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特開2024-92814シュードモナス(Pseudomonas)属に属する細菌、組成物、および植物病害の防除方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092814
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】シュードモナス(Pseudomonas)属に属する細菌、組成物、および植物病害の防除方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20240701BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240701BHJP
   A01N 63/27 20200101ALI20240701BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C12N1/20 A
A01P3/00 ZNA
A01N63/27
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208990
(22)【出願日】2022-12-26
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】塚本 浩史
(72)【発明者】
【氏名】古賀 一治
(72)【発明者】
【氏名】難波 成任
【テーマコード(参考)】
4B065
4H011
【Fターム(参考)】
4B065AA41X
4B065AC20
4B065CA47
4H011AA01
4H011AA03
4H011BB21
(57)【要約】
【課題】Ralstonia solanacearumによる植物病害を防除する新規の細菌を提供する。
【解決手段】シュードモナス(Pseudomonas)属に属する細菌(NITE BP-03784(菌株#21)又はNITE BP-03786(菌株#117))である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュードモナス(Pseudomonas)属に属する細菌(NITE BP-03784(菌株#21)又はNITE BP-03786(菌株#117))。
【請求項2】
請求項1に記載の細菌の少なくとも一方を含む組成物。
【請求項3】
Ralstonia solanacearumを病原とするナス科植物病害の防除用である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ナス科植物はタバコである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の細菌を、ナス科植物の植物体、またはナス科植物の栽培土壌もしくは水耕栽培用培地に存在させることを含む、Ralstonia solanacearumを病原とするナス科植物病害の防除方法。
【請求項6】
前記ナス科植物はタバコである、請求項5に記載の防除方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シュードモナス(Pseudomonas)属に属する細菌、組成物、およびナス科植物病害の防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Ralstonia solanacearum (syn. Pseudomonas solanacearum)(以下、「Ralstonia solanacearum」)によって引き起こされる、トマト、タバコ、バレイショ、ナスなどのナス科植物や、バナナ、ショウガ、クワなどで発生する植物病害(青枯病)は、難防除の土壌伝染性病害として知られている。通常、Ralstonia solanacearumは、土壌中に棲息し、感染した宿主体の萎凋や褐変等の症状を引き起こす。Ralstonia solanacearumの感染の作用機序としては、宿主の根部表面へ付着した後、宿主体表面の傷口や自然開口部などを経由し、宿主体内に侵入する。Ralstonia solanacearumは、宿主体内においてバイオフィルム形成後、維管束組織を通じ、宿主体全身に移行する。Ralstonia solanacearumは菌体外多糖を生産し、これが導管部を閉塞することで、植物体が萎凋し、最終的には枯死に至る。特に商業用に葉を利用するタバコの場合は、葉が枯死し収穫効率が低下することによる産業被害が大きい。当該病原菌の防除方法として、現在は、化学合成農薬による防除が主体となっている。しかしながら、化学合成農薬の使用は使用者及び周辺環境への影響が懸念される他、連用による葉タバコの品質低下を引き起こす恐れがある。
【0003】
化学合成農薬非依存的な手法として、生物学的防除法が知られている。例えば、特許文献1~3にはRalstonia solanacearumによる植物病害を防除する生物学的防除法として、シュードモナス(Pseudomonas)属に属する細菌を用いる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-197754号公報
【特許文献2】特開平8-245328号公報
【特許文献3】特開平10-004954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、生物学的防除法に用いられる細菌の探索は十分とはいえず、生物学的防除に用いることができる細菌のさらなる探索が望まれる。
本発明の一態様は、Ralstonia solanacearumによる植物病害を防除する新規の細菌を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る細菌は、シュードモナス(Pseudomonas)属に属する細菌(NITE BP-03784(菌株#21)又はNITE BP-03786(菌株#117))である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、Ralstonia solanacearumによる植物病害を防除する新規の細菌を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】処理スキームを示す図である。
図2】#181130由来土壌から得た7菌株の混合液をタバコ苗に処理した試験の結果を示す図である。
図3】7菌株混合液による圃場でのタバコ苗処理試験によるRalstonia solanacearumによる植物病害(タバコ立枯病)の防除効果を示す図である。
図4】7菌株を単独で用いた処理試験による発病指数の比較を示す図である。
図5】菌株を組み合わせて用いた処理試験による発病指数の比較を示す図である。
図6】菌株#21の細菌と類縁の系統を示す図である。
図7】菌株#117の細菌と類縁の系統を示す図である。
図8】既知Pseudomonas属細菌F89R1と菌株#21、#117、および#21/#117混合と、のタバコ立枯病防除効果を比較した結果を示す図である。
図9】既知Pseudomonas属細菌F89R1と菌株#21、#117、および#21/#117混合と、のタバコ立枯病防除効果を比較した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔定義〕
「Ralstonia solanacearum」とは、ナス科植物の土壌伝染性の植物病害を引き起こす病原菌である。例えば、Ralstonia solanacearumが引き起こす植物病害として、ナス科植物の青枯病(Bacterial wilt)、およびタバコ属植物のタバコ立枯病(Tobacco bacterial wilt、Granville wilt)が挙げられる。
【0010】
「ナス科植物」とはナス目(Solanales)の一科であり、タバコ属植物はナス科に属する植物である。タバコ属のような嗜好料作物の他、香辛料や食用作物として用いられることの多いトウガラシ属、ナス属、トマト属、観賞用植物として用いられることの多いペチュニア属やホオズキ属が存在しており、商業作物としての利用性の高い有用植物が多く属している。
【0011】
「タバコ」とは、多くはナス科に属するタバコ属植物であり、商業種としては主にNicotiana tabacum(ニコチアナ・タバカム)とNicotiana rustica(ニコチアナ・ルスチカ)が大規模栽培されている。本明細書においては、「タバコ植物」とする場合は、単にナス科に属するタバコ属植物を指すが、典型的な例としてはNicotiana tabacum(ニコチアナ・タバカム)が挙げられる。
【0012】
「植物病害の防除効果」とは、植物が病原に感染した際の、発病を防ぐ、もしくは発病を抑制させる、または植物病害の進行を遅らせるという効果を指す。
【0013】
〔シュードモナス属に属する細菌〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0014】
本発明の一実施形態はシュードモナス(Pseudomonas)属に属する細菌(NITE BP-03784(菌株#21)又はNITE BP-03786(菌株#117))である。
菌株#21の細菌はその16S rRNA遺伝子配列が配列番号1の塩基配列であるシュードモナス属の細菌である。ANI法およびGGDC法を含むDigital DNA-DNAハイブリダイゼーション分析の結果、新種の細菌であると同定された。
【0015】
菌株#117の細菌はその16S rRNA遺伝子配列が配列番号2の塩基配列であるシュードモナス属の細菌である。ANI法およびGGDC法を含むDigital DNA-DNAハイブリダイゼーション分析の結果、新種の細菌であると同定された。
【0016】
菌株#21および菌株#117の細菌は、少なくとも一方を用いてもよいし、両方同時に用いてもよい。菌株#21および菌株#117の少なくとも一方を植物体に適用する際の形態、および調製方法等は特に限定されない。例えば、菌株を含む懸濁液を植物体に適用する場合、所定の生菌濃度まで前記菌株を増殖させた培養液を用いてもよく、前記培養液を所定の生菌濃度になるよう任意の液体で調製してもよく、もしくは固体培地上で培養した菌体を任意の液体に分散させ調製してもよい。菌株#21および菌株#117は、特別な培地を準備する必要はなく、YP液体培地、PS液体培地、TS液体培地のような培地を用いて、振盪培養および通気培養などの好気的条件下で増殖することができる。培養液のpHは6.0~8.0であってもよく、培養期間は1~5日であってもよいが、用いる菌株の細菌が増殖できる範囲であれば特に限定されない。培養温度は菌株に応じて、好ましい温度を設定すればよい。例えば、菌株#21の場合、培養温度は10~45℃であってもよく、25℃~35℃であることが好ましい。また、菌株#117の場合、培養温度は15~40℃であってもよく、25~35℃であることが好ましい。使用時の生菌の濃度は、10~1010/mlであってもよく、10~10/mlであることが好ましい。
【0017】
(菌株#21および#117の細菌の効果)
菌株#21および#117の細菌を植物に適用することにより、Ralstonia solanacearumを病原とするナス科植物病害の防除効果が得られる。防除効果の程度は特に限定されず、菌株#21および#117の少なくとも一方によって植物を処理しない場合と比較して、優れていればよい。防除効果は、菌株#21および#117の少なくとも一方によって処理されたナス科植物と、無処理のナス科植物と、を、Ralstonia solanacearumにより汚染された土壌で一定期間育成し、各処理区の植物のRalstonia solanacearumによる植物病害の発病株率を比較することで、評価してもよい。
【0018】
菌株#21および#117の細菌は、圃場で植物に適用される場合においてもナス科植物立枯病防除効果を有しており、灌水を行わない場合であっても、その効果を得ることができる。
【0019】
Ralstonia solanacearumの生物学的防除法として、上述の先行技術文献1~3のように、シュードモナス属にはRalstonia solanacearumによる植物病害の防除の観点において有用とされている細菌も知られている。しかしながら、シュードモナス属に分類される細菌は膨大であり、その利用が植物への病原性等の影響から好ましくないと判断される細菌も多い。このような状況下、任意のシュードモナス属の細菌について、特定の目的において適用の可否を判断するためには、その都度の検討が必要である。
【0020】
特に、本発明の一実施形態に係る菌株#21および#117の細菌はシュードモナス属に属する新種であり、Ralstonia solanacearumに対する効果はいかなる先行技術を参照しても不明であった。しかし、発明者らの鋭意研究の結果、菌株#21および#117がRalstonia solanacearumによる植物病害の防除に好適に利用できることが判明した。
【0021】
〔組成物〕
本発明の一実施形態は、上述の細菌を含む組成物である。この構成により、Ralstonia solanacearumによる植物病害の防除効果を有する組成物を提供できる。
【0022】
上述の組成物はRalstonia solanacearumを病原とするナス科植物病害の防除用であってもよい。このような構成の組成物であれば、上述の細菌を含む組成物であれば、上述の細菌の作用により、Ralstonia solanacearumを病原とする植物病害に対して優れた防除効果を奏する。
【0023】
特に、本実施形態の組成物が適用されるナス科植物は、タバコであってもよい。ここで、組成物の適用とは、対象に対して組成物を任意の方法で使用することが挙げられ、例えば、対象を組成物によって任意の方法で処理してもよい。特に、タバコに適用される場合は、タバコ植物自体、またはタバコ植物の栽培土壌もしくは水耕栽培用培地を組成物によって処理してもよい。
【0024】
このような構成の組成物であれば、菌株#21および#117の少なくとも一方の細菌の作用により、Ralstonia solanacearumを病原とするタバコ立枯病に対して優れた防除効果を発揮する。
【0025】
組成物は植物体、または植物の栽培土壌もしくは水耕栽培用培地に適用できるものであれば、特に限定されず、液状の組成物、または固形の組成物であってもよい。組成物は細菌の他に、細菌を担持する任意の液体担体または固体担体を含んでもよい。液体担体または固体担体は、微生物の担体として従来公知のものを用いてもよい。さらに、任意の成分を含んでもよく、例えば、増量剤、安定剤、細菌の栄養源、およびpH調整剤などを組成物に適宜に加えてもよい。また、組成物は肥料と混合して提供することもできる。
【0026】
組成物中の細菌の濃度は特に限定されない。例えば、使用時の生菌の濃度が、10~1010/mlとなるように、より好ましくは10~10/mlとなるように、組成物中の細菌の濃度を限定してもよい。
【0027】
〔防除方法〕
本発明の一実施形態である植物病害の防除方法は、菌株#21および#117の少なくとも一方の細菌を、ナス科植物の植物体、またはナス科植物の栽培土壌もしくは水耕栽培用培地に存在させることを含む、Ralstonia solanacearumを病原とするナス科植物病害の防除方法である。ナス科植物の植物体、またはナス科植物の栽培土壌もしくは水耕栽培用培地に上述の細菌が存在することにより、Ralstonia solanacearumを病原とするナス科植物病害を防除できる。このため、当該防除方法によって、上述の細菌の防除効果を発揮することができる。
【0028】
また、本発明の一実施形態である植物病害の防除方法は、上述のナス科植物はタバコである、Ralstonia solanacearumを病原とするナス科植物病害の防除方法であってもよい。すなわち、タバコ立枯病の防除方法であってもよい。この構成により、特にタバコ立枯病を防除することができる。
【0029】
植物体に細菌を存在させるとは、植物内または植物体の表面に細菌を存在させることを指す。ナス科植物の栽培土壌もしくは水耕栽培用培地に存在させるとは、栽培土壌または水耕栽培用培地にRalstonia solanacearumを病原とする植物病害の防除に有効な量の細菌を存在させることを指す。存在させる細菌の量は、適用する方法に応じて適宜調整することができる。
【0030】
防除方法における細菌をナス科植物の植物体またはナス科植物の栽培土壌もしくは水耕栽培用培地に存在させる方法は特に限定されない。任意の手法とは、例えば細菌の懸濁液又は細菌の組成物を土壌に添加する方法であってもよいし、または、ナス科植物の苗の根部を菌株#21および#117の細菌の少なくとも一方を懸濁液に浸すことにより、ナス科植物の苗の根部に細菌を存在させる状態にしてから、当該ナス科植物の苗を栽培土壌または水耕栽培用培地に定植してもよい。
【0031】
ナス科植物に上述の細菌を処理する時期は、効果が得られる範囲であれば特に限定されない。例えば、ナス科植物の苗を圃場に移植する前に上述の細菌の懸濁液にナス科植物の苗の根部を浸漬することにより、植物体に細菌を接種してもよい。ナス科植物の苗の根部を細菌の懸濁液に浸漬する際には、セル苗を培土およびロックウール等の担体と共に浸漬してもよい。浸漬する時間は、例えば、1秒~12時間程度であってもよい。また、植物を圃場に移植した後に任意の方法で上述の細菌を処理してもよい。この場合、ナス科植物の苗を圃場に移植した後に定期的に上述の細菌を接種する植物病害の防除方法であってもよい。
【0032】
上述の構成によれば、安全性および環境への影響等が懸念されている化学的防除剤を使わずに、Ralstonia solanacearumを病原とするナス科植物病害を防除することができる。このような効果は、例えば、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の目標15「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」等の達成にも貢献するものである。
【0033】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0034】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る細菌は、シュードモナス(Pseudomonas)属に属する細菌(NITE BP-03784(菌株#21)又はNITE BP-03786(菌株#117))である。
本発明の態様2に係る組成物は、態様1に記載の細菌の少なくとも一方を含む組成物であってもよい。
本発明の態様3に係る組成物は、態様2に記載の組成物において、Ralstonia solanacearumを病原とするナス科植物病害の防除用であってもよい。
本発明の態様4に係る組成物は、態様3の組成物において、前記ナス科植物はタバコであってもよい。
本発明の態様5に係る植物病害の防除方法は、態様1の細菌を、ナス科植物の植物体、またはナス科植物の栽培土壌もしくは水耕栽培用培地に存在させることを含む、Ralstonia solanacearumを病原とするナス科植物病害の防除方法であってもよい。
本発明の態様6に係る防除方法は、態様5において、前記ナス科植物はタバコである、防除方法であってもよい。
【0035】
〔実施例〕
〔実施例1:抑止土壌の探索(1次評価)〕
<実験方法>
国内各地(独立した98ヶ所)より様々な土壌を採集し、タバコ立枯病の抑止活性を評価した。
【0036】
各土壌を等量の植物育成用土(ニッピ園芸培土1号;日本肥糧)と混合し、16穴セルトレイに入れ、試験用土壌とした。当該土壌にタバコ(品種:Coker319)種子を70%エタノールにより表面殺菌したのち播種し(各区4-12株)、実験用温室で約5週間育苗した。その後、Ralstonia (Pseudomonas)solanacearum MAFF211270株(以下、「タバコ立枯病菌」)の細菌液(OD600=0.2)を土壌に灌注し、タバコ立枯病の発病の有無を観察した。ここで、タバコ植物に病徴が生じた場合に発病ありと判定し、そのような病徴が出なかった場合は発病なしと判定した。各土壌の対照区として、加熱滅菌した植物育成用土を用いた。対照区でタバコ立枯病の発病株率(以下、「発病株率」と称する)が50%を超えた時点を「基準時点」として、基準時点での発病株率が50%以下の土壌を抑止土壌候補として評価した。
【0037】
<結果>
計30土壌について、基準時点における発病株率が50%以下となった(表1)。このうち、8土壌を除いた22土壌について、タバコ立枯病抑止土壌候補として選抜した。表1に採取土壌の採取地、採取土壌のタバコ立枯病抑止活性、および選抜結果を示す。A~Jは採取土壌の採取地を示す。Aは千葉県、Bは群馬県,Cは静岡県、Dは東京都、Eは福島県、Fは三重県、Gは茨城県、Hは茨城県、Iは埼玉県、Jは神奈川県をそれぞれ示す。「-」は「タバコ立枯病抑止活性なし」を示し、「+」は「タバコ立枯病抑止活性あり」を示す。「〇」は選抜された土壌を示す。
【0038】
【表1】
【0039】
〔実施例2:抑止土壌の探索(2次評価)〕
<実験方法>
実施例1で抑止土壌候補とした土壌について、タバコ立枯病菌の細菌液濃度をOD600=0.1とし、発病株率の評価を立枯病菌接種後5日後毎に行った以外は、実施例1と同様の試験を再度行った。
【0040】
<結果>
対照区の立枯病発病株率が50%を超えた時点における各土壌のタバコ立枯病発病株率を表2に示した。本試験の結果、22土壌の中で、抑止土壌#181130が最も高い立枯病発病抑制効果があった。
【0041】
【表2】
【0042】
〔実施例3:抑止土壌#181130からのタバコ立枯病抑止菌株の分離〕
<実験方法>
(1.菌株の分離)
抑止土壌#181130を用いて育成したタバコ苗の根を採取し、水洗したのち滅菌水中で摩砕した。摩砕液をKing’s B培地(KB培地)に塗抹し形成されたコロニーを分離した。KB培地を用いた分離の結果、合計157菌株を分離した。
【0043】
(2.タバコ立枯病抑止菌株の選抜)
図1に示す処理スキームの処理を行い、157菌株についてタバコ立枯病抑止活性の評価を行った。
【0044】
セルトレイで育成したタバコ苗(Coker319)を水洗し、根部を切断した(断根処理)。各菌株の培養懸濁液(OD600=2.0)を調整し、当該培養懸濁液にタバコ苗3株を約90分間浸すことによって、植物に分離細菌を付与する分離細菌処理を施した。分離細菌処理後の植物を植物育成用土に植える土壌移植処理を行い、その後タバコ立枯病菌を接種するタバコ立枯病菌処理を行った。コントロール区として、タバコ苗を菌株培養懸濁液に浸す処理を行っていない以外は同様に準備した菌株無処理植物を用いた。
【0045】
対照区における発病株率が50%以上となった時点を「基準時点」として、基準時点における発病株率が50%以下であった菌株をタバコ立枯病抑止菌株候補とした。1度目の試験でタバコ立枯病抑止菌株候補と判定された菌株について、同様の処理を行う2度目の試験に供試した。2度目においても同様の基準を満たした菌株を最終的なタバコ立枯病抑止菌株として選抜した。
【0046】
<結果>
タバコ立枯病抑止菌株として、有効なタバコ立枯病抑制効果を示した7菌株(#21、#29、#58、#117、#120、#124、および#125)を最終的に選抜した。
【0047】
〔実施例4:タバコ立枯病抑止菌株(7菌株混合)の土壌処理による立枯病抑止活性の評価〕
<実験方法>
(1.細菌液および接種用植物の準備)
各菌株を1/10YP液体培地を用いて、一晩培養し、OD600=0.4に調整した後、各細菌液を等量混合して混合菌液を準備した。タバコ苗の供試品種はCoker319を使用した。16穴セルトレイ中(培養土:親床用タバコ21)に本品種を播種し、そのまま約4週間育成してタバコ苗を得た。
【0048】
(2.細菌液の植物への処理)
混合細菌液を、タバコ苗に灌注処理(15 ml/セル)した。処理後、約2時間後にタバコ立枯病菌汚染土壌(103 cfu/g)に苗を定植し、発病の有無を観察した。タバコ立枯病菌汚染土壌は、実施例1および2と同様に準備した。
【0049】
対照区として細菌処理を行っていないタバコ苗を、タバコ立枯病菌汚染土壌またはタバコ立枯病菌を接種した抑制土壌#1811130に定植する処理を行った。対照区の土壌も103 cfu/gとなるように調整した。抑制土壌#1811130はタバコ立枯病菌の濃度を土壌中103 cfu/gとなるように調整した以外は、実施例1および2と同様にして準備した。
【0050】
タバコ苗を温度30-34℃±2℃に設定された温室で成長させ、発病株率の抑制効果を比較した。
【0051】
<結果>
図2に示す通り、7菌株混合液をタバコ苗に処理することによって、タバコ立枯病発病株率が抑制された。その抑止活性は抑止土壌#181130と同等程度だった。
【0052】
〔実験例5:立枯病抑止菌株(7菌株混合)の土壌処理による立枯病抑止活性の評価〕
<実験方法>
(1.細菌液および接種用植物の準備)
各菌株を1/10YP液体培地を用いて、45~48時間ロータリー振とう培養した後、無菌の1/10YP液体培地を使用して、菌株別に濁度(OD600=0.3)を調製した。濁度調整後の各種菌液を等量混合し、苗床処理用混合菌液を調製した。また、前記手法で培養した培養液に蒸留水を使用して、菌株別に濁度(OD600=0.2)を調製した。濁度調整後の各種菌液を等量混合し、圃場処理用混合菌液とした。
【0053】
タバコの供試品種は、JT-黄色77を使用した。トレイ中に本品種の種子を播種し、そのまま3週間育成した。その後、育苗用連結ポット(キャネロン化工社製、28cm×28cm、36穴)へ仮植し、3週間育成した後に、タバコ立枯病菌汚染地の圃場へ定植した。苗床での菌液処理は、育苗ハウス内で、育苗用連結ポットに仮植されたタバコ根部を、子床用肥土とともに苗床処理用混合菌液へ3分間浸漬することにより実施した。1回目の処理は仮植3日後に、2回目の処理は定植当日に実施した。対照区には、苗床処理用混合菌液の代替に水道水を用い処理を実施したタバコ苗を用いた。
【0054】
(2.圃場試験)
育成したタバコ苗120株を圃場に移植し、最大で120日間育成した。圃場での菌液処理として、1株当たり200mLの圃場処理用混合菌液を株元に灌注した。圃場での菌液処理を1回実施した処理区を処理区F-B、2回実施した処理区を処理区F-B2とした。処理区F-Bおよび処理区F-B2において、定植36日後に菌液処理を行った。処理区F-B2において、定植70日後に2回目の菌液処理を実施した。一方、対照区のタバコ苗には菌液処理を行わなかった。
【0055】
(3.発病調査)
移植から83日、93日、104日、および113日の4つの時点で、株別の発病指数を調査した。発病指数は、タバコ苗の病徴に基づいて0~5までの6段階で評価し、各数値における病徴は次の通りである;0:発病なし、1:地際から1枚目の葉までの黄化および萎凋、2:地際から2枚目の葉までの黄化および萎凋、3:半分程度の葉までの黄化および萎凋、4:全葉に立枯病影響による症状、5:枯死。
【0056】
(4.データ解析)
処理区別に発病指数を平均し、その処理区の平均発病指数とした。対照区と処理区の平均発病指数の有意差の有無を検定するため、各調査時点においてMan-Whitney Uテストを行った。ソフトとしてExcel統計を使用した。
【0057】
<結果>
微生物処理区(F-B、F-B2)と対照区(F)の各時点におけるタバコ苗の平均発病指数を図3に示す。処理区のタバコ苗の発病指数は、対照区と比較した時の発病指数よりも有意に低い数値であった。ここで、図3中、*はp<0.5を示し、**はp<0.01を示す。
【0058】
よって、7菌株の混合液はタバコ立枯病の発病を遅延させる効果があることが分かった。
【0059】
〔実施例6:7菌株それぞれの単独菌株の土壌処理による立枯病抑止活性の評価〕
<実験方法>
(1.供試品種および接種用植物の準備)
タバコ苗の供試品種はCoker319を使用した。播種用温室肥土を詰めた4号平鉢へ本品種の種子を播種した。播種20-22日後、仮植用温室肥土を詰めたビニールポット(6×6、36穴)へ苗を仮植した。さらに、仮植18-20日栽培後、移植用温室肥土を用いて、素焼き4号鉢へ苗を移植した。植物を移植した鉢は移植後、保温マット(農電園芸マット、日本農電社製)上に置き、温度30-34℃±2℃に設定された温室で管理した。
【0060】
(2.供試菌株および温室処理用細菌液の作成)
抑止土壌#181130から分離された7菌株を供試した。液体培養3-5日前に、YT平板培地へ各微生物を画線培養し、25℃で増殖した。白金耳を用いて平板培地から増殖菌体を掻き取り、滅菌蒸留水へ懸濁し、濁度(OD600=0.4)となるように調整した。YT液体培地(200mL、バッフル無し500mL容三角フラスコ)へ200uLの濁度調整済の懸濁液を添加した。その後、振とう培養機(バイオシェーカー、TAITEC社製)により、28℃、120rpmで20-24時間往復振とうした。培養後、無菌のYP液体培地を使用して、菌株別に濁度(OD600=0.4)を調整した。個別細菌処理区の場合、前記で濁度調整した培養液を処理に使用した。7菌株混合処理の場合、各濁度調整培養液を等量混合した液を処理に使用した。細菌液の作成は、温室での処理当日に実施された。
【0061】
(3.細菌液の植物への処理)
ピペットを使用して、個別細菌処理液及び7菌株混合処理液を4寸鉢に移植してから4-5日後の植物の株元へ灌注処理した(20mL/株)。対照区として、細菌処理と同量の無菌のYT液体培地を植物の株元へ灌注処理した。処理後、温マットの電源を入れ、以後鉢土壌の温度を30℃前後になるように管理した。各試験において、各処理区に5株の植物を供試した。なお、各処理について、8~10反復実施した。
【0062】
(4.タバコ立枯病菌の植物への接種)
R. solanacearum選択培地へ画線培養(28℃で3日もしくは25℃で5日培養)したタバコ立枯病菌の菌体を掻き取り、滅菌蒸留水へ懸濁した。その後、濁度を調整し(OD600=0.1、約5×107 CFU/mL)、立枯病菌接種液とした。温室で、4寸鉢へ移植7日後のタバコの株元へ立枯病菌接種液を灌注接種した(20mL/株)。接種当日、接種後の灌水を行わず、翌日から灌水とした。
【0063】
(5.発病調査)
立枯病菌接種以降、最大で接種3週間後まで、2日間隔で株別の発病指数を調査した。発病指数は、各株の病徴に基づいて0~5までの6段階で評価し、各数値における病徴は次の通りである;
0:病徴なし、1:1枚の葉に病徴(萎れ、黄化、褐変)、2:2~3枚の葉に病徴、3:3分の2の葉に病徴、4:全葉に病徴、5:枯死
(6.データ解析)
処理区別に発病指数を平均し、その処理区の平均発病指数とした。対照区と各微生物処理区の平均発病指数の有意差の有無を検定するため、ノンパラメトリック分析のSteel法を用いて統計解析した。ソフトとしてExcel統計を使用した。
【0064】
<結果>
結果を図4に示す。全ての細菌処理区の平均発病指数の値は、対照区と比較して低かった。菌株毎の個別処理において、菌株#21の細菌で処理した場合の平均発病指数の値が最も低かった。Steel法によって、対照区の平均発病指数と比較して、平均発病指数が有意に低かった菌株は#21、#58、#117であった。また、菌株#120も平均発病指数が低い傾向にある菌株であったため、#21、#58、#117とともに、タバコ立枯病抑止菌株として選抜した。
【0065】
〔実施例7:菌株の組合せの土壌処理による立枯病抑止活性の評価〕
<実験方法>
供試菌株の作成方法以外は、実施例6と同様にして、実験を行った。
各菌株を実施例6と同様に濁度を調製した後、下記の表3に示す組合せで、菌株を当量混合した。表3に示す各組合せについて当量混合した液を、実施例6と同様にしてタバコに処理した。
【表3】
<結果>
結果を図5に示す。全ての処理区の平均発病指数の値は、対照区と比較して低かった。この結果より、各菌株を組合せて用いても、互いにその効果を阻害することなく、効果を発揮できることが分かった。
【0066】
〔実施例8:微生物同定〕
<実験方法>
(1.16S rRNA遺伝子系統解析)
菌株#21、#58、#117、および#120の培養菌体からDNAを抽出し、細菌16S rDNAのユニバーサルプライマーを用いて増幅した当該領域について、シーケンサーで塩基配列を決定した。決定した塩基配列を配列番号1に示す。16S rRNA遺伝子配列(16S rDNA)をNIHのBLAST(https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)により、近縁種の配列を検索した(Database:rRNA_typestrains/16S_ribosomal_RNA、Limit to:Sequences from type material)。各菌株に対して、16S rDNA塩基配列の相同率98.7%以上の近縁種として判定された種を表4に示す。
【0067】
(2.種の同定)
菌株#21、#58、#117、および#120の細菌を、Digital DNA-DNAハイブリダイゼーション法のANI法およびGGDC法で分析し、同定した。ANI法は"OrthoANI: An improved algorithm and software for calculating average nucleotide identity." I. Lee, et al, Int J Syst Evol Microbiol 2016 Vol. 66 Issue 2 Pages 1100-1103に記載の方法によって行い、GGDC法は"Complete genome sequence of DSM 30083T, the type strain (U5/41T) of Escherichia coli, and a proposal for delineating subspecies in microbial taxonomy." Meier-Kolthoff JP, et al., Stand Genom Sci 2014;10:2.に記載の方法によって行った。その結果、菌株#21、#117、および#120の細菌は表4に示す通り、既知の近縁種とのANI法により算出されたゲノム配列の類似度は95%以下であり、かつ、GGDC法によるゲノム配列の類似度は70%以下であることから、新種であると同定された。菌株#58の細菌は、Variovorax guangxiensisとANI法によるゲノム配列の類似度は95%以上であり、かつ、GGDC法による、ゲノム配列の類似度は70%以上であることから、Variovorax guangxiensisに属する細菌であると同定された。
【0068】
【表4】
【0069】
(3.系統解析)
Pseudomonas属の新種である菌株#21および#117と近縁基準種の16S rRNA遺伝子配列について、GENETYX Ver.15(GENETYX社製)のMuscle alignmentで配列のアライメントを行った後、NJ法(Bootstrap trial: 10,000、Kimura’s 2 parameter method)で系統解析を行った。各菌株の系統解析の結果を図6、および7に示す。なお、Bacillus subtilis、Escherichia coliおよびStreptomyces coelicolorをoutgroupとして解析した。
【0070】
(4.生理生化学的性状試験)
細菌の帰属分類群を同定するために、菌株#21および#117の形態学的な特徴ならびに生理および生化学的な性状を調べた。供試菌株はnutrient agar培地(Oxoid, UK)で、培養温度30°C、培養期間24~72時間で培養した。光学顕微鏡による形態観察およびBarrow & Felthamらの方法に基づき、コロニーの色調、細胞形態、グラム染色性および芽胞形成能(培養24~48時間)、コロニー性状、細胞形態、運動性観察、カタラーゼ、オキシダーゼ、O/Fテストなどの生理生化学的性状試験、ブドウ糖からの酸/ガス産生、ブドウ糖の酸化/発酵(O/F)について試験を行った。グラム染色はフェイバーG「ニッスイ」(Nissui Pharmaceutical, Japan)を用いて行った。光学顕微鏡はBX50F4(Olympus, Japan)を利用した。生理および生化学的性状試験用キット(API)による炭素源の資化性、酸化/発酵性および酵素活性などの試験については、API 20 NE(ビオメリュー、FRA)を用いて行った。
【0071】
<結果>
(1.菌株#21の結果)
表5~7において、菌株#21の形態学的な特徴ならびに生理および生化学的な性状を示す。菌株#21はグラム陰性の桿菌で、芽胞を形成せず、カタラーゼ反応及びオキシダーゼ活性は陽性を示し、運動性があった。これらの性状は16S rDNA塩基配列データより帰属が示唆されたPseudomonas属の性状と一致した。菌株#21は硝酸塩を還元せず、アルギニンジヒドロラーゼ活性を示し、ウレアーゼ活性を示さず、エスクリンを加水分解せず、ゼラチンを加水分解し、グルコース、dl-リンゴ酸および酢酸フェニルなどを資化し、L-アラビノースや D-マンノースなど資化しなかった。また、菌株#21はでんぷんを弱いながら加水分解し、リパーゼ(Tween 80)活性を示し、レシチナーゼ活性を示さず、マッコンキー寒天で生育した。これらの性状は16S rDNA塩基配列の系統解析によって最近縁であったP. alcaligenesの性状と類似点が認められたが、いくつかの相違点も確認された。特にグルコースを資化し、でんぷんを加水分解する点および45℃で生育する点はP. alcaligenesの性状と異なった。表5~7中、「+」および「+w」は試験結果が陽性、または生育試験の場合は生育ありであったことを示し、「-」は試験結果が陰性、または生育試験の場合は生育なしであったことを示す。ここで、「+w」は陽性とは判断されたものの、反応性が弱かったことを示す。「v」は測定できず、不定であったことを示す。「nd」はデータなしを意味する。表7中、「++」は他の条件よりもよい生育を示したことを意味する。
【0072】
【表5】
【表6】
【表7】
【0073】
(2.菌株#117の結果)
表8~11において、菌株#117の形態学的な特徴ならびに生理および生化学的な性状を示す。菌株#117は運動性を有するグラム陰性桿菌で、コロニーの色調は黄色を呈し、グルコースを酸化し、カタラーゼ反応は陽性、オキシダーゼ反応は陰性を示した。これらの性状は16S rDNA塩基配列データより帰属が示唆されたPseudomonas属の性状と一致した。APIキットを用いて実施した試験の結果、菌株#117は硝酸塩を還元せず、アルギニンジヒドロラーゼおよびウレアーゼ活性を示さず、エスクリンを加水分解せず、グルコース、L-アラビノースおよびD-マンノースなどを資化し、N-アセチル-D-グルコサミンなどを資化しなかった。また、#117は4℃で生育せず、42℃で生育し、嫌気条件下で生育せず、マッコンキー寒天で生育し、King’s B 寒天上で蛍光色素を産生し、エステラーゼ(C4)およびロイシンアリルアミダーゼなどの活性を示し、α-ガラクトシダーゼおよび β-グルクロニダーゼなどの活性を示さなかった。これらの性状は16S rDNA 塩基配列データより相同率が上位と示唆されたP. psychrotolerans、P. oryzihabitansおよびP. rhizoryzaeの性状と類似点があるが、相違点も多く認められた。表8~10中、「+」および「+w」は試験結果が陽性、または生育試験の場合は生育ありであったことを示し、「-」は試験結果が陰性、または生育試験の場合は生育なしであったことを示す。ここで、「+w」は陽性とは判断されたものの、反応性が弱かったことを示す。「v」は測定できず、不定であったことを示す。「nd」はデータなしを意味する。表10中、「++」は他の条件よりもよい生育を示したことを意味する。
【0074】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
〔実施例9:既知Pseudomonas属細菌F89R1との比較〕
<実験方法>
実験に用いた供試菌株の種類と、発病抑制率の算出以外は、実施例6と同様にして、実験を行った。
(1.供試菌株および温室処理用細菌液の調製)
本実施例において、#21、#117、およびF89R1(Pseudomonas fluorescens)の菌株を実施例6と同様の濁度(OD600=0.4)となるように調製した。#21および#117の菌株の液を当量混合して、混合液として調製した。その他の条件は、実施例6と同様にして温室処理用細菌液を調製した。
F89R1菌株は、Pseudomonas fluorescensに属する細菌であり、タバコ立枯病の防除効果が知られていた。
【0075】
(2.発病調査)
【0076】
実施例6と同様にして、各処理について平均発病指数を算出した。また、平均発病指数の値に基づき、発病抑制率を下記式より算出した。
【0077】
発病抑制率(%)=((対照区の平均発病指数)-(各処理区の平均発病指数))/(対照区の平均発病指数)×100
【0078】
<結果>
図8に平均発病指数のグラフを示す。また、図9に処理区毎に下記式に基づいて算出した発病抑制率のグラフを示す。図8および9に示す通り、菌株#21および#117の細菌のタバコ立枯病防除効果は、F89R1と比較して、顕著であった。#21の防除効果はF89R1の防除効果の2.33倍であり、#117の防除効果はF89R1の1.87倍であった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明はRalstonia solanacearumを病原とするナス科植物病害の防除に利用することができる。
【受託番号】
【0080】
NITE BP-03784
NITE BP-03786
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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