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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092831
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20240701BHJP
   E04B 1/26 20060101ALI20240701BHJP
   F16B 7/18 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
E04B1/58 503L
E04B1/58 505L
E04B1/58 511L
E04B1/26 E
F16B7/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209017
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 英二
【テーマコード(参考)】
2E125
3J039
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AA33
2E125AA35
2E125AA57
2E125AC23
2E125AC24
2E125AE01
2E125AG03
2E125AG13
2E125AG23
2E125BA02
2E125BA22
2E125BB30
2E125BD01
2E125BE07
2E125BF08
2E125CA05
2E125CA13
2E125CA19
2E125CA82
2E125EB01
3J039AA01
3J039BB03
3J039GA01
3J039GA02
3J039GA06
3J039MA10
(57)【要約】
【課題】2つの部材が離れる方向と近づく方向に移動する双方の場合にエネルギーを吸収できる接合構造を提供する。
【解決手段】接合構造は、端面に開口した挿入穴22と、側面に開口して挿入穴22と連通した座掘り穴24と、を備えた接合部材(木質材20)と、接合部材の端面に対向して配置される被接合部材(木質材20)と、一端部が被接合部材に固定されると共に、挿入穴22に挿入されて他端部が座掘り穴24に到達する長さとされたボルト30と、ボルト30の他端部に捩じ込まれ、座掘り穴24における被接合部材側の第一穴壁24A側に配置された第一ナット(ナット32)と、座掘り穴24に配置され、座掘り穴24における被接合部材と反対側の第二穴壁24Bから押されてボルト30の他端部に押圧力を付与可能な押圧部材(ナット34)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面に開口した挿入穴と、側面に開口して前記挿入穴と連通した座掘り穴と、を備えた接合部材と、
前記接合部材の前記端面に対向して配置される被接合部材と、
一端部が前記被接合部材に固定されると共に、前記挿入穴に挿入されて他端部が前記座掘り穴に到達する長さとされたボルトと、
前記ボルトの前記他端部に捩じ込まれ、前記座掘り穴における前記被接合部材側の第一穴壁側に配置された第一ナットと、
前記座掘り穴に配置され、前記座掘り穴における前記被接合部材と反対側の第二穴壁から押されて前記ボルトの前記他端部に押圧力を付与可能な押圧部材と、
を備えた接合構造。
【請求項2】
前記押圧部材は、前記ボルトの前記他端部に捩じ込まれて前記第二穴壁側に配置された第二ナットである、
請求項1に記載の接合構造。
【請求項3】
前記押圧部材は、前記第二穴壁と前記ボルトの端部との間に配置されたスペーサである、
請求項1または2に記載の接合構造。
【請求項4】
前記被接合部材は、端面に開口した挿入穴と、側面に開口して前記挿入穴と連通した座掘り穴と、を備え、
前記ボルトは、前記被接合部材の挿入穴に挿入されて、前記一端部が前記被接合部材の座掘り穴に到達する長さとされ、
前記ボルトの前記一端部に捩じ込まれ、前記被接合部材の座掘り穴における前記接合部材側の第三穴壁側に配置された第三ナットと、
前記被接合部材の座掘り穴に配置され、前記被接合部材の座掘り穴における前記接合部材と反対側の第四穴壁から押されて前記ボルトの前記一端部に押圧力を付与可能な押圧部材と、
を備えた請求項1または2に記載の接合構造。
【請求項5】
前記接合部材及び前記被接合部材の少なくとも一方が木質材である、
請求項1または2に記載の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、第一部材と第二部材とを圧着して接合する圧着接合構造が示されている。この圧着接合構造においては、一端が第一部材に固定された引張材に、支圧体が取り付けられている。この支圧体は、第二部材の支圧受け面に係合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-69141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示された圧着接合構造では、支圧体及び支圧受け面が複数形成されることにより、引張材に導入された引張力が、複数の支圧体を介して複数の支圧受け面に分散して伝達される。このため、複数の支圧受け面の破損等が抑制される。
【0005】
ここで、第一部材と第二部材が離れる方向に移動すると、引張材が伸び変形する。このとき引張材が塑性変形すると、エネルギーを吸収できる。一方、引張材が引張力によって塑性変形したあと、第一部材と第二部材が近づく方向に移動する場合は、引張材に応力が発生し難く、エネルギーを吸収することが難しい。しかしながら、第一部材と第二部材が近づく方向に移動する際にもエネルギーを吸収できることが好ましい。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、2つの部材が離れる方向と近づく方向に移動する双方の場合にエネルギーを吸収できる接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の接合構造は、端面に開口した挿入穴と、側面に開口して前記挿入穴と連通した座掘り穴と、を備えた接合部材と、前記接合部材の前記端面に対向して配置される被接合部材と、一端部が前記被接合部材に固定されると共に、前記挿入穴に挿入されて他端部が前記座掘り穴に到達する長さとされたボルトと、前記ボルトの前記他端部に捩じ込まれ、前記座掘り穴における前記被接合部材側の第一穴壁側に配置された第一ナットと、前記座掘り穴に配置され、前記座掘り穴における前記被接合部材と反対側の第二穴壁から押されて前記ボルトの前記他端部に押圧力を付与可能な押圧部材と、を備える。
【0008】
請求項1の接合構造では、被接合部材に一端部が固定されたボルトの他端部が、第一ナットによって接合部材に固定されている。この第一ナットは、ボルトが挿入された挿入穴に連通する座掘り穴において、被接合部材側の第一穴壁側に配置されている。
【0009】
これにより、接合部材が被接合部材から離れる方向へ移動すると、第一ナットが第一穴壁から押圧されながらボルトが伸びて塑性変形し、エネルギーを吸収する。
【0010】
また、座掘り穴には、被接合部材と反対側の第二穴壁から押されてボルトに押圧力を付与可能な押圧部材が配置されている。
【0011】
これにより、接合部材が被接合部材から離れる方向へ移動した後、接合部材が被接合部材へ接近する方向へ移動する際に、ボルトに第二穴壁から押圧力が付与されてボルトが縮み、エネルギーを吸収する。
【0012】
このように、本態様の接合構造では、2つの部材が離れる方向と近づく方向に移動する双方の場合にエネルギーを吸収できる。
【0013】
請求項2の接合構造は、請求項1に記載の接合構造において、前記押圧部材は、前記ボルトの前記他端部に捩じ込まれて前記第二穴壁側に配置された第二ナットである。
【0014】
請求項2の接合構造では、第二穴壁から押されてボルトに押圧力を付与可能な押圧部材が、ボルトに捩じ込まれた第二ナットである。このため、他部材を介さずに直接ボルトに押圧力が入力される。このためボルトが縮み易く、エネルギーを吸収し易い。
【0015】
請求項3の接合構造は、請求項1または2に記載の接合構造において、前記押圧部材は、前記第二穴壁と前記ボルトの端部との間に配置されたスペーサである。
【0016】
請求項3の接合構造では、第二穴壁から押されてボルトに押圧力を付与可能な押圧部材が、第二穴壁とボルトの端部との間に配置されたスペーサである。このため、押圧部材がナットである場合と比較して、ボルトに捩じ込む作業を必要としないため施工し易い。
【0017】
請求項4の接合構造は、請求項1または2に記載の接合構造において、前記被接合部材は、端面に開口した挿入穴と、側面に開口して前記挿入穴と連通した座掘り穴と、を備え、前記ボルトは、前記被接合部材の挿入穴に挿入されて、前記一端部が前記被接合部材の座掘り穴に到達する長さとされ、前記ボルトの前記一端部に捩じ込まれ、前記被接合部材の座掘り穴における前記接合部材側の第三穴壁側に配置された第三ナットと、前記被接合部材の座掘り穴に配置され、前記被接合部材の座掘り穴における前記接合部材と反対側の第四穴壁から押されて前記ボルトの前記一端部に押圧力を付与可能な押圧部材と、を備える。
【0018】
請求項4の接合構造では、被接合部材も接合部材と同様の構成である。すなわち、この接合構造は、接合部材同士を連結する継手の構造である。接合部材が接離する方向に移動した際にエネルギーを吸収できるため、例えば接合部材が軸力を受けるトラス部材である場合等に有効である。
【0019】
なお、請求項4の接合構造は、請求項1~3の何れか1項に記載の接合構造において、前記被接合部材は、端面に開口した挿入穴と、側面に開口して前記挿入穴と連通した座掘り穴と、を備え、前記ボルトは、前記被接合部材の挿入穴に挿入されて、前記一端部が前記被接合部材の座掘り穴に到達する長さとされ、前記ボルトの前記一端部に捩じ込まれ、前記被接合部材の座掘り穴における前記接合部材側の第三穴壁側に配置された第三ナットと、前記被接合部材の座掘り穴に配置され、前記被接合部材の座掘り穴における前記接合部材と反対側の第四穴壁から押されて前記ボルトの前記一端部に押圧力を付与可能な押圧部材と、を備えるものとしてもよい。
【0020】
請求項5の接合構造は、請求項1または2に記載の接合構造において、前記接合部材及び前記被接合部材の少なくとも一方が木質材である。
【0021】
請求項5の接合構造では、接合部材の少なくとも一方が木質材である。このため、木質材の継手部においてエネルギー吸収効果を高めることができる。
【0022】
なお、請求項5の接合構造は、請求項1~4の何れか1項に記載の接合構造において、前記接合部材及び前記被接合部材の少なくとも一方が木質材であるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、2つの部材が離れる方向と近づく方向に移動する双方の場合にエネルギーを吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】(A)は本発明の実施形態に係る接合構造を示す断面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図であり、(C)は木質材の変形例を示す断面図である。
図2】(A)は接合前の木質材を示す断面図であり、(B)は木質材の挿入穴にボルトを挿入している状態を示す断面図であり、(C)はボルトが固定された木質材に他の木質材を固定しようとしている状態を示す断面図である。
図3】(A)は接合された木質材に引張力が作用している状態を示す断面図であり、(B)は接合された木質材に圧縮力が作用している状態を示す断面図である。
図4】(A)は被接合部材としてコンクリートを用いた例を示す断面図であり、(B)は被接合部材として板材及び木質材を組み合わせた例を示す断面図である。
図5】押圧部材として無収縮モルタルを用いた変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る接合構造について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0026】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において構成を省略する、異なる構成と入れ替える、一実施形態及び各種の変形例を組み合わせて用いる等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0027】
<接合構造>
本発明の実施形態に係る接合構造は、図1(A)に示す2つの木質材20の接合構造である。この接合構造は、木質材20、ボルト30、ナット32及び34を備えて形成されている。
【0028】
このうち、木質材20は本発明における接合部材及び被接合部材の一例である。ナット32は、本発明における第一ナット及び第三ナットの一例である。ナット34は、本発明における押圧部材としての第二ナットの一例である。
【0029】
(木質材)
木質材20は、例えば集成材で形成された長尺の線状部材(細長い部材)であり、建物の梁、柱、トラス架構の上弦材、下弦材、斜材及びブレース等として用いることができる。2つの木質材20は、それぞれ端面同士が対向して配置されており、本発明の接合構造によって継手が形成されている。
【0030】
木質材20は、挿入穴22及び座掘り穴24を備えている。挿入穴22は、木質材20の軸方向に沿って形成され、また、木質材20における軸方向の端面(以下、単に「端面」と称す)に開口した丸穴である。座掘り穴24は、木質材20における軸方向と交わる方向の端面(以下、「側面」と称す)に開口した矩形状の穴である。
【0031】
座掘り穴24は、挿入穴22と連通している。挿入穴22の端部(穴底)は、座掘り穴24からみて、木質材20の端面と反対側に配置されている。換言すると、挿入穴22は座掘り穴24を貫通して形成されている。
【0032】
以下の説明においては、座掘り穴24において、木質材20の端面側の穴壁を第一穴壁24A、木質材20の端面と反対側の端面を第二穴壁24Bと称す。第一穴壁24Aは、木質材20同士が接合された状態においては、他方の木質材20側の穴壁とも説明できる。
【0033】
なお、第一穴壁24Aは、本発明における第一穴壁及び第三穴壁の一例である。また、第二穴壁24Bは、本発明における第二穴壁及び第四穴壁の一例である。
【0034】
図1(B)に示すように、座掘り穴24は、木質材20において互いに対向する側面に1つずつ設けられている。但し、図1(C)にも示すように、座掘り穴24の数量は、木質材20の形状や大きさに応じて、適宜増やすことができる。また、座掘り穴24の位置も、適宜自由に設定できる。さらに、座掘り穴24の形状は必ずしも矩形状でなくてもよい。例えば木質材の側面からみて円形状、長円形状など、任意の形状を採用できる。
【0035】
(ボルト)
ボルト30は、2つの木質材20に跨って配置された引きボルトである。すなわち、ボルト30の両端部がそれぞれ、木質材20に固定されている。具体的には、ボルト30は双方の木質材20における挿入穴22に挿入されている。また、ボルト30は、端部が木質材20の座掘り穴24に到達する長さとされ、座掘り穴24を貫通して配置されている。なお、「到達する長さ」とは、図1(A)に示すように座掘り穴24を貫通する長さのほか、図5に示すように、端部が座掘り穴24の内部に配置される長さの双方を含む。
【0036】
(第一ナット)
ナット32は、座掘り穴24の内部において、ボルト30の端部に捩じ込まれている。また、ナット32は、座掘り穴24の第一穴壁24A側に配置されている。ナット32と第一穴壁24Aとの間には、鋼製等のプレートである座金32Aが配置されている。
【0037】
ここで、ボルト30の「端部」とは、ボルト30の端面を含む部分であり、ボルト30の軸方向に沿う長さにおける、概ね1/3の範囲内の部分である。また、座掘り穴24の第一穴壁24A「側」とは、座金32Aを介して第一穴壁24Aに接する位置及び僅かに離れた位置を含む。
【0038】
(押圧部材-第二ナット)
ナット34は、座掘り穴24の内部において、ボルト30の端部に捩じ込まれている。また、ナット34は、座掘り穴24の第二穴壁24B側に配置されている。ナット34と第二穴壁24Bとの間には、鋼製等のプレートである座金34Aが配置されている。
【0039】
詳しくは後述するが、ナット34は、第二穴壁24Bから押圧されて、ボルト30の端部に押圧力を付与できる押圧部材である。
【0040】
<接合方法>
図2(A)に示した木質材20に、他の木質材20を接合する方法について説明する。まず、木質材20にボルト30を固定する。この際、図2(B)に示すように、挿入穴22にボルト30を挿入する。作業員は座掘り穴24にナット32及び34を配置して、これらのナット32及び34にボルト30を捩じ込みながら、ボルト30を座掘り穴24に貫通させる。
【0041】
ボルト30を座掘り穴24に貫通させた状態で、ナット32及び34の捩じ込み量を調整すると、図2(C)に示すように、ナット32が第一穴壁24Aに接し、かつ、ナット34が第二穴壁24Bに接した状態を形成できる。これにより、ボルト30は木質材20に固定される。
【0042】
次に、他の木質材20を、ボルト30が固定された木質材20に近接させて、ボルト30を他の木質材20の挿入穴22に挿入する。そして、上記と同様の手順を実施することで、図1(A)に示したように木質材20同士を接合することができる。
【0043】
<作用及び効果>
本発明の実施形態に係る接合構造では、ボルト30の端部が、ナット32によって木質材20に固定されている。このナット32は、ボルト30が挿入された挿入穴22に連通する座掘り穴24において、第一穴壁24A側に配置されている。
【0044】
図3(A)に矢印Tで示すように、木質材20の接合部に引張力が作用する場合がある。この引張力により木質材20同士が離れる方向へ移動しようとすると、矢印P1で示すようにナット32が第一穴壁24Aから押圧されながらボルト30が伸びて塑性変形し、エネルギーを吸収する。
【0045】
また、座掘り穴24には、ナット34が配置されている。
【0046】
木質材20同士が離れる方向へ移動した後、図3(B)に矢印Cで示すように、木質材20の接合部に圧縮力が作用する場合がある。この圧縮力により木質材20同士が接近する方向へ移動しようとすると、矢印P2で示すように、ナット34を介してボルト30に第二穴壁24Bから押圧力が付与されてボルト30が縮み、エネルギーを吸収する。
【0047】
このように、本態様の接合構造では、2つの木質材が離れる方向と近づく方向に移動する双方の場合にエネルギーを吸収できる。
【0048】
また、本発明の実施形態に係る接合構造では、第二穴壁24Bから押されてボルト30に押圧力を付与可能な押圧部材が、ボルト30に捩じ込まれたナット34である。このため、座金34A以外の他部材を介さずに、直接ボルト30に押圧力が入力される。このためボルト30が縮み易く、エネルギーを吸収し易い。
【0049】
また、本発明の実施形態に係る接合構造は、長尺材である木質材20同士を連結する継手の構造である。そして、木質材20同士が接離する方向に移動した際にエネルギーを吸収できる。このため、例えば木質材20が軸力を受けるトラス部材である場合等に有効である。
【0050】
また、木質材20が曲げ力を受ける場合でも、木質材20の接合面には引張力又は圧縮力が作用する。あるいは、引張力と圧縮力の双方が作用する。このため、木質材20が曲げ力を受ける梁材である場合にも有効である。
【0051】
<その他の実施形態>
上記実施形態においては、同様の構成を備えた木質材20同士の接合構造ついて説明したが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0052】
例えば図4(A)に示すように、本発明の被接合部材としては、木質材20に代えてコンクリート部材40を用い、ボルト30に代えてアンカーボルト50を用いてもよい。コンクリート部材40は、例えば建物の基礎などを構成する。この場合、木質材20は例えば建物の柱や壁体を構成するものとできる。アンカーボルト50のコンクリート部材40への固定方法は、任意の方法を採用できる。
【0053】
また、図4(A)に示された構成を90度回転させてもよい。コンクリート部材40は例えば建物の柱、梁または耐力壁等を構成する。この場合、木質材20は、建物の梁やスラブを構成できる。
【0054】
また、木質材20としては、集成材のほか、CLT(Cross Laminated Timber)材、LVL(Laminated Veneer Lumber)材、無垢の木材など、各種の木質材を用いることができる。また木質材20は、例えばコンクリートに置き換えて用いることができる。
【0055】
このように、本発明における被接合材及び接合材は必ずしも長尺の線状部材である必要はなく板状部材でもよく、また、その素材も限定されるものではない。
【0056】
また、図4(B)には、2つの木質材20を柱として利用し、これらの木質材20の間にスラブとしての板材60を配置した例が示されている。この例では、一方の木質材20を接合部材として、他方の木質材20及び板材60を被接合部材としている。このように、本発明における被接合部材は、2つの部材を組み合わせたものとしてもよい。
【0057】
また、図5には、ボルト30の両端を、接合された木質材20それぞれの座掘り穴24の内部に配置した例が示されている。この例においては、上記実施形態におけるナット34を省略し、ナット34に代えてスペーサとしての無収縮モルタル70を配置している。無収縮モルタルは、座掘り穴24の内側へ充填され、第二穴壁24Bとボルト30の間に充填されている。
【0058】
このように、ナット34に代えて無収縮モルタル70を用いれば、ナット34をボルトに捩じ込む作業を必要としないため施工し易い。なお、第二穴壁24Bとボルト30の間には、無収縮モルタルに代えて、木材、樹脂、金属などのブロックなどをスペーサとして配置してもよい。このように、本発明は様々な態様で実施できる。
【符号の説明】
【0059】
20 木質材(接合部材、被接合部材)
22 挿入穴
24 座掘り穴
24A 第一穴壁(第三孔壁)
24B 第二穴壁(第四孔壁)
30 ボルト
32 ナット(第一ナット、第三ナット)
34 ナット(第二ナット、押圧部材)
40 コンクリート部材(被接合部材)
50 アンカーボルト(ボルト)
60 板材(被接合部材)
70 無収縮モルタル(スペーサ、押圧部材)
図1
図2
図3
図4
図5