(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092880
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】水処理用の濾材の診断装置、それを備えた濾過装置、及び水処理用の濾材の診断方法
(51)【国際特許分類】
B01D 24/00 20060101AFI20240701BHJP
C02F 1/00 20230101ALI20240701BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B01D29/00 D
C02F1/00 L
G01N21/17 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209108
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】村澤 崇
(72)【発明者】
【氏名】畑中 聡
【テーマコード(参考)】
2G059
4D116
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB20
2G059EE01
2G059FF04
2G059GG01
2G059GG03
2G059HH01
2G059HH02
2G059HH03
2G059KK01
2G059KK03
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM10
4D116AA09
4D116BB12
4D116BC62
4D116BC63
4D116FF13B
4D116KK01
4D116KK05
4D116QA13C
4D116QA13F
4D116QC20
4D116RR01
4D116VV08
4D116VV09
4D116VV12
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、水処理用の濾過装置の濾材の状態を診断するとともに濾材の洗浄時期や交換時期を適切に判断することができる濾材の診断装置と、それを備えた水処理用の濾過装置等を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するため、水処理用の濾過装置の濾材の状態を診断する診断装置であって、前記濾材の表面に光を照射するための照射部と、前記濾材を透過した透過光を検出するための検出部と、を備えることを特徴とする、濾材の診断装置を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理用の濾過装置の濾材の状態を診断する診断装置であって、
前記濾材の表面に光を照射するための照射部と、
前記濾材を透過した透過光を検出するための検出部と、を備えることを特徴とする、濾材の診断装置。
【請求項2】
前記検出部により検出した透過光の光量に関する情報を演算する演算部と、を備え、
前記演算部の演算結果に基づいて、前記濾材の目詰まり状態を診断することを特徴とする、請求項1に記載の濾材の診断装置。
【請求項3】
前記検出部により検出した透過光の光量に関する情報を記録するための記録部と、を備え、
前記演算部は、前記記録部に記録された情報に基づいて前記濾材の目詰まり状態を予測することを特徴とする、請求項2に記載の濾材の診断装置。
【請求項4】
前記検出部により検出した透過光の光量及び/又はその光量の変化量が所定の複数の閾値を超えた場合に通知することを特徴とする、請求項1に記載の濾材の診断装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の濾材の診断装置を備えることを特徴とする、水処理用の濾過装置。
【請求項6】
水処理用の濾過装置の濾材の状態を診断する診断方法であって、
前記濾材の表面に光を照射する照射ステップと、
前記濾材を透過した透過光を検出する検出ステップと、を備えることを特徴とする、濾材の診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理用の濾材の目詰まり状態を診断することができる濾材の診断装置等に関する。より詳細には、水処理用の濾過装置が備える周回又は回転する濾材の物理的な目詰まり状態を検出することができ、濾材の洗浄時期や交換時期を適切に判断することができる濾材の診断装置に関する。
【0002】
また、水処理用の濾材の診断装置を備えた無駄の無い合理的なメンテナンスが可能となる水処理用の濾過装置及びプラント、並びにそれを用いた水処理用の濾材の目詰まり状態の診断方法に関する。
【背景技術】
【0003】
汚泥や廃物を含んだ汚水や廃水の処理では、水と固形物を分離して処理するために、ベルト濃縮型、ベルトプレス型、ドラムスクリーン型等の濾過装置が広く利用されている。これらの濾過装置は、無限軌道を周回するシート状の濾材や回転するドラム型の濾材を備えている。これらの濾材には、金属又は樹脂製の濾布やスクリーンなどの網目又はメッシュ状の濾材が用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、有機性廃棄物処理の前処理設備を構成する夾雑物除去装置において、濾材表面の爽雑物を撮影してデジタル処理により爽雑物の量を判断し、夾雑物除去装置の運転を調整する夾雑物画像解析システムとそれを用いた前処理設備の運転システムが開示されている。
【0005】
この夾雑物画像解析システムによれば、画像解析装置による解析結果を利用し、目詰まりの兆候を早期に発見し、目詰まりの予防措置を採ることにより、夾雑物除去装置の運転を継続することができ、前処理設備全体の運転をスムーズに行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
濾過装置を継続的に使用していると、短期的には濾過物の堆積、長期的には付着物の固化や析出物により、濾材の目詰まりが発生し、濾過性能の低下を招く。そのため、濾材の定期的な洗浄や交換が必要になる。
【0008】
従来は、透過流量等の濾過性能が低下することで、濾材の目詰まりを判断していたが、濾過性能は処理物の性状変化の影響を受けやすく、適切に判断することが難しい。そのため、安易に目詰まりと判断し、濾材を必要以上に洗浄したり交換したりするなどの問題がある。
【0009】
また、汚泥の処理施設等においては、濾過装置が大規模であり、その処理物の性状からも濾材の洗浄や交換の労力は大きく費用は高額となる。そこで、濾材の目詰まり状態を正確に把握して、濾材の洗浄や交換の時期を適切に判断でき、無駄の無い合理的なメンテナンスが可能となる装置や方法が強く求められている。
【0010】
特許文献1の夾雑物画像解析システムでは、有機性廃棄物中の爽雑物の量を解析するものであって、濾材の物理的な目詰まり状態を検出するものではない。仮に廃棄物中の爽雑物の量が増減する場合には、濾材の目詰まりを適切に判断することが困難である。
【0011】
また、一般的に汚水や廃水を処理する濾過装置は、濾材を自動的に低圧洗浄する目詰まり除去機能を有しているが、濾材の目詰まり状態を検出することができない。そのため、洗浄の効果の程度や、洗浄後の濾材の目詰まり状態の経時変化を確認して判断することができず、無駄の無い合理的なメンテナンスを行うことができない。
【0012】
本発明の課題は、水処理用の濾過装置の濾材の状態を診断するとともに濾材の洗浄時期や交換時期を適切に判断することができる濾材の診断装置と、それを備えた水処理用の濾過装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、濾材の表面に光を照射する照射部と、濾材を透過した透過光を検出するための検出部とを備えることで、検出した透過光の光量から濾材の状態を検出することができ、濾材の洗浄時期や交換時期を適切に判断できことを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の濾材の診断装置及びそれを備える水処理用の濾過装置、並びに、濾材の診断方法である。
【0014】
上記課題を解決するための本発明の濾材の診断装置は、水処理用の濾過装置の濾材の状態を診断する診断装置であって、前記濾材の表面に光を照射するための照射部と、前記濾材を透過した透過光を検出するための検出部と、を備えるという特徴を有する。
【0015】
濾過装置の濾材は、濾過性能を維持するために定期的な洗浄及び交換を必要とする。一般に洗浄には、濾過装置が備えている洗浄装置による低圧洗浄、作業員が手作業で行う高圧洗浄や薬品洗浄がある。低圧洗浄は常時又は定期的に自動で行われるが、高圧洗浄や薬品洗浄は事前に準備し装置を止めて実施する必要がある。本発明の診断装置を用いれば、濾材の目詰まり状態を正確に把握できるため、最適なタイミングで低圧洗浄するように設定することや、高圧洗浄や薬品洗浄を実施できるように準備することができ、不要な手間や費用を減らすことができ、洗浄作業中の他のプロセスへの影響を抑えることができる。
【0016】
また、濾材の交換は濾過装置を止めてその一部又は全部を分解し手作業で交換する必要がある。一般に、汚水処理施設等の濾過装置は大規模で、その濾材の交換には大きな労力と費用を要する。従来は時間管理により必要以上に濾材を交換してしまうことや、濾材の目詰まりが発生していることに気づかずに放置して濾過性能の低下を招くことが頻発していた。本発明の診断装置を用いれば、濾材の目詰まり状態を正確に把握できるため、最適なタイミングで交換することができ、不要な交換を排除して労力や費用を大幅に減らすことができ、交換作業中の他のプロセスへの影響を抑えることができる。
【0017】
また、本発明の濾材の診断装置の一実施態様としては、検出部により検出した透過光の光量に関する情報を演算する演算部と、を備え、前記演算部の演算結果に基づいて、濾材の目詰まり状態を診断するという特徴を有する。
【0018】
演算部を備えることにより、検出した透過光やその変化量から濾材の目詰まり状態(目詰まりの程度や分布など)を診断することができる。例えば、周回又は回転する濾材に対して、連続的に透過光を検出することにより、同じ位置における透過光の光量の比較から濾材の目詰まり状態の変化を診断したり、周回又は回転する濾材の進行方向における透過光の光量の違いから、進行方向における目詰まりの分布を診断したりすることができる。濾過装置では、処理物の投入経路や搬送経路に装置毎の流体力学的な特性があり、装置毎に濾材の目詰まりが発生しやすい箇所が現れることがある。濾材の目詰まり箇所とその分布を二次元的に記録することにより、装置毎のトラブルや故障の早期発見や早期予測が可能となり、より高度なメンテナンスが可能となる。
【0019】
また、本発明の濾材の診断装置の一実施態様としては、検出部により検出した透過光の光量に関する情報を記録するための記録部と、を備え、演算部は、前記記録部に記録された情報に基づいて濾材の目詰まり状態を予測するという特徴を有する。
【0020】
透過光の光量の現在の実測値及び過去の記録値から、単位時間当たりの光量の変化量を算出することにより、将来的な濾材の目詰まり状態を予測して診断することができる。濾材の洗浄及び交換の推奨予測により、予め洗浄や交換のための資材の調達や人員の配置を行うことで、一層の労力や費用の削減が可能となり、作業中の他のプロセスへの影響を最小限に抑えることができ、より合理的なメンテナンスが可能となる。
【0021】
また、本発明の濾材の診断装置の一実施態様としては、検出部により検出した透過光の光量及び/又はその変化量が所定の複数の閾値を超えた場合に通知するという特徴を有する。
【0022】
例えば、濾材の低圧洗浄推奨値、高圧洗浄推奨値、薬品洗浄推奨値、濾材交換推奨値を閾値として予め入力して記録しておくことで、検出した透過光の光量がこれらの閾値を下回った場合には、装置が備える画面上に警報を表示することや管理者が所有する通信端末に警報を送信することにより、管理者に通知することができる。また、検出した透過光の変化量から、これらの閾値に到達する時期を予測し、管理者に通知することができる。これにより、より確実で安定したメンテナンスが可能となる。
【0023】
上記課題を解決するための本発明の水処理用の濾材の診断方法は、水処理用の濾過装置の濾材の状態を診断する診断方法であって、前記濾材の表面に光を照射する照射ステップと、前記濾材を透過した透過光を検出する検出ステップと、を備えるという特徴を有する。
【0024】
本発明の濾材の診断方法は、水処理用の濾過装置の濾材の目詰まり状態を、装置を稼働させながら検出することができ、濾材の最適な洗浄及び交換時期を適切に判断することで、水処理用の濾過装置やプラントの無駄を排除した合理的なメンテナンスを実現することができる。
【0025】
上記課題を解決するための本発明の水処理用の濾過装置は、上記の濾材の診断装置を備えるという特徴を有する。
水処理用の濾過装置としては、例えば、ベルト濃縮型、ベルトプレス型、回転式ドラムスクリーン型、又は掻き上げ式バースクリーン型の濾過装置などが用いられており、本発明の濾材の診断装置はこれらの濾過装置に好適に利用することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の濾材の診断装置によれば、濾材の目詰まり状態を検出することができ、濾材の洗浄及び交換時期を適切に判断することで、不要な洗浄及び交換を排除して労力や費用を削減した合理的なメンテナンスをすることができる。
【0027】
特に、濾材の目詰まり状態を予測して診断する実施態様では、洗浄及び交換時期や洗浄及び交換頻度を予測することができ、予めそのための資材の調達や人員の配置を行うことで、労力や費用を大幅に削減したより合理的なメンテナンスをすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1実施態様である濾材の診断装置1、及びそれを備えたベルト濃縮型脱水機の基本構成を示す概略図であり、(a)は側面図、(b)はA-A線断面図である。
【
図2】本発明の第2実施態様である濾材の診断装置2、それを備えたベルトプレス型脱水機、及び汚水処理プラントの基本構成を示す概略図である。
【
図3】本発明の第2実施態様である濾材の診断装置2の動作順序の一例を示す第1フローチャートの前段である。
【
図4】本発明の第2実施態様である濾材の診断装置2の動作順序の一例を示す第1フローチャートの後段である。
【
図5】本発明の第2実施態様である濾材の診断装置2の動作順序の一例を示す第2フローチャートの前段である。
【
図6】本発明の第2実施態様である濾材の診断装置2の動作順序の一例を示す第2フローチャートの後段である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の濾材の診断装置の実施態様について、以下図面等を参照して詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施態様によって限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、本発明の濾材の診断装置、水処理用の濾過装置の動作に関する記載は、本発明の濾材の診断方法や濾過方法の処理ステップに置き換えることができる。
【0030】
また、説明が省略されている材料構造、回路装置、制御方法等については、当該技術分野の当業者に知られているものと同一又は実質的に同一のものとすることができる。さらに、各図において同一符号は同一又は同等の構成要素を表しており重複する説明を省略する。なお、図面を分かり易くするために一部の構造を省略して図示している。
【0031】
本発明は、水処理用の濾過装置の濾材の診断装置である。水処理としては、上水道の原水の濾過、発電所等の冷却水の濾過、下水道の汚水の濾過、工場等の廃水及び排水の濾過が例示される。濾過装置は、特に制限されないが、移動する濾材を備える濾過装置が好ましく、周回又は回転する濾材を備える濾過装置が特に好ましい。移動する濾材とは、濾材が装置に固定されておらず濾材が移動しながら処理物と接触して水と固形物に分離する構造であり、周回又は回転する濾材とは、例えば、2つ以上の駆動ローラにより構成された無限軌道を周回する濾布やバースクリーン、円筒形で回転しながら内面又は外面に処理物が投入されて濾過するドラムスクリーンなどの濾材が例示される。
【0032】
[実施態様1]
図1(a)及び(b)は、本発明の第1実施態様である濾材の診断装置1の基本構成を示す概略図であり、(a)は横から見た側面図、(b)は(a)におけるA-A線断面図である。各図に示すように濾材の診断装置1がベルト濃縮型脱水機100に組み込まれている。ベルト濃縮型脱水機100は両端が連結された輪状の濾布(濾材)101が2つの駆動ローラ102により構成された無限軌道を周回している。濾布101の表面に処理物(凝集汚泥)が投入され、移動しながら徐々に水と固形物に分離される。
【0033】
濾材の診断装置1は、濾材101の表面に光線を照射するための照射部11と、濾材101を透過した透過光を検出するための検出部12とを備えている。照射部11及び検出部12の数は1つ又は2つ以上の複数であり、互いに対をなす同数でなくてもよい。照射方向は濾布101が処理物と接触する表側からでも、その逆の裏側からでもよい。
【0034】
照射部11の光源としては、濾材を透過して検出できる光であれば限定されず、可視光、紫外線、赤外線、レーザなどが挙げられる。少ない光源で広い範囲を測定するには指向性の弱い可視光が、特定の部分をスポット的に測定するためには指向性の強いレーザが好ましい。検出部12には、照射部11が有する光源に対応してその波長の光を効率的に検出できる素子が用いられ、CMOS、CCDなど半導体素子、それらとレンズを組み合わせた画像センサなどが挙げられる。
【0035】
設置する位置は、濾材の表面に光を照射でき濾材を透過した透過光を検出できる位置であれば限定されない。濾過後の固形物が濾材表面に付着していると目詰まり状態が正確に検出できないため、濾材がなるべく清浄となる位置が好ましく、濾過装置が洗浄装置を備えている場合にはその後段(移動する濾材の下流側)が好ましい。また、処理物の飛散や落下で汚されない位置が好ましく、必要に応じて防汚用のカバーを設けてもよい。
【0036】
照射部11及び検出部12の数や設置する位置は、濾材の大きさ、濾過装置の構造等に応じて適宜設定される。本実施態様では、濾布101の周回経路上に設置された洗浄装置103の直後に、各3つの照射部11及び検出部12が短手方向に等間隔に設置され、濾布101の裏側から可視光を照射しCMOS画像センサで検出している。
【0037】
照射部11及び検出部12には、電力を供給するための電源、検出した信号を増幅するためのアンプなどを含む制御部13が接続されている。この制御部13には、検出した透過光の光量を表示するための液晶モニタやLED等からなる出力部14が接続されている。制御部13とベルト濃縮型脱水機100の制御部とを連結して両機器を連動させてもよい。これらの制御部13及び出力部14には、一般的な測定機器に用いられる電子回路及び部品が用いられる。
【0038】
濾材の目詰まりの程度は濾材の開口率から判断することができ、濾材の開口率は濾材に入射した光量と出射した光量との割合である透過率として検出することができる。
【0039】
照射部11から濾布101の表面に照射され、濾布101を透過して検出部12に検出された透過光の光量は、照射部11から照射された光量が一定であれば、濾布101の物理的な目詰まりが多いほど減少する。管理者は過去の記録や経験に基づき、出力部14に表示された透過光の光量から濾布101の目詰まり状態を診断して、濾布101を洗浄するか交換するかを適切に判断することができる。
【0040】
[実施態様2]
図2は本発明の第2実施態様である濾材の診断装置2の基本構成を示す概略図である。
図2に示すように濾材の診断装置2はベルトプレス型脱水機200に組み込まれており、ベルトプレス型脱水機200は汚水処理プラント300の汚泥脱水プロセスを構成している。なお、一部の構成を省略して図示している。
【0041】
ベルトプレス型脱水機200では、両端が連結された輪状の下濾布(濾材)201及び上濾布(濾材)202が複数の駆動ローラ102により構成された無限軌道を周回している。投入された凝集汚泥は下濾布201及び上濾布202の間に挟まれ移動しながら徐々に水と固形物に分離され、次いで圧搾ローラ203で圧搾され水と固形物に分離される。
【0042】
本実施態様では、下濾布201の周回経路上に設置された洗浄装置103の直後に、
図2では省略されているが各3つの照射部11及び検出部12が短手方向に等間隔に設置されており、下濾布201の裏側から可視光を照射しCMOS画像センサで検出している。照射部11及び検出部12には制御部13が接続され、制御部13には出力部14が接続されている。これら各部の構造構成、作用機能等は実施態様1と同様である。
【0043】
制御部13には演算部21が接続されている。演算部21は、検出部12により検出した光量に関する情報を演算するものであり、これにより、濾材の目詰まり状態を高度に診断することができる。例えば、周回又は回転する濾材に対して連続的に透過光を検出して得られた光量に関する情報と、濾材の長さと移動速度の情報から、濾材の同一位置における透過光の光量を算出することができる。これにより、同じ位置における透過光の光量の経時的変化を観察することが可能となり、濾材の目詰まり状態の変化を診断することができる。また、周回又は回転する濾材に対して連続的に透過光を検出して得られた光量に関する情報から、周回又は回転する濾材の進行方向における透過光の光量の違いから、進行方向における目詰まりの分布を診断することができる。
【0044】
演算部21には記録部22が接続されている。記録部22は、検出部12により検出した透過光の光量に関する情報を記録することができる。
【0045】
演算部21としては、PLC、SBC、汎用PC等の回路基板上に実装された中央処理装置(CPU)とその周辺回路が例示される。記憶部22としては、回路基板上に実装されたRAMやROMなど内部メモリ、外部に接続されるSDカードやUSBメモリ、磁気ディスクや半導体ディスクなど外部メモリが例示される。これらの演算部21及び記録部22には、一般的な測定機器に用いられる電子回路及び部品が用いられる。
【0046】
演算部21により、濾材の目詰まりの状態を診断することができる。濾材の目詰まり状態の診断とは、濾材の目詰まりに関する診断であれば特に制限されないが、例えば、所定の位置の濾材の目詰まりの程度を演算したり、濾材面の複数の位置における目詰まりの程度の分布を演算したり、また、過去の管理記録のデータから目詰まりの状態を予測し、洗浄(低圧洗浄、高圧洗浄、薬品洗浄など)や交換の時期を判断したりすることができる。
【0047】
本実施態様では、検出部11で検出された透過光の光量の実測値、記録部22に記録された過去の記録値及び経過時間から、演算部21において所定の位置における光量の変化量を算出することができ、所定の光量まで減じるまでの時間を予測することができる。例えば、過去の記録や経験から、濾材の低圧洗浄、高圧洗浄、薬品洗浄又は濾材交換が望ましい目詰まり状態を示す光量まで減じる時間を予測することができる。
【0048】
これにより、濾過装置の備える低圧洗浄装置を予め設定して最適なタイミングで低圧洗浄をすることができる。また、濾過装置を停止する必要がある高圧洗浄や薬品洗浄、装置を分解して行う必要のある濾材交換に備えて、予め資材の調達や人員の配置を行うことがでる。さらに、濾材の洗浄及び交換作業中の他のプロセスへの影響を抑えることができる。
【0049】
また、記録部22には所定の閾値などのデータ、例えば、低圧洗浄推奨値、高圧洗浄推奨値、薬品洗浄推奨値、濾材交換推奨値を閾値として予め入力して記録しておくことができる。これにより、検出部12で検出した透過光の光量がこれらの閾値を下回った場合には、出力部14から管理者に知らせることができる。例えば、モニタ画面上への警報の表示、管理者が所有する携帯端末への警報の送信等が挙げられる。なお、閾値による管理では、複数の閾値により監視することが好ましい。複数の閾値を設定することにより、複数種類の洗浄処理に対応する管理することができるため、高度な濾材の診断が可能となる。具体的には、洗浄や交換に関する適切な時期を把握することができるため、必要以上の洗浄作業や交換作業をすることがなく、維持管理のコストを削減することができる。
また、記録部22には、過去の管理記録などのデータを記録してもよい。過去の管理記録のデータを記録することにより、演算部における濾材の目詰まり状態の予測において、精度を高めることができる。
【0050】
さらに、濾材の診断装置2は照射部11及び検出部12を各3つ備えており、下濾材201の中央部及び両端部の透過光を検出して目詰まり状態を診断できる。記録部22に下濾材201の全長及び横幅(寸法)、下濾材201の移動速度(周回速度)を記録しておくことで、下濾材201における目詰まり箇所の分布を二次元的に記録して診断することができる。なお、本実施態様では、照射部11及び検出部12を複数備えているが、1つの照射部及び検出部で広範囲の濾材の透過光を検出してもよい。
【0051】
濾過装置では、処理物の投与経路のノズル形状や搬送経路の搬送面の微妙な寸法や傾きの違いにより、装置毎の固有のクセがあり、濾布が均一に目詰まりするのではなくバラツキ、幅方向(短軸方向)及び長さ方向(縦軸方向)に目詰まりが起こりやすい箇所や起こりにくい箇所が生じることが多い。
【0052】
目詰まり箇所の分布を二次元的に診断することにより、例えば、上記各推奨値を、最も目詰まりが起こりやすい箇所を基準にして設定することで、濾過性能の低下を最小に抑えることができる。一方、最も目詰まりが起こりにくい箇所を基準にして設定することで、洗浄や交換までの時間を最大に延ばすことができる。
【0053】
次に、濾材の診断装置2の動作順序について
図3~
図6に基づいて説明する。合わせて、ベルトプレス型脱水機200の動作順序及び汚水処理プラント300の管理者の判断手順を示す。
図3及び
図4は、診断装置2の動作順序の一例を示す第1フローチャートの前段及び後段である。
【0054】
制御部13、照射部11及び検出部12を起動すると(S1)、ベルトプレス型脱水機200の下濾布201が周回しているかを判断する(S2)。当該判断は、検出した透過光の光量変化から判断しても、診断装置2と脱水機200とを連動させその運転信号から判断してもよい。
【0055】
下濾布201が周回していれば、それを透過した透過光を検出しその光量を記録部22に記録する(S3)。記録部22には予め閾値として低圧洗浄推奨値が記録されており、検出した透過光の光量がこの閾値を下回った場合には(S4)、低圧洗浄推奨時期が到来したことを出力部14に表示し、管理者に通知する(S5)。
【0056】
汚水処理プラント300の管理者は、その通知を確認した後、最適なタイミングで下濾布201の低圧洗浄装置を稼働させて低圧洗浄を実施する。診断装置2と脱水機200とを連動させて、脱水機200側に低圧洗浄推奨時期到来を表示してもよく、脱水機200が備える低圧洗浄装置を自動的に稼働させて洗浄してもよい。
【0057】
引き続き下濾布201を透過した透過光が検出されその光量が記録部22に記録される(S6)。低圧洗浄後の下濾布201の目詰まり状態によりその後の判断は異なる(S7)。濾布が新しく目詰まりが大きく改善してその透過光の光量が低圧洗浄推奨値以上となった場合には、S3に戻り一連の動作を繰り返す。濾布が古く目詰まりが大きく改善せずにその透過光の光量が低圧洗浄推奨値未満であった場合には、S5に戻り一連の手順を繰り返す。
【0058】
また、記録部22には予め閾値として高圧洗浄推奨値が記録されており、検出した透過光の光量がこの閾値を下回った場合には(S7)、高圧洗浄推奨時期が到来したことを出力部14に表示し、管理者に通知する(S8)。脱水機200側に高圧洗浄推奨時期到来を表示してもよい。
【0059】
汚水プラント300の管理者は、その通知を確認した後、下濾布201の高圧洗浄の準備を整え、ベルトプレス型脱水機200を一旦停止して、最適なタイミングで高圧洗浄を実施する。高圧洗浄終了後に脱水機200の運転が再開される。下濾布201が周回しているかを判断し(S9)、引き続き下濾布201を透過した透過光が検出されその光量が記録部22に記録される(S10)。
【0060】
高圧洗浄後の濾布201の目詰まり状態によりその後の判断は異なり(S11)、濾布が比較的新しく目詰まりが大きく改善してその透過光の光量が低圧洗浄推奨値以上となった場合には、S3に戻り一連の動作を繰り返す。濾布が比較的古く目詰まりがやや改善してその透過光の光量が低圧洗浄推奨値未満であるが高圧洗浄推奨値以上の場合には、S5に戻り一連の動作を繰り返す。
【0061】
さらに、記録部22には予め閾値として濾布交換推奨値が記録されており、検出した透過光の光量がこの閾値を下回った場合には(S11)、濾布交換推奨時期が到来したことを出力部14に表示し、管理者に通知する(S12)。脱水機200側に濾布交換推奨時期到来を表示してもよい。
【0062】
汚水プラント300の管理者は、その通知を確認した後、下濾材201の交換の準備を整え、ベルトプレス型脱水機200を停止して、最適なタイミングで濾布交換を実施する。下濾布201が周回しているかを判断し(S13)、脱水機200が停止して濾材の交換が行われた場合には、制御部13、照射部11及び検出部12が停止して(S14)、濾布1枚に対する目詰まり状態の診断1サイクルが終了する。
【0063】
図5及び
図6は、診断装置2の動作順序の一例を示す第2フローチャートの前段及び後段である。ここでは、記録部22に予め記録された閾値と、濾材の所定の位置における光量の経時的な変化量から、各閾値に到達するまでの時間を予測して、通知する動作が追加されている。その他の動作は上記第1フローチャートと同様である。
【0064】
検出部11で検出した透過光の光量に関する情報、記録部22に記録された過去の記録値及び経過時間から、濾材の所定の位置における光量の変化量を演算部21で算出する(S15)。記録部22には予め閾値として低圧洗浄推奨値が記録されており、算出した所定の位置における光量の変化量から低圧洗浄推奨値に到達するまでの予測時間を演算部21で算出して出力部14に表示する(S16)。脱水機200側に低圧洗浄推奨予測時期を表示してもよい。
【0065】
また、記録部22には予め閾値として薬品洗浄推奨値及び濾布交換推奨値が記録されており、同様に所定の位置における光量の変化量を演算部21で算出し(S17及び19)、薬品洗浄推奨値及び濾布交換推奨値に到達するまでの予測時間を演算部21で算出して出力部14に表示する(S18及び20)。脱水機200側に薬品洗浄推奨及び濾材交換推奨予測時期を表示してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の濾材の診断装置又は診断方法は、水処理用の濾過装置の濾材の状態を診断する診断装置又は診断方法として利用される。水処理用の濾過装置としては、例えば、ベルト濃縮型、ベルトプレス型、回転式ドラムスクリーン型、又は掻き上げ式バースクリーン型の濾過装置などが用いられており、本発明の濾材の診断装置又は診断方法はこれらの濾過装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1…濾材の診断装置、11…照射部、12…検出部、13…制御部、14…出力部。
2…濾材の診断装置、21…演算部、22…記録部。
100…ベルト濃縮型脱水機、101…濾布(濾材)、102…駆動ローラ、103…洗浄装置。
200…ベルトプレス型脱水機、201…下濾布(濾材)、202…上濾布(濾材)、203…圧搾ローラ。
300…汚水処理プラント。