(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092828
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】センサ装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01R 33/09 20060101AFI20240701BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G01R33/09
G01R33/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209013
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 州平
(72)【発明者】
【氏名】佐渡 文哉
【テーマコード(参考)】
2G017
【Fターム(参考)】
2G017AA01
2G017AD55
2G017BA05
2G017BA09
2G017BA15
(57)【要約】
【課題】より安定した検出性能を有すると共に、さらなる小型化に対応可能であるセンサ装置を提供する。
【解決手段】センサ装置は、第1の表面を有する支持体と、第2の表面を有する基板と前記第2の表面に設けられたセンサ素子部とを有し、第1の表面に設けられたセンサチップと、第1の表面に設けられた導電性ピラーとを備える。第1の表面から導電性ピラーの上端までのピラー高さは、第1の表面から第2の表面までのチップ高さよりも高く、導電性ピラーは、第1の表面側から順に、第1の断面積を有する第1の階層部分と、第1の断面積よりも小さな第2の断面積を有する第2の階層部分とが積層された構造を含む。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面を有する支持体と、
第2の表面を有する基板と前記第2の表面に設けられたセンサ素子部とを有する、前記第1の表面に設けられたセンサチップと、
前記第1の表面に設けられた導電性ピラーと
を備え、
前記第1の表面から前記導電性ピラーの上端までのピラー高さは、前記第1の表面から前記第2の表面までのチップ高さよりも高く、
前記導電性ピラーは、前記第1の表面側から順に、第1の断面積を有する第1の階層部分と、前記第1の断面積よりも小さな第2の断面積を有する第2の階層部分とが積層された構造を含む
センサ装置。
【請求項2】
前記第2の階層部分は、前記第1の表面に沿った面内方向において前記センサ素子部と重なり合う位置にある
請求項1記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記第1の表面に沿った面内方向において、前記センサチップと前記第1の階層部分との第1距離よりも前記センサチップと前記第2の階層部分との第2距離が長い
請求項1記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記センサ素子部は、応力により感度が変化するセンサ素子を含む
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記センサ素子は、磁気センサ素子または歪センサ素子である
請求項4記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記センサ素子部と前記導電性ピラーとを電気的に接続する配線をさらに備え、
前記センサチップおよび前記導電性ピラーは、前記支持体と前記配線との間の階層にそれぞれ設けられている
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記第1の階層部分の第1高さは、前記第2の階層部分の第2高さよりも大きい
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項8】
前記配線のうちの前記支持体と反対側の面に設けられた導電層をさらに備える
請求項6記載のセンサ装置。
【請求項9】
前記導電性ピラーは、前記第1の表面のうち前記センサチップと異なる位置に設けられ、前記センサ素子部と電気的に接続されている
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項10】
第1の表面を有する支持体を用意することと、
前記第1の表面に第1の階層部分を形成することと、
前記第1の表面のうち前記第1の階層部分と異なる位置に、第2の表面を有する基板と前記第2の表面に設けられたセンサ素子部とを有するセンサチップを配置することと、
前記第1の表面に設けられた前記第1の階層部分および前記センサチップを覆うように絶縁膜を形成することと、
前記絶縁膜のうち前記第1の階層部分と対応する位置に第1の開口を形成し、前記絶縁膜のうち前記センサ素子部と対応する位置に第2の開口を形成することと、
前記第1の開口および前記第2の開口をそれぞれ埋めると共に前記絶縁膜の一部を選択的に覆うように導電膜を形成し、前記第1の階層部分の上に第2の階層部分を設けることで導電性ピラーを形成することと
を含む
センサ装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1の開口における前記第1の表面に沿った開口断面積を、前記第1の階層部分における前記第1の表面に沿った第1断面積よりも小さくすることにより、前記第1断面積よりも、前記第2の階層部分における前記第1の表面に沿った第2断面積を小さくする
請求項10記載のセンサ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサ装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の用途で、基板上にセンサ素子が設けられた小型のセンサ装置が利用されている。センサ素子としては、例えば入射光の光電変換を行う光学素子が透明基板上に設けられた、イメージセンサ装置としての光学装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/083746号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、センサ装置は、安定した検出感度を有すると共により小型であるとよい。
【0005】
よって、より安定した検出性能を有すると共に、さらなる小型化に対応可能であるセンサ装置が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施態様としてのセンサ装置は、第1の表面を有する支持基板と、第2の表面を有するセンサ基板と第2の表面に設けられたセンサ素子部とを有し第1の表面に設けられたセンサチップと、支持基板の第1の表面のうちセンサチップと異なる位置に設けられセンサ素子部と電気的に接続された導電性ピラーとを備える。ここで、第1の表面から導電性ピラーの上端までのピラー高さは、第1の表面から第2の表面までのチップ高さよりも高い。さらに、導電性ピラーは、第1の表面側から順に、第1の断面積を有する第1の階層部分と、第1の断面積よりも小さな第2の断面積を有する第2の階層部分とが積層された構造を含む。
【0007】
本開示の一実施態様としてのセンサ装置では、センサチップのセンサ素子部と接続される導電性ピラーが第1の階層部分と第2の階層部分とを含み、第2の階層部分の第2の断面積が第1の階層部分の第1の断面積よりも小さい。このため、環境温度の上昇や外部からの加熱により導電性ピラーが熱膨張した場合であっても、センサチップのセンサ素子部に対する熱応力が低減される。そのため、検出性能が安定化する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施態様としてのセンサ装置によれば、より安定した検出性能を有すると共に、さらなる小型化に適する。
なお、本開示の効果はこれに限定されるものではなく、以下に記載のいずれの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本開示の一実施の形態に係る角度センサ装置の全体構成例を表す断面図である。
【
図1B】
図1Aに示した角度センサ装置の一部を拡大して表す平面模式図である。
【
図2】
図1Aに示した角度センサ装置の回路図である。
【
図3A】
図1Aに示した角度センサ装置の製造方法の一工程を表す説明図である。
【
図4】本開示の第1変形例としての角度センサ装置の全体構成例を表す断面図である。
【
図5】本開示の第2変形例としての角度センサ装置の全体構成例を表す断面図である。
【
図6】本開示の第3変形例としての角度センサ装置の全体構成例を表す断面図である。
【
図7】本開示の第4変形例としての角度センサ装置の全体構成例を表す断面図である。
【
図8A】本開示の第1の参考例としての角度センサ装置の製造方法の一工程を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
0.経緯
1.一実施の形態:磁気抵抗効果素子を有する角度センサ装置の例。
1.1 角度センサ装置1の構成
1.2 角度センサ装置1の製造方法
1.3 作用および効果
2.実施例
【0011】
<0.経緯>
従来、外部磁場の変化を検知するなどしてある物体の姿勢や回転角度などを検出する角度センサ装置が使用されている。そのような角度センサ装置は、磁石が取り付けられた回転体の近傍の限られた空間に配置されることから、角度センサ装置の小型化が求められている。また、より高度の測定精度も要求されることから、より多数のセンサ素子を限られた領域内に高密度で実装することが望まれる。
【0012】
そこで本出願人は、上記課題に鑑みて検討および改良を重ねた結果、高い測定精度を有すると共に、さらなる小型化に対応することのできる角度センサ装置を提供するに至った。
【0013】
<1.第1の実施の形態>
[1.1 角度センサ装置1の構成]
最初に、
図1Aから
図2を参照して、本発明の一実施の形態としての角度センサ装置1の構成について説明する。角度センサ装置1は、本発明の一実施形態の「センサ装置」に対応する一具体例である。
【0014】
図1Aは、角度センサ装置1の任意の断面を模式的に表す断面図である。
図1Bは、角度センサ装置1の一部を拡大して表す平面図である。
図1Aに示したように、角度センサ装置1は、支持基板2と、センサチップ3と、導電性ピラー4と、配線5と、接続層6と、絶縁膜7とを備えている。センサチップ3は、支持基板2に積層配置されている。より具体的には、センサチップ3は、支持基板2の表面2FSに設けられている。センサチップ3は、絶縁膜7に覆われている。支持基板2の表面2FSには、センサチップ3と異なる位置に、センサチップ3と隣り合うように導電性ピラー4が設けられている。導電性ピラー4は、絶縁膜7を貫通するように厚さ方向(Z軸方向)に延在している。
【0015】
なお、本実施の形態の角度センサ装置1では、支持基板2およびセンサチップ3は、互いに直交するX軸方向およびY軸方向を含むXY面に沿ってそれぞれ広がっている。また、本実施の形態では、支持基板2およびセンサチップ3の厚さ方向をZ軸方向としている。
【0016】
(支持基板2)
支持基板2は、例えばASIC(特定用途向け集積回路)を有する基板である。支持基板2の表面2FSには、端子部21が設けられている。なお、支持基板2は、ASICを有する基板に限定されるものではなく、単なるSi基板やサファイア基板、あるいは、例えばASICを有する基板とセンサチップ3との中継を行う中継基板であってもよい。
【0017】
(センサチップ3)
センサチップ3は、XY面に沿った平面視において例えば略正方形または略長方形の平面形状を有する略四角柱状の外観を有している。センサチップ3は、センサ基板31と、センサ素子部32との積層構造を有する。センサチップ3は、センサ素子部32と導通されたパッド部33をさらに有している。
【0018】
センサ基板31は、例えばシリコン基板である。センサ基板31の厚さは例えば200μm以下である。センサ基板31は、例えば略正方形または略長方形の平面形状の表面31FSを有する平板部材である。表面31FSは、センサ基板31の厚さ方向であるZ軸方向と略直交する平面である。
【0019】
センサ素子部32は、センサ基板31の表面31FS上の例えば中央領域に設けられている。センサ素子部32は、1以上の磁気センサ素子Eを含んでいる。磁気センサ素子Eは、例えばトンネル磁気抵抗効果素子(以下、TMR素子という。)である。磁気センサ素子Eは、熱応力や機械的応力などの応力により、その感度が変化するセンサ素子である。センサ素子部32は、複数のセンサ素子群を有している。
図1Bに示した構成例では、センサ素子部32は、マトリックス状に配列された4つの磁気センサ素子E1~E4(便宜上、
図1BではE1~E4と記載する)を含んでいる。磁気センサ素子E1~E4の各々は、例えば複数のTMR膜と、それら複数のTMR膜を直列接続する複数の配線とによって構成されている。磁気センサ素子E1~E4は、例えば
図2に示したフルブリッジ回路8の抵抗部R1~R4を構成している。なお、
図2は、角度センサ装置1の回路構成例を表す回路図である。角度センサ装置1は、例えばフルブリッジ回路8と、差分検出器AMPと、演算回路9とを有している。角度センサ装置1は、フルブリッジ回路8の接続点T1から得られる電位と接続点T2から得られる電位との差分に基づき、センサチップ3に対する外部磁場の変化を検出可能に構成されている。
【0020】
フルブリッジ回路8は、4つの抵抗部R1~R4を含んでいる。抵抗部R1は磁気センサ素子E1により構成され、抵抗部R2は磁気センサ素子E2により構成され、抵抗部R3は磁気センサ素子E3により構成され、抵抗部R4は磁気センサ素子E4により構成されている。フルブリッジ回路8は、直列接続された抵抗部R1および抵抗部R2と、直列接続された抵抗部R3および抵抗部R4とが、互いに並列接続されてなるものである。より具体的には、フルブリッジ回路8は、抵抗部R1の一端と抵抗部R2の一端とが接続点T1において接続され、抵抗部R3の一端と抵抗部R4の一端とが接続点T2において接続され、抵抗部R1の他端と抵抗部R4の他端とが接続点T3において接続され、抵抗部R2の他端と抵抗部R3の他端とが接続点T4において接続されている。接続点T3は電源Vccと接続されており、接続点T4は接地端子GNDと接続されている。接続点T1および接続点T2は、それぞれ、差分検出器AMPの入力側端子と接続されている。
【0021】
抵抗部R1~R4は、それぞれ、検出対象である信号磁場の変化を検出可能である。例えば抵抗部R1,R3は、+Y方向の信号磁場の印加により抵抗値が減少し、-Y方向の信号磁場の印加により抵抗値が増加する。一方、抵抗部R2,R4は、+Y方向の信号磁場の印加により抵抗値が増加し、-Y方向の信号磁場の印加により抵抗値が減少する。したがって、抵抗部R1,R3と抵抗部R2,R4とは、信号磁場の変化に応じて互いに例えば180°位相の異なる信号を出力する。フルブリッジ回路8から取り出された信号は差分検出器AMPに流入する。差分検出器AMPは、接続点T3と接続点T4との間に電圧が印加されたときの接続点T1と接続点T2との間の電位差を検出し、差分信号SLとして演算回路9へ向けて出力するようになっている。
【0022】
(導電性ピラー4)
上記したように、導電性ピラー4は、支持基板2の表面2FSのうちセンサチップ3と異なる位置に設けられており、配線5、接続層6、およびパッド部33を介してセンサ素子部32と電気的に接続されている。導電性ピラー4は、例えばCu(銅)などの高導電性材料により構成される。導電性ピラー4の下端4BTは、支持基板2の表面2FSに設けられた端子部21に接続されている。表面2FSから導電性ピラー4の上端4UTまでのピラー高さH1は、表面2FSから表面31FSまでのチップ高さH2よりも高い。導電性ピラー4は、表面2FS側から順に、第1階層部分41と第2階層部分42とが積層された構造を有する。ここで、
図1Bに示したように、第1階層部分41の断面積A41が第2階層部分42の断面積A42よりも大きい。
図1Bに示した例では、第1階層部分41および第2階層部分42はいずれも略円柱状の外形を有する。したがって、第1階層部分41の外径φ41が第2階層部分42の外径φ42よりも大きい。よって、XY面内において、第1階層部分41とセンサチップ3のセンサ基板31との第1距離D1よりも、第2階層部分42とセンサチップ3のセンサ基板31との第2距離D2が長い。また、第1階層部分41は、Z軸方向に第1高さH41を有する。第2階層部分42は、Z軸方向に第2高さH42を有する。第1高さH41は第2高さH42よりも大きいとよい。
【0023】
(絶縁膜7)
絶縁膜7は、例えばポリイミドやエポキシ樹脂などの樹脂材料により構成されている。
【0024】
(配線5)
配線5は、センサチップ3および導電性ピラー4の上方に設けられている。したがって、センサチップ3および導電性ピラー4は、支持基板2と配線5との間の階層にそれぞれ設けられている。配線5は、例えばCu(銅)、Al(アルミニウム)、またはW(タングステン)などの導電性材料により構成され、センサ素子部32と導電性ピラー4とを電気的に接続している。
図1Aに示した構成例では、配線5の下面が導電性ピラー4の上端4UTと接すると共に接続層6の上端と接している。接続層6の下端は、センサ基板31の表面31FSに設けられたパッド部33と接している。
【0025】
[1.2 角度センサ装置1の製造方法]
続いて、
図1A,1Bに加えて
図3Aから
図3Eを参照して、本発明の一実施の形態としての角度センサ装置1の製造方法について説明する。
図3Aから
図3Eは、角度センサ装置1の製造方法の一例における各工程を表す模式図である。
【0026】
まず、支持基板2を用意し、
図3Aに示したように、支持基板2の表面2FSに端子部21を形成する。
【0027】
次に、
図3Bに示したように、端子部21の上に、第1高さH41を有する第1階層部分41を電解めっき法などにより形成する。
【0028】
次に、シリコンウェハなどの、後に複数のセンサ基板31に切り分けられる母基板の上に、磁気センサ素子E1~E4を各々含む複数のセンサ素子部32と、複数のパッド部33とを設ける。そののち、センサ素子部32に対応する領域ごとに上記の母基板を切り分けることで、センサ基板31の表面31FSにセンサ素子部32およびパッド部33が設けられた複数のセンサチップ3を形成する。そののち、
図3Cに示したように、支持基板2の表面2FSにセンサチップ3を載置する。この際、第1階層部分41の第1高さH41よりもセンサチップ3のチップ高さH2が高くなるようにセンサ基板31の厚さを調整する。
【0029】
次に、
図3Dに示したように、支持基板2の表面2FS、第1階層部分41、およびセンサチップ3を覆うように絶縁膜7を形成する。その際、第1階層部分41とセンサチップ3との隙間を埋めるように絶縁膜7を形成するとよい。また、絶縁膜7の厚さをチップ高さH2よりも厚くすることで、絶縁膜7の上面がセンサチップ3の表面31FSよりも高い位置となるようにする。絶縁膜7を形成する手法としては、例えばスピンコート法、印刷法、ラミネート法、トランスファーモールド法、またはコンプレッションモールド法などが挙げられる。
【0030】
次に、
図3Eに示したように、絶縁膜7の所定の位置に開口を形成する。具体的には、第1階層部分41とZ軸方向に対応する位置に開口42Kを形成すると共に、パッド部33とZ軸方向に対応する位置に開口6Kを形成する。開口42Kを設けることにより、第1階層部分41の上面の一部を露出させる。開口6Kを設けることにより、パッド部33の上面の一部を露出させる。ここで、絶縁膜7が感光性材料により構成される場合は、例えばフォトリソグラフィ法を用いて開口42Kおよび開口6Kを形成することができる。また、絶縁膜7が非感光性材料により構成される場合は、例えばレーザ加工や薬液処理などにより開口42Kおよび開口6Kを形成することができる。ここで、開口42KにおけるXY面に沿った開口断面積を、第1階層部分41におけるXY面に沿った断面積A41(
図1B)よりも小さくする。
【0031】
最後に、開口42Kおよび開口6Kをそれぞれ埋めると共に絶縁膜7の一部を導電性材料により選択的に覆うことにより、第2階層部分42、配線5および接続層6を形成する。なお、第2階層部分42、配線5および接続層6は、スパッタ法、CVD法、無電解めっき法、および電解めっき法などを用いて形成することができる。ここで、第2階層部分42の第2高さH42が第1高さH41よりも小さくなるように、開口42Kに深さ、すなわち絶縁膜7のうちセンサチップ3を覆う部分の厚さを調整しておくとよい。また、開口42KにおけるXY面に沿った開口断面積を、第1階層部分41におけるXY面に沿った断面積A41よりも小さくするようにしているので、第2階層部分42におけるXY面に沿った断面積A42(
図1B)を、第1階層部分41の断面積A41よりも小さくすることができる。
【0032】
以上により、本実施の形態の角度センサ装置1(
図1A)が完成する。
【0033】
[1.3 作用および効果]
以上、説明したように、本実施の形態の角度センサ装置1では、支持基板2の表面2FSに、表面31FSを有するセンサ基板31と表面31FSに設けられたセンサ素子部32とを有するセンサチップ3と、センサ素子部32と電気的に接続された導電性ピラー4とが隣り合うように設けられている。ここで、表面2FSから導電性ピラー4の上端4UTまでのピラー高さH1が、表面2FSから表面31FSまでのチップ高さH2よりも高い。さらに、導電性ピラー4は、表面2FS側から順に、断面積A41を有する第1階層部分41と、断面積A41よりも小さな断面積A42を有する第2階層部分42とが積層された構造を含む。したがって、本実施の形態の角度センサ装置1では、環境温度の上昇や外部からの加熱により導電性ピラー4が熱膨張した場合であっても、第2階層部分42の断面積A42が第1階層部分41の断面積A41と実質的に同じときと比較して、センサチップ3のセンサ素子部32に対する熱応力が低減される。そのため、角度センサ装置1の検出性能が安定化する。角度センサ装置1の小型化を図るにあたっては、導電性ピラー4とセンサチップ3とが、互いにより近接配置されることとなるが、そのような高集積化を図る場合においても熱応力がセンサ素子部32の検出性能に影響しにくくなる。したがって、本実施の形態の角度センサ装置1によれば、より安定した検出性能を有すると共に、さらなる小型化に対応することができる。
【0034】
ところが、仮に、第2階層部分42の断面積A42が第1階層部分41の断面積A41と実質的に同じであるか、第2階層部分42の断面積A42が第1階層部分41の断面積A41よりも大きい場合、環境温度の上昇や外部からの加熱により、第2階層部分42が大きく熱膨張してしまうこととなる。その場合、センサチップ3のセンサ素子部32に対し、より大きな熱応力が印加されることとなり、センサ素子部32の測定精度に悪影響を及ぼす可能性がある。これに対し本実施の形態では、第2階層部分42の断面積A42を第1階層部分41の断面積A41よりも小さくすることで、センサ素子部32の近傍に位置する第2階層部分42の熱膨張を小さく抑えるようにしている。その結果、本実施の形態の角度センサ装置1によれば、より安定した検出性能を確保することができる。
【0035】
特に、角度センサ装置1では、第2階層部分42が、表面2FSに沿った面内方向においてセンサ素子部32と重なり合う位置にあると、熱応力の影響をより効果的に低減することができる。
【0036】
また、角度センサ装置1では、表面2FSに沿った面内方向において、センサチップ3と第1階層部分41との第1距離D1よりもセンサチップ3と第2階層部分42との第2距離D2が長くなるようにすれば、熱応力の影響をより効果的に低減することができる。
【0037】
さらに、角度センサ装置1では、第1階層部分41の第1高さH41よりも第2階層部分42の第2高さH42を低くすることにより、第2階層部分42を形成する際の開口42Kの外径を小さく抑えることができる。そのため、角度センサ装置1の面内方向の占有面積を小さく抑えることができ、角度センサ装置1の小型化に有利となる。
【0038】
また、本実施の形態の角度センサ装置1の製造方法では、支持基板2の表面2FSに立設した第1階層部分41を絶縁膜7によって埋設したのち、絶縁膜7に開口42Kを形成し、さらに開口42Kに導電膜を埋め込むことにより第2階層部分42を形成するようにした。このため、
図8A~8Dに示した第1の参考例としての角度センサ装置の製造方法と比較して、導電性ピラー4とセンサチップ3との距離を狭めることができる。
【0039】
具体的には、第1の参考例としての角度センサ装置の製造方法では、まず、
図8Aに示したように支持基板102の表面102FSに端子部121を形成したのち、
図8Bに示したように、表面102FSのうち端子部121が設けられた位置以外の位置にセンサチップ103を形成する。センサチップ103は、センサ基板131の表面131FSに、センサ素子部132と、パッド部133とを設けることにより予め形成しておく。次に、
図8Cに示したように支持基板102の表面102FSおよびセンサチップ103を覆うように絶縁膜107を形成する。そののち、
図8Dに示したように、絶縁膜107のうち、端子部121とZ軸方向に対応する位置に開口104Kを形成すると共に、パッド部133とZ軸方向に対応する位置に開口106Kを形成する。最後に、
図8Eに示したように、開口104Kおよび開口106Kをそれぞれ埋めると共に絶縁膜107の一部を導電性材料により選択的に覆うことにより、導電性ピラー104、配線105および接続層106を形成する。以上により、第1の参考例としての角度センサ装置101が完成する。しかしながら、このようにして得た角度センサ装置101では、導電性ピラー104を形成するにあたって深さの大きな開口104Kを形成するので、導電性ピラー104の下端104BTの外径に比べて導電性ピラー104の上端104UTの外径が大きくなりがちである。このため、結果として、第1の参考例としての角度センサ装置101の面内方向の占有面積は、本実施の形態の角度センサ装置1の面内方向の占有面積よりも大きくなってしまうことが多い。また、角度センサ装置101の製造方法では、導電性ピラー104の上端104UTの近傍の外径を、導電性ピラー104の下端104BTの近傍の外径よりも小さくすることは困難である。
【0040】
本実施の形態の角度センサ装置1では、導電性ピラー4を第1階層部分41と第2階層部分42との積層構造とし、第1階層部分41と第2階層部分42とを別々の工程で作製することで、絶縁膜7の開口42Kの深さを第1の参考例としての開口104Kの深さよりも浅くすることが可能である。このため、角度センサ装置1の面内方向の占有面積を小さく抑えることができる。また、第1階層部分41と第2階層部分42とを別々の工程で作製することから、第2階層部分42の断面積A42を第1階層部分41の断面積A41よりも小さくすることができる。
【0041】
以上説明した実施形態は、本開示の理解を容易にするために記載されたものであって、本開示発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本開示の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。すなわち、本開示は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0042】
(第1変形例)
例えば上記実施の形態の角度センサ装置1では、導電性ピラー4の第2階層部分42の断面積A42が高さ方向(Z軸方向)に一定である、すなわち第2階層部分42の外径が略円柱状である場合を例示した。しかしながら、本開示はこれに限定されるものではない。例えば
図4に示した第1変形例としての角度センサ装置1Aのように、第2階層部分42の外径がZ軸方向において徐々に変化するようになっていてもよい。
図4の構成例では、支持基板2の表面2FSから遠ざかるほど第2階層部分42の外径が徐々に大きくなっている。
図4の角度センサ装置1Aでは、
図1Aなどに示した角度センサ装置1と比べて導電性ピラー4の配線抵抗を低下させることができる。
【0043】
(第2変形例)
また、本開示では、例えば
図5に示した第2変形例としての角度センサ装置1Bのように、XY面内において第2階層部分42の中心位置を第1階層部分41の中心位置よりもセンサ素子部32から遠ざけるようにしてもよい。こうすることにより、
図1Aなどに示した角度センサ装置1と比べて第2距離D2をより大きくすることができる。その結果、角度センサ装置1Bでは、第2階層部分42を流れる電流によって生じる誘導磁場のセンサ素子部32に対する影響が、角度センサ装置1と比べて低減される。したがって、角度センサ装置1Bでは、よりいっそう安定した検出性能を確保することができる。
【0044】
(第3変形例)
また、本開示では、例えば
図6に示した第3変形例としての角度センサ装置1Cのように、配線5のうちの支持基板2と反対側の上面5FSに設けられた導電層11をさらに備えるようにしてもよい。導電層11は、例えばはんだ層、フラックス、またはNi/Auの2層めっきなどであり、外部との接続端子として用いられる。
【0045】
(第4変形例)
さらに、本開示では、例えば
図7に示した第4変形例としての角度センサ装置1Dのように、配線5を多層化してもよい。すなわち、複数の配線層51(51A~51C)をビアV(V1,V2)を介して積層することで配線5を構成してもよい。
【0046】
また、上記実施の形態では、センサ素子部におけるセンサ素子として磁気センサ素子を例示したが、本開示はこれに限定されるものではない。具体的には、センサ素子として例えば金属箔ひずみゲージなどの歪センサ素子を用いることもできる。
【0047】
また、本開示は以下のような構成を取り得るものである。
<1>
第1の表面を有する支持体と、
第2の表面を有する基板と前記第2の表面に設けられたセンサ素子部とを有する、前記第1の表面に設けられたセンサチップと、
前記第1の表面に設けられた導電性ピラーと
を備え、
前記第1の表面から前記導電性ピラーの上端までのピラー高さは、前記第1の表面から前記第2の表面までのチップ高さよりも高く、
前記導電性ピラーは、前記第1の表面側から順に、第1の断面積を有する第1の階層部分と、前記第1の断面積よりも小さな第2の断面積を有する第2の階層部分とが積層された構造を含む
センサ装置。
<2>
前記第2の階層部分は、前記第1の表面に沿った面内方向において前記センサ素子部と重なり合う位置にある
上記<1>記載のセンサ装置。
<3>
前記第1の表面に沿った面内方向において、前記センサチップと前記第1の階層部分との第1距離よりも前記センサチップと前記第2の階層部分との第2距離が長い
上記<1>または<2>記載のセンサ装置。
<4>
前記センサ素子部は、応力により感度が変化するセンサ素子を含む
上記<1>から<3>のいずれか1つに記載のセンサ装置。
<5>
前記センサ素子は、磁気センサ素子または歪センサ素子である
上記<4>記載のセンサ装置。
<6>
前記センサ素子部と前記導電性ピラーとを電気的に接続する配線5をさらに備え、
前記センサチップおよび前記導電性ピラーは、前記支持体と前記配線との間の階層にそれぞれ設けられている
上記<1>から<5>のいずれか1つに記載のセンサ装置。
<7>
前記第1の階層部分の第1高さは、前記第2の階層部分の第2高さよりも大きい
上記<1>から<6>のいずれか1つに記載のセンサ装置。
<8>
前記配線のうちの前記支持体と反対側の面に設けられた導電層をさらに備える
上記<6>に記載のセンサ装置。
<9>
前記導電性ピラーは、前記第1の表面のうち前記センサチップと異なる位置に設けられ、前記センサ素子部と電気的に接続されている
上記<1>から<8>のいずれか1つに記載のセンサ装置。
<10>
第1の表面を有する支持体を用意することと、
前記第1の表面に導電性ピラーを形成することと、
前記第1の表面のうち前記導電性ピラーと異なる位置に、第2の表面を有する基板と前記第2の表面に設けられたセンサ素子部とを有するセンサチップを配置することと、
前記第1の表面に設けられた前記導電性ピラーおよび前記センサチップを埋めるように絶縁膜を形成することと、
前記絶縁膜のうち前記導電性ピラーと対応する第1の部分に第1の開口を形成し、前記絶縁膜のうち前記センサ素子部と対応する第2の部分に第2の開口を形成することと、
前記第1の開口および前記第2の開口をそれぞれ埋めると共に前記絶縁膜の一部を選択的に覆うように導電膜を形成し、前記導電性ピラーと前記センサ素子部とを電気的に接続することと
を含む
センサ装置の製造方法。
<11>
前記第1の開口における前記第1の表面に沿った開口断面積を、前記第1の階層部分における前記第1の表面に沿った第1断面積よりも小さくすることにより、前記第1断面積よりも、前記第2の階層部分における前記第1の表面に沿った第2断面積を小さくする
上記<10>記載のセンサ装置の製造方法。
【符号の説明】
【0048】
1…角度センサ装置、2…支持基板、21…端子部、2FS…表面、3,3A,3B…センサチップ、31…センサ基板、31FS…表面、32…センサ素子部、33…パッド部、4…導電性ピラー、4BT…下端、4UT…上端、41…第1階層部分、42…第2階層部分、5…配線、6…接続層、7…絶縁膜、8…フルブリッジ回路、9…演算回路、E1~E4…磁気センサ素子、R1~R4…抵抗部、T1~T4…接続点。