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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092892
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】人感装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/56 20060101AFI20240701BHJP
   G01V 8/12 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G01S13/56
G01V8/12 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013154
(22)【出願日】2023-01-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2022208101
(32)【優先日】2022-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】515102828
【氏名又は名称】株式会社D.O.N
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】家崎 貴士
【テーマコード(参考)】
2G105
5J070
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB11
2G105BB15
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE01
2G105HH01
5J070AB24
5J070AD01
5J070AE09
5J070AF01
5J070AK01
(57)【要約】
【課題】複数の部屋を検知対象とし、使用者の存否や生死を容易に検出可能な人感装置を提供することを目的とする。
【解決手段】上記課題を解決する本願発明は、電磁波を放出する放出部4と、電磁波を受信する受信部5と、を備え、生体の存否を検出する人感装置Xであって、人感装置Xは、放出部4を支持する支持部3を有し、支持部3は、放出部4を回動可能に取付ける回動部を含む人感装置Xである。また、好ましくは、放出部4は、ミリ波を放出する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を放出する放出部と、前記電磁波を受信する受信部と、を備え、生体の存否を検出する人感装置であって、
前記放出部を支持する支持部を有し、
前記支持部は、前記放出部を回動可能に取付ける回動部を含む人感装置。
【請求項2】
前記放出部は、ミリ波を放出する、
請求項1に記載の人感装置。
【請求項3】
前記回動部は、二以上の軸関節を有する、
請求項1に記載の人感装置。
【請求項4】
前記人感装置は、前記回動部の回動を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記回動部が一定周期で所定の動作を繰り返す制御パターンを有する、
請求項1に記載の人感装置。
【請求項5】
前記人感装置は、前記支持部を安定した状態で保持する基礎部を有し、
前記基礎部は、移動が可能な移動手段を有する、
請求項1に記載の人感装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一台で複数の部屋を測定し、人の存否や生死を検出する人感装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化が進む社会においては、生産年齢人口の減少も問題であり、それに伴い高齢者の世話を行う介護職員の人手不足が深刻化している。近年は、家族と離れて暮らす高齢者の見守りサービスなども広く展開されているが、それでも対応できない部分が存在し、孤独死も問題となっている。このような問題に対して、見守り対象者のプライバシーを侵害せずに、その存否、さらには異常を検知できるセンサの開発がなされてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-129035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、赤外線センサを用いて、測定空間の温度に関わらず、人の存否を検知する検知装置が開示されている。しかしながら、該発明では、1つの限られた空間しか検知対象にできなかった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑み、複数の部屋を検出対象とし、検出対象者の存否や生死を容易に検出可能な人感装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本願発明は、電磁波を放出する放出部と、該電磁波を受信する受信部と、を備え、生体の存否を検出する人感装置であって、該人感装置は、該放出部を支持する支持部を有し、該支持部は、該放出部を回動可能に取付ける回動部を含む人感装置である。
このような構成によって、複数の部屋を検出対象とし、検出対象者の存否や生死を容易に検出することができる。
【0007】
本発明の好ましい形態では、該放出部は、ミリ波を放出する。
このような構成によって、壁や天井の透過性が高まり、複数の部屋における測定をより確実にできるようになる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、該回動部は、二以上の軸関節を有する。
このような構成によって、放出部をあらゆる方向に向け、電磁波を放出可能な範囲を広くとることができる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、該人感装置は、該回動部の回動を制御する制御部を有し、該制御部は、該回動部が一定周期で所定の動作を繰り返す制御パターンを有する。
このような構成によって、部品点数やシステム容量を増やさずに放出部を制御し、効率的に周囲を測定することができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、該人感装置は、該支持部を安定した状態で保持する基礎部を有し、該基礎部は、移動が可能な移動手段を有する。
このような構成によって、より広範囲を検知対象とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
上記課題を解決する本発明は、複数の部屋を検知対象とし、使用者の存否や生死を容易に検出可能な人感装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一の実施形態に係る、人感装置の模式図である。
図2】本発明の第一の実施形態に係る、人感装置の模式図である。
図3】本発明の第一の実施形態に係る、人感装置及び検出対象者の模式図である。
図4】本発明の第一の実施形態に係る、人感装置のシステム構成を示すブロック図である。
図5】本発明の実施例に係る、人感装置の模式図である。
図6】本発明の実施例に係る、人感装置の模式図である。
図7】本発明の実施例に係る、人感装置の制御モデルである。
図8】本発明の実施例に係る、人感装置の動力伝達機構を示す模式図である。
図9】本発明の第二の実施形態に係る、人感装置の模式図である。
図10】本発明の第三の実施形態に係る、人感装置の模式図である。
図11】本発明の第四の実施形態に係る、人感装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて、本発明の各実施形態に係る人感装置について説明する。説明は、実施形態の構成、実施の方法、他の実施例の順に詳述する。
なお、以下に示す各実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の各実施形態に限定するものではない。
【0014】
≪第一の実施形態≫
人感装置Xは、図1に示すように、天井1に取付けられ、天井1に固定または可動に取付けられる基礎部2と、基礎部2に接続され、回動部を有する支持部3と、支持部3によって支持され、電磁波を放出する放出部4と、放出部4から放出された電磁波を受取る受信部5と、を備える。また、図3に示すように、放出された電磁波が検出対象者7に当たって反射することで、受信部5で検出対象者7の位置や動作を検出する。以下、人感装置Xにおいて、天井1に近い側を根元側、天井1から遠い側を末端側と呼称する。
【0015】
天井1は、一般家屋などの天井である。人感装置Xは、天井1の裏側に上階の床がある場所に取付けられる形態が好ましい。
【0016】
人感装置Xは、図2に示すように、壁6(特に検出対象者7の頭よりも高い位置)に取付けられてもよい。この場合は、天井1が壁6に変わるのみで、他の構成は変わらない。このような構成によって、電磁波の放出方向が基礎部2を向くことなく、上階の部屋を測定範囲に加えることができる。
【0017】
基礎部2は、人感装置Xを天井1又は壁6に取付けるための薄板形状の部材である。天井1に当接する面の形状は円形、楕円形、正三角形、長方形、平行四辺形、正五角形以上の正多角形なども考えられるが、特に限定されない。また、円錐台形や四角錐台形など、基礎部2を取り付けた面から遠ざかるにつれ窄まるような形状でもよい。また、基礎部2は、孔部(図示せず)を設け、アンカーボルトや釘などを用いて天井1又は壁6に固定される。
【0018】
基礎部2は、内部に駆動部21を有する。駆動部21は電動モータなどのアクチュエータを用い、放出部4が電磁波を放出する方向を変えるための駆動力を提供する。但し、必要に応じて、駆動部21は基礎部2の外部、特に支持部3周りに追加される構成であってもよい。
【0019】
支持部3は、基礎部2に接続され、基礎部2から離れた末端側で放出部4を支持する。また、支持部3は、放出部4が、少なくとも取付軸方向に回動するための回動部を有する。回動部は、基礎部2から近い順に第一回動部31、第二回動部32と設けられ、必要に応じて第三回動部33まで設けられる。各回動部の構成は、球関節や蝶番関節(軸関節)などを用い、それらを組み合わせることで、放出部4があらゆる方向を向くことができるように構成される。例えば、第一回動部31と第二回動部32とが両方とも蝶番関節で、互いの回動軸が直交する構成や、第一回動部31が球関節で、第二回動部32が蝶番関節である構成などが挙げられる。但し、他の形態にしてもよい。
【0020】
第一回動部31は、根元側を基礎部2に設けられ鉛直下向きに開けられる穴とし、そこに円柱状の末端側部材が穴と同心軸に挿入され、円柱が水平方向に回動可能に接続された軸関節である。
【0021】
第二回動部32は、第一回動部31の末端側に固定される(互いの位置関係や向きが変化しないなら固定接続でもよい)根元側と、第三回動部33に接続する末端側と、が蝶番関節で回動可能に接続される回動部である。実際の形状においては、根元側が第一回動部31と一体(互いの位置関係や向きが変化しないなら固定接続でもよい)の円盤状であり、末端側は根元側の円盤を両側の底面から挟むようにした2枚の円盤(又は半球)で根元側を向く面が開口するようにくり抜かれた殻状(ペトリ皿のような形状)の部材であり、3枚の円盤の円形面が同心を保ちながら、末端側の2枚の円盤が互いに同期して根元側の円盤に対し回動する回動部としてもよい。このような構成によって、回動軸に加わる負荷を軽減できるほか、末端側にたわみなどの変位を生じにくくさせることができる。
【0022】
第三回動部33は、第二回動部32の末端側に固定される(互いの位置関係や向きが変化しないなら固定接続でもよい)根元側と、放出部4を固定接続する末端側と、が蝶番関節で回動可能に接続される回動部である。また、関節の回動軸は、第二回動部32による回動の中心軸と平行である。このような構成によって、第一回動部31と第二回動部32だけでは放出部4が基礎部2や支持部3の根元側に干渉するために発生する死角を回避し、人感装置Xを中心とした略球状の空間の全域に電磁波を放出することができる。
【0023】
第一回動部31の回動軸は、小型の電動モータで360度回動可能に駆動され、第二回動部32及び第三回動部33は、サーボ制御される電動モータで180度程度回動可能に駆動される。但し、放出面41の向きが全方向に自在に変えられるならば、第二回動部32及び第三回動部33の可動範囲は90度~180度の範囲で任意に設定して構成されてもよい。また、電動モータの制御は、位置制御であってもよい。このような構成によって、放出部4の回動における向きの誤差をより抑制することができる。
【0024】
放出部4は、所定の空間内において人の存否を検知するための測定波(電磁波)を放出する装置である。この測定波の周波数帯域は特に限定されないが、本実施形態においてはミリ波(約30GHz~約300GHz)であることが好ましい。このような構成によって、図3に示すように、天井1や壁6、家具などの障害物があっても、ミリ波の透過性でそれらを通り抜けられるため、1台の人感装置Xで、階層に関わらず家屋の複数の部屋において人の存否を検知する。さらにそれによって、人感装置Xの設置場所の自由度を高めることができる。
【0025】
放出部4から放出される電磁波がミリ波である場合、木造の壁や天井のほかに布団などの厚い布を透過するため、就寝時や炬燵の中などでも容易に検出対象者7の測定が行えるほか、台所や風呂などの熱源がある場所でも、より正確な測定を行うことができる。一方で、ミリ波は直進性が強く、狭い範囲に直線的に放出することで検出対象者7の位置を特定しやすくなるため、一度にミリ波を放出する範囲を狭くし(放出波中心軸Aの近傍に限定し)、支持部3に設けられる各回動部によって放出方向を変える構成とすることで、人感装置Xを中心とした略球状の空間を測定範囲とすることができる。
【0026】
放出面41は、放出部4において測定波が放出される面部である。放出部4は、放出波中心軸Aの方向に測定波を放出する。好ましくは、放出面41が放出波中心軸Aに垂直な平面となる構成である。
【0027】
支持部3は、各回動部がそれぞれ独立して回動することによって、放出面41をあらゆる方向に向ける。このような構成によって、直進性の高いミリ波であっても、その放出方向を自在に変えることができ、人感装置Xを中心とした全ての方向を測定対象空間とすることができる。さらに好ましくは、放出波中心軸Aが、放出部4に接続される回動部の回動中心を通る構成である。このような構成によって、回動部を元にした制御に余分な補正を加える必要がなく、人感装置Xの制御システムを単純化することができる。
【0028】
支持部3に設けられる各回動部は、それぞれ独立したアクチュエータ(電動モータなどを含む)で駆動される。但し、ウォームギヤ、遊星歯車、又は4節リンク機構(てこ-クランク型)を用いるなど、動力伝達機構によっては、各回動部の回動に従属関係が生じる構成であってもよい。このような構成によって、1つの動力装置から全ての回動部を動かすことができる。
【0029】
受信部5は、基礎部2に固定されていてもよく、支持部3に設けられていてもよい。また、放出面41の位置や方向によって、受信部5が塞がれ、正常に電磁波を受取れなくなることを防ぐため、受信部5は複数箇所に設けられ、そのうちの一箇所で受信した電磁波を活用する構成が好ましい。
【0030】
受信部5は、人感装置Xの本体から離れた位置に設置されてもよい。この場合、受信部5は、人感装置Xが取付けられる天井1又は壁6と平行な平面上に設けられる構成が好ましい。このような構成によって、検出対象者7に当たって反射した電磁波が、人感装置Xが設置されていない方向に進んだ場合でも、電磁波を受取ることができる。
【0031】
人感装置Xは、制御部8を有し、制御部8は、回動制御部81と、記憶部82と、通信部83と、を設ける。また、制御部8は、放出部4から放出される電磁波の制御を行う。
【0032】
回動制御部81は、放出面41が任意の方向を向くことが可能となるように各回動部を制御する機能を有する。このような構成によって、電磁波の到達範囲が、人感装置Xを中心とする略球状の空間となるように制御する。
【0033】
記憶部82は、各回動部の制御パターンを記憶する。回動制御部81は、記憶部82に記憶される制御パターンを読み出し活用することで、放出面41の方向の変化が一定周期で同一の動作パターンを繰り返すように、各回動部を制御することが可能となる。このような構成によって、人感装置Xの測定範囲に複数の部屋がある場合に、一定の時間間隔で各部屋の人の存否を検知することができる。
【0034】
通信部83は、受信部5で受取った電磁波の測定データを情報処理サーバなどの処理部84に送信する。通信部83は、電磁波のデータと併せて、放出面41の方向(電磁波の放出方向、放出波中心軸A方向でもよい)を処理部84に送信する。また、処理部84は、通信部83より送信されたデータから検出対象者7の位置と状態を算出する。
【0035】
処理部84は、人感装置Xにより得られた電磁波の測定データ(波形)及び電磁波の放出方向(以下、検知データと呼称する)を元に検出対象者7の位置の変化又は体動を割り出し(可能なら内臓の動きも割り出す)、異常がないと判断する場合は、データベースなどに蓄積する。検出対象者7の位置や体動の変化が一定時間以上ないなど、異常があると判断する場合は、使用者(検出対象者7など)が予め設定した連絡対象者(親族など、検出対象者7の見守りをする人や、警備会社など)に情報を送信する。このような構成によって、人感装置Xによって検出した異常を関係者に迅速に伝え、検出対象者7に必要な処置を早く提供することができる。処理部84は、人感装置Xの外部にあることが想定されるが、人感装置Xの内部に設けられてもよい。
【0036】
記憶部82に記憶される制御パターンの一例として、電磁波の放出方向が鉛直下向きの状態から開始し、その後放出部4が水平方向に振れ回りながら俯角を小さくしていき、電磁波の放出方向が水平を超えたら、その仰角が大きくなりながら放出部4が振れ回り、基礎部2又は支持部3に干渉する寸前の仰角に達した後、逆の順番で電磁波の放出方向の角度を下げながら放出部4が振れ回り、鉛直下向きに戻るまでを一つの周期とするパターンが挙げられる。水平方向に振れ回る回動速度と、俯角及び仰角の変化の角速度は、互いに独立に決定できる。好ましくは、一周期の時間は5分以内、より好ましくは3分以内、さらに好ましくは1分以内とする構成である。
【0037】
本実施形態は、回動制御部81において、図7に示すような制御モデルを一例として扱い、放出部4の位置及び向きが制御される。
【0038】
人感装置Xは、以下の構成を備えていてもよい。但し、以下に示す構成はあくまで一例であり、実際の形態に追加される構成は、それぞれ独立かつ自由に決定される。
【0039】
人感装置Xは、図5、6に示すように、基礎部2から放出部4までの全体を覆う外カバー9を有してもよい。外カバー9は、人感装置Xが設置される天井1又は壁6から張り出すドーム型など、曲面のみの形状をしており、プラスチックなど、電磁波(特にミリ波)を透過する材料で構成される。好ましくは、外カバー9が塗装や曇り加工などで半透明であり、内部の支持部3や放出部4が見えにくくなる構成が好ましい。このような構成によって、使用者(検出対象者7)から放出部4の動きが見えにくくなり、視覚的な不快感を低減する、又は意匠性を高めることができる。また、好ましくは、外カバー9まで含めた人感装置Xの全体の大きさが、縦横高さ共に20cm以下、さらに好ましくは縦横高さ共に15cm以下となる構成である。
【0040】
人感装置Xは、天井1や壁6に固定する構成の代わりに、持ち運びが可能な構成とする。この構成では、放出部4の運動に関わらず人感装置Xを安定した状態に保持できるように、基礎部2をスタンドとして用い、棚やテーブルに置いて使用する。また、グリッパなどの取付具を備え、スマートスピーカーなどの既存のポータブルデバイスに取付けて、一緒に持ち運べる構成としてもよい。
【0041】
人感装置Xは、天井1や壁6に固定する構成の代わりに、室内を移動可能な構成とする。この構成では、基礎部2に車輪やガイドなどの移動手段を設け、床を走行可能な例、又はカーテンレールや鴨居を伝って室内を移動可能とする例が挙げられる。また、グリッパや吸盤などの取付具を備え、掃除機ロボットに人感装置Xを取付け可能な構成としてもよい。
【0042】
人感装置Xは、支持部3及び放出部4の位置、姿勢角による装置全体の重心移動を低減する可動バランスウェイトを有してもよい。放出部4が振れ回る形態の場合、重心位置が移動して支持部3、特に第一回動部31の近辺に動的な負荷がかかるため、第一回動部31の根元側を通る鉛直方向の中心軸について放出部4と対称な位置に可動バランスウェイトが位置するように、回動制御部81で可動バランスウェイトを制御する。
【0043】
人感装置Xは、稼働の停止、再開を切替え可能な切替部を有してもよい。この切替部は、基礎部2や支持部3に設けられてもよいが、使用者(特に連絡対象者)が遠隔操作する構成とするのが好ましい。このような構成によって、検出対象者7が、旅行など正当な長期の外出をする場合、人感装置Xが長時間人を検知しないことにより処理部84が誤って異常状態と判断する事態を防ぐことができる。
【0044】
人感装置Xは、スピーカやアラームなどの音声発信手段を有してもよい。処理部84が異常を判断したときに、人感装置Xがその通知を受け取る受信部を有し、通知を受けて音声発信手段が検出対象者7にスピーカからの音声で呼びかける、又はアラームを鳴らして周囲(集合住宅の管理人などでもよい)に異常を知らせる。
【0045】
記憶部82は、人感装置Xが設置される建物における家具などの位置を記憶する機能を有してもよい。食器棚や箪笥など、大型で動かすことが殆どない家具の配置によっては、人が入り得ない空間が生じる。このため、家具の配置を記憶し、放出部4が必要のない空間に電磁波を放出することなく、効率的に人感装置Xを稼働させることができる。
【0046】
制御部8又は処理部84は、学習機能を有してもよい。家屋の中で人感装置Xを使用するとき、ダイニングテーブル周りやテレビの前など、検出対象者7が長時間動かない場所が想定される。このため、制御部8又は処理部84は、検出対象者7の動作のパターンを(家具の配置と組み合わせて)学習することで、安易に異常と判断しないための学習機能を有し、処理部84において検知データと照合可能な構成とする。また、周知のビデオカメラと、電磁波の波形データと、を照合して検出対象者7の手足の動きなどを学習可能な構成としてもよい。
【0047】
人感装置Xは、取付具を用いて災害現場で使用される捜索ロボットに取付可能な構成としてもよい。このような構成によって、崩落した建物の中や火事の火元近くの部屋での人の存否、或いはその生死を検知し、判定することができる。また、災害現場は使用条件が悪い場合があるため、基礎部2や支持部3にダンパなどの制振機構を有する構成が好ましい。
【0048】
人感装置Xは、床下に設置される構成としてもよい。この場合は、図1に示す構成を上下反転させ、人感装置Xを(特に1階の)床下に埋め込むなどして、床下から上階の方向に電磁波を放出するように設置する。このような構成によって、放出部4から放出される電磁波がミリ波の場合、透過性の高さを利用して、床下から検出対象者7の存否を検知できるほか、ミリ波の到達範囲を活かして、2階分上の部屋を測定対象に含むことができる。
【0049】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係る実施例を示す。但し、以下に示すのはあくまで一例であり、説明の形態に限定されるものではない。
【0050】
≪実施例≫
支持部3の構成は、図8に示すような動力伝達機構を有してもよい。但し、図8の構成はあくまで一例であり、本実施例に限定するものではない。
【0051】
基礎部2は、放出部4を回動可能にする駆動部21を有し、駆動部21は、モータ211、第一駆動ギヤ212、第二駆動ギヤ213を有する。
【0052】
駆動部21は、モータ211で発生させた回動を、第一駆動ギヤ212及び第二駆動ギヤ213から第一回動部31及び第一伝達部34(後述)に伝達する。
【0053】
支持部3は、第一回動部31、第二回動部32、第三回動部33、第一伝達部34、第二伝達部35、第三伝達部36、第四伝達部37を有する。各回動部及び伝達部が一連の動力伝達機構をなす構成とすることで、1基のモータ211によって放出部4を三次元的に回動させることができる。
【0054】
第一回動部31は、根元側に第一クラウンギヤ311を設け、末端側でケーシング312を設ける中空の回動軸である。ケーシング312は、後述する第一伝達部34から第三回動部33までの動力伝達機構を支持し、その全体を覆う椀型又は殻状の部材である。
【0055】
第一伝達部34は、根元側に第二クラウンギヤ341を設け、末端側に第一ギヤ342を設ける回動軸である。モータ211から第二駆動ギヤ213及び第二クラウンギヤ341を介して伝達された回動を、第一ギヤ342を介して、第二伝達部35に伝達する。
【0056】
第一駆動ギヤ212と第一クラウンギヤ311の係合と、第二駆動ギヤ213と第二クラウンギヤ341の係合はギヤ比が異なり、伝達される回動の速さは異なる。このような構成によって、放出部4がケーシング312ごと水平方向に振れ回りながら、第二クラウンギヤ341以降の動力伝達機構を動作させることができる。
【0057】
第二伝達部35は、単一の回動軸の根元側に第二ギヤ351を有し、末端側にウォームギヤ352を有する。第一ギヤ342の回動が第二ギヤ351に伝わり、ウォームギヤ352から第三伝達部36に回動が伝達される。
【0058】
第三伝達部36は、ウォームギヤ352と噛み合う第三ギヤ361と、四節リンク機構を形成する第一リンク362、第二リンク363、第三リンク364を有する。第二リンク363の両端は第一リンク362と、第三リンク364に回動可能に接続され、第一リンク362と、第三リンク364と、の第二リンク363に接続されない方の端部は同一のボス部に回動可能に固定され、固定節を形成する。このとき、第三リンク364の固定節側の固定位置が第二回動部32となる。また、第三ギヤ361と、第一リンク362とは固定接続されており、第三ギヤ361の回動に合わせて第一リンク362が回動する。その回動が第二リンク363、第三リンク364と伝達され、第三リンク364は円の一部分を描くように揺動する。さらに第三リンク364の揺動する端部に第三回動部33又は放出部4を接続する。
【0059】
第四伝達部37は、第三リンク364の揺動の中心に取付けられた第四ギヤ371と、第五ギヤ372と、チェーン又は巻き掛けベルト373と、を有する。第三リンク364の揺動の中心に回動不可能に固定される第四ギヤ371から、チェーン又は巻き掛けベルト373を介して、第五ギヤ372に回動が伝達され、放出部4を回動可能とする構成である。このとき、第五ギヤ372の回動軸は、第三リンク364の延長線上にあり、かつ第三回動部33となる。また、第四ギヤ371の歯数は、第五ギヤ372の歯数よりも多い。このような構成によって、第三リンク364の揺動角よりも放出部4の揺動角が大きくなり、より広い角度に電磁波を放出することができる。好ましくは、第五ギヤ372と第四ギヤ371との増速比が1.25以上3.0以下、より好ましくは同増速比が1.5以上2.5以下の構成である。
【0060】
以下、図面を用いて、本発明の実施の方法について詳述する。また、以下に示す実施の方法は一例であり、実施の方法はこれに限られず、順番は前後してもよい。
【0061】
使用者は、まず人感装置Xを室内に設置するとき、天井1又は壁6から設置場所を決定する。天井1に取付ける場合は、建物の中央寄り且つ壁6に近い位置に設置することが好ましい。このような方法によって、測定に用いられる電磁波がミリ波である場合、壁6や天井1を透過するため、1台の人感装置で複数の部屋を測定範囲に入れることができる。また、人感装置Xを壁6に取付ける場合は、天井に近い高さに設置することが好ましい。検出対象者7が高齢者や、何らかの身体的事情を抱える場合、天井に近い高さまで上がって行動するケースは考えにくいため、人感装置Xが、放出部4と支持部3とが干渉する形態であっても、十分な測定範囲を確保することができる。
【0062】
人感装置Xの設置に併せて、使用者は、検出対象者7に異常を発見した場合に連絡を受取る連絡対象者を決定し、登録する。その後、人感装置Xの稼働を開始する。
【0063】
使用者(検出対象者7)は、人感装置Xに触れることなく、通常の生活をしながら、人感装置Xにて居場所や動作を測定される。
【0064】
検出対象者7に、負傷や急病などの異常が発生した場合、通常とは異なる体動が検出される、又は一定時間以上体動が検出されないため、人感装置Xの検知データから、処理部84が異常と判断し、連絡対象者にその通知が送られる。連絡対象者は、通知を元に、検出対象者7に適切な対応を行う。
【0065】
検出対象者7が、長期間家に帰宅しない(徘徊の可能性がある)異常が発生した場合、人感装置Xは一定時間以上、検出対象者7を検知しないこととなるため、その検知データを元に、処理部84が異常と判断する。
【0066】
以下、図面を用いて本発明の第二の実施形態に係る人感装置について説明する。第一の実施形態と同様の構成は同じ符号を用いて説明を省略する。なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。
【0067】
≪第二の実施形態≫
図9に示すように、人感装置Xは、基礎部2の下に第一回動部31を含む支持部3を備え、第一回動部31の末端側に放出部4を備える。また、図9では、受信部5は、基礎部2に設けられる構成であるが、支持部3など、他の位置に設けられていてもよい。
【0068】
基礎部2は、天井1と当接する面と反対側から鉛直下向きに延びる円柱状の固定軸22を有する。
【0069】
支持部3は、第一回動部31を支持する回動部支持体38を有する。回動部支持体38は、固定軸22と固定接続され、固定軸22の末端から水平方向に張り出す平板状の部材である。
【0070】
第一回動部31は、固定軸22の水平方向周りに取り囲み、固定軸22の周りを回動可能な円環状の部材であり、回動部支持体38に当接し支持され、さらにその側面に放出部4を設ける。このような構成によって、放出面41が水平方向に回動し、電磁波を多くの方向へ放出することができる。また、第一回動部31は、鉛直下方向に向かって窄まる形などで、放出面41が斜め下方向を向いて、特に俯角30°~80°で設けられる構成とすることが好ましい。このような構成によって、放出面41が斜め下方向を向いて振れ回り、天井1に取付けられた人感装置Xからでも、床付近を測定対象とすることができる。
【0071】
基礎部2は、内部に駆動部21を有し、駆動部21は、モータ211と、モータ211に直結する第一駆動ギヤ212と、を設ける。また、第一回動部31は、内部に第一クラウンギヤ311を有し、第一クラウンギヤ311は、第一駆動ギヤ212の回動を受けて、鉛直方向を軸として回動する。また、第一クラウンギヤ311と、第一回動部31及び放出部4は固定接続されており、第一クラウンギヤ311の回動に合わせて第一回動部31及び放出部4が回動する。
【0072】
第一駆動ギヤ212と、第一クラウンギヤ311と、の間には、必要に応じて減速ギヤを設けてもよい。また、マイクロコンピュータ(以下、マイコンと呼称する)を設け、モータ211の回転数(rpm)を任意に制御可能な構成としてもよい。
【0073】
本実施形態では、モータ211の出力軸がそのまま第一回動部31として使用され、モータ211の出力軸に、放出波中心軸Aが該出力軸と平行にならないように角度をつけて固定接続される放出部4が、自転して電磁波の放出方向を変更する構成としてもよい。このような構成によって、より単純な機構で、小型軽量な人感装置Xを形成することができる。
【0074】
以下、図面を用いて本発明の第三の実施形態に係る人感装置について説明する。第一、第二の実施形態と同様の構成は同じ符号を用いて説明を省略する。なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。
【0075】
≪第三の実施形態≫
図10に示すように、人感装置Xは、放出部4を複数備え、各放出部4が回動する回動軸は互いに直交する、若しくは捻れの位置である。このような構成によって、放出波中心軸A及び第二放出波中心軸Bの方向に同時に電磁波を放出することが可能となり、単純な回動機構で多くの方向に電磁波を放出することができる。
【0076】
回動部支持体38は、その下部に第二回動部支持体381を有する。第二回動部支持体381は、回動部支持体38に固定接続され、基礎部2から遠ざかる方向に張り出す平板状の部材であり、2枚の平板が平行に並び、第二回動部32の回動軸を両端で水平に支持する。
【0077】
第二回動部32は、第二回動部支持体381に両端を支持される円形断面の回動軸であり、放出部4が軸方向と垂直に固定接続される。このような構成によって、放出部4が水平方向を軸に回動し、基礎部2を取り付けた天井1又は壁6の反対側も測定範囲に含めることができる。
【0078】
人感装置Xは、外カバー9を備える構成が好ましい。外カバー9は、プラスチックなど、電磁波(特にミリ波)を透過する材料で製造される半球殻又はドーム型の部材であり、支持部3及び放出部4を覆う。好ましくは、第二回動部支持体381に当接し、支持部3を基礎部2の方向へ押し当てるように支持する構成である。このような構成によって、固定軸22及び支持部3に加わる荷重を分散させ、人感装置Xの安定性を向上する。
【0079】
基礎部2は、内部に駆動部21を有し、駆動部21は、モータ211と、各回動部に動力を伝達するギヤ等を含む。但し、第二回動部32を駆動するモータ211を個別に設ける場合、そのモータ211は回動部支持体38の内部に設ける構成が好ましい。このような構成によって、動力伝達の経路を短縮でき、部品点数を削減することができる。また、マイコンによって、複数のモータ211を同時に制御可能な構成とすることが好ましい。このとき、モータ211が360度回転するのではなく、任意の回動範囲で揺動するように制御する構成としてもよい。このような構成によって、回動による配線の捻れを考慮する必要がなくなり、容易に人感装置Xの設置や保守を行うことができる。
【0080】
以下、図面を用いて本発明の第四の実施形態に係る人感装置について説明する。第一、第二、第三の実施形態と同様の構成は同じ符号を用いて説明を省略する。なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。
【0081】
≪第四の実施形態≫
人感装置Xは、図11に示すように、放出部4と受信部5と、を一体に備える構成である。モジュール化されたセンサユニットの場合、測定波を放出する放出部4と、反射した測定波を受信する受信部5と、は同一の基盤に並べて配置されることが多いため、このような構成によって、人感装置Xを容易に製造することができる。また、放出部4の回動と併せて受信部5が回動することで、測定波の受信を妨げる障害物がなくなるため、受信部5は1か所設ければよく、また人感装置Xの部品点数を削減することができる。
【符号の説明】
【0082】
X 人感装置
1 天井
2 基礎部
21 駆動部
211 モータ
212 第一駆動ギヤ
213 第二駆動ギヤ
22 固定軸
3 支持部
31 第一回動部
311 第一クラウンギヤ
312 ケーシング
32 第二回動部
33 第三回動部
34 第一伝達部
341 第二クラウンギヤ
342 第一ギヤ
35 第二伝達部
351 第二ギヤ
352 ウォームギヤ
36 第三伝達部
361 第三ギヤ
362 第一リンク
363 第二リンク
364 第三リンク
37 第四伝達部
371 第四ギヤ
372 第五ギヤ
373 チェーン又は巻き掛けベルト
38 回動部支持体
381 第二回動部支持体
4 放出部
41 放出面
5 受信部
6 壁
7 検出対象者
8 制御部
81 回動制御部
82 記憶部
83 通信部
84 処理部
9 外カバー
A 放出波中心軸
B 第二放出波中心軸


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2023-10-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を放出する放出部と、前記電磁波を受信する受信部と、前記支持部を安定した状態で保持する基礎部と、を備え、生体の存否を検出する人感装置であって、
前記放出部を支持する支持部を有し、
前記支持部は、前記放出部を回動可能に取付ける回動部を含み、
前記放出部は、ミリ波を放出し、
前記回動部は、前記放出部を前記基礎部が設置される平面に向けることが可能な、人感装置。
【請求項2】
前記回動部は、二以上の軸関節を有する、
請求項1に記載の人感装置。
【請求項3】
前記人感装置は、前記回動部の回動を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記回動部が一定周期で所定の動作を繰り返す制御パターンを有する、
請求項1に記載の人感装置。
【請求項4】
前記基礎部は、移動が可能な移動手段を有する、
請求項1に記載の人感装置。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を放出する放出部と、前記電磁波を受信する受信部と、前記放出部を支持する支持部と、前記支持部を安定した状態で保持する基礎部と、を備え、生体の存否を検出する人感装置であって
記支持部は、前記放出部を回動可能に取付ける回動部を含み、
前記放出部は、ミリ波を放出し、
前記回動部は、前記放出部を前記基礎部が設置される平面に向けることが可能な、人感装置。
【請求項2】
前記回動部は、二以上の軸関節を有する、
請求項1に記載の人感装置。
【請求項3】
前記人感装置は、前記回動部の回動を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記回動部が一定周期で所定の動作を繰り返す制御パターンを有する、
請求項1に記載の人感装置。
【請求項4】
前記基礎部は、移動が可能な移動手段を有する、
請求項1に記載の人感装置。