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特開2024-92849床用グラスウール成形体及びその集合体
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  • 特開-床用グラスウール成形体及びその集合体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092849
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】床用グラスウール成形体及びその集合体
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/43 20060101AFI20240701BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20240701BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
E04B5/43 G
E04B1/76 500Z
E04B1/80 100L
E04B1/80 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209043
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】313012349
【氏名又は名称】旭ファイバーグラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 直樹
(72)【発明者】
【氏名】岡村 和馬
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DA02
2E001DD01
2E001FA11
2E001GA29
2E001HA33
(57)【要約】
【課題】本発明は、断熱性及び排水性に優れた床用グラスウール成形体及び床用グラスウール成形体の集合体を提供することを目的とする。
【解決手段】複数の貫通孔を有する床用グラスウール成形体、又は、1つ又は複数の貫通孔を有する床用グラスウール成形体の集合体であり、貫通孔の孔径は4~12mmであり、隣り合う貫通孔同士の間隔は300±50mmの範囲内であり、床用グラスウール成形体の厚みは40~140mmであり、床用グラスウール成形体は、シリコーンオイル、鉱物油及び食用油からなる群から選択される少なくとも1種の撥水成分を含むことを特徴とする、床用グラスウール成形体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貫通孔を有する床用グラスウール成形体であり、
前記貫通孔の孔径は4~12mmであり、
隣り合う前記貫通孔同士の間隔は300±50mmの範囲内であり、
前記床用グラスウール成形体の厚みは40~140mmであり、
前記床用グラスウール成形体は、シリコーンオイル、鉱物油及び食用油からなる群から選択される少なくとも1種の撥水成分を含む
ことを特徴とする、床用グラスウール成形体。
【請求項2】
1つ又は複数の貫通孔を有する床用グラスウール成形体を複数並べた集合体であり、
前記貫通孔の孔径は4~12mmであり、
隣り合う前記貫通孔同士の間隔は300±50mmの範囲内であり、
前記床用グラスウール成形体の厚みは40~140mmであり、
前記床用グラスウール成形体は、シリコーンオイル、鉱物油及び食用油からなる群から選択される少なくとも1種の撥水成分を含む
ことを特徴とする、床用グラスウール成形体の集合体。
【請求項3】
熱伝導率が0.036W/(m・K)以下である、請求項1に記載の床用グラスウール成形体。
【請求項4】
複数の前記床用グラスウール成形体の熱伝導率が、いずれも0.036W/(m・K)以下である、請求項2に記載の床用グラスウール成形体の集合体。
【請求項5】
前記床用グラスウール成形体が床構造体に備えられたときに、前記貫通孔の軸方向が、鉛直方向に対して0°超60°以下の角度を有している、請求項1又は3に記載の床用グラスウール成形体。
【請求項6】
前記床用グラスウール成形体の集合体が床構造体に備えられたときに、前記貫通孔の軸方向が、鉛直方向に対して0°超60°以下の角度を有している、請求項2又は4に記載の床用グラスウール成形体の集合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の床構造を構成する床用グラスウール成形体及びその集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建築物の建設においては、省エネルギー及び居住の快適性の観点から、断熱施工が行われており、建築物の床、壁、天井、屋根下地部に断熱材を敷設している。住宅等の床下の断熱施工においては、土台、大引き、根太等の床構造を構成する枠体間に断熱材を配置し、その上に床用面材(床板、床下地板)などを敷設している。
【0003】
戸建住宅や集合住宅の建設においては、耐震性、経済性及び作業者の安全性の観点から、屋根及び壁を建設した後に、床を建設する工法である根太床工法から、先に床を建設して足場を確保した後に、屋根及び壁を建設する工法である剛床工法に変わりつつある。
しかしながら、剛床工法では、屋根を建設する前に床を建設するため、雨水や、住宅基礎となるコンクリート打ち込みから放出される水分等が断熱材の上面に滞留してしまい、断熱性能が損なわれる恐れがあった。
【0004】
そこで、雨水等の滞留を抑制する対策として、例えば、特許文献1~6には、上面を下方に傾斜する傾斜面とし、該傾斜面の最下方領域に貫通孔や水の落とし口等を形成した断熱材が開示されており、雨水等は該傾斜面を下方に流れ、貫通孔や水の落とし口等から断熱材の下側へと排出される仕組みとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-169603号公報
【特許文献2】特開2008-138405号公報
【特許文献3】特開2008-127886号公報
【特許文献4】特開2015-089994号公報
【特許文献5】実案3129482号公報
【特許文献6】特開2013-204276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~6の断熱材は、傾斜面を有するため、床用面材との密着性が下がり、断熱欠損が生じて断熱性能が低下するという課題があった。
また、特許文献1~5では、発泡樹脂からなる発泡樹脂系断熱材を実施例として開示しているが、発泡樹脂系断熱材は柔軟性に乏しいため、枠体間に挿入しにくいという施工上の課題もあった。この点の解決策として、発泡樹脂系断熱材に切り込みや溝を入れて端を撓みやすくするといった技術の他、断熱材の材質として発泡樹脂よりも柔軟性に優れた無機繊維(グラスウール、ロックウール等)や有機繊維(ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレン(PE)繊維等)からなる繊維系断熱材を用いることが知られている。
繊維系断熱材では、細繊維化及び高密度化により流れ抵抗値を高めることで断熱材中の空気を動きにくくし、断熱性能を向上させることができる。コスト面から無機繊維が有利とされるため、有機繊維よりも一般に無機繊維を用い、さらなる細繊維化及び高密度化を行って断熱性能を高めることが行われているが、繊維の目が細かくなると空気と同様に断熱材中の水も動きにくくなる。それに加えて、毛細管現象により排水とは逆向きの力が発生するため断熱材から雨水等が排出されにくくなり、排水性能が下がるという課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、断熱性及び排水性に優れた床用グラスウール成形体及び床用グラスウール成形体の集合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、特定量の撥水成分を含み、特定の孔径及び孔間隔を有する貫通孔を設けた床用グラスウール成形体及び床用グラスウール成形体の集合体とすることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
複数の貫通孔を有する床用グラスウール成形体であり、
前記貫通孔の孔径は4~12mmであり、
隣り合う前記貫通孔同士の間隔は300±50mmの範囲内であり、
前記床用グラスウール成形体の厚みは40~140mmであり、
前記床用グラスウール成形体は、シリコーンオイル、鉱物油及び食用油からなる群から選択される少なくとも1種の撥水成分を含む
ことを特徴とする、床用グラスウール成形体。
[2]
1つ又は複数の貫通孔を有する床用グラスウール成形体を複数並べた集合体であり、
前記貫通孔の孔径は4~12mmであり、
隣り合う前記貫通孔同士の間隔は300±50mmの範囲内であり、
前記床用グラスウール成形体の厚みは40~140mmであり、
前記床用グラスウール成形体は、シリコーンオイル、鉱物油及び食用油からなる群から選択される少なくとも1種の撥水成分を含む
ことを特徴とする、床用グラスウール成形体の集合体。
[3]
熱伝導率が0.036W/(m・K)以下である、[1]に記載の床用グラスウール成形体。
[4]
複数の前記床用グラスウール成形体の熱伝導率が、いずれも0.036W/(m・K)以下である、[2]に記載の床用グラスウール成形体の集合体。
[5]
前記床用グラスウール成形体が床構造体に備えられたときに、前記貫通孔の軸方向が、鉛直方向に対して0°超60°以下の角度を有している、[1]又は[3]に記載の床用グラスウール成形体。
[6]
前記床用グラスウール成形体の集合体が床構造体に備えられたときに、前記貫通孔の軸方向が、鉛直方向に対して0°超60°以下の角度を有している、[2]又は[4]に記載の床用グラスウール成形体の集合体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、断熱性及び排水性に優れた床用グラスウール成形体及び床用グラスウール成形体の集合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)実施例1の床用グラスウール成形体の概略構造を示す斜視図である。(b)実施例6の床用グラスウール成形体の概略構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0013】
〈床用グラスウール成形体及び床用グラスウール成形体の集合体〉
本実施形態の床用グラスウール成形体(以下、単に「グラスウール成形体」ともいう。)は、複数の貫通孔を有し、貫通孔の孔径は4~12mmであり、隣り合う貫通孔同士の間隔は300±50mmの範囲内であり、厚みは40~140mmであり、シリコーンオイル、鉱物油及び食用油からなる群から選択される少なくとも1種の撥水成分を含むことを特徴とする。
本実施形態の床用グラスウール成形体の集合体(以下、単に「グラスウール成形体の集合体」ともいう。)は、1つ又は複数の貫通孔を有する床用グラスウール成形体を複数並べた集合体であり、貫通孔の孔径は4~12mmであり、隣り合う貫通孔同士の間隔が300±50mmの範囲内であり、床用グラスウール成形体の厚みは40~140mmであり、床用グラスウール成形体は、シリコーンオイル、鉱物油及び食用油からなる群から選択される少なくとも1種の撥水成分を含むことを特徴とする。
【0014】
本実施形態の床用グラスウール成形体及び床用グラスウール成形体の集合体は、住宅等の建築物の床構造体に断熱材(断熱層)として設けられて建築物の断熱性能を高めるものである。
本実施形態の床用グラスウール成形体及び床用グラスウール成形体の集合体は、排水性に優れるため、例えば、悪天候時の施工において、床用グラスウール成形体上に溜まった雨水を素早く排水することができ、施工作業のし易さや効率を向上させることができる。また、グラスウール成形体の表面に雨水等が長時間溜まらないことにより、グラスウール成形体内部への浸水による結露の発生や、雨水等の重みによる形状変化、周辺の部材の腐蝕やカビ・菌の発生を防ぐことができる。
【0015】
以下、本実施形態の床用グラスウール成形体、及び本実施形態の床用グラスウール成形体の集合体を構成する床用グラスウール成形体に共通する特徴について説明する。
【0016】
グラスウール成形体は、無数の繊維状のグラスウールが絡まって成形された成形体であり、板状(ボード状)に成形された板状体(ボード状体)であることが好ましい。
【0017】
グラスウール成形体の厚みは、40~140mmであり、好ましくは60~120mmであり、より好ましくは80~110mmである。グラスウール成形体の厚みが上記範囲であると、断熱性、保形性及び加工性が良好となる。
グラスウール成形体の厚み以外の大きさ(長方形平板である場合の縦及び横等)は、所望される床構造体の大きさや施工作業の効率等に応じて適宜設定されてよい。
【0018】
グラスウール成形体の密度は、14~50kg/mであることが好ましく、より好ましくは16~40kg/mであり、さらに好ましくは20~36kg/mである。グラスウール成形体の密度が14kg/m以上であると、断熱性、保形性及び加工性が良好となる傾向にある。また、グラスウール成形体の密度が50kg/m以下であると、施工に必要な柔軟性を確保しやすい傾向にある。
なお、グラスウール成形体の密度とは、貫通孔以外の部分の密度(貫通孔を考慮しない密度)を指し、JISA 9521に準拠して測定することができる。
【0019】
グラスウール成形体は、貫通孔を有する。貫通孔を有することにより、排水性に優れたグラスウール成形体となる。特に、断熱性は高くなる(熱伝導率が低くなる)が、排水性能は低くなる細繊維で高密度のグラスウールにおいても、貫通孔を設けることにより、高い断熱性(低い熱伝導率)を保持しつつ、優れた排水性を付与することができる。
貫通孔は、グラスウール成形体が建築物の床構造体に備えられた際に、床構造体の上方から下方へと貫通するように形成された孔である。そのため、貫通孔は、例えば、板状のグラスウール成形体において、一方の主面から他方の主面へと貫通するように形成されてよい。
【0020】
貫通孔の断面(貫通孔の軸方向に垂直な断面)の形状は、特に限定されず、略円形、略楕円形、略四角形や略六角形等の略多角形等とすることができる。各貫通孔において、断面の形状や大きさは一定であってもよいし、変化してもよい(例えば、貫通孔の一方の端から他方の端へ向かって径が小さくなるような円形であるなど)。
また、貫通孔の軸方向は、グラスウール成形体が建築物の床構造体に備えられた際に、鉛直方向(重力方向)に平行であってもよいし、鉛直方向に対して0°超60°以下の角度を有していてもよい(即ち、例えば、板状のグラスウール成形体において、厚み方向に平行であってもよいし、厚み方向に対して0°超60°以下の角度を有していてもよい)。貫通孔の孔径が大きい場合は、断熱性の観点から、上述のように鉛直方向に対して貫通孔の軸(開孔軸)を傾けることが好ましい。上記鉛直方向に対する開孔軸の角度は、0~60°であってもよく、0~45°であってもよい。
【0021】
グラスウール成形体が複数の貫通孔を有する場合、そのすべての貫通孔で形状が同じであってもよいし、異なっていてもよいが、排水性、形成の容易さの観点から、すべての貫通孔において、形状や大きさが変化しない同じ略円形の断面形状を有し、かつ床構造体に備えられた際の軸方向が、鉛直方向に対してすべて平行又は同じ角度(板状のグラスウール成形体の場合であれば、厚み方向に対してすべて平行又は同じ角度)であることが好ましい。
また、グラスウール成形体の集合体において、そのすべての貫通孔で形状が同じであってもよいし、異なっていてもよいが、排水性、形成の容易さの観点から、すべての貫通孔において、形状や大きさが変化しない同じ略円形の断面形状を有し、かつ床構造体に備えられた際の軸方向が、鉛直方向に対してすべて平行又は同じ角度(板状のグラスウール成形体の場合であれば、厚み方向に対してすべて平行又は同じ角度)であることが好ましい。
【0022】
なお、「略~形」とは、数学的に厳密な「~形」だけでなく、凡そ「~形」と把握される(「~形」に近似可能な)形状も含むことを意味する。
【0023】
貫通孔の孔径は、4~12mmであり、好ましくは5~10mmであり、より好ましくは7~8mmである。貫通孔の孔径が上記範囲であると、貫通孔を有することによる断熱性の悪化(熱伝導率の上昇)が最小限に抑えられて高い断熱性を保ちつつ、排水性にも優れるグラスウール成形体となる。
なお、貫通孔の断面形状が円形以外である場合、貫通孔の孔径は、その断面形状の外接円の直径で表すものとする。また、個々の貫通孔において、断面の形状や大きさが変化する場合も、そのすべてにおいて孔径が4~12mmであり、好適範囲は上記のとおりである。
【0024】
グラスウール成形体が複数の貫通孔を有する場合、該グラスウール成形体において、隣り合う貫通孔同士の間隔は300±50mmの範囲内であり、より好ましくは300±30mmの範囲内であり、さらに好ましくは300±10mmの範囲内である。貫通孔同士の間隔が上記範囲であると、断熱性、排水性及び保形性が良好となる。
なお、グラスウール成形体において、隣り合う貫通孔同士の間隔とは、グラスウール成形体の表面において、隣り合う貫通孔の中心と中心をグラスウール成形体の表面に沿って結んだ線分の長さであり、グラスウール成形体の表面における貫通孔の形状が円形である場合は、貫通孔の中心はその円形の中心を指し、円形以外である場合は、貫通孔の中心はその円形以外の形状の外接円の中心を指すものとする。
【0025】
また、グラスウール成形体の集合体において、隣り合う貫通孔同士の間隔は300±50mmの範囲内であり、より好ましくは300±30mmの範囲内であり、さらに好ましくは300±10mmの範囲内である。貫通孔同士の間隔が上記範囲であると、断熱性、排水性及び保形性が良好となる。
なお、グラスウール成形体の集合体において、隣り合う貫通孔とは、1つのグラスウール成形体上に隣り合う貫通孔が両方とも存在する場合と、隣接する2つのグラスウール成形体の一方と他方にそれぞれ貫通孔が存在して隣り合う場合とを含む。隣り合う貫通孔同士の間隔とは、グラスウール成形体の集合体の表面において、隣り合う貫通孔の中心と中心を該表面に沿って結んだ線分の長さであり、該表面における貫通孔の形状が円形である場合は、貫通孔の中心はその円形の中心を指し、円形以外である場合は、貫通孔の中心はその円形以外の形状の外接円の中心を指すものとする。
【0026】
貫通孔の開孔率は、0.010253~0.180864%であることが好ましく、より好ましくは0.011534~0.155062%であり、さらに好ましくは0.01307~0.134411%である。貫通孔の開孔率が上記範囲であると、断熱性、排水性及び保形性が良好となる。
【0027】
グラスウールの平均繊維径は、1~10μmであることが好ましく、より好ましくは2~7μmであり、さらに好ましくは3~5μmである。グラスウールの平均繊維径が1μm以上であると、グラスウールの製造及び入手が容易となる。また、グラスウールの平均繊維径が10μm以下であると、断熱材として優れた断熱性能を発揮することができる。
なお、グラスウールの平均繊維径は、ファイバロメーターにより取得することができる。
【0028】
グラスウール成形体は、撥水性の向上のため、シリコーンオイル、鉱物油及び食用油からなる群から選択される少なくとも1種の撥水成分を含む。
【0029】
シリコーンオイルとしては、特に限定されず、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、フロロアルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイル等が挙げられる。
鉱物油としては、特に限定されず、例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、芳香族系オイル等の石油系鉱物油等が挙げられる。
食用油としては、特に限定されず、例えば、サラダ油やコーン油等が挙げられる。
【0030】
グラスウール成形体は、撥水成分の付着量を調整することにより、排水性(時間当たりの排水量)を微細に調整することができる。
撥水成分の付着量(グラスウール成形体1gにおける撥水成分の質量)は、固形分換算で0.25mg/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.62mg/g以上であり、さらに好ましくは0.87mg/g以上である。撥水成分の付着量が0.25mg/g以上であると、排水性が良好となる傾向にある。撥水成分の付着量が多いほど排水性能が高くなるため、付着量の上限は特に限定されないが、例えば、3.56mg/g以下としてもよい。
【0031】
撥水成分は、後述するバインダー樹脂に配合してグラスウールに付着させてもよい。また、撥水成分は、エマルジョンの形態で用いてもよい。
【0032】
グラスウールは、成形性及び加工性の向上のため、バインダー樹脂により繊維同士が結合(固着)されていてもよい。
バインダー樹脂としては、例えば、アミド化反応、イミド化反応、エステル化反応及びエステル交換反応のいずれかで硬化する熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。このような熱硬化性樹脂として、具体的には、例えば、エチレン性不飽和単量体を重合したポリカルボン酸と、アミノ基及び/又はイミノ基を有するアルコールを含有する架橋剤とを含有する樹脂等が挙げられる。
【0033】
グラスウール成形体の熱伝導率は、0.036W/(m・K)以下であることが好ましく、より好ましくは0.035W/(m・K)以下であり、さらに好ましくは0.034W/(m・K)以下である。グラスウール成形体の熱伝導率の下限は、特に限定されないが、例えば、0.032W/(m・K)以上であることとしてもよい。
なお、グラスウール成形体の熱伝導率は、ISO22007-6に準拠して測定されるグラスウール成形体の厚み方向の熱伝導率であり、より具体的には、後述の実施例に記載される方法により測定することができる。
【0034】
〈床用グラスウール成形体の製造方法〉
本実施形態の床用グラスウール成形体の製造方法は、特に限定されず、例えば、溶融したガラス原料を繊維化装置で繊維化し、その後、撥水成分を配合したバインダー樹脂をガラス繊維に付与する。次いで、バインダー樹脂が付与されたガラス繊維を有孔コンベア上に堆積して嵩高いグラスウール成形体用中間体を形成し、所望の厚さになるように間隔を設けた上下一対の有孔コンベア等に送り込んで狭圧しつつ加熱し、バインダー樹脂を硬化させる。所望とする幅、長さに切断した後、貫通孔を設けることにより、グラスウール成形体を得ることができる。
【0035】
ガラス繊維にバインダー樹脂を付与する方法としては、スプレー装置等を用いて塗布又は噴霧する方法が挙げられる。ガラス繊維にバインダー樹脂を付与する時期としては、繊維化後であればよく、バインダー樹脂を効率的に付与する観点から、繊維化直後に付与することが好ましい。
【0036】
バインダー樹脂の加熱方法(硬化方法)としては、例えば、熱風オーブンによる加熱が挙げられる。熱風オーブン内の加熱温度は、例えば、200~350℃とすることができる。加熱硬化時間は、グラスウール成形体の密度及び厚さに応じて、30秒~10分の間で適宜調整することができる。
【0037】
撥水成分は、バインダー樹脂に配合する場合、固形分換算でバインダー樹脂の流量100質量%に対して、0.2質量%以上となるように配合することが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上であり、さらに好ましくは0.7質量%以上である。バインダー樹脂に対する撥水成分の配合量が上記範囲であると、排水性が良好となる傾向にある。なお、撥水成分は、エマルジョンの形態で用いてもよい。
【0038】
貫通孔の孔あけ方法は、特に限定されず、ドリル、パンチ、ビス等を用いて開孔することができる。
【0039】
〈床用グラスウール成形体及び床用グラスウール成形体の集合体の施工方法〉
本実施形態の床用グラスウール成形体及び床用グラスウール成形体の集合体の施工方法は、特に限定されることなく、建築物の床構造体における繊維系断熱材の施工方法として通常知られている方法を用いることができ、床構造を構成する枠体間に挿入されて装着される。
【実施例0040】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
実施例及び比較例で用いた測定・評価方法は、以下のとおりである。
【0042】
[排水性の評価]
実施例及び比較例で得られたグラスウール成形体又はPET繊維成形体を、床構造を構成するときと同様にその主面が水平になるように設置し、上面側から2Lの水を散水し、以下の項目について測定した。
・流出始めの時間:散水を始めてから、成形体の下面から水が滴下し始めるまでの時間(sec.)。
・流出終わりの時間:散水を始めてから、成形体の下面からの水の滴りが終わるまでの時間(試験終了とした時間)(sec.)。なお、最長1200秒後まで測定し、その時点で排水が完了しない場合は試験終了とした。この場合、結果は表1において「-」と表した。
・保水量:試験終了後、成形体中に残った水量(mL)。以下の式により求めた。
保水量=散水量(2L)-成形体の下面から水が滴下した水の量
【0043】
[断熱性の評価(熱伝導率)]
実施例及び比較例で得られたグラスウール成形体又はPET繊維成形体から、試験片(グラスウール成形体は300mm×300mm×厚み89mm又は105mm、PET繊維成形体は300mm×300mm×厚み89mm)を切り出し、ISO22007-6に準拠して、大気圧下、室温(25℃)で熱伝導率測定装置を用いて試験片の厚み方向の熱伝導率(mW/(m・K))を測定した。また、実施例について、得られた熱伝導率を基に、単位密度当りの熱伝導率((mW/m・K)/(kg/m))を求めた。
【0044】
[実施例1]
ガラス溶融炉にてガラスを融液化させ、ガラス融液を得た。ガラス融液を用いて、繊維化装置により繊維化を行い、ガラス短繊維を得た。繊維化直後に、撥水成分(シリコーン)を配合したアクリル系樹脂バインダーをガラス短繊維に吹き付けた。撥水成分の配合量は、固形分換算でバインダー樹脂の流量100質量%に対して0.9質量%とし、撥水成分の付着量(グラスウール成形体1gにおける撥水成分の質量)が1.11mg/g、バインダーの付着量がグラスウール成形体100質量%に対して6.39質量%となるような吹き付け量とした。次いで、積層コンベア上に集綿し、圧縮しながら210℃の熱プレス成形機にてバインダー樹脂を硬化させた。その後、スリッティング、トリムカット、製品短辺方向の切断等を施して、板状のグラスウール(300mm×300mm×厚み105mm、平均繊維径3μm、密度36kg/m)を得た。その後、インパクトドライバーを用いて、板状のグラスウールの主面の中心に、床構造体に備えられたときに鉛直方向に平行となるように、厚み方向に平行に貫通する(厚み方向に対する貫通孔の軸方向の角度が0°である)円形の貫通孔(孔径4mm)を1つ開孔し、グラスウール成形体の集合体を構成するグラスウール成形体(図1(a)参照)を得た。
排水性及び断熱性の評価結果を表1に示す。
【0045】
[実施例2~4]
グラスウール成形体の厚み及び貫通孔の孔径を表1に示すとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、グラスウール成形体を得た。
排水性及び断熱性の評価結果を表1に示す。
【0046】
[実施例5、6]
グラスウール成形体の貫通孔の孔径、及び厚み方向に対する貫通孔の軸方向の角度を表1に示すとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、グラスウール成形体を得た(実施例6については図1(b)参照)。
排水性及び断熱性の評価結果を表1に示す。
【0047】
[比較例1]
貫通孔の孔径を3mmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、グラスウール成形体を得た。
排水性及び断熱性の評価結果を表1に示す。
【0048】
[比較例2]
貫通孔を設けなかったこと以外は実施例1と同様にして、グラスウール成形体を得た。
排水性及び断熱性の評価結果を表1に示す。
【0049】
[比較例3]
グラスウール成形体の密度を16kg/mとし、貫通孔を設けなかったこと以外は実施例1と同様にして、グラスウール成形体を得た。
排水性及び断熱性の評価結果を表1に示す。
【0050】
[比較例4]
貫通孔を有しないポリエチレンテレフタレート(PET)繊維成形体(300mm×300mm×厚み89mm、平均繊維径30μm、密度24kg/m)を用いた。
排水性及び断熱性の評価結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例1~6のグラスウール成形体は、優れた排水性能を示した。実施例1~4を比較すると、貫通孔の孔径が大きくなるにつれて単位密度当りの熱伝導率が高くなり、断熱性能が悪化したことが分かる。また、それぞれ孔径が同じ実施例3、4と実施例5、6とを比較すると、開孔軸を45°傾けた実施例5、6の方が実施例3、4よりも単位密度当りの熱伝導率が低くなり、孔径が大きい場合は開孔軸を傾けた方が断熱性に優れることが分かる。
比較例1は、貫通孔を有するため、排水性試験において、66.4秒で水が流出し始めたが、孔径が3mmであるため、流出が終わるまでに時間がかかり、実施例よりも排水性に劣った。
比較例2は、貫通孔を有しないため、排水性試験において、水が流出し始めるまでに938.3秒かかり、水がなかなか排出されなかった。
比較例3は、低密度であるため、優れた排水性能を示したが、実施例よりも断熱性に劣った。
比較例4は、目の粗いPET繊維成形体であるため、優れた排水性能を示したが、実施例よりも断熱性に劣った。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の床用グラスウール成形体及び床用グラスウール成形体の集合体は、断熱性及び排水性に優れるため、住宅等の建築物の床構造に好適に用いることができる。
図1