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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092820
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】合成スラブ
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/16 20060101AFI20240701BHJP
   E04B 5/02 20060101ALI20240701BHJP
   E04B 5/38 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
E04B1/16 E
E04B5/02 E
E04B5/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208999
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】藤田 有章
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 聡
(72)【発明者】
【氏名】桂 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田原 健一
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 樹
(72)【発明者】
【氏名】松戸 正士
(72)【発明者】
【氏名】石井 勝
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直美
(57)【要約】
【課題】鉄筋コンクリートスラブと木質面材との間のせん断力の伝達性能を向上させ、耐力及び剛性の向上を図ることが可能な合成スラブを提供すること。
【解決手段】合成スラブ101は、板厚方向に対向する上面31及び下面32を有する木質面材30と、木質面材30の上面31の上に積層された鉄筋コンクリートスラブ50と、鉄筋コンクリートスラブ50の主筋61と交差する第1方向Yに延在し、第1方向Yと交差する第2方向Xに間隔を置いて配置され、上面31に固定された第1形鋼材71及び第2形鋼材72と、第1形鋼材71と第2形鋼材72との間の隙間に嵌るブロック81と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板厚方向に対向する第1面及び第2面を有する木質面材と、
前記木質面材の前記第1面の上に積層された鉄筋コンクリートスラブと、
前記鉄筋コンクリートスラブの主筋と交差する第1方向に延在し、前記第1方向と交差する第2方向に間隔を置いて配置され、前記第1面に固定された第1形鋼材及び第2形鋼材と、
前記第1形鋼材と前記第2形鋼材との間の隙間に嵌るブロック体と、を備えることを特徴とする、合成スラブ。
【請求項2】
前記ブロック体の上部は、前記第1形鋼材及び前記第2形鋼材よりも上方に張り出している、請求項1に記載の合成スラブ。
【請求項3】
複数の前記ブロック体は、前記第1方向に所定の間隔を置いて配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の合成スラブ。
【請求項4】
複数の前記ブロック体は、平面視矩形状の格子の格点に配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の合成スラブ。
【請求項5】
前記ブロック体は、前記第1形鋼材及び前記第2形鋼材の長手方向に連続することを特徴とする、請求項1に記載の合成スラブ。
【請求項6】
前記ブロック体の材質は、木、モルタル、コンクリートの何れかであることを特徴とする、請求項1に記載の合成スラブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成スラブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄筋コンクリートと木材とを組み合わせた合成スラブが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の合成スラブは、上面に凹部が形成された木質版と、木質版の上面に設けられた鉄筋コンクリート版と、を備える。この合成スラブの木質版は、複数の板材の端面同士が突き合わされ、凹部は、端面同士が突き合わされた部位を跨ぐように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-39171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術に係る合成スラブでは、複数の板材の端面同士が突き合わされた部分にのみに凹部が形成され、せん断力の伝達が十分ではなかった。
【0005】
本発明は、鉄筋コンクリートスラブと木質面材との間のせん断力の伝達性能を向上させ、耐力及び剛性の向上を図ることが可能な合成スラブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成すべく、本発明による合成スラブの一態様は、
板厚方向に対向する第1面及び第2面を有する木質面材と、
前記木質面材の前記第1面の上に積層された鉄筋コンクリートスラブと、
前記鉄筋コンクリートスラブの主筋と交差する第1方向に延在し、前記第1方向と交差する第2方向に間隔を置いて配置され、前記第1面に固定された第1形鋼材及び第2形鋼材と、
前記第1形鋼材と前記第2形鋼材との間の隙間に嵌るブロック体と、を備える。
【0007】
本態様によれば、木質面材の第1面に第1形鋼材及び第2形鋼材が固定され、ブロック体が、第1形鋼材と第2形鋼材との間の隙間に嵌っていることにより、第1形鋼材及び第2形鋼材によってブロック体を支持することができる。さらに、本態様によれば、木質面材の上に施工される鉄筋コンクリートスラブの内部にブロック体、第1形鋼材及び第2形鋼材が埋め込まれることになる。これにより、ブロック体、第1形鋼材及び第2形鋼材を介して、鉄筋コンクリートスラブと木質面材との間のせん断力を伝達することができる。また、本態様によれば、第1形鋼材及び第2形鋼材が、コンクリートスラブの主筋と交差する方向に延在することにより、主筋が延在する方向のせん断力を、ブロック体、第1形鋼材及び第2形鋼材によって受けることができる。さらに、本態様によれば、鉄筋コンクリートスラブと木質面材との間のせん断力の伝達性能を向上させ、合成スラブにおける耐力及び剛性の向上を図ることができる。
【0008】
また、本発明の他の態様において、
前記ブロック体の上部は、前記第1形鋼材及び前記第2形鋼材よりも上方に張り出している。
【0009】
本態様によれば、第1形鋼材及び第2形鋼材よりも上方に張り出すブロック体の上部によって、せん断力を受けることができる。これにより、ブロック体、第1形鋼材及び第2形鋼材を介して、鉄筋コンクリートスラブと木質面材との間のせん断力を伝達することができる。また、本態様によれば、鉄筋コンクリートスラブと木質面材との間のせん断力の伝達性能を向上させ、合成スラブにおける耐力及び剛性の向上を図ることができる。
【0010】
また、本発明の他の態様において、
複数の前記ブロック体は、前記第1方向に所定の間隔を置いて配置されていることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、第1方向に所定の間隔を置いて配置された複数のブロック体によって、せん断力を受けることができる。また、本態様によれば、第1方向に並ぶ複数のブロック体を介して、鉄筋コンクリートスラブと木質面材との間のせん断力を伝達することができる。さらに、本態様によれば、鉄筋コンクリートスラブと木質面材との間のせん断力の伝達性能を向上させ、合成スラブにおける耐力及び剛性の向上を図ることができる。
【0012】
また、本発明の他の態様において、
複数の前記ブロック体は、平面視矩形状の格子の格点に配置されていることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、格子の格点に配置された複数のブロック体により、鉄筋コンクリートスラブと木質面材との間のせん断力を伝達することができ、せん断力の伝達性能を向上させ、合成スラブにおける耐力及び剛性の向上を図ることができる。また、木質面材の第1面に複数のブロック体を均等に配置できることにより、鉄筋コンクリートスラブと木質面材との間のせん断力の伝達が、局所的に集中することが防止される。さらに、合成スラブにおける応力を分散することができ、耐力及び剛性の向上を図ることができる。
【0014】
また、本発明の他の態様において、
前記ブロック体は、前記第1形鋼材及び前記第2形鋼材の長手方向に連続することを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、主筋と交差する方向に連続するブロック体を介して、鉄筋コンクリートスラブと木質面材との間のせん断力を伝達することができ、せん断力の伝達性能を向上させ、合成スラブにおける耐力及び剛性の向上を図ることができる。また、長手方向に連続するブロック体を介してせん断力を伝達することができることにより、長さが短い複数のブロック体を介してせん断力を伝達する場合よりも、せん断力の伝達性能を向上させることができる。そのため、ブロック体の設置数量を削減することができる。
【0016】
また、本発明の他の態様において、
前記ブロック体の材質は、木、モルタル、コンクリートの何れかであることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、木、モルタル、コンクリートから形成されたブロック体を介して、鉄筋コンクリートスラブと木質面材との間のせん断力を伝達することができる。本態様によれば、所定の強度が確保されたブロック体により、せん断力を伝達することができ、せん断力の伝達性能を向上させ、合成スラブにおける耐力及び剛性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上の説明から理解できるように、本発明によれば、鉄筋コンクリートスラブと木質面材との間のせん断力の伝達性能を向上させ、耐力及び剛性の向上を図ることが可能な合成スラブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る合成スラブの一例を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る合成スラブの一例を示す断面図である。
図3】第1実施形態に係る合成スラブの一例を示す平面図であり、コンクリートが打設される前のCLTパネルを示す平面図である。
図4】CLTパネルの上面に固定された一対の形鋼材、及び一対の形鋼材の間に配置されたブロックを拡大して示す断面図である。
図5】第2実施形態に係る合成スラブの一例を示す平面図であり、コンクリートが打設される前のCLTパネルを示す平面図である。
図6】第3実施形態に係る合成スラブのCLTパネルの上面に固定された一対の形鋼材、及び一対の形鋼材の間に配置されたブロックを拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態に係る合成スラブについて、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0021】
[第1実施形態;合成スラブ]
図1図4を参照して、第1実施形態に係る合成スラブの一例について説明する。ここで、図1は、第1実施形態に係る合成スラブの一例を示す斜視図である。図2は、第1実施形態に係る合成スラブの一例を示す断面図である。図3は、第1実施形態に係る合成スラブの一例を示す平面図である。図4は、CLTパネルの上面に固定された一対の形鋼材、及び一対の形鋼材の間に配置されたブロックを拡大して示す断面図である。また、各図において、互いに直交するX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向を示す矢印を適宜図示する場合がある。X軸方向及びY軸方向は、水平方向に沿う。X軸方向は、木質面材の長手方向に沿う。Y軸方向は、木質面材の幅方向に沿う。Z軸方向は、鉛直方向に沿う。Z軸方向は、木質面材の板厚方向に沿う。
【0022】
合成スラブ101を有する建物の躯体は、柱及び梁10を備える。柱は、例えば鉄骨造(S造)の柱でもよい。柱は、鉄骨造の柱に限定されず、鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の柱でもよい。柱は、木造の柱でもよい。
【0023】
梁10は、例えば鉄骨造の梁(鉄骨梁)である。梁10は、Y軸方向に延設されている。梁10の両端は、一対の柱に接続されている。
【0024】
図1及び図2に示されるように、梁10は、例えばH形鋼からなり、ウェブ11と上フランジ12と下フランジ13とを有する。なお、梁10は、鉄骨造の梁に限定されず、SRC造やRC造の梁でもよい。梁10は、木造の梁でもよく、複数の梁を有するあわせ木質梁でもよい。
【0025】
合成スラブ101は、CLTパネル30と、鉄筋コンクリートスラブ50とを備える。なお、「鉄筋コンクリートスラブ」を「RCスラブ」と省略する場合がある。
【0026】
CLTパネル30は、RCスラブ50の下方に配置されている。CLTパネル30は、複数の層が積層されて形成され、これらの層に含まれるひき板は、隣接する層のひき板と繊維方向が互いに直交するように配置されている。複数の層は、互いに接着されている。CLTパネル30は、木質面材の一例である。木質面材は、CLTパネル30に限定されず、LVL(Laminated Veneer Lumber、単板積層材)などその他の木質面材でもよい。CLTパネル30は、例えば5層からなる。CLTパネル30は、例えば、3層でもよく、4層でもよく、7層でもよく、9層でもよい。CLTパネル30における層数は、例えばJAS(日本農林規格)による規定に基づく。木質面材は、その他の法律、規格に基づくものでもよい。
【0027】
CLTパネル30は、板厚方向に対向する上面(第1面)31及び下面(第2面)32を有する。RCスラブ50は、CLTパネル30の上面31の上に形成されている。RCスラブ50は、CLTパネル30の上面31に接合されている。
【0028】
RCスラブ50は、CLTパネル30の上面31の上に打設されたコンクリート51と、コンクリート51に埋め込まれた鉄筋61,62と、を有する。コンクリート51は、例えば普通コンクリートである。また、RCスラブ50は、梁10の上フランジ12の上の部分を含む。
【0029】
鉄筋61は、Y軸方向に間隔を置いて配置され、X軸方向に延設されている。鉄筋62は、X軸方向に間隔を置いて配置され、Y軸方向に延設されている。鉄筋61,62は、例えば異形鉄筋であり、互いに交差する方向に配置されている。鉄筋61は主筋であり、鉄筋61は配力筋である。なお、鉄筋61,62は、異形鉄筋に限定されず、その他の鉄筋でもよい。また、RCスラブ50の鉄筋は、主筋及び配力筋以外の鉄筋を含んでもよい。
【0030】
CLTパネル30は、複数の梁10によって支持されている。CLTパネル30の端部30aは、上フランジ12の上面12aの上に載置されている。
【0031】
図2に示されるように、梁10には、上フランジ12から上方に突出する複数のスタッド8が設けられている。複数のスタッド8は、梁10の長手方向において、所定の間隔を置いて配置されている。スタッド8は、例えば上フランジ12に対して溶接されている。
【0032】
CLTパネル30の端面30bには、複数のスタッド9が設けられている。端面30bは、CLTパネル30のX軸方向における端面である。端面30bは、YZ面に沿う面である。複数のスタッド9は、端面30bからX軸方向に、上フランジ12の上に突出する。複数のスタッド9は、梁10の長手方向において、所定の間隔を置いて配置されている。スタッド9の基端部は、端面30bに埋め込まれている。
【0033】
上フランジ12上には、コンクリート51が打設されて、X軸方向において梁10の両側に配置された合成スラブ101と梁10とが一体化されている。複数のスタッド8,9は、コンクリート51に埋め込まれている。
【0034】
次に、図1図4を参照して、CLTパネル30に固定された一対の形鋼材71,72、及び一対の形鋼材の間に配置されたブロック81について説明する。CLTパネル30の上面31には、複数組の一対の形鋼材71,72が固定されている。形鋼材71は、第1形鋼材の一例であり、形鋼材72は、第2形鋼材の一例である。
【0035】
形鋼材71,72は、Y軸方向に延在し、X軸方向に所定の間隔を置いて配置されている。Y軸方向は、第1方向の一例であり、主筋である鉄筋61と交差する方向である。X軸方向は、第2方向の一例であり、鉄筋61に沿う方向である。
【0036】
形鋼材71,72は、例えば、山形鋼である。図4に示されるように、形鋼材71は、CLTパネル30の上面31に固定された第1片73と、第1片73より上方に突出する第2片74とを有する。第1片73の板厚方向は、Z軸方向に沿う。第2片74の板厚方向は、X軸方向に沿う。
【0037】
形鋼材72は、CLTパネル30の上面31に固定された第1片75と、第1片75より上方に突出する第2片76とを有する。第1片75の板厚方向は、Z軸方向に沿う。第2片76の板厚方向は、X軸方向に沿う。一対の形鋼材71,72において、第2片74,76同士は、互いに反対側に延びる。
【0038】
第1片73,75は、複数のボルトにより、CLTパネル30の上面31に固定されている。第1片73,75には、ボルトが挿通されるボルト穴が形成されている。ボルトは、Z軸方向に延在し、CLTパネル30に打ち込まれている。複数のボルトは、Y軸方向に所定の間隔を置いて配置されている。ボルトは、例えばラグスクリューボルト又はコーチスクリューボルトである。なお、ボルトに代えて、くぎなどその他の棒状の固定部材を用いて、形鋼材71,72をCLTパネル30に固定してもよい。
【0039】
第2片74,76のZ軸方向に沿う高さは、例えば、CLTパネル30上のコンクリート51の厚さの20%以上、50%以下でもよい。第2片74,76には、板厚方向に貫通する開口が形成されている。これにより、コンクリート51を打設した際に、コンクリート51は、開口を流れることができる。
【0040】
図3に示されるように、一対の形鋼材71,72は、Y軸方向において、CLTパネル30の略全長に配置されている。形鋼材71,72の長手方向において、複数の形鋼材71,72が配置されていてもよい。一対の形鋼材71,72は、Y軸方向において、CLTパネル30の全長にわたって連続していてもよく、間欠的に配置されていてもよい。
【0041】
X軸方向において、一対の形鋼材71,72間の隙間には、複数のブロック81が配置されている。ブロック81は、ブロック体の一例であり、例えば直方体である。ブロック81は、直方体に限定されず、立方体でもよく、その他の形状でもよい。ブロック81の材質は、例えば木、モルタル、コンクリートである。ブロック81の強度は、CLTパネル30と同じでもよく、CLTパネル30よりも高くてもよい。
【0042】
複数のブロック81は、Y軸方向において、所定の間隔を置いて配置されている。ブロック81の上部は、形鋼材71,72の第2片74,76の上端よりも上方に突出する。図4に示すように、ブロック81は、上面82及び下面83を有する。
【0043】
ブロック81は、X軸方向に対向する側壁84,85を有する。ブロック81は、一対の形鋼材71,72によって挟まれている。ブロック81は、一対の形鋼材71,72によって支持されて、CLTパネル30の上面31に固定されている。ブロック81の側壁84は、対面する形鋼材71の第2片74に当接する。ブロック81の側壁85は、対面する形鋼材72の第2片76に当接する。ブロック81は、第2片74,76に挟まれている。
【0044】
ブロック81の張り出し高さH1は、例えば30mmである。ブロック81の張り出し高さH1は、Z軸方向において、CLTパネル30の上面31からブロック81の上面82までの高さである。ブロック81の張り出し高さH1は、形鋼材71,72の第2片74,76の高さH2よりも高い。高さH2は、上面31から第2片74,76の上端までの高さである。
【0045】
ブロック81の張り出し高さH1は、例えばCLTパネル30の板厚T1の30%以上、60%以下でもよい。板厚T1は、上面31から下面32までの厚さである。ブロック81の張り出し高さH1は、例えば、ブロック81の幅W1の0.2倍以上、1,5倍以下でもよい。ブロック81の張り出し高さH1は、その他の値でもよい。CLTパネル30の板厚T1は、例えば90mm以上、270mm以下である。RCスラブ50の厚さT2は、例えば60mm以上、360mm以下である。
【0046】
また、RCスラブ50の厚さT2は、CLTパネル30の板厚T1と同じでもよい。RCスラブ50の厚さT2は、CLTパネル30の板厚T1の50%以上、400%以下でもよい。
【0047】
例えば、図2及び図3に示されるように、ブロック81のX軸方向における幅W1は、X軸方向に隣り合うブロック81同士の間隔L1の5%以上、50%以下でもよい。図3に示されるように、ブロック81のY軸方向における幅W2は、Y軸方向に隣り合うブロック81同士の間隔L2の5%以上、50%以下でもよい。ブロック81の幅W1,W2は、同じでもよく異なっていてもよい。ブロック81同士の間隔L1,L2は、同じでもよく異なっていてもよい。間隔L1は、X軸方向において隣り合うブロック81の中心位置同士の距離である。間隔L2は、Y軸方向において隣り合うブロック81の中心位置同士の距離である。
【0048】
平面視において、複数のブロック81の上面82の合計の面積は、CLTパネル30の全体の面積の5%以上、25%以下でもよい。
【0049】
CLTパネル30の上面31の上に、コンクリート51が打設され、形鋼材71,72、及びブロック81が、コンクリート51に埋め込まれている。形鋼材71,72の第2片74,76、及びブロック81の側壁84,85が、コンクリート51と係合することにより、RCスラブ50とCLTパネル30との間において、せん断力が伝達される。
【0050】
CLTパネル30に固定された一対の形鋼材71,72間の隙間にブロック81を上方から押し込むことにより、ブロック81を固定することができる。ブロック81の固定方法は、これに限定されない。例えば、形鋼材71,72の第2片74,76と、ブロック81とをねじ止めにより固定してもよい。また、一対の形鋼材71,72及びブロック81を互いに固定した後に、一対の形鋼材71,72及びブロック81をCLTパネル30の上面31に固定してもよい。
【0051】
(合成スラブ101の作用効果)
第1実施形態に係る合成スラブ101によれば、CLTパネル30の上面31に一対の形鋼材71,72が固定され、複数のブロック81が、形鋼材71,72との間の隙間に嵌っていることにより、形鋼材71,72によってブロック81を支持することができる。さらに、本態様によれば、CLTパネル30の上に施工されるRCスラブ50の内部に形鋼材71,72及びブロック81が埋め込まれることになる。これにより、ブロック81及び形鋼材71,72を介して、RCスラブ50とCLTパネル30との間のせん断力を伝達することができる。また、本態様によれば、形鋼材71,72が、RCスラブ50の主筋である鉄筋61と交差する方向に延在することにより、鉄筋61が延在する方向のせん断力を、ブロック81、形鋼材71,72によって受けることができる。さらに、本態様によれば、RCスラブ50とCLTパネル30との間のせん断力の伝達性能を向上させ、合成スラブ101における耐力及び剛性の向上を図ることができる。
【0052】
また、合成スラブ101では、一対の形鋼材71,72の間に、ブロック81が嵌っているので、一方の形鋼材71に作用する力を、ブロック81を介して、他方の形鋼材72に、伝達することができる。これにより、形鋼材71に作用するX軸方向の力を分散させることができる。同様に、形鋼材72に作用するX軸方向の力を形鋼材71に伝達することができる。また、一対の形鋼材71,72の間に、ブロック81が嵌っているので、X軸方向において、形鋼材71,72の変形を抑制することができる。合成スラブ101では、一対の形鋼材71,72の間に、ブロック81が嵌っていることにより、ブロック81が配置されていない構成と比較して、X軸方向における形鋼材71,72の変形を抑制することができる。
【0053】
また、ブロック81の上部は、一対の形鋼材71,72よりも上方に張り出している。本態様によれば、形鋼材71,72よりも上方に張り出すブロック81の上部によって、せん断力を受けることができる。これにより、ブロック81、及び形鋼材71,72を介して、RCスラブ50とCLTパネル30との間のせん断力を伝達することができる。合成スラブ101では、ブロック81を備えず、形鋼材71,72のみを備える構成と比較して、高いせん断力を伝達することができる。本態様によれば、RCスラブ50とCLTパネル30との間のせん断力の伝達性能を向上させ、合成スラブ101における耐力及び剛性の向上を図ることができる。
【0054】
また、合成スラブ101において、複数のブロック81は、形鋼材71,72の長手方向において、所定の間隔L2を置いて配置されている。本態様によれば、形鋼材71,72の長手方向に所定の間隔L2を置いて配置された複数のブロック81によって、せん断力を受けることができる。また、一対の形鋼材71,72間の隙間であって、複数のブロック81間の領域には、コンクリート51が充填されることになる。本態様によれば、複数のブロック81及び形鋼材71,72を介して、RCスラブ50とCLTパネル30との間のせん断力を伝達することができる。本態様によれば、RCスラブ50とCLTパネル30との間のせん断力の伝達性能を向上させ、合成スラブ101における耐力及び剛性の向上を図ることができる。
【0055】
また、合成スラブ101では、複数のブロック81は、平面視矩形状の格子の格点に配置されている。本態様によれば、格子の格点に配置された複数のブロック81により、RCスラブ50とCLTパネル30との間のせん断力を伝達することができ、せん断力の伝達性能を向上させ、合成スラブにおける耐力及び剛性の向上を図ることができる。また、CLTパネル30の上面31に複数のブロック81を均等に配置できることにより、RCスラブ50とCLTパネル30との間のせん断力の伝達が、局所的に集中することが防止される。合成スラブにおける応力を分散することができ、耐力及び剛性の向上を図ることができる。
【0056】
また、合成スラブ101では、ブロック81の材質は、木、モルタル、コンクリートの何れかである。本態様の合成スラブ101によれば、木、モルタル、コンクリートから形成されたブロック81を介して、RCスラブ50とCLTパネル30との間のせん断力を伝達することができる。本態様によれば、所定の強度が確保されたブロック81により、せん断力を伝達することができ、せん断力の伝達性能を向上させ、合成スラブ101における耐力及び剛性の向上を図ることができる。
【0057】
また、本実施形態に係る合成スラブ101によれば、CLTパネル30が所定の板厚を有し、従来技術と比較して、板厚を厚くして、CLTパネル30の耐力及び剛性を確保することができることにより、支保工の設置数量を削減することができる。コンクリート51を打設する際の支保工の設置数量を削減することができる。
【0058】
また、本態様によれば、CLTパネル30の板厚を厚くすることにより、RCスラブ50におけるコンクリートの削減を図り、合成スラブ101全体における軽量化を図ることができる。これにより、支保工の設置数量の削減を図ることができる。そのため、施工現場における作業を軽減することができ、工期の短縮、及び建設コストの削減を図ることができる。なお、合成スラブ101は、現場打ちのコンクリート51を有するものでもよく、予め工場等で打設されたプレキャストコンクリート(PCa板)を有するものでもよい。
【0059】
[第2実施形態に係る合成スラブ]
次に、図5を参照して第2実施形態に係る合成スラブ101Bについて説明する。図5は、第2実施形態に係る合成スラブの一例を示す平面図であり、コンクリートが打設される前のCLTパネルを示す平面図である。図5に示す第2実施形態に係る合成スラブ101Bが、第1実施形態に係る合成スラブ101と違う点は、ブロック81Bが、一対の形鋼材71,72の長手方向に沿って連続している点である。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態と同様の説明は省略する。
【0060】
合成スラブ101BのCLTパネル30には、Y軸方向に所定の間隔L2を置いて配置された複数のブロック81に代えて、Y軸方向に連続するブロック81Bが配置されている。Y軸方向において、ブロック81Bの長さは、形鋼材71,72の長さよりも長くてもよい。なお、Y軸方向において、ブロック81Bの長さは、形鋼材71,72の長さと同じでもよく、形鋼材71,72の長さよりも短くてもよい。
【0061】
ブロック81Bは、X軸方向において、所定の間隔L3を置いて配置されている。例えば、間隔L3は、第1実施形態の間隔L1よりも大きい。間隔L3は、X軸方向において隣り合うブロック81Bの中心位置同士の距離である。
【0062】
CLTパネル30の上面31の上に、コンクリート51が打設され、形鋼材71,72、及びブロック81Bが、コンクリート51に埋め込まれている。形鋼材71,72及びブロック81Bが、コンクリート51と係合することにより、RCスラブ50とCLTパネル30との間において、せん断力が伝達される。
【0063】
このような第2実施形態に係る合成スラブ101Bにおいても第1実施形態に係る合成スラブ101と同様の作用効果を奏する。合成スラブ101Bでは、鉄筋61と交差する方向に連続するブロック81Bを介して、RCスラブ50とCLTパネル30との間のせん断力を伝達することができ、せん断力の伝達性能を向上させ、合成スラブ101Bにおける耐力及び剛性の向上を図ることができる。また、長手方向に連続するブロック81Bを介して、せん断力を伝達することができることにより、長さが短い複数のブロック81を介してせん断力を伝達する場合よりも、せん断力の伝達効率を向上させることができる。そのため、ブロック81Bの設置数量を削減することができる。
【0064】
[第3実施形態に係る合成スラブ]
次に、図6を参照して第3実施形態に係る合成スラブ101Cについて説明する。図6は、第3実施形態に係る合成スラブのCLTパネルの上面に固定された一対の形鋼材、及び一対の形鋼材の間に配置されたブロックを拡大して示す断面図である。図6に示す第3実施形態に係る合成スラブ101Cが、第1実施形態に係る合成スラブ101と違う点は、ブロック81Cの張り出し高さH3が、形鋼材71,72の第2片74,76の高さH2よりも低い点である。なお、第3実施形態の説明において、上記の第1及び第2実施形態と同様の説明は省略する。
【0065】
合成スラブ101Cは、ブロック81に代えて、ブロック81Cを備える。ブロック81Cの上面82は、形鋼材71,72の第2片74,76の上端よりも低い位置に配置されている。ブロック81Cの張り出し高さH3は、CLTパネル30の上面31からブロック81Cの上面82までの高さである。張り出し高さH3は、形鋼材71,72の第2片74,76の高さH2よりも低い。第2片74,76の上端は、ブロック81の上面82よりも上方に突出している。
【0066】
CLTパネル30の上面31の上に、コンクリート51が打設され、形鋼材71,72、及びブロック81Cが、コンクリート51に埋め込まれている。合成スラブ101Cでは、形鋼材71,72の第2片74,76及びブロック81Cの上面82によって形成される凹部の内部に、コンクリート51が充填される。形鋼材71,72及びブロック81Cが、コンクリート51と係合することにより、RCスラブ50とCLTパネル30との間において、せん断力が伝達される。
【0067】
このような第3実施形態に係る合成スラブ101Cにおいても第1実施形態に係る合成スラブ101と同様の作用効果を奏する。合成スラブ101Cでは、一対の形鋼材71,72及びブロック81Cを介して、RCスラブ50とCLTパネル30との間のせん断力を伝達することができ、せん断力の伝達性能を向上させ、合成スラブ101Bにおける耐力及び剛性の向上を図ることができる。
【0068】
また、一対の形鋼材71,72のうちの一方の形鋼材71に作用するX軸方向の力を複数のブロック81Cを介して、他方の形鋼材72に伝えることができる。同様に、形鋼材72に作用するX軸方向の力を複数のブロック81Cを介して、形鋼材71に伝えることができる。これにより、合成スラブ101Cでは、形鋼材71,72に作用する力を、ブロック81Cを介して分散させることができる。
【0069】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【0070】
上記の実施形態では、ブロック81の上面82、下面83、及び側壁84,85が平面となっている場合について例示しているが、これらの面に、凹凸形状が形成されていてもよい。例えば、ブロック81の上面82に、溝や段差が形成されていてもよい。
【0071】
上記の実施形態では、ブロック81の材質として、木、モルタル、コンクリートを例示しているが、ブロック81の材質はこれらに限定されない。ブロック81の材質は例えば金属でもよく、その他の所定の強度を有するものでもよい。ブロック81を介して、RCスラブ50とCLTパネル30との間のせん断力を伝達可能であればよい。
【0072】
また、上記の実施形態では、形鋼材71,72は、山形鋼に限定されず、溝形鋼でもよく、その他の形鋼材でもよい。
【0073】
また、上記の実施形態では、第1片73,75が互いに反対側に向くように配置されている場合について例示しているが、形鋼材71,72の配置はこれに限定されない。例えば、第1片73,75が互いに向き合うように配置されていてもよい。このような場合には、ブロック81の下に第1片73,75が配置される。また、第1片73,75が、同じ向きに張り出すように配置されていてもよい。
【0074】
ブロック81の下面83は、CLTパネル30の上面31と接触していてもよく、ブロック81の下面83が、上面31よりも上方に配置されて、互いに接触していなくてもよい。例えば、ブロック81の下面83とCLTパネル30の上面31との間のスペースに他の部材が配置されていてもよく、コンクリート51が存在していてもよい。
【0075】
また、上記の実施形態では、ブロック81よりも上方に鉄筋61,62が配置されている場合について例示しているが、鉄筋61,62がブロック81の上面82の上に配置されていてもよい。これにより、鉄筋61,62を配筋する際に、鉄筋61,62を支持するためのサポートとして、ブロック81を利用することができる。同様に、一対の形鋼材71,72を、鉄筋61,62を配筋する際のサポートとして利用してもよい。このような合成スラブ101によれば、鉄筋61,62を支持するためのサポートの設置数量を削減することができる。
【符号の説明】
【0076】
101,101B,101C:合成スラブ
8,9: スタッド
10: 梁
11: ウェブ
12: 上フランジ
12a:上面
13: 下フランジ
30: CLTパネル(木質面材)
31: 上面(第1面)
32: 下面(第2面)
50: RCスラブ(鉄筋コンクリートスラブ)
51: コンクリート
61: 鉄筋(主筋)
62: 鉄筋
71: 形鋼材(第1形鋼材)
72: 形鋼材(第2形鋼材)
81,81B,81C:ブロック(ブロック体)
X: X軸方向(第2方向)
Y: Y軸方向(第1方向)
Z: Z軸方向(木質面材の板厚方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6