(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092899
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】ロボットの点検状況可視化システムおよびロボットの点検状況可視化方法
(51)【国際特許分類】
B25J 19/06 20060101AFI20240701BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20240701BHJP
G05B 19/4063 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B25J19/06
G05B19/18 W
G05B19/18 X
G05B19/4063 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049958
(22)【出願日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2022208447
(32)【優先日】2022-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慎一
(72)【発明者】
【氏名】桐山 謹次
(72)【発明者】
【氏名】竹内 浩之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇久
(72)【発明者】
【氏名】川上 健人
【テーマコード(参考)】
3C269
3C707
【Fターム(参考)】
3C269AB33
3C269BB12
3C269CC09
3C269KK08
3C269MN07
3C269MN23
3C269MN27
3C269MN29
3C269PP02
3C269QB03
3C269QC01
3C269QC03
3C269QD02
3C269QE01
3C269QE22
3C269QE26
3C269QE34
3C269QE37
3C707HS27
3C707KS28
3C707KS37
3C707KT16
3C707KT17
3C707MS15
3C707MS21
(57)【要約】
【課題】ロボットの異常を容易に検出することができるロボットの点検状況可視化システムを提供する。
【解決手段】ロボット81の点検状況を可視化する可視化システム10は、データ取得処理部101および可視化処理部102を備える。データ取得処理部101は、ロボット81の点検状況を示す点検状況データを取得するデータ取得処理を実行可能である。可視化処理部102は、点検状況データに基づいて、正常な状態のロボット81にロボット81の点検用の動作として予め準備されたマスタ動作を実行させた際におけるロボット81の軸を駆動するモータに流れる電流の波形であるマスタ波形およびマスタ波形に対して所定の幅を持たせた波形である規格波形のうち少なくとも一方と、ロボット81にマスタ動作を実行させた際における電流の波形である計測波形と、を表示装置90の同一画面に表示させるための可視化処理を実行可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの点検状況を可視化するシステムであって、
前記ロボットの点検状況を示す点検状況データを取得するデータ取得処理を実行可能なデータ取得処理部と、
前記データ取得処理部により取得された前記点検状況データに基づいて、正常な状態の前記ロボットに前記ロボットの点検用の動作として予め準備されたマスタ動作を実行させた際における前記ロボットの軸を駆動するモータに流れる電流の波形であるマスタ波形および前記マスタ波形に対して所定の幅を持たせた波形である規格波形のうち少なくとも一方と、前記ロボットに前記マスタ動作を実行させた際における前記電流の波形である計測波形と、を表示装置の同一画面に表示させるための可視化処理を実行可能な可視化処理部と、
を備えるロボットの点検状況可視化システム。
【請求項2】
前記可視化処理部は、
前記可視化処理において、前記計測波形が前記規格波形の範囲に収まっている場合に前記ロボットの点検結果が正常であることを表すとともに前記計測波形が前記規格波形の範囲から外れている場合に前記ロボットの点検結果が異常であることを表す点検結果情報を表示させる、
請求項1に記載のロボットの点検状況可視化システム。
【請求項3】
前記可視化処理部は、
前記計測波形が前記規格波形の範囲から外れた箇所を明示するための表示を行うことにより前記ロボットの点検結果が異常であることを表す前記点検結果情報の表示を行う、
請求項2に記載のロボットの点検状況可視化システム。
【請求項4】
前記可視化処理部は、
前記計測波形が前記規格波形の範囲から外れた場合に、それに関する各種の情報が含まれるログ情報を生成することにより前記ロボットの点検結果が異常であることを表す前記点検結果情報の表示を行う、
請求項2に記載のロボットの点検状況可視化システム。
【請求項5】
前記可視化処理部は、
前記計測波形を得るために前記ロボットに前記マスタ動作を実行させている期間である点検期間に前記点検結果情報を表示させ、
前記点検中に前記ロボットの前記点検結果が異常であることを表す前記点検結果情報を表示させた場合、その表示を少なくとも前記点検期間が終了する時点まで維持する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のロボットの点検状況可視化システム。
【請求項6】
前記可視化処理部は、
前記計測波形を得るために前記ロボットに前記マスタ動作を実行させている期間である点検期間が終了した時点以降の任意の時点において前記点検結果情報を表示させる、
請求項1から4のいずれか一項に記載のロボットの点検状況可視化システム。
【請求項7】
ロボットの点検状況を可視化する方法であって、
前記ロボットの点検状況を示す点検状況データを取得するデータ取得処理を実行可能なデータ取得処理手順と、
前記データ取得処理手順により取得された前記点検状況データに基づいて、正常な状態の前記ロボットに予め準備されたマスタ動作を実行させた際における前記ロボットの軸を駆動するモータに流れる電流の波形であるマスタ波形および前記マスタ波形に対して所定の幅を持たせた波形である規格波形のうち少なくとも一方と、前記ロボットに前記マスタ動作を実行させた際における前記電流の波形である計測波形と、を表示装置の同一画面に表示させるための可視化処理を実行可能な可視化処理手順と、
を含むロボットの点検状況可視化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ロボットの点検状況可視化システムおよびロボットの点検状況可視化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場内に設置される製品の生産ラインは、加工機、検査機、ロボット、搬送装置および梱包装置などの複数の生産設備から構成される。近年、このような生産設備について、予防保全および故障予知のニーズが高まっている。生産設備のうち特にロボットは、突発的な故障が発生したときには、交換や調整を行う必要があることから復帰までに多大な時間を要するおそれがある。そのため、特にロボットについては、予防保全および故障検知を確実に行うことにより計画的な設備保全を実現して生産に影響を及ぼすことがないようにしなければならない。
【0003】
従来、特許文献1、2および3に開示されるように、ロボットおよび搬送装置などのモータを使用した設備の状態監視としては、次のような手法が広く用いられている。まず、第1の従来手法は、モータの電流値をモニタリングし、そのモニタリングした電流値について傾向監視や閾値判定を行うことにより設備の異常を検出する手法である。また、第2の従来手法は、モータに振動センサなどを取り付け、それにより得られる振動データについてFFT解析を行うことにより設備の異常を検出する手法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-98206号公報
【特許文献2】特開2021-87238号公報
【特許文献3】特許第6793898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第1の従来手法によれば、搬送装置であるコンベアのモータなどの等速動作が多い箇所に適用する場合には異常検出が可能であると考えられる。しかし、第1の従来手法では、使用される環境や動作により電流値が大きく異なる傾向があるロボットに適用する場合、閾値設定や傾向監視が難しくなることから異常を検出することが困難である。第2の従来手法によれば、モータが可動するものではなく固定されているような設備に適用する場合には有効であると考えられるが、モータ自体も移動するロボットに適用する場合、振動データにロボットの動作自体が影響することから、異常を検出することが困難である。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロボットの異常を容易に検出することができるロボットの点検状況可視化システムおよびロボットの点検状況可視化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のロボットの点検状況可視化システムは、ロボットの点検状況を可視化するシステムである。ロボットの点検状況可視化システムは、前記ロボットの点検状況を示す点検状況データを取得するデータ取得処理を実行可能なデータ取得処理部と、前記データ取得処理部により取得された前記点検状況データに基づいて、正常な状態の前記ロボットに前記ロボットの点検用の動作として予め準備されたマスタ動作を実行させた際における前記ロボットの軸を駆動するモータに流れる電流の波形であるマスタ波形および前記マスタ波形に対して所定の幅を持たせた波形である規格波形のうち少なくとも一方と、前記ロボットに前記マスタ動作を実行させた際における前記電流の波形である計測波形と、を表示装置の同一画面に表示させるための可視化処理を実行可能な可視化処理部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係るロボットの点検状況可視化システムの構成を模式的に示す図
【
図2】一実施形態に係るロボットの点検状況可視化システムのハードウェア構成の一例を模式的に示す図
【
図3】一実施形態に係る可視化処理により表示装置の画面に表示される点検中の表示内容の一例を模式的に示す図
【
図4】一実施形態に係る可視化処理により表示装置の画面に表示される点検終了後の表示内容の一例を模式的に示す図その1
【
図5】一実施形態に係る可視化処理により表示装置の画面に表示される点検終了後の表示内容の一例を模式的に示す図その2
【
図6】一実施形態に係る規格波形の生成などに関する処理内容の一例を模式的に示す図
【
図7】一実施形態に係る各波形などの表示に関する処理内容の一例を模式的に示す図
【
図8】変形例に係るマスタ波形を表す線および規格波形を表す線を模式的に示す図
【
図9】変形例に係るログ情報の具体的な一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態によるロボットの点検状況可視化システムについて、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書では、ロボットの点検状況可視化システムを可視化システムと省略することがある。
図1に示す可視化システム10は、生産ライン70において用いられる生産設備80のうちの1つであるロボット81の点検状況を可視化する、より具体的にはロボット81の点検状況を可視化して表示装置90に表示するシステムである。可視化システム10の対象となる生産ライン70は、産業用ロボットであるロボット81以外にも、例えば設備PLC82、加工機83および検査機84などの複数の生産設備80を備えている。なお、PLCは、Programmable Logic Controllerの略称である。
【0010】
設備PLC82は、任意のプログラミングが可能な汎用的な制御装置であって、搬送装置や組付け装置などの生産設備に組み込まれたものである。また、ロボット81、加工機83および検査機84は、それぞれ例えば設備PLC82とは別の専用の制御装置を有している。設備PLC82や、ロボット81、加工機83および検査機84の制御装置は、例えばネットワークHUBなどの中継器60を介して可視化システム10に接続されている。
【0011】
ロボット81は、いわゆる6軸の垂直多関節型ロボットであり、第1軸、第2軸、第3軸、第4軸、第5軸および第6軸という6つの軸を備えている。なお、以下の説明では、第1軸~第6軸のことをそれぞれ軸J1~軸J6と称することがある。ロボット81が備える各軸J1~J6には、それぞれに対応して駆動源となる図示しないモータが設けられている。ロボット81の制御装置は、ロボット81の点検状況を示すデータである点検状況データを外部に出力する。点検状況データは、ロボット81の点検状況を直接的に判別可能なデータに限られず、間接的に判別可能なデータであってもよい。点検状況データについての詳細は後述する。ロボット81の制御装置は、ロボット81の点検用の動作として予め準備されたマスタ動作を、ロボット81に実行させることができるようになっている。
【0012】
ロボット81にマスタ動作を実行させるための動作プログラムは、可視化システム10のユーザなどにより予め作成されており、ロボット81の制御装置に記憶されている。マスタ動作としては、ロボット81の各軸のそれぞれを第1方向に回転させる動作、ロボット81の各軸のそれぞれを第1方向とは反対の方向である第2方向に回転させる動作を含む動作となっている。なお、マスタ動作としては、一連の動作により全ての軸を回転させる1つの動作として設定されたものでもよいし、一連の動作により所定の軸を回転させる複数の動作の組み合わせとして設定されたものでもよい。
【0013】
ロボット81の制御装置は、ロボット81の各軸J1~J6を駆動するモータに流れる電流をモニタする機能を有しており、これにより、上記モータに流れる電流の波形を取得することができるようになっている。なお、以下の説明において、単に電流と称した場合には、ロボット81の各軸J1~J6を駆動するモータに流れる電流のことを意味するものとする。ロボット81の制御装置は、ロボット81の各軸J1~J6を駆動するモータのそれぞれに対応する負荷率を取得する機能を有している。負荷率は、モータの定格トルクを100%として発生トルクの割合を示したものである。ロボット81の制御装置は、各軸J1~J6を駆動するモータのそれぞれに対応する予想負荷率を取得する機能を有している。
【0014】
可視化システム10のユーザは、例えばロボット81を購入した直後や修理した直後など、何ら異常や故障が生じていない正常な状態であることが確実な状態のロボット81、言い換えると、正常であることが保証された状態のロボット81にマスタ動作を実行させ、その際における全ての軸毎の電流の波形をマスタ波形に対応する計測波形として取得する。マスタ波形に対応する計測波形を示すデータは、ロボット81の制御装置に格納される。
【0015】
また、可視化システム10のユーザは、例えば生産ライン70の稼働開始前、生産ライン70の停止中など、ロボット81を用いた作業が行われていない期間にロボット81にマスタ動作を実行させ、その際における全ての軸毎の電流の波形を計測波形として取得する。計測波形を示すデータは、ロボット81の制御装置に格納される。このような計測波形の取得は、日常的に行われるようになっている。ロボット81の制御装置は、マスタ波形に対応する計測波形を示すデータおよび計測波形を示すデータを、点検状況データとして出力することができる。また、ロボット81の制御装置は、負荷率および予想負荷率を示すデータを、点検状況データとして出力することができる。
【0016】
マスタ波形および計測波形は、具体的には、例えば
図3~
図5に示すような波形となっている。
図3~
図5には、ロボット81の軸J1に対応するマスタ波形および計測波形の一例が示されている。マスタ波形Waおよび計測波形Wbは、いずれも4つの山を有する波形となっている。これら4つの山は、軸J1を第1方向に回転させる際における加速期間および減速期間と、軸J1を第2方向に回転させる際における加速の期間および減速とに対応している。マスタ波形Waおよび計測波形Wbは、互いに異なる色で表示されている。本実施形態では、マスタ波形Waは白色で表示され、計測波形Wbは水色で表示されている。
【0017】
可視化システム10は、ロボット81の点検状況に関するデータ、つまり点検状況データを取得する機能と、その取得した点検状況データに基づいてロボット81の点検状況を可視化して表示装置90に出力する機能と、を有する。可視化システム10は、点検状況データを、ロボット81の制御装置から直接的に取得してもよいし、他の装置などを介して間接的に取得してもよい。
【0018】
可視化システム10は、例えば単一のコンピュータ装置で構成することもできるし、例えば複数の装置がLANまたはWANなどの電気通信回線によって相互に通信可能に接続されたネットワークシステムで構成することもできる。なお、LANは、Local Area Networkの略称であり、WANは、Wide Area Networkの略称である。また、可視化システム10は、生産設備80および表示装置90と同一のネットワーク内に設置されて生産設備80および表示装置90の管理運営者と同一の者が管理運営するいわゆるオンプレミス型のシステムであってもよいし、例えばインターネット上に設置されて生産設備80および表示装置90の管理運営者とは異なる者が管理運営するいわゆるクラウド型のシステムであってもよい。
【0019】
表示装置90は、例えば可視化システム10とは別の外部の装置であって、画像や映像の表示機能を有している。なお、表示装置90は、可視化システム10に組み込まれたものでもよい。
図1に示すパソコン91、携帯端末92および大型ディスプレイ93は、外部の表示装置90の一例である。パソコン91の例としては、例えば据え置き型のデスクトップパソコンや持ち運び可能なノートパソコンなどがある。携帯端末92の例としては、例えばスマートフォンやタブレット端末などがある。また、大型ディスプレイ93は、特定場所に据え置かれることを前提としたものであり、例えば数十インチ程度のディスプレイで構成することができる。また、表示装置90は、例えば作業者が頭に装着するヘッドマウントディスプレイや腕に装着するスマートウォッチなどのいわゆるウェアラブルデバイスで構成することもできる。
【0020】
可視化システム10は、データ取得処理部101と、可視化処理部102と、を含んで構成されている。データ取得処理部101および可視化処理部102は、例えばCPUにおいてコンピュータプログラムを実行することにより仮想的に実現される機能部で構成することができる。なお、データ取得処理部101および可視化処理部102は、同一または共通するハードウェアで構成することもできるし、異なるハードウェアで構成することもできる。
【0021】
可視化システム10のハードウェア構成は、
図2に示すように、CPU11、主記憶装置12、補助記憶装置13およびインタフェース14を含んで構成することができる。補助記憶装置13は、データ取得処理部101および可視化処理部102をコンピュータ上で仮想的に実現するためのコンピュータプログラムとして、点検状況可視化プログラム21を記憶している。可視化システム10は、CPU11が点検状況可視化プログラム21を補助記憶装置13から読み出して主記憶装置12に展開し実行することで、データ取得処理部101および可視化処理部102をそれぞれコンピュータ上で仮想的に実現することができる。
【0022】
補助記憶装置13は、有形かつ非一時的なコンピュータ可読媒体で構成される。補助記憶装置13の例としては、HDD、SSD、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどが挙げられる。なお、HDDは、Hard Disk Driveの略称であり、SSDはSolid State Driveの略称であり、CDは、Compact Discの略称であり、ROMは、Read Only Memoryの略称であり、DVDは、Digital Versatile Discの略称である。
【0023】
補助記憶装置13は、可視化システム10を構成するコンピュータのバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース14または電気通信回線を介して可視化システム10に接続される外部メディアであってもよい。また、点検状況可視化プログラム21が電気通信回線によって可視化システム10に配信される場合、配信を受けた可視化システム10が当該点検状況可視化プログラム21を主記憶装置12に展開し実行することで、上記各処理部101、102が実現される。
【0024】
なお、各処理部101、102の実現は、上記したハードウェアと点検状況可視化プログラム21の組み合わせに限られない。各処理部101、102の実現は、例えば点検状況可視化プログラム21をインプリメントした集積回路のようなハードウェア単体で実現するようにしてもよいし、一部の機能を専用のハードウェアで実現し、残りをハードウェアと点検状況可視化プログラム21の組み合わせで実現するようにしてもよい。
【0025】
上述したように、ロボット81の制御装置は、ロボット81の点検状況を示す点検状況データを出力する。データ取得処理部101は、データ取得処理を実行可能である。データ取得処理は、上記した点検状況データを取得する処理を含む。データ取得処理部101は、
図2に示すように、取得した点検状況データ22を補助記憶装置13などに記憶させる。
【0026】
可視化処理部102は、可視化処理を実行可能である。可視化処理は、データ取得処理部101で取得した点検状況データに基づいて、規格波形および点検結果情報を生成して出力するとともにマスタ波形および計測波形を出力する処理を含む。この場合、マスタ波形および規格波形を示すデータは、補助記憶装置13などに記憶されるようになっている。なお、規格波形および点検結果情報については後述する。また、可視化処理は、マスタ波形、規格波形、計測波形および点検結果情報を表示装置90の同一画面に表示させるための処理を含む。なお、可視化処理部102は、マスタ波形および規格波形について、それらのうち一方だけを表示させることもできる。
【0027】
この場合、マスタ波形、規格波形、計測波形および点検結果情報を同一画面に表示させるとは、マスタ波形、規格波形、計測波形および点検結果情報がいずれも同一の期間に表示されていること、すなわちマスタ波形、規格波形、計測波形および点検結果情報が同時に表示されていることを意味する。本明細書において「同時に表示」とは、表示対象である波形、情報などを見た者が同時に表示されていると認識できる程度であればよく、厳密に同時である必要はない。例えば、2つ以上の波形、情報などを短い間隔で切り替えて表示させる場合であっても、それら波形、情報などを見た者が2つ以上の波形、情報などを同時に把握できるのであれば、その表示態様は本明細書における「同時に表示」の概念に含まれる。なお、可視化処理は、点検結果情報を表示させないように変更することが可能である。つまり、可視化処理としては、マスタ波形、規格波形および計測波形を同一画面に表示させるための処理を含むものであってもよい。また、点検結果情報の表示は、表示装置90の画面に表示させる形態に限らず、例えば表示装置90の画面とは別に設けられたランプなどを利用したものであってもよい。
【0028】
規格波形とは、マスタ波形を用いて生成される波形であり、マスタ波形に対して所定の幅を持たせた波形である。ここで言う「幅」は、ガードバンドのことであり、電流波形について許容される誤差範囲を事前に想定しておき、計測波形がこの範囲にあれば正常であると判断するために定められた許容誤差の帯域のことである。規格波形は、マスタ波形に対して、電流値が所定値だけ高くなるように設定された上限側波形と、マスタ波形に対して電流値が所定値だけ低くなるように設定された下限側波形と、の組み合わせにより構成される。
【0029】
この場合、規格波形としては、その許容誤差の帯域が相対的に小さい警報レベル波形と、その許容誤差の帯域が相対的に大きい異常レベル波形と、の2種類が設けられている。警報レベル波形の幅は、計測波形が、その範囲を超えると、直ちにロボット81に故障が生じるおそれがある、または既にロボット81に故障が生じている、とは判断できないものの、故障に至るような何かしらの兆候があると判断できるような幅に設定されている。異常レベル波形の幅は、計測波形が、その範囲を超えると、直ちにロボット81に故障が生じるおそれがある、または既にロボット81に故障が生じている、と判断できるような幅に設定されている。警報レベル波形の幅および異常レベル波形の幅は、可視化システム10のユーザが所望する値となるように設定することができるようになっている。
【0030】
規格波形は、具体的には、例えば
図3~
図5に示すような波形となっている。
図3~
図5には、ロボット81の軸J1に対応する警報レベル波形Wcおよび異常レベル波形Wdの一例が示されている。警報レベル波形Wcは、マスタ波形Waと同様に4つの山を有するとともにマスタ波形Waよりも一回り大きい警報上限側波形WcUと、マスタ波形Waと同様に4つの山を有するとともにマスタ波形Waよりも一回り小さい警報下限側波形WcLと、を組み合わせた波形となっている。
【0031】
異常レベル波形Wdは、マスタ波形Waと同様に4つの山を有するとともに警報上限側波形WcUよりも一回り大きい異常上限側波形WdUと、マスタ波形Waと同様に4つの山を有するとともに警報下限側波形WcLよりも一回り小さい異常下限側波形WdLと、を組み合わせた波形となっている。
【0032】
規格波形である警報レベル波形Wcおよび異常レベル波形Wdは、マスタ波形Waおよび計測波形Wbとは異なる色で表示されている。また、警報レベル波形Wcおよび異常レベル波形Wdは、互いに異なる色で表示されている。本実施形態では、警報レベル波形Wcは、ユーザに「警報」を想起させるような色、例えば黄色で表示され、異常レベル波形Wdは、ユーザに「異常」を想起させるような色、例えば赤色で表示されるようになっている。このような波形の表示色は、可視化システム10のユーザが所望する色となるように設定することができるようになっている。
【0033】
点検結果情報とは、計測波形が規格波形の範囲に収まっている場合にロボット81の点検結果が正常であること、具体的には対応する軸の点検結果が正常であることを表すとともに、計測波形が規格波形の範囲から外れている場合にロボット81の点検結果が異常であること、具体的には対応する軸の点検結果が異常であることを表す情報である。具体的には、点検結果情報では、計測波形が警報レベル波形の範囲に収まっている場合には「正常」を表す表示が行われ、計測波形が警報レベル波形の範囲から外れるとともに異常レベル波形の範囲に収まっている場合には「警報」を表す表示が行われ、計測波形が異常レベル波形の範囲から外れている場合には「異常」を表す表示が行われる。これら各表示の具体例については後述する。可視化処理部102は、計測波形を得るためにロボット81にマスタ動作を実行させている期間である点検期間が終了した時点以降の任意の時点において点検結果情報を表示させるようになっている。
【0034】
可視化処理部102は、可視化処理を実行した後に再び可視化処理を実行する場合、つまり2回目以降の点検が実施される場合、次のような処理を実行することができる。可視化処理部102は、実行済みの可視化処理による計測波形である過去の計測波形を消去したうえで、今回実行する可視化処理による計測波形である今回の計測波形を描画するための処理を実行することができる。
【0035】
また、可視化処理部102は、可視化処理を実行した後に再び可視化処理を実行する場合、過去の計測波形を残したうえで、今回の計測波形を過去の計測波形とは異なる色で描画するための処理を実行することができる。さらに、可視化処理部102は、可視化処理を実行した後に再び可視化処理を実行する場合、過去の計測波形に対して上書きする形で、今回の計測波形を描画するための処理を実行することができる。
【0036】
可視化処理により表示装置90の画面に表示される具体的な内容としては、例えば
図3~
図5に示すようなものが挙げられる。
図3は、点検中の表示内容を表しており、
図4および
図5は点検終了後の表示内容を表している。なお、点検中とは、日常的な点検のためにロボット81にマスタ動作を実行させるとともにロボット81の制御装置により電流をモニタしているときを意味している。
【0037】
図3~
図5に示すように、表示装置90の画面の右側には、点検動作データの表示領域31が設けられている。点検動作データの表示領域31の右上端部には、軸選択ボックス311および変更キー312が設けられている。軸選択ボックス311および変更キー312は、ロボット81の各軸J1~J6のうち、後述する各表示の対象とする軸を選択するためのものである。ユーザは、軸選択ボックス311の操作により表示対象の軸を選択したうえで、変更キー312を操作することにより、所望する軸を表示対象とすることができる。
【0038】
点検動作データの表示領域31の上側には電流値の表示領域313が設けられ、その下側には負荷率の表示領域314および予想負荷率の表示領域315が設けられている。電流値の表示領域313には、ロボット81の各軸J1~J6のうちユーザにより選択された軸に対応するマスタ波形Wa、計測波形Wb、警報レベル波形Wcおよび異常レベル波形Wdがグラフとして表示されている。このグラフは、縦軸が電流値となっているとともに横軸が時間となっている。このような表示領域313によれば、ユーザは、ロボット81の各軸J1~J6のうち所望する軸の各電流波形を1つずつ表示させて確認することができるため、各電流波形の視認性が向上して点検の精度向上に寄与することができる。
【0039】
負荷率の表示領域314には、ロボット81の各軸J1~J6のうちユーザにより選択された軸に対応する負荷率Laが所定の色、例えば緑色で表示されている。負荷率の表示領域314には、表示された負荷率Laに対応する警報レベル閾値Lbおよび異常レベル閾値Lcが表示されている。警報レベル閾値Lbは、負荷率Laが、その値を超えると、直ちにロボット81に故障が生じるおそれがある、または既にロボット81に故障が生じている、とは判断できないものの、故障に至るような何かしらの兆候があると判断できるような値に設定されている。異常レベル閾値Lcは、負荷率Laが、その値を超えると、直ちにロボット81に故障が生じるおそれがある、または既にロボット81に故障が生じている、と判断できるような値に設定されている。
【0040】
警報レベル閾値Lbおよび異常レベル閾値Lcは、可視化システム10のユーザが所望する値となるように設定することができるようになっている。警報レベル閾値Lbおよび異常レベル閾値Lcは、負荷率Laとは異なる色で表示されている。本実施形態では、警報レベル閾値Lbは、ユーザに「警報」を想起させるような色、例えば黄色で表示され、異常レベル閾値Lcは、ユーザに「異常」を想起させるような色、例えば赤色で表示されるようになっている。負荷率の表示領域314における各表示色は、可視化システム10のユーザが所望する色となるように設定することができるようになっている。
【0041】
予想負荷率の表示領域315には、ロボット81の各軸J1~J6のそれぞれに対応する負荷率について予想される値である予想負荷率が表示されている。なお、予想負荷率の表示領域315には、ロボット81の各軸J1~J6に対応する欄に加え、第7軸である軸J7および第8軸である軸J8に対応する欄も設けられている。軸J7および軸J8に対応する欄は、点検対象のロボット81が8軸ロボットである場合にのみ使用されるものであり、本実施形態では使用されない。このような表示領域314、315によれば、ユーザは、ロボット81の各軸J1~J6の各電流波形と合わせて負荷率についても確認することができる。
【0042】
図3~
図5に示すように、表示装置90の画面の左側には、上から順に、点検中表示部32および判定結果の表示領域33が設けられている。点検中表示部32は、点検中である期間には所定の色、例えば緑色で点灯するとともに、点検中ではない期間には滅灯するような、ランプを模擬した表示が行われるものとなっている。ユーザは、点検中表示部32の点灯状態に基づいて、ロボット81の点検中であるか否かを判断することができる。点検中表示部32における各表示色は、可視化システム10のユーザが所望する色となるように設定することができるようになっている。
【0043】
判定結果の表示領域33には、ロボット81の各軸J1~J6のそれぞれに対応する点検結果情報が表示される。具体的には、表示領域33には、各軸J1~J6のそれぞれに対応する結果表示部331、332、333、334、335、336が設けられている。結果表示部331~336は、対応する軸の点検結果として「正常」、「警報」および「異常」のそれぞれを表す表示を行うものである。
【0044】
具体的には、結果表示部331~336は、「正常」を表す表示を行う場合にはユーザに「正常」を想起させるような色、例えば緑色で点灯し、「警報」を表す表示を行う場合にはユーザに「警報」を想起させるような色、例えば黄色で点灯し、「異常」を表す表示を行う場合にはユーザに「異常」を想起させるような色、例えば赤色で点灯し、点検中には滅灯するようなランプを模擬した表示が行われるものとなっている。
【0045】
なお、判定結果の表示領域33には、ロボット81の各軸J1~J6に対応する結果表示部331~336に加え、第7軸である軸J7および第8軸である軸J8に対応する結果表示部337、338も設けられている。軸J7および軸J8に対応する結果表示部337、338は、点検対象のロボット81が8軸ロボットである場合にのみ使用されるものであり、本実施形態では使用されない。
【0046】
このような使用されない結果表示部337、338は、常に緑色に点灯させておいてもよいし、常に滅灯させておいてもよい。判定結果の表示領域33における各表示色は、可視化システム10のユーザが所望する色となるように設定することができるようになっている。なお、
図3~
図5では、点検中表示部32および結果表示部331~338について、点灯状態をハッチングの表示にするとともに滅灯状態を白抜きの表示にすることで模擬的に点灯状態を表している。また、結果表示部331~338については、点灯する際の表示色毎にハッチングの種類を異ならせている。
【0047】
各軸J1~J6のそれぞれに対応する計測波形Wbが全ての規格波形である警報レベル波形Wcの範囲に収まっていた場合、つまり正常時における点検終了後、表示装置90の画面に表示される具体的な内容としては、
図4に示すような内容となる。なお、この場合、軸J1~軸J6のそれぞれに対応する計測波形Wbが全て規格波形である警報レベル波形Wcの範囲に収まっており、さらには全てがマスタ波形Waと略一致している場合を想定している。
【0048】
図4に示す表示内容によれば、ユーザは、電流値の表示領域313のグラフを用いて各軸J1~J6に対応する各電流波形を確認することで各軸J1~J6について計測波形Wbが警報レベル波形Wcの範囲に収まっていることが分かるため、その軸についての点検結果が正常であったと判断することができる。また、この場合、結果表示部331~336の全てが緑色に点灯するため、ユーザは、このような結果表示部331~336の点灯状態を確認することで、ロボット81の各軸J1~J6のそれぞれについて点検結果が正常であったことを容易に判断することができる。
【0049】
一方、異常時における点検終了後、表示装置90の画面に表示される具体的な内容としては、
図5に示すようなものとなる。なお、この場合、軸J1に対応する計測波形Wbが規格波形である異常レベル波形Wdの範囲から外れているとともに軸J2~軸J6のそれぞれに対応する計測波形Wbが全て規格波形である警報レベル波形Wcの範囲に収まっていた場合を想定している。
【0050】
図5に示す表示内容によれば、ユーザは、電流値の表示領域313のグラフを用いて各軸J1~J6に対応する各電流波形を確認することで軸J1についてのみ計測波形Wbが異常レベル波形Wdの範囲から外れていることが分かるため、軸J1についてのみ点検結果が異常であったと判断することができる。また、この場合、結果表示部331が赤色に点灯するとともに結果表示部332~336が緑色に点灯するため、ユーザは、このような結果表示部331~336の点灯状態を確認することで、ロボット81の各軸J1~J6のうち軸J1についてのみ点検結果が異常であったことを容易に判断することができる。
【0051】
次に、
図6および
図7も参照して、可視化システム10により実行される処理の内容について説明する。
[1]規格波形の生成などに関する処理
規格波形の生成などに関する処理の内容は、例えば
図6に示すような内容となる。
図6に示す処理は、ロボット81の制御装置から出力されたマスタ波形を示す点検状況データを可視化システム10が受信したことをトリガとして実行されるようになっている。なお、以下の説明および
図6では、マスタ波形を示す点検状況データのことをマスタデータと称することがある。
【0052】
図6に示すように、ステップS101では、マスタデータが取得される。ステップS101は、データ取得処理部101の機能により実行されるデータ取得処理の一部である。ステップS102では、ステップS101で取得されたマスタデータおよびユーザにより設定された警報レベル波形の幅および異常レベル波形の幅に基づいて、規格波形である警報レベル波形および異常レベル波形が生成される。ステップS103では、ステップS102で生成された警報レベル波形および異常レベル波形のそれぞれを示すデータが補助記憶装置13などに記憶される。このとき、マスタ波形を示すデータも補助記憶装置13などに記憶される。ステップS103の実行後、本処理が終了となる。
【0053】
[2]各波形などの表示に関する処理
マスタ波形、規格波形、計測波形、点検結果情報などの表示に関する処理の内容は、例えば
図7に示すような内容となる。
図7に示す処理は、ロボット81の制御装置から出力された計測波形を示す点検状況データを可視化システム10が受信したことをトリガとして実行されるようになっている。なお、以下の説明および
図7では、計測波形を示す点検状況データのことを計測データと称することがある。
【0054】
図7に示すように、ステップS201では、計測データが取得される。ステップS201は、データ取得処理部101の機能により実行されるデータ取得処理の一部である。ステップS202では、ステップS201で取得された計測データに基づいて、点検結果情報が生成される。ステップS203では、マスタ波形、規格波形である警報レベル波形および異常レベル波形、計測波形、点検結果情報などを表示装置90の同一画面上に表示させるための処理が行われる。ステップS203は、可視化処理部102の機能により実行される可視化処理の一部である。ステップS203の実行後、本処理が終了となる。
【0055】
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
本実施形態の可視化システム10は、ロボット81の点検状況を可視化して表示装置90に表示させるシステムである。可視化システム10は、データ取得処理部101と、可視化処理部102と、を備える。データ取得処理部101は、ロボット81の点検状況を示す点検状況データを取得するデータ取得処理を実行可能である。可視化処理部102は、可視化処理を実行可能である。可視化処理は、データ取得処理部により所得された点検状況データに基づいて規格波形および計測波形を表示装置90の同一画面に表示させるための処理を含む。規格波形は、正常な状態のロボット81にロボット81の点検用の動作として予め準備されたマスタ動作を実行させた際におけるロボット81の軸を駆動するモータに流れる電流の波形であるマスタ波形に対して所定の幅を持たせた波形である。計測波形は、ロボット81にマスタ動作を実行させた際における電流の波形である。
【0056】
このようにすれば、表示装置90の同一画面に規格波形および計測波形が表示されるため、ユーザは、それら表示された各波形に基づいて、日常的に、ロボット81の各軸J1~J6が正常であるか否かを判断すること、言い換えると、ロボット81の日常点検を容易に実施することができる。本実施形態によれば、このような日常点検を実施することにより、警報または異常が生じていると判断されたロボット81について計画的に保全日程へ組み込むことが可能となり、その結果、ロボット81の異常や故障などが生産に及ぼす影響を無くすことができる。
【0057】
本実施形態では、規格波形がマスタ波形に対して所定の幅を持たせた波形となっていることから、単にモータの電流値について閾値判定を行う第1の従来手法では得られない次のような優れた効果が得られる。すなわち、本実施形態によれば、ユーザは、表示装置90に表示された計測波形が規格波形の範囲に収まっているか否かを確認することでロボット81の動作に合わせた電流波形の状態を判別することが可能となり、ロボット81の各軸J1~J6を駆動するモータの異常だけでなく、各軸J1~J6を駆動する駆動部を構成する機械部品におけるガタつきなどの発生に起因する動作タイミングのずれについても検知することができる。
【0058】
可視化処理部102は、可視化処理において、計測波形が規格波形の範囲に収まっている場合にロボット81の点検結果が正常であることを表すとともに計測波形が規格波形の範囲から外れている場合にロボット81の点検結果が異常であることを表す点検結果情報を、規格波形および計測波形とともに表示装置90の同一画面に表示させることができる。このようにすれば、ユーザは、点検結果情報を見るだけでロボット81の点検結果が正常であったか否かを容易に判断することができる。また、本実施形態では、
図3~
図4に示すように、点検結果情報は、ロボット81の各軸J1~J6のそれぞれに対応する点検結果を個別に表示するものとなっていることから、ユーザは、ロボット81の各軸J1~J6のうち、どの軸に異常が生じているのかを容易に判断することができる。
【0059】
可視化処理部102は、可視化処理において、マスタ波形を、規格波形および計測波形とともに表示装置90の同一画面に表示させることができる。このようにすれば、ユーザは、計測波形が規格波形である警報レベル波形の範囲に収まっている場合において、計測波形がマスタ波形からどの程度ずれているのかを確認することができる。そのため、ユーザは、日常点検によって、ロボット81の各軸J1~J6について、警報レベルには達していないような軽微な電流波形のずれが生じていること、およびその電流波形のずれの傾向を容易に認識することが可能となり、場合によっては予防的な保全作業などを実施することができる。
【0060】
可視化処理部102は、可視化処理において、負荷率および予想負荷率を、規格波形および計測波形とともに表示装置90の同一画面に表示させることができる。このようにすれば、ユーザは、電流波形に加えて負荷率も考慮したうえで、ロボット81の各軸J1~J6が正常であるか否かを判断することが可能となり、点検の精度を一層向上させることができる。
【0061】
可視化処理部102は、実行済みの可視化処理による計測波形である過去の計測波形を消去したうえで、今回実行する可視化処理による計測波形である今回の計測波形を描画するための処理を実行することができる。このようにすれば、今回の点検に係る計測波形だけが表示されるため、ユーザは、今回の点検に係る計測波形を正しく判断することが可能となり、点検に関する誤判断が生じ難くなるというメリットがある。
【0062】
また、可視化処理部102は、可視化処理を実行した後に再び可視化処理を実行する場合、過去の計測波形を残したうえで、今回の計測波形を過去の計測波形とは異なる色で描画するための処理を実行することができる。このようにすれば、ユーザは、今回の点検に係る計測波形と、過去の点検に係る計測波形とを見比べることが可能となり、その結果、電流波形について過去の点検時からどのように変化しているのか、つまり電流波形の変化の傾向を認識することができる。そして、ユーザは、このような電流波形の変化の傾向に基づいて、ロボット81の予防的な保全作業などを実施することができる。
【0063】
さらに、可視化処理部102は、可視化処理を実行した後に再び可視化処理を実行する場合、過去の計測波形に対して上書きする形で、今回の計測波形を描画するための処理を実行することができる。このようにすれば、ユーザは、今回の計測波形が描画されていく最中の画面を確認することにより、電流波形について過去の点検時からどのように変化しているのか、つまり電流波形の変化の傾向を容易に認識することができる。そして、ユーザは、このような電流波形の変化の傾向に基づいて、ロボット81の予防的な保全作業などを実施することができる。
【0064】
<マスタ波形に関する変形例>
過去に取得した計測波形を示すデータのうち正常な状態であることが確実な状態のロボット81にマスタ動作を実行させた際に取得した計測波形を示すデータを、マスタ波形に対応する計測波形を示すデータとすることもできる。例えば、昨日の時点ではロボット81に何ら異常が生じていなかった場合、昨日に取得された計測波形を示すデータのうちいずれかを、本日のマスタ波形に対応する計測波形を示すデータとすることができる。つまり、過去の計測波形を現在のマスタ波形として用いることができる。
【0065】
可視化処理部102は、マスタ波形および規格波形のうちマスタ波形だけを表示させる場合、例えば
図8に示すように、マスタ波形Waを表す線を計測波形Wbを表す線に対して太い線で描くことができる。なお、
図8では、以下の説明を分かり易くするため、マスタ波形Waの線を塗り潰すことなくハッチングで示している。このようにすれば、マスタ波形Waの線の仮想的な中心線41をマスタ波形として機能させるとともに、マスタ波形Waの線の上側端に沿う仮想的な線42および下側端に沿う仮想的な線43を規格波形として機能させることができる。
【0066】
<点検結果情報全体に関する変形例>
点検結果情報としては、判定結果の表示領域33に表示される情報に加えてまたは代えて、次のような情報を採用することができる。まず、計測波形が規格波形の範囲から外れた箇所を明示するための表示を行い、その表示を点検結果情報とすることができる。上記表示の態様としては、例えば波形の色を変化させる、波形を点滅表示させる、背景色を変化させる、など様々な表示態様を採用することができる。つまり、可視化処理部102は、計測波形が規格波形の範囲から外れた箇所を明示するための表示を行うことによりロボット81の点検結果が異常であることを表す点検結果情報の表示を行うことができる。また、この場合、軸毎に例えば波形の色などの表示態様を異ならせることが可能であり、そのようにすれば、ユーザは、どの軸に異常が生じたのかを認識し易くなる。
【0067】
また、計測波形が規格波形の範囲から外れている場合に関する各種の情報、つまり異常に関する各種の情報を含むログ情報を生成し、そのログ情報を点検結果情報とすることができる。つまり、可視化処理部102は、計測波形が規格波形の範囲から外れた場合に、それに関する各種の情報が含まれるログ情報を生成することによりロボット81の点検結果が異常であることを表す点検結果情報の表示を行うことができる。ログ情報は、具体的には、例えば
図9に示すように、異常が発生する度に記録されるものとなっており、異常が発生した時刻を表す「発生時刻」、異常が発生した軸の名称を表す「軸」、異常が発生したときの電流値を表す「電流値」などを含む情報とすることができる。このようなログ情報は、表示装置90の画面の任意の領域に表示することができる。
【0068】
上記実施形態では、点検結果情報は、ロボット81の各軸のそれぞれについて、個別に点検結果が正常であるか異常であるかを表す情報であったが、ロボット81の全軸をまとめて、点検結果が正常であるか異常であるかを表す情報であってもよい。すなわち、点検結果情報は、ロボット81の全ての軸に対応する計測波形が規格波形の範囲に収まっている場合にロボット81の点検結果が正常であることを表すとともに、ロボット81の各軸のうち少なくとも1つの軸に対応する計測波形が規格波形の範囲から外れている場合にロボット81の点検結果が異常であることを表す情報とすることができる。
【0069】
上記実施形態では、点検終了後に判定結果の表示領域33の結果表示部331~336により点検結果を表示するようになっていたが、点検中にも点検結果を表示するように変形が可能である。ただし、このような変形例においては、点検の途中で所定の軸、例えば軸J1について計測波形が規格波形の範囲から外れることにより表示領域33において軸J1の点検結果が異常であることを表す表示がなされた場合、その後に軸J1について計測波形が規格波形の範囲に収まったとしても、軸J1の点検結果が異常であることを表す表示、つまり、異常の表示を維持することが望ましい。このような異常の表示のリセットは、全ての軸についての点検が終了した後であり且つ次の点検が開始されるまでの任意のタイミングで行うことができる。このように、可視化処理部102は、計測波形を得るためにロボット81にマスタ動作を実行させている期間である点検期間に点検結果情報を表示させ、点検中にロボット81の点検結果が異常であることを表す点検結果情報を表示させた場合、その表示を少なくとも点検期間が終了する時点まで維持することができる。
【0070】
判定結果の表示領域33の結果表示部331~336は、対応する軸について点検が実施されなかった場合には、「正常」を表す表示および「異常」を表す表示とは異なる色、例えば白色や灰色などで点灯するような表示を行うことができる。このようにすれば、ユーザは、自身の意図通りにロボット81の各軸についての点検が実施されているかどうかを容易に知ることができる。
【0071】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、組み合わせ、あるいは拡張することができる。
上記実施形態で示した数値などは例示であり、それに限定されるものではない。
本発明は、生産ライン70において用いられる6軸のロボット81の点検状況を可視化して表示装置90に表示させる可視化システム10に限らず、4軸のロボットや8軸のロボットなど各種のロボットの点検状況を可視化するシステム全般に適用することができる。
【0072】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0073】
10…ロボットの点検状況可視化システム、101…データ取得処理部、102…可視化処理部、70…生産ライン、81…ロボット、90…表示装置。