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特開2024-92855測定装置、測定システム、演算装置、及び測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092855
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】測定装置、測定システム、演算装置、及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/39 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
G01N21/39
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209059
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100224694
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 孝志
(72)【発明者】
【氏名】采女 成夫
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 康雄
(72)【発明者】
【氏名】小箱 紗希
(72)【発明者】
【氏名】杉山 由美子
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059EE01
2G059FF04
2G059GG01
2G059GG02
2G059GG09
2G059HH01
2G059JJ11
2G059JJ15
2G059LL01
2G059MM01
2G059NN01
(57)【要約】
【課題】運用しやすい測定を可能にする
【解決手段】測定装置20は、可変波長の光を出射する光源21と、光源21から出射された光L0を反射する可動反射鏡22と、可動反射鏡22により走査された光L1~Lnを透過させて平行に進行させる第1レンズ23と、分析対象成分が存在する収容体内部空間Sを有する収容体25の外郭の、第1レンズ23と対向する位置に配置され、平行に進行する光L1~Lnを透過させて透過光TR1~TRnとし、透過光TR1~TRnを収束させながら収容体内部空間Sに出射する第2レンズ24と、透過光TR1~TRnを受ける受光素子26と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変波長の光を出射する光源と、
前記光源から出射された前記光を反射する可動反射鏡と、
前記可動反射鏡により反射角度の変化を伴いながら反射された前記光を透過させて平行に進行させる第1レンズと、
分析対象成分が存在する収容体内部空間を有する収容体の外郭の、前記第1レンズと対向する位置に配置され、平行に進行する前記光を透過させて透過光とし、前記透過光を収束させながら前記収容体内部空間に出射する第2レンズと、
前記透過光を受ける受光素子と、
を備える測定装置。
【請求項2】
前記光源及び前記可動反射鏡を収容する、前記分析対象成分を含まないガスで充填された又は真空状態の筐体を更に備え、
前記第1レンズは、前記筐体の外郭に配置され、
前記第1レンズと前記第2レンズとの間には、前記分析対象成分と同じ成分を含む周囲環境ガスが存在する請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記受光素子は、前記収容体内部空間内の、前記第2レンズから離れた位置に配置される請求項1又は2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記収容体内部空間内の、前記第2レンズから離れた位置に配置された反射体を更に備え、
前記第2レンズは、前記反射体で反射した前記透過光を更に透過させて平行に進行させ、前記透過光を前記第1レンズに入射し、
前記第1レンズは、前記第2レンズから入射された前記透過光を更に透過させて収束させながら前記第2レンズがある側とは反対側に出射し、
前記受光素子は、前記反対側の、前記第1レンズから離れた位置に配置される請求項1又は2に記載の測定装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の測定装置と、
前記収容体内部空間内の光路長を示す光路長データが記憶された記憶部と、前記受光素子で受けられた前記透過光の吸光度を示す吸光度データを取得して、前記光路長データ及び前記吸光度データに基づいて前記分析対象成分の濃度を算出する制御部とを備える演算装置と、
を備える測定システム。
【請求項6】
可変波長の光を出射する光源と、前記光源から出射された前記光を反射する可動反射鏡と、前記可動反射鏡により反射角度の変化を伴いながら反射された前記光を透過させて平行に進行させる第1レンズと、分析対象成分が存在する収容体内部空間を有する収容体の外郭の、前記第1レンズと対向する位置に配置され、平行に進行する前記光を透過させて透過光とし、前記透過光を収束させながら前記収容体内部空間に出射する第2レンズと、前記透過光を受ける受光素子と、を備える測定装置の前記収容体内部空間内の光路長を示す光路長データが記憶された記憶部と、
前記受光素子で受けられた前記透過光の吸光度を示す吸光度データを取得して、前記光路長データ及び前記吸光度データに基づいて、前記分析対象成分の濃度を算出する制御部と、
を備える演算装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記吸光度データと前記光路長データとを時間微分することにより、前記分析対象成分の濃度を算出する請求項6に記載の演算装置。
【請求項8】
光源から可変波長の光を出射することと、
前記光源から出射された前記光を可動反射鏡により反射することと、
前記可動反射鏡により反射角度の変化を伴いながら反射された前記光を、第1レンズを介して透過させて平行に進行させることと、
分析対象成分が存在する収容体内部空間を有する収容体の外郭の、前記第1レンズと対向する位置に配置された第2レンズを介して、平行に進行する前記光を透過させて透過光とし、前記透過光を収束させながら前記収容体内部空間に出射することと、
前記透過光を受光素子で受けることと、
前記収容体内部空間内の光路長を示す光路長データと前記受光素子で受けられた前記透過光の吸光度を示す吸光度データとを取得することと、
前記光路長データ及び前記吸光度データに基づいて前記分析対象成分の濃度を算出することと、
を含む測定方法。
【請求項9】
前記光源及び前記可動反射鏡は、前記分析対象成分を含まないガスで充填された又は真空状態の筐体に収容され、
前記第1レンズは、前記筐体の外郭に配置され、
前記第1レンズと前記第2レンズとの間には、前記分析対象成分と同じ成分を含む周囲環境ガスが存在する請求項8に記載の測定方法。
【請求項10】
前記受光素子は、前記収容体内部空間内の、前記第2レンズから離れた位置に配置される請求項8又は9に記載の測定方法。
【請求項11】
前記収容体内部空間に出射された前記透過光を、前記収容体内部空間内の、前記第2レンズから離れた位置に配置された反射体で反射させることと、
前記第2レンズを介して、前記反射体で反射した前記透過光を更に透過させて平行に進行させ、前記透過光を前記第1レンズに入射することと、
前記第1レンズを介して、前記第2レンズから入射された前記透過光を更に透過させて収束させながら前記第2レンズがある側とは反対側に出射することと、
を更に含み、
前記受光素子は、前記反対側の、前記第1レンズから離れた位置に配置される請求項8又は9に記載の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定装置、測定システム、演算装置、及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分光分析装置では、分子が特定波長の光を吸収するという特性を利用して、被測定ガスに対してレーザ光を照射することで分析対象成分の濃度を分析する。Lambert-Beerの法則により、レーザ光に関するガス分子の吸光度がその成分濃度及び光路長に比例する。したがって、光吸収スペクトルの強度を測定することで分析対象成分の濃度が分析可能である。
【0003】
非特許文献1には、パージガスを用いた分光分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】田村一人,外3名,「レーザガス分析計TDLS200とその産業プロセスへの応用」,横河技報,横河電機株式会社、2010年,Vol.53,No.2(2010),p.51-54
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に開示されている分光分析装置では、測定対象ガスが酸素等、大気中に存在するガスである場合、測定を行う空間以外でもレーザ光が吸収されてしまい、正確な測定が困難になる。このため、測定を行う空間以外の各ユニット内にパージガスが送られ、測定に影響のあるガスを追い出している。
【0006】
パージガスを用いた測定は、ガス設備及びガス漏れ対策が必要となり、メンテナンスの手間やコストがかかる。また、船舶などで使用する場合は、窒素等のパージガスを格納するガスボンベが必要になるが、ガスボンベの規格は国ごとに異なるので、分光分析装置の輸送先の地域で常に輸送元の地域と同じガスボンベが調達できるとは限らず、パージガスの安定供給は難しい。このように、パージガスを用いた測定は運用が困難である。
【0007】
本開示の目的は、運用しやすい測定を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
幾つかの実施形態に係る測定装置は、可変波長の光を出射する光源と、光源から出射された光を反射する可動反射鏡と、可動反射鏡により反射角度の変化を伴いながら反射された光を透過させて平行に進行させる第1レンズと、分析対象成分が存在する収容体内部空間を有する収容体の外郭の、第1レンズと対向する位置に配置され、平行に進行する光を透過させて透過光とし、透過光を収束させながら収容体内部空間に出射する第2レンズと、透過光を受ける受光素子と、を備える。このような測定装置においては、第1レンズと第2レンズとの間の空間では、光路長を一定とし、第2レンズと受光素子との間の、分析対象成分を含むガスが存在する空間では、光路長を経時変化させることができる。そして、受光素子で受けられた透過光の吸光度と収容体内部空間内の光路長との関係を時間微分することで、分析対象成分の濃度を、第1レンズと第2レンズとの間の周囲環境ガスの影響を受けずに測定することができる。その結果、運用しやすい測定が可能となる。
【0009】
一実施形態において、測定装置は、光源及び可動反射鏡を収容する、分析対象成分を含まないガスで充填された又は真空状態の筐体を更に備え、第1レンズは、筐体の外郭に配置され、第1レンズと第2レンズとの間には、分析対象成分と同じ成分を含む周囲環境ガスが存在する。このような実施形態によれば、周囲環境ガスが分析対象成分と同じ成分を含む環境下でも、光源から可動反射鏡に至る光路、及び可動反射鏡から第1レンズに至る光路は、周囲環境ガスから隔離され、周囲環境ガスの影響を受けなくなる。したがって、正確な測定が可能となる。
【0010】
一実施形態において、受光素子は、収容体内部空間内の、第2レンズから離れた位置に配置される。このような実施形態によれば、収容体内部空間内の寸法から、収容体内部空間内の分析対象成分を通過する光路長を簡単に特定することが可能となる。
【0011】
一実施形態において、測定装置は、収容体内部空間内の、第2レンズから離れた位置に配置された反射体を更に備え、第2レンズは、反射体で反射した透過光を更に透過させて平行に進行させ、前記透過光を第1レンズに入射し、第1レンズは、第2レンズから入射された透過光を更に透過させて受光素子に収束させながら出射する。本実施形態において、受光素子は、第2レンズがある側とは反対側の、第1レンズから離れた位置に配置され、当該反対側に出射される透過光を受ける。このような実施形態によれば、例えば、収容体内部空間内の光路が大きく取れない場合にも、光路長を延長することができる。また、収容体の振動又は熱等の外乱の影響から受光素子を隔離できる。したがって、測定感度が向上し、より正確な測定が可能となる。
【0012】
幾つかの実施形態に係る測定システムは、実施形態のいずれかに係る測定装置と、収容体内部空間内の光路長を示す光路長データが記憶された記憶部と、受光素子で受けられた透過光の吸光度を示す吸光度データを取得して、光路長データ及び吸光度データに基づいて分析対象成分の濃度を算出する制御部とを備える演算装置と、を備える。このような測定システムにおいては、光路長データ及び吸光度データに基づいて、周囲環境ガスの影響を受けずに、分析対象成分の濃度を算出することが可能となる。
【0013】
幾つかの実施形態に係る演算装置は、可変波長の光を出射する光源と、光源から出射された光を反射する可動反射鏡と、可動反射鏡により反射角度の変化を伴いながら反射された光を透過させて平行に進行させる第1レンズと、分析対象成分が存在する収容体内部空間を有する収容体の外郭の、第1レンズと対向する位置に配置され、平行に進行する光を透過させて透過光とし、透過光を収束させながら収容体内部空間に出射する第2レンズと、透過光を受ける受光素子と、を備える測定装置の収容体内部空間内の光路長を示す光路長データが記憶された記憶部と、受光素子で受けられた透過光の吸光度を示す吸光度データを取得して、光路長データ及び吸光度データに基づいて、分析対象成分の濃度を算出する制御部と、を備える。このような演算装置においては、光路長データ及び吸光度データに基づいて、周囲環境ガスの影響を受けずに、分析対象成分の濃度を算出することが可能となる。
【0014】
一実施形態において、制御部は、吸光度データと光路長データとを時間微分することにより、分析対象成分の濃度を算出する。このような演算装置においては、光路長データ及び吸光度データに基づいて、周囲環境ガスの影響を受けずに、分析対象成分の濃度を算出することが可能となる。
【0015】
幾つかの実施形態に係る測定方法は、光源から可変波長の光を出射することと、光源から出射された光を可動反射鏡により反射することと、可動反射鏡により反射角度の変化を伴いながら反射された光を、第1レンズを介して透過させて平行に進行させることと、分析対象成分が存在する収容体内部空間を有する収容体の外郭の、第1レンズと対向する位置に配置された第2レンズを介して、平行に進行する光を透過させて透過光とし、透過光を収束させながら収容体内部空間に出射することと、透過光を受光素子で受けることと、収容体内部空間内の光路長を示す光路長データと受光素子で受けられた透過光の吸光度を示す吸光度データとを取得することと、光路長データ及び吸光度データに基づいて、分析対象成分の濃度を算出することと、を含む。可動反射鏡により反射角度の変化を伴いながら反射された光は、第1レンズを介して平行になるように透過回折される。平行に透過回折された光は、収容体内部空間に存在する分析対象成分内で収束される。このような測定方法においては、第1レンズと第2レンズとの間の空間では、光を平行に進行させて光路長を一定とし、分析対象成分を含むガスが存在する空間では光路長を経時変化させることができる。そして、受光素子で受けられた透過光の吸光度と収容体内部空間内の光路長との関係を時間微分することで、分析対象成分の濃度を、周囲環境ガスの影響を受けずに測定することができる。その結果、運用しやすい測定が可能となる。
【0016】
一実施形態において、光源及び可動反射鏡は、分析対象成分を含まないガスで充填された又は真空状態の筐体に収容され、第1レンズは、筐体の外郭に配置され、第1レンズと第2レンズとの間には、分析対象成分と同じ成分を含む周囲環境ガスが存在する。このような実施形態によれば、周囲環境ガスが分析対象成分と同じ成分を含む環境下でも、光源から可動反射鏡に至る光路、及び可動反射鏡から第1レンズに至る光路は、周囲環境ガスから隔離され、周囲環境ガスの影響を受けなくなる。したがって、正確な測定が可能となる。
【0017】
一実施形態において、受光素子は、収容体内部空間内の、第2レンズから離れた位置に配置される。このような実施形態によれば、収容体内部空間内の寸法から、収容体内部空間内の分析対象成分を通過する光路長を簡単に特定することが可能となる。
【0018】
一実施形態において、測定方法は、収容体内部空間に出射された透過光を、収容体内部空間内の、第2レンズから離れた位置に配置された反射体で反射させることと、第2レンズを介して、反射体で反射した透過光を更に透過させて平行に進行させ、前記透過光を第1レンズに入射することと、第1レンズを介して、第2レンズから入射された透過光を更に透過させて収束させながら第2レンズがある側とは反対側に出射することと、を更に含み、受光素子は、反対側の、第1レンズから離れた位置に配置される。反射体で反射した透過光は、第2レンズで平行に透過回折させて第1レンズに入射される。このような実施形態によれば、例えば、収容体内部空間内の光路が大きく取れない場合にも、光路長を延長することができる。また、収容体の振動又は熱等の外乱の影響から受光素子を隔離できる。したがって、測定感度が向上し、より正確な測定が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、運用しやすい測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の実施形態に係る測定システムの構成を示すブロック図である。
図2】本開示の実施形態に係る測定装置の構成を示す模式図である。
図3】本開示の実施形態の変形例に係る測定装置の構成を示す模式図である。
図4】本開示の実施形態に係る演算装置の構成を示すブロック図である。
図5】本開示の実施形態に係る測定システムの動作を示すフローチャートである。
図6】本開示の実施形態の変形例に係る測定システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の諸実施形態について、図を参照して説明する。
【0022】
各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付している。各実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0023】
図1を参照して、本実施形態に係る測定システム10の構成を説明する。
【0024】
本実施形態に係る測定システム10は、図1に示すように、測定装置20と、演算装置30とを備える。
【0025】
測定装置20は、図2に示すように、光源21と、可動反射鏡22と、第1レンズ23と、第2レンズ24と、受光素子26とを備える。
【0026】
演算装置30は、図4に示すように、記憶部31と、制御部32と、通信部33とを備える。演算装置30は、測定を行う現場に設置されるラップトップコンピュータ等のコンピュータである。演算装置30は、データセンタ等の施設に設置されてもよい。その場合、演算装置30は、クラウドコンピューティングシステム又はその他のコンピューティングシステムに属するサーバ等のコンピュータである。
【0027】
図1及び図2を参照して、本実施形態の概要を説明する。
【0028】
測定システム10は、ガスG1に含まれる分析対象成分の濃度が測定できるように、可変波長の光L0を光源21から出射する。測定システム10は、光源21から出射された光L0を可動反射鏡22により反射する。具体的には、光L0は、可動反射鏡22により第1レンズ23に向けて反射されて第1方向に走査される。第1方向は、図2の垂直方向に対応する。測定システム10は、可動反射鏡22により反射角度の変化を伴いながら反射された光L1~Lnを、第1レンズ23を介して透過させて平行に進行させる。具体的には、光L1~Lnは、第1レンズ23で、それぞれ第1方向と直交する第2方向に平行に進行するように回折又は屈折させる。第2方向は、図2の水平方向に対応する。このように、光L0を可動反射鏡22で反射させて光L1~Lnとし、光L1~Lnを第1レンズ23で回折又は屈折させることでそれぞれ平行に進行するようにさせることを、以下では角度走査ともいう。走査された光の数nは、2以上の整数である。ガスG1が存在する収容体内部空間Sを有する収容体25の外郭に配置された第2レンズ24で、第2方向に平行して進行した光L1~Lnを透過させて透過光TR1~TRnとし、透過光TR1~TRnを収束させながら収容体内部空間Sに出射する。図2に示すように、第2レンズ24は、収容体25の外郭の、第1レンズ23と第2方向に沿って対向する位置に配置される。測定システム10は、透過光TR1~TRnを受光素子26で受ける。測定システム10は、収容体内部空間S内の光路長を示す光路長データと受光素子26で受けられた透過光TR1~TRnの吸光度を示す吸光度データとを取得する。測定システム10は、光路長データ及び吸光度データに基づいて分析対象成分の濃度を算出する。
【0029】
本実施形態では、測定システム10は、吸光度データと光路長データとを時間微分することにより、分析対象成分の濃度を算出する。
【0030】
本実施形態によれば、周囲環境ガスの影響が及び得る空間では、角度走査された光を第2方向に平行に進行させて、その光路長を一定とし、分析対象成分を含むガスが存在する空間では光路長を経時変化させることにより、吸光度データと光路長データとを時間微分することで、ガスに含まれる分析対象成分の濃度を、周囲環境ガスの影響を受けずに測定することができる。その結果、運用しやすい測定が可能となる。
【0031】
ここで、ガスG1に含まれる分析対象成分の濃度は、光が飛行した光路内で吸収された光強度により算出される。本実施形態では、光源21から出射された光L0は、以下の各光路を飛行する。
(1)可動反射鏡22に到達するまでの第1光路P1
(2)可動反射鏡22により角度走査されて光L1~Lnとして第1レンズ23に到達するまでの第2光路P2
(3)第1レンズ23から第2レンズ24に到達するまでの第3光路P3
(4)第2レンズ24から透過光TR1~TRnとして受光素子26に到達するまでの第4光路P4
仮に、これらのいずれかの光路に周囲環境ガスが存在し、その周囲環境ガスが分析対象成分と同じ成分を含む場合は、該当する光路でも光の吸収が生じ得る。したがって、分析対象成分の濃度の測定精度に影響が及ぶ。この点、本実施形態では、(1)から(4)の各光路において周囲環境ガスの影響を打ち消すための措置を講じ、ガスに含まれる分析対象成分の濃度を、周囲環境ガスの影響を受けずに測定できるようにしている。その結果、運用しやすい測定が可能となる。
【0032】
図2を参照して、本実施形態に係る測定装置20の構成を詳細に説明する。
【0033】
測定装置20は、既に述べたように、光源21と、可動反射鏡22と、第1レンズ23と、第2レンズ24と、受光素子26とを備えるとともに、収容体内部空間Sを有する収容体25を更に備える。
【0034】
光源21は、分析対象成分の濃度によって吸光度の異なる光を出射する。光源21は、例えば、レーザダイオード(laser diode:LD)、発光ダイオード(light emitting diode:LED)、又はスーパールミネッセントダイオード(superluminescent diode:SLD)である。
【0035】
可動反射鏡22は、MEMSミラー、ポリゴンミラー、若しくはガルバノミラー等の機械駆動式の可動反射鏡、音響光学偏向器若しくは電気光学偏向器等の固体素子、又はこれらの任意の組合せを含む。MEMSは、micro electro mechanical systemsの略語である。
【0036】
測定装置20は、必須ではないが、光源21と、可動反射鏡22との間に介在する集光レンズALを備える。
【0037】
第1レンズ23は、光を平行にし、平行光を集光する任意のレンズである。第1レンズ23は、例えばコリメートレンズである。
【0038】
第2レンズ24は、光を平行にし、平行光を集光する任意のレンズである。第2レンズ24は、例えばコリメートレンズである。
【0039】
収容体内部空間Sを有する収容体25は、例えば、配管、煙道、又は包装容器である。収容体25の収容体内部空間Sには、分析対象成分を含むガスG1が存在する。分析対象成分は、例えば、O(酸素)、CO(一酸化炭素)、CO(二酸化炭素)、HO(水)、C(炭化水素)、又はNH(アンモニア)である。
【0040】
受光素子26は、被測定光の光強度を電気信号に変換可能な素子であり、例えば、フォトダイオードである。
【0041】
本実施形態において、測定装置20は、図2に示すように、光源21及び可動反射鏡22を収容する、分析対象成分を含まないガスで充填された又は真空状態の筐体27を更に備える。測定装置20の第1レンズ23は、筐体27の外郭に配置される。第1レンズ23と第2レンズ24との間には、分析対象成分と同じ成分を含む周囲環境ガスG2が存在する。
【0042】
本実施形態では、光源21及び可動反射鏡22が分析対象成分を含まないガスで充填された又は真空状態の筐体27に収容され、第1レンズ23が筐体27の外郭に配置されるので、上述の第1光路P1及び第2光路P2は、周囲環境ガスG2から隔離され、周囲環境ガスG2の影響を受けなくなる。すなわち、(1)及び(2)の各光路において周囲環境ガスG2の影響を受けない措置が講じられている。したがって、正確な測定が可能となる。一方、第1レンズ23と第2レンズ24との間の空間では、第1方向に走査された光L1~Lnを第2方向に平行に進行させてそれぞれの光路長を一定とするので、上述の第3光路P3については、周囲環境ガスG2から隔離されなくても、後述するように、周囲環境ガスG2の影響を排除することができる。すなわち、(3)の光路において周囲環境ガスG2の影響を受けない措置が講じられているといえる。
【0043】
本実施形態において、測定装置20の受光素子26は、図2に示すように、収容体内部空間S内の、第2レンズ24から離れた位置に配置される。
【0044】
本実施形態によれば、受光素子26が収容体内部空間S内に配置されるので、収容体内部空間S内の寸法から、収容体内部空間S内の分析対象成分を通過する光路長を簡単に特定することができる。第2レンズ24と受光素子26との間のガスG1が存在する空間は、外部から収容体25により遮断されているので、上述の第4光路P4については、周囲環境ガスG2の影響を受け得ない。すなわち、(4)の光路においても周囲環境ガスG2の影響を受けない措置が講じられているといえる。
【0045】
本実施形態の一変形例として、測定装置20は、図3に示すように、反射体28を更に備えてもよい。この変形例では、反射体28が、受光素子26の代わりに、収容体内部空間S内の、第2レンズ24から離れた位置に配置される。測定装置20の第2レンズ24は、反射体28で反射した透過光TR1~TRnを更に透過させて第2方向に平行に進行させ、透過光TR1~TRnを第1レンズ23に入射する。測定装置20の第1レンズ23は、第2レンズ24から入射された透過光TR1~TRnを更に透過させて収束させながら第2レンズ24がある側とは反対側に出射する。測定装置20の受光素子26は、当該反対側の、第1レンズ23から離れた位置に配置される。
【0046】
この変形例によれば、例えば、収容体25が小型の包装容器等であり、収容体内部空間S内の光路が大きく取れない場合にも、透過光TR1~TRnを反射体28で反射して第2レンズ24に戻す分、光路長を延長することができる。また、受光素子26を収容体25の外部に配置することにより、収容体25の振動又は熱等の外乱の影響から受光素子26を隔離できる。したがって、測定感度が向上し、より正確な測定が可能となる。
【0047】
図4を参照して、本実施形態に係る演算装置30の構成を詳細に説明する。
【0048】
演算装置30は、既に述べたように、記憶部31と、制御部32と、通信部33とを備える。
【0049】
記憶部31は、少なくとも1つの半導体メモリ、少なくとも1つの磁気メモリ、少なくとも1つの光メモリ、又はこれらの任意の組合せを含む。半導体メモリは、例えば、RAM又はROMである。「RAM」は、random access memoryの略語である。「ROM」は、read only memoryの略語である。RAMは、例えば、SRAM又はDRAMである。「SRAM」は、static random access memoryの略語である。「DRAM」は、dynamic random access memoryの略語である。ROMは、例えば、EEPROMである。「EEPROM」は、electrically erasable programmable read only memoryの略語である。記憶部31は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部31には、演算装置30の動作に用いられるデータと、演算装置30の動作によって得られたデータとが記憶される。記憶部31は、制御部32と同じ筐体に収容されるものに限定されず、例えば、USB等のデジタル入出力ポートによって接続された外付け型の記憶装置であってもよい。「USB」は、universal serial busの略語である。
【0050】
制御部32は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つのプログラマブル回路、少なくとも1つの専用回路、又はこれらの任意の組合せを含む。プロセッサは、CPU若しくはGPUなどの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。「CPU」は、central processing unitの略語である。「GPU」は、graphics processing unitの略語である。プログラマブル回路は、例えば、FPGAである。「FPGA」は、field-programmable gate arrayの略語である。専用回路は、例えば、ASICである。「ASIC」は、application specific integrated circuitの略語である。制御部32は、演算装置30の各部を制御しながら、演算装置30の動作に関わる処理を実行する。
【0051】
通信部33は、少なくとも1つの通信用インタフェースを含む。通信用インタフェースは、例えば、LANインタフェース、LTE、4G規格、若しくは5G規格などの移動通信規格に対応したインタフェース、又はBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信規格に対応したインタフェースである。「LAN」は、local area networkの略語である。「LTE」は、Long Term Evolutionの略語である。「4G」は、4th generationの略語である。「5G」は、5th generationの略語である。通信部33は、演算装置30の動作に用いられるデータを受信し、また演算装置30の動作によって得られるデータを送信する。
【0052】
演算装置30の機能は、本実施形態に係るプログラムを、制御部32としてのプロセッサで実行することにより実現される。すなわち、演算装置30の機能は、ソフトウェアにより実現される。プログラムは、演算装置30の動作をコンピュータに実行させることで、コンピュータを演算装置30として機能させる。すなわち、コンピュータは、プログラムに従って演算装置30の動作を実行することにより演算装置30として機能する。
【0053】
プログラムは、非一時的なコンピュータ読取り可能な媒体に記憶しておくことができる。非一時的なコンピュータ読取り可能な媒体は、例えば、フラッシュメモリ、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、又はROMである。プログラムの流通は、例えば、プログラムを記憶したSDカード、DVD、又はCD-ROMなどの可搬型媒体を販売、譲渡、又は貸与することによって行う。「SD」は、Secure Digitalの略語である。「DVD」は、digital versatile discの略語である。「CD-ROM」は、compact disc read only memoryの略語である。プログラムをサーバのストレージに格納しておき、サーバから他のコンピュータにプログラムを転送することにより、プログラムを流通させてもよい。プログラムをプログラムプロダクトとして提供してもよい。
【0054】
コンピュータは、例えば、可搬型媒体に記憶されたプログラム又はサーバから転送されたプログラムを、一旦、主記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、主記憶装置に格納されたプログラムをプロセッサで読み取り、読み取ったプログラムに従った処理をプロセッサで実行する。コンピュータは、可搬型媒体から直接プログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行してもよい。コンピュータは、コンピュータにサーバからプログラムが転送される度に、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行してもよい。サーバからコンピュータへのプログラムの転送は行わず、実行指示及び結果取得のみによって機能を実現する、いわゆるASP型のサービスによって処理を実行してもよい。「ASP」は、application service providerの略語である。プログラムは、電子算出機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるものを含む。例えば、コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータは、「プログラムに準ずるもの」に該当する。
【0055】
演算装置30の一部又は全ての機能が、制御部32としてのプログラマブル回路又は専用回路により実現されてもよい。すなわち、演算装置30の一部又は全ての機能が、ハードウェアにより実現されてもよい。
【0056】
図5を参照して、本実施形態に係る測定システム10の動作を説明する。図5は、測定装置20及び演算装置30の動作を示している。この動作は、本実施形態に係る測定方法に相当する。
【0057】
ステップS101において、測定装置20の光源21は、可変波長の光を出射する。具体的には、光源21は、分析対象成分に応じて波長の異なる光L0を出射する。光L0は、ガスG1に含まれる分析対象成分の濃度によって吸光度の異なる光である。一例として、分析対象成分は、O(酸素)であるとする。光L0の波長は、酸素分子の吸収波長である760nmであるとする。
【0058】
本実施形態では、必須ではないが、光源21から出射された光L0は、集光レンズALにより第1レンズ23から出射される光が平行になるように集光されてから可動反射鏡22に入射される。
【0059】
ステップS102において、測定装置20の可動反射鏡22は、光源21から出射された光L0を反射して角度走査する。具体的には、可動反射鏡22は、光L0を反射して第1方向に走査する。第1方向は、上述したとおり図2の垂直方向に対応する。光源21から出射された光L0は、可動反射鏡22により反射角度の変化を伴いながら反射され、第1方向に走査されて光L1~Lnとなる。例えば、光L1は、可動反射鏡22が時刻T1において反射した光であり、以下同様に、光L2~Lnは、可動反射鏡22が時刻T2~Tnにおいて反射した光に対応する。
【0060】
ステップS103において、測定装置20の第1レンズ23は、可動反射鏡22により反射角度の変化を伴いながら反射された光L1~Lnを透過させて平行に進行させる。具体的には、第1レンズ23は、光L1~Lnを、第1方向と直交する第2方向に沿って進行させる。第2方向は、上述したとおり図2の水平方向に対応する。つまり、第1レンズ23を透過して第2方向に沿って進行する光L1~Lnは、光路長が一定の平行光である。
【0061】
本実施形態では、光源21及び可動反射鏡22は、分析対象成分を含まないガスで充填された又は真空状態の筐体27に収容され、第1レンズ23は、筐体27の外郭に配置されている。第1レンズ23と第2レンズ24との間には、分析対象成分と同じ成分を含む周囲環境ガスが存在している。具体的には、筐体27は、本実施形態では窒素ガスの充填により実現されるが、真空ポンプによる真空状態で実現されてもよい。例えば、分析対象成分はO、周囲環境ガスは大気である。
【0062】
ステップS104において、ガスG1が存在する収容体内部空間Sを有する収容体25の外郭の、第1レンズ23と第2方向に沿って対向する位置に配置された第2レンズ24は、第2方向に平行に進行する光L1~Lnを透過させて透過光とし、透過光を収束させながら収容体内部空間Sに出射する。具体的には、第2方向に平行に進行する光L1~Lnは、集光レンズである第2レンズ24を透過して透過光となる。例えば、時刻T1において可動反射鏡22により反射された光L1は、透過光TR1となり、以下同様に、時刻T2~Tnにおいて可動反射鏡22により反射された光L2~Lnは、透過光TR2~TRnとなる。
【0063】
ステップS105において、測定装置20の受光素子26は、透過光を受ける。例えば、受光素子26は、時刻T1~Tnにおいて可動反射鏡22により反射角度の変化を伴いながら反射された光L1~Lnに基づく透過光TR1~TRnを受ける。本実施形態では、受光素子26は、収容体内部空間S内の、第2レンズ24から離れた位置に配置されている。
【0064】
受光素子26は、透過光の強度を示す受光強度データを出力する。具体的には、受光素子26は、透過光TR1~TRnの強度を示すデータを受光強度データとして出力する。
【0065】
ステップS106において、演算装置30の制御部32は、収容体内部空間S内の光路長を示す光路長データと受光素子26で受けられた透過光の吸光度を示す吸光度データとを取得する。具体的には、演算装置30の制御部32は、演算装置30の記憶部31に予め記憶された光路長データODを取得する。制御部32は、通信部33を介して、受光素子26から出力された受光強度データを受信する。制御部32は、記憶部31に予め記憶されるか、又は通信部33を介して通知される、光源21から出射された光L0の強度を示す初期強度データを取得する。制御部32は、受信した受光強度データで示される透過光TR1~TRnの強度と、取得した初期強度データで示される光L0の強度との差を透過光TR1~TRnの吸光度として算出することで、透過光TR1~TRnの吸光度を示す吸光度データADを取得する。
【0066】
吸光度データADは、演算装置30の内部で取得される代わりに、測定装置20から取得されてもよい。例えば、測定装置20の内部で、受光強度データで示される透過光TR1~TRnの強度と、予め設定された光L0の強度との差を透過光TR1~TRnの吸光度として算出され、算出結果が吸光度データADとして演算装置30に送信されてもよい。その場合、演算装置30の制御部32は、通信部33を介して、吸光度データADを測定装置20から受信することで、吸光度データADを取得する。
【0067】
ステップS107において、演算装置30の制御部32は、ステップS106で取得した光路長データOD及び吸光度データADに基づいて分析対象成分の濃度を算出する。
【0068】
Lambert-Beerの法則により、分子の吸光度は、その成分濃度及び光路長に比例するので、光吸収スペクトルの強度を測定することで分析対象成分の濃度を分析することができる。本実施形態では、TDLAS(Tunable Diode Laser Absorption Spectroscopy:波長可変ダイオードレーザ吸収分光)式レーザガス分析計における濃度算出方法に従って、ガスG1に含まれる分析対象成分の分子固有の光吸収スペクトルの強度を測定し、取得した光吸収スペクトルから分析対象成分の濃度換算を行うことにより、分析対象成分の濃度が算出される。濃度換算の方法は、ピーク高さ法、スペクトル面積法、及び2f法等の既知の方法であってよい。
【0069】
例えば、分析対象成分がOであり、周囲環境ガスが大気である場合、制御部32は、取得した光路長データOD及び吸光度データADに基づいて、分析対象成分Oの濃度を次のように算出する。第1レンズ23と第2レンズ24との間、すなわち第3光路P3に存在するOの濃度をCe、光路長をLeとし、収容体内部空間S内のOの濃度をCm、光路長をLm(t)とした場合、光L0、L1~Ln及び透過光TR1~TRnの吸光度A(t)は、次式1で表される。
A(t)=αCeLe+αCmLm(t) ・・・式1
ここで、αは、吸光係数である。ステップS103で、第1方向に走査された光L1~Lnを第2方向に沿って進行させて光路長を一定にしているので、Leは一定であり、Ceも一定とみなすことができる。一方、ステップS102で、光L0を可動反射鏡22により第1方向に走査することにより、ステップS105で受光素子26によって受けられる透過光TR1~TRnの光路長PL1~PLnは経時変化する。式1を時間微分すると、式2が得られる。
dA/dt=αCm・dLm(t)/dt ・・・式2
時間微分により式2の第1項はゼロとなり、収容体25の外部、つまり周囲環境ガスG2の影響を受けなくなる。その結果、可動反射鏡22を用いた光路長の時間関数と、吸光度の変化速度とに基づいて、分析対象成分の濃度を算出することが可能になる。
【0070】
本実施形態によれば、周囲環境ガスの影響が及び得る空間では、第1方向に走査された光を第2方向に沿って進行させて光路長を一定とし、分析対象成分を含むガスが存在する空間では光路長を経時変化させることにより、ガスに含まれる分析対象成分の濃度を、周囲環境ガスの影響を受けずに測定することができる。その結果、運用しやすい測定が可能となる。
【0071】
図6を参照して、図3の変形例に係る測定システム10の動作を更に説明する。図6は、測定装置20及び演算装置30の動作を示している。この動作は、この変形例に係る測定方法に相当する。
【0072】
ステップS201~S204は、上述のステップS101~S104と同様であるので説明を省略する。
【0073】
ステップS205において、収容体内部空間Sに出射された透過光TR1~TRnを、収容体内部空間S内の、第2レンズ24から離れた位置に配置された反射体28で反射させる。具体的には、反射体28は、透過光TR1~TRnを鏡面反射させるミラーである。
【0074】
ステップS206において、測定装置20の第2レンズ24は、反射体28で反射した透過光TR1~TRnを更に透過させて第2方向に平行に進行させ、透過光TR1~TRnを第1レンズ23に入射する。
【0075】
ステップS207において、測定装置20の第1レンズ23は、第2レンズ24から入射された透過光TR1~TRnを更に透過させて収束させながら第2レンズ24がある側とは反対側に出射する。
【0076】
ステップS208において、測定装置20の受光素子26は、透過光TR1~TRnを受ける。この変形例において、受光素子26は、第2レンズ24がある側とは反対側の、第1レンズ23から離れた位置に配置されている。
【0077】
受光素子26は、透過光の強度を示す受光強度データを出力する。具体的には、受光素子26は、透過光TR1~TRnの強度を示すデータを受光強度データとして出力する。
【0078】
ステップ209~S210は、上述のステップS106~S107と同様であるので説明を省略する。
【0079】
この変形例によれば、例えば、収容体が小型の包装容器であり収容体内部空間内の光路が大きく取れない場合にも、透過光を反射体で反射して第2レンズに戻す分、光路長を延長することができる。また、受光素子を収容体の外部に配置することにより、収容体の振動又は熱等の外乱の影響から受光素子を隔離できる。その結果、測定感度が向上し、より正確な測定が可能となる。
【0080】
上述のように、本実施形態では、周囲環境ガスの影響が及び得る空間では光路長を一定とし、分析対象成分を含むガスが存在する空間では光路長を経時変化させる。
【0081】
本実施形態によれば、ガスに含まれる分析対象成分の濃度を、周囲環境ガスの影響を受けずに測定することができる。その結果、運用しやすい測定が可能となる。
【0082】
本実施形態は、光吸収スペクトルを利用する文脈で説明したが、これに限定されない。測定システム10は、このような吸収分光法以外にも任意の分光法を用いて分析対象成分を分析してもよい。分光法は、例えば、ラマン分光法等を含んでもよい。例えば、ラマン分光法では、分光スペクトルはラマンスペクトルを含む。
【0083】
上述のとおり、本実施形態では、測定システム10は、ガスG1に含まれる分析対象成分の濃度によって吸光度の異なる光L0を光源21から出射する。測定システム10は、光源21から出射された光L0を可動反射鏡22により第1方向に走査する。測定システム10は、可動反射鏡22により走査された光L1~Lnを、第1レンズ23を介して透過させて第1方向と直交する第2方向に沿って進行させる。ガスG1が存在する収容体内部空間Sを有する収容体25の外郭の、第1レンズ23と第2方向に沿って対向する位置に配置された第2レンズ24を介して、第2方向に沿って進行する光L1~Lnを透過させて透過光TR1~TRnとし、透過光TR1~TRnを収束させながら収容体内部空間Sに出射する。測定システム10は、透過光TR1~TRnを受光素子26で受ける。測定システム10は、収容体内部空間S内の光路長を示す光路長データと受光素子26で受けられた透過光TR1~TRnの吸光度を示す吸光度データとを取得する。測定システム10は、光路長データOD及び吸光度データADに基づいて分析対象成分の濃度を算出する。
【0084】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、ブロック図に記載の2つ以上のブロックを統合してもよいし、又は1つのブロックを分割してもよい。フローチャートに記載の2つ以上のステップを記述に従って時系列に実行する代わりに、各ステップを実行する装置の能力に応じて、又は必要に応じて、並列的に又は異なる順序で実行してもよい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【符号の説明】
【0085】
10 測定システム
20 測定装置
21 光源
22 可動反射鏡
23 第1レンズ
24 第2レンズ
25 収容体
26 受光素子
27 筐体
28 反射体
30 演算装置
31 記憶部
32 制御部
33 通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6