(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092805
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】推定サーバ、情報処理システム、制御方法、および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/20 20180101AFI20240701BHJP
G16H 50/30 20180101ALI20240701BHJP
【FI】
G16H10/20
G16H50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208980
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】清水 都
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA03
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】オーラルケアのための行動の支援を効果的に行う。
【解決手段】推定サーバ(3)は、所定の質問事項に対する回答と、回答者がオーラルケアのための行動をとる可能性との相関関係を示す相関データ(111)を、予め記憶する記憶部(11)と、質問事項に対する対象者の回答のデータを取得するデータ取得部(101)と、相関データ(111)を用いて、対象者の回答に基づき、対象者がオーラルケアのための行動をとる可能性を推定する可能性推定部(102)と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の質問事項に対する回答と、回答者にオーラルケアのための行動の支援を行うことにより、当該回答者が前記オーラルケアのための行動をとる可能性との相関関係を示す相関データを、予め記憶する記憶部と、
前記質問事項に対する対象者の回答のデータを取得する取得部と、
前記相関データを用いて、前記対象者の回答に基づき、前記対象者がオーラルケアのための行動をとる可能性を推定する推定部と、を含む推定サーバ。
【請求項2】
前記相関データは、前記質問事項に対する回答と、前記回答者に前記支援を行うことにより、当該回答者が前記行動をとる可能性を定量的に示す評価値とを対応付けたデータである、請求項1に記載の推定サーバ。
【請求項3】
前記相関データは、前記質問事項に対する回答と、回答者に前記支援を行うことにより、当該回答者が前記行動をとる可能性との相関関係を機械学習して作成されたモデルである、請求項1に記載の推定サーバ。
【請求項4】
前記相関データに示される前記回答は、前記支援により前記行動を開始した前記回答者の割合と関連することが所定の検定により検証された回答である、請求項1から3までの何れか1項に記載の推定サーバ。
【請求項5】
前記記憶部は、前記行動の種類に対応付けられた前記相関データを予め記憶する、請求項1から3までの何れか1項に記載の推定サーバ。
【請求項6】
前記質問事項は、問診票に含まれる質問事項であり、前記回答者の身体の状況に関する質問事項、運動習慣に関する質問事項、および生活習慣に関する質問事項の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の推定サーバ。
【請求項7】
所定の質問事項に対する回答と、回答者にオーラルケアのための行動の支援を行うことにより、当該回答者が前記オーラルケアのための行動をとる可能性との相関関係を示す相関データを予め記憶する記憶装置と、
前記質問事項に対する対象者の回答の入力を受け付ける入力装置と、
前記相関データを用いて、前記対象者の回答に基づき、前記対象者がオーラルケアのための行動をとる可能性を推定する推定装置と、を含む情報処理システム。
【請求項8】
前記入力装置は、前記質問事項に対する対象者のグループの回答の入力を受け付け、かつ、
前記対象者のグループから、前記オーラルケアのための行動をとる可能性が高いと前記推定装置が推定した対象者を抽出する抽出装置をさらに含む、請求項7に記載の情報処理システム。
【請求項9】
請求項1に記載の推定サーバとしてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記取得部および前記推定部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【請求項10】
推定サーバの制御方法であって、
所定の質問事項に対する対象者の回答のデータを取得する取得ステップと、
前記質問事項に対する回答と、回答者にオーラルケアのための行動の支援を行うことにより、当該回答者が前記オーラルケアのための行動をとる可能性との相関関係を示す相関データを用いて、前記対象者の回答に基づき、前記対象者がオーラルケアのための行動をとる可能性を推定する推定ステップと、を含む推定サーバの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーラルケアのための行動支援に供する推定サーバ、情報処理システム、制御方法、および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
オーラルケアとは、むし歯、歯周病、あるいはオーラルフレイルの予防など、口内の衛生状態および口腔機能を維持するために行う口内ケア全般を意味する。また、オーラルケアのための行動とは、口内の衛生状態および口腔機能を維持するための行動全般を意味し、例えば、歯科を定期的に受診したり、歯科の保健指導の内容(適切なブラッシング方法、口内の自己観察、食生活の改善、禁煙など)を日常的に実行したりすることが挙げられる。
【0003】
オーラルケアは、ユーザの健康に直結する。そこで、オーラルケアのための行動を支援する各種のシステムが提案されている。例えば、特許文献1には、歯科の問診データ等を用いて、被指導者に適した口腔内ケア方法および歯科保健に係る情報を出力する歯科保健教育システムが開示されている。また、特許文献2には、ユーザの口腔および咽頭の領域に関する情報を用いて、例えばユーザの口腔ケアの実態に関する評価情報および改善提案の情報など、ユーザの健康寿命を延長するために有用な情報を提供する健康寿命延長の支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-312202号公報
【特許文献2】特開2022-024098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、オーラルケアのための行動をとるべき対象者に対し、オーラルケアのための行動の支援(例えば、歯科の受診勧奨、歯科の保健指導など)を行ったとしても、オーラルケアのための行動を自主的に開始する対象者は少ないとされている。
【0006】
本発明の一態様は、オーラルケアのための行動の支援を効果的に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る推定サーバは、所定の質問事項に対する回答と、回答者にオーラルケアのための行動の支援を行うことにより、当該回答者が前記オーラルケアのための行動をとる可能性との相関関係を示す相関データを、予め記憶する記憶部と、前記質問事項に対する対象者の回答のデータを取得する取得部と、前記相関データを用いて、前記対象者の回答に基づき、前記対象者がオーラルケアのための行動をとる可能性を推定する推定部と、を含む。
【0008】
本発明の別の態様に係る情報処理システムは、所定の質問事項に対する回答と、回答者にオーラルケアのための行動の支援を行うことにより、当該回答者が前記オーラルケアのための行動をとる可能性との相関関係を示す相関データを予め記憶する記憶装置と、前記質問事項に対する対象者の回答の入力を受け付ける入力装置と、前記相関データを用いて、前記対象者の回答に基づき、前記対象者がオーラルケアのための行動をとる可能性を推定する推定装置と、を含む。
【0009】
本発明のさらに別の態様に係る推定サーバの制御方法は、所定の質問事項に対する対象者の回答のデータを取得する取得ステップと、前記質問事項に対する回答と、回答者にオーラルケアのための行動の支援を行うことにより、当該回答者が前記オーラルケアのための行動をとる可能性との相関関係を示す相関データを用いて、前記対象者の回答に基づき、前記対象者がオーラルケアのための行動をとる可能性を推定する推定ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、オーラルケアのための行動の支援を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理システムにおける推定サーバの要部構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】上記情報処理システムの構成例を示す図である。
【
図3】一般的な問診票の一例を表形式で示す図である。
【
図4】上記推定サーバにおいて、オーラルケアのための行動をとる可能性を推定する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】上記推定サーバに記憶される相関データであって、分析の結果から作成された相関データを表形式で示す図である。
【
図6】本発明の別の実施形態に係る情報処理システムにおける推定サーバの要部構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】上記推定サーバに記憶される相関データであって、分析の結果から作成された相関データを表形式で示す図である。
【
図8】上記推定サーバにおいて、オーラルケアのための行動をとる可能性を推定する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】本発明のさらに別の実施形態に係る情報処理システムにおける推定サーバの要部構成の一例を示すブロック図である。
【
図10】上記推定サーバにおける学習部が相関モデルを生成する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各実施形態に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付記し、適宜その説明を省略する。
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について、
図1~
図5を参照して説明する。
【0014】
〔システム構成〕
図2は、本実施形態に係る情報処理システム1の構成例を示す図である。情報処理システム1は、オーラルケアのための行動の支援に寄与する機能を備えたシステムであり、図示のように、入力装置2、推定サーバ3、および抽出装置4を含む。各装置間は、インターネット等の通信ネットワークを介して通信可能に接続されている。
【0015】
入力装置2は、所定の質問事項に対する対象者の回答の入力を受け付ける。本実施形態では、上記所定の質問事項が、問診票MQに含まれる質問事項である例を説明するが、当該質問事項は、対象者の身体の状況、運動習慣、および生活習慣の少なくとも何れかについて問うものであればよい。よって、以下の説明における「問診票MQに含まれる質問事項」は、「所定の質問事項」と読み替えることができる。
【0016】
入力装置2は、1台であってもよいし、複数台であってもよい。入力装置2は例えばパーソナルコンピュータであり、例えばスマートフォンである。入力装置2に入力された回答のデータは、対象者のID(識別情報)と共に、ネットワークを介して推定サーバ3に送信される。対象者は、例えば自身の自宅等で質問事項に対する回答を入力することも可能である。なお、推定サーバ3への送信の方法は任意であり、例えばネットワークを介さずに送信する等の方法を採用してもよい。
【0017】
問診票MQは、対象者の身体の状況、運動習慣、および生活習慣の少なくとも何れかについて問うものである。これにより、対象者の身体の状況、運動習慣、および生活習慣の少なくとも何れかを加味した推定が可能になる。なお、推定の内容については後述する。
【0018】
問診票MQは、例えば健康診断に利用される問診票であってもよい。健康診断は種々の団体によって実施されているが、健康診断に利用される問診票MQに含まれる質問事項は大部分が共通である。したがって、種々の健康診断に利用される問診票MQに対し本実施形態の情報処理システム1を適用することができる。
【0019】
図3は、健康診断に利用される一般的な問診票MQの一例を表形式で示す図である。図示のように、問診票MQには、質問項目ごとに、問診番号と、質問事項の内容と、該質問事項に対する複数の回答の内容とが含まれている。また、上記複数の回答には回答番号がそれぞれ付されている。これにより、質問項目ごとに、問診番号と、対象者が選択した回答番号とを含む上記回答のデータが入力装置2から推定サーバ3に送信されることになる。
【0020】
なお、問診票MQには、対象者の氏名が含まれていてもよいし、該氏名と共に、或いは該氏名の代わりに、対象者を識別するためのバーコードが含まれていてもよい。また、入力装置2は、対象者の問診票MQを作業者が参照して、キーボード等の入力デバイスを用いて回答を入力してもよい。或いは、入力装置2は、質問事項の内容と、該質問事項に対する複数の回答の内容とを、有機EL(Electro luminescence)デバイス等の表示デバイスを介して表示し、上記複数の回答の何れかを対象者が上記入力デバイスを介して選択し、これを質問項目ごとに繰り返すことにより、問診票MQを自動的に作成する機能を有してもよい。
【0021】
推定サーバ3は、入力装置2から受信した対象者の回答のデータに基づき、上記対象者がオーラルケアのための行動をとる可能性を推定する。推定サーバ3は、推定結果のデータを抽出装置4に送信する。
【0022】
抽出装置4は、推定サーバ3から受信した推定結果のデータに基づき、上記可能性を有する対象者を抽出する。抽出装置4は、1台であってもよいし、複数台であってもよい。抽出した対象者に対し、歯科の受診勧奨、歯科の保健指導など、オーラルケアのための行動の支援が行われる。これにより、上記オーラルケアのための行動をとる可能性の高い対象者に限定して、上記行動の支援を効果的に行うことが可能になる。
【0023】
〔推定サーバの構成〕
図1は、推定サーバ3の要部構成の一例を示すブロック図である。図示のように、推定サーバ3は、推定サーバ3の各部を統括して制御する制御部10と、推定サーバ3が使用する各種データを記憶する記憶部11と、推定サーバ3が他の装置と通信するための通信部12とを備えている。通信部12は、入力装置2および抽出装置4との通信に用いられる。また、図示していないが、推定サーバ3は、推定サーバ3に対する各種データの入力を受け付ける入力部と、推定サーバ3が各種データを出力するための出力部とを備えていてもよい。
【0024】
制御部10には、データ取得部101(取得部)および可能性推定部102(推定部)が含まれている。また、記憶部11には、相関データ111が予め記憶されている。
【0025】
相関データ111は、問診票MQにおける質問事項に対する回答と、回答者に対しオーラルケアのための行動を支援することにより、上記回答者が上記オーラルケアのための行動を開始する可能性との相関関係を示す。なお、相関データ111の作成方法については後述する。
【0026】
データ取得部101は、入力装置2から通信部12を介して、対象者の回答のデータを取得する。データ取得部101は、取得したデータを可能性推定部102に送出する。
【0027】
可能性推定部102は、記憶部11の相関データ111を用いて、データ取得部101からの対象者の回答のデータに基づき、対象者がオーラルケアのための行動をとる可能性を推定する。可能性推定部102は、上記推定の結果を、通信部12を介して抽出装置4に送信する。
【0028】
〔処理の流れ(可能性の推定)〕
図4は、上記構成の推定サーバ3において、オーラルケアのための行動をとる可能性を推定する処理(制御方法)の一例を示すフローチャートである。
図4に示すように、まず、データ取得部101は、入力装置2から通信部12を介して対象者の回答のデータを取得する(S11、取得ステップ)。次に、可能性推定部102は、記憶部11の相関データ111を用いて、上記対象者の回答のデータに基づき、対象者がオーラルケアのための行動をとる可能性を推定する(S12、推定ステップ)。そして、可能性推定部102は、上記推定の結果を、通信部12を介して抽出装置4に送信する(S13)。その後、
図4の処理を終了する。
【0029】
〔相関データの作成方法〕
本願発明者は、問診票MQにおける質問事項に対する回答から、オーラルケアのための行動をとる可能性を推定できるのではないかと考えた。例えば、下記の何れかの場合を回答した回答者は、健康に対する志向が強いと考えられる。そして、健康に対する志向が強い回答者は、オーラルケアのための行動を支援することにより、オーラルケアのための行動をとる可能性が高いと考えられる。すなわち、下記の何れかの場合の回答と、上記行動をとる可能性との間には、相関があることが推測される。
【0030】
(1)20歳の時よりも体重が10kg以上増加していない場合(問診9)
(2)軽い運動を継続的に実施している場合(問診10)
(3)同年代の同性に比べて歩く速度が速い場合(問診12)
(4)就寝前の2時間以内に夕食をとる頻度は週3回未満である場合(問診15)
(5)朝昼夕の3食以外の間食/甘い飲み物をほとんど摂取しない場合(問診16)
(6)生活習慣の改善について、近いうちに改善するつもりであり、少しずつ始めているか、或いは、既に改善に取り組んでいる場合(問診21)
図5は、本願発明者の上記推測に基づいて作成された相関データ111を表形式で示す図である。
図5に示す相関データ111は、オーラルケアのための行動の種類に対応付けられた複数の相関データ111a・111bである。なお、複数の相関データ111a・111bを1つの相関データに統合してもよい。
【0031】
図5では、相関データ111aは、左から順に、問診番号、回答番号、定期的な歯科受診の可能性の項目が示されている。また、相関データ111bは、左から順に、問診番号、回答番号、歯科保健指導の内容の実施可能性の項目が示されている。そして、上記可能性が高い回答は、二重丸(◎)で示され、それ以外の回答は、空白で示されている。
【0032】
可能性推定部102は、上記オーラルケアのための行動の種類ごとに、
図5に示す相関データ111を用いて、上記可能性が高い回答が所定数以上である対象者が、オーラルケアのための行動をとる可能性が高い対象者であると推定する。これにより、当該対象者に限定して、上記行動の支援を行うことが可能になる。その結果、上記オーラルケアのための行動の支援を効果的に行うことが可能になる。
【0033】
また、
図5に示す相関データ111には、体重増加に関する質問事項である問診9と、身体活動に関する質問事項である問診10および問診12と、夕食時間に関する質問事項である問診15とが含まれている。従って、これらの質問事項の少なくとも1つが問診票MQに含まれていることにより、上記オーラルケアのための行動の支援を効果的に行うことが可能になる。
【0034】
さらに、
図5に示す相関データ111には、生活習慣の改善意向に関する質問事項である問診21が含まれている。従って、この質問事項が問診票MQにさらに含まれていることにより、上記オーラルケアのための行動の支援をさらに効果的に行うことが可能になる。
【0035】
また、
図5を参照すると、オーラルケアのための行動をとる可能性が、該行動の種類によって異なることが理解できる。このため、
図5に示すように、記憶部11は、上記行動の種類に対応付けられた複数の相関データ111a・111bを記憶することが望ましい。各相関データ111a・111bは、所定の質問事項に対する回答と、特定の種類の上記行動に対応する支援を回答者に行うことにより、当該回答者が上記特定の種類の行動をとる可能性との相関関係を示すデータである。
【0036】
これにより、可能性推定部102は、対象者が上記特定の種類の行動をとる可能性を推定することができる。従って、上記特定の種類の行動をとる可能性の高い対象者に限定して、上記特定の種類の行動に対応する支援を行うことが可能になる。その結果、適切な種類の上記支援を行うことが可能になる。
【0037】
(付記事項)
なお、問診票MQには様々な質問事項が含まれるが、その中でも特に、オーラルケアのための行動を開始した回答者の割合と関連することが所定の検定により検証された回答を、相関データ111に用いることが好ましい。これにより、相関データ111を用いて妥当な推定結果を得ることが期待できる。
【0038】
また、上記実施形態では、表形式で示される相関データ111を用いているが、これに限定されるものではない。例えば、相関データ111は、調査結果などから得られた回帰式で示されてもよいし、私的または公的な健康診断の結果などから得られた推定式で示されてもよいし、経験則から得られた推定式で示されてもよいし、ビッグデータなどを用いて機械学習を行うことにより得られた推定式で示されてもよい。
【0039】
また、入力装置2は、対象者のグループの上記質問事項に対する回答の入力を受け付けてもよい。そして、抽出装置4は、上記対象者のグループから、上記オーラルケアのための行動をとる可能性が高いと推定サーバ3が推定した対象者を抽出してもよい。この場合、上記グループに含まれる複数の対象者の問診票MQを一括で処理して、上記オーラルケアのための行動をとる可能性が高い対象者を抽出することができる。
【0040】
また、推定サーバ3は、制御部10を含む推定装置と、記憶部11を含む記憶装置とに、通信可能に分離してもよい。また、推定サーバ3の機能が入力装置2または抽出装置4に組み込まれてもよいし、入力装置2および抽出装置4が一体であってもよい。これらの場合でも、本実施形態の情報処理システム1と同様の効果を奏することができる。
【0041】
また、上記実施形態では、歯科の定期的な受診と、歯科の保健指導の内容の実施とについて説明しているが、オーラルケアのためのその他の行動についても適用できることは言うまでもない。また、種々の問診票MQにおける質問事項は、内容が多少異なっていても概念的に同じであれば、同じ質問事項として扱うことが望ましい。
【0042】
〔実施形態2〕
本発明の別の実施形態について、
図6~
図8を参照して説明する。本実施形態の情報処理システム1は、
図1~
図5に示す情報処理システム1に比べて、推定サーバ3の構成が異なり、その他の構成は同様である。
【0043】
図6は、本実施形態の推定サーバ3の要部構成の一例を示すブロック図である。
図6に示す推定サーバ3は、
図1に示す推定サーバ3に比べて、記憶部11が相関データ111に代えて相関データ112を記憶する点と、制御部10が可能性推定部102に代えて評価値算出部103(推定部)および可能性推定部104(推定部)を含む点とが異なり、その他の構成は同様である。
【0044】
本実施形態の推定サーバ3は、対象者がオーラルケアのための行動をとる可能性を、該可能性を定量的に示す評価値を用いて推定する。該評価値は、回答毎に設定される。
【0045】
図7は、本実施形態の相関データ112を表形式で示す図である。
図7示す相関データ112は、
図5に示す相関データ111に比べて、オーラルケアのための行動をとる可能性が4段階(0~3)の評価値で定量的に示されている点が異なり、その他は同様である。
【0046】
図7の例では、上記可能性が高い回答は、評価値が3であり、二重丸(◎)で示される。また、上記可能性が中程度である回答は、評価値が2であり、丸(○)で示される。また、上記可能性が低い回答は、評価値が1であり、三角形(△)で示される。なお、上記可能性が無い回答は、評価値が0であり、空欄で示される。
【0047】
図7に示すように、本実施形態の相関データ112は、上記可能性を有する回答に対して4段階の評価値が付与されるので、より多種多様な回答から上記可能性を推定することができる。また、オーラルケアのための行動の種類ごとに相関データ112a・112bを作成しているので、上記種類ごとに、上記可能性を有する回答の問診番号および回答番号を設定することができる。従って、上記種類に応じた上記可能性を推定することができる。なお、評価値は、3段階(0~2)であってもよいし、5段階以上(0~k、kは4以上の整数)であってもよい。
【0048】
評価値算出部103は、上記オーラルケアのための行動の種類ごとに、
図7に示す相関データ112を用いて、データ取得部101からの対象者の複数の回答に対応する評価値を積算することにより、対象者の評価値を算出する。評価値算出部103は、算出した対象者の評価値を可能性推定部104に送出する。
【0049】
可能性推定部104は、評価値算出部103からの対象者の評価値に基づき、上記オーラルケアのための行動をとる可能性を該行動の種類ごとに推定する。具体的には、可能性推定部104は、対象者の評価値が基準値(例えば15)以上であれば、上記可能性が高いと推定する。可能性推定部104は、上記推定の結果を、通信部12を介して抽出装置4に送信する。
【0050】
〔処理の流れ(使用可能性の推定)〕
図8は、上記構成の推定サーバ3において、オーラルケアのための行動をとる可能性を推定する処理の一例を示すフローチャートである。
図8に示すように、まず、データ取得部101は、入力装置2から通信部12を介して対象者の回答のデータを取得する(S21)。
【0051】
次に、評価値算出部103は、上記オーラルケアのための行動の種類ごとに、記憶部11の相関データ112を用いて、上記対象者の複数の回答に対応する評価値を積算することにより、対象者の評価値を算出する(S22)。次に、可能性推定部104は、上記種類ごとに、上記対象者の評価値に基づき、対象者が上記オーラルケアのための行動をとる可能性を推定する(S23)。そして、可能性推定部104は、上記種類ごとに、上記推定の結果を、通信部12を介して抽出装置4に送信する(S24)。その後、
図8の処理を終了する。
【0052】
〔実施形態3〕
本発明のさらに別の実施形態について、
図9・
図10を参照して説明する。本実施形態の情報処理システム1は、
図1~
図5に示す情報処理システム1に比べて、推定サーバ3の構成が異なり、その他の構成は同様である。
【0053】
図9は、本実施形態の推定サーバ3の要部構成の一例を示すブロック図である。
図9に示す推定サーバ3は、
図1に示す推定サーバ3に比べて、記憶部11が相関データ111に代えて相関モデル113(相関データ)および教師データ114を記憶する点と、制御部10が教師データ取得部105および学習部106をさらに含む点とが異なり、その他の構成は同様である。
【0054】
教師データ取得部105は、相関モデル113の生成または更新に用いる教師データ114を取得する。より詳細には、教師データ取得部105は、問診票MQに対する回答内容を示す情報と、回答後に上記回答者に行われたオーラルケアのための行動の支援によりオーラルケアのための行動を行っているか、との問合せに対する回答内容を示す情報とを対応付けて教師データ114を生成する。教師データ114の情報は、例えば推定サーバ3のユーザが推定サーバ3に入力してもよいし、教師データ114の情報を格納している記憶装置にデータ取得部101がアクセスして当該記憶装置から取得してもよい。
【0055】
学習部106は、教師データ114を用いた機械学習により、相関モデル113を生成する。相関モデル113は、問診票MQにおける質問事項およびその回答と、オーラルケアのための行動をとる可能性との相関関係に基づくモデルである。これにより、機械学習結果に基づく高精度の推定が可能になる。
【0056】
なお、学習部106は、相関モデル113の生成後に新たな教師データ114が追加された場合に、追加された教師データ114を用いて相関モデル113を更新することが望ましい。これにより、相関モデル113の推定精度を維持または向上させることができる。
【0057】
〔処理の流れ(相関モデルの生成方法)〕
図10は、学習部106が相関モデル113を生成する処理(相関モデルの生成方法)の一例を示すフローチャートである。なお、
図10では、教師データ114が、記憶部11に記憶されている状態における処理を示している。
【0058】
図10に示すように、学習部106は、まず、記憶部11に記憶された教師データ114を取得する(S31)。次に、学習部106は、取得した教師データ114を用いて相関モデル113を生成する(S32)。そして、学習部106は、生成した相関モデル113を記憶部11に記憶させる(S33)。その後、
図10の処理を終了する。
【0059】
(付記事項)
上記実施形態の情報処理システム1によれば、オーラルケアのための行動の支援を効果的に行うことができるので、オーラルケアのための行動をとる人々を効果的に増加することができる。このような効果は、例えば、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の目標3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」等の達成にも貢献するものである。
【0060】
〔ソフトウェアによる実現例〕
推定サーバ3(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部10に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラム(制御プログラム)により実現することができる。
【0061】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0062】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0063】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0064】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0065】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0066】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る推定サーバは、所定の質問事項に対する回答と、回答者にオーラルケアのための行動の支援を行うことにより、当該回答者が前記オーラルケアのための行動をとる可能性との相関関係を示す相関データを、予め記憶する記憶部と、前記質問事項に対する対象者の回答のデータを取得する取得部と、前記相関データを用いて、前記対象者の回答に基づき、前記対象者がオーラルケアのための行動をとる可能性を推定する推定部と、を含む。
【0067】
上記の構成によると、相関データを用いて、質問事項に対する対象者の回答に基づき、上記対象者がオーラルケアのための行動をとる可能性を推定する。これにより、上記オーラルケアのための行動をとる可能性の高い対象者に限定して、上記行動の支援を効果的に行うことが可能になる。
【0068】
本発明の態様2に係る推定サーバでは、上記態様1において、前記相関データは、前記質問事項に対する回答と、前記回答者に前記支援を行うことにより、当該回答者が前記行動をとる可能性を定量的に示す評価値とを対応付けたデータであってもよい。この場合、より多種多様な回答から上記可能性を推定することができる。
【0069】
本発明の態様3に係る推定サーバでは、上記態様1において、前記相関データは、前記質問事項に対する回答と、回答者に前記支援を行うことにより、当該回答者が前記行動をとる可能性との相関関係を機械学習して作成されたモデルであってもよい。この場合、機械学習結果に基づく高精度の推定が可能になる。
【0070】
本発明の態様4に係る推定サーバでは、上記態様1から3の何れかにおいて、前記相関データに示される前記回答は、前記支援により前記行動を開始した前記回答者の割合と関連することが所定の検定により検証された回答であってもよい。
【0071】
本発明の態様5に係る推定サーバでは、上記態様1~4の何れかにおいて、前記記憶部は、前記行動の種類に対応付けられた前記相関データを予め記憶してもよい。この場合、特定の種類のオーラルケアのための行動をとる可能性の高い対象者に限定して、上記特定の種類のオーラルケアのための行動を支援することが可能になる。その結果、適切な種類の支援を提供することが可能になる。
【0072】
本発明の態様6に係る推定サーバでは、上記態様1~5の何れかにおいて、前記質問事項は、問診票に含まれる質問事項であり、前記回答者の身体の状況に関する質問事項、運動習慣に関する質問事項、および生活習慣に関する質問事項の少なくとも1つを含んでもよい。この場合、対象者の身体の状況、運動習慣、および生活習慣の少なくとも何れかを加味した推定が可能になる。
【0073】
本発明の態様7に係る情報処理システムは、所定の質問事項に対する回答と、回答者にオーラルケアのための行動の支援を行うことにより、当該回答者が前記オーラルケアのための行動をとる可能性との相関関係を示す相関データを予め記憶する記憶装置と、前記質問事項に対する対象者の回答の入力を受け付ける入力装置と、前記相関データを用いて、前記対象者の回答に基づき、前記対象者がオーラルケアのための行動をとる可能性を推定する推定装置と、を含む。これにより、上記態様1の推定サーバと同様の効果を奏する。
【0074】
本発明の態様8に係る情報処理システムでは、上記態様7において、前記入力装置は、前記質問事項に対する対象者のグループの回答の入力を受け付け、かつ、前記対象者のグループから、前記オーラルケアのための行動をとる可能性が高いと前記推定装置が推定した対象者を抽出する抽出装置をさらに含んでもよい。この場合、上記グループに含まれる複数の対象者の回答を一括で処理して、上記オーラルケアのための行動をとる可能性が高い対象者を抽出することができる。
【0075】
本発明の態様9に係る推定サーバの制御方法は、所定の質問事項に対する対象者の回答のデータを取得する取得ステップと、前記質問事項に対する回答と、回答者にオーラルケアのための行動の支援を行うことにより、当該回答者が前記オーラルケアのための行動をとる可能性との相関関係を示す相関データを用いて、前記対象者の回答に基づき、前記対象者がオーラルケアのための行動をとる可能性を推定する推定ステップと、を含む。これにより、上記態様1の推定サーバと同様の効果を奏する。
【0076】
本発明の各態様に係る推定サーバは、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記推定サーバが備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記推定サーバをコンピュータにて実現させる推定サーバの制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【符号の説明】
【0077】
1 情報処理システム
2 入力装置
3 推定サーバ
4 抽出装置
10 制御部(推定装置)
11 記憶部(記憶装置)
12 通信部
101 データ取得部(取得部)
102 可能性推定部(推定部)
103 評価値算出部(推定部)
104 可能性推定部(推定部)
105 教師データ取得部
106 学習部
111、112 相関データ
113 相関モデル
114 教師データ