(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092848
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型塗料セット及び塗膜
(51)【国際特許分類】
C09D 4/02 20060101AFI20240701BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240701BHJP
C09D 123/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C09D4/02
C09D5/00 D
C09D123/00
C09D5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209042
(22)【出願日】2022-12-26
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】神野 修輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 希
(72)【発明者】
【氏名】和氣 小百合
(72)【発明者】
【氏名】印部 俊雄
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CB002
4J038FA202
4J038FA281
4J038GA14
4J038KA03
4J038KA08
4J038KA09
4J038KA10
4J038MA14
4J038MA15
4J038NA01
4J038NA04
4J038PA07
4J038PA17
4J038PB07
4J038PC02
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】本発明は、優れた塗装外観と塗膜性能とを維持しつつ、焼き付けが不要であることによりCO2の排出並びに塗装スペースの低減を可能にした活性エネルギー線硬化型塗料セット及び塗膜を提供することを目的とする。
【解決手段】水性下層塗料組成物と上層塗料組成物との組み合わせであり、水性下層塗料組成物は、ポリウレタン(メタ)アクリレートと粘度(25℃)が10~50000mPa・sである多官能(メタ)アクリレートと顔料とを含み、質量割合「ポリウレタン(メタ)アクリレート:多官能(メタ)アクリレート」が固形分換算で50~95:5~50であり、上層塗料組成物は、ポリ(メタ)アクリレートと粘度(25℃)が10~50000mPa・sである多官能(メタ)アクリレートとを含み、質量割合「ポリ(メタ)アクリレート:多官能(メタ)アクリレート」が固形分換算で50~95:5~50である、活性エネルギー線硬化型塗料セット。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性下層塗料組成物と上層塗料組成物との組み合わせであり、
前記水性下層塗料組成物は、
ポリウレタン(メタ)アクリレートと、
25℃における粘度が10~50000mPa・sである多官能(メタ)アクリレートと、
顔料とを含み、
固形分換算で、前記ポリウレタン(メタ)アクリレートと前記多官能(メタ)アクリレートとの合計質量を100質量%としたときに、前記ポリウレタン(メタ)アクリレートの質量割合が50~95質量%であり、前記多官能(メタ)アクリレートの質量割合が5~50質量%であり、
前記上層塗料組成物は、
ポリ(メタ)アクリレートと、
25℃における粘度が10~50000mPa・sである多官能(メタ)アクリレートとを含み、
固形分換算で、前記ポリ(メタ)アクリレートと前記多官能(メタ)アクリレートとの合計質量を100質量%としたときに、前記ポリ(メタ)アクリレートの質量割合が50~95質量%であり、前記多官能(メタ)アクリレートの質量割合が5~50質量%である
ことを特徴とする、活性エネルギー線硬化型塗料セット。
【請求項2】
前記水性下層塗料組成物が水性プライマー塗料組成物と水性ベース塗料組成物との組み合わせであり、
前記水性プライマー塗料組成物は、
ポリウレタン(メタ)アクリレートと、
25℃における粘度が10~50000mPa・sである多官能(メタ)アクリレートと、
顔料と
任意選択でポリオレフィンとを含み、
固形分換算で、前記ポリウレタン(メタ)アクリレートと前記多官能(メタ)アクリレートとの合計質量を100質量%としたときに、前記ポリウレタン(メタ)アクリレートの質量割合が50~95質量%であり、前記多官能(メタ)アクリレートの質量割合が5~50質量%であり、
前記水性ベース塗料組成物は、
ポリウレタン(メタ)アクリレートと、
25℃における粘度が10~50000mPa・sである多官能(メタ)アクリレートと、
顔料とを含み、
固形分換算で、前記ポリウレタン(メタ)アクリレートと前記多官能(メタ)アクリレートとの合計質量を100質量%としたときに、前記ポリウレタン(メタ)アクリレートの質量割合が50~95質量%であり、前記多官能(メタ)アクリレートの質量割合が5~50質量%である、
請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型塗料セット。
【請求項3】
前記水性ベース塗料組成物が光輝性顔料を含み、
前記水性ベース塗料組成物に含まれる多官能(メタ)アクリレートが、リン酸基を有する多官能(メタ)アクリレートを含む、請求項2に記載の活性エネルギー線硬化型塗料セット。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型塗料セットから形成され、
20°における光沢値が50以上である
ことを特徴とする、塗膜。
【請求項5】
吸水率が5%以下である、請求項4に記載の塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型塗料セット及び該塗料セットを用いて形成された塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車部品等の塗装は、一般に、プライマー塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜を被塗物の上に順次形成することにより行われている。これらの塗膜は、通常、各塗膜の機能に応じて組成が調整された塗料組成物を塗装し、塗装した塗料組成物を焼き付け硬化させることにより形成されるが、この焼き付け工程について、CO2が発生すること、広いスペースが必要とされること等が問題となっている。
このような問題を解決するために、活性エネルギー線照射により硬化する塗料組成物を用いることで焼き付け工程を不要とした塗装方法が検討されている(例えば、特許文献1~6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-100752号公報
【特許文献2】特開2020-033443号公報
【特許文献3】特開2019-143013号公報
【特許文献4】特開2006-021195号公報
【特許文献5】特開2003-145027号公報
【特許文献6】特開2001-514965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、塗装外観及び塗膜性能の点で更なる改良の余地がある。
そこで、本発明は、優れた塗装外観と塗膜性能とを維持しつつ、焼き付けが不要であることによりCO2の排出並びに塗装スペースの低減を可能にした活性エネルギー線硬化型塗料セット及び塗膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、いずれも特定の粘度を有する多官能(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリレート系塗料組成物を下層塗料組成物及び上層塗料組成物として組み合わせることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は以下のとおりである。
[1]
水性下層塗料組成物と上層塗料組成物との組み合わせであり、
前記水性下層塗料組成物は、
ポリウレタン(メタ)アクリレートと、
25℃における粘度が10~50000mPa・sである多官能(メタ)アクリレートと、
顔料とを含み、
固形分換算で、前記ポリウレタン(メタ)アクリレートと前記多官能(メタ)アクリレートとの合計質量を100質量%としたときに、前記ポリウレタン(メタ)アクリレートの質量割合が50~95質量%であり、前記多官能(メタ)アクリレートの質量割合が5~50質量%であり、
前記上層塗料組成物は、
ポリ(メタ)アクリレートと、
25℃における粘度が10~50000mPa・sである多官能(メタ)アクリレートとを含み、
固形分換算で、前記ポリ(メタ)アクリレートと前記多官能(メタ)アクリレートとの合計質量を100質量%としたときに、前記ポリ(メタ)アクリレートの質量割合が50~95質量%であり、前記多官能(メタ)アクリレートの質量割合が5~50質量%である
ことを特徴とする、活性エネルギー線硬化型塗料セット。
[2]
前記水性下層塗料組成物が水性プライマー塗料組成物と水性ベース塗料組成物との組み合わせであり、
前記水性プライマー塗料組成物は、
ポリウレタン(メタ)アクリレートと、
25℃における粘度が10~50000mPa・sである多官能(メタ)アクリレートと、
顔料と
任意選択でポリオレフィンとを含み、
固形分換算で、前記ポリウレタン(メタ)アクリレートと前記多官能(メタ)アクリレートとの合計質量を100質量%としたときに、前記ポリウレタン(メタ)アクリレートの質量割合が50~95質量%であり、前記多官能(メタ)アクリレートの質量割合が5~50質量%であり、
前記水性ベース塗料組成物は、
ポリウレタン(メタ)アクリレートと、
25℃における粘度が10~50000mPa・sである多官能(メタ)アクリレートと、
顔料とを含み、
固形分換算で、前記ポリウレタン(メタ)アクリレートと前記多官能(メタ)アクリレートとの合計質量を100質量%としたときに、前記ポリウレタン(メタ)アクリレートの質量割合が50~95質量%であり、前記多官能(メタ)アクリレートの質量割合が5~50質量%である、
[1]に記載の活性エネルギー線硬化型塗料セット。
[3]
前記水性ベース塗料組成物が光輝性顔料を含み、
前記水性ベース塗料組成物に含まれる多官能(メタ)アクリレートが、リン酸基を有する多官能(メタ)アクリレートを含む、[2]に記載の活性エネルギー線硬化型塗料セット。
[4]
[1]~[3]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型塗料セットから形成され、
20°における光沢値が50以上である
ことを特徴とする、塗膜。
[5]
吸水率が5%以下である、[4]に記載の塗膜。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた塗装外観と塗膜性能とを維持しつつ、焼き付けが不要であることによりCO2の排出並びに塗装スペースの低減を可能にした活性エネルギー線硬化型塗料セット及び塗膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」ともいう)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0009】
〈活性エネルギー線硬化型塗料セット〉
本実施形態の活性エネルギー線硬化型塗料セットは、水性下層塗料組成物と上層塗料組成物との組み合わせである。すなわち、本実施形態の活性エネルギー線硬化型塗料セットにより、水性下層塗料組成物から形成される下層塗膜と、上層塗料組成物から形成される上層塗膜とを含む複層塗膜が形成される。
なお、活性エネルギー線硬化型塗料セットとは、後述する活性エネルギー線の照射により硬化されて塗膜を形成する塗料組成物の組み合わせを意味する。
【0010】
[水性下層塗料組成物]
本実施形態の活性エネルギー線硬化型塗料セットを構成する水性下層塗料組成物は、被塗物に塗装されて下層塗膜を形成する。
水性下層塗料組成物は、ポリウレタン(メタ)アクリレートと、25℃における粘度が10~50000mPa・sである多官能(メタ)アクリレートと、顔料とを含み、固形分換算で、ポリウレタン(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとの合計質量を100質量%としたときに、ポリウレタン(メタ)アクリレートの質量割合が50~95質量%であり、多官能(メタ)アクリレートの質量割合が5~50質量%である。
【0011】
[[ポリウレタン(メタ)アクリレート]]
ポリウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン結合を分子内に有し、かつ(メタ)アクリレート基を分子中に有する化合物である。
ポリウレタン(メタ)アクリレートとしては、特に限定されず、公知の任意のものであってよい。
例えば、
-少なくとも1種のポリイソシアネート化合物(i’)、
-場合により、少なくとも1種のポリオール(ii’)、
-イソシアネート基と反応し得る少なくとも1個の反応性基を含み、直接又は中和剤と反応して塩を与えた後のどちらかで、ポリウレタンを水性媒体中に分散可能とし得る、少なくとも1種の親水性化合物(iii)、
-イソシアネート基と反応し得る反応性基を少なくとも1個含む、少なくとも1種の(メタ)アクリレート化化合物(iv’)
の反応により得られる化合物が挙げられる。
より好ましくは、
-化合物(i’)、(ii’)、及び(iii)の反応を含む第1のステップと、
-第1のステップの生成物と化合物(iv’)との反応を含み、その結果、末端キャップ(end-capped)エチレン性不飽和ポリウレタンが得られる第2のステップと、
-第2のステップの後に得られた前記末端キャップエチレン性不飽和ポリウレタンを水性媒体中に分散するステップと、
-場合により、化合物(iii)により提供された親水基を陰イオン性塩に変換するための中和剤との反応を含むステップと、
-場合により、第2のステップの後に得られたエチレン性不飽和ポリウレタンを連鎖延長剤(vii)と反応させるステップと
を含むプロセスにより得られる化合物が挙げられる。
ポリウレタン(メタ)アクリレートは、1種単独でも複数種の組み合わせであってもよい。
なお、25℃における粘度が10~50000mPa・sである多官能(メタ)アクリレートは、ポリウレタン(メタ)アクリレートには含まれないものとする。
【0012】
適切な中和剤としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルモルフォリン、N-メチルピペラジン、N-メチルピロリジン、及びN-メチルピペリジンなどの揮発性有機三級アミン、並びに1価の金属陽イオン、好ましくは、リチウム、ナトリウム及びカリウムなどのアルカリ金属及び水酸化物、水素化物、炭酸塩、及び重炭酸塩などのそのまま分散物中に残存しない陰イオンを含む非揮発性の無機の塩基が含まれる。
【0013】
ポリイソシアネート化合物(i’)は、少なくとも2個のイソシアネート基を含む有機化合物を指すことを意図している。ポリイソシアネート化合物は通常、3個以下のイソシアネート基を含む。
【0014】
ポリイソシアネート化合物は一般には、脂肪族、脂環式、芳香族及び/又は複素環式のポリイソシアネート又はそれらの組合せから選択される。
【0015】
脂肪族及び脂環式ポリイソシアネートの例としては、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、1,1’-メチレンビス[4-イソシアナトシクロヘキサン](HI2MDI)、5-イソシアナト-1-イソシアナトメチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)がある。2個以上のイソシアネート基を含む脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、1,6-ジイソシアナトヘキサンビウレット及び三量体のような上記のジイソシアネートの誘導体である。
【0016】
芳香族ポリイソシアネートの例としては、1,4-ジイソシアナトベンゼン(BDI)、2,4-ジイソシアナトトルエン(TDI)、1,1’-メチレンビス[4-イソシアナトベンゼン](MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)及びp-フェニレンジイソシアネート(PPDI)がある。
【0017】
ポリオール(ii’)は、少なくとも2つの水酸基を含み、数平均分子量が少なくとも400であるポリオールを指すことを意図している。ポリオール(ii’)は、5000を超えない、好ましくは、1000を超えない数平均分子量を有することが好ましい。
【0018】
そのようなポリオールの例としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリ(メタ)アクリレートポリオール、並びにそれらの組合せがある。
【0019】
ポリエステルポリオールは、特に好ましく、特に、多価、好ましくは、2価アルコールとポリカルボン酸、好ましくは、ジカルボン酸又は対応する酸無水物との水酸基末端反応生成物(hydroxyl terminated reaction)並びにラクトン類の開環重合で得られる生成物が好ましい。特に好ましいのは、ネオペンチルグリコールとアジピン酸及び/又はイソフタル酸の重縮合反応で作られるポリエステルポリオールである。
【0020】
高分子量のポリオール(ii’)に加えて、プレポリマーの合成中に低分子量ポリオールを加えることもできる。低分子量ポリオールとは、少なくとも2個の水酸基を含み、分子量が400より少ないポリオールを指すことを意図している。
【0021】
親水性化合物(iii)は一般に、イオン性又は非イオン性の親水性を示すことができる官能基を含むポリオールである。好ましくは、これは、1個又は複数個の、カルボン酸塩及びスルホン酸塩の基などの陰イオン性塩の基、又はカルボン酸基又はスルホン酸基等の陰イオン性塩の基に変換し得る酸基を含むポリオールである。好ましくは、一般式(HO)xR(COOH)yで表されるヒドロキシカルボン酸であり、式中、Rは、1から12個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の炭化水素残基を表し、x及びyは独立に、1から3の整数である。これらのヒドロキシカルボン酸の例としては、クエン酸、リンゴ酸、乳酸及び酒石酸が含まれる。最も好ましいヒドロキシカルボン酸は、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸及び2,2-ジメチロールブタン酸などの、上記の一般式中、x=2及びy=1である、α,α-ジメチロールアルカン酸である。
【0022】
(メタ)アクリル化合物(iv’)は、少なくとも1個の(メタ)アクリル基及びイソシアネートと反応し得る1個の求核性官能基、好ましくは、水酸基を含む化合物を指すのを意図している。好ましいのは、(メタ)アクリロイルモノヒドロキシ化合物であり、より具体的には、ポリ(メタ)アクリロイルモノヒドロキシ化合物である。アクリレートが特に好ましい。
【0023】
有用な化合物(iv’)としては、脂肪族及び芳香族ポリオールと(メタ)アクリル酸とのエステル化生成物であって、平均残存水酸基数が約1であるものがある。(メタ)アクリル酸と3価、4価、5価又は6価ポリオール又はそれらの混合物との部分エステル化生成物が好ましい。この文脈においては、そのようなポリオールとエチレンオキシド及び/若しくはプロピレンオキシド又はそれらの混合物との反応生成物、或いはそのようなポリオールと、開環反応においてこうしたポリオールに付加するラクトンとの反応生成物を用いることもまた可能である。適切なラクトンの例としては、γ-ブチロラクトン、並びに特に、δ-バレロラクトン及びε-カプロラクトンがある。このような修飾された又は未修飾のポリオールは、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらの混合物で、所望の残存水酸基数となるまで部分的にエステル化される。
【0024】
適切な化合物としては、アルキル基中に1から20の炭素原子を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのような、少なくとも1個の水酸官能基がフリーのままである、直鎖及び分岐のポリオールを有する(メタ)アクリルエステルがある。この範疇の好ましい分子は、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートである。特に好ましいのは、グリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及びそれらの(ポリ)エトキシル化及び/又は(ポリ)プロポキシル化等価物などの、少なくとも2個の(メタ)アクリル官能基を含む化合物である。
【0025】
ポリウレタン(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、ダイセル・オルネクス株式会社製のUCECOAT7655、UCECOAT7788、UCECOAT7850等が挙げられる。
【0026】
ポリウレタン(メタ)アクリレートは、二重結合当量が100~20,000g/eqであることが好ましく、より好ましくは150~15,000g/eq、さらに好ましくは200~10,000g/eqである。二重結合等量が100g/eq以上であると、塗膜の耐クラック性、耐衝撃性が良好となる傾向にあり、20,000g/eq以下であると、塗膜の擦傷性、表面硬度、耐薬品性が良好となる傾向にある。
なお、二重結合等量は、ポリウレタン(メタ)アクリレートの製造において使用した原料の配合割合に基づいて算出される値とする。
【0027】
ポリウレタン(メタ)アクリレートは、重量平均分子量が1,000~300,000であることが好ましく、より好ましくは1,000~200,000、さらに好ましくは1,000~100,000である。重量平均分子量が1,000以上であると、塗膜性能(耐水性等)が良好となる傾向にある。また、重量平均分子量が300,000以下であると、ポリウレタン(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレート等との相溶性が良好となる傾向にあり、また、水性下層塗料組成物が適度な粘度を有するものとなる傾向にある。
なお、ポリウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0028】
ポリウレタン(メタ)アクリレートのウレタン濃度は、特に限定されず、ポリウレタン(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレート等との相溶性、水性下層塗料組成物の粘度、塗膜の耐ブロッキング性、耐衝撃性等を考慮して適宜調整すればよく、例えば、300~2000g/eqであってよい。
なお、ウレタン濃度は、ポリウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量をウレタン結合数で除した数値で表され、ポリウレタン(メタ)アクリレートの製造において使用した原料の配合割合に基づいて算出される値とする。
【0029】
ポリウレタン(メタ)アクリレートのウレア濃度は、特に限定されず、ポリウレタン(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレート等との相溶性、塗膜の耐ブロッキング性等を考慮して適宜調整すればよく、例えば、500~1000g/eqであってよい。
なお、ウレア濃度は、ポリウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量をウレア結合数で除した数値で表され、ポリウレタン(メタ)アクリレートの製造において使用した原料の配合割合に基づいて算出される値とする。
【0030】
ポリウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、固形分換算で、水性下層塗料組成物中のポリウレタン(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとの合計質量を100質量%としたときに、50~95質量%であり、50~90質量%であることが好ましく、より好ましくは
50~80質量%である。ポリウレタン(メタ)アクリレートの含有量が上記範囲であると、ポリウレタン(メタ)アクリレートによる可撓性と多官能(メタ)アクリレートによる反応性の向上が期待でき、水遮断性が良好で耐水密着性に優れた塗膜を得ることができる。
【0031】
[[多官能(メタ)アクリレート]]
多官能(メタ)アクリレートは、2つ以上の(メタ)アクリレート基を有する(メタ)アクリレートであり、多価アルコールと(メタ)アクリレートとを脱アルコール化反応することにより、製造することができる。
多官能(メタ)アクリレートは、活性エネルギー線を照射することにより、(メタ)アクリレート基の反応に基づく硬化反応が生じ、良好な重合活性を有する。活性エネルギー線により硬化する多官能(メタ)アクリレートが含まれることにより、水性下層塗料組成物の反応性が向上し、優れた塗膜性能(耐水密着性、耐水性等)を有する下層塗膜が得られる。また、通常、下層塗料組成物と上層塗料組成物のいずれもが水性型であると、硬化反応中に互いの成分が一部混ざり合うことで下層塗膜と上層塗膜との界面が曖昧なものとなるが、活性エネルギー線により硬化する多官能(メタ)アクリレートが含まれることにより水性下層塗料組成物の反応性が向上すること、また、活性エネルギー線により硬化反応時間が短縮されることにより、成分の混ざり合いが低減され、下層塗膜と上層塗膜との界面が明確(平滑)になり、塗膜外観に優れた塗膜を得ることができる。
【0032】
多官能(メタ)アクリレートとしては、25℃における粘度が10~50000mPa・sであれば特に限定されず、公知の任意のものであってよく、例えば、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、PEG400ジ(メタ)アクリレート、PEG600ジ(メタ)アクリレート、ジ(2-メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(2-アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等の2官能(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能(メタ)アクリレート;トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、EO変性ジグリセリン(メタ)アクリレート、多官能ポリエステル(メタ)アクリレート等の7官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製のアロニックスM-208、M-211B、M-215、M-220、M-225、M-240、M-270、M-305、M-306、M-309、M-310、M-313、M-315、M-321、M-350、M-360、M-402、M-403、M-404、M-405、M-406、M-408、M-450、M-7100、TO-1200;ダイセル・オルネクス株式会社製のDPGDA、HDDA、TPGDA、EBECRYL 145、EBECRYL 150、PEG400DA、EBECRYL 11、IRR 214-K、EBECRYL 130、TMPTA、EBECRYL 160S、OTA 480、PETIA、PETRA、PETA、EBECRYL 140、EBECRYL 1140、EBECRYL 1142、DPHA、EBECRYL 895、EBECRYL 896、EBECRYL IBOMA、EBECRYL PEG200DMA、EBECRYL TMPTMA;日本化薬株式会社製のKAYARAD DPHA;アルケマ株式会社製のSR-399等が挙げられる。
【0033】
水性下層塗料組成物が顔料として後述の光輝性顔料を含む場合、多官能(メタ)アクリレートは、リン酸基を有する多官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。リン酸基を有する多官能(メタ)アクリレートを含むことにより、光輝性顔料の分散性が向上し、より塗膜外観に優れた塗膜が得られる傾向にある。また、リン酸基を有する多官能(メタ)アクリレートが光輝性顔料に吸着し、その周囲の硬化性を向上させることにより、塗膜自体の凝集力を上げ、耐水密着性が向上する傾向にある。
リン酸基を有する多官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、上述のジ(2-メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(2-アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等が挙げられる。
リン酸基を有する多官能(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、共栄社化学株式会社製のライトエステルP-2M等が挙げられる。
【0034】
多官能(メタ)アクリレートは、1種単独でも複数種の組み合わせであってもよい。
【0035】
多官能(メタ)アクリレートの25℃における粘度は、10~50000mPa・sであり、好ましくは10~40000mPa・s、より好ましくは10~30000mPa・sである。多官能(メタ)アクリレートの25℃における粘度が上記範囲であると、水性下層塗料組成物中での多官能(メタ)アクリレートの流動性が良好となるため水性下層塗料組成物の反応性が良好となり、塗装外観及び塗膜性能に優れた塗膜を得ることができる。
なお、多官能(メタ)アクリレートの25℃における粘度は、B型粘度計を用いて測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0036】
多官能(メタ)アクリレートの分子量は、特に限定されないが、重合体に該当しない、比較的低分子量の化合物であることが好ましい。例えば、多官能(メタ)アクリレートの分子量は3000以下であってよい。
なお、多官能(メタ)アクリレートの分子量は、多官能(メタ)アクリレートの化学構造式から算出される値である。
【0037】
多官能(メタ)アクリレートの含有量は、固形分換算で、水性下層塗料組成物中のポリウレタン(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとの合計質量を100質量%としたときに、5~50質量%であり、10~50質量%であることが好ましく、より好ましくは20~50質量%である。多官能(メタ)アクリレートの含有量が上記範囲であると、多官能(メタ)アクリレートによりポリウレタン(メタ)アクリレート間の硬化性の向上が期待でき、水遮断性が良好で耐水密着性に優れた塗膜を得ることができる。
【0038】
[[顔料]]
水性下層塗料組成物は、光輝性顔料、着色顔料等の顔料を含む。
光輝性顔料としては、特に限定されず、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよく、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、スズ、酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、リン酸鉄及びこれらの合金等の金属製光輝性顔料、干渉マイカ顔料、ホワイトマイカ顔料、グラファイト顔料、ガラスフレーク顔料等が挙げられる。
光輝性顔料は、1種単独でも複数種の組み合わせであってもよい。
光輝性顔料の含有量は、固形分換算で、水性下層塗料組成物中のポリウレタン(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとの合計質量を100質量部としたときに、0.5~30質量部であることが好ましく、より好ましくは1~25質量部、さらに好ましくは1~20質量部である。
【0039】
着色顔料としては、特に限定されず、例えば、有機顔料としては、アゾレーキ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等が挙げられ、また、無機顔料としては、黄色酸化鉄、ベンガラ、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。
着色顔料は、1種単独でも複数種の組み合わせであってもよい。
なお、着色顔料には、上述の光輝性顔料は含まれないものとする。
着色顔料の含有量は、固形分換算で、水性下層塗料組成物中のポリウレタン(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとの合計質量を100質量部としたときに、0.5~150質量部であることが好ましく、より好ましくは1~120質量部、さらに好ましくは3~100質量部である。
【0040】
[[ポリオレフィン]]
水性下層塗料組成物は、ポリオレフィンを含んでいてもよい。特に、被塗物がポリプロピレン基材等の難密着基材である場合に、ポリオレフィンを含むことにより、水性下層塗料組成物と被塗物との親和性が向上する傾向にある。
【0041】
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-イソプレン共重合体、これらの共重合体の水添加物等が挙げられる。
ポリオレフィンは、1種単独でも複数種の組み合わせであってもよい。
【0042】
ポリオレフィンは、塩素化ポリオレフィンであってもよい。塩素化ポリオレフィンは、水素原子の一部が塩素原子で置換されたポリオレフィン樹脂である。
ポリオレフィン樹脂の塩素化は従来公知の技術で行うことができ、例えば、ポリオレフィンのクロロホルム溶液に対し、高温にて塩素ガスを吹き込むことにより、ポリオレフィンを容易に塩素化することができる。
塩素化ポリオレフィンの市販品としては、例えば、日本製紙株式会社製のスーパークロンEN-30、EN-1160A等を挙げることができる。
塩素化ポリオレフィンは、1種単独でも複数種の組み合わせであってもよい。
【0043】
ポリオレフィンの塩素含有率は、特に限定されないが、他の樹脂との相溶性、造膜性及び得られる塗膜の耐水性の観点から、0~35質量%であることが好ましく、より好ましくは0~30質量%、さらに好ましくは0~27質量%である。
塩素含有率は、例えば、塩素ガスの吹き込み量又は時間により調整することができる。
なお、ポリオレフィンの塩素含有率は、JIS-K7229に準拠して測定することができる。
【0044】
ポリオレフィンの重量平均分子量は、特に限定されないが、他の樹脂との相溶性、造膜性及び得られる塗膜の耐水性の観点から、10,000~1,000,000であることが好ましく、より好ましくは20,000~500,000、さらに好ましくは30,000~300,000である。
なお、ポリオレフィンの重量平均分子量は、GPCにて測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0045】
ポリオレフィンの含有量は、固形分換算で、水性下層塗料組成物中のポリウレタン(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとの合計質量を100質量部としたときに、0~50質量部であることが好ましく、より好ましくは0~40質量部、さらに好ましくは0~30質量部である。ポリオレフィンの含有量が上記範囲であると、水性下層塗料組成物と被塗物との親和性が向上する傾向にあり、塗膜性能(耐水密着性等)が向上する傾向にある。
【0046】
[[その他の成分]]
水性下層塗料組成物は、必要に応じて、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、特に限定されず、例えば、硬化剤、界面活性剤、中和剤、安定剤、増粘剤、消泡剤、表面調整剤、レベリング剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シリカ等の無機充填剤、導電性カーボン、導電性フィラー、有機改質剤、可塑剤等が挙げられる。
その他の成分の含有量は、固形分換算で、水性下層塗料組成物中のポリウレタン(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとの合計質量を100質量部としたときに、0.5~150質量部であることが好ましく、より好ましくは1~120質量部、さらに好ましくは3~100質量部である。
【0047】
本実施形態の水性下層塗料組成物は、水性プライマー塗料組成物と水性ベース塗料組成物との組み合わせであってもよく、該組み合わせは、水性下層塗料セットと称することもできる。
水性プライマー塗料組成物は、被塗物の表面に直接塗装されてプライマー塗膜を形成する塗料組成物であり、水性ベース塗料組成物は、プライマー塗膜の上に塗装されてベース塗膜を形成する塗料組成物である。すなわち、水性下層塗料組成物が水性プライマー塗料組成物と水性ベース塗料組成物との組み合わせである場合、下層塗膜はプライマー塗膜とベース塗膜とを含む複層塗膜となる。
【0048】
水性プライマー塗料組成物は、例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレートを50~95質量%と、25℃における粘度が10~50000mPa・sである多官能(メタ)アクリレートを5~50質量%と、顔料と、任意選択でポリオレフィンと、任意選択で上述のその他の成分とを含むものであってよい。
水性ベース塗料組成物は、例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレートを50~95質量%と、25℃における粘度が10~50000mPa・sである多官能(メタ)アクリレートを5~50質量%と、顔料と、任意選択で上述のその他の成分とを含むものであってよい。
水性ベース塗料組成物が顔料として光輝性顔料(特に、リン酸アルミニウム、リン酸鉄等のリン酸系顔料)を含む場合、水性ベース塗料組成物に含まれる多官能(メタ)アクリレートは、上述のとおり、リン酸基を有する多官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
【0049】
水性下層塗料組成物(水性プライマー塗料組成物、水性ベース塗料組成物の各々)は、各成分を通常用いられる混合手段(例えば、ペイントシェーカー、ミキサー等の混合装置)を用いて混合することにより、調製することができる。
【0050】
[上層塗料組成物]
本実施形態の活性エネルギー線硬化型塗料セットを構成する上層塗料組成物は、下層塗膜の上に塗装されて上層塗膜を形成する。
上層塗料組成物は、ポリ(メタ)アクリレートと、25℃における粘度が10~50000mPa・sである多官能(メタ)アクリレートとを含み、固形分換算で、ポリ(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとの合計質量を100質量%としたときに、ポリ(メタ)アクリレートの質量割合が50~95質量%であり、多官能(メタ)アクリレートの質量割合が5~50質量%である。
上層塗料組成物は、有機溶剤型であっても、水性型であってもよい。乾燥時に大気汚染の要因となる揮発性有機化合物(VOC)が生じないことから、水性型の上層塗料組成物であることが好ましい。
【0051】
[[ポリ(メタ)アクリレート]]
ポリ(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリレート基を分子中に有するポリマーである。
ポリ(メタ)アクリレートとしては、特に限定されず、公知の任意のものであってよく、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリプロピル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリイソボルニル(メタ)アクリレート、ポリオクタデシル(メタ)アクリレート及びこれらの共重合体等や、上述の水性下層塗料組成物に含まれるポリウレタン(メタ)アクリレートと同様のものが挙げられる。
なお、25℃における粘度が10~50000mPa・sである多官能(メタ)アクリレートは、ポリ(メタ)アクリレートには含まれないものとする。
【0052】
ポリ(メタ)アクリレートの含有量は、固形分換算で、上層塗料組成物中のポリ(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとの合計質量を100質量%としたときに、50~95質量%であり、好ましくは60~95質量%、より好ましくは65~95質量%である。ポリ(メタ)アクリレートの含有量が上記範囲であると、多官能(メタ)アクリレートのみでは発生しやすい塗膜の硬化収縮が緩和される傾向にあり、層間での密着性が向上する傾向にある。
【0053】
[[多官能(メタ)アクリレート]]
上層塗料組成物に含まれる多官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されず、上述の水性下層塗料組成物に含まれる多官能(メタ)アクリレートと同様のものが挙げられる。
活性エネルギー線により硬化する多官能(メタ)アクリレートが含まれることにより、上層塗料組成物の反応性が向上し、優れた塗膜性能(耐水密着性、耐水性等)を有する上層塗膜が得られる。また、通常、下層塗料組成物と上層塗料組成物のいずれもが水性型であると、硬化反応中に互いの成分が一部混ざり合うことで下層塗膜と上層塗膜との界面が曖昧なものとなるが、活性エネルギー線により硬化する多官能(メタ)アクリレートが含まれることにより上層塗料組成物の反応性が向上すること、また、活性エネルギー線により硬化反応時間が短縮されることにより、成分の混ざり合いが低減され、下層塗膜と上層塗膜との界面が明確(平滑)になり、塗膜外観に優れた塗膜を得ることができる。
多官能(メタ)アクリレートの含有量は、固形分換算で、上層塗料組成物中のポリ(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとの合計質量を100質量%としたときに、5~50質量%であり、好ましくは5~40質量%、より好ましくは5~35質量%である。多官能(メタ)アクリレートの含有量が上記範囲であると、下層塗膜との成分の混ざり合いが低減され、優れた塗膜光沢、外観を得ることができる。
【0054】
[[その他の成分]]
上層塗料組成物は、必要に応じて、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、特に限定されず、例えば、硬化剤、界面活性剤、中和剤、安定剤、増粘剤、消泡剤、表面調整剤、レベリング剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シリカ等の無機充填剤、有機改質剤、可塑剤等が挙げられる。
その他の成分の含有量は、固形分換算で、上層塗料組成物中のポリ(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとの合計質量を100質量部としたときに、0.5~15質量部であることが好ましく、より好ましくは1~10質量部、さらに好ましくは1~7質量部である。
【0055】
上層塗料組成物は、各成分を通常用いられる混合手段(例えば、ペイントシェーカー、ミキサー等の混合装置)を用いて混合することにより、調製することができる。
【0056】
〈塗膜〉
本実施形態の塗膜は、上述の本実施形態の活性エネルギー線硬化型塗料セットから形成される。本実施形態の塗膜は、例えば、水性下層塗料組成物から形成した下層塗膜と、該下層塗膜上に上層塗料組成物から形成した上層塗膜と、を具える。また、水性下層塗料組成物が水性プライマー塗料組成物と水性ベース塗料組成物との組み合わせである場合(即ち、水性下層塗料セットである場合)は、本実施形態の塗膜は、例えば、水性プライマー塗料組成物から形成したプライマー塗膜と、該プライマー塗膜上に水性ベース塗料組成物から形成したベース塗膜と、該ベース塗膜上に上層塗料組成物から形成した上層塗膜と、を具える。
【0057】
塗膜は、塗装外観の観点から、20°における光沢値(グロス値)が50以上であることが好ましく、より好ましくは70以上、さらに好ましくは80以上である。
塗膜の20°光沢値の上限は、特に限定されず、例えば、100以下であってもよい。
なお、塗膜の20°における光沢値は、光沢計を用いて測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0058】
塗膜は、耐水性の観点から、吸水率が5%以下であることが好ましく、より好ましくは3%以下である。塗膜吸水率の下限は、特に限定されず、例えば、1%以上であってもよい。
なお、塗膜の吸水率は、後述の実施例に記載の方法により求めることができる。
【0059】
塗膜の総厚みは、特に限定されないが、活性エネルギー線の透過性の観点から、乾燥膜厚で18~120μmであることが好ましく、より好ましくは27~100μm、さらに好ましくは35~85μmである。
【0060】
下層塗膜の厚みは、乾燥膜厚で8~70μmであることが好ましく、より好ましくは5~20μmであり、さらに好ましくは5~15μmである。下層塗膜の厚みが
3μm以上であると、十分な隠蔽性が得られる傾向にあり、30μm以下であると、タレ、ワキ等の不具合が発生しにくい。
また、下層塗膜がプライマー塗膜とベース塗膜とを含む場合、プライマー塗膜の厚みは、連続な均一膜を得る観点から、乾燥膜厚で3~30μmであることが好ましく、より好ましくは5~20μmであり、さらに好ましくは5~15μmである。
ベース塗膜の厚みは、乾燥膜厚で5~40μmであることが好ましく、より好ましくは7~35μmであり、さらに好ましくは10~30μmである。
【0061】
上層塗膜の厚みは、乾燥膜厚で10~50μmであることが好ましく、より好ましくは15~45μmであり、さらに好ましくは20~40μmである。上層塗膜の厚みが10μm以上であると、連続な均一膜を得られる傾向にあり、50μm以下であると、タレ、ワキ等の不具合が発生しにくい。
【0062】
上記各塗膜の乾燥膜厚は、膜厚計(株式会社サンコウ電子研究所製「SDM-miniR」等)を用いて測定することができる。
【0063】
[塗膜の形成方法]
本実施形態の塗膜は、以下のようにして形成することができる。
まず、本実施形態の活性エネルギー線硬化型塗料セットのうちの水性下層塗料組成物を被塗物に塗布し、プレヒートにより水分を除去して未硬化の下層塗膜を形成した後、未硬化の下層塗膜上に上層塗料組成物を塗布し、プレヒートにより水分を除去して未硬化の上層塗膜を形成する。その後、活性エネルギー線を照射して未硬化の下層塗膜と未硬化の上層塗膜とを同時にまとめて硬化させる。
水性下層塗料組成物が水性プライマー塗料組成物と水性ベース塗料組成物との組み合わせである場合(即ち、水性下層塗料セットである場合)は、まず、水性プライマー塗料組成物を被塗物に塗布し、プレヒートにより水分を除去して未硬化のプライマー塗膜を形成した後、未硬化のプライマー塗膜上に水性ベース塗料組成物を塗布し、プレヒートにより水分を除去して未硬化のベース塗膜を形成する。その後、未硬化のベース塗膜上に上層塗料組成物を塗布し、プレヒートにより水分を除去して未硬化の上層塗膜を形成する。最後に活性エネルギー線を照射して未硬化の各塗膜を同時にまとめて硬化させることにより、塗膜を形成することができる。
【0064】
水性下層塗料組成物(水性プライマー塗料組成物及び水性ベース塗料組成物)及び上層塗料組成物を塗布する方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を使用することができ、例えば、エアスプレーやエアレススプレー等のスプレー塗装、エアー静電スプレー塗装、ベル塗装、ディスク塗装、ローラ塗装、刷毛塗装、カーテンコート、シャワーコート等が挙げられる。
各塗料組成物の吐出量等の条件は、所望する膜厚等に応じて適宜設定することができる。
【0065】
プレヒートは、例えば、熱風式乾燥炉等を用いて、50~80℃で3~20分間加熱すればよい。
照射する活性エネルギー線の種類は、特に限定されず、可視光線、紫外線、電子線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等が挙げられる。中でも、厚みがあり、着色された複層塗膜であっても下層まで効率よく硬化することできるという点で電子線が好ましい。
活性エネルギー線の照射方法は、特に限定されず、従来公知の装置、照射条件を用いることができる。
【0066】
[被塗物]
本実施形態の活性エネルギー線硬化型塗料セットを塗装される被塗物は、特に限定されず、例えば、自動車部品、航空機部品、建機部品、建材部品等に一般に用いられる金属部材、プラスチック部材等が挙げられる。
金属部材を構成する金属としては、特に限定されず、例えば、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛等の金属単体及びこれらの金属単体を含む合金等が挙げられる。
プラスチック部材を構成する樹脂としては、特に限定されず、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよく、例えば、ポリプロピレン(PP)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリカーボネート(PC)/ABS樹脂、PC/アクリロニトリル・エチレン-プロピレン-ジエン・スチレン共重合体(AES樹脂)、AES樹脂、PC/ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、PC/ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、PC樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、GF-PBT樹脂、GF-ポリアミド(PA)樹脂、ノリル・GTX樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC樹脂)、アクリロニトリル・スチレン・アクリル(ASA)樹脂、炭素繊維強化プラスチック(CFRP樹脂)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP樹脂)等が挙げられる。
被塗物は、塗膜との密着性を向上させるために、塗装前に表面処理されていることが好ましい。表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、化成処理、脱脂処理等が挙げられる。
【実施例0067】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0068】
実施例、比較例で用いた材料は以下のとおりである。
【0069】
[ポリウレタン(メタ)アクリレート]
・ポリウレタン(メタ)アクリレート1(ダイセル・オルネクス株式会社製「UCECOAT7850」、重量平均分子量:10000)
・ポリウレタン(メタ)アクリレート2(ダイセル・オルネクス株式会社製「UCECOAT7788」、重量平均分子量:20000)
・ポリウレタン(メタ)アクリレート3(ダイセル・オルネクス株式会社製「UCECOAT7655」、重量平均分子量:10000)
・ポリウレタン(メタ)アクリレート4(UBE株式会社製「UVPUD-7105E-C2」、重量平均分子量:NA(測定限界以上))
・ポリウレタン(メタ)アクリレート5(ダイセル・オルネクス株式会社製「EBECRYL8402」、重量平均分子量:1000)
なお、ポリウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、各製品のカタログに記載された値である。
【0070】
[多官能(メタ)アクリレート]
・多官能(メタ)アクリレート1(2官能)(東亞合成株式会社製「アロニックスM-220」、25℃における粘度:12mPa・s)
・多官能(メタ)アクリレート2(3官能)(東亞合成株式会社製「アロニックスM-313」、25℃における粘度:28000mPa・s)
・多官能(メタ)アクリレート3(3官能)(東亞合成株式会社製「アロニックスM-321」、25℃における粘度:120mPa・s)
・多官能(メタ)アクリレート4(多官能)(東亞合成株式会社製「アロニックスM-7100」、25℃における粘度:10000mPa・s)
・多官能(メタ)アクリレート5(2官能、リン酸基含有)(共栄社化学株式会社製「ライトエステルP-2M」、25℃における粘度:1500mPa・s)
なお、多官能(メタ)アクリレートの25℃における粘度は、B型粘度計(東機産業社製「TVB-10」)を用いて測定した。
【0071】
[ポリオレフィン]
・ポリオレフィン1(日本製紙株式会社製「EN-30」)
・ポリオレフィン2(日本製紙株式会社製「EN-1160A」)
【0072】
[顔料]
・導電カーボン(ライオン株式会社製「ケッチェンブラックEC600JD」)
・体質顔料(疎水性シリカ)(日本シリカ工業株式会社製「ニップシールSS50B」)
・体質顔料(微粉タルク)(日本タルク株式会社製「ミクロエースP-4」)
・アルミニウム(旭化成ケミカルズ株式会社製「旭化成アルミペースト MH-8801」)
・カーボンブラック(Birla Carbon社製「RAVEN 5000 ULTRA III POWDER」)
・酸化チタン(デュポン社製「タイピュアーR-960」)
【0073】
[その他の成分]
・単官能(メタ)アクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックスM-5700」、25℃における粘度:170mPa・s)
単官能(メタ)アクリレートの25℃における粘度は、上述の多官能(メタ)アクリレートの25℃における粘度と同様に測定した。
【0074】
[被塗物]
・ポリプロピレン基材(70mm×150mm×厚み3mm)
【0075】
実施例、比較例で用いた測定・評価方法について以下に説明する。
【0076】
[20°光沢値]
試験板について、光沢計(BYK-Gardner社製「micro-TRI-gloss」)を用いて試験板表面の20°光沢値を測定し、以下の基準に従って評価した。
(評価基準)
5:20°光沢値が80以上
4:20°光沢値が70以上80未満
3:20°光沢値が50以上70未満
2:20°光沢値が40以上50未満
1:20°光沢値が40未満
【0077】
[肌外観]
試験板を目視にて観察し、以下の基準に従って評価した。
(評価基準)
3:塗膜のはじきが3個以下でゆず肌等がほとんど認められず、問題ない
2:塗膜のはじきが4個以上10個以下又はゆず肌等が認められ、問題がある
1:塗膜のはじきが11個以上又はゆず肌等が著しく認められ、明らかに問題がある
【0078】
[耐水密着性]
試験板を、40℃に保持された水槽に240時間浸漬した。その後、試験板を水から引き揚げて、常温で1時間乾燥した。次いで、試験板の塗膜に、カッターにより1mmの間隔で縦横11本ずつの切れ目を入れ、100個のマス目(1mm四方)を作成した。マス目の上にセロテープ(登録商標)(ニチバン株式会社製)を貼付した後、剥がした。100個のマス目のうち、塗膜が剥がれたマス目の数(個)をカウントし、以下の基準に従って評価した。塗膜が剥がれたマス目の数が少ない(塗膜が残存しているマス目が多い)ほど、耐水試験後の付着性に優れており、耐水密着性が高いと評価される。
(評価基準)
5:塗膜が剥がれたマス目の数が0個
4:塗膜が剥がれたマス目の数が1~10個
3:塗膜が剥がれたマス目の数が11~30個
2:塗膜が剥がれたマス目の数が31~50個
1:塗膜が剥がれたマス目の数が51~100個
【0079】
[フリップフロップ(FF)性]
試験板について、色差計(コニカミノルタ株式会社製変角色彩色差計「CM-512m3」)により、25度及び75度の測定角度でL値を測定した。測定値からFF値(25度のL値/75度のL値)を算出し、以下の基準に従って評価した。
(評価基準)
3:FF値が45以上
2:FF値が35以上45未満
1:FF値が35未満
【0080】
[塗膜吸水率]
テフロン基材
上に各実施例及び比較例の塗膜を作製した。塗膜を基材から剥離して4.0cm×5.5cmにカットした。次いで、塗膜を60℃に保持された水槽に72時間浸漬した。その後、塗膜を水から引き揚げて、表面の水を拭き取り、塗膜の質量(M1)を測定した。更に、塗膜を105℃で1時間乾燥させ、再度質量(M2)を測定した。得られた各質量から、下記式により塗膜吸水率(%)を算出した。
塗膜吸水率[%]=(M1-M2)/M2×100
得られた塗膜吸水率を基に、以下の基準に従って耐水性を評価した。
(評価基準)
5:塗膜吸水率が3%以下
4:塗膜吸水率が3%超5%以下
3:塗膜吸水率が5%超8%以下
2:塗膜吸水率が8%超10%以下
1:塗膜吸水率が10%超
【0081】
[実施例1]
(顔料分散ペーストの製造)
顔料分散樹脂(固形分質量30%、日本ペイント株式会社製)7.7g、純水67.5g、塗料用水性樹脂(DIC社製「ウォーターゾールBCD-3120」)26.4g、顔料練合助剤(エボニック社製「カルボウェットGA221」)5.4g、界面活性剤(エアープロダクツジャパン社製「サーフィノール420」)2.8g、消泡剤(サンノプコ株式会社製「ノプコ8034L」)1.2g、微粉タルク5.0g、疎水性シリカ5.0g、導電カーボン5.0g、酸化チタン44.0gを混合撹拌し、サンドグラインダーミルで30分間分散して顔料分散ペーストを得た。
(塗料組成物の調製)
ポリウレタン(メタ)アクリレート1:89.2g、多官能(メタ)アクリレート3:31.2g、ポリオレフィン1:43.3g、ポリオレフィン2:43.3g、上記で得た顔料分散ペースト170.0gをホモディスパーを用いて混合し、プライマー塗料組成物を調製した。
同様に、ポリウレタン(メタ)アクリレート3:214.3g、多官能(メタ)アクリレート1:25.0g、多官能(メタ)アクリレート5(2官能、リン酸基含有):1.0g、顔料(アルミニウム):23.1gをホモディスパーを用いて混合し、ベース塗料組成物を調製した。
同様に、ポリウレタン(メタ)アクリレート2:187.5g、多官能(メタ)アクリレート3(3官能):25.0gをホモディスパーを用いて混合し、上層塗料組成物を調製した。
(塗膜の形成)
バーナーを用いて表面をフレーム処理したポリプロピレン基材の片側表面に、25℃/70%RHの環境下でスプレー塗装機(アネスト岩田株式会社製「WIDER1」)を用いてプライマー塗料組成物をスプレー塗装した後、80℃で数分間プレヒートして水分を除去し、未硬化のプライマー塗膜を形成した。
続いて、未硬化のプライマー塗膜上に、同じ環境下でスプレー塗装機(アネスト岩田株式会社製「WIDER1」)を用いてベース塗料組成物をスプレー塗装した後、80℃で数分間プレヒートして水分を除去し、未硬化のベース塗膜を形成した。
続いて、未硬化のベース塗膜上に、同じ環境下でスプレー塗装機(アネスト岩田株式会社製「WIDER1」)を用いて上層塗料組成物をスプレー塗装した後、80℃で数分間プレヒートして水分を除去し、未硬化の上層塗膜を形成した。
未硬化の上層塗膜側から、電子線照射装置(NHVコーポレーション社製「EBC-300」)を用いて電子線を照射し、未硬化の各塗膜を硬化させて塗膜を形成した。照射条件は、加速電圧150kV、線量200kGy(ビーム電流及び搬送速度により調整)、酸素濃度500ppm以下、及び室温(23℃)とした。
得られた塗装基材を試験板とし、各物性の測定・評価を行った。
【0082】
(実施例2~15、比較例1~5)
下層塗料組成物及び上層塗料組成物の組成を表1に示すとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、塗膜を形成し、試験板を得た。
【0083】
実施例・比較例の各物性の測定・評価結果を表1に示す。なお、表中の各成分の質量割合は、固形分換算で示している。
【0084】