000」)を用いて圧力40MPaで3回乳化作業を行い、微細エマルションを得た。得られた微細エマルションに、希釈したケイ酸ソーダ水溶液(SiO濃度10質量%、NaO濃度3.6質量%)30gを2Mの塩酸とともにpHが2となるようにゆっくりと加え、25℃に保持しながらよく撹拌した。次いで、1Mの水酸化ナトリウム水溶液をpHが6となるようゆっくりと滴下し、オイルコア-シリカシェル粒子分散液を得た。
【0161】
得られたオイルコア-シリカシェル粒子分散液を70℃に加熱し、撹拌しながら1Mの水酸化ナトリウム水溶液をゆっくりと添加し、pHを9とした。次いで、希釈ケイ酸ソーダ水溶液を、pHが9前後で維持されるように0.5Mの塩酸とともに徐々に添加した。次いで、70℃で2日間保持した後、ゆっくりと室温まで冷却し、中空シリカ前駆体分散液を得た。
【0162】
得られた中空シリカ前駆体分散液を、0.45μmの孔径を有する親水性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製メンブレンフィルターを用いて加圧ろ過した(圧力0.28MPa)。ろ過後の中空シリカケーキを窒素雰囲気下にて、60℃で1時間及び400℃で4時間か焼(昇温速度5℃/min)し、有機成分を除去することにより中空シリカ前駆体を得た。得られた中空シリカ前駆体を800℃で4時間焼成(昇温速度5℃/min)し、中空シリカ粒子を得た。
【0163】
<表面処理法B>
作製方法Bで得られた中空無機粒子100重量部又は市販品(太平洋セメント社製「セルスフィアーズNF」)の中空無機粒子100重量部を、ヘンシェル型ミキサーに投入し、撹拌しながら100℃に加温した。撹拌中の中空無機粒子に、ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM-1003」)1重量部を噴霧した。噴霧完了してから10分後に、表面処理された中空無機粒子を回収した。
【0164】
(硬化促進剤(C))
過酸化物(日油社製「パーブチルP」)
イミダゾール化合物(2-フェニル-4-メチルイミダゾール、四国化成工業社製「2P4MZ」、アニオン性硬化促進剤)
【0165】
(実施例1~9及び比較例1~4)
下記の表1~3に示す成分を下記の表1~3に示す配合量(単位は固形分重量部)で配
合し、均一な溶液となるまで常温で撹拌し、樹脂材料を得た。
【0166】
樹脂フィルムの作製:
アプリケーターを用いて、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、東レ社製「XG284」、厚み25μm)の離型処理面上に得られた樹脂材料を塗工した後、100℃のギヤオーブン内で2分30秒間乾燥し、溶剤を揮発させた。このようにして、PETフィルム上に、厚さが40μmである樹脂フィルム(Bステージフィルム)が積層されている積層フィルム(PETフィルムと樹脂フィルムとの積層フィルム)を得た。
【0167】
(評価)
(1)樹脂材料の硬化物(1)の誘電正接(Df)及び誘電正接の変化率
得られた厚さ40μmの樹脂フィルムを180℃で30分間加熱して仮硬化させた後、200℃で60分間加熱して、樹脂材料の硬化物(1)を得た。得られた樹脂材料の硬化物(1)を、130℃及び85%RHで100時間静置して、樹脂材料の硬化物(2)を得た。樹脂材料の硬化物(1)を、幅2mm、長さ80mmの大きさに裁断して10枚を重ね合わせ、測定サンプルとした。同様に、樹脂材料の硬化物(2)を、幅2mm、長さ80mmの大きさに裁断して10枚を重ね合わせ、測定サンプルとした。関東電子応用開発社製「空洞共振摂動法誘電率測定装置CP521」及びキーサイトテクノロジー社製「ネットワークアナライザーN5224A PNA」を用いて、空洞共振法で常温(23℃)及び周波数10GHzにて、樹脂材料の硬化物(1)の誘電正接及び樹脂材料の硬化物(2)の誘電正接をそれぞれ測定した。
【0168】
樹脂材料の硬化物(1)の誘電正接と樹脂材料の硬化物(2)の誘電正接とから、下記式(Df)により、誘電正接の変化率を算出した。
【0169】
誘電正接の変化率(%)=(|Df1-Df2|/Df1)×100 ・・・(Df)
【0170】
Df1:樹脂材料の硬化物(1)の誘電正接
Df2:樹脂材料の硬化物(2)の誘電正接
【0171】
[樹脂材料の硬化物(1)の誘電正接(Df)の判定基準]
○○:樹脂材料の硬化物(1)の誘電正接が0.003以下
○:樹脂材料の硬化物(1)の誘電正接が0.003を超え0.005以下
△:樹脂材料の硬化物(1)の誘電正接が0.005を超え0.007以下
×:樹脂材料の硬化物(1)の誘電正接が0.007を超える
【0172】
[誘電正接の変化率の判定基準]
○:誘電正接の変化率が150%以下
△:誘電正接の変化率が150%を超え225%以下
×:誘電正接の変化率が225%を超える
【0173】
(2)樹脂材料の硬化物(1)の誘電率(Dk)
上記「(1)樹脂材料の硬化物(1)の誘電正接(Df)及び誘電正接の変化率」で得られた樹脂材料の硬化物(1)を、幅2mm、長さ80mmの大きさに裁断して10枚を重ね合わせ、測定サンプルとした。関東電子応用開発社製「空洞共振摂動法誘電率測定装置CP521」及びキーサイトテクノロジー社製「ネットワークアナライザーN5224A PNA」を用いて、空洞共振法で常温(23℃)及び周波数10GHzにて、樹脂材料の硬化物(1)の誘電率(Dk)を測定した。
【0174】
[樹脂材料の硬化物(1)の誘電率(Dk)の判定基準]
○○:樹脂材料の硬化物(1)の誘電率が2.2以下
○:樹脂材料の硬化物(1)の誘電率が2.2を超え2.5以下
△:樹脂材料の硬化物(1)の誘電率が2.5を超え2.8以下
×:樹脂材料の硬化物(1)の誘電率が2.8超える
【0175】
(3)HAST試験後の絶縁信頼性
所定のダンベル状の配線パターンを有する銅張積層板の両面を、MEC社製「CZ-8101」により表面処理(粗化処理)した。名機製作所社製「バッチ式真空ラミネーターMVLP-500-IIA」を用いて、粗化処理された銅張積層板の両面に、積層フィルムの樹脂フィルム(Bステージフィルム)側を銅張積層板上に重ねてラミネートして、積層構造体を得た。ラミネートの条件は、30秒減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃及び圧力0.7MPaでラミネートし、更にプレス圧力0.8MPa及びプレス温度100℃で60秒間プレスする条件とした。その後、PETフィルムを剥がし、180℃ギアオーブン内で30分間加熱し、樹脂フィルムを半硬化させた。このようにして、銅張積層板に樹脂フィルムの半硬化物が積層されている積層体を得た。
【0176】
粗化処理:
(a)膨潤処理:
60℃の膨潤液(スウェリングディップセキュリガントP、アトテックジャパン社製、水酸化ナトリウムを含む)に、得られた積層体を入れて、10分間揺動させた。その後、純水で洗浄した。
【0177】
(b)過マンガン酸塩処理:
80℃の過マンガン酸カリウム(コンセントレートコンパクトCP、アトテックジャパン社製、水酸化ナトリウムを含む)粗化液に、膨潤処理後の積層体を入れて、20分間揺動させた。次に、40℃の洗浄液(リダクションセキュリガントP、アトテックジャパン社製)により5分間洗浄した後、純水でさらに洗浄した。
【0178】
得られた粗化処理された積層体を、以下の手順で、無電解銅めっき及び電解銅めっき処理を行った。
【0179】
(c)無電解めっき処理:
粗化処理された積層体における樹脂フィルムの硬化物(硬化物Aと称する)の表面を、60℃のアルカリクリーナ(クリーナーセキュリガント902、アトテックジャパン社製)で5分間処理し、脱脂洗浄した。洗浄後、上記硬化物Aを25℃のプリディップ液(プリディップネオガントB、アトテックジャパン社製)で2分間処理した。その後、上記硬化物Aを40℃のアクチベーター液(アクチベーターネオガント834、アトテックジャパン社製)で5分間処理し、パラジウム触媒を付けた。次に、30℃の還元液(リデューサーネオガントWA、アトテックジャパン社製)により、硬化物Aを5分間処理した。
【0180】
次に、上記硬化物Aを化学銅液(アトテックジャパン社製「ベーシックプリントガントMSK-DK」、「カッパープリントガントMSK」、「スタビライザープリントガントMSK」、及び「リデューサーCu」)に入れ、無電解めっきをめっき厚さが1μm程度になるまで実施した。無電解めっき後に、残留している水素ガスを除去するため、120℃の温度で30分間アニールをかけ、粗化処理及び無電解めっき処理された硬化物Bを得た。無電解めっきの工程までのすべての工程は、ビーカースケールで処理液を2Lとし、硬化物を揺動させながら実施した。
【0181】
(d)電解めっき処理:
次に、電解めっき液として、硫酸銅溶液(和光純薬工業社製「硫酸銅五水和物」、和光純薬工業社製「硫酸」、アトテックジャパン社製「ベーシックレベラーカパラシド HL」、アトテックジャパン社製「補正剤カパラシド GS」)を用いて、0.6A/cmの電流を流し、電解めっきをめっき厚さが15μm程度になるまで実施した。
【0182】
(e)外層銅配線パターン形成:
次に、ドライフィルムレジスト(サンフォートUFG-155、旭化成イーマテリアルズ社製)を、熱ロールラミネーターにより電解めっきの上にラミネートした。内層のダンベル状銅パターンの一方の円形の上部に、樹脂フィルムを挟んで外層のダンベル型銅配線の一方の円形が配置されるように、パターンフォトマスクを用いて、コンタクトUV露光した。次いで、23℃の1重量%炭酸水素ナトリウム水溶液を用いてUV未露光部を溶解除去し、電解めっきを露出させた。露出した電解めっきをエッチングにより除去し、UV露光したドライフィルムレジストを23℃の1重量%水酸化ナトリウム水溶液にて剥離除去し、電解めっきを露出させ、200℃60分間で最終硬化を行った。
【0183】
このようにして得られた積層体に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)被覆された電線CをSn-Pb共晶はんだにより接続した。上記積層体の外部領域において、カッターナイフにより硬化物を削って内層の回路基板の表面を露出させた。回路基板の露出した表面に、PTFE被覆された電線DをSn-Pb共晶はんだにより接続した。
【0184】
電線Cと電線Dとを高加速寿命試験(HAST)装置に接続し、130℃及び85%RH環境下で直流電圧3.3Vを200時間印加した後の層内における抵抗値を測定した。
【0185】
[HAST試験後の絶縁信頼性の判定基準]
○:抵抗値が1×10Ω以上
△:抵抗値が1×10Ω以上1×10Ω未満
×:抵抗値が1×10Ω未満
【0186】
組成及び結果を下記の表1~3に示す。
【0187】
【表1】
【0188】
【表2】
【0189】
【表3】
【符号の説明】
【0190】
11…多層プリント配線板
12…回路基板
12a…上面
13~16…絶縁層
17…金属層
図1