(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092844
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】加熱炉
(51)【国際特許分類】
H05B 3/06 20060101AFI20240701BHJP
H05B 3/14 20060101ALN20240701BHJP
【FI】
H05B3/06 A
H05B3/14 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209038
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】518347495
【氏名又は名称】株式会社リケンヒートテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】中野 守
(72)【発明者】
【氏名】福田 佳弘
(72)【発明者】
【氏名】深井 龍治
【テーマコード(参考)】
3K092
【Fターム(参考)】
3K092PP09
3K092QA01
3K092QB03
3K092QB11
3K092TT03
3K092TT05
3K092TT06
3K092TT08
3K092TT14
3K092TT19
3K092VV03
(57)【要約】
【課題】セラミックヒーターを容易に交換することが可能な加熱炉を提供することである。
【解決手段】側壁11と蓋体13とを備えた炉本体10と、セラミックヒーター20と、セラミックヒーター20を側壁11に保持する保持ピン30とを有し、セラミックヒーター20が、保持ピン30に保持されたヒーター本体部21と、側壁11の上端に設けられた第1貫通溝11aに配置されて側壁11の外側に引き出された第1端子部22と、側壁11の上端に設けられた第2貫通溝11bに配置されて側壁11の外側に引き出された第2端子部23と、を有し、保持ピン30が、側壁11に設けられた取付用孔11cに挿通された直線部31と、直線部31の一端に一体に連なるとともに直線部31に対して上方に突出し、側壁11の内周面との間の最小隙間Cがヒーター本体部21の線径以上である保持部32と、を有することを特徴とする加熱炉1。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材により円筒状に形成された側壁と、前記側壁の上端開口を閉塞する蓋体とを備えた炉本体と、
通電により前記炉本体の内部を加熱するセラミックヒーターと、
前記セラミックヒーターを前記側壁に保持する保持ピンと、を有し、
前記セラミックヒーターが、
蛇行形状に形成され、前記側壁の内周面に沿って配置されるとともに前記保持ピンに保持されたヒーター本体部と、
前記ヒーター本体部の一端に一体に連なり、前記側壁の上端に設けられた第1貫通溝に配置されて前記側壁の外側に引き出された第1端子部と、
前記ヒーター本体部の他端に一体に連なり、前記第1貫通溝に対して周方向にずれて前記側壁の上端に設けられた第2貫通溝に配置されて前記側壁の外側に引き出された第2端子部と、を有し、
前記保持ピンが、
前記側壁に設けられた取付用孔に挿通された直線部と、
前記直線部の一端に一体に連なるとともに前記直線部に対して上方に突出し、前記側壁の内周面との間の最小隙間が前記ヒーター本体部の線径以上である保持部と、を有することを特徴とする加熱炉。
【請求項2】
前記保持ピンが、前記保持部が直線状となったL字形状である、請求項1に記載の加熱炉。
【請求項3】
前記保持ピンが、前記保持部が円弧状となったJ字形状である、請求項1に記載の加熱炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば拡散炉などの用途に使用される加熱炉として、断熱材により円筒状に形成された側壁を備えた炉本体と、通電により炉本体の内部を加熱するセラミックヒーターと、を有し、セラミックヒーターが、蛇行形状(ミアンダ形状)に形成されて側壁の内周面に沿って配置されたヒーター本体部と、ヒーター本体部の一端に一体に連なり、側壁に設けられた第1貫通孔に挿通されて側壁の外側に引き出された第1端子部と、ヒーター本体部の他端に一体に連なり、第1貫通孔に対して周方向にずれて側壁に設けられた第2貫通孔に挿通されて側壁の外側に引き出された第2端子部と、を有し、ヒーター本体部が、側壁に取り付けられたU字形状の保持ピンによって側壁に保持された構成のものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、上記のような加熱炉として、炉本体が、側壁の上端に一対の貫通溝を備え、側壁の上端開口が蓋体に閉塞されることで、一対の貫通溝が第1貫通孔ないし第2貫通孔となるように構成されたものが知られている。この構成によれば、一対の貫通溝にセラミックヒーターの第1端子部ないし第2端子部が配置されることになるので、蓋体を取り外して一対の貫通溝を上方に開口させることで、セラミックヒーターを上方に引き上げて炉本体から取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、側壁の上端に一対の貫通溝を設け、蓋体を取り外してセラミックヒーターを上方に引き上げて炉本体から取り外すことができるようにした加熱炉においても、セラミックヒーターを交換する際には、ヒーター本体部を側壁に保持する保持ピンを側壁に対して着脱する必要があるため、セラミックヒーターの交換作業が煩雑である、という問題点があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、セラミックヒーターを容易に交換することが可能な加熱炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の加熱炉は、断熱材により円筒状に形成された側壁と、前記側壁の上端開口を閉塞する蓋体とを備えた炉本体と、通電により前記炉本体の内部を加熱するセラミックヒーターと、前記セラミックヒーターを前記側壁に保持する保持ピンと、を有し、前記セラミックヒーターが、蛇行形状に形成され、前記側壁の内周面に沿って配置されるとともに前記保持ピンに保持されたヒーター本体部と、前記ヒーター本体部の一端に一体に連なり、前記側壁の上端に設けられた第1貫通溝に配置されて前記側壁の外側に引き出された第1端子部と、前記ヒーター本体部の他端に一体に連なり、前記第1貫通溝に対して周方向にずれて前記側壁の上端に設けられた第2貫通溝に配置されて前記側壁の外側に引き出された第2端子部と、を有し、前記保持ピンが、前記側壁に設けられた取付用孔に挿通された直線部と、前記直線部の一端に一体に連なるとともに前記直線部に対して上方に突出し、前記側壁の内周面との間の最小隙間が前記ヒーター本体部の線径以上である保持部と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の加熱炉は、上記構成において、前記保持ピンが、前記保持部が直線状となったL字形状であるのが好ましい。
【0009】
本発明の加熱炉は、上記構成において、前記保持ピンが、前記保持部が円弧状となったJ字形状であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、セラミックヒーターを容易に交換することが可能な加熱炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る加熱炉の縦断面図である。
【
図3】加熱炉の側壁の内周面の部分の展開図である。
【
図5】変形例に係る保持ピンを備えた加熱炉の、
図4に対応した部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る加熱炉について、図面を参照しつつ詳細に例示説明する。
【0013】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る加熱炉1は、炉本体10とセラミックヒーター20とを有している。
【0014】
図1、
図2に示すように、炉本体10は、断熱材により軸線Oを中心とした円筒状に形成された側壁11と、側壁11の下端に一体に連なる底壁12と、断熱材により円板状に形成されて側壁11の上端開口を閉塞する蓋体13とを有している。炉本体10の内部は密閉された加熱室Rとなっており、加熱室Rには加熱対象となるワークが配置されるセッター14が設けられている。セッター14は、ワークの形状に対応した種々の形状であってよい。側壁11は、炉本体10の内部の気体を外部に排出するための排気管15が設けられた構成とすることができる。
【0015】
炉本体10は、側壁11の外周が円筒状のカバー17で覆われた構成とすることもできる。
【0016】
側壁11の上端には、第1貫通溝11a及び第2貫通溝11bが、軸線Oを中心とした周方向に間隔を空けて設けられている。第1貫通溝11a及び第2貫通溝11bは、それぞれ断面U字形状の溝状となっており、側壁11の内周面から外周面にまで延びている。第1貫通溝11aの上端開口及び第2貫通溝11bの上端開口は、それぞれ蓋体13によって閉塞されている。これにより、側壁11の上端開口が蓋体13により閉塞された状態において、第1貫通溝11a及び第2貫通溝11bは、側壁11を径方向に貫通する貫通孔の形態を有している。
【0017】
なお、炉本体10は、断熱材により円筒状に形成された側壁11と側壁11の上端開口を閉塞する蓋体13とを備えるとともに側壁11の上端に第1貫通溝11a及び第2貫通溝11bを備えた構成であれば、例えば底壁12が側壁11とは別体に構成されて側壁11に固定された構成など、種々の構成であってよい。また、炉本体10を構成する断熱材としては種々のものを用いることができる。
【0018】
本実施形態では、炉本体10には1つのセラミックヒーター20が設けられている。なお、炉本体10には、少なくとも1とのセラミックヒーター20が設けられていればよく、その個数は種々変更可能である。
【0019】
図2、
図3に示すように、セラミックヒーター20は、炉本体10の側壁11の内周面に沿って配置されたヒーター本体部21と、ヒーター本体部21の一端に一体に連なり、側壁11の上端に設けられた第1貫通溝11aに配置されて側壁11の外側に引き出された第1端子部22と、ヒーター本体部21の他端に一体に連なり、第1貫通溝11aに対して周方向にずれて側壁11の上端に設けられた第2貫通溝11bに配置されて側壁11の外側に引き出された第2端子部23と、を有している。
【0020】
図3に示すように、ヒーター本体部21は、蛇行形状(ミアンダ形状)となっている。より具体的には、ヒーター本体部21は、互いに平行な複数本の直線状部分21aのうち、隣り合う2の直線状部分21aが円弧状の連結部分21bによって上端同士、下端同士が交互に連結されるとともに、その全体が側壁11の内周面に沿って湾曲した形状となっている。
図3においては、便宜上、一部の直線状部分21a及び連結部分21bにのみ符号を付してある。なお、連結部分21bは円弧状に限らず、例えば周方向の延びる直線状など他の形状であってもよい。
【0021】
第1端子部22は周方向の最も一端側に配置された直線状部分21aの上端に一体に連なっており、第2端子部23は周方向の最も一端側に配置された直線状部分21aの上端に一体に連なっている。ヒーター本体部21、第1端子部22及び第2端子部23は、それぞれ断面円形の線状となっており、ヒーター本体部21の外径は第1端子部22及び第2端子部23の外径よりも小さくなっている。また、第1端子部22と第2端子部23は、それぞれ軸線Oを中心とした径方向に延びており、互いに傾斜している。
【0022】
第1貫通溝11a及び第2貫通溝11bの内部に、それぞれ円筒状に形成された碍子16を配置し、第1端子部22及び第2端子部23を、それぞれ碍子16の内側に配置した構成とすることもできる。この場合、碍子16は、第1貫通溝11a及び第2貫通溝11bから側壁11の外側に突出した構成とすることもできる。
【0023】
セラミックヒーター20は、二珪化モリブデン(MoSi2)を主成分とした材料で形成されたものとすることができる。
【0024】
側壁11の外側に引き出された第1端子部22及び第2端子部23には、それぞれ電源(不図示)が接続される。セラミックヒーター20は、第1端子部22及び第2端子部23に接続された電源から電流が供給されて通電されると、ヒーター本体部21が発熱して炉本体10の内部の加熱室Rを加熱することができる。セラミックヒーター20が発熱することで、加熱炉1は、セッター14に配置されたワークを、例えば1200℃~1500℃程度の所定の温度にまで加熱することができる。
【0025】
図2~
図4に示すように、加熱炉1は、ヒーター本体部21を側壁11に保持する保持ピン30を有している。本実施形態では、1つのセラミックヒーター20に対して4つの保持ピン30が用いられている。なお、便宜上、
図1において保持ピン30の記載は省略している。
【0026】
それぞれの保持ピン30は、
図4に示すように、一本の真っ直ぐに延びる断面円形の線状の直線部31と、直線部31の加熱室Rの側を向く一端に一体に連なるとともに直線部31に対して上方に突出する保持部32とを有している。本実施形態では、保持部32は直線状となっており、保持ピン30は全体としてL字形状となっている。この場合、保持ピン30は、直線状の直線部31と直線状の保持部32との間に湾曲した連結部分があってもよい。
【0027】
側壁11には、軸線Oを中心とした径方向に沿うとともに側壁11を貫通する4つの取付用孔11cが設けられており、保持ピン30は、直線部31が対応する取付用孔11cに挿通されることで側壁11に取り付けられている。また、保持ピン30の側壁11の外側を向く端部には、ストッパー33が固定されており、このストッパー33により保持ピン30は直線部31に対して保持部32が上方に突出する姿勢で側壁11に固定されている。なお、ストッパー33に替えて、他の手段により保持ピン30を側壁11に固定するようにしてもよい。さらに、保持ピン30の保持部32は、直線部31に対して上方に向けて突出するとともに、側壁11の内周面との間の最小隙間Cがヒーター本体部21の線径以上となっている。
【0028】
保持ピン30は、例えば二珪化モリブデン(MoSi2)を主成分とした材料で形成されたものとすることができる。
【0029】
上記構成を有する保持ピン30は、直線部31がヒーター本体部21の連結部分21bを下方側から係止するとともに保持部32がヒーター本体部21の連結部分21bの径方向内側への移動を阻止した状態でヒーター本体部21を下方側から吊り下げ保持することができる。これにより、側壁11に取り付けられたセラミックヒーター20のヒーター本体部21は、保持ピン30によって、側壁11の内周面に沿った所定位置に保持される。
【0030】
ここで、セラミックヒーター20は、高温で使用されることにより劣化して断線を生じる虞があるため、定期的に交換する必要がある。本実施形態の加熱炉1では、蓋体13を側壁11から取り外すと、第1端子部22ないし第2端子部23が配置された第1貫通溝11a及び第2貫通溝11bが上方に開口した状態となるので、セラミックヒーター20を側壁11に対して上方に引き上げることで炉本体10から取り外すことができるとともに、新たなセラミックヒーター20を側壁11に対して下方に落とし込んで炉本体10に取り付けることができる。
【0031】
しかし、従来のように、側壁11にU字形状の保持ピンを取り付けてヒーター本体部21を保持する構成では、セラミックヒーター20を交換する際に、保持ピンを側壁11に対して着脱する必要があるため、セラミックヒーター20の交換作業が煩雑である。
【0032】
これに対し、本実施形態の加熱炉1では、保持ピン30は、側壁11に設けられた取付用孔11cに挿通された直線部31と、直線部31の一端に一体に連なるとともに直線部31に対して上方に突出し、側壁11の内周面との間の最小隙間Cがヒーター本体部21の線径以上である保持部32とを有する構成となっているので、セラミックヒーター20を側壁11に対して上方に引き上げて炉本体10から取り外す際に、ヒーター本体部21は保持ピン30の保持部32に干渉することなく上方へ移動することができるとともにセラミックヒーター20を側壁11に対して下方に落とし込んで炉本体10に取り付ける際には、ヒーター本体部21は保持ピン30の保持部32に干渉することなく直線部31に接する位置にまで下方に移動することができる。
【0033】
したがって、本実施形態の加熱炉1によれば、保持ピン30を側壁11に対して着脱することなく、蓋体13を側壁11から取り外した状態で、炉本体10に取り付けられているセラミックヒーター20を上方に引き上げて炉本体10から取り外すとともに新たなセラミックヒーター20を側壁11に対して下方に落とし込むことで、容易に交換することができる。
【0034】
また、本実施形態の加熱炉1では、保持ピン30を保持部32が直線状となったL字形状のものとしたので、セラミックヒーター20を交換する際に、ヒーター本体部21が保持部32に引っ掛かり難くして、セラミックヒーター20の交換をより容易に行い得るようにすることができる。
【0035】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0036】
例えば、保持ピン30は、一本の真っ直ぐに延びる断面円形の線状の直線部31と、直線部31の加熱室Rの側を向く一端に一体に連なるとともに直線部31に対して上方に突出する保持部32とを有し、側壁11の内周面との間の最小隙間Cがヒーター本体部21の線径以上である構成であれば、例えば
図5に示すように、保持部32が円弧状となって全体としてJ字形状のものなど、種々の形状のものとすることができる。保持ピン30を
図5に示すようなJ字形状のものとした場合には、保持部32により、ヒーター本体部21の径方向内側への移動を確実に保持するようにすることができる。
【0037】
また、セラミックヒーター20は、ヒーター本体部21、第1端子部22及び第2端子部23を有していれば、例えば第1端子部22と第2端子部23とが互いに平行な構成とすることもできる。この場合、側壁11の上端に設けられる第1貫通溝11a、第2貫通溝11bも互いに平行に形成すればよい。
【符号の説明】
【0038】
1 加熱炉
10 炉本体
11 側壁
11a 第1貫通溝
11b 第2貫通溝
11c 取付用孔
12 底壁
13 蓋体
14 セッター
15 排気管
16 碍子
17 カバー
20 セラミックヒーター
21 ヒーター本体部
21a 直線状部分
21b 連結部分
22 第1端子部
23 第2端子部
30 保持ピン
31 直線部
32 保持部
33 ストッパー
O 軸線
R 加熱室
C 最小隙間