(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092859
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】ガス精製方法、及び、ガス精製システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20240701BHJP
B01D 53/92 20060101ALI20240701BHJP
B01D 53/96 20060101ALI20240701BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B01D53/04 230
B01D53/92 240
B01D53/96 ZAB
B01D53/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209065
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東海 英顯
【テーマコード(参考)】
4D002
4D012
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA04
4D002CA07
4D002CA13
4D002DA31
4D002EA04
4D002EA08
4D002FA01
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB01
4D012BA01
4D012CA03
4D012CB16
4D012CD02
4D012CE01
4D012CE02
4D012CF02
4D012CG03
4D012CJ03
(57)【要約】
【課題】吸着剤を用いて目的ガスを吸着及び脱着して、目的ガスを回収するシステムにおいて、確実に洗浄を行うと共に、目的ガスの回収効率を向上させる。
【解決手段】目的ガスを吸着する吸着剤22が収納された複数の吸着部20へ、目的ガスを含む原料ガスを流入させて吸着剤22へ吸着させる吸着工程と、吸着剤22に吸着された目的ガスを脱着させて吸着部20から送出させる脱着工程と、吸着工程後脱着工程前に吸着部20へ目的ガスを供給して吸着剤22を洗浄する洗浄工程と、を繰り返して目的ガスを得るガス精製方法であって、洗浄工程中の吸着部20へ供給される目的ガスの流量と吸着部20から排出されるガスの流量との差が、洗浄完了量D1以下となった場合に、目的ガスの吸着部20への供給を停止して洗浄工程を終了する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的ガスを吸着する吸着剤が収納された複数の吸着部へ、前記目的ガスを含む原料ガスを流入させて前記吸着剤へ吸着させる吸着工程と、前記吸着剤に吸着された目的ガスを脱着させて前記吸着部から送出させる脱着工程と、前記吸着工程後前記脱着工程前に前記吸着部へ目的ガスを供給して前記吸着部を洗浄する洗浄工程と、を繰り返して目的ガスを得るガス精製方法であって、
前記洗浄工程中の前記吸着部へ供給される目的ガスの流量と前記吸着部から排出されるガスの流量との差が、洗浄完了量以下となった場合に、前記目的ガスの前記吸着部への供給を停止して前記洗浄工程を終了する、
ガス精製方法。
【請求項2】
前記洗浄完了量は、ゼロである、請求項1に記載のガス精製方法。
【請求項3】
目的ガスを吸着する吸着剤が収納された複数の吸着部へ、前記目的ガスを含む原料ガスを流入させて前記吸着剤へ吸着させる吸着工程と、前記吸着剤に吸着された目的ガスを脱着させて前記吸着部から送出させる脱着工程と、前記吸着工程後前記脱着工程前に前記吸着部へ目的ガスを供給して前記吸着部を洗浄する洗浄工程と、を繰り返して目的ガスを得るガス精製方法であって、
前記洗浄工程中の前記吸着部から排出されるガスの流量上昇が、洗浄完了値以下となった場合に、前記目的ガスの前記吸着部への供給を停止して前記洗浄工程を終了する、
ガス精製方法。
【請求項4】
前記洗浄完了量は、ゼロである、請求項3に記載のガス精製方法。
【請求項5】
目的ガスを吸着する吸着剤が収納され、前記目的ガスを含む原料ガスが供給される一方側接続部、前記一方側接続部と異なる他方側接続部、を有する複数の吸着部と、
前記吸着部の前記一方側接続部及び前記他方側接続部から排出されるガスの流量を各々取得する流量計と、
前記原料ガスを前記吸着剤へ吸着させる吸着工程と、前記吸着剤に吸着された目的ガスを脱着させて前記吸着部から送出させる脱着工程と、前記吸着工程後前記脱着工程前に前記吸着部へ目的ガスを供給して前記吸着部を洗浄する洗浄工程と、を有するサイクルが繰り返されるように、前記一方側接続部及び前記他方側接続部へのガスの供給を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記流量計から得られた、前記洗浄工程中の前記吸着部へ供給される目的ガスの流量と前記吸着部から排出されるガスの流量との差が、洗浄完了量以下となった場合に、前記目的ガスの前記吸着部への供給を停止するようにガスの供給を制御する、
ガス精製システム。
【請求項6】
目的ガスを吸着する吸着剤が収納され、前記目的ガスを含む原料ガスが供給される一方側接続部、前記一方側接続部と異なる他方側接続部、を有する複数の吸着部と、
前記吸着部の前記他方側接続部から排出されるガスの流量を取得する流量計と、
前記原料ガスを前記吸着剤へ吸着させる吸着工程と、前記吸着剤に吸着された目的ガスを脱着させて前記吸着部から送出させる脱着工程と、前記吸着工程後前記脱着工程前に前記吸着部へ目的ガスを供給して前記吸着部を洗浄する洗浄工程と、を有するサイクルが繰り返されるように、前記一方側接続部及び前記他方側接続部へのガスの供給を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記流量計から得られた、前記洗浄工程中の前記吸着部から排出される目的ガスの流量上昇が、洗浄完了値以下となった場合に、前記目的ガスの前記吸着部への供給を停止するように、ガスの供給を制御する、
ガス精製システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス精製方法、及び、ガス精製システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸着剤を用いて二酸化炭素等の目的のガスを吸着/脱着し、目的のガスを回収するシステムが提案されている。特許文献1には、吸着工程、脱着工程、洗浄工程について、各々時間を設定し、時間で各工程の切り替えを実行している。当該時間について、脱着工程時間を吸着工程時間よりも長くすることで、異なる2つの吸着塔において脱着工程を並行して行い、サイクルタイムの短縮を図っている。また、洗浄工程の時間を吸着工程の時間よりも短くすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、洗浄工程を時間で切り換えているため、洗浄工程におけるパージが不十分になったり、パージが充分に行われた後も洗浄工程が継続されてしまったりすることも生じうる。洗浄工程では、パージガスとして製品ガスを消費するため、製品ガスのロスとなる。洗浄工程において、確実に洗浄を行うと共に、目的ガスの回収効率を向上させることが求められる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであり、吸着剤を用いて目的ガスを吸着及び脱着して、目的ガスを回収するシステムにおいて、確実に洗浄を行うと共に、目的ガスの回収効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係るガス精製方法は、目的ガスを吸着する吸着剤が収納された複数の吸着部へ、前記目的ガスを含む原料ガスを流入させて前記吸着剤へ吸着させる吸着工程と、前記吸着剤に吸着された目的ガスを脱着させて前記吸着部から送出させる脱着工程と、前記吸着工程後前記脱着工程前に前記吸着部へ目的ガスを供給して前記吸着部を洗浄する洗浄工程と、を繰り返して目的ガスを得るガス精製方法であって、前記洗浄工程中の前記吸着部へ供給される目的ガスの流量と前記吸着部から排出されるガスの流量との差が、洗浄完了量以下となった場合に、前記目的ガスの前記吸着部への供給を停止して前記洗浄工程を終了する。
【0007】
第1の態様に係るガス精製方法では、吸着工程、洗浄工程、脱着工程、を繰り返して目的ガスを得る。吸着工程では、目的ガスを含む原料ガスを吸着部へ流入させて吸着剤へ吸着させ、脱着工程では、吸着剤に吸着された目的ガスを脱着させて吸着部から送出させる。洗浄工程では、吸着部へ目的ガスを供給して吸着部を洗浄する。
【0008】
この洗浄工程において、洗浄工程中に吸着部へ供給された目的ガスは、原料ガスよりも高濃度の目的ガスであるため、供給開始の始めは吸着剤に吸着され、吸着部から排出されるガスは供給された流量よりも少ない。吸着剤への目的ガスの吸着が進むにつれて、吸着量が減るため、吸着部から排出されるガスは増加していき、供給流量へ近づく。
【0009】
そこで、洗浄工程中に吸着部へ供給される目的ガスの流量と、吸着部から排出されるガスの流量との差が、洗浄完了量以下となった場合に、目的ガスの吸着部への供給を停止して洗浄工程を終了する。ここでの洗浄完了量は、吸着剤へ目的ガスが充分に吸着されて、洗浄後に回収する目的ガスの濃度が製品ガスとして問題ない程度となる量で設定される。
【0010】
このようなタイミングで、洗浄工程を終了することにより、確実に洗浄を行うことができると共に、目的ガスを無駄に消費することなく、回収効率を向上させることができる。
【0011】
第2の態様に係るガス精製方法は、前記洗浄完了量は、ゼロである。
【0012】
このように、洗浄工程中に吸着部へ供給される目的ガスの流量と、吸着部から排出されるガスの流量との差が、ゼロとなった場合に、目的ガスの吸着部への供給を停止して洗浄工程を終了することにより、より確実に洗浄を行うことができる。
【0013】
第3の態様に係るガス精製方法は、目的ガスを吸着する吸着剤が収納された複数の吸着部へ、前記目的ガスを含む原料ガスを流入させて前記吸着剤へ吸着させる吸着工程と、前記吸着剤に吸着された目的ガスを脱着させて前記吸着部から送出させる脱着工程と、前記吸着工程後前記脱着工程前に前記吸着部へ目的ガスを供給して前記吸着部を洗浄する洗浄工程と、を繰り返して目的ガスを得るガス精製方法であって、前記洗浄工程中の前記吸着部から排出されるガスの流量上昇が、洗浄完了値以下となった場合に、前記目的ガスの前記吸着部への供給を停止して前記洗浄工程を終了する。
【0014】
第3の態様に係るガス精製方法では、吸着工程、洗浄工程、脱着工程、を繰り返して目的ガスを得る。吸着工程では、目的ガスを含む原料ガスを吸着部へ流入させて吸着剤へ吸着させ、脱着工程では、吸着剤に吸着された目的ガスを脱着させて吸着部から送出させる。洗浄工程では、吸着部へ目的ガスを供給して吸着部を洗浄する。
【0015】
この洗浄工程において、洗浄工程中に吸着部へ供給された目的ガスは、原料ガスよりも高濃度の目的ガスであるため、供給開始の始めは吸着剤に吸着され、吸着部から排出されるガスは供給された流量よりも少ない。吸着剤への目的ガスの吸着が進むにつれて、吸着量が減るため、吸着部から排出されるガスの流量は上昇していき、この上昇は吸着剤への目的ガスの吸着が飽和状態に近づくにつれて小さくなっていく。
【0016】
そこで、洗浄工程中の吸着部から排出されるガスの流量上昇が、洗浄完了値以下となった場合に、目的ガスの前記吸着部への供給を停止して前記洗浄工程を終了する。ここでの洗浄完了値は、吸着剤へ目的ガスが充分に吸着されて、洗浄後に回収する目的ガスの濃度が製品ガスとして問題ない程度となる値で設定される。
【0017】
このようなタイミングで、洗浄工程を終了することにより、確実に洗浄を行うことができると共に、目的ガスを無駄に消費することなく、回収効率を向上させることができる。
【0018】
第4の態様に係るガス精製方法は、前記洗浄完了値は、ゼロである。
【0019】
このように、洗浄工程中の吸着部から排出されるガスの流量上昇がゼロとなった場合に、目的ガスの吸着部への供給を停止して洗浄工程を終了することにより、より確実に洗浄を行うことができる。
【0020】
第5の態様に係るガス精製システムは、目的ガスを吸着する吸着剤が収納され、前記目的ガスを含む原料ガスが供給される一方側接続部、前記一方側接続部と異なる他方側接続部、を有する複数の吸着部と、前記吸着部の前記一方側接続部及び前記他方側接続部から排出されるガスの流量を各々取得する流量計と、前記原料ガスを前記吸着剤へ吸着させる吸着工程と、前記吸着剤に吸着された目的ガスを脱着させて前記吸着部から送出させる脱着工程と、前記吸着工程後前記脱着工程前に前記吸着部へ目的ガスを供給して前記吸着部を洗浄する洗浄工程と、を有するサイクルが繰り返されるように、前記一方側接続部及び前記他方側接続部へのガスの供給を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記流量計から得られた、前記洗浄工程中の前記吸着部へ供給される目的ガスの流量と前記吸着部から排出されるガスの流量との差が、洗浄完了量以下となった場合に、前記目的ガスの前記吸着部への供給を停止するようにガスの供給を制御する。
【0021】
第5の態様に係るガス精製システムでは、吸着工程、洗浄工程、脱着工程、洗浄工程を繰り返して目的ガスを得る。吸着工程では、目的ガスを含む原料ガスを吸着部へ流入させて吸着剤へ吸着させ、脱着工程では、吸着剤に吸着された目的ガスを脱着させて吸着部から送出させる。洗浄工程では、吸着部へ目的ガスを供給して吸着部を洗浄する。
【0022】
この洗浄工程において、洗浄工程中に吸着部へ供給された目的ガスは、原料ガスよりも高濃度の目的ガスであるため、供給開始の始めは吸着剤に吸着され、吸着部から排出されるガスは供給された流量よりも少ない。吸着剤への目的ガスの吸着が進むにつれて、吸着量が減るため、吸着部から排出されるガスは増加していき、供給流量へ近づく。
【0023】
そこで、洗浄工程中に吸着部へ供給される目的ガスの流量と、吸着部から排出されるガスの流量との差が、洗浄完了量以下となった場合に、目的ガスの吸着部への供給を停止して洗浄工程を終了するようにガスの供給を制御する。ここでの洗浄完了量は、吸着剤へ目的ガスが充分に吸着されて、洗浄後に回収する目的ガスの濃度が製品ガスとして問題ない程度となる量で設定される。
【0024】
このようなタイミングで、洗浄工程を終了することにより、確実に洗浄を行うことができると共に、目的ガスを無駄に消費することなく、回収効率を向上させることができる。
【0025】
第6の態様に係るガス精製システムは、目的ガスを吸着する吸着剤が収納され、前記目的ガスを含む原料ガスが供給される一方側接続部、前記一方側接続部と異なる他方側接続部、を有する複数の吸着部と、前記吸着部の前記他方側接続部から排出されるガスの流量を取得する流量計と、前記原料ガスを前記吸着剤へ吸着させる吸着工程と、前記吸着剤に吸着された目的ガスを脱着させて前記吸着部から送出させる脱着工程と、前記吸着工程後前記脱着工程前に前記吸着部へ目的ガスを供給して前記吸着部を洗浄する洗浄工程と、を有するサイクルが繰り返されるように、前記一方側接続部及び前記他方側接続部へのガスの供給を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記流量計から得られた、前記洗浄工程中の前記吸着部から排出される目的ガスの流量上昇が、洗浄完了値以下となった場合に、前記目的ガスの前記吸着部への供給を停止するように、ガスの供給を制御する。
【0026】
この洗浄工程において、洗浄工程中に吸着部へ供給された目的ガスは、原料ガスよりも高濃度の目的ガスであるため、供給開始の始めは吸着剤に吸着され、吸着部から排出されるガスは供給された流量よりも少ない。吸着剤への目的ガスの吸着が進むにつれて、吸着量が減るため、吸着部から排出されるガスの流量は上昇していき、この上昇は吸着剤への目的ガスの吸着が飽和状態に近づくにつれて小さくなっていく。
【0027】
そこで、洗浄工程中の吸着部から排出されるガスの流量上昇が、洗浄完了値以下となった場合に、目的ガスの前記吸着部への供給を停止して前記洗浄工程を終了するように、ガスの供給を制御する。ここでの洗浄完了値は、吸着剤へ目的ガスが充分に吸着されて、洗浄後に回収する目的ガスの濃度が製品ガスとして問題ない程度となる値で設定される。
【0028】
このようなタイミングで、洗浄工程を終了することにより、確実に洗浄を行うことができると共に、目的ガスを無駄に消費することなく、回収効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、吸着剤を用いて目的ガスを吸着及び脱着して、目的ガスを回収するシステムにおいて、確実に洗浄を行うと共に、目的ガスの回収効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本実施形態に係るガス精製システムの概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係るガス精製システムの制御部とその接続部材とのブロック図である。
【
図3】本実施形態の二酸化炭素回収処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】本実施形態の第1工程処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】第1工程処理中の洗浄確認処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】第1工程処理におけるガスの流れを示す説明ステップ(A)、(B)、(C)である。
【
図7】本実施形態の第2工程処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】第2工程処理中の洗浄確認処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】第2工程処理におけるガスの流れを示す説明ステップ(A)、(B)、(C)である。
【
図10】本実施形態の第3工程処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】第3工程処理中の洗浄確認処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】第3工程処理におけるガスの流れを示す説明ステップ(A)、(B)、(C)である。
【
図13】各吸着部における、第1工程、第2工程、第3工程のタイミングを示す図である。
【
図14】(A)は本実施形態に係るガス精製システムのオフガス流量F2と回収CO2流量F1の経時的な変化を示すグラフであり、(B)は比較例に係るガス精製システムのオフガス流量F2と回収CO2流量F1の経時的な変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態に係るガス精製方法、及び、ガス精製システムの一例を図面に従って説明する。本実施形態では、ガスの一例として二酸化炭素を精製するシステムについて説明する。
【0032】
ガス精製システム10は、ガスエンジンやガスボイラなどの機器や、工場から排出される二酸化炭素を含む排ガスを原料ガスとし、原料ガスから高濃度の二酸化炭素リッチガスを回収するものである。なお、
図1では、ガス精製システム10の構成を概略的に示しており、ガス精製システム10は、他の構成を含んでいてもよい。
【0033】
本実施形態に係るガス精製システム10は、
図1に示されるように、3つの吸着部20A、20B、20C、CO2回収側ポンプ12、透過側流量計14、回収側流量計16、水蒸気供給部18を備えている。
【0034】
吸着部20A、20B、20Cは同一構成とされており、これらを区別なく説明する場合には、総称として「吸着部20」とする。吸着部20は、内部に二酸化炭素を吸着すると共に、吸着部20内の条件を変更することにより、吸着した二酸化炭素を脱着可能な吸着剤22が充填されている。吸着剤22としては、例えば、アミン担持多孔質体、アミノシラン修飾多孔質体を用いることができる。本実施形態では、吸着した二酸化炭素の脱着が、水蒸気を供給することによりを促進されるアミン担持多孔質体を用いる。
【0035】
吸着部20の吸着剤22を挟んで一方側には、第一口としての一方側接続部24が形成され、他方側には第二口としての他方側接続部26が形成されている。一方側接続部24には、第1ガス路40が接続され、他方側接続部26には、第2ガス路30が接続されている。
【0036】
第1ガス路40には、原料ガス供給路42、CO2供給路44、CO2回収路46が接続されている。原料ガス供給路42には原料供給バルブV1が設けられ、CO2供給路44にはCO2供給バルブV2が設けられ、CO2回収路46にはCO2回収バルブV3が設けられている。第1ガス路40、原料ガス供給路42、CO2供給路44、CO2回収路46、原料供給バルブV1、CO2供給バルブV2、CO2回収バルブV3は、吸着部20A、20B、20Cの各々に対応して設けられている。以下、吸着部20Aに対応する各部の符号の末尾に「A」を付し、吸着部20Bに対応する各部の符号の末尾に「B」を付し、吸着部20Cに対応する各部の符号の末尾に「C」を付して図示すると共に、説明において区別する場合には、各部の符号末尾に当該符号を付して説明する。
【0037】
原料ガス供給路42は、上流側が不図示の原料ガス供給源(ガスエンジン、工場排ガス路等)に接続されており、原料供給バルブV1よりも上流側で原料ガス供給路42A、42B、42Cに分岐されている。原料ガス供給路42A、42B、42Cの下流端が、各々、第1ガス路40A、40B、40Bと接続されている。原料供給バルブV1は、原料ガス供給路42A、42B、42Cの各々に設けられている。
【0038】
CO2回収路46には、CO2回収側ポンプ12が設けられている。CO2回収側ポンプ12は、一例として真空ポンプを用いることができる。CO2回収路46のCO2回収側ポンプ12よりも下流側には、回収側流量計16が設けられている。回収側流量計16は、通過するCO2ガスの流量を測定する。回収側流量計16は、後述する制御部50と接続されており、計測したCO2ガスの流量(以下「回収CO2流量F1」という)を制御部50へ送信する。
【0039】
CO2回収路46はCO2回収側ポンプ12よりも吸着部20側で、CO2回収路46A、46B、46Cに分岐されている。CO2回収路46A、46B、46Cの一端は、各々、第1ガス路40A、40B、40Bと接続されている。CO2回収路46には、CO2回収側ポンプ12及び回収側流量計16を挟んでCO2回収路46A、46B、46Cの分岐部分と反対側に、三方弁V7を介してCO2供給路44の一端が接続されている。CO2回収バルブV3は、CO2回収路46A、46B、46Cの各々に設けられている。
【0040】
CO2供給路44は、CO2供給バルブV2を挟んで吸着部20と反対側でCO2供給路44A、44B、44Cに分岐されている。CO2供給路44A、44B、44Cは、各々、第1ガス路40A、40B、40Bと接続されている。CO2供給バルブV2は、CO2供給路44A、44B、44Cの各々に設けられている。
【0041】
第2ガス路30には、オフガス送出路32、洗浄オフガス送出路34、水蒸気供給路36が接続されている。オフガス送出路32にはオフガス排出バルブV4が設けられ、洗浄オフガス送出路34には洗浄オフガスバルブV5が設けられ、水蒸気供給路36には水蒸気供給バルブV6が設けられている。第2ガス路30、オフガス送出路32、洗浄オフガス送出路34、水蒸気供給路36、オフガス排出バルブV4、洗浄オフガスバルブV5、水蒸気供給バルブV6は、吸着部20A、20B、20Cの各々に対応して設けられている。以下、吸着部20Aに対応する各部の符号の末尾に「A」を付し、吸着部20Bに対応する各部の符号の末尾に「B」を付し、吸着部20Cに対応する各部の符号の末尾に「C」を付して図示すると共に、説明において区別する場合には、当該符号を付して説明する。
【0042】
オフガス送出路32は、オフガス送出路32A、32B、32Cに分岐されて、各々第2ガス路30A、30B、30Cと接続されている。オフガス排出バルブV4A、V4B、V4Cは、オフガス送出路32A、32B、32Cに各々設けられている。
【0043】
洗浄オフガス送出路34は、洗浄オフガス送出路34A、34B、34Cに分岐されて、各々第2ガス路30A、30B、30Cと接続されている。洗浄オフガスバルブV5A、V5B、V5Cは、洗浄オフガス送出路34A、34B、34Cに各々設けられている。オフガス送出路34A、34B、34Cからのガスは、洗浄オフガス送出路34を介して排出される。
【0044】
洗浄オフガス送出路34には、透過側流量計14が設けられている。透過側流量計14は、後述する制御部50と接続されており、計測したガスの流量(以下「オフガス流量F2」という)を制御部50へ送信する。
【0045】
水蒸気供給路36の一端は、水蒸気供給部18と接続されている。水蒸気供給部18は、一例として気化器等を用いることができる。水蒸気供給路36は、水蒸気供給バルブV6を挟んで吸着部20と反対側で水蒸気供給路36A、36B、36Cに分岐されている。水蒸気供給路36A、36B、36Cは、各々、第2ガス路30A、30B、30Bと接続されている。水蒸気供給バルブV6は、水蒸気供給路36A、36B、36Cの各々に設けられている。
【0046】
図2に示されるように、ガス精製システム10は、制御部50を備えている。制御部50は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)50A、ROM(Read Only Memory)50B、RAM(Random Access Memory)50C、ストレージ50D、入出力インターフェース(I/O)50E、を有する。各構成は、バス52を介して相互に通信可能に接続されている。
【0047】
CPU50Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU50Aは、ROM50Bまたはストレージ50Dからプログラムを読み出し、RAM50Cを作業領域としてプログラムを実行する。CPU50Aは、ROM50Bまたはストレージ50Dに記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0048】
ROM50Bは、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM50Cは、作業領域として一時的にプログラムまたはデータを記憶する。ストレージ50Dは、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、および各種データを格納する。本実施形態では、ROM50Bまたはストレージ50Dには、後述するガス精製システム10の、吸着工程、粗洗浄工程、洗浄工程等を実行するためのプログラム(二酸化炭素回収処理、洗浄確認処理)や、後述する洗浄完了量D1、吸着・脱着のための所定時間T1等々、各種のデータ等が格納されている。
【0049】
入出力I/O50Eは、信号線を介して、原料供給バルブV1、CO2供給バルブV2、CO2回収バルブV3、オフガス排出バルブV4、洗浄オフガスバルブV5、水蒸気供給バルブV6、三方弁V7、CO2回収側ポンプ12、透過側流量計14、回収側流量計16と接続されている。制御部50により、これらのバルブの開閉、三方弁の流路の切り換えが制御されている。また、制御部50により、CO2回収側ポンプ12の駆動が制御され、透過側流量計14、回収側流量計16から、オフガス流量F2、回収CO2流量F1の情報が入力される。
【0050】
次に、本実施形態のガス精製システム10の作用について説明する。
【0051】
吸着工程では、原料供給バルブV1及びオフガス排出バルブV4が開放され、原料ガス供給路42から第1ガス路40を経て、吸着部20へ原料ガスが供給される。原料ガスに含まれる二酸化炭素は、吸着剤22に吸着される。原料ガスは、吸着部20を一方側接続部24側から他方側接続部26側へ流れ、吸着剤22に吸着されなかったガスは、オフガスとして第2ガス路30へ送出され、オフガス送出路32を経て大気へ放出される。このとき、吸着部20内の圧力は、所定の吸着圧に設定されている。
【0052】
脱着工程では、CO2回収バルブV3及び水蒸気供給バルブV6が開放され、吸着部20内の圧力は、所定の脱着圧に設定され、水蒸気供給部18から吸着部20へ、水蒸気供給路36を経て水蒸気が供給される。また、CO2回収側ポンプ12が駆動される。これにより、吸着剤22に吸着されていた二酸化炭素は、吸着剤22から脱着し、水蒸気と共に一方側接続部24から第1ガス路40を経て、CO2回収路46へ送出される。CO2回収路46へ送出された二酸化炭素は、不図示の凝縮器で水分離され、製品二酸化炭素として回収される。また、水分離された後の二酸化炭素は、後述する洗浄工程でも用いられる。
【0053】
洗浄工程では、CO2供給バルブV2及び洗浄オフガスバルブV5が開放され、二酸化炭素が吸着剤22に吸着された状態の吸着部20へ、CO2供給路44から二酸化炭素が供給される。二酸化炭素は、前述した脱着工程でCO2回収路46へ送出された二酸化炭素が用いられる。CO2回収路46へ送出された二酸化炭素は、三方弁V7をCO2供給路44が開放されるように切り換えることにより、CO2供給路44へ送出される。CO2供給路44へ送出された二酸化炭素は、第1ガス路40を経て一方側接続部24側から、二酸化炭素やその他の物質が吸着された状態の吸着部20へ供給される。供給された二酸化炭素は、吸着部20内の不純物と共に一方側接続部24側から他方側接続部26側へ流れ、洗浄オフガスとして、第2ガス路30から洗浄オフガス送出路34を経て排出される。このとき、吸着部20内の圧力は、所定の吸着圧に設定されている。
【0054】
これら、吸着工程、脱着工程、洗浄工程は、制御部50により、二酸化炭素回収処理のプログラムが実行されることにより行われる。二酸化炭素回収処理は、
図3に示される様に、第1工程S1、第2工程S2、第3工程S3が繰り返し実行される。なお、当該プログラムの実行前、バルブV1~V6は閉鎖されている。
【0055】
第1工程S1では、
図4に示されるように、ステップS10で、吸着部20Aについて、原料供給バルブV1A及びオフガス排出バルブV4Aを開放することにより、吸着工程処理が実行される。これにより、吸着部20Aの吸着剤22Aに二酸化炭素が吸着される。
【0056】
ステップS12で、吸着部20Cについて、CO2回収バルブV3C及び水蒸気供給バルブV6Cを開放すると共にCO2回収側ポンプ12を駆動させることにより、脱着工程処理が実行される。これにより、吸着部20Cの吸着剤22Cから二酸化炭素が脱着され、CO2回収路46に二酸化炭素が送出される。送出された二酸化炭素を製品二酸化炭素として回収したり、洗浄に使用したりすることができる。
【0057】
ステップS14で、吸着部20Bについて、CO2供給バルブV2B及び洗浄オフガスバルブV5Bを開放し、三方弁V7の吸着部20側が開放するように切り換えることにより、洗浄工程処理を実行する。
【0058】
図6(A)には、ステップS10~ステップS14が実行された状態のバルブの開閉状態、ガスの流れが示されている。
【0059】
ここで、流量差D、及び、洗浄完了量D1について説明する。洗浄工程中にCO2供給路44から吸着部20Bへ供給された二酸化炭素は、原料ガスよりも二酸化炭素濃度が高濃度であるため、供給開始の始めは吸着剤22Bに吸着され、吸着部20Bから排出されるオフガスの流量は供給された二酸化炭素の流量よりも少ない。吸着剤22Bへの二酸化炭素の吸着が進むにつれて、供給された二酸化炭素は吸着剤22Bへの吸着量が減るため、吸着部20Bから排出されるオフガスの流量は増加していき、供給された二酸化炭素の量と排出される二酸化炭素の流量の差が小さくなる。
【0060】
そこで、洗浄工程中の吸着部20Bへ供給される二酸化炭素の流量と、吸着部20Bから排出されるオフガスの流量との差(流量差D)を求め、流量差Dが洗浄完了量D1以下となった場合に、吸着部20Bへの二酸化炭素の供給を停止して洗浄工程を終了する。ここで用いられるのが洗浄完了量D1である。
【0061】
洗浄工程中の吸着部20Bへ供給される二酸化炭素の流量は、回収側流量計16で計測された回収CO2流量F1で得ることができ、吸着部20Bから排出されるオフガスの流量は、透過側流量計14で計測されたオフガス流量F2で得ることができる。洗浄完了量D1は、吸着剤へ二酸化炭素が充分に吸着されて、洗浄後に回収する二酸化炭素の濃度が製品二酸化炭素として問題ない程度となる量で設定される。洗浄完了量D1は、ゼロであることが好ましい。
【0062】
ステップS14で洗浄工程処理が実行された後、ステップS16で、
図5に示す洗浄確認処理が実行される。
【0063】
ステップS16-1で、回収CO2流量F1を取得し、ステップS16-2で、オフガス流量F2を取得し、ステップS16-3で、回収CO2流量F1からオフガス流量F2を差し引いて流量差Dを算出する。この流量差Dの値が、吸着部20Bにおいて、吸着剤22Bへの二酸化炭素の吸着が飽和状態に近づいているか否かの指標となる。そこで、ステップS16-4で、流量差Dが洗浄完了量D1以下かどうか判断する。ステップS16-4での判断が肯定された場合には、吸着部20Bの洗浄が完了したと確認できるため、ステップS16-5で、三方バルブV7について、製品二酸化炭素側を開放する。これにより、吸着部20Cから送出されている製品二酸化炭素の洗浄のための使用が終了し、製品二酸化炭素として、貯留や使用をすることができる。
【0064】
次に、ステップS16-6で、CO2供給バルブV2Bを閉鎖し、更に、ステップS16-7で、洗浄オフガスバルブV5Bを閉鎖し、ステップS16の洗浄確認処理を終了する。
【0065】
図6(B)には、ステップS16-7終了時のバルブの開閉状態、ガスの流れが示されている。
【0066】
このように、流量差Dが洗浄完了量D1以下となった場合に、吸着部20Bへの二酸化炭素の供給を停止して洗浄工程を終了することにより、確実に洗浄を行うことができると共に、製品二酸化炭素を無駄に消費することなく、回収効率を向上させることができる。
【0067】
次に、ステップS18で、脱着工程処理の実行(ステップS12)から所定時間T1経過したか否かを判断する。所定時間T1は、吸着部20Cの吸着剤22Cに吸着された二酸化炭素が充分脱着されるために必要とされる時間が設定される。判断が否定された場合には、ステップS18を繰り返し、判断が肯定された場合には、ステップS20で、原料供給バルブV1A、オフガス排出バルブV4A、CO2回収バルブV3C、水蒸気供給バルブV6Cを閉鎖して(閉鎖処理)、第1工程を終了する。
【0068】
図6(C)には、ステップS18終了時のバルブの開閉状態、ガスの流れが示されている。
【0069】
第2工程S2では、
図7に示されるように、ステップS30で、吸着部20Cについて、原料供給バルブV1C及びオフガス排出バルブV4Cを開放することにより、吸着工程処理が実行される。これにより、吸着部20Cの吸着剤22Cに二酸化炭素が吸着される。
【0070】
ステップS32で、吸着部20Bについて、CO2回収バルブV3B及び水蒸気供給バルブV6Bを開放すると共にCO2回収側ポンプ12を駆動させることにより、脱着工程処理が実行される。これにより、吸着部20Cの吸着剤22Cから二酸化炭素が脱着され、CO2回収路46に二酸化炭素が送出される。送出された二酸化炭素を製品二酸化炭素として回収したり、洗浄に使用したりすることができる。
【0071】
ステップS34で、吸着部20Aについて、CO2供給バルブV2A及び洗浄オフガスバルブV5Aを開放し、三方弁V7の吸着部20側が開放するように切り換えることにより、洗浄工程処理を実行する。
【0072】
図9(A)には、ステップS30~ステップS34が実行された状態のバルブの開閉状態、ガスの流れが示されている。
【0073】
ステップS34で洗浄工程処理が実行された後、ステップS36で、
図8に示す洗浄確認処理が実行される。
【0074】
ステップS36-1で、回収CO2流量F1を取得し、ステップS36-2で、オフガス流量F2を取得し、ステップS36-3で、回収CO2流量F1からオフガス流量F2を差し引いて流量差Dを算出する。この流量差Dの値が、吸着部20Aにおいて、吸着剤22Aへの二酸化炭素の吸着が飽和状態に近づいているか否かの指標となる。そこで、ステップS36-4で、流量差Dが洗浄完了値D1以下かどうか判断する。ステップS36-4での判断が肯定された場合には、吸着部20Aの洗浄が完了したと確認できるため、ステップS36-5で、三方バルブV7について、製品二酸化炭素側を開放する。これにより、吸着部20Bから送出されている製品二酸化炭素の洗浄のための使用が終了し、製品二酸化炭素として、貯留や使用をすることができる。
【0075】
次に、ステップS36-6で、CO2供給バルブV2Aを閉鎖し、更に、ステップS36-7で、洗浄オフガスバルブV5Aを閉鎖し、ステップS36の洗浄確認処理を終了する。
【0076】
図9(B)には、ステップS36-7終了時のバルブの開閉状態、ガスの流れが示されている。
【0077】
このように、流量差Dが洗浄完了量D1以下となった場合に、吸着部20Aへの二酸化炭素の供給を停止して洗浄工程を終了することにより、確実に洗浄を行うことができると共に、製品二酸化炭素を無駄に消費することなく、回収効率を向上させることができる。
【0078】
次に、ステップS38で、脱着工程処理の実行(ステップS32)から所定時間T1経過したか否かを判断する。所定時間T1は、吸着部20Bの吸着剤22Bに吸着された二酸化炭素が充分脱着されるために必要とされる時間が設定される。判断が否定された場合には、ステップS38を繰り返し、判断が肯定された場合には、ステップS40で、原料供給バルブV1A、オフガス排出バルブV4A、CO2回収バルブV3C、水蒸気供給バルブV6Cを閉鎖して(閉鎖処理)、第2工程を終了する。
【0079】
図9(C)には、ステップS38終了時のバルブの開閉状態、ガスの流れが示されている。
【0080】
第3工程では、
図10に示されるように、ステップS50で、吸着部20Bについて、原料供給バルブV1B及びオフガス排出バルブV4Bを開放することにより、吸着工程処理が実行される。これにより、吸着部20Bの吸着剤22Bに二酸化炭素が吸着される。
【0081】
ステップS52で、吸着部20Aについて、CO2回収バルブV3A及び水蒸気供給バルブV6Aを開放すると共にCO2回収側ポンプ12を駆動させることにより、脱着工程処理が実行される。これにより、吸着部20Aの吸着剤22Aから二酸化炭素が脱着され、CO2回収路46に二酸化炭素が送出される。送出された二酸化炭素を製品二酸化炭素として回収したり、洗浄に使用したりすることができる。
【0082】
ステップS54で、吸着部20Cについて、CO2供給バルブV2C及び洗浄オフガスバルブV5Cを開放し、三方弁V7の吸着部20側が開放するように切り換えることにより、洗浄工程処理を実行する。
【0083】
図12(A)には、ステップS50~ステップS54が実行された状態のバルブの開閉状態、ガスの流れが示されている。
【0084】
ステップS54で洗浄工程処理が実行された後、ステップS56で、
図11に示す洗浄確認処理が実行される。
【0085】
ステップS56-1で、回収CO2流量F1を取得し、ステップS56-2で、オフガス流量F2を取得し、ステップS56-3で、回収CO2流量F1からオフガス流量F2を差し引いて流量差Dを算出する。この流量差Dの値が、吸着部20Cにおいて、吸着剤22Cへの二酸化炭素の吸着が飽和状態に近づいているか否かの指標となる。そこで、ステップS56-4で、流量差Dが洗浄完了量D1以下かどうか判断する。ステップS56-4での判断が肯定された場合には、吸着部20Cの洗浄が完了したと確認できるため、ステップS56-5で、三方バルブV7について、製品二酸化炭素側を開放する。これにより、吸着部20Aから送出されている製品二酸化炭素の洗浄のための使用が終了し、製品二酸化炭素として、貯留や使用をすることができる。
【0086】
次に、ステップS56-6で、CO2供給バルブV2Cを閉鎖し、更に、ステップS56-7で、洗浄オフガスバルブV5Cを閉鎖し、ステップS56の洗浄確認処理を終了する。
【0087】
図12(B)には、ステップS56-7終了時のバルブの開閉状態、ガスの流れが示されている。
【0088】
このように、流量差Dが洗浄完了量D1以下となった場合に、吸着部20Cへの二酸化炭素の供給を停止して洗浄工程を終了することにより、確実に洗浄を行うことができると共に、製品二酸化炭素を無駄に消費することなく、回収効率を向上させることができる。
【0089】
次に、ステップS58で、脱着工程処理の実行(ステップS52)から所定時間T1経過したか否かを判断する。所定時間T1は、吸着部20Cの吸着剤22Cに吸着された二酸化炭素が充分脱着されるために必要とされる時間が設定される。判断が否定された場合には、ステップS58を繰り返し、判断が肯定された場合には、ステップS60で、原料供給バルブV1B、オフガス排出バルブV4B、CO2回収バルブV3A、水蒸気供給バルブV6Aを閉鎖して(閉鎖処理)、第3工程を終了する。
【0090】
図12(C)には、ステップS58終了時のバルブの開閉状態、ガスの流れが示されている。
【0091】
第3工程S3の終了後、ステップS4で、ガス精製システム10の運転を終了する指示があるかどうかを判断し、終了指示がなければ、第1工程S1へ戻り、終了指示があれば、二酸化炭素回収処理を終了する。
【0092】
図13には、吸着部20A、20B、20Cの各々における、第1工程、第2工程、第3工程のタイミングが示されている。また、
図14(A)には、オフガス流量F2と回収CO2流量F1の経時的な変化を示すグラフが示されている。なお、
図14(B)には、比較例における、オフガス流量F2と回収CO2流量F1の経時的な変化を示すグラフが示されている。
図14(B)の比較例に示されるように、1の吸着部における洗浄処理が開始されると、破線で示される回収CO2流量F1は瞬間的に高くなり、徐々に減少する。一方、実線で示されるオフガス流量F2は、徐々に上昇し、回収CO2流量F1と同量となり、オフガス流量F2と回収CO2流量F1は、三方弁V7が切り換えられるまで同量で推移し、三方弁V7の切り換えにより、オフガス流量F2はゼロとなる。本実施形態では、
図14(A)に示されるように、オフガス流量F2と回収CO2流量F1が同量で推移する時間を短縮することができる。
【0093】
本実施形態のガス精製システム10では、流量差Dが洗浄完了量D1以下となった場合に、吸着部20への二酸化炭素の供給を停止して洗浄工程を終了する。したがって、確実に洗浄を行うことができると共に、製品二酸化炭素を無駄に消費することなく、回収効率を向上させることができる。
【0094】
<その他の実施形態>
前述の実施形態では、流量差Dが洗浄完了量D1以下となった場合に、吸着部20への二酸化炭素の供給を停止して洗浄工程を終了したが、オフガス流量F2の上昇が洗浄完了値C2以下となった場合に、吸着部20への二酸化炭素の供給を停止して洗浄工程を終了してもよい。
【0095】
洗浄処理が実行されている吸着部20から排出されるオフガス流量F2は、
図14(A)に示されるように、徐々に上昇し、回収CO2流量F1と同量となった後、上昇がなくなる。そこで、オフガス流量F2に基づいて、ゼロ、またはゼロに近い洗浄完了値C2を設定する。そして、オフガス流量F2の上昇が洗浄完了値C2以下となった場合に、吸着部20への二酸化炭素の供給を停止して洗浄工程を終了する。このようなタイミングで洗浄工程を終了することによっても、確実に洗浄を行うことができると共に、製品二酸化炭素を無駄に消費することなく、回収効率を向上させることができる。
【0096】
また、本実施形態では、目的ガスとして二酸化炭素を例示したガス精製システムについて説明したが、他のガス、例えば、窒素やメタンの精製に用いることもできる。
【符号の説明】
【0097】
10 ガス精製システム
14 透過側流量計(流量計)
16 回収側流量計(流量計)
20 吸着部
24 一方側接続部
26 他方側接続部
50 制御部
D1 洗浄完了量
C2 洗浄完了値