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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092897
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】工程状態可視化システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20240701BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20240701BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048452
(22)【出願日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2022208448
(32)【優先日】2022-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇久
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慎一
(72)【発明者】
【氏名】川上 健人
(72)【発明者】
【氏名】桐山 謹次
(72)【発明者】
【氏名】竹内 浩之
【テーマコード(参考)】
3C100
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3C100AA38
3C100AA56
3C100AA57
3C100AA62
3C100BB27
3C100BB34
3C100CC02
3C100CC03
5L049CC04
5L050CC04
(57)【要約】
【課題】品質に関する工程状態を迅速に把握することができるとともに、担当者の負担を軽減することができる工程状態可視化システムを提供する。
【解決手段】実施形態による工程状態可視化システム10は、生産設備における品質に関する工程状態を可視化するためのシステムであって、1つの群として設定された所定数の検査対象物を検査した際の測定値の平均値を縦軸とし、測定した時刻を横軸とした折れ線グラフで表される第1グラフと、同じ群に含まれる測定値の最大値と最小値との差分を縦軸とし、測定した時刻を横軸とした折れ線グラフで表される第2グラフとを表示させる処理を実行するデータ可視化部41を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産設備における品質に関する工程状態を可視化するための工程状態可視化システムであって、
1つの群として設定された所定数の検査対象物を検査した際の測定値の平均値を縦軸とし、測定した時刻を横軸とした折れ線グラフで表される第1グラフと、同じ群に含まれる測定値の最大値と最小値との差分を縦軸とし、測定した時刻を横軸とした折れ線グラフで表される第2グラフとを表示させる処理を実行するデータ可視化部を備える工程状態可視化システム。
【請求項2】
前記データ可視化部は、前記第1グラフと前記第2グラフとを同一画面に表示させる請求項1に記載の工程状態可視化システム。
【請求項3】
前記データ可視化部は、前記第1グラフと前記第2グラフとを、異なる表示装置に表示させる請求項1に記載の工程状態可視化システム。
【請求項4】
前記データ可視化部は、前記第1グラフまたは前記第2グラフを、作業者の操作に基づいて切り替えて表示させる請求項1に記載の工程状態可視化システム。
【請求項5】
前記データ可視化部は、前記第1グラフおよび前記第2グラフとともに、測定値の度数を縦軸とし、階級を横軸とした第3グラフを表示させる処理をさらに実行する請求項1に記載の工程状態可視化システム。
【請求項6】
前記データ可視化部は、前記第3グラフを、前記第1グラフまたは前記第2グラフの少なくとも一方と同一画面に表示させる請求項5に記載の工程状態可視化システム。
【請求項7】
前記データ可視化部は、前記第3グラフを、前記第1グラフまたは前記第2グラフの少なくとも一方とは異なる表示装置に表示させる請求項5に記載の工程状態可視化システム。
【請求項8】
前記データ可視化部は、前記第3グラフを、作業者の操作に基づいて切り替えて表示させる請求項6に記載の工程状態可視化システム。
【請求項9】
前記データ可視化部は、測定値、または、測定値の最大値と最小値との差分が、予め設定されている異常判定ルールを満たした場合に異常を報知するための報知領域を表示させる処理をさらに実行する請求項1に記載の工程状態可視化システム。
【請求項10】
前記データ可視化部は、前記報知領域として、前記第1グラフにて示される最新の平均値が予め設定されている異常判定ルールを満たした場合に異常を報知するための第1報知領域と、前記第2グラフにて示される最新の差分が予め設定されている異常判定ルールを満たした場合に異常を報知するための第2報知領域とを表示させる処理をさらに実行する請求項1に記載の工程状態可視化システム。
【請求項11】
前記データ可視化部は、前記報知領域を、前記第1グラフまたは前記第2グラフと同一画面に表示させる請求項10に記載の工程状態可視化システム。
【請求項12】
前記データ可視化部は、前記報知領域において異常判定ルールが満たされた場合、確認した旨の操作が入力されるまで異常を報知するための表示を継続する請求項10または11に記載の工程状態可視化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生産設備における品質に関する工程状態を可視化するための工程状態可視化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場内に設置される製品の生産ラインは、例えば設備用のPLC(Programmable Logic Controller)、加工装置、ロボット、検査装置、搬送装置などの生産設備を備えている。そして、工場での生産において、製品や部品の寸法などを検査する検査工程は、製品の品質を保つ上で重要である。そのため、例えば特許文献1では、状況の工場における生産性や品質の向上に資する情報をユーザに提示できるようにすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-132848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、検査工程では、加工工程や組み立て工程などの各工程が正しく機能しているか否かのチェックが行われるものの、従来では、例えば現場の監督者や作業者が、当日に検査した測定値を1日の最後に集計し、品質チェックツールを用いて1日に1回程度確認していた。このような品質チェックツールとしては、例えばXBar-R管理図やヒストグラムなどが用いられる。
【0005】
しかしながら、品質チェックツールを用いて、例えば規格外のものが多いとか、規格内に収まってはいるもののバラツキが大きいといった工程状態であることを把握できたとしても、そのような結果が得られた後に生産設備の調整などを行うことになることから、設備の調整などの対処が遅くなるという問題がある。
【0006】
また、測定値の規格内の収まり具合を確認するためにはヒストグラムを参照する必要があり、測定値が徐々に規格から外れてきているといった傾向を確認するためにはXbar-R管理図を参照する必要があるなど、確認したい項目を提示するチェックツールが分かれていることにより、品質管理を担当する担当者の負担が大きいという問題もある。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、品質に関する工程状態を迅速に把握することができるとともに、担当者の負担を軽減することができる工程状態可視化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態による工程状態可視化システムは、生産設備における品質に関する工程状態を可視化するためのシステムであって、1つの群として設定された所定数の検査対象物を検査した際の測定値の平均値を縦軸とし、測定した時刻を横軸とした折れ線グラフで表される第1グラフと、同じ群に含まれる測定値の最大値と最小値との差分を縦軸とし、測定した時刻を横軸とした折れ線グラフで表される第2グラフとを表示させる処理を実行するデータ可視化部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態による可視化システムの構成例を模式的に示す図
図2】可視化処理の流れを示す図
図3】品質に関する工程状態を表示する態様の一例を模式的に示す図
図4】他の可視化例および報知態様例を模式的に示す図その1
図5】他の可視化例および報知態様例を模式的に示す図その2
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態によるについて図面を参照しながら説明する。図1に示すように、工程状態可視化システム10は、生産ラインに配置されている生産設備からデータを取得し、各工程の工程状態を可視化するためのシステムとして構築されている。生産設備としては、例えばPLC11(Programmable Logic Controller)、加工装置12、ロボット13、搬送装置14、検査装置15などが想定される。ただし、図1に示す生産設備の数や種類は一例であり、これに限定されない。
【0011】
工程状態可視化システム10の機能は、主として管理装置20によって実現されている。この管理装置20は、例えば工場内に施設されたネットワーク21や中継装置22を介して各生産設備と通信可能に接続されている。ただし、管理装置20は、遠隔地の生産設備との間を例えばインターネットや広域通信網などにより通信可能に接続されていてもよい。すなわち、工程状態可視化システム10としては、生産設備から各種のデータを取得でき、工程状態を可視化して提供できる構成となっていればよく、例えばいわゆるクラウド型システムとして構築することもできる。
【0012】
本実施形態では、製品や部品の寸法などの検査結果、つまりは、品質の検査のために測定される測定値を用いて、工程状態を判定することを想定している。そのため、管理装置20は、工程状態を示す測定値を生産設備側から取得するとともに、工程状態を可視化するための可視化処理を実行する。ここで、品質に関する工程状態とは、生産時に実施される各工程において品質に関する検査を行った際の測定値によって判定されるものである。換言すると、工程状態とは、検査装置15による検査結果に限らず、例えばロボット13が部品を組み付ける工程において部品の寸法などを検査した場合には、その検査結果によってその工程の状態が判定される。
【0013】
具体的には、管理装置20は、コンピュータで構成されており、工程状態を可視化して表示するための表示装置23と、後述するように表示態様を変更するための操作などを入力する入力装置24とを備えている。また、管理装置20は、後述するように、現場の作業者(M)が携帯する携帯端末25、管理装置20とは異なる他の場所に設置されているパソコンやモニタなどの外部端末26、あるいは、図示は省略するが例えばインターネットを介して接続された遠隔地の端末に対して工程状態を可視化して提供可能に構成されている。
【0014】
また、管理装置20は、制御部30、記憶部31、表示装置23への映像主力を行う表示部32、生産設備や端末などとの間でデータを通信する通信部33などを備えている。制御部30は、例えば図示しないCPUによって構成されており、記憶部31に記憶されているプログラムを実行することによって管理装置20を制御するとともに、工程状態可視化システム10のための機能部をソフトウェアで実現している。ただし、各機能部は個別のハードウェアで実現する構成とすることもできる。
【0015】
制御部30には、大きく分けて、生産設備側からデータを取得するためのデータ取得部40と、取得したデータに基づいて工程状態を可視化するためのデータ可視化部41の機能部が設けられている。具体的には、データ取得部40は、生産設備側から各工程における検査結果の測定値を取得するとともに、取得した測定値を、その取得時刻と対応付けて履歴として集計する。集計された測定値は、記憶部31に記憶されている。本実施形態の場合、集計された測定値は、データベース42として記憶部31に記憶されている。なお、図1では、データベース42をDBとして示している。
【0016】
データ可視化部41は、1つの群として設定された所定数の検査対象物を検査した際の測定値の平均値を縦軸とし、測定した時刻を横軸とした折れ線グラフで表される第1グラフと、同じ群に含まれる測定値の最大値と最小値との差分を縦軸とし、測定した時刻を横軸とした折れ線グラフで表される第2グラフとを、同一画面に表示させる処理を実行する。また、データ可視化部41は、第1グラフおよび第2グラフとともに、測定値の度数を縦軸とし、階級を横軸とした第3グラフを同一画面に表示させる処理をさらに実行する。つまり、本実施形態では、後述する図3に示すように、第1グラフとしてXbar管理図(G1)を採用し、第2グラフとしてR管理図(G2)を採用し、第3グラフとしてヒストグラム(G3)を採用している。
【0017】
また、データ可視化部41は、後述する図3に示すように、第1グラフにて示される最新の平均値が予め設定されている異常判定ルールを満たした場合に異常を報知するための第1報知領域(K1)と、第2グラフにて示される最新の差分が予め設定されている異常判定ルールを満たした場合に異常を報知するための第2報知領域(K2)とを、同一画面に表示させる処理をさらに実行する。
【0018】
このとき、データ可視化部41は、同一画面に表示させる処理として、管理装置20に接続されている表示装置23に対して映像として出力する処理に限らず、携帯端末25や外部端末26あるいは遠隔地からブラウザソフトウェアで現在工程状態情報と履歴工程状態情報とを同一画面で閲覧するための処理も実行する。
【0019】
そのため、制御部30には、携帯端末25や外部端末26からの閲覧要求を受け付けるためのHTTPサーバ43が実装されている。なお、HTTPはHypertext Transfer Protocolの略称である。また、ブラウザソフトウェアで閲覧するための手法としては、例えば画面を共有したりデータを送信して端末側のブラウザソフトウェアで画面を再構築したりするなど、周知の技術を適宜採用すればよい。また、管理装置20からデータを取得して画面表示する専用のアプリケーションソフトウェアで閲覧する構成としてもよい。
【0020】
次に上記した構成の作用および効果について説明する。
前述のように、工場での生産において、製品や部品の寸法などを検査する検査工程は、製品の品質を保つ上で重要である。寸法としては、例えば切削加工後の仕上がり寸法や、組付け加工時のねじの長さなどが考えられる。そのため、検査工程では、加工工程や組み立て工程などの各工程が正しく機能しているか否かのチェックが行われている。ただし、従来では、例えば現場の監督者や作業者が、当日に検査した測定値を1日の最後に集計し、品質チェックツールを用いて1日に1回程度確認していた。そのため、例えば規格外のものが多いとか、規格内に収まってはいるもののバラツキが大きいといった工程状態であることを把握できたとしても、そのような結果が得られた後、つまりは、次の日以降に生産設備の調整などを行うことになることから、設備の調整などの対処が遅くなっていた。
【0021】
また、品質チェックツールとしては例えばXBar-R管理図やヒストグラムなどを利用することが考えられるものの、測定値の規格内の収まり具合を確認するためにはヒストグラムを参照する必要があったり、測定値が徐々に規格から外れてきているといった傾向を確認するためにはXbar-R管理図を参照する必要があったりするなど、確認したい項目を提示するチェックツールが分かれていることにより、品質管理を担当する担当者の負担が大きかった。
【0022】
そこで、工程状態可視化システム10では、以下のようにして、品質に関する工程状態を迅速に把握できるようにするとともに、担当者の負担を軽減することができるようにしている。具体的には、工程状態可視化システム10は、図3に示すように、工程状態を把握するためのパラメータとして、製品や部品を検査した際の測定値を取得する(S1)。このとき、工程状態可視化システム10は、測定開始信号を生産設備側から取得したタイミングや、データ取得部40から所定周期ごとに取得することにより、リアルタイムでの検査データの取得を可能にしている。
【0023】
続いて、工程状態可視化システム10は、群ごとの測定値を集計し(S2)、群ごとの平均値および差分を演算し(S3)、工程状態を可視化するための可視化処理を実行する(S4)。この可視化処理では、工程状態可視化システム10は、図3に示すように、例えば表示装置23の画面に、第1グラフとしてのXbar管理図(G1)、第2グラフとしてのR管理図(G2)を同一画面に表示する。
【0024】
Xbar管理図は、測定値の平均値を縦軸とし、測定した時刻を横軸とした折れ線グラフであり、平均値の時間的推移とともに、中心線(CL)、上方管理限界線(UCL)、下方管理限界線(LCL)、上限規格値線(USL)、下限規格値線(LSL)が示されている。なお、中心線や管理限界線あるいは規格値線については周知であるので詳細な説明は省略するが、管理限界線は、設備が正常である場合にはこの範囲内にデータが収まると想定される範囲を示すものであり、管理限界線に達した場合には何らかの対処が必要になる。また、規格値は、製品や部品のいわゆる許容範囲を示している。
【0025】
このとき、工程状態可視化システム10は、Xbar管理図を、画面の左側であってR管理図の上側に配置して表示する。つまり、工程状態可視化システム10は、画面にデータが表示される際、多くの人が左側から右側に視線を移動すると考えられる状況に鑑みて、Xbar管理図を画面の左側且つ上側に配置する。これにより、平均値を示すXbar管理図が最も見やすいと思われる位置に配置される。
【0026】
R管理図は、差分を縦軸とし、測定した時刻を横軸とした折れ線グラフであり、差分の時間的推移とともに、中心線(CL)、上方管理限界線(UCL)、下方管理限界線(LCL)が示されている。工程状態可視化システム10は、R管理図を、画面の左側であってXbar管理図の下側に、横軸を同じ時刻単位として表示する。これにより、Xbar管理図において気になるプロットデータがあった場合、担当者は、そのまま下に視線を移動させることにより、対応する差分を容易に確認することができる。なお、仮に差分を最重要視する場合には、Xbar管理図とR管理図とを上下に入れ替えることもできる。
【0027】
また、工程状態可視化システム10は、Xbar管理図およびR管理図と同一画面において、Xbar管理図の右側に、第3グラフとしてのヒストグラム(G3)を表示するとともに、ヒストグラムの下方に配置されている数値表示領域(N1)に、群に含まれている測定値の例えば最大値、平均値、最小値、分散値、標準偏差などのデータを数値により表示する。これにより、Xbar管理図における最新のプロットデータ、つまりは、Xbar管理図においてグラフの右端のプロットデータの詳細を、視線をほぼ動かすことなく確認することができる。また、個別の測定値がそれぞれ表示されることから、工程での部品や製品の全体的な品質を確認および把握することができる。
【0028】
また、工程状態可視化システム10は、Xbar管理図にて示される最新の平均値が予め設定されている異常判定ルールを満たした場合に異常を報知するための第1報知領域(K1)と、R管理図にて示される最新の差分が予め設定されている異常判定ルールを満たした場合に異常を報知するための第2報知領域(K2)とを、さらに同一画面に表示させている。なお、異常判定ルールは、例えばJISZ9020に定められたものを適宜適用することができるし、独自に設定することもできる。
【0029】
工程状態可視化システム10は、図2に示すように、異常判定ルールを満たすか否かを判定し(S5)、異常判定ルールを満たしていない場合には(S5:NO)、各報知領域を例えば緑色の塗りつぶし表示することにより、異常が発生していないことを報知する。一方、工程状態可視化システム10は、異常判定ルールを満たした場合には(S5:YES)、対応する報知領域を例えば赤色で塗りつぶし表示することにより、異常が発生したことを報知する。
【0030】
例えば図3の場合であれば、画面中央下部に第1報知領域および第2報知領域が配置され、第1報知領域は、Xbar管理図における最新の平均値が上限規格値線(USL)を超えたことから、異常判定ルールを満たしたとして赤色で塗りつぶし表示されている。一方、第2報知領域は、異常判定ルールを満たしていないとして緑色で塗りつぶし表示されている。このように、画面中央付近に第1報知領域および第2報知領域を配置したことにより、異常の報知を見逃してしまうおそれを低減できる。なお、図3ではハッチングの違いにより表示態様の違いを模式的に示している。
【0031】
さらに、工程状態可視化システム10は、第2報知領域の下方に、確認ボタン(B1)をさらに表示する。この確認ボタンは、異常が発生したことが報知された場合に、例えば管理者が押下することにより、異常の発生を確認したことを工程状態可視化システム10に通知するためのものである。なお、管理者は例えばマウスカーソルを移動させて確認ボタンをクリックしたり、タッチパネル対応の画面であれば確認ボタンが表示されている箇所をタッチ操作したりすることにより、確認した旨の操作を入力することになる。
【0032】
そして、工程状態可視化システム10は、異常判定ルールが満たされて異常を報知した場合には、確認した旨の操作が入力されるか否かを判定し(S7)、確認操作が入力されていなければ(S7:NO)、また、工程状態可視化システム10を停止させる終了操作が入力されていなければ(S9:NO)、ステップS1に移行して上記した可視化のための処理を繰り替える。一方、工程状態可視化システム10は、確認操作が入力された場合には(S7:YES)、異常の報知を終了する(S8)。
【0033】
つまり、工程状態可視化システム10は、異常判定ルールが満たされた場合には、確認した旨の操作が入力されるまで異常を報知するための表示を継続する。これにより、リアルタイムでグラフが変化する場合等において、異常判定ルールに抵触したことを見逃してしまうおそれをさらに低減することができる。
【0034】
以上説明した工程状態可視化システム10によれば、次のような効果を得ることができる。
工程状態可視化システム10は、生産設備における品質に関する工程状態を可視化するためのシステムであって、1つの群として設定された所定数の検査対象物を検査した際の測定値の平均値を縦軸とし、測定した時刻を横軸とした折れ線グラフで表される第1グラフと、同じ群に含まれる測定値の最大値と最小値との差分を縦軸とし、測定した時刻を横軸とした折れ線グラフで表される第2グラフとを表示させる処理を実行するデータ可視化部41を備える。
【0035】
このように異なる品質チェックツールを表示することにより、第1グラフによって測定値の群ごとの平均値で傾向を確認および把握しつつ、第2グラフによって全体の測定値のばらつきを同時に確認することが可能となる。そして、それぞれのチェックツールに切り替える必要もなくなる。したがって、品質に関する工程状態を迅速に把握することができるとともに、担当者の負担を軽減することができる。
【0036】
また、本実施形態では、データ可視化部41は、第1グラフと第2グラフとを同一画面に表示させる。これにより、異なる品質チェックツールのチェック結果が同一画面に表示されることから、両者を容易に比較および把握することができる。
また、データ取得部40で測定値を取得し、取得した測定値に基づいて可視化することにより、日中の生産中であっても工程状態を確認することが可能となり、効率よく設備を管理することが期待できる。
また、工程状態可視化システム10では、データ可視化部41は、第1グラフおよび第2グラフとともに、測定値の度数を縦軸とし、階級を横軸とした第3グラフを同一画面に表示させる処理をさらに実行する。これにより、個別の測定値がそれぞれ表示されることから、工程での部品や製品の全体的な品質を確認および把握することができるとともに、第1グラフや第2グラフにおいて気になるデータプロットがあった場合、その詳細を迅速に確認することができる。
【0037】
また、工程状態可視化システム10では、データ可視化部41は、第1グラフにて示される最新の平均値が予め設定されている異常判定ルールを満たした場合に異常を報知するための第1報知領域と、第2グラフにて示される最新の差分が予め設定されている異常判定ルールを満たした場合に異常を報知するための第2報知領域とを、同一画面に表示させる処理をさらに実行する。これにより、品質の確認と異常の発生とを同一画面で確認することができる。
【0038】
また、工程状態可視化システム10では、データ可視化部41は、第1報知領域または第2報知領域において異常判定ルールが満たされた場合、確認した旨の操作が入力されるまで異常を報知するための表示を継続する。これにより、リアルタイムでグラフが変化する場合等において、異常判定ルールに抵触したことを見逃してしまうことを防止することができる。
【0039】
実施形態では、管理装置20にデータ取得部40とデータ可視化部41とを設けた例を示したが、工程状態可視化システム10は、データ可視化部41と同等の機能を実現するプログラムを実行することによっても構築することができる。これにより、例えば生産設備の稼働状況を示す各種のデータを収集するシステムが既に稼働している環境に対して工程状態可視化プログラムを導入することにより、工程状態可視化システム10を容易に構築することができる。
【0040】
すなわち、例えば管理装置20の制御部30に、1つの群として設定された所定数の検査対象物を検査した際の測定値の平均値を縦軸とし、測定した時刻を横軸とした折れ線グラフで表される第1グラフと、同じ群に含まれる測定値の最大値と最小値との差分を縦軸とし、測定した時刻を横軸とした折れ線グラフで表される第2グラフとを、同一画面に表示させる処理を実行するデータ可視化処理を実行させる工程状態可視化プログラムによっても、実施形態で説明した工程状態可視化システム10と同様の効果を得ることができる。
【0041】
表示装置23は、いわゆるパソコン用のディスプレイに限らず、例えば作業者が頭に装着するヘッドマウントディスプレイや腕に装着するスマートウォッチなどのいわゆるウェアラブルデバイスで構成することもできる。
【0042】
実施形態では第1グラフと第2グラフとを同一画面に表示させる構成を例示したが、異なる表示装置に表示させる構成とすることができる。これにより、管理者用に詳細なデータを表示するとともに、傾向などを作業者が所持する端末などに表示することができ、使い勝手を向上させることができる。
【0043】
実施形態では、第1グラフと第2グラフとを1つの表示装置23の同一画面に表示する構成を例示したが、同一画面とは、必ずしも単一の表示装置23の画面を意味しているのではなく、物理的に複数の表示装置23に対してデータ可視化部41が可視化したデータを表示する構成も含まれる。例えば、いわゆるデュアルディスプレイ等のように、画面表示を拡張して複数の表示装置23に分けて表示する構成も、同一画面への表示とみなすことができる。これは報知領域についても同様である。
【0044】
また、第1グラフと第2グラフのように2つ以上の情報又は表示を同時に表示させるとは、その情報又は表示を見た者が同時に表示されていると認識できる程度であればよく、厳密に同時である必要はない。例えば、2つ以上の情報又は表示を短い間隔で切り替えて表示させる場合であっても、その情報を見た者が2つ以上の情報を同時に把握できるのであれば、その表示態様は本実施形態における同時に表示させる概念に含まれる。
【0045】
また、工程状態可視化システム10は、第1グラフと第2グラフとを異なる表示装置23に同時に表示させる構成とすることができる。例えばパソコンのディスプレイには一方のグラフを表示し、携帯端末やHMDに他方のグラフを表示させる構成とすることができる。すなわち、工程状態可視化システム10は、第1グラフと第2グラフとを、作業者の視野内に表示する構成とすることができる。この場合、一方のグラフを見た作業者が他方のグラフを見たいと思った場合に直ぐ見られるように、作業者の同一視野内に表示させる構成とすることもできる。これは、上記したような表示装置23を複数設ける場合も同様である。
【0046】
実施形態では第1報知領域(K1)と第2報知領域(K2)とを、第1グラフ(G1)や第2グラフ(G2)とは別の領域に設ける構成を例示したが、例えば図4に示すように、第1グラフに重なる態様の矢印(K11)や第2グラフに重なる態様の矢印(K12)を表示し、各矢印の表示色により異常を報知する構成とすることができる。例えば、矢印の表示色が緑であれば許容範囲内であることを示し、表示色が黄色であれば許容範囲を超える可能性のある変化が生じていることを示し、表示色が赤色であれば許容範囲を超えていることを示す、といった態様で異常を報知する構成とすることができる。つまり、矢印を、第1報知領域や第2報知領域として利用する構成とすることができる。
【0047】
この場合、矢印の傾きや大きさを、変化の傾向を示すものとすることができる。例えば、矢印の向きが概ね画面の左右方向に平行であれば変化が少なく、矢印の向きが左右方向よりも上向きであれば数値が上昇する変化が生じており、矢印の向きが左右方向よりも下向きであれば数値が減少する変化が生じていることを示すことができる。これにより、実際の作業現場において表示装置23から離れた位置にいてグラフや数値が見づらい状況の作業者や、表示画面が比較的小さいと想定されるウェアラブルデバイスに表示させる場合などにおいて、容易に現在の傾向を把握することができるようになる。また、グラフの最新情報つまりはグラフの右端の最新のデータと重ならないように矢印を表示させることにより、傾向の把握と、矢印を見て詳細を知りたいと思った作業者による実際のデータの確認とを行うことができる。
【0048】
また、図5に示すように、グラフの背景色を変えることにより第1報知領域(K21)や第2報知領域(K22)とすることができる。つまり、グラフの表示領域を報知領域として利用することができる。例えば、背景色が緑であれば許容範囲内であることを示し、背景色が黄色であれば許容範囲を超える可能性のある変化が生じていることを示し、背景色が赤色であれば許容範囲を超えていることを示す、といった態様で異常を報知する構成とすることができる。これにより、多少離れた位置にいても、現在の傾向や異常を把握することができる。なお、報知領域は、測定値、または、測定値の最大値と最小値との差分が予め設定されている異常判定ルールを満たした場合に異常を報知できればよく、必ずしも双方に対する報知領域を設ける必要は無い。また、グラフの表示領域を除いた部分を報知領域とする構成、つまりは、報知領域によってグラフの表示領域を縁取りしたような構成とすることもできる。
【0049】
また、データ可視化部41は、第1グラフまたは第2グラフを、作業者の操作に基づいて切り替えて表示させる構成とすることができる。これにより、必要としないデータは表示させず、必要としているデータを表示させることが可能となり、データを把握し易くすることができる。
【0050】
また、データ可視化部41は、第3グラフを、第1グラフまたは第2グラフの少なくとも一方と同一画面に表示させる構成とすることができる。これにより、必要としないデータは表示させず、必要としているデータを表示させることが可能となり、データを把握し易くすることができる。
【0051】
この場合、データ可視化部41は、第3グラフを、第1グラフまたは第2グラフの少なくとも一方とは異なる表示装置に表示させる構成とすることができる。これにより、管理者用に詳細なデータを表示するとともに、傾向などを作業者が所持する端末などに表示することができ、作業環境に応じて柔軟なシステムを構築できるなど、使い勝手を向上させることができる。
【0052】
また、データ可視化部41は、第3グラフを、作業者の操作に基づいて切り替えて表示させる構成とすることができる。これにより、必要としないデータは表示させず、必要としているデータを表示させることが可能となり、データを把握し易くすることができる。
【0053】
また、実施形態では報知領域を第1グラフおよび第2グラフと同一画面に表示させる構成を例示したが、データ可視化部41は、報知領域を第1グラフまたは第2グラフとは異なる画面や異なる表示装置に表示させる構成とすることができる。これにより、管理者にはグラフ等によりデータを表示させつつ、作業者には異常を報知することで現状を把握できるようにするなど、作業環境に応じて柔軟なシステムを構築できるなど、使い勝手を向上させることができる。
【0054】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0055】
図面中、10は工程状態可視化システム、11はPLC(生産設備)、12は加工装置(生産設備)、13はロボット(生産設備)、14は搬送装置(生産設備)、15は検査装置(生産設備)、41はデータ可視化部、G1は第1グラフ、G2は第2グラフ、G3は第3グラフ、K1、K11、K21は第1報知領域、K2、K21、K22は第2報知領域を示す。
図1
図2
図3
図4
図5