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特開2024-92894内接噛合遊星歯車装置及びロボット用関節装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092894
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】内接噛合遊星歯車装置及びロボット用関節装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20240701BHJP
   F16H 55/18 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
F16H1/32 A
F16H55/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048300
(22)【出願日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】202211678904.0
(32)【優先日】2022-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】512237419
【氏名又は名称】美的集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】MIDEA GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】B26-28F, Midea Headquarter Building, No.6 Midea Avenue, Beijiao, Shunde, Foshan, Guangdong 528311 China
(71)【出願人】
【識別番号】522256185
【氏名又は名称】広東▲極▼▲亞▼精机科技有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】517344192
【氏名又は名称】広東美的制冷設備有限公司
【氏名又は名称原語表記】GD MIDEA AIR-CONDITIONING EQUIPMENT CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Lingang Road,Beijiao,Shunde,Foshan,Guangdong,China
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅之
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ ▲達▼祺
(72)【発明者】
【氏名】王 剛
【テーマコード(参考)】
3J027
3J030
【Fターム(参考)】
3J027FA01
3J027FA37
3J027FB32
3J027GB03
3J027GC02
3J027GC24
3J027GE11
3J030AB03
3J030BB16
3J030CA10
(57)【要約】
【課題】バックラッシュの増大を抑制しやすい内接合遊星歯車装置及びロボット用関節装置を提供する。
【解決手段】内接噛合遊星歯車装置1Aは、内歯歯車2と、遊星歯車3と、を備える。内歯歯車2は、環状の歯車本体22と、複数の外ピン23と、を有する。複数の外ピン23は、歯車本体22の内周面に形成された複数の内周溝に自転可能な状態で保持され、内歯21を構成する。遊星歯車3は、内歯21に部分的に噛み合う外歯31を有する。内接噛合遊星歯車装置1Aは、遊星歯車3を揺動させることにより、遊星歯車3を内歯歯車2に対して相対的に回転させる。歯車本体22は、少なくとも複数の内周溝223が形成された部位に、弾性変形可能な弾性変形部24を有している。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の歯車本体と、前記歯車本体の内周面に形成された複数の内周溝に自転可能な状態で保持され内歯を構成する複数の外ピンと、を有する内歯歯車と、
前記内歯に部分的に噛み合う外歯を有する遊星歯車と、を備え、
前記遊星歯車を揺動させることにより、前記遊星歯車を前記内歯歯車に対して相対的に回転させ、
前記歯車本体は、少なくとも前記複数の内周溝が形成された部位に弾性変形可能な弾性変形部を有している、
内接噛合遊星歯車装置。
【請求項2】
前記弾性変形部は、前記歯車本体の外周面に周方向にわたって外周溝が形成されることで薄肉化された部位を含む、
請求項1に記載の内接噛合遊星歯車装置。
【請求項3】
前記複数の内周溝の各々の内径は、前記複数の外ピンの各々の外径よりも大きい、
請求項1又は2に記載の内接噛合遊星歯車装置。
【請求項4】
前記弾性変形部の変形量を検知する検知部を更に備える、
請求項1又は2に記載の内接噛合遊星歯車装置。
【請求項5】
環状の支持枠を更に備え、
前記歯車本体は、前記支持枠の内側において前記支持枠に固定され、
前記弾性変形部と前記支持枠との間には隙間が設けられる、
請求項1又は2に記載の内接噛合遊星歯車装置。
【請求項6】
前記歯車本体は、前記内歯の歯筋方向における前記弾性変形部から見て少なくとも一方側に、前記弾性変形部よりも高剛性の補強部を有する、
請求項1又は2に記載の内接噛合遊星歯車装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の内接噛合遊星歯車装置と、
前記歯車本体に固定される第1部材と、
前記内歯歯車に対する前記遊星歯車の相対的な回転に伴って、前記第1部材に対して相対的に回転する第2部材と、を備える、
ロボット用関節装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に内接噛合遊星歯車装置及びロボット用関節装置に関し、より詳細には、内歯を有する内歯歯車の内側に外歯を有する遊星歯車が配置される内接噛合遊星歯車装置及びロボット用関節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術として、振り分けタイプと称される偏心揺動型の内接噛合遊星歯車装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。関連技術に係る内接噛合遊星歯車装置では、内歯歯車の軸心からオフセットした位置に配置された複数(例えば3つ)のクランク軸を備え、クランク軸歯車によって各クランク軸を同期して駆動することにより、遊星歯車(外歯歯車)を揺動させながら内歯歯車に内接噛合させている。
【0003】
遊星歯車は、第1遊星歯車及び第2遊星歯車を含んでいる。第1遊星歯車及び第2遊星歯車の軸方向両側には、一対のキャリアが配置されている。各クランク軸は一対の円錐ころ軸受けを介して一対のキャリアに支持されている。入力歯車が回転すると、当該入力歯車と同時に噛合している3つのクランク軸歯車が同一の方向に同一の回転速度で回転する。各クランク軸歯車にはクランク軸がスプライン連結されているため、3つのクランク軸が入力歯車とクランク軸歯車との歯数比に減速された状態で同一の方向に同一の回転速度で回転する。その結果、3つのクランク軸の軸方向同位置に形成された3つの第1偏心部が同期して回転して第1遊星歯車を揺動させると共に、3つのクランク軸の軸方向同位置にそれぞれ形成された3つの第2偏心部が同期して回転して第2遊星歯車を揺動させる。
【0004】
第1遊星歯車及び第2遊星歯車は、それぞれ内歯歯車に内接噛合している。内歯歯車は、歯車本体と、歯車本体に回転可能に組み込まれ、当該内歯歯車の内歯を構成する外ピン(ピン部材)とを有している。ここで、内歯歯車の歯数(外ピンの本数)は、各遊星歯車の歯数よりも僅かに多い。そのため、各遊星歯車が1回揺動する毎に、第1遊星歯車及び第2遊星歯車は内歯歯車に対して歯数差分円周方向の位相がずれ(自転する)、この自転が、各クランク軸の内歯歯車の回転軸の周りの公転として一対のキャリアに伝達される。これにより、回転軸を中心に、歯車本体(と一体化されたケーシング)に対して、一対のキャリアを相対的に回転させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-75354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記関連技術の構成では、例えば、長期的な使用又は高負荷での使用等、使用環境によって、遊星歯車の外歯に摩耗が生じ、バックラッシュ(バックラッシ)が増大する可能性がある。
【0007】
本開示の目的は、バックラッシュの増大を抑制しやすい内接合遊星歯車装置及びロボット用関節装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る内接噛合遊星歯車装置は、内歯歯車と、遊星歯車と、を備え、前記遊星歯車を揺動させることにより、前記遊星歯車を前記内歯歯車に対して相対的に回転させる。前記内歯歯車は、環状の歯車本体と、前記歯車本体の内周面に形成された複数の内周溝に自転可能な状態で保持され内歯を構成する複数の外ピンと、を有する。前記遊星歯車は、前記内歯に部分的に噛み合う外歯を有する。前記歯車本体は、少なくとも前記複数の内周溝が形成された部位に弾性変形可能な弾性変形部を有している。
【0009】
本開示の一態様に係るロボット用関節装置は、前記内接噛合遊星歯車装置と、前記歯車本体に固定される第1部材と、前記内歯歯車に対する前記遊星歯車の相対的な回転に伴って、前記第1部材に対して相対的に回転する第2部材と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、バックラッシュの増大を抑制しやすい、内接合遊星歯車装置及びロボット用関節装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、基本構成に係る内接噛合遊星歯車装置を含むアクチュエータの概略構成を示す斜視図である。
図2図2は、同上の内接噛合遊星歯車装置を回転軸の入力側から見た概略の分解斜視図である。
図3図3は、同上の内接噛合遊星歯車装置を回転軸の出力側から見た概略の分解斜視図である。
図4図4は、同上の内接噛合遊星歯車装置の概略断面図である。
図5図5は、同上の内接噛合遊星歯車装置を示す、図4のA1-A1線断面図である。
図6図6は、同上の内接噛合遊星歯車装置を示す、図4のB1-B1線断面図である。
図7図7は、実施形態1に係る内接噛合遊星歯車装置の概略断面図である。
図8図8は、同上の内接噛合遊星歯車装置の要部を示し、図7の領域Z1の概略拡大図である。
図9図9は、同上の内接噛合遊星歯車装置の要部を示し、歯車本体及び支持枠のみを示す分解斜視図である。
図10図10は、同上の内接噛合遊星歯車装置の要部を示し、歯車本体及び外ピンのみを示す、図8のA1-A1線断面図である。
図11図11は、同上の内接噛合遊星歯車装置を用いたロボット用関節装置を示す概略図である。
図12A図12Aは、変形例に係る内接噛合遊星歯車装置の要部を示し、図7の領域Z1に相当する概略拡大図である。
図12B図12Bは、変形例に係る内接噛合遊星歯車装置の要部を示し、図7の領域Z1に相当する概略拡大図である。
図13図13は、実施形態2に係る内接噛合遊星歯車装置の要部を示し、図7の領域Z1に相当する概略拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(基本構成)
(1)概要
以下、本基本構成に係る内接噛合遊星歯車装置1の概要について、図1図4を参照して説明する。本開示で参照する図面は、いずれも模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。例えば、図1図4における、内歯21及び外歯31の歯形、寸法及び歯数等は、いずれも説明のために模式的に表しているに過ぎず、図示されている形状に限定する趣旨ではない。
【0013】
本基本構成に係る内接噛合遊星歯車装置1(以下、単に「歯車装置1」ともいう)は、内歯歯車2と、遊星歯車3と、を備える歯車装置である。この歯車装置1では、環状の内歯歯車2の内側に遊星歯車3が配置され、遊星歯車3を揺動させることにより、遊星歯車3を内歯歯車2に対して相対的に回転させる。また、内接噛合遊星歯車装置1は、外輪62及び内輪61を有する軸受け部材6を更に備える。内輪61は、外輪62の内側に配置され、外輪62に対して相対的に回転可能に支持される。特に、本基本構成に係る歯車装置1は、振り分けタイプと称される偏心揺動型の内接噛合遊星歯車装置である。
【0014】
本基本構成に係る歯車装置1は、図1図4に示すように、内歯歯車2の軸心(回転軸Ax1)からオフセットした位置に配置された複数(基本構成では3つ)のクランク軸(偏心軸)7A,7B,7Cを備えている。さらに、歯車装置1は、内歯歯車2の軸心(回転軸Ax1)上に配置された、回転軸Ax1を中心とする入力軸500と、入力軸500と一体に形成された入力歯車501と、を備えている。複数のクランク軸7A,7B,7Cには、それぞれクランク軸歯車502A,502B,502Cがスプライン連結されている。これら複数(基本構成では3つ)のクランク軸歯車502A,502B,502Cは、入力歯車501に対して噛み合うように配置されている。そのため、歯車装置1は、入力軸500が駆動されると、入力歯車501によってクランク軸7A,7B,7Cを同期して駆動することにより、遊星歯車3を揺動させる。
【0015】
内歯歯車2は、内歯21を有し、外輪62に固定される。特に、本基本構成では、内歯歯車2は、環状の歯車本体22と、複数の外ピン23と、を有する。複数の外ピン23は、自転可能な状態で歯車本体22の内周面221に保持され、内歯21を構成する。遊星歯車3は、内歯21に部分的に噛み合う外歯31を有する。つまり、内歯歯車2の内側で遊星歯車3は内歯歯車2に対して内接し、外歯31の一部が内歯21の一部に噛み合った状態となる。この状態で、複数のクランク軸7A,7B,7Cが駆動されると遊星歯車3が揺動して、内歯21と外歯31との噛み合い位置が内歯歯車2の円周方向に移動し、遊星歯車3と内歯歯車2との歯数差に応じた相対回転が両歯車(内歯歯車2及び遊星歯車3)の間に発生する。ここで、内歯歯車2が固定されているとすれば、両歯車の相対回転に伴って、遊星歯車3が回転(自転)することになる。その結果、遊星歯車3からは、両歯車の歯数差に応じて、比較的高い減速比で減速された回転出力が得られる。
【0016】
この種の歯車装置1は、遊星歯車3の自転成分相当の回転を、軸受け部材6の内輪61と一体化された一対のキャリア18,19の回転として取り出すように使用される。これにより、歯車装置1は、入力軸500を入力側とし、一対のキャリア18,19を出力側として、比較的高い減速比の歯車装置として機能する。そこで、本基本構成に係る歯車装置1では、遊星歯車3の自転成分相当の回転を一対のキャリア18,19に伝達するべく、一対のキャリア18,19にて複数のクランク軸7A,7B,7Cを支持している。一対のキャリア18,19は、遊星歯車3の軸方向(回転軸Ax1に沿った方向)の両側に配置され、各クランク軸7A,7B,7Cを回転可能に支持する。
【0017】
ここで、複数のクランク軸7A,7B,7Cは、遊星歯車3に形成された複数の開口部33にそれぞれ挿入された状態で、遊星歯車3の回転に伴って内歯歯車2に対して相対的に回転する。また、各クランク軸7A,7B,7Cは、軸心部71と、軸心部71に対して偏心した偏心部72と、を有している。一対のキャリア18,19は、各クランク軸7A,7B,7Cのうちの軸心部71を回転可能に支持し、遊星歯車3の開口部33には、各クランク軸7A,7B,7Cの偏心部72が挿入される。そのため、遊星歯車3の揺動成分、つまり遊星歯車3の公転成分は、軸心部71に対する偏心部72の公転成分によって吸収される。言い換えれば、各クランク軸7A,7B,7Cの軸心部71の偏心部72がそれぞれ軸心部71に対して公転するように回転することで、遊星歯車3の揺動成分が吸収される。したがって、一対のキャリア18,19には、複数のクランク軸7A,7B,7Cにより、遊星歯車3の揺動成分(公転成分)を除いた、遊星歯車3の回転(自転成分)が伝達されることになる。
【0018】
また、本基本構成に係る歯車装置1は、図1に示すように、駆動源101と共に、アクチュエータ100を構成する。言い換えれば、本基本構成に係るアクチュエータ100は、歯車装置1と、駆動源101と、を備えている。駆動源101は、遊星歯車3を揺動させるための駆動力を発生する。具体的には、駆動源101は、回転軸Ax1を中心として入力軸500を回転させることにより、遊星歯車3を揺動させる。
【0019】
(2)定義
本開示でいう「環状」は、少なくとも平面視において、内側に囲まれた空間(領域)を形成する輪(わ)のような形状を意味し、平面視において真円とある円形状(円環状)に限らず、例えば、楕円形状及び多角形状等であってもよい。さらに、例えば、カップ状のように底部を有する形状であっても、その周壁が環状であれば、「環状」に含まれる。
【0020】
本開示でいう「公転」は、ある物体が、この物体の中心(重心)を通る中心軸以外の回転軸まわりを周回することを意味し、ある物体が公転すると、この物体の中心は回転軸を中心とする公転軌道に沿って移動することになる。したがって、例えば、ある物体の中心(重心)を通る中心軸と平行な偏心軸を中心に、この物体が回転する場合には、この物体は、偏心軸を回転軸として公転していることになる。一例として、遊星歯車3は、揺動することによって、回転軸Ax1まわりを周回するようにして内歯歯車2内を公転する。
【0021】
また、本開示では、回転軸Ax1の一方側(図4の左側)を「出力側」といい、回転軸Ax1の他方側(図4の右側)を「入力側」という場合がある。図4の例では、回転軸Ax1の「入力側」から入力軸500に回転が与えられ、回転軸Ax1の「出力側」から一対のキャリア18,19の回転が取り出される。ただし、「入力側」及び「出力側」は、説明のために付しているラベルに過ぎず、歯車装置1から見た、入力及び出力の位置関係を限定する趣旨ではない。
【0022】
本開示でいう「回転軸」は、回転体の回転運動の中心となる仮想的な軸(直線)を意味する。つまり、回転軸Ax1は、実体を伴わない仮想軸である。入力軸500は、回転軸Ax1を中心として回転運動を行う。
【0023】
本開示でいう「内歯」及び「外歯」は、それぞれ単体の「歯」ではなく、複数の「歯」の集合(群)を意味する。つまり、内歯歯車2の内歯21は、内歯歯車2(歯車本体22)の内周面221に配置された複数の歯の集合からなる。同様に、遊星歯車3の外歯31は、遊星歯車3の外周面に配置された複数の歯の集合からなる。
【0024】
(3)構成
以下、本基本構成に係る内接噛合遊星歯車装置1の詳細な構成について、図1図6を参照して説明する。
【0025】
図1は、歯車装置1を含むアクチュエータ100の概略構成を示す斜視図である。図1では、駆動源101を模式的に示している。図2は、歯車装置1を回転軸Ax1の入力側から見た概略の分解斜視図である。図3は、歯車装置1を回転軸Ax1の出力側から見た概略の分解斜視図である。図4は、歯車装置1の概略断面図である。図5図4のA1-A1線断面図である。図6図4のB1-B1線断面図である。ただし、図5及び図6では、クランク軸7A,7B,7C以外の部品については、断面であってもハッチングを省略している。
【0026】
(3.1)全体構成
本基本構成に係る歯車装置1は、図1図4に示すように、内歯歯車2と、遊星歯車3と、軸受け部材6と、複数のクランク軸7A,7B,7Cと、一対のキャリア18,19と、入力軸500と、を備えている。また、本基本構成では、歯車装置1は、入力歯車501と、複数のクランク軸歯車502A,502B,502Cと、一対の転がり軸受け41,42と、偏心体軸受け5と、ケース10と、を更に備えている。本基本構成では、歯車装置1の構成要素である内歯歯車2、遊星歯車3、複数のクランク軸7A,7B,7C及び一対のキャリア18,19等の材質は、ステンレス、鋳鉄、機械構造用炭素鋼、クロムモリブデン鋼、リン青銅若しくはアルミ青銅等の金属、又はアルミニウム若しくはチタン等の軽金属である。ここでいう金属(軽金属を含む)は、窒化処理等の表面処理が施された金属を含む。
【0027】
また、本基本構成では、歯車装置1の一例として、トロコイド系歯形を用いた内接式遊星歯車装置を例示する。つまり、本基本構成に係る歯車装置1は、トロコイド系曲線歯形を有する内接式の遊星歯車3を備えている。
【0028】
また、本基本構成では一例として、歯車装置1は、内歯歯車2の歯車本体22が、軸受け部材6の外輪62と共に、ケース10等の固定部材に固定された状態で使用される。これにより、内歯歯車2と遊星歯車3との相対回転に伴って、固定部材(ケース10等)に対して、遊星歯車3が相対的に回転することになる。
【0029】
さらに、本基本構成では、歯車装置1をアクチュエータ100に用いる場合に、入力軸500に入力としての回転力が加わることで、軸受け部材6の内輪61と一体化された一対のキャリア18,19から出力としての回転力が取り出される。つまり、歯車装置1は、入力軸500の回転を入力回転とし、内輪61と一体化された一対のキャリア18,19の回転を出力回転として動作する。これにより、歯車装置1では、入力回転に対して、比較的高い減速比にて減速された出力回転が得られることになる。
【0030】
駆動源101は、モータ(電動機)等の動力の発生源である。駆動源101で発生した動力は、歯車装置1における入力軸500に伝達される。具体的には、駆動源101は入力軸500につながっており、駆動源101で発生した動力は入力軸500に伝達される。これにより、駆動源101は、入力軸500を回転させることが可能である。
【0031】
さらに、本基本構成に係る歯車装置1では、図4に示すように、入力側の回転軸Ax1と、出力側の回転軸Ax1とは、同一直線上にある。言い換えれば、入力側の回転軸Ax1と、出力側の回転軸Ax1とは、同軸である。ここで、入力側の回転軸Ax1は、入力回転が与えられる入力軸500の回転中心であって、出力側の回転軸Ax1は、出力回転を生じる内輪61(及び一対のキャリア18,19)の回転中心である。つまり、歯車装置1では、同軸上において、入力回転に対して、比較的高い減速比にて減速された出力回転が得られることになる。
【0032】
内歯歯車2は、図5及び図6に示すように、内歯21を有する環状の部品である。本基本構成では、内歯歯車2は、少なくとも内周面が平面視において真円となる、円環状を有している。円環状の内歯歯車2の内周面には、内歯21が、内歯歯車2の円周方向に沿って形成されている。内歯21を構成する複数の歯は、全て同一形状であって、内歯歯車2の内周面における円周方向の全域に、等ピッチで設けられている。つまり、内歯21のピッチ円は、平面視において真円となる。内歯21のピッチ円の中心は、回転軸Ax1上にある。また、内歯歯車2は、回転軸Ax1の方向に所定の厚みを有している。内歯21の歯筋は、いずれも回転軸Ax1と平行である。内歯21の歯筋方向の寸法は、内歯歯車2の厚み方向よりもやや小さい。
【0033】
ここで、内歯歯車2は、上述したように、環状(円環状)の歯車本体22と、複数の外ピン23と、を有している。複数の外ピン23は、自転可能な状態で歯車本体22の内周面221に保持され、内歯21を構成する。言い換えれば、複数の外ピン23は、それぞれ内歯21を構成する複数の歯として機能する。具体的には、歯車本体22の内周面221には、図2に示すように、円周方向の全域に複数の内周溝223が形成されている。複数の内周溝223は、全て同一形状であって、等ピッチで設けられている。複数の内周溝223は、いずれも回転軸Ax1と平行であって、歯車本体22の厚み方向の全長にわたって形成されている。複数の外ピン23は、複数の内周溝223に嵌るようにして、歯車本体22に組み合わされている。複数の外ピン23の各々は、内周溝223内において自転可能な状態で保持される。また、歯車本体22は、(外輪62と共に)ケース10に固定される。さらに、歯車本体22には、固定用の複数の固定孔222(図5参照)が形成されている。
【0034】
遊星歯車3は、図5及び図6に示すように、外歯31を有する環状の部品である。本基本構成では、遊星歯車3は、少なくとも外周面が平面視において真円となる、円環状を有している。円環状の遊星歯車3の外周面には、外歯31が、遊星歯車3の円周方向に沿って形成されている。外歯31を構成する複数の歯は、全て同一形状であって、遊星歯車3の外周面における円周方向の全域に、等ピッチで設けられている。つまり、外歯31のピッチ円は、平面視において真円となる。また、遊星歯車3は、回転軸Ax1の方向に所定の厚みを有している。外歯31は、いずれも遊星歯車3の厚み方向の全長にわたって形成されている。外歯31の歯筋は、いずれも回転軸Ax1と平行である。遊星歯車3においては、内歯歯車2とは異なり、外歯31が遊星歯車3の本体と1つの金属部材にて一体に形成されている。
【0035】
また、本基本構成に係る歯車装置1は、複数の遊星歯車3を備えている。具体的には、歯車装置1は、第1遊星歯車301と第2遊星歯車302との2つの遊星歯車3を備えている。2つの遊星歯車3は、回転軸Ax1に平行な方向において対向するように配置されている。つまり、遊星歯車3は、回転軸Ax1に平行な方向(軸方向)に並ぶ第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302を含む。第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302の形状自体は共通である。
【0036】
これら2つの遊星歯車3(第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302)は、回転軸Ax1まわりで180度の位相差をもって配置される。図4の例では、第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302のうち、回転軸Ax1の入力側(図4の右側)に位置する第1遊星歯車301の中心(外歯31のピッチ円の中心)C1が、回転軸Ax1に対して図の上方にずれた(偏った)状態にある。一方、回転軸Ax1の出力側(図4の左側)に位置する第2遊星歯車302の中心(外歯31のピッチ円の中心)C2は、回転軸Ax1に対して図の下方にずれた(偏った)状態にある。ここで、回転軸Ax1と中心C1との間の距離ΔL1は、回転軸Ax1に対する第1遊星歯車301の偏心量となり、回転軸Ax1と中心C2との間の距離ΔL2は、回転軸Ax1に対する第2遊星歯車302の偏心量となる。このように、複数の遊星歯車3が、回転軸Ax1を中心とする周方向において均等に配置されることで、複数の遊星歯車3間での重量と荷重とのバランスをとることが可能である。
【0037】
第1遊星歯車301と第2遊星歯車302とでは、その中心C1,C2が回転軸Ax1に対して180度回転対称に位置する。本基本構成では、偏心量ΔL1と偏心量ΔL2とでは、回転軸Ax1から見た向きが反対であるが、その絶対値は同じである。
【0038】
より詳細には、各クランク軸7A,7B,7Cは、それぞれ1つの軸心部71に対して、2つの偏心部72を有している。これら2つの偏心部72の中心C0の軸心部71の中心(軸心Ax2)からの偏心量ΔL0(図5及び図6参照)は、それぞれ回転軸Ax1に対する第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302の偏心量ΔL1,ΔL2と同じである。複数のクランク軸7A,7B,7Cの形状自体は共通である。複数のクランク軸歯車502A,502B,502Cについても、その形状自体は共通である。
【0039】
また、第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302の回転軸Ax1に平行な方向(軸方向)の両側には、一対のキャリア18,19が配置されている。一対のキャリア18,19を互いに区別する場合には、回転軸Ax1の入力側(図4では右側)に位置するキャリア18を「入力側キャリア18」と呼び、回転軸Ax1の出力側(図4では左側)に位置するキャリア19を「出力側キャリア19」と呼ぶ。各クランク軸7A,7B,7Cは、その両端部が転がり軸受け41,42を介して一対のキャリア18,19に保持されている。つまり、各クランク軸7A,7B,7Cは、遊星歯車3に対して回転軸Ax1に平行な方向(軸方向)の両側において、自転可能な状態で入力側キャリア18及び出力側キャリア19に保持されている。
【0040】
各クランク軸7A,7B,7Cの偏心部72には、偏心体軸受け5が装着される。第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302の各々には、3つのクランク軸7A,7B,7Cに対応する3つの開口部33が形成されている。そして、各開口部33には偏心体軸受け5が収容される。言い換えれば、第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302には、それぞれ偏心体軸受け5が取り付けられ、偏心体軸受け5に各クランク軸7A,7B,7Cが挿入されることで、偏心体軸受け5及び各クランク軸7A,7B,7Cが遊星歯車3に組み合わされる。遊星歯車3に偏心体軸受け5及びクランク軸7A,7B,7Cが組み合わされた状態で、各クランク軸7A,7B,7Cが回転すると、遊星歯車3は回転軸Ax1まわりで揺動する。
【0041】
以上説明した構成によれば、入力軸500に入力としての回転力が加えられて、入力軸500が回転軸Ax1を中心に回転することで、この回転力が入力歯車501から複数のクランク軸7A,7B,7Cに振り分けられる。つまり、入力歯車501が回転すると、当該入力歯車501と同時に噛合している3つのクランク軸歯車502A,502B,502Cが同一の方向に同一の回転速度で回転する。各クランク軸歯車502A,502B,502Cにはクランク軸7A,7B,7Cがスプライン連結されているため、3つのクランク軸7A,7B,7Cが入力歯車501とクランク軸歯車502A,502B,502Cとの歯数比にて減速された状態で、同一の方向に同一の回転速度で回転する。その結果、3つのクランク軸7A,7B,7Cにおける回転軸Ax1の入力側の同位置に形成された3つの偏心部72が同期して回転し、第1遊星歯車301を揺動させる。さらに、3つのクランク軸7A,7B,7Cにおける回転軸Ax1の出力側の同位置に形成された3つの偏心部72が同期して回転し、第2遊星歯車302を揺動させる。
【0042】
図5及び図6に、ある時点における第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302の状態を示す。図5は、図4のA1-A1線断面図であって、第1遊星歯車301を示す。図6は、図4のB1-B1線断面図であって、第2遊星歯車302を示す。図5及び図6に示すように、第1遊星歯車301と第2遊星歯車302とでは、その中心C1,C2が回転軸Ax1に対して略180度回転対称に位置する。本基本構成では、偏心量ΔL1と偏心量ΔL2とでは、回転軸Ax1から見た向きが反対であるが、その絶対値は略同じ(いずれも偏心量ΔL0)である。上述した構成によれば、軸心部71が軸心Ax2を中心に回転(自転)することにより、第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302は、回転軸Ax1まわりで略180度の位相差をもって、回転軸Ax1まわりで回転(偏心運動)する。そして、複数の遊星歯車3が、回転軸Ax1を中心とする周方向において略均等に配置されることで、複数の遊星歯車3間での重量と荷重とのバランスをとることが可能である。
【0043】
このように構成される遊星歯車3(第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302)は、内歯歯車2の内側に配置される。平面視において、遊星歯車3は内歯歯車2に比べて一回り小さく形成されており、遊星歯車3は、内歯歯車2と組み合わされた状態で、内歯歯車2の内側で揺動可能となる。ここで、遊星歯車3の外周面には外歯31が形成され、内歯歯車2の内周面には内歯21が形成されている。そのため、内歯歯車2の内側に遊星歯車3が配置された状態では、外歯31と内歯21とは、互いに対向することになる。
【0044】
さらに、外歯31のピッチ円は、内歯21のピッチ円よりも一回り小さい。そして、第1遊星歯車301が内歯歯車2に内接した状態で、第1遊星歯車301における外歯31のピッチ円の中心C1は、内歯21のピッチ円の中心(回転軸Ax1)から距離ΔL1だけずれた位置にある。同様に、第2遊星歯車302が内歯歯車2に内接した状態で、第2遊星歯車302における外歯31のピッチ円の中心C2は、内歯21のピッチ円の中心(回転軸Ax1)から距離ΔL2だけずれた位置にある。
【0045】
そのため、第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302のいずれにおいても、外歯31と内歯21とは、少なくとも一部が隙間を介して対向することになり、外歯31と内歯21との歯数差が「2」以上であれば円周方向の全体が互いに噛み合うことはない。ただし、遊星歯車3は、内歯歯車2の内側において回転軸Ax1まわりで揺動(公転)するので、外歯31と内歯21とが部分的に噛み合うことになる。つまり、遊星歯車3(第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302)が回転軸Ax1まわりを揺動することで、図5及び図6に示すように、外歯31を構成する複数の歯のうちの一部の歯が、内歯21を構成する複数の歯のうちの一部の歯に噛み合うことになる。結果的に、歯車装置1では、外歯31の一部を内歯21の一部に噛み合わせることが可能となる。
【0046】
ここで、内歯歯車2における内歯21の歯数は、遊星歯車3の外歯31の歯数よりもN(Nは正の整数)だけ多い。本基本構成では一例として、Nが「2」であって、遊星歯車3の(外歯31の)歯数は、内歯歯車2の(内歯21の)歯数よりも「2」少ない。このような遊星歯車3と内歯歯車2との歯数差は、歯車装置1での入力回転に対する出力回転の減速比を規定する。
【0047】
また、本基本構成では一例として、第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302を合わせた厚みは、内歯歯車2における歯車本体22の厚みよりも小さい。さらに、第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302を合わせた外歯31の歯筋方向(回転軸Ax1に平行な方向)の寸法は、内歯21の歯筋方向(回転軸Ax1に平行な方向)の寸法よりも小さい。言い換えれば、回転軸Ax1に平行な方向においては、内歯21の歯筋の範囲内に、第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302の外歯31が収まることになる。
【0048】
ここで、第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302は、それぞれ内歯歯車2に内接噛合している。そのため、第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302が1回揺動する毎に、第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302は、内歯歯車2に対して(内歯21と外歯31との)歯数差分の円周方向の位相ずれが生じ、自転することになる。この自転が、各クランク軸7A,7B,7Cの内歯歯車2の軸心(回転軸Ax1)の周りの公転として、一対のキャリア18,19に伝達される。これにより、回転軸Ax1を中心に、歯車本体(と一体化されたケース10)に対して、一対のキャリア18,19を相対的に回転させることができる。
【0049】
要するに、本基本構成に係る歯車装置1は、回転軸Ax1からオフセットした位置に配置された複数のクランク軸7A,7B,7Cにて遊星歯車3を揺動させ、遊星歯車3の揺動を利用して回転出力を得る。つまり、歯車装置1では、遊星歯車3が揺動して、内歯21と外歯31との噛み合い位置が内歯歯車2の円周方向に移動すると、遊星歯車3と内歯歯車2との歯数差に応じた相対回転が両歯車(内歯歯車2及び遊星歯車3)の間に発生する。ここで、内歯歯車2が固定されているとすれば、両歯車の相対回転に伴って、遊星歯車3が回転(自転)することになる。その結果、遊星歯車3からは、両歯車の歯数差に応じて、比較的高い減速比で減速された回転出力が得られる。
【0050】
軸受け部材6は、外輪62及び内輪61を有し、歯車装置1の出力を外輪62に対する内輪61の回転として取り出すための部品である。軸受け部材6は、外輪62及び内輪61に加えて、複数の転動体63(図4参照)と、を有している。外輪62及び内輪61は、いずれも環状の部品である。外輪62及び内輪61は、いずれも平面視で真円となる、円環状を有している。内輪61は、外輪62よりも一回り小さく、外輪62の内側に配置される。ここで、外輪62の内径は内輪61の外径よりも大きいため、外輪62の内周面と内輪61の外周面との間には隙間が生じる。
【0051】
複数の転動体63は、外輪62と内輪61との間の隙間に配置されている。複数の転動体63は、外輪62の円周方向に並べて配置されている。複数の転動体63は、全て同一形状の金属部品であって、外輪62の円周方向の全域に、等ピッチで設けられている。
【0052】
より詳細には、本基本構成に係る歯車装置1は、軸受け部材6が第1軸受け部材601及び第2軸受け部材602を含む。第1軸受け部材601及び第2軸受け部材602は、それぞれアンギュラ玉軸受けからなる。具体的には、図4に示すように、遊星歯車3から見て回転軸Ax1の入力側(図4の右側)には第1軸受け部材601が配置され、遊星歯車3から見て回転軸Ax1の出力側(図4の左側)には第2軸受け部材602が配置される。軸受け部材6は、第1軸受け部材601及び第2軸受け部材602にて、ラジアル方向の荷重、スラスト方向(回転軸Ax1に沿う方向)の荷重、及び回転軸Ax1に対する曲げ力(曲げモーメント荷重)のいずれに対しても耐え得るように構成される。
【0053】
ここで、第1軸受け部材601及び第2軸受け部材602は、遊星歯車3に対して回転軸Ax1に平行な方向(軸方向)の両側に、回転軸Ax1に平行な方向において互いに反対向きで配置される。つまり、軸受け部材6は、複数(ここでは2つ)のアンギュラ玉軸受けを組み合わせた「組合せアンギュラ玉軸受け」である。ここでは一例として、第1軸受け部材601及び第2軸受け部材602は、それぞれの内輪61が互いに近づく向きのスラスト方向(回転軸Ax1に沿う方向)の荷重を受ける「背面組合せタイプ」である。さらに、歯車装置1においては、第1軸受け部材601及び第2軸受け部材602は、それぞれの内輪61を互いに近づける向きに締め付けることにより、内輪61に対して適正な予圧が作用する状態で組み合わされる。
【0054】
また、本基本構成に係る歯車装置1では、入力側キャリア18及び出力側キャリア19は、遊星歯車3に対して回転軸Ax1に平行な方向の両側に配置され、遊星歯車3のキャリア孔34(図4参照)を通して、互いに結合されている。具体的には、図4に示すように、遊星歯車3から見て回転軸Ax1の入力側(図4の右側)には入力側キャリア18が配置され、遊星歯車3から見て回転軸Ax1の出力側(図4の左側)には出力側キャリア19が配置される。軸受け部材6(第1軸受け部材601及び第2軸受け部材602の各々の)の内輪61は、入力側キャリア18及び出力側キャリア19に対して固定されている。本基本構成では一例として、第1軸受け部材601の内輪は、入力側キャリア18とシームレスに一体化されている。同様に、第2軸受け部材602の内輪は、出力側キャリア19とシームレスに一体化されている。
【0055】
出力側キャリア19は、出力側キャリア19の一表面から回転軸Ax1の入力側に向けて突出する複数(一例として3つ)のキャリアピン191(図2参照)を有している。これら複数のキャリアピン191は、遊星歯車3に形成されている複数(一例として3つ)のキャリア孔34をそれぞれ貫通し、その先端が入力側キャリア18に対してキャリアボルト192(図7参照)にて固定される。ここで、キャリアピン191とキャリア孔34の内周面との間には隙間が確保され、キャリアピン191は、キャリア孔34内を移動可能、つまりキャリア孔34の中心に対して相対的に移動可能である。これにより、遊星歯車3が揺動する際にキャリアピン191がキャリア孔34の内周面に接触することはない。
【0056】
上記構成により、歯車装置1は、遊星歯車3の自転成分相当の回転を、軸受け部材6の内輪61と一体化された入力側キャリア18及び出力側キャリア19の回転として取り出すように使用される。すなわち、本基本構成では、遊星歯車3と内歯歯車2との間の相対的な回転は、入力側キャリア18及び出力側キャリア19から取り出される。本基本構成では一例として、歯車装置1は、軸受け部材6の外輪62(図4参照)が固定部材であるケース10に固定された状態で使用される。すなわち、遊星歯車3は複数のクランク軸7A,7B,7Cにて回転部材である入力側キャリア18及び出力側キャリア19と連結され、歯車本体22は固定部材に固定されるため、遊星歯車3と内歯歯車2との間の相対的な回転は、回転部材(入力側キャリア18及び出力側キャリア19)から取り出される。言い換えれば、本基本構成では、歯車本体22に対して遊星歯車3が相対的に回転する際、入力側キャリア18及び出力側キャリア19の回転力を出力として取り出すように構成されている。
【0057】
さらに、本基本構成では、ケース10が内歯歯車2の歯車本体22とシームレスに一体化されている。つまり、回転軸Ax1に平行な方向において、固定部材である歯車本体22とケース10とはシームレスに連続して設けられる。
【0058】
より詳細には、ケース10は、円筒状であって、歯車装置1の外郭を構成する。本基本構成では、円筒状のケース10の中心軸は、回転軸Ax1と一致するように構成されている。つまり、ケース10は、少なくとも外周面が、平面視において(軸方向の一方から見て)回転軸Ax1を中心とする真円となる。ケース10は、軸方向の両端面が開口する円筒状に形成されている。ここで、ケース10には、内歯歯車2の歯車本体22がシームレスに一体化されており、ケース10及び歯車本体22は、1部品として扱われる。そのため、ケース10の内周面は、歯車本体22の内周面221を含んでいる。さらに、ケース10には、軸受け部材6の外輪62が固定されている。つまり、ケース10の内周面における歯車本体22から見て回転軸Ax1の入力側(図4の右側)には、第1軸受け部材601の外輪62が嵌め込まれることにより固定される。一方、ケース10の内周面における歯車本体22から見て回転軸Ax1の出力側(図4の左側)には、第2軸受け部材602の外輪62が嵌め込まれることにより固定される。
【0059】
さらに、ケース10における回転軸Ax1の入力側(図4の右側)の端面は、入力側キャリア18によって閉塞され、ケース10における回転軸Ax1の出力側(図4の左側)の端面は、出力側キャリア19によって閉塞される。そのため、図4に示すように、ケース10、入力側キャリア18及び出力側キャリア19で囲まれた空間内に、遊星歯車3(第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302)、複数の外ピン23、及び偏心体軸受け5等の部品が収容される。
【0060】
複数(基本構成では3つ)のクランク軸7A,7B,7Cの各々は、軸心部71と、2つの偏心部72と、を有している。軸心部71は、少なくとも外周面が平面視において真円となる、円筒状を有している。軸心部71の中心である軸心Ax2は、回転軸Ax1と平行である。複数のクランク軸7A,7B,7Cの軸心Ax2は、回転軸Ax1を中心とする仮想円上に、円周方向に等間隔で配置されている。各偏心部72は、少なくとも外周面が平面視において真円となる、円盤状を有している。各偏心部72の中心(中心軸)C0は、回転軸Ax1と平行であって、かつ回転軸Ax1から径方向にずれた位置に配置されている。ここで、軸心Ax2と中心C0との間の距離ΔL0(図5及び図6参照)は、軸心部71に対する偏心部72の偏心量となる。偏心部72は、軸心部71の長手方向(軸方向)の中央部において、軸心部71の外周面から全周にわたって突出するフランジ形状をなす。上述した構成によれば、各クランク軸7A,7B,7Cは、軸心Ax2を中心に軸心部71が回転(自転)することで、偏心部72が偏心運動することになる。
【0061】
本基本構成では、軸心部71及び2つの偏心部72は1つの金属部材にて一体に形成されており、これにより、シームレスなクランク軸7A,7B,7Cが実現される。このような形状のクランク軸7A,7B,7Cは、偏心体軸受け5と共に遊星歯車3に組み合わされる。そのため、遊星歯車3に偏心体軸受け5及びクランク軸7A,7B,7Cが組み合わされた状態でクランク軸7A,7B,7Cが回転すると、遊星歯車3は、回転軸Ax1まわりで揺動する。
【0062】
偏心体軸受け5は、複数の転動体51(図4参照)を有し、クランク軸7A,7B,7Cの回転のうちの自転成分を吸収し、クランク軸7A,7B,7Cの自転成分を除いたクランク軸7A,7B,7Cの回転、つまりクランク軸7A,7B,7Cの揺動成分(公転成分)のみを遊星歯車3に伝達するための部品である。複数の転動体51は、各クランク軸7A,7B,7Cの偏心部72の外周面と、遊星歯車3の各開口部33の内周面と、の間に配置される。つまり、各クランク軸7A,7B,7Cの偏心部72が偏心体軸受け5の内輪として機能し、遊星歯車3の各開口部33の内周面が偏心体軸受け5の外輪として機能する。
【0063】
偏心体軸受け5及び複数のクランク軸7A,7B,7Cが遊星歯車3に組み合わされた状態で、各クランク軸7A,7B,7Cが回転すると、偏心体軸受け5は、軸心Ax2まわりで回転(偏心運動)する。このとき、クランク軸7A,7B,7Cの自転成分は偏心体軸受け5で吸収される。したがって、遊星歯車3には、偏心体軸受け5により、クランク軸7A,7B,7Cの自転成分を除いたクランク軸7A,7B,7Cの回転、つまりクランク軸7A,7B,7Cの揺動成分(公転成分)のみが伝達されることになる。よって、遊星歯車3に偏心体軸受け5及びクランク軸7A,7B,7Cが組み合わされた状態でクランク軸7A,7B,7Cが回転すると、遊星歯車3は、回転軸Ax1まわりで揺動する。
【0064】
上述した構成の歯車装置1では、入力軸500に入力としての回転力が加えられて、入力軸500が回転軸Ax1を中心に回転することで、遊星歯車3は、回転軸Ax1まわりで揺動(公転)する。このとき、遊星歯車3は、内歯歯車2の内側で内歯歯車2に対して内接し、外歯31の一部が内歯21の一部に噛み合った状態で揺動するので、内歯21と外歯31との噛み合い位置が内歯歯車2の円周方向に移動する。これにより、遊星歯車3と内歯歯車2との歯数差に応じた相対回転が両歯車(内歯歯車2及び遊星歯車3)の間に発生する。そして、一対のキャリア18,19には、複数のクランク軸7A,7B,7Cにより、遊星歯車3の揺動成分(公転成分)を除いた、遊星歯車3の回転(自転成分)が伝達される。その結果、一対のキャリア18,19からは、両歯車の歯数差に応じて、比較的高い減速比で減速された回転出力が得られることになる。
【0065】
ところで、本基本構成に係る歯車装置1においては、上述したように、内歯歯車2と遊星歯車3との歯数差は、歯車装置1での入力回転に対する出力回転の減速比を規定することになる。つまり、内歯歯車2の歯数を「V1」、遊星歯車3の歯数を「V2」とした場合、減速比R1は、下記式1で表される。
【0066】
R1=V2/(V1-V2) (式1)
要するに、内歯歯車2と遊星歯車3との歯数差(V1-V2)が小さいほど、減速比R1は大きくなる。一例として、内歯歯車2の歯数V1が「72」、遊星歯車3の歯数V2が「70」、その歯数差(V1-V2)が「2」であるので、上記式1より、減速比R1は「35」となる。この場合、回転軸Ax1の入力側から見て、各クランク軸7A,7B,7Cが軸心部71の軸心Ax2(図5及び図6参照)を中心に時計回りに1周(360度)回転すると、一対のキャリア18,19は回転軸Ax1を中心に歯数差「2」の分(つまり約10.3度)だけ反時計回りに回転する。
【0067】
本基本構成に係る歯車装置1によれば、このように高い減速比R1が、内歯歯車2及び遊星歯車3の組み合わせで実現可能である。さらに、入力歯車501と複数のクランク軸歯車502A,502B,502Cとの間においても、入力歯車501及びクランク軸歯車502A,502B,502Cの歯数に応じて、適宜の減速比を実現可能である。結果的に、歯車装置1全体としては、高い減速比を実現することが可能である。
【0068】
また、歯車装置1は、少なくとも、内歯歯車2と、遊星歯車3と、クランク軸7A,7B,7Cと、一対のキャリア18,19と、を備えていればよく、例えば、図4に示すように、スペーサ11を更に備えていてもよい。スペーサ11は、回転軸Ax1に平行な方向(軸方向)において一対の遊星歯車3(第1遊星歯車301及び第2遊星歯車302)の間に配置されている。
【0069】
(実施形態1)
本実施形態に係る内接噛合遊星歯車装置1A(以下、単に「歯車装置1A」ともいう)は、図7図10に示すように、主として歯車本体22の構成、及びクランク軸7A,7B,7C周辺の構成が、基本構成に係る歯車装置1と相違する。以下、基本構成と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。図7は、歯車装置1Aの概略断面図である。図8は、図7の領域Z1の概略拡大図である。図9は、歯車本体22及び支持枠9のみを示す分解斜視図である。図10は、歯車本体22及び外ピン23のみを示す、図8のA1-A1線断面図である。
【0070】
本実施形態に係る歯車装置1Aは、図7に示すように、複数のオイルシール121,122等を更に備えている。オイルシール121は、ケース10と出力側キャリア19の外周面との間の隙間を塞いでいる。オイルシール122は、出力側キャリア19の中央部に形成された中央孔193を塞いでいる。これら複数のオイルシール121,122等で密閉された空間は、潤滑剤保持空間17を構成する。潤滑剤保持空間17は、軸受け部材6の内輪61と外輪62との間の空間を含む。さらに、潤滑剤保持空間17内には、複数の外ピン23、遊星歯車3、一対の転がり軸受け41,42及び偏心体軸受け5等が収容される。
【0071】
そして、潤滑剤保持空間17には、潤滑剤が注入されている。潤滑剤は液体であって、潤滑剤保持空間内17を流動可能である。そのため、歯車装置1の使用時においては、例えば、複数の外ピン23からなる内歯21と遊星歯車3の外歯31との噛み合い部位には、潤滑剤が入り込む。本開示でいう「液体」は、液状又はゲル状の物質を含む。ここでいう「ゲル状」は、液体と固体との中間の性質を有する状態を意味し、液相と固相との2つの相からなるコロイド(colloid)の状態を含む。例えば、分散媒が液相であって、分散質が液相であるエマルション(emulsion)、分散質が固相であるサスペンション(suspension)等の、ゲル(gel)又はゾル(sol)と呼ばれる状態が「ゲル状」に含まれる。また、分散媒が固相であって、分散質が液相である状態も、「ゲル状」に含まれる。本基本構成では一例として、潤滑剤は、液状の潤滑油(オイル)である。
【0072】
本実施形態に係る歯車装置1Aは、一対のキャリア18,19の軸方向の両側に取り付けられる一対のカバー13,14を更に備えている。一対のカバー13,14を互いに区別する場合には、回転軸Ax1の入力側(図7では右側)に位置するカバー13を「入力側カバー13」と呼び、回転軸Ax1の出力側(図7では左側)に位置するカバー14を「出力側カバー14」と呼ぶ。本実施形態では、一対のカバー13,14の材質は、ステンレス、鋳鉄、機械構造用炭素鋼若しくはクロムモリブデン鋼等の金属、又はこれに熱処理を施した金属である。
【0073】
入力側カバー13は、回転軸Ax1を中心とする円盤状に形成されている。ここで、入力側カバー13は、少なくとも外周面が、平面視において(軸方向の一方から見て)回転軸Ax1を中心とする真円となる。入力側カバー13の外径は、入力側キャリア18の外径よりも一回り小さい。入力側カバー13は、入力側キャリア18に対して外側、つまり入力側キャリア18から見て遊星歯車3とは反対側(図7では右側)から取り付けられている。
【0074】
出力側カバー14は、回転軸Ax1を中心とする円盤状に形成されている。ここで、出力側カバー14は、少なくとも外周面が、平面視において(軸方向の一方から見て)回転軸Ax1を中心とする真円となる。出力側カバー14の外径は、出力側キャリア19の外径よりも一回り小さい。出力側カバー14は、出力側キャリア19に対して外側、つまり出力側キャリア19から見て遊星歯車3とは反対側(図7では左側)から取り付けられている。
【0075】
ここで、一対のカバー13,14は、一対のキャリア18,19に対して取り外し可能に取り付けられている。つまり、入力側カバー13は入力側キャリア18に対して取り外し可能に取り付けられており、出力側カバー14は出力側キャリア19に対して取り外し可能に取り付けられている。本実施形態では一例として、各カバー13,14は、複数の固定ボルト142(図7参照)により、各キャリア18,19に対して取り付けられている。そのため、複数の固定ボルト142を外すことにより、各カバー13,14は各キャリア18,19から取り外し可能である。
【0076】
ここで、一対のカバー13,14のうちの出力側カバー14においては、出力側キャリア19に設けられる複数の取付穴194(図7参照)に合わせて、複数の透孔141が設けられている。すなわち、出力側キャリア19には、相手部材を固定するための複数の取付穴194(雌ねじ)が設けられている。そのため、出力側キャリア19の外側に取り付けられる出力側カバー14においても、これら複数の取付穴194に対応する位置に複数の透孔141が形成される。
【0077】
一方で、各クランク軸7A,7B,7Cを通す軸孔131(図7参照)は、一対のカバー13,14のうちの入力側カバー13にのみ設けられている。つまり、入力側カバー13には、複数のクランク軸7A,7B,7Cに対応して複数の軸孔131が設けられている。各軸孔131には、各クランク軸7A,7B,7Cの軸心部71が挿入される。ここで、軸心部71が軸孔131の内周面に接触しないよう、各軸孔131の内径は軸心部71の外径よりも一回り大きく設定されている。
【0078】
ここで、本実施形態に係る歯車装置1Aは、各クランク軸7A,7B,7Cの軸方向の移動を規制する規制構造70を備えている。つまり、本実施形態に係る歯車装置1Aでは、規制構造70が、クランク軸7A,7B,7Cの軸方向の移動を規制する。本開示でいう「軸方向」は、回転軸Ax1に沿った方向、つまりクランク軸7A,7B,7Cの軸心Ax2に沿った方向、特にクランク軸7A,7B,7Cの軸心Ax2に平行な方向(スラスト方向)を意味する。また、本開示でいう「移動を規制」とは、移動について何かしらの制限をかけることを意味し、移動を完全に禁止することだけでなく、移動範囲を制限すること又は移動しにくくすること等を含む。つまり、本実施形態では、規制構造70が設けられていることにより、クランク軸7A,7B,7Cの軸心Ax2に沿った軸方向において、クランク軸7A,7B,7Cの移動が制限されることになる。
【0079】
本実施形態では一例として、規制構造70は、軸方向の一方(回転軸Ax1の入力側)及び他方(回転軸Ax1の出力側)の両方について、クランク軸7A,7B,7Cの移動を禁止することとする。すなわち、図7の例において、規制構造70は、一対のキャリア18,19に対して、クランク軸7A,7B,7Cの図中右方への移動及び図中左方への移動のいずれも禁止する。これにより、軸方向におけるクランク軸7A,7B,7Cの位置が(一対のキャリア18,19に対して)定位置に位置決めされる。
【0080】
本実施形態では、規制構造70は、一対のキャリア18,19の軸方向の両側に取り付けられる一対のカバー13,14を含む。要するに、歯車装置1Aは、入力側キャリア18に取り付けられた入力側カバー13及び出力側キャリア19に取り付けられた出力側カバー14を用いて、各クランク軸7A,7B,7Cの軸方向の一方及び他方への移動を規制する。
【0081】
具体的に、入力側カバー13は、クランク軸7A,7B,7Cから軸方向の一方(図7では右方)に向けて作用する力を受けることにより、軸方向の一方へのクランク軸7A,7B,7Cの移動を規制する。一方、出力側カバー14は、クランク軸7A,7B,7Cから軸方向の他方に向けて作用する力を受けることにより、軸方向の他方へのクランク軸7A,7B,7Cの移動を規制する。
【0082】
より詳細には、入力側カバー13の回転軸Ax1の出力側(図7では左側)を向いた面における軸孔131の周囲に、クランク軸7A,7B,7Cの回転軸Ax1の入力側(図8では右側)を向いた段差部が接触することで、軸方向の一方(図7では右方)へのクランク軸7A,7B,7Cの移動が規制される。また、出力側カバー14の回転軸Ax1の入力側(図7では右側)を向いた面に、クランク軸7A,7B,7Cの回転軸Ax1の出力側(図7では左側)を向いた端面が接触することで、軸方向の他方(図7では左方)へのクランク軸7A,7B,7Cの移動が規制される。
【0083】
ところで、本実施形態に係る歯車装置1Aは、図7及び図8に示すように、内歯歯車2の歯車本体22が、弾性変形可能な弾性変形部24を有している。弾性変形部24は、歯車本体22のうち、少なくとも複数の内周溝223が形成された部位に設けられている。ここで、複数の内周溝223は、歯車本体22の内周面221の円周方向の全域に形成されているので、弾性変形部24もまた、歯車本体22の円周方向の全域に設けられている。
【0084】
本開示でいう「弾性」は、外力によって変形(弾性変形)し、その外力が除かれたときに元の形状に戻ろうとする性質を意味する。よって、弾性変形部24は、例えば他部品から外向き(つまり回転軸Ax1とは反対側に向けて)の外力を受けると、歯車本体22を拡径するように弾性変形し、かつ当該他部品に対して内向き(つまり回転軸Ax1側に向けて)の反力(弾性力)を作用させる。
【0085】
ここで、弾性変形部24は、内歯21を構成する複数の外ピン23に対して、歯車本体22の内側、つまり回転軸Ax1に向けて押し付ける向きの力F0を作用させる。つまり、弾性変形部24は、少なくとも歯車本体22の径方向に弾性変形可能であって、少なくとも内歯21のうち外歯31との噛み合い部位となる1以上の外ピン23から、歯車本体22を拡径する向きの力を受けて弾性変形する。したがって、弾性変形部24は、1以上の外ピン23から受ける力への反力として、当該1以上の外ピン23に対して、外歯31に押し付ける向きの力F0を作用させる。結果的に、少なくとも内歯21と外歯31との噛み合い部位においては、歯車本体22の弾性変形部24によって、内歯21を構成する外ピン23が外歯31に押し付けられることになる。
【0086】
要するに、本実施形態に係る歯車装置1Aは、内歯歯車2と、遊星歯車3と、を備える。内歯歯車2は、環状の歯車本体22と、複数の外ピン23と、を有する。複数の外ピン23は、歯車本体22の内周面221に形成された複数の内周溝223に自転可能な状態で保持され、内歯21を構成する。遊星歯車3は、内歯21に部分的に噛み合う外歯31を有する。歯車装置1Aは、遊星歯車3を揺動させることにより、遊星歯車3を内歯歯車2に対して相対的に回転させる。歯車本体22は、少なくとも複数の内周溝223が形成された部位に、弾性変形可能な弾性変形部24を有している。
【0087】
上記構成によれば、少なくとも内歯21における外歯31との噛み合い部位においては、内周溝223に保持されている外ピン23が歯車本体22の弾性変形部24からの弾性力によって外歯31に押し付けられる。したがって、複数の外ピン23によって構成される内歯21と外歯31との間の隙間(遊び)が埋まることになり、バックラッシュが低減される。よって、本実施形態に係る歯車装置1Aでは、内歯21と外歯31との噛み合い部位において内歯21と外歯31との間の隙間が広がることがあっても、バックラッシュの増大を抑制しやすい、という利点がある。
【0088】
より詳細に説明すると、一般的な歯車装置においては、特に、長期的な使用又は高負荷での使用等、使用環境によっては、遊星歯車3の外歯31に摩耗が生じることがある。外歯31に摩耗が生じると、内歯21と外歯31との噛み合い部位において内歯21と外歯31との間の隙間が徐々に広がって、バックラッシュが増大する可能性がある。つまり、たとえ歯車装置の使用開始時(製造時)にはバックラッシュが所望の範囲にあったとしても、経年的に、バックラッシュが増大し、所望の範囲から外れることがある。
【0089】
また、使用開始時(製造時)のバックラッシュを小さく抑えるために、外歯31が内歯21(複数の外ピン23)に対して比較的大きな力で押し付けられる設計とすることも考えられるが、その場合、外歯31がより摩耗しやすくなり、かつ歯車装置の動力伝達効率も低下する。さらに、バックラッシュを小さく抑えるには、シビアな部品の寸法精度及び組立精度が要求されるという問題もある。加えて、内接合遊星歯車装置では、歯形修整をしない状態が、理論的には性能が良いとされているところ、部品の寸法(加工)誤差、組立誤差又は変形等の影響により、歯形修整が必要となり、かつ歯形修整には多大なノウハウ及び経験が必要とされている。以上のことから、内接合遊星歯車装置において、バックラッシュを小さく抑えることは容易ではなく、さらに、経年的な外歯31の摩耗をも考慮してバックラッシュの増大を抑えることは困難である。
【0090】
本実施形態に係る歯車装置1Aは、歯車本体22の少なくとも複数の内周溝223が形成された部位に弾性変形部24を有することにより、このような困難な課題を解決し得る。すなわち、歯車装置1Aでは、歯車本体22の弾性変形部24を遊星歯車3に倣って積極的に弾性変形させることによって、遊星歯車3の外歯31と内歯歯車2の内歯21との間の隙間を小さくし、バックラッシュを小さく抑える。しかも、弾性変形部24が弾性変形することで、摩耗による遊星歯車3の外歯31の寸法変化に追従可能であるため、経年的に外歯31が摩耗することがあっても、バックラッシュの増大を抑えることができる。
【0091】
特に、歯車装置1Aが後述するロボット用関節装置200(図11参照)に適用された場合、バックラッシュが大きくなると、アーム等の先端部のぶれ(位置ずれ)、及びロストモーションの増大に直結するところ、バックラッシュの増大が抑制されることで、ロボットの制御の精度が向上することにつながる。
【0092】
具体的に、本実施形態では、図8及び図9に示すように、弾性変形部24は、歯車本体22の外周面に周方向にわたって外周溝25が形成されることで薄肉化された部位を含む。つまり、歯車本体22における外周面のうち、少なくとも内歯21の歯筋方向(回転軸Ax1に平行な方向)の中央部分には、周方向の全周にわたって外周溝25が形成されている。これにより、歯車本体22における内歯21の歯筋方向の中央部分には、少なくともその両側部分に比較して薄肉化、つまり厚みが小さく設定された弾性変形部24が形成されてる。
【0093】
ここで、外周溝25は、図8に示すように、内歯21の歯筋方向において、内周溝223の幅寸法内に収まる幅寸法を有している。つまり、弾性変形部24は、歯車本体22のうち、内歯21の歯筋方向において内周溝223が形成されている範囲にのみ形成されている。さらに、外周溝25は、歯車本体22の外周面からの深さが大きくなるほど、内歯21の歯筋方向における幅寸法が小さくなるよう、断面台形状に形成されている。言い換えれば、外周溝25は、その開口に近づくにつれて幅寸法が大きくなる。
【0094】
このような構成によれば、歯車本体22にはダイヤフラム構造(メンブレン構造)の弾性変形部24が形成されることになる。ダイヤフラム構造の歯車本体22によれば、弾性変形が容易になりながらも、応力集中の発生を抑制することが可能である。
【0095】
また、本実施形態に係る歯車装置1Aは、環状の支持枠9を更に備える。歯車本体22は、支持枠9の内側において支持枠9に固定される。そして、弾性変形部24と支持枠9との間には隙間が設けられる。要するに、歯車本体22は、歯車本体22よりも一回り大きな環状の支持枠9に嵌め込まれた状態で、外周溝25の開口が支持枠9にて閉塞されるようにして支持枠9に固定される。この状態で、弾性変形部24の弾性変形部24と、支持枠9の内周面との間には、外周溝25からなる隙間が形成される。ここで、支持枠9は、少なくとも弾性変形部24に比べて十分に高い剛性を有する。本実施形態では、固定用の複数の固定孔222は、歯車本体22に代えて支持枠9に形成されている。
【0096】
したがって、弾性変形部24が設けられることによって低下する歯車本体22の剛性は、支持枠9にて確保することが可能である。このような支持枠9が設けられることにより、(複数の固定孔222を用いて)支持枠9を他部材に固定することで、歯車本体22に弾性変形部24を設けながらも、他部材への歯車本体22の固定が容易になる。
【0097】
さらに、図8及び図9に示すように、歯車本体22は、内歯21の歯筋方向における弾性変形部24から見て少なくとも一方側に、弾性変形部24よりも高剛性の補強部26を有する。本実施形態では、外周溝25の幅方向(内歯21の歯筋方向)の両側部分が、弾性変形部24に比べて大きな厚みを有し、補強部26として機能する。このような補強部26が設けられることにより、弾性変形部24の弾性変形を可能としながらも、歯車本体22に所望の剛性を確保しやすい。
【0098】
また、複数の内周溝223の各々の内径は、複数の外ピン23の各々の外径よりも大きい。すなわち、図10に示すように、内周溝223の断面形状は、円柱状の外ピン23に合わせて円弧状に形成されているところ、当該円弧の半径r2は、外ピン23の半径r1よりも大きい(r1<r2)。言い換えれば、内周溝223の内周の曲率半径r2は、外ピン23の外周の曲率半径r1よりも大きく設定されている。したがって、例えば、弾性変形部24が変形して内周溝223の内径が多少変動しても、内周溝223の内径が外ピン23の外径を下回りにくくなり、外ピン23の外周面に内周溝223の開口周縁が噛み込むことを抑制できる。
【0099】
ところで、弾性変形部24は、少なくとも内歯21における外歯31との噛み合い部位において、内周溝223に保持されている外ピン23を外歯31に押し付けるだけの弾性を有していればよく、外周溝25によって薄肉化された構造に限らない。つまり、弾性変形部24は、外力によって変形し、かつその外力が除かれたときに元の形状に戻ろうとする性質(弾性)を有しており、弾性力によって、外ピン23を外歯31に押し付ける。弾性変形部24は、180GPa以下のヤング率を有する材質で構成されることが好ましい。
【0100】
本実施形態に係る歯車装置1Aは、図11に示すように、第1部材201及び第2部材202と共に、ロボット用関節装置200を構成する。言い換えれば、本実施形態に係るロボット用関節装置200は、歯車装置1Aと、第1部材201と、第2部材202と、を備える。第1部材201は、歯車本体22に固定される。第2部材202は、内歯歯車2に対する遊星歯車3の相対的な回転に伴って、第1部材201に対して相対的に回転する。図11は、ロボット用関節装置200の概略断面図である。また、図11では、第1部材201、第2部材202及び駆動源101を模式的に表している。
【0101】
このように構成されるロボット用関節装置200は、第1部材201と第2部材202とが、回転軸Ax1を中心に相対的に回転することにより、関節装置として機能する。ここで、歯車装置1Aの入力軸500を、駆動源101にて駆動することによって、第1部材201と第2部材202とは相対的に回転する。このとき、駆動源101で発生する回転(入力回転)が、歯車装置1Aにおいて比較的高い減速比にて減速され、第1部材201又は第2部材202を比較的高トルクで駆動する。つまり、歯車装置1Aにて連結された第1部材201と第2部材202とは、回転軸Ax1を中心に屈伸動作が可能となる。
【0102】
ロボット用関節装置200は、例えば、水平多関節ロボット(スカラ型ロボット)のようなロボットに用いられる。さらに、ロボット用関節装置200は、水平多関節ロボットに限らず、例えば、水平多関節ロボット以外の産業用ロボット、又は産業用以外のロボット等に用いられてもよい。また、本実施形態に係る歯車装置1Aは、ロボット用関節装置200に限らず、例えば、インホイールモータ等の車輪装置として、無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)等の車両に用いられてもよい。
【0103】
<変形例>
実施形態1は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態1は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、本開示で参照する図面は、いずれも模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0104】
クランク軸7A,7B,7Cの個数は「3」に限らず、2又は4以上であってもよい。さらに、クランク軸が1つのみであれば、振り分けタイプではなく、回転軸Ax1とクランク軸の軸心Ax2とが一致する偏心揺動型の内接噛合遊星歯車装置が実現される。この場合、クランク軸が駆動されることにより遊星歯車3が揺動し、回転軸Ax1を中心に、歯車本体22に対して、一対のキャリア18,19を相対的に回転させることができる。
【0105】
また、実施形態1では、遊星歯車3が2つのタイプの歯車装置1Aを例示したが、歯車装置1Aは、遊星歯車3を3つ以上備えていてもよい。例えば、歯車装置1Aが遊星歯車3を3つ備える場合、これら3つの遊星歯車3は、回転軸Ax1まわりで120度の位相差をもって配置されることが好ましい。また、歯車装置1Aは遊星歯車3を1つのみ備えていてもよい。あるいは、歯車装置1Aが遊星歯車3を3つ備える場合、これら3つの遊星歯車3のうち2つの遊星歯車3が同位相であって、残り1つの遊星歯車3が回転軸Ax1まわりで180度の位相差をもって配置されてもよい。
【0106】
また、軸受け部材6は、クロスローラベアリングであってもよいし、深溝玉軸受け又は4点接触玉軸受け等であってもよい。
【0107】
また、実施形態1で説明した入力歯車501の歯数、クランク軸歯車502A,502B,502Cの歯数、外ピン23の数(内歯21の歯数)、及び外歯31の歯数等は、一例に過ぎず、適宜変更可能である。
【0108】
また、偏心体軸受け5は、コロ軸受けに限らず、例えば、深溝玉軸受け、又はアンギュラ玉軸受等であってもよい。
【0109】
また、歯車装置1Aの各構成要素の材質は、金属に限らず、例えば、エンジニアリングプラスチック等の樹脂であってもよい。
【0110】
また、歯車装置1Aは、軸受け部材6の内輪61と外輪62との間の相対的な回転を出力として取り出すことができればよく、内輪61(入力側キャリア18及び出力側キャリア19)の回転力が出力として取り出される構成に限らない。例えば、内輪61に対して相対的に回転する外輪62(ケース10)の回転力が出力として取り出されてもよい。
【0111】
また、実施形態1では、クランク軸7A,7B,7Cの回転軸Ax1の出力側の端面は、出力側カバー14に直接的に接触しているが、この構成に限らず、端面と出力側カバー14との間に、例えばシム部材等の板状部品が配置されてもよい。この場合、出力側カバー14を取り付ける際に、板状部品の厚み(及び/又は枚数)を調節することによって、軸方向において端面と出力側カバー14との間の隙間を調節することができ、クランク軸7A,7B,7Cの軸方向における「遊び」を調節できる。さらに、板状部品が、端面と出力側カバー14との間の摩擦を低減する軌道輪(軌道盤)として機能する。
【0112】
また、潤滑剤は、潤滑油(オイル)等の液状の物質に限らず、グリス等のゲル状の物質であってもよい。
【0113】
また、弾性変形部24は、ダイヤフラム構造に限らず、例えば、カンチレバー構造又は板ばね構造等の適宜の構造を含んでもよい。
【0114】
また、歯車本体22の外周面に形成される外周溝25は、断面台形状に限らず、適宜の形状を採用可能である。一例として、外周溝25の断面形状は、図12Aに示すようにU字状であってもよいし、図12Bに示すように矩形状(長方形状)であってもよい。
【0115】
(実施形態2)
本実施形態に係る内接噛合遊星歯車装置1B(以下、単に「歯車装置1B」ともいう)は、図13に示すように、弾性変形部24に検知部91が設けられている点で、実施形態1に係る歯車装置1Aと相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。図13は、図8図7の領域Z1の拡大図)に対応する概略図であって、電気的な接続関係を一点鎖線矢印で示している。
【0116】
すなわち、本実施形態では、弾性変形部24に設けられた検知部91から、情報処理部92に対して電気信号により検知値が出力される。検知部91は、例えば、弾性変形部24の変形量に応じた検知値を出力する適宜のセンサを含む。一例として、検知部91は、弾性変形部24に取り付けられている歪ゲージ等の素子である。ただし、検知部91は、歪ゲージに限らず、例えば、静電容量式センサにて変位量を検知することで、当該変位量をもって弾性変形部24の変形量を検知してもよい。検知部91は、弾性変形部24の表面(外周面)に配置されていてもよいし、弾性変形部24に少なくとも一部が埋め込まれていてもよい。また、検知部91は1つ以上設けられていればよく、複数の検知部91が設けられていてもよい。
【0117】
情報処理部92は、検知部91の検知値(電気信号)が入力され、当該検知値に対して適宜の処理を行う。本実施形態では、情報処理部92は、1以上のプロセッサを有するコンピュータシステムを主構成とするので、1以上のプロセッサがプログラムを実行することにより、情報処理部92としての機能が実現される。情報処理部92は、CPU(Central Processing Unit)等の1以上のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の1以上のメモリとを有するコンピュータシステムを主構成とし、種々の処理(情報処理)を実行する。本実施形態では、情報処理部92は、例えば、情報処理部92は、駆動源101(図11参照)の制御に用いられる。
【0118】
情報処理部92は、弾性変形部24の変形量に対応する検知部91の検知値に基づいて、例えば、内歯歯車2と遊星歯車3との間にかかるトルクを推定するトルク推定処理を実行する。つまり、情報処理部92は、弾性変形部24の変形量が大きくなるほど、トルクが大きいことと推定する。情報処理部92は、このようにして推定されるトルクを、例えば駆動源101の制御に反映する。
【0119】
以上説明したように、本実施形態に係る歯車装置1Bは、弾性変形部24の変形量を検知する検知部91を更に備える。この構成によれば、弾性変形部24の変形量に基づいて、例えば歯車装置1Bのトルクの推定等が可能になる。したがって、弾性変形部24の変形量を、例えば駆動源101の制御等に反映することができる。
【0120】
また、情報処理部92は、トルク推定処理に加えて又は代えて、例えば、外歯31の摩耗検知処理等を行ってもよい。
【0121】
実施形態2の構成(変形例を含む)は、実施形態1で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて採用可能である。
【0122】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A,1B)は、内歯歯車(2)と、遊星歯車(3)と、を備え、遊星歯車(3)を揺動させることにより、遊星歯車(3)を内歯歯車(2)に対して相対的に回転させる。内歯歯車(2)は、環状の歯車本体(22)と、歯車本体(22)の内周面(221)に形成された複数の内周溝(223)に自転可能な状態で保持され内歯(21)を構成する複数の外ピン(23)と、を有する。遊星歯車(3)は、内歯(21)に部分的に噛み合う外歯(31)を有する。歯車本体(22)は、少なくとも複数の内周溝(223)が形成された部位に弾性変形可能な弾性変形部(24)を有している。
【0123】
この態様によれば、少なくとも内歯(21)における外歯(31)との噛み合い部位においては、内周溝(223)に保持されている外ピン(23)が歯車本体(22)の弾性変形部(24)からの弾性力によって外歯(31)に押し付けられる。したがって、複数の外ピン(23)によって構成される内歯(21)と外歯(31)との間の隙間(遊び)が埋まることになり、バックラッシュが低減される。よって、内接噛合遊星歯車装置(1,1A,1B)では、内歯(21)と外歯(31)との噛み合い部位において内歯(21)と外歯(31)との間の隙間が広がることがあっても、バックラッシュの増大を抑制しやすい、という利点がある。
【0124】
第2の態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A,1B)では、第1の態様において、弾性変形部(24)は、歯車本体(22)の外周面に周方向にわたって外周溝(25)が形成されることで薄肉化された部位を含む。
【0125】
この態様によれば、歯車本体(22)における内歯(21)の歯筋方向の中央部分には、少なくともその両側部分に比較して薄肉化、つまり厚みが小さく設定された弾性変形部(24)が形成されてる。
【0126】
第3の態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A,1B)では、第1又は2の態様において、複数の内周溝(223)の各々の内径(r2)は、複数の外ピン(23)の各々の外径(r1)よりも大きい。
【0127】
この態様によれば、例えば、弾性変形部(24)が変形して内周溝223の内径が多少変動しても、内周溝(223)の内径が外ピン(23)の外径を下回りにくくなり、外ピン(23)の外周面に内周溝(223)の開口周縁が噛み込むことを抑制できる。
【0128】
第4の態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A,1B)は、第1~3のいずれかの態様において、弾性変形部(24)の変形量を検知する検知部(91)を更に備える。
【0129】
この態様によれば、検知部(91)の変形量から弾性変形部(24)の変形量を求め、当該変形量を、例えば駆動源(101)の制御等に反映することができる。
【0130】
第5の態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A,1B)は、第1~4のいずれかの態様において、環状の支持枠(9)を更に備える。歯車本体(22)は、支持枠(9)の内側において支持枠(9)に固定される。弾性変形部(24)と支持枠(9)との間には隙間が設けられる。
【0131】
この態様によれば、弾性変形部(24)が設けられることによって低下する歯車本体(22)の剛性は、支持枠(9)にて確保することが可能である。
【0132】
第6の態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A,1B)では、第1~5のいずれかの態様において、歯車本体(22)は、内歯(21)の歯筋方向における弾性変形部(24)から見て少なくとも一方側に、弾性変形部(24)よりも高剛性の補強部(26)を有する。
【0133】
この態様によれば、弾性変形部(24)の弾性変形を可能としながらも、歯車本体(22)に所望の剛性を確保しやすい。
【0134】
第7の態様に係るロボット用関節装置(200)は、第1~6のいずれかの態様に係る内接噛合遊星歯車装置(1,1A,1B)と、歯車本体(22)に固定される第1部材(201)と、内歯歯車(2)に対する遊星歯車(3)の相対的な回転に伴って、第1部材(201)に対して相対的に回転する第2部材(202)と、を備える。
【0135】
この態様によれば、複数の外ピン(23)によって構成される内歯(21)と外歯(31)との間の隙間(遊び)が埋まることになり、バックラッシュが低減される。よって、内接噛合遊星歯車装置(1,1A,1B)では、内歯(21)と外歯(31)との噛み合い部位において内歯(21)と外歯(31)との間の隙間が広がることがあっても、バックラッシュの増大を抑制しやすい、という利点がある。
【0136】
この態様によれば、少なくとも内歯(21)における外歯(31)との噛み合い部位においては、内周溝(223)に保持されている外ピン(23)が歯車本体(22)の弾性変形部(24)からの弾性力によって外歯(31)に押し付けられる。したがって、複数の外ピン(23)によって構成される内歯(21)と外歯(31)との間の隙間(遊び)が埋まることになり、バックラッシュが低減される。よって、内接噛合遊星歯車装置(1,1A,1B)では、内歯(21)と外歯(31)との噛み合い部位において内歯(21)と外歯(31)との間の隙間が広がることがあっても、バックラッシュの増大を抑制しやすい、という利点がある。
【0137】
第2~6の態様に係る構成については、内接噛合遊星歯車装置(1,1A,1B)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0138】
1,1A,1B 内接噛合遊星歯車装置
2 内歯歯車
3 遊星歯車
9 支持枠
21 内歯
22 歯車本体
23 外ピン
24 弾性変形部
25 外周溝
26 補強部
31 外歯
91 検知部
200 ロボット用関節装置
201 第1部材
202 第2部材
221 内周面
223 内周溝
r1 外径
r2 内径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13