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特開2024-92900生産ラインのサイクルタイム可視化システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092900
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】生産ラインのサイクルタイム可視化システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051652
(22)【出願日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2022208445
(32)【優先日】2022-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】桐山 謹次
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慎一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇久
(72)【発明者】
【氏名】竹内 浩之
(72)【発明者】
【氏名】川上 健人
【テーマコード(参考)】
3C100
【Fターム(参考)】
3C100AA29
3C100AA38
3C100BB13
3C100BB15
3C100BB33
(57)【要約】
【課題】サイクルタイムの状況を容易に確認および把握できる生産ラインのサイクルタイム可視化システムを提供する。
【解決手段】生産ラインのサイクルタイムを可視化するための可視化システム10は、生産ラインの各工程におけるサイクルタイムを可視化するためのものであって、生産ラインの各工程のサイクルタイムを示す現在サイクルタイム情報60と、サイクルタイムの履歴を示す履歴サイクルタイム情報61とを表示させる可視化処理を実行するデータ可視化部41を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産ラインの各工程におけるサイクルタイムを可視化するためのサイクルタイム可視化システムであって、
生産ラインの各工程のサイクルタイムを示す現在サイクルタイム情報と、サイクルタイムの履歴を示す履歴サイクルタイム情報と表示させる可視化処理を実行するデータ可視化部を備える生産ラインのサイクルタイム可視化システム。
【請求項2】
前記データ可視化部は、現在サイクルタイム情報と履歴サイクルタイム情報とを同一画面に表示させる請求項1に記載の生産ラインのサイクルタイム可視化システム。
【請求項3】
前記データ可視化部は、現在サイクルタイム情報と履歴サイクルタイム情報とを、異なる表示装置に表示させる請求項1に記載の生産ラインのサイクルタイム可視化システム。
【請求項4】
前記データ可視化部は、現在サイクルタイム情報または履歴サイクルタイム情報を、自動的に、または、作業者の操作に基づいて切り替えて表示させる請求項1に記載の生産ラインのサイクルタイム可視化システム。
【請求項5】
前記データ可視化部は、各工程の履歴サイクルタイム情報に含まれる所定数のサイクルタイムを、横軸を時刻とし、縦軸をサイクルタイムとした折れ線グラフにより表示させるための処理を実行する請求項1に記載の生産ラインのサイクルタイム可視化システム。
【請求項6】
前記データ可視化部は、各工程の履歴サイクルタイム情報に含まれる所定数のサイクルタイムを、横軸を取得回数とし、縦軸をサイクルタイムとした折れ線グラフにより表示させるための処理を実行する請求項1に記載の生産ラインのサイクルタイム可視化システム。
【請求項7】
前記データ可視化部は、各工程の履歴サイクルタイム情報に含まれる所定数のサイクルタイムを、工程ごとに、取得時刻または取得回数と対応付けた表形式で表示させるための処理を実行する請求項1に記載の生産ラインのサイクルタイム可視化システム。
【請求項8】
前記データ可視化部は各工程の履歴サイクルタイム情報に含まれる所定数のサイクルタイムを表形式で表示する際、履歴サイクルタイム情報のグラフと同一画面に表示させる請求項7に記載の生産ラインのサイクルタイム可視化システム。
【請求項9】
前記データ可視化部は、基準サイクルタイムを超えるサイクルタイムを、基準サイクルタイムを超えていないサイクルタイムと識別可能に表示させるための処理を実行する請求項1に記載の生産ラインのサイクルタイム可視化システム。
【請求項10】
前記データ可視化部は、ユーザの操作に応じて、現在サイクルタイム情報の表示位置と履歴サイクルタイム情報の表示位置とを変更する請求項1に記載の生産ラインのサイクルタイム可視化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生産ラインのサイクルタイム可視化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場内に設置される製品の生産ラインは、例えば設備用のPLC(Programmable Logic Controller)、加工装置、ロボット、検査装置、搬送装置などの生産設備を備えている。このような生産ラインでは、各工程のサイクルタイムを共通化することにより、工程間で製品が滞留しないように設計されている。そのため、各工程のサイクルタイムを把握することが効率的な生産を目指す上で重要となる。
【0003】
さて、従来では、サイクルタイムの把握は、例えば生産ラインの保全担当者が、各工程のサイクルタイムを例えばストップウォッチなどで計測して記録用紙に記録し、その後、別の場所でパソコンなどに入力するといった作業が行われていた。ただし、その場合には、サイクルタイムをデータ化するのに手間と時間がかかり、また、データ化する際に記載ミスや記入漏れが発生するなどの問題があった。また、サイクルタイムの推移や傾向といった状況を把握することが困難であるという問題もあった。そのため、例えば特許文献1では、状況の工場における生産性や品質の向上に資する情報をユーザに提示できるようにすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-132848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、サイクルタイムを可視化する本質としては、単にサイクルタイムを表示させればよいというものではなく、データを必要としている者に対して必要とされているデータを正しく提供できること、換言すると、サイクルタイムの状況を容易に確認および把握できることが重要になる。
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、サイクルタイムの状況を容易に確認および把握できる生産ラインのサイクルタイム可視化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態による生産ラインのサイクルタイム可視化システムは、生産ラインの各工程におけるサイクルタイムを可視化するためのシステムであって、生産ラインの各工程のサイクルタイムを示す現在サイクルタイム情報と、サイクルタイムの履歴を示す履歴サイクルタイム情報とを表示させる可視化処理を実行するデータ可視化部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態による可視化システムの構成例を模式的に示す図
図2】生産ラインで実施される工程の一例を模式的に示す図
図3】サイクルタイムを可視化するための処理の流れを示す図
図4】抽出した履歴サイクルタイム情報の一例を模式的に示す図
図5】サイクルタイムを可視化する際の表示態様例その1を示す図
図6】サイクルタイムを可視化する際の表示態様例その2を示す図
図7】サイクルタイムを可視化する際の表示態様例その3を示す図
図8】サイクルタイムを可視化する際の表示態様例その4を示す図
図9】サイクルタイムを可視化する際の表示態様例その5を示す図
図10】サイクルタイムを可視化する際の表示態様例その6を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態による生産ラインのサイクルタイム可視化システムについて図面を参照しながら説明する。また、以下では、生産ラインのサイクルタイム可視化システムを、図1に示すように単に可視化システム10と称する。この可視化システム10は、生産ラインに配置されている生産設備からデータを取得し、各工程のサイクルタイムを可視化するためのシステムとして構築されている。生産設備としては、例えばPLC11(Programmable Logic Controller)、加工装置12、ロボット13、搬送装置14、検査装置15などが想定される。ただし、図1に示す生産設備の数や種類は一例であり、これに限定されない。
【0010】
可視化システム10の機能は、主として管理装置20によって実現されている。この管理装置20は、例えば工場内に施設されたネットワーク21や中継装置22を介して各生産設備と通信可能に接続されている。ただし、管理装置20は、遠隔地の生産設備との間を例えばインターネットや広域通信網などにより通信可能に接続されていてもよい。すなわち、可視化システム10としては、生産設備からデータを取得でき、サイクルタイムを可視化して提供できる構成となっていればよく、例えばいわゆるクラウド型システムとして構築することもできる。
【0011】
管理装置20は、サイクルタイムを含む生産設備の稼働状況に関する各種のデータを取得するとともに、サイクルタイムを可視化するための可視化処理を実行する。具体的には、管理装置20は、コンピュータで構成されており、サイクルタイムを可視化して表示するための表示装置23と、後述するように表示態様を変更するための操作などを入力する入力装置24とを備えている。また、管理装置20は、後述するように、現場の作業者(M)が携帯する携帯端末25、管理装置20とは異なる他の場所に設置されているパソコンやモニタなどの外部端末26、あるいは、図示は省略するが例えばインターネットを介して接続された遠隔地の端末に対してサイクルタイムを可視化して提供可能に構成されている。
【0012】
また、管理装置20は、制御部30、記憶部31、表示装置23への映像主力を行う表示部32、生産設備や端末などとの間でデータを通信する通信部33などを備えている。制御部30は、例えば図示しないCPUによって構成されており、記憶部31に記憶されているプログラムを実行することによって管理装置20を制御するとともに、可視化システム10のための機能部をソフトウェアで実現している。ただし、各機能部は個別のハードウェアで実現する構成とすることもできる。
【0013】
制御部30には、大きく分けて、生産設備側からデータを取得するためのデータ取得部40と、取得したデータに基づいてサイクルタイムを可視化するためのデータ可視化部41の機能部が設けられている。データ取得部40は、生産設備からデータを取得することにより、生産ラインの各工程におけるサイクルタイムを取得するとともに、取得したサイクルタイムを、その取得時刻および取得回数と対応付けて履歴として集計する。
【0014】
本実施形態では、データ取得部40でサイクルタイムを取得した時刻を取得時刻として扱っている。ただし、生産設備側でサイクルタイムが測定された時刻を取得時刻として扱う構成とすることもできる。また、取得回数は、通し番号で管理されている。そして、集計されたサイクルタイムの履歴は、履歴データベース42として記憶部31に記憶されている。なお、図1では、履歴データベース42を履歴DBとして示している。
【0015】
データ可視化部41は、各工程の直近のサイクルタイムを示す現在サイクルタイム情報と、履歴データベース42に記憶されているサイクルタイムの履歴を示す履歴サイクルタイム情報とを、同一画面に表示させる処理を実行する。ここで、同一画面に表示させる処理としては、管理装置20に接続されている表示装置23に対して映像として出力する処理に限らず、携帯端末25や外部端末26あるいは遠隔地からブラウザソフトウェアで現在サイクルタイム情報と履歴サイクルタイム情報とを同一画面で閲覧するための処理も含まれる。
【0016】
そのため、制御部30には、携帯端末25や外部端末26からの閲覧要求を受け付けるためのHTTPサーバ43が実装されている。なお、HTTPはHypertext Transfer Protocolの略称である。また、ブラウザソフトウェアで閲覧するための手法としては、例えば画面を共有したりデータを送信して端末側のブラウザソフトウェアで画面を再構築したりするなど、周知の技術を適宜採用すればよい。また、管理装置20からデータを取得して画面表示する専用のアプリケーションソフトウェアで閲覧する構成としてもよい。
【0017】
次に上記した構成の作用および効果について説明する。
前述のように、生産ラインでは、各工程のサイクルタイムを共通化することにより、工程間で製品が滞留しないように設計されている。以下、共通化されたサイクルタイムを基準サイクルタイムと称する。例えば、図2に生産ライン構成例として示すように、可視化の対象となっている生産ラインにおいて、工程1、工程2、工程3、工程4および工程5の5工程が実施されているとする。
【0018】
この場合、上記したように各工程の基準サイクルタイムは共通化されている。なお、図2では、サイクルタイムをCTと示し、基準サイクルタイムを基準CTと示している。その一方で、稼動時として示すように、不具合によって例えば工程3のサイクルタイムが基準サイクルタイムを超えた場合には、全工程が完了するまでの時間は長くなる。そのため、各工程のサイクルタイムを把握することが効率的な生産を目指す上で重要となる。
【0019】
さて、例えば従来のように生産ラインの保全担当者がストップウォッチなどでサイクルタイムを計測する場合には、データ化するのに手間と時間が掛かったり、データ化する際に記載ミスや記入漏れが発生したりするおそれがある。また、データの入力後でないと推移や傾向といった状況を把握することが困難であるという問題もあった。そのため、まずは、サイクルタイムを取得する際のミスを抑制することが必要になる。
【0020】
しかし、サイクルタイムを可視化する本質としては、単にサイクルタイムを表示させればよいというものではなく、データを必要としている者に対して必要とされているデータを正しく提供できること、換言すると、サイクルタイムの状況を容易に確認および把握できることが重要になる。
【0021】
そこで、可視化システム10では、以下のようにして、サイクルタイムを取得する際のミスの発生を抑制しつつ、サイクルタイムの状況を容易に確認および把握できるようにしている。具体的には、可視化システム10は、図3に示すように、サイクルタイムを取得し(S1)、サイクルタイムの履歴を集計して記憶する(S2)。このとき、サイクルタイムは、取得時間及び取得回数と対応付けて記憶される。このように自動でサイクルタイムを取得および集計することにより、計測の誤差や記載ミスあるいは記載漏れといったミスの発生を抑制できるとともに、現場に行かなくてもサイクルタイムを取得できることから、別の作業に割り当てることで作業効率を改善させることや人件費の削減などを期待できる。
【0022】
続いて、可視化システム10は、履歴データベース42から可視化対象とするサイクルタイムのデータを抽出する(S3)。可視化システム10は、例えば図4に示すように、履歴データベース42から、直近のサイクルタイムを含む所定数のデータを抽出情報50として抽出している。図4の場合、「YYYY/MM/DD hh:mm:ss」は、取得時刻を年/月/日 時:分:秒の形式で模式的に示すものである。
【0023】
また、取得回数は、「1」が最新のサイクルタイムを示し、「2」がその前に取得されたサイクルタイムを示している。つまり、可視化システム10は、取得回数が「1」となる最新のサイクルタイムを含む過去20回分のサイクルタイムを可視化対象として抽出している。なお、抽出するサイクルタイムの数は一例であり、これに限定されない。
【0024】
データを抽出すると、可視化システム10は、可視化処理を実行する(S4)。この可視化処理は、生産ラインの各工程のサイクルタイムを示す現在サイクルタイム情報と、サイクルタイムの履歴を示す履歴サイクルタイム情報とを同一画面に表示させる処理である。以下、可視化処理による複数の表示態様例について個別に説明する。
【0025】
<表示態様例その1>
図5示す表示態様例その1では、現在サイクルタイム情報60として、各工程の直近のサイクルタイムが、例えば表示装置23の画面の左端において概ね上下方向における全域に、上から下に向かって工程順に表示されている。つまり、現在サイクルタイム情報60は、画面の上下方向を広く使って大きく表示されている。このような表示態様とすることにより、現場の作業者にとってサイクルタイムを非常に見やすい状態で提示することができる。これは、現場の作業者の場合、現在の状況を知りたいということが多いと考えられること、また、作業中に画面を中止することは難しいため瞬時に把握できることが望ましいと考えられるためである。
【0026】
また、現在サイクルタイム情報60では、例えば工程3のように、基準サイクルタイムを超えるサイクルタイムについては、基準サイクルタイムを超えていない他のサイクルタイムと識別可能に表示している。これにより、基準サイクルタイムを超えた状態であることを一目で把握することができ、画面を中止し難い作業者であっても状況を即座に確認することができる。
【0027】
また、履歴サイクルタイム情報61としては、各工程の履歴サイクルタイム情報61に含まれる所定数のサイクルタイムを、横軸を時刻とし、縦軸をサイクルタイムとした折れ線グラフ61aにより表示している。このとき、横軸は、右端側が現在時刻になり、左端側が過去の時刻になる。そのため、新しいサイクルタイムを取得した場合には、折れ線グラフ61aが全体的に図示左方にずれ、右端側に新しくサイクルタイムがポイントされて折れ線グラフ61aが延長されることになる。つまり、新しくサイクルタイムがポイントされるタイミングは、工程によってずれている。
【0028】
このように各工程が完了したタイミングで新たにポイントされる折れ線グラフ61aで表示することにより、サイクルタイムの推移を把握できるとともに、全体的にみてどの工程が遅れているかを確認しやすくなるとともに、各工程の処完了時刻も確認することができるため、工程を管理する者にとっても使い勝手のよい表示態様となっている。
【0029】
また、本実施形態では、各工程の折れ線グラフ61aの色と、現在サイクルタイム情報60における工程番号の文字の色とを同一色で表示している。これにより、現在サイクルタイム情報60と履歴サイクルタイム情報61の折れ線グラフ61aとを容易に対応付けて確認することができる。
【0030】
また、履歴サイクルタイム情報61としては、各工程の履歴サイクルタイム情報61に含まれる所定数のサイクルタイムを、工程ごとに、取得時刻または取得回数と対応付けた表形式で、履歴サイクルタイム情報61の折れ線グラフ61aの下部に直近履歴61bとして同一画面で表示している。本実施形態では、直近のサイクルタイムを含む10個のサイクルタイムを表示している。これにより、折れ線グラフ61aで気になった箇所の数値を確認することができる。
【0031】
また、直近履歴61bにおいて同一画面に表示するデータ数を例えば10個と制限することにより、つまりは、現在の状況を把握する際に必ずしも必要とはされない古いデータを画面上に表示しないことにより、現場の担当者がより現状把握を行いやすくなる。ただし、何らかの事情により過去のデータを確認したい場合を想定して、各工程の表示領域には縦方向のスライドバーがそれぞれ設けられている。そのため、担当者は、スライドバーをスライドさせることによって、上限数は変わらないものの、過去のサイクルタイムを確認することができる。
【0032】
このような表示態様は、現在の状態を確認する担当者向けのレイアウトとなっている。一般的にデータが表示されている画面を見る場合には画面の左側から右側に向かってみると想定される。そのため、左側に現在サイクルタイム情報60を表示することにより、まず現状把握をした上で、現在値が悪ければ過去も悪かったと類推されることから、その裏付けとして右側に表示されている履歴サイクルタイム情報61を確認するという流れで画面を見せることができ、折れ線グラフ61aの理解も早くなると考えられるためである。
【0033】
<表示態様例その2>
図6に示す表示態様例その2では、現在サイクルタイム情報60の表示態様やその効果は表示態様例その1と同じであるので説明を省略するが、履歴サイクルタイム情報61は、各工程の履歴サイクルタイム情報61に含まれる所定数のサイクルタイムを、横軸を取得回数とし、縦軸をサイクルタイムとした折れ線グラフ61aにより表示されている。つまり、横軸が取得回数になっている点において、表示態様例その1の折れ線グラフ61aと異なっている。
【0034】
このとき、横軸は、右端側が取得回数の「1」に対応し、左端側に向かって過去の取得回数におけるサイクルタイムが示されている。つまり、新しくサイクルタイムがポイントされるタイミングが工程によって一致している。これにより、特定タイミングでの各工程の比較がしやすくなり、例えば生産ラインの保全等のためにサイクルタイムの傾向を把握したい者にとって有意義なものとなる。
【0035】
また、表示態様その2では、履歴サイクルタイム情報61として、各工程の履歴サイクルタイム情報61に含まれる所定数のサイクルタイムを、工程ごとに、取得時刻または取得回数と対応付けた表形式で、履歴サイクルタイム情報61の折れ線グラフ61aの下部に直近履歴61bとして同一画面で表示している。本実施形態では、直近のサイクルタイムを含む20個のサイクルタイムを、右端を取得回数「1」とし、左端を測定回数「20」となる表形式で、また、折れ線グラフ61aのポイント位置となる測定回数と、表形式の測定回数とが概ね上下に並んだ状態で同じ表示している。これにより、折れ線グラフ61aで気になった箇所の数値をそのまま目線を下げることにより容易に確認することができる。
【0036】
<表示態様例その3>
図7に示す表示態様例その3では、画面の左右方向における現在サイクルタイム情報60の表示位置と履歴サイクルタイム情報61の表示位置が入れ替えられている点において表示態様その1と異なっている。このような表示位置の変更は、図3に示すように表示位置の変更操作があった場合(S5:YES)に行われる。なお、変更された表示位置は記憶され、次に表示されるときには変更後の表示位置がデフォルトとなる。
【0037】
表示態様例その3は、リアルタイムの基準CT越えが重要インシデントであり、設備のサイクルタイムの傾向を確認する担当者向けのレイアウトとなっている。つまり、傾向を確認するために必要となる履歴サイクルタイム情報61を画面左側に表示し、現在サイクルタイム情報60を画面右側に表示することにより、折れ線グラフ61aの最新部分つまりは折れ線グラフ61aの右端側と、そのデータに対応する現在サイクルタイム情報60との位置が近くなり、サイクルタイムの傾向とリアルタイムでのサイクルタイムとの紐づけがしやすくなり、担当者が所望するデータの把握と確認とを容易に行うことができる。
【0038】
この場合、直近履歴61bについては、図6に示した例えば過去20分のデータを表示するものとすることができるし、直近履歴61bを表示しない表示態様とすることもできる。
【0039】
<表示態様例その4>
図8に示す表示態様例その4では、画面の上側に履歴サイクルタイム情報61を表示し、その下に現在サイクルタイム情報60を表示している点において表示態様その1と異なっている。この表示態様例その4は、リアルタイムの基準CT越えが重要インシデントではないものの、設備のサイクルタイムの傾向を確認する担当者向けのレイアウトとなっている。なお、重要インシデントとは、最も注視すべきデータであるか否かを意味している。これにより、画面の上側とした側とを比べると上側から見始めると想定されることから、まずは全体的な傾向を見ることができ、担当者が重要視するデータの確認および把握を容易にしつつ、必要であれば現在サイクルタイム情報60も参照することができる。
【0040】
<表示態様例その5>
図9に示す表示態様例その5では、画面の上側に現在サイクルタイム情報60を表示し、その下に履歴サイクルタイム情報61を表示している点において表示態様その1と異なっている。この表示態様例その5は、リアルタイムの基準CT越えが最重要インシデントである担当者向けのレイアウトとなっている。これにより、画面の上側とした側とを比べると上側から見始めると想定されることから、まずは最重要視する現在サイクルタイム情報60の確認および把握を容易にしつつ、必要であれば傾向も確認することができる。
【0041】
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
可視化システム10は、生産ラインの各工程におけるサイクルタイムを可視化するためのものであって、生産ラインの各工程のサイクルタイムを示す現在サイクルタイム情報60と、サイクルタイムの履歴を示す履歴サイクルタイム情報61とを表示させる可視化処理を実行するデータ可視化部41を備える。
【0042】
これにより、最新のサイクルタイムを知りたいと考える例えば現場の作業者や、サイクルタイムの推移や傾向などの状況を把握したい例えば管理者などに対して、それぞれの担当者が求める情報を提供すること、つまりは、サイクルタイムのデータを必要としている者に対して必要とされているデータを正しく提供できることが可能となり、サイクルタイムの状況を容易に確認および把握することができる。
【0043】
また、本実施形態では、データ可視化部41は、現在サイクルタイム情報60と履歴サイクルタイム情報61とを同一画面に表示する。これにより、それぞれの画面に切り替える必要もなく、両者を容易に比較および把握することができる。
このとき、実施形態のようにデータ取得部40を設けて生産設備側からサイクルタイムを取得する構成とすることにより、サイクルタイムを取得する際の記載漏れや入力ミスなどの発生を抑制することができる。
【0044】
また、可視化システム10では、データ可視化部41は、各工程の履歴サイクルタイム情報61に含まれる所定数のサイクルタイムを、横軸を時刻とし、縦軸をサイクルタイムとした折れ線グラフ61aにより表示させるための処理を実行する。これにより、時刻が変化した際のサイクルタイムの状況を容易に確認および把握することができる。
【0045】
また、可視化システム10では、データ可視化部41は、各工程の履歴サイクルタイム情報61に含まれる所定数のサイクルタイムを、横軸を取得回数とし、縦軸をサイクルタイムとした折れ線グラフ61aにより表示させるための処理を実行する。これにより、各工程におけるサイクルタイムの対比をしやすくなるとともに、サイクルタイムの推移や傾向などの状況を容易に確認および把握することができる。
【0046】
また、可視化システム10では、データ可視化部41は、各工程の履歴サイクルタイム情報61に含まれる所定数のサイクルタイムを、工程ごとに、取得時刻または取得回数と対応付けた表形式で、履歴サイクルタイム情報61の折れ線グラフ61aと同一画面に直近履歴61bとして表示させるための処理を実行する。画面上でデータを確認する際、一般的に左から右へ、また、上から下へ目線が移動することに鑑みると、最も重要視されるデータを見やすい位置に配置することを可能にしたことにより、データの把握と理解とを促すことができる。
【0047】
また、可視化システム10では、データ可視化部41は、基準サイクルタイムを超えるサイクルタイムを、基準サイクルタイムを超えていないサイクルタイムと識別可能に表示させるための処理を実行する。これにより、画面を注視して数値を確認しなくても、一見するだけでサイクルタイムの超過つまりは不具合の発生を迅速かつ容易に把握することができる。
【0048】
また、可視化システム10では、データ可視化部41は、ユーザの操作に応じて、現在サイクルタイム情報60の表示位置と履歴サイクルタイム情報61の表示位置とを変更する。これにより、一見するだけでサイクルタイムの現在値と履歴とを対応付けて把握することができる。
【0049】
実施形態では、管理装置20にデータ取得部40とデータ可視化部41とを設けた例を示したが、可視化システム10は、データ可視化部41と同等の機能を実現するプログラムを実行することによっても構築することができる。これにより、例えば生産設備の稼働状況を示す各種のデータを収集するシステムが既に稼働している環境に対してサイクルタイム可視化プログラムを導入することにより、可視化システム10を容易に構築することができる。
【0050】
すなわち、例えば管理装置20の制御部30に、生産設備から取得された少なくともサイクルタイムを含む稼動状況を示すデータから、直近のサイクルタイム、および、所定数の過去のサイクルタイムを抽出する抽出処理と、生産ラインの各工程のサイクルタイムを示す現在サイクルタイム情報60と、サイクルタイムの履歴を示す履歴サイクルタイム情報61とを、同一画面に表示させる可視化処理を実行する表示処理を実行させる生産ラインのサイクルタイム可視化プログラムによっても、実施形態で説明した可視化システム10と同様の効果を得ることができる。
【0051】
表示装置23は、いわゆるパソコン用のディスプレイに限らず、例えば作業者が頭に装着するヘッドマウントディスプレイや腕に装着するスマートウォッチなどのいわゆるウェアラブルデバイスで構成することもできる。
【0052】
実施形態では現在サイクルタイム情報および履歴サイクルタイム情報を同一画面に表示する構成を例示したが、現在サイクルタイム情報または履歴サイクルタイム情報は、自動的に、あるいは、作業者の操作に基づいて切り替えて表示する構成とすることができる。これにより、管理者用に詳細なデータを表示するとともに、傾向などを作業者が所持する端末などに表示することができ、使い勝手を向上させることができ、サイクルタイムの状況を容易に確認および把握することができる。
【0053】
実施形態では現在サイクルタイム情報および履歴サイクルタイム情報を1つの表示装置23の同一画面に表示する構成を例示したが、同一画面とは、必ずしも単一の表示装置23の画面を意味しているのではなく、物理的に複数の表示装置23に対してデータ可視化部41が可視化したデータを表示する構成も含まれる。例えば、いわゆるデュアルディスプレイ等のように、画面表示を拡張して複数の表示装置23に分けて表示する構成も、同一画面への表示とみなすことができる。これは報知領域についても同様である。
【0054】
また、例えばパソコンのディスプレイには一方の情報を表示し、携帯端末やHMDに他方の情報を表示させる構成とすることができる。すなわち、現在サイクルタイム情報および履歴サイクルタイム情報を、作業者の視野内に表示する構成とすることができる。この場合、一方のグラフを見た作業者が他方の情報を見たいと思った場合に直ぐ見られるように、作業者の同一視野内に表示させる構成とすることもできる。これは、上記したような表示装置23を複数設ける場合も同様である。
【0055】
また、現在サイクルタイム情報および履歴サイクルタイム情報のように2つ以上の情報又は表示を同時に表示させるとは、その情報又は表示を見た者が同時に表示されていると認識できる程度であればよく、厳密に同時である必要はない。例えば、2つ以上の情報又は表示を短い間隔で切り替えて表示させる場合であっても、その情報を見た者が2つ以上の情報を同時に把握できるのであれば、その表示態様は本実施形態における同時に表示させる概念に含まれる。
【0056】
実施形態では現在サイクルタイムとして直近に取得したデータを表示する構成を例示したが、直近に取得したデータに限らず、その前に取得したデータ、あるいは、数回前に取得したデータを表示する構成とすることができる。このような構成によっても、サイクルタイムの推移つまりは傾向を把握することができ、サイクルタイムの状況を容易に確認および把握することができる。
【0057】
この場合、現在サイクルタイム情報または履歴サイクルタイム情報として、単一の製品に関する全工程が終了した時点で、各工程のデータ表示を一括して更新する構成とすることができる。これにより、1つの製品の製造に要したサイクルタイムを、工程ごとに容易に比較および把握することができる。つまり、現在サイクルタイム情報として必ずしも最新のサイクルタイムを表示する必要は無く、推移や傾向を把握できる程度の範囲内であれば、取得してからある程度の時間が経過したサイクルタイムを表示する構成とすることもできる。
【0058】
現在サイクルタイム情報または履歴サイクルタイム情報の数値として、工程が開始されてからのサイクルタイムの最悪値を表示する構成とすることができる。最悪値が基準サイクルタイムを超えていなければ各工程が正常に動作していると考えられることから、各工程の状況を把握できるとともに、最悪値が基準サイクルタイムを超えていれば、確認等が必要であることを容易に把握することができる。
【0059】
現在サイクルタイム情報として、複数回取得したデータの平均値などを表示する構成とすることができる。このような構成によっても、サイクルタイムの状況を容易に確認および把握することができる。
【0060】
現在サイクルタイム情報として、基準サイクルタイムを空のずれ量を表示する構成とすることができる。このような構成によっても、各工程の状況を把握することができる。この場合、基準サイクルタイムからのずれ量の推移を表示する構成とすることもできる。また、ずれ量は、数値表示に限らず、例えば「+」や「-」といった記号と組み合わせることができる。また、例えば基準サイクルタイムを超えるデータを赤色で表示し、基準サイクルタイムに収まっているデータを青色で表示するなど、表示色を異ならせる構成とすることができる。このような構成によっても、サイクルタイムの状況を容易に確認および把握することができる。
【0061】
実施形態では現在サイクルタイム情報および履歴サイクルタイム情報としてデータを表示する構成を例示したが、現在サイクルタイム情報または履歴サイクルタイム情報として、基準サイクルタイムに収まっているか否かを、例えば表示色を異ならせることで表示する構成とすることができる。このような構成によっても、サイクルタイムの状況を容易に確認および把握することができる。
【0062】
実施形態では、履歴サイクルタイム情報として折れ線グラフを採用したが、いわゆるバブルチャートやロウソクチャートを採用することができる。すなわち、データの推移を把握できるグラフであれば、その種別を問わずに採用することができる。
【0063】
実施形態では基準サイクルタイムを超えるサイクルタイムについては、表示位置の背景を異なる色にすることによって他のサイクルタイムと識別可能に表示する例を示したが、例えばグラフを点滅表示させたり、繰り返しアニメーション表示させたり、図10に現在サイクルタイムについて例示するように、数値を丸や四角などの記号で囲んだり、エクスクラメーションマークのような注目を集めるためのアイコンを付けるなど、他の識別態様を採用することができる。
【0064】
実施形態では履歴サイクルタイム情報に含まれる所定数のサイクルタイムを、横軸を時刻とし、縦軸をサイクルタイムとした折れ線グラフにより表示させる構成を例示したが、横軸をサイクルタイムとし、縦軸を時刻とした折れ線グラフやバブルチャートあるいはロウソクチャートなどで表示する構成とすることができる。このような構成によっても、サイクルタイムの状況を容易に確認および把握することができる。
【0065】
実施形態では履歴サイクルタイム情報に含まれる所定数のサイクルタイムを、横軸を取得回数とし、縦軸をサイクルタイムとした折れ線グラフにより表示する構成を例示したが、横軸をサイクルタイムとし、縦軸を取得回数とした折れ線グラフやバブルチャートあるいはロウソクチャートなどで表示する構成とすることができる。このような構成によっても、サイクルタイムの状況を容易に確認および把握することができる。
【0066】
実施形態では、履歴サイクルタイム情報に含まれる所定数のサイクルタイムを、工程ごとに、取得時刻または取得回数と対応付けた表形式で、履歴サイクルタイム情報のグラフと同一画面に表示させる構成を例示したが、異なる画面に表示させる構成とすることができる。また、自動的に、または、作業者の操作に基づいて切り替えて表示する構成とすることもできる。これらのような構成によっても、サイクルタイムの状況を容易に確認および把握することができる。
【0067】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0068】
図面中、10は、可視化システム(サイクルタイム可視化システム)、11はPLC(生産設備)、12は加工装置(生産設備)、13はロボット(生産設備)、14は搬送装置(生産設備)、15は検査装置(生産設備)、41はデータ可視化部、60は現在サイクルタイム情報、61は履歴サイクルタイム情報を示す。
図1
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図10