(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092821
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】開口部補強構造
(51)【国際特許分類】
E04C 3/12 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
E04C3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209000
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】田原 健一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 聡
(72)【発明者】
【氏名】桂 大輔
(72)【発明者】
【氏名】藤田 有章
(72)【発明者】
【氏名】松戸 正士
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 樹
【テーマコード(参考)】
2E163
【Fターム(参考)】
2E163FA12
2E163FC05
2E163FC21
2E163FC31
2E163FC38
(57)【要約】
【課題】開口部周辺の耐力及び剛性の向上を図ることが可能であり、合わせ木質梁の寸法の増大を抑制することが可能な開口部補強構造を提供すること。
【解決手段】開口部補強構造101は、合わせ木質梁10が離隔する方向に合わせ木質梁10をそれぞれ貫通する開口部25,35を補強する開口部補強構造101であって、合わせ木質梁10の木質梁20と木質梁30との間に配置され、合わせ木質梁10の長手方向において開口部25,35と同じ位置を含み、開口部25,35よりも上又は下に位置する補剛材50A,50Bを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合わせ木質梁が離隔する方向に前記合わせ木質梁をそれぞれ貫通する開口部を補強する開口部補強構造であって、
前記合わせ木質梁の間に配置され、前記合わせ木質梁の長手方向において前記開口部と同じ位置を含み、前記開口部よりも上又は下に位置する補剛材を備えることを特徴とする、開口部補強構造。
【請求項2】
前記補剛材は、前記開口部の上下両側に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の開口部補強構造。
【請求項3】
前記補剛材は、前記開口部の中心線が延在する方向から見た場合に、前記開口部を囲むように形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の開口部補強構造。
【請求項4】
前記補剛材は、前記合わせ木質梁の上に載置されるスラブと一体的に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の開口部補強構造。
【請求項5】
前記合わせ木質梁が離隔する方向に延在し、前記開口部の両方に挿通された配管を更に備えることを特徴とする、請求項1に記載の開口部補強構造。
【請求項6】
前記補剛材は、木質又はコンクリート製のブロック体であり、前記合わせ木質梁にそれぞれ接合されていることを特徴とする、請求項1に記載の開口部補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、木質の梁における開口部を補強する補強構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の木質材の補強構造では、木製の板材に予め補強繊維シートを接着してなる補強板を、構造材として使用される木質材に接着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術に係る補強構造では、開口部における強度低下を見込んで、木質梁の寸法を大きくする必要があった。
【0005】
本発明は、開口部周辺の耐力及び剛性の向上を図ることが可能であり、合わせ木質梁の寸法の増大を抑制することが可能な開口部補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成すべく、本発明による開口部補強構造の一態様は、
合わせ木質梁が離隔する方向に前記合わせ木質梁をそれぞれ貫通する開口部を補強する開口部補強構造であって、
前記合わせ木質梁の間に配置され、前記合わせ木質梁の長手方向において前記開口部と同じ位置を含み、前記開口部よりも上又は下に位置する補剛材を備えることを特徴とする。
【0007】
本態様によれば、合わせ木質梁の開口部の上又は下に位置する補剛材を備えることにより、合わせ木質梁の長手方向において、開口部に対応する位置に補剛材が配置される。補剛材は、開口部によって損失した断面性能を確保することができ、開口部の周辺に作用する荷重を受けることができる。これにより、合わせ木質梁の木質梁間に配置された補剛材によって、開口部周辺の耐力及び剛性の向上を図ることができ、合わせ木質梁の寸法の増大を抑制することができる。
【0008】
また、本発明の他の態様において、
前記補剛材は、前記開口部の上下両側に配置されていることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、開口部の上下に配置された補剛材により、荷重を受けることができ、開口部周辺の耐力及び剛性の向上を図ることができ、合わせ木質梁の寸法の増大を抑制することができる
【0010】
また、本発明の他の態様において、
前記補剛材は、前記開口部の中心線が延在する方向から見た場合に、前記開口部を囲むように形成されていることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、開口部を囲むように形成された補剛材により、荷重を受けることができる。本態様では、上下両側だけでなく、合わせ木質梁の長手方向における両側に配置された補剛材の部分によって、荷重を受けることができる。その結果、開口部周辺の耐力及び剛性の向上をより一層図ることができる。
【0012】
また、本発明の他の態様において、
補剛材は、前記合わせ木質梁の上に載置されるスラブと一体的に形成されていることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、スラブと一体的に補剛材を形成することにより、補剛材に作用する負荷をスラブに伝達することができる。また、本態様によれば、スラブを施工する際に、同時に補剛材を施工することができる。
【0014】
また、本発明の他の態様において、
前記合わせ木質梁が離隔する方向に延在し、前記開口部の両方に挿通された配管を更に備えることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、両方の開口部に配管を挿通することにより、合わせ木質梁の幅方向に配管を貫通させることができる。なお、合わせ木質梁の幅方向とは、平面視において、合わせ木質梁の長手方向と直交する方向でもよい。
【0016】
また、本発明の他の態様において、
補剛材は、木質又はコンクリート製のブロック体であり、前記合わせ木質梁にそれぞれ接合されていることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、所定の強度が確保されたブロック体により、合わせ木質梁に作用する荷重を受けることができ、開口部周辺の耐力及び剛性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上の説明から理解できるように、本発明によれば、開口部周辺の耐力及び剛性の向上を図ることが可能であり、合わせ木質梁の寸法の増大を抑制することが可能な開口部補強構造を提供することを目的とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係る開口部補強構造の一例を示す部分断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る開口部補強構造の一例を斜め下方から示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る開口部補強構造の一例を示す斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係る開口部補強構造の一例を示す断面図であり、XY面に沿う断面図である。
【
図5】第2実施形態に係る開口部補強構造の一例を斜め下方から示す斜視図である。
【
図6】第2実施形態に係る開口部補強構造の一例を示す断面図であり、XZ面に沿う断面図である。
【
図7】第2実施形態に係る開口部補強構造の一例を示す断面図であり、YZ面に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態に係る開口部補強構造について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0021】
[第1実施形態に係る開口部補強構造]
図1乃至
図4を参照して、第1実施形態に係る開口部補強構造の一例について説明する。ここで、
図1は、第1実施形態に係る開口部補強構造の一例を示す部分断面図である。
図2は、第1実施形態に係る開口部補強構造の一例を斜め下方から示す斜視図である。
図3は、第1実施形態に係る開口部補強構造の一例を示す斜視図である。
図4は、第1実施形態に係る開口部補強構造の一例を示す断面図であり、XY面に沿う断面図である。また、各図において、互いに直交するX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向を示す矢印を適宜図示する場合がある。X軸方向及びY軸方向は、水平方向に沿う。Z軸方向は、鉛直方向に沿う。
【0022】
図1に示されるように、開口部補強構造101を有する建物の躯体は、柱40、及び合わせ木質梁10を備える。柱40は、例えば鉄筋コンクリート造(RC造)の柱である。柱40は、RC造の柱に限定されず、鉄骨造(S造)の柱でもよく、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の柱でもよく、木造の柱でもよく、コンクリート充填鋼管構造(CFT造、Concrete Filled Steel Tube)の柱でもよい。
【0023】
図2~
図4に示されるように、合わせ木質梁10は、2本の木質梁20,30を有する。合わせ木質梁10は、例えばX軸方向に延在する。木質梁20,30は、合わせ木質梁10の幅方向に離れて配置されている。合わせ木質梁10の幅方向は、Y軸方向である。なお、合わせ木質梁の幅方向とは、平面視において、合わせ木質梁の長手方向と直交する方向でもよい。
【0024】
木質梁20,30は、複数の層が積層されて形成され、これらの層に含まれるひき板は、隣接する層のひき板と繊維方向が互いに直交するように配置されている。複数の層は、互いに接着されている。木質梁20,30は、CLTでもよく、LVL(Laminated Veneer Lumber、単板積層材)などその他の木質の梁でもよい。
【0025】
木質梁20は、上面21、下面22、及び一対の側面23を有する。一対の側面23は、Y軸方向に対向する。木質梁30は、上面31、下面32、及び一対の側面33を有する。一対の側面33は、Y軸方向に対向する。木質梁20の側面23と、木質梁30の側面33とは、Y軸に対向する。
【0026】
木質梁20,30には、開口部25,35が形成されている。開口部25,35は、木質梁20,30をY軸方向に貫通する。開口部25,35は、Y軸方向(開口部の中心線が延在する方向)に見て、同じ位置に配置されている。両方の開口部25,35には、配管60が挿通されている。なお、
図2では、配管60の図示が省略されている。
【0027】
開口部補強構造101は、補剛材50A,50Bを備える。補剛材50A,50Bは、Y軸方向において、木質梁20と木質梁30との間に配置されている。補剛材50A,50Bは、例えば直方体であるブロックである。補剛材50A,50Bは、上面51、下面52、側面53,54を有する。上面21及び下面22は、Z軸方向に対向する。一対の側面53はX軸方向に対向する。一対の側面54はY軸方向に対向する。
【0028】
補剛材50A,50Bは、上下に離れて配置されている。Y軸方向に見た場合、補剛材50Aは、開口部25,35の上方に配置され、補剛材50Bは、開口部25,35の下方に配置されている。補剛材50Aは、配管60の上方に配置され、補剛材50Bは、配管60の下方に配置されている。
【0029】
合わせ木質梁10の長手方向において、補剛材50A,50Bは、開口部25,35と同じ位置に配置されている。合わせ木質梁10の長手方向において、補剛材50A,50Bは、配管60と重なる位置に配置されている。
【0030】
補剛材50A,50Bの側面54は、Y軸方向において、木質梁20,30と対向する。補剛材50A,50Bは、Y軸方向において、木質梁20と木質梁30とによって挟まれている。
【0031】
補剛材50A,50Bは、木質梁20,30に接合されている。補剛材50A,50Bは、木質梁20,30に接着されていてもよい。補剛材50A,50Bは、木質梁20,30にボルト接合されていてもよい。補剛材50A,50Bは、例えば、ハイテンションボルトやラグスクリューボルトを用いて、木質梁20,30に接合されていてもよい。補剛材50A,50Bは、例えば、木ダボ、ドリフトピンなどのその他の棒状の締結部材を用いて、木質梁20,30に接合されていてもよい。
【0032】
図1に示されるように、配管60の側面は、Z軸方向において補剛材50Aの下面52と当接していてもよい。配管60の側面は、Z軸方向において補剛材50Bの上面21に当接していてもよい。
【0033】
補剛材50A,50Bは、所定の強度を有すればよく、例えば、木材からなるブロックでもよく、コンクリートからなるブロックでもよい。補剛材50A,50Bは、例えばモルタルから形成されたブロックでもよく、その他の材質から形成されたブロックでもよい。
【0034】
図1及び
図4に示されるように、補剛材50A,50BのX軸方向の長さL1は、開口部25,35の内径D1よりも大きい。補剛材50A,50Bの長さL1は、X軸方向において、一対の側面53間の長さである。補剛材50A,50Bの長さL1は、例えば、開口部25,35の内径D1の1.5倍以上、5倍以下の長さである。
【0035】
図4に示されるように、補剛材50A,50BのY軸方向の長さL2は、開口部25,35の内径D1よりも大きい。補剛材50A,50Bの長さL2は、Y軸方向において、一対の側面54間の長さである。補剛材50A,40Bの長さL2は、補剛材50A,50Bの長さL1よりも短くてよい。
【0036】
図1に示されるように、補剛材50A,50BのZ軸方向に沿う厚さT1,T2は、開口部25,26の内径D1よりも厚い。補剛材50A,50Bの厚さT1,T2は、Z軸方向において、上面51と下面52との間の長さである。補剛材50A,50Bの厚さT1,T2は、開口部25,35の内径D1の0.5倍以上、10倍以下の厚さである。
【0037】
補剛材50A,50Bの合計の厚さT3(=T1+T2)は、木質梁20,30の梁せいH1の50%以上、95%以下でもよい。また、補剛材50Aの厚さT1は、補剛材50の厚さT2と同じでもよく、異なっていてもよい。補剛材50Aの厚さT1は、補剛材50Bの厚さT2よりも厚くてもよく、薄くてもよい。
【0038】
図1及び
図2に示されるように、合わせ木質梁10A,10Bの上には、床版80が載置される。床版80は、例えば鉄筋コンクリートスラブでもよい。床版80は、補剛材50Aの上面51、及び木質梁20,30の上面21,31の上に載置されている。
【0039】
また、木質梁20,30の下面22,32、及び側面23,33は、耐火被覆材によって覆われていてもよい。同様に、補剛材50Aの下面52、及び側面53は、耐火被覆材によって覆われていてもよい。補剛材50Bの上面51、下面52、及び側面53は、耐火被覆材によって覆われていてもよい。また、床版80の下面は、耐火被覆材によって覆われていてもよい。
【0040】
(作用効果)
このような第1実施形態に係る開口部補強構造101は、合わせ木質梁10が離隔する方向に木質梁20,30をそれぞれ貫通する開口部25,35を補強する開口部補強構造101であって、木質梁20と木質梁30との間に配置され、Y軸方向に見た場合、開口部25,35の上下に位置する補剛材50A,50Bを備える。
【0041】
本態様によれば、開口部25,35の上下に位置する補剛材50A,50Bを備えることにより、合わせ木質梁10の長手方向であるX軸方向において、開口部25,35に対応する位置に補剛材50A,50Bが配置される。補剛材50A,50Bは、開口部25,35によって損失した断面性能を確保することができ、開口部25,35の周辺に作用する荷重を受けることができる。これにより、木質梁20,30間に配置された補剛材50A,50Bによって、開口部25,35周辺の耐力及び剛性の向上を図ることができ、合わせ木質梁10の寸法の増大を抑制することができる。開口部補強構造101では、木質梁20と木質梁30との間のスペースを活用して、補剛材50A,50Bを配置することができることにより、合わせ木質梁10の寸法の増大を抑制しつつ、開口部25,35を補強することができる。
【0042】
開口部補強構造101では、合わせ木質梁10の長手方向において、開口部25,35に対応する位置に補剛材50A,50Bが設けられていることにより、開口部25,35によって損失した断面性能を確保することができ、断面二次モーメントを増大させて、合わせ木質梁10における耐力及び剛性の向上を図ることができる。
【0043】
また、開口部補強構造101では、補剛材50A,50Bにより断面性能の上昇を見込めることにより、開口部25,35の大きさに対する制限を緩和することができる。これにより、開口部25,35の内径に関して、設計の自由度を向上させることができる。
【0044】
また、開口部補強構造101では、補剛材50A,50Bは、木質又はコンクリート製のブロック体であり、木質梁20,30にそれぞれ接合されている。本態様によれば、所定の強度が確保されたブロック体である補剛材50A、50Bにより、合わせ木質梁10に作用する荷重を受けることができ、開口部25,35周辺の耐力及び剛性の向上を図ることができる。
【0045】
[第2実施形態に係る開口部補強構造]
次に、
図5、
図6、及び
図7を参照して第2実施形態に係る開口部補強構造101Bについて説明する。
図5は、第2実施形態に係る開口部補強構造の一例を斜め下方から示す斜視図である。
図6は、第2実施形態に係る開口部補強構造の一例を示す断面図であり、XZ面に沿う断面図である。
図7は、第2実施形態に係る開口部補強構造の一例を示す断面図であり、YZ面に沿う断面図である。
図5~
図7に示される第2実施形態に係る開口部補強構造101Bが、第1実施形態に係る開口部補強構造101と違う点は、Y軸方向に見て、開口部25,35の上下に分割されて配置された補剛材50A,50Bに代えて、床版(スラブ)80と一体に形成された補剛材50Cを備える点である。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態と同様の説明は省略する。
【0046】
開口部補強構造101Bは、床版80と一体的に形成された補剛材50Cを備える。補剛材50Cは、下面52、及び側面53,54を有する。補剛材50Cの上方には床版80が形成されている。補剛材50Cは、コンクリート製のブロック体である。補剛材50Cは、RC造のブロック体でもよい。補剛材50Cの下面52は、Z軸方向において、木質梁20,30の下面22,32と同じ位置に形成されている。
【0047】
補剛材50Cには、Y軸方向に貫通する開口部55が形成されている。Y軸方向において、補剛材50Cの開口部55は、木質梁20,30の開口部25,35と同じ位置に形成されている。配管60は、開口部25,35,55に挿通されて、Y軸方向に木質梁20,30及び補剛材50Cを貫通する。なお、
図5では、配管60の図示が省略されている。
【0048】
図6に示されるように、側面53は、Z軸方向において、木質梁30の上面31に対応する位置から、木質梁30の下面32に対応する位置まで連続している。X軸方向において、補剛材50Cの開口部55の両側においても、補剛材50Cが形成されている。Y軸方向に見た場合、補剛材50Cの開口部55を囲むように、補剛材50Cが形成されている。
【0049】
次に、開口部補強構造101Bの施工手順について説明する。まず、木質梁20,30を配置する。柱40に対して、木質梁20,30を接合する。次に、補剛材50C及び床版80を形成するための型枠を設置する。次に、型枠の上に鉄筋を配筋する。また、配管60を木質梁20,30の開口部25,35に挿通する。次に、型枠の内部にコンクリートを打設する。なお、床版80及び補剛材50Cは、施工現場にてコンクリートを打設して形成されるものに限定されず、プレキャストコンクリート製の床版80及び補剛材50Cでもよい。また、補剛材50Cは、床版80と一体として形成されたものに限定されず、床版80とは別体として形成されたものでもよい。
【0050】
このような第2実施形態に係る開口部補強構造101Bにおいても、上記の第1実施形態の開口部補強構造101と同様の作用効果を奏する。開口部補強構造101Bによれば、Y軸方向に見た場合、開口部25,35,55を囲むように形成された補剛材50Cにより、荷重を受けることができる。また、本態様では、上下両側だけでなく、木質梁20,30の長手方向であるX軸方向における両側に配置された補剛材50Cの部分によって、荷重を受けることができる。その結果、開口部周辺の耐力及び剛性の向上をより一層図ることができる。
【0051】
また、開口部補強構造101Bにおいて、補剛材50Cは、木質梁20,30の上面21,31の上に載置される床版80と一体的に形成されている。本態様によれば、合わせ木質梁10に作用する荷重を、補剛材50Cを介して床版80に伝達することができる。これにより、合わせ木質梁10における耐力及び剛性の向上を図ることができる。また、本態様によれば、床版80であるRCスラブを施工する際に、同時に補剛材50Cを施工することができる。
【0052】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【0053】
上記の実施形態では、開口部25,35に配管60が挿通されている場合について、例示しているが、開口部25,35に配管60が挿通されていなくてもよい。配管60は、例えば鋼管でもよく、塩ビ管でもよく、その他の材質から成る配管でもよい。また、開口部25,35に複数の配管60が挿通されていてもよい。同様に、補剛材50Cの開口部55に、配管60が挿通されていなくてもよい。
【0054】
また、開口部25,35に挿通されるものは、配管60に限定されず、例えば電気配線でもよく、強度部材でもよい。
【0055】
また、上記の実施形態では、Y軸方向に交差する断面が円形の開口部25,35について例示しているが、開口部25,35の形状は、円形に限定されず、矩形でもよく、その他の形状でもよい。
【0056】
また、上記の実施形態では、Y軸方向に合わせ木質梁10を見た場合に、開口部25,35の上方に補剛材50Aが形成され、開口部25,35の下方に補剛材50Bが形成されている場合について例示しているが、開口部補強構造101はこれに限定されない。開口部補強構造101は、Y軸方向に見て開口部25,35の上方に形成された補剛材50Aのみを備えるものでもよく、Y軸方向に見て開口部25の下方に形成された補剛材50Bのみを備えるものでもよい。
【0057】
また、上記の実施形態では、Y軸方向に交差する断面が矩形の補剛材50A,50Bについて例示しているが、補剛材50A,50Bの断面形状は矩形に限定されない。補剛材50A,50Bの断面形状は、例えば、台形状でもよく、円形でもよくその他の形状でもよい。
【0058】
また、上記の実施形態では、木質梁20,30の上に床版80が設置されている場合について例示しているが、木質梁20,30の下面に接するように床版80が設置されていてもよい。開口部補強構造101は、逆梁工法により施工される床版80を支持する合わせ木質梁10の開口部25,35を補強するものでもよい。
【符号の説明】
【0059】
101,101B:開口部補強構造
10:合わせ木質梁
20,30:木質梁
25,35:開口部
50A,50B,50C:補剛材
80:床版(スラブ)
X:X軸方向(合わせ木質梁の長手方向)
Y:Y軸方向(合わせ木質梁の幅方向、合わせ木質梁が離隔する方向)
Z:Z軸方向(上下方向)