(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092911
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】位相差板、光学部材及びその製造方法、並びに、表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240701BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20240701BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240701BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240701BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240701BHJP
H10K 50/10 20230101ALN20240701BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K50/86
H10K59/10
B32B7/023
G09F9/30 349E
G09F9/30 349Z
H10K50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082468
(22)【出願日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2022208266
(32)【優先日】2022-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】入江 俊介
(72)【発明者】
【氏名】秋山 圭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 輝賢
(72)【発明者】
【氏名】奥山 健一
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
4F100
5C094
【Fターム(参考)】
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5C094AA01
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5C094BA43
5C094ED14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】良好な密着性でポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層とが直接積層されており、面外位相差が向上した位相差板及びその製造方法、光学部材及びその製造方法、並びに、表示装置を提供する。
【解決手段】ポジティブC型位相差層1と、前記ポジティブC型位相差層1に直接隣接して位置するポジティブA型位相差層2とを含有し、前記ポジティブC型位相差層1に、前記ポジティブA型位相差層2中に含まれる液晶性成分が浸透した領域3を含み、当該浸透した領域3において、前記ポジティブA型位相差層2中に含まれる液晶性成分が垂直配向している、位相差板10。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポジティブC型位相差層と、前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置するポジティブA型位相差層とを含有し、
前記ポジティブC型位相差層に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域を含み、当該浸透した領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向している、位相差板。
【請求項2】
ポジティブC型位相差層と、前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置するポジティブA型位相差層とを含有し、
前記ポジティブC型位相差層に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域を含み、当該浸透した領域の波長550nmにおける面内位相差Reの絶対値が2.0nm未満である、位相差板。
【請求項3】
ポジティブC型位相差層と、前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置するポジティブA型位相差層とを含有し、
前記ポジティブA型位相差層が逆波長分散性を示し、前記ポジティブC型位相差層に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域を含み、浸透領域を除いたポジティブC型位相差層の450nmの波長における面外位相差をRthC450、550nmの波長における面外位相差をRthC550とし、浸透領域を含むポジティブC型位相差層の450nmの波長における面外位相差をRthAC450、550nmの波長における面外位相差をRthAC550としたとき、
RthC450/RthC550>RthAC450/RthAC550
である、位相差板。
【請求項4】
当該浸透した領域の厚みが100nm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の位相差板。
【請求項5】
浸透領域を除いたポジティブC型位相差層のΔnCが-0.090未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の位相差板。
【請求項6】
浸透領域を含むポジティブC型位相差層のΔnACが-0.100未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の位相差板。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の位相差板と、偏光板とを含有する、光学部材。
【請求項8】
偏光板を準備する工程と、
請求項1~3のいずれか1項に記載の位相差板を準備する工程と、
位相差板と偏光板とを積層する工程とを有する、光学部材の製造方法。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか1項に記載の位相差板、又は当該位相板と偏光板とを含有する光学部材、を備える表示装置。
【請求項10】
ポジティブC型位相差層と、前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置するポジティブA型位相差層との積層体を含有し、
前記積層体の断面の走査電子顕微鏡(SEM)-エネルギー分散型X線分光(EDX)分析において、下記条件(1)及び(2)を満たす、位相差板。
条件(1):前記ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の界面から、層厚み方向にポジティブA型位相差層側300nmの領域において検出される窒素元素の平均値(AN300)が7.0cps以上である。
条件(2):前記ポジティブC型位相差層領域において検出される窒素元素の平均値(CN)が7.0cps以上である。
【請求項11】
更に、下記条件(3)を満たす、請求項10に記載の位相差板。
条件(3):前記ポジティブC型位相差層領域において検出される窒素元素の平均値(CN)と、前記ポジティブA型位相差層側300nmの領域において検出される窒素元素の平均値(AN300)との差(CN-AN300)が、6.0cps以上である。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の位相差板と、偏光板とを含有する、光学部材。
【請求項13】
偏光板を準備する工程と、
請求項10又は11に記載の位相差板を準備する工程と、
位相差板と偏光板とを積層する工程とを有する、光学部材の製造方法。
【請求項14】
前記位相差板と偏光板とを積層する工程において、偏光板側から光照射する工程を有する、請求項13に記載の光学部材の製造方法。
【請求項15】
請求項10又は11に記載の位相差板、又は当該位相板と偏光板とを含有する光学部材、を備える表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、1層で配向層と位相差層の両方の機能を有するポジティブC型位相差層を用いた位相差板、光学部材及びその製造方法、並びに、表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置等に適用される光学フィルムとして、入射した光に対して位相差層により所望の位相差を付与する位相差板がある。例えば有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置では、1/4波長位相差板が直線偏光板と組み合わせた形態で円偏光板として使用され、外光反射防止フィルムとして機能する。また、従来より、IPSモード等の液晶表示装置では、斜め方向からの視野に対するコントラストを高めるために、ポジティブAの特性を備えるポジティブAプレートとポジティブCの特性を備えるポジティブCプレートとが組み合わされた位相差板が偏光板補償フィルムの一部として用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
従来、ポジティブAプレートとポジティブCプレートとの積層は、接着剤層等で貼り合わせられていた。
表示装置の薄型化に伴い、上記の問題に対応して提案されている位相差板を組み合わせて構成する広帯域1/4波長位相差板などの位相差板にも、性能を維持しつつより薄型化が可能な構成や製造工程の効率化が求められている。
【0004】
位相差板の薄型化を目的として、特許文献2には、ポジティブCプレートと、ポジティブAプレートが積層された光学フィルム積層体であって、前記ポジティブCプレートは、感光性基を有する第1の液晶性材料から形成されたホメオトロピック配向層の配向性が固定されたものであり、前記ポジティブAプレートは、重合性を有する第2の液晶性材料から形成された、ホモジニアス配向層の配向性が固定されたものであり、前記ポジティブAプレートは、前記ポジティブCプレート上に直接積層されており、前記ポジティブCプレートにおいて、前記感光性基が異方的に光反応していることを特徴とする、光学フィルム積層体が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、第1の光学異方性層と第2の光学異方性層とが直接積層されてなる光学積層体であって、前記第1の光学異方性層および前記第2の光学異方性層が、いずれも液晶層からなり、前記第1の光学異方性層は、液晶性化合物および光配向化合物とともに、2以上のラジカル重合性二重結合および1以上の水酸基を有するモノマーを重合させてなる重合体を配合した液晶組成物を用いて形成する、光学積層体が開示されている。
また、特許文献4には、第1液晶化合物を用いて形成された第1光学異方性層と、第2液晶化合物を用いて形成された第2光学異方性層と、前記第1光学異方性層と前記第2光学異方性層との間に配置された、前記第1液晶化合物由来の成分および前記第2液晶化合物由来の成分を含む混合層と、を有する光学積層体であって、前記第1光学異方性層がCプレートであり、前記第2光学異方性層がAプレート、または、ねじれ配向液晶相を固定してなる層であり、前記混合層がさらに光配向化合物を含み、前記光学積層体の前記第1光学異方性層側の表面から前記第2光学異方性層側に向かって、イオンビームを照射しながら飛行時間型2次イオン質量分析法で前記光学積層体の深さ方向の成分を分析した際に、特定の条件を満たす、光学積層体が開示されている。
また、特許文献5には、配向層及びポジティブA層を有する光学積層体であって、前記配向層と前記ポジティブA層とが接してなり、前記ポジティブA層は化合物aを含み、前記配向層は、前記ポジティブA層から移行してなる前記化合物aと、その他の化合物とを含み、前記化合物aは、前記その他の化合物が実質的に含有しない原子Xを含み、前記ポジティブA層内の前記原子Xの平均検出量を質量基準で100と規格化したときに、前記配向層内の前記原子Xの平均検出量が23以上である、光学積層体が開示されている。
【0006】
さらに、本発明者らは、特許文献6に、光配向性成分と熱架橋剤を含む熱硬化性液晶組成物の硬化物であるポジティブC型位相差層と、前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置する、重合性液晶組成物の硬化物を含有するポジティブA型位相差層とを含有する、位相差板を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4592005号公報
【特許文献2】特開2016-004142号公報
【特許文献3】特許第6770634号公報
【特許文献4】国際公開2021/167075号公報
【特許文献5】特開2022-3361号公報
【特許文献6】国際公開2022/158555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2~6においては、位相差板の薄型化を目的として前記ポジティブA型位相差層が、前記ポジティブC型位相差層上に直接積層されている。しかしながら、特許文献2に記載されているポジティブC型位相差層は、垂直配向性を有する液晶性成分の末端に感光性基として光配向性基を結合させた構造を有する第一の液晶性材料を用いて形成されているので、ポジティブC型位相差層自体の垂直配向性に劣り、更に、直接積層されたポジティブA型位相差層の液晶性材料を配向させる能力(液晶配向能)にも劣るものであった。
また、特許文献3に記載されている光学積層体は、第2の光学異方性層(ポジティブA型位相差層)を直接積層する第1の光学異方性層(ポジティブC型位相差層)が、重合性液晶化合物を含む光硬化性樹脂組成物の硬化物である。重合性液晶化合物を含む光硬化性樹脂組成物の硬化物であるポジティブC型位相差層上に、ポジティブA型位相差層を直接積層した位相差板は、垂直配向性が不十分になるか、ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の密着性が不十分になるという課題がある。重合性液晶化合物を含む光硬化性樹脂組成物の硬化物であるポジティブC型位相差層は、垂直配向性が良好になるよう十分に硬化させると表面が硬くなって密着性が悪くなるからである。密着性が不十分であると、転写時にポジティブC型位相差層がポジティブA型位相差層と共に転写されず、ポジティブC型位相差層が基材上に残存してしまう問題が生じる。また、このように光硬化されたポジティブC型位相差層は、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域を含まない。
また、特許文献4は、前記特許文献3のような密着性の課題を解決したものであり、第1光学異方性層と第2光学異方性層との間に配置された、第1液晶化合物由来の成分および第2液晶化合物由来の成分を含む混合層を有することが開示されている。しかしながら特許文献4の技術では、垂直配向性が不十分である。また、後述の比較例で示すように、特許文献4の混合層において、ポジティブA層の液晶性成分は垂直に配向していない。
特許文献5に記載されている配向層(ポジティブC層)は、特許文献2に記載されているポジティブCプレートよりも垂直配向性が改善されているものの、耐久性が不十分で、ポジティブCプレート上にポジティブA層の液晶性成分を積層する際の加熱や浸透により、ポジティブC層の垂直配向性が悪化しやすいという問題があった。また、垂直配向性が悪化したポジティブC層の液晶性成分が経時により再配向し、ポジティブC層の垂直配向性が安定しない問題があった。また、後述の比較例で示すように、特許文献5の配向層(ポジティブC層)の浸透領域において、ポジティブA層の液晶性成分は垂直に配向していない。
本発明者らによる特許文献6の位相差板においては、前記ポジティブC型位相差層に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる特定成分が浸透した領域を含んでいてよい旨が記載されている。しかしながら、特許文献6には、ポジティブC型位相差層の浸透領域において、ポジティブA層の液晶性成分が垂直に配向することは一切記載されていない。
特許文献2~6に具体的に開示されている、ポジティブA型位相差層が前記ポジティブC型位相差層上に直接積層されている位相差板においては、上記課題がある上、未だ面外位相差の発現が不十分であり、さらなる向上が求められていた。
【0009】
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、良好な密着性でポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層とが直接積層されており、面外位相差が向上した位相差板及びその製造方法、光学部材及びその製造方法、並びに、表示装置を提供することを第一の目的とする。
【0010】
また、特許文献2~6に具体的に開示されている、ポジティブA型位相差層が前記ポジティブC型位相差層上に直接積層されている位相差板においては、上記課題がある上、さらに視認性の向上が求められており、さらなる低反射化が求められていた。
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、反射率が低減した、ポジティブA型位相差層が前記ポジティブC型位相差層上に直接積層されている位相差板及びその製造方法、光学部材及びその製造方法、並びに、表示装置を提供することを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記第一の課題を達成すべく鋭意検討した結果、ポジティブC型位相差層と、前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置するポジティブA型位相差層とを含有する位相差板において、前記ポジティブC型位相差層に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域を含むことにより2層の密着性を向上でき、また当該浸透した領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分を垂直配向させることにより、ポジティブC型位相差層の面外位相差を更に向上することができることを見出し、本発明を完成させた。
また、本発明者らは、上記第二の課題を達成すべく鋭意検討した結果、ポジティブC型位相差層と、前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置するポジティブA型位相差層との積層体を含有する位相差板において、前記積層体の断面の走査電子顕微鏡(SEM)-エネルギー分散型X線分光(EDX)分析における、前記ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の界面からポジティブA型位相差層側300nmの領域で検出される窒素元素の平均値と、前記ポジティブC型位相差層領域で検出される窒素元素の平均値とがそれぞれ所定値以上であることにより、反射率を低減することができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本開示には、以下の態様が含まれる。
前記第一の課題を解決するための本開示の第一の態様は、以下の[1]~[9]に関する。
前記第二の課題を解決するための本開示の第二の態様は、以下の[10]~[15]に関する。
【0012】
[1] ポジティブC型位相差層と、前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置するポジティブA型位相差層とを含有し、
前記ポジティブC型位相差層に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域を含み、当該浸透した領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向している、位相差板。
[2] ポジティブC型位相差層と、前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置するポジティブA型位相差層とを含有し、
前記ポジティブC型位相差層に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域を含み、当該浸透した領域の波長550nmにおける面内位相差Reの絶対値が2.0nm未満である、位相差板。
[3] ポジティブC型位相差層と、前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置するポジティブA型位相差層とを含有し、
前記ポジティブA型位相差層が逆波長分散性を示し、前記ポジティブC型位相差層に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域を含み、浸透領域を除いたポジティブC型位相差層の450nmの波長における面外位相差をRthC450、550nmの波長における面外位相差をRthC550とし、浸透領域を含むポジティブC型位相差層の450nmの波長における面外位相差をRthAC450、550nmの波長における面外位相差をRthAC550としたとき、
RthC450/RthC550>RthAC450/RthAC550
である、位相差板。
[4] 当該浸透した領域の厚みが100nm以下である、前記[1]~[3]のいずれか1項に記載の位相差板。
[5] 浸透領域を除いたポジティブC型位相差層のΔnCが-0.090未満である、前記[1]~[4]のいずれか1項に記載の位相差板。
[6] 浸透領域を含むポジティブC型位相差層のΔnACが-0.100未満である、前記[1]~[5]のいずれか1項に記載の位相差板。
[7] 前記[1]~[6]のいずれか1項に記載の位相差板と、偏光板とを含有する、光学部材。
[8] 偏光板を準備する工程と、
前記[1]~[6]のいずれか1項に記載の位相差板を準備する工程と、
位相差板と偏光板とを積層する工程とを有する、光学部材の製造方法。
[9] 前記[1]~[6]のいずれか1項に記載の位相差板、又は当該位相板と偏光板とを含有する光学部材、を備える表示装置。
【0013】
[10] ポジティブC型位相差層と、前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置するポジティブA型位相差層との積層体を含有し、
前記積層体の断面の走査電子顕微鏡(SEM)-エネルギー分散型X線分光(EDX)分析において、下記条件(1)及び(2)を満たす、位相差板。
条件(1):前記ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の界面から、層厚み方向にポジティブA型位相差層側300nmの領域において検出される窒素元素の平均値(AN300)が7.0cps以上である。
条件(2):前記ポジティブC型位相差層領域において検出される窒素元素の平均値(CN)が7.0cps以上である。
[11] 更に、下記条件(3)を満たす、前記[10]に記載の位相差板。
条件(3):前記ポジティブC型位相差層領域において検出される窒素元素の平均値(CN)と、前記ポジティブA型位相差層側300nmの領域において検出される窒素元素の平均値(AN300)との差(CN-AN300)が、6.0cps以上である。
[12] 前記[10]又は[11]に記載の位相差板と、偏光板とを含有する、光学部材。
[13] 偏光板を準備する工程と、
前記[10]又は[11]に記載の位相差板を準備する工程と、
位相差板と偏光板とを積層する工程とを有する、光学部材の製造方法。
[14] 前記位相差板と偏光板とを積層する工程において、偏光板側から光照射する工程を有する、前記[13]に記載の光学部材の製造方法。
[15] 前記[10]又は[11]に記載の位相差板、又は当該位相板と偏光板とを含有する光学部材、を備える表示装置。
【発明の効果】
【0014】
本開示においては、良好な密着性でポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層とが直接積層されており、面外位相差が向上した位相差板及びその製造方法、光学部材及びその製造方法、並びに、表示装置を提供することができるという効果を奏する。
また、本開示においては、反射率が低減した、ポジティブA型位相差層が前記ポジティブC型位相差層上に直接積層されている位相差板及びその製造方法、光学部材及びその製造方法、並びに、表示装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の位相差板の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本開示の位相差板の一例を示す概略断面図である。
【
図3】本開示の位相差板において、浸透領域とポジティブC型位相差層との界面まで斜め方向に切削したサンプルを作成する際の模式図である。
【
図4】本開示の光学部材の一例を示す概略断面図である。
【
図5】本開示の位相差板を含む有機EL表示パネルの一例を示す概略断面図である。
【
図6】本開示の実施例における色相の評価方法について説明する図である。
【
図7】本開示の実施例における色相の評価について説明する図である。
【
図8】本開示の第二の態様の位相差板の一例を示す概略断面図である。
【
図9】本開示の第二の態様の位相差板の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施の形態や実施例などを、図面等を参照しながら説明する。但し、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態や実施例等の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。また、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明する場合があるが、上下方向が逆転してもよい。
「本明細書において、ある部材又はある領域等のある構成が、他の部材又は他の領域等の他の構成の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限り、これは他の構成の直上(又は直下)にある場合のみでなく、他の構成の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の構成の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
【0017】
本開示において配向規制力とは、位相差層中の液晶化合物を特定方向に配列させる作用をいう。
本開示において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタアクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの各々を表す。
また、本明細書において「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではなく、「フィルム面(板面、シート面)」とは、対象となるフィルム状(板状、シート状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるフィルム状部材(板状部材、シート状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
また、本開示において、数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0018】
本開示において、「波長λnmにおける面内位相差」を「Re(λ)」、「波長λnmに面外(厚み方向)位相差」を「Rth(λ)」と表記する場合がある。特に記載がない場合は、波長λは、550nmとする。
面内位相差(Re)及び面外位相差(Rth)は、Nx、Ny、Nz及び位相差層の厚みd(nm)から、下記式により算出できる。
面内位相差(Re)=(Nx-Ny)×d
面外位相差(Rth)=((Nx+Ny)/2-Nz)×d
本開示において、位相差板や位相差層の面内位相差(Re)及び面外位相差(Rth)は、位相差測定装置(例えば、王子計測機器(株)製、KOBRA-WR)において波長λで測定した値である。また、微小領域の面内位相差(Re)及び面外位相差(Rth)は、微小領域を測定可能な複屈折計である微小領域位相差測定システム(例えば、アクソメトリクス社製、AxoStep)において波長λで測定した値である。
本開示において、屈折率Nx、Ny、Nzは、アッベ屈折計(例えば、アタゴ(株)製、NAR-4T)を使用し、光源にナトリウムランプ(λ=589nm)を用いて測定する。また、波長依存性を測定する場合は、多波長アッベ屈折計(例えば、アタゴ(株)製、DR-M2)にて、干渉フィルターとの組み合わせで測定できる。また、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、および、各種光学フィルムのカタログの値を使用できる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、および、ポリスチレン(1.59)。
【0019】
本開示において、ポジティブA型位相差層とは、層の面内に沿った最も屈折率の高い軸方向であるX軸方向の屈折率をNx、層の面内に沿った方向でX軸に直交するY軸方向の屈折率をNy、層の厚み方向の屈折率をNzとしたとき、Nx>Ny≒Nzの関係を満たす層である。なお、前記「≒」とは、両者が完全に同一である場合だけでなく、両者が実質的に同一である場合も包含する。「実質的に同一」とは、(Ny-Nz)×d(ただし、dはフィルムの厚みである)が、-8~8nmの場合も「Ny≒Nz」に含まれる。(Ny-Nz)×dは、好ましくは-5~5nmである。
また、本開示において、ポジティブC型位相差層とは、Nx≒Ny<Nzの関係を満たす層である。なお、前記「≒」とは、両者が完全に同一である場合だけでなく、両者が実質的に同一である場合も包含する。「実質的に同一」とは、(Nx-Ny)×d(ただし、dはフィルムの厚みである)が、0~3nmの場合も「Nx≒Ny」に含まれる。(Nx-Ny)×dは、好ましくは0~2nmである。
また、ポジティブA型位相差層において、Ny≒Nzであることから、上記の面内位相差及び面外位相差の算出式から、
ポジティブA型位相差層における面外位相差Rth=ポジティブA型位相差層における面内位相差Re/2
と見積もることができる。
【0020】
I.位相差板
I-1.第一の態様の位相差板
本開示は、ポジティブC型位相差層と、前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置するポジティブA型位相差層とを含有し、
前記ポジティブC型位相差層に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域を含み、当該浸透した領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向している、位相差板を提供する。
また、本開示は、ポジティブC型位相差層と、前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置するポジティブA型位相差層とを含有し、
前記ポジティブC型位相差層に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域を含み、当該浸透した領域の波長550nmにおける面内位相差Reの絶対値が2.0nm未満である、位相差板を提供する。
【0021】
図1及び
図2は本開示の位相差板の一例を示す概略断面図である。
図1に例示する位相差板10においては、ポジティブC型位相差層1と、前記ポジティブC型位相差層1に直接隣接して位置するポジティブA型位相差層2とを含有し、前記ポジティブC型位相差層1に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域(以下、「浸透領域」ということがある)3を含み、当該浸透した領域3において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向している。
本開示の位相差板はさらに基材を有していてもよい。
図2に例示する位相差板10においては、基材4に、前記基材に隣接して位置するポジティブC型位相差層1と、前記ポジティブC型位相差層1に直接隣接して位置するポジティブA型位相差層2とを含有し、前記ポジティブC型位相差層1に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域3を含み、当該浸透した領域3において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向している。
【0022】
図2の例示される位相差板10の1実施形態は、基材4とポジティブC型位相差層1とが直接積層されているが、当該基材4のポジティブC型位相差層1側表面に配向規制力を発現する手段が付されていてもよい。
位相差板の1実施形態は、基材4と配向膜とポジティブC型位相差層1がこの順に積層されていてもよい(図示せず)。
本開示の位相差板においては、生産性向上の点から、基材とポジティブC型位相差層との間に配向膜を含有しないことが好ましく、前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置する基材を含有することが好ましい。
また、本開示の位相差板においては、製造後の厚みを削減できる点から、基材1を製造後に剥離することにより、
図1のように基材を含有しなくてもよい。
【0023】
前記ポジティブC型位相差層1に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域が存在するかどうかは、試料表面からガスクラスターイオンビームでエッチングしながら、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)でポジティブA型位相差層由来の液晶性成分由来のフラグメントイオン、及びポジティブC型位相差層に含まれる成分(例えば光配向成分)由来のフラグメントイオンについて、それぞれの層厚方向分布を分析し、ポジティブA型位相差層由来の液晶性成分由来のフラグメントイオンとポジティブC型位相差層に含まれる成分由来のフラグメントイオンが両方検出される部分が存在するかどうかにより判断するものとする。ポジティブA型位相差層が、ポジティブC型位相差層に共通で含まれる成分からなる場合は、該当成分のフラグメントの他成分フラグメントとのピーク強度比から判断するものとする。
また、位相差層の厚み測定結果を基準とし、ポジティブA型位相差層由来の液晶性成分由来のフラグメントイオンとポジティブC型位相差層に含まれる成分由来のフラグメントイオンが両方検出される部分の分布から浸透領域の厚みを算出するものとする。これらの具体的な測定方法としては、後述する実施例と同様の方法を用いる。
【0024】
浸透領域において、ポジティブA型位相差層由来の液晶性成分が良好に垂直配向しやすい点から、浸透領域の厚みは、100nm以下であってよい。浸透領域の厚みが大きすぎると、浸透領域において、ポジティブA型位相差層由来の液晶性成分がC型位相差層の液晶性成分の垂直配向に影響を受け難くなり、垂直配向が乱れやすくなるおそれがある。
浸透領域の厚みは、さらに80nm以下であってよく、60nm以下であってよい。
一方で、浸透領域の厚みが小さすぎると、浸透領域において、ポジティブA型位相差層由来の液晶性成分が垂直配向し難いおそれがある。その点から、浸透領域の厚みの下限値は、30nm以上であってよく、50nm以上であってよい。
【0025】
当該浸透領域3において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向しているかどうかは、当該浸透領域3の面内位相差が0付近であること、具体的には例えば、浸透領域の波長550nmにおける面内位相差Reの絶対値が2.0nm未満であることを指標とすることができる。浸透領域の面内位相差Reは、
図3のように、位相差板の上面から表面・界面切削試験装置により、浸透領域とポジティブC型位相差層との界面まで斜め方向に切削したサンプルを用いて、測定するものとする。浸透領域の面内位相差Reの具体的な測定方法としては、後述する実施例と同様の方法を用いる。
また、当該浸透領域3において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向しているかどうかは、ポジティブA型位相差層が逆波長分散特性を示す場合、当該浸透領域3を除いたポジティブC型位相差層1における面外位相差Rthの波長分散特性が、ポジティブC型位相差層1と当該浸透領域3を足し合わせた層における面外位相差Rthの波長分散特性より大きいことから確認できる。具体的には例えば、当該浸透領域3を除いたポジティブC型位相差層1の450nmの波長における面外位相差をRth
C450、550nmの波長における面外位相差をRth
C550とし、当該浸透領域3を含むポジティブC型位相差層の450nmの波長における面外位相差をRth
AC450、550nmの波長における面外位相差をRth
AC550としたとき、
Rth
C450/Rth
C550>Rth
AC450/Rth
AC550
であることから確認できる。各面外位相差Rthの測定方法としては、後述する実施例と同様の方法を用いる。
【0026】
浸透領域の波長550nmにおける面内位相差Reの絶対値は、位相差板の面内位相差への影響の点から、1.8nm以下であってよく、1.5nm以下であってもよく、1.0nm以下であってもよい。
【0027】
本開示の位相差板は、ポジティブC型位相差層と、前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置するポジティブA型位相差層とを含有する位相差板において、前記ポジティブC型位相差層に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域を含むことにより前記ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の密着性を向上でき、また当該浸透した領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分を垂直配向させることにより、ポジティブC型位相差層の面外位相差を更に向上することができる。
従来、ポジティブC型位相差層に浸透領域を有する場合、ポジティブC型位相差層の垂直配向性を乱したりして、ポジティブC型位相差層単独で発現する面外位相差を悪化させる傾向がみられる場合が多々あった。或いは、ポジティブC型位相差層が十分に硬化していて、表面においてのみ若干溶剤浸透が起こり、ポジティブC型位相差層の垂直配向性に影響を与えない場合もあった。それに対して、本開示によれば、浸透した領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分を垂直配向させることにより、密着性を良好にするとともに、ポジティブC型位相差層単独で発現する面外位相差を更に向上させている。これは、ポジティブC型位相差層が熱硬化性液晶組成物からなる膜であることによって適度な架橋密度となり、ポジティブA型位相差層に含まれる液晶性成分が適度に浸透し、かつポジティブC型位相差層の液晶性成分に隣接しやすく、またポジティブC型位相差層表面での液晶性成分の垂直配向性が良好であることにより浸透領域における垂直配向規制力が強く付与されることによるものと推定される。
【0028】
本開示による、前記浸透領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分を垂直配向させる方法としては、後に詳述するが、浸透領域においてポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分に対して垂直配向規制力を発現できるようにポジティブC型位相差層の垂直配向規制力を高める方法が挙げられる。ポジティブC型位相差層の垂直配向規制力を高める方法としては、ポジティブC型位相差層を形成時に2段階以上の温度制御により、垂直配向性の向上と、硬化性を両立させる方法;垂直配向性を向上するように硬化させるよう、ポジティブC型位相差層用組成物に含まれる硬化剤の量を制御する方法;浸透領域において垂直配向規制力を発現できるようにポジティブC型位相差層の厚みを制御する方法等が挙げられる。
【0029】
また、本開示の位相差板は、良好な密着性でポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層とが直接積層されており、従来のような貼り合わせのための粘着層が不要であることから、厚みを薄くすることが可能である。
以下、位相差板に含まれる部材について詳述する。
【0030】
1.ポジティブC型位相差層
本開示のポジティブC型位相差層1は、垂直配向(ホメオトロピック配向)を示す層でありながら、浸透領域3を介してポジティブA型位相差層2と直接積層されていることから、ポジティブA型位相差層を水平配向させる液晶配向能も有するものである。
本開示のポジティブC型位相差層1は、垂直配向する液晶性成分と、光配向性成分を含むものであってよい。
【0031】
本開示のポジティブC型位相差層1は、前記浸透領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分を垂直配向させやすい点から、垂直配向する液晶性成分と、光配向性成分と熱架橋剤を含む熱硬化性液晶組成物の硬化物であってよい。
ポジティブC型位相差層1は、垂直配向する液晶性成分と、光配向性成分と熱架橋剤を含む熱硬化性液晶組成物の硬化物である場合、その架橋構造によって膜の耐熱性、耐溶剤性が良好となり、耐久性が高くなる。ポジティブC型位相差層1は、垂直配向する液晶性成分と、光配向性成分と熱架橋剤を含む熱硬化性液晶組成物の硬化物である場合、重合性液晶化合物を含む光硬化性樹脂組成物の硬化物である場合と比べて、硬くなり難くて柔軟性を有しやすく、ポジティブC型位相差層の垂直配向性を向上させながら、硬化性を制御しやすい。そのため、垂直配向性が低下する程度の溶剤浸透を抑制しながら、直接積層されたポジティブA型位相差層との界面に浸透領域を形成しやすい。そして、前記浸透領域においても垂直配向規制力を発現できるようにポジティブC型位相差層の垂直配向性を高めやすい点から、前記浸透領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向しやすい。一方で、ポジティブC型位相差層の表面側においては、偏光光照射によって、光配向性成分により硬化膜に配向層としての機能が更に付与され、配向層兼位相差層として機能する。
また、ポジティブC型位相差層1が、垂直配向する液晶性成分と、光配向性成分と熱架橋剤を含む熱硬化性液晶組成物の硬化物である場合、本開示の位相差板は、良好な密着性でポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層とが直接積層されており、厚みを薄くすることができ、且つ、ポジティブC型位相差層が柔軟性を有することから、屈曲耐性が良好な位相差板とすることができる。
【0032】
1-1.液晶性成分
前記垂直配向する液晶性成分としては、光配向性成分と混合しても垂直配向性が良好になりやすく、且つ柔軟性を付与しやすい点から、液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位を有する側鎖型液晶ポリマーを用いることが好ましい。
【0033】
本開示に用いられる側鎖型液晶ポリマー(A)は、液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位を有し、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位を更に有していてもよいものである。側鎖型液晶ポリマー(A)は、液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位を有し、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位を更に有するものであってよい。
以下、側鎖型液晶ポリマー(A)における各構成単位について説明する。
【0034】
(1)液晶性構成単位
本開示の実施形態において、液晶性構成単位は、液晶性部分、すなわち液晶性を示す部分を含む側鎖を有する。液晶性構成単位は、側鎖に液晶性を示すメソゲンを含む構成単位であることが好ましい。液晶性構成単位は、メソゲン基にスペーサーを介して重合性基が結合した液晶性を示す化合物から誘導される構成単位であることが好ましい。本開示においてメソゲンとは、液晶性を示すような剛直性の高い部位をいい、例えば、2個以上の環構造、好ましくは3個以上の環構造を有し、環構造同士が直接結合により連結しているか、又は、当該環構造が1原子乃至3原子を介して連結している部分構造が挙げられる。側鎖にこのような液晶性を示す部位を有することにより、当該液晶性構成単位が垂直配向しやすくなる。
前記環構造としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等の芳香環であってもよく、シクロペンチル、シクロヘキシル等の環状の脂肪族炭化水素であってもよい。
また、当該環構造が1原子乃至3原子を介して連結している場合、当該連結部の構造としては、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR-C(=O)-、-C(=O)-NR-、-O-C(=O)-NR-、-NR-C(=O)-O-、-NR-C(=O)-NR-、-O-NR-、若しくは-NR-O-(Rは水素原子又は炭化水素基)等が挙げられる。
中でも、メソゲンとしては、前記環構造の連結が棒状になるように、ベンゼンであればパラ位、ナフタレンであれば2,6位で接続された、棒状メソゲンであることが好ましい。
【0035】
また、液晶性構成単位が側鎖に液晶性を示すメソゲンを含む構成単位である場合、垂直配向性の点から、当該構成単位の側鎖の末端が極性基であるか、アルキル基を有することが好ましい。このような極性基の具体例としては、-F、-Cl、-CN、-OCF3、-OCF2H、-NCO、-NCS、-NO2、-NHC(=O)-R’、-C(=O)-OR’、-OH、-SH、-CHO、-SO3H、-NR’2、-R”、又は-OR”(R’は水素原子又は炭化水素基、R”はアルキル基)等が挙げられる。
【0036】
液晶性構成単位は、側鎖として、-R2-(L1-Ar1)a-R3で表される基(ここで、R2は、-(CH2)m-、又は-(C2H4O)m’-で表される基を表す。L1は、単結合、又は、-O-、-OCO-、若しくは-COO-で表される連結基を、Ar1は、置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリーレン基を表し、複数あるL1及びAr1はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。R3は、-F、-Cl、-CN、-OCF3、-OCF2H、-NCO、-NCS、-NO2、-NHCO-R4、-CO-OR4、-OH、-SH、-CHO、-SO3H、-NR4
2、-R5、又は-OR5を、R4は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、R5は、炭素数1~6のアルキル基を表す。aは2~4の整数、m及びm’はそれぞれ独立に2~10の整数である。)を有する構成単位が挙げられる。
【0037】
R2のm及びm’は、それぞれ独立に2~10の整数である。垂直配向性の点から、中でも、m及びm’が2~8であることが好ましく、更に2~6であることが好ましい。
【0038】
Ar1における、置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、中でもフェニレン基がより好ましい。当該アリーレン基が有してもよいR3以外の置換基としては、炭素数1~5のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0039】
R3における、R4は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であるが、中でも、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であることが好ましい。また、R3における、R5は、炭素数1~6のアルキル基であるが、中でも、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましい。
【0040】
液晶性構成単位は、重合可能なエチレン性二重結合含有基を有する単量体から誘導される構成単位であることが好ましい。このようなエチレン性二重結合含有基を有する単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、(メタ)アクリルアミド、マレイミド、ビニルエーテル、又はビニルエステル等の誘導体が挙げられる。液晶性構成単位は、中でも、(メタ)アクリル酸エステル誘導体から誘導される構成単位であることが、垂直配向性の点から、好ましい。
【0041】
本開示の実施形態において液晶性構成単位は、垂直配向性の点から、中でも、下記一般式(I)で表される構成単位を含むことが好ましい。
【0042】
【化1】
(一般式(I)中、R
1は、水素原子又はメチル基を、R
2は、-(CH
2)
m-、又は-(C
2H
4O)
m’-で表される基を表す。L
1は、単結合、又は、-O-、-OCO-、若しくは-COO-で表される連結基を、Ar
1は、置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリーレン基を表し、複数あるL
1及びAr
1はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。R
3は、-F、-Cl、-CN、-OCF
3、-OCF
2H、-NCO、-NCS、-NO
2、-NHCO-R
4、-CO-OR
4、-OH、-SH、-CHO、-SO
3H、-NR
4
2、-R
5、又は-OR
5を、R
4は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、R
5は、炭素数1~6のアルキル基を表す。aは2~4の整数、m及びm’はそれぞれ独立に2~10の整数である。)
【0043】
一般式(I)で表される構成単位において、-R2-(L1-Ar1)a-R3で表される基は、前記と同様であって良い。
【0044】
一般式(I)で表される液晶性構成単位の好適な具体例としては、例えば、下記一般式(I-1)、(I-2)及び(I-3)で表されるもの等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
【0046】
ここで、上記一般式(I-1)~(I-3)で表される構成単位において、R2、及び、R3はそれぞれ、一般式(I)のR2、及び、R3と同様である。
【0047】
本開示の実施形態において液晶性構成単位は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
共重合体の合成には、液晶性構成単位を誘導する、(メタ)アクリル酸エステル誘導体等の単量体を用いることができる。液晶性構成単位を誘導する、(メタ)アクリル酸エステル誘導体等の単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
共重合体における上記液晶性構成単位の含有割合としては、液晶性構成単位の垂直配向性を向上し、十分な液晶配向性を有する点から、共重合体全体に含まれる構成単位の量を100モル%としたとき、100モル%であってもよいが、40モル%~90モル%の範囲内で設定することが好ましく、40モル%~80モル%の範囲内で設定することがより好ましく、更に45モル%~70モル%の範囲内で設定することが好ましく、特に50モル%~65モル%の範囲内であることが好ましい。
なお、共重合体における各構成単位の含有割合は、1H-NMR測定による積分値から算出することができる。
【0050】
(2)アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位は、側鎖型液晶ポリマーが液晶状態となった時に、当該アルキレン基を含む側鎖が、前記液晶性構成単位の側鎖の液晶性を示す部分(メソゲン)の垂直配向を促す作用を有する。アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位を含む場合、側鎖型液晶ポリマー(A)の垂直配向性が向上し、溶剤溶解性も向上する。
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位は、側鎖として、-L2-R13、又は-L2’-R14で表される基(ここで、L2は-(CH2)n-を表し、L2’は-(C2H4O)n’-で表される連結基を表し、R13は、置換基を有してもよいメチル基、アルキル基を有してもよいアリール基、又は-OR15を表し、R14及びR15はそれぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表し、n及びn’はそれぞれ独立に、1~18の整数である。)を有する構成単位が挙げられる。
【0051】
L2は-(CH2)n-を表し、L2’は-(C2H4O)n’-で表される連結基を表すが、中でも、垂直配向性が良好になりやすい点から、-(CH2)n-が好ましい。
また、nは1~18の整数であるが、中でも2~18の整数であることが好ましい。R13が置換基を有するメチル基か置換基を有するアルキル基の場合、nは1の整数も好ましく用いられる。また、n’は、1~18の整数であるが、1~8の整数であることが好ましく、中でも、2~8の整数であることがより好ましい。
【0052】
R14及びR15におけるアルキル基としては、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよいが、中でも直鎖状であることが好ましい。
R14、及びR15におけるアルキル基としては、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基等の直鎖状アルキル基、i-プロピル基、i-ブチル基、t-ブチル基等の分岐状アルキル基、1-プロペニル基、1-ブテニル基等のアルケニル基、エチニル基、2-プロピニル基等のアルキニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基、1-シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基等が挙げられる。上記シクロアルキル基の場合には、直鎖状アルキル基が置換されたシクロアルキル基であることが好ましい。
【0053】
R14及びR15におけるアルキル基は、特に限定されないが、位相差の面内均一性の点から、炭素数1~12のアルキル基が好ましい。
【0054】
R13、R14、及びR15におけるアリール基としては、炭素数6~20のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられ、中でもフェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。上記アリール基の場合には、直鎖状アルキル基が置換されたアリール基であることが好ましい。
【0055】
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位は、置換基として、他の成分と反応するような反応性基を有していてもよく、例えば、後述する共重合体(B)と同様の熱架橋性基を有していてもよい。
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位は、非液晶性且つ非架橋性構成単位と、非液晶性且つ熱架橋性構成単位が挙げられる。アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位は、非液晶性且つ非架橋性構成単位のみを含んでも良いし、非液晶性且つ熱架橋性構成単位のみを含んでもよい。
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位は、垂直配向性が良好になりやすい点から、少なくとも非液晶性且つ非架橋性構成単位を含むことが好ましく、垂直配向性が良好になりやすく、且つ、耐久性が向上しやすい点から、非液晶性且つ非架橋性構成単位、及び、非液晶性且つ熱架橋性構成単位を含むことがより好ましい。
【0056】
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ非架橋性構成単位において、R13におけるメチル基が有してもよい置換基、及び、R14及びR15におけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、非架橋性置換基が挙げられ、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、アルコキシ基、ニトロ基等が挙げられる。中でも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子が好ましい。
【0057】
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ非架橋性構成単位において、R13、R14、及びR15におけるアリール基が有していてもよい置換基としては、非架橋性置換基が挙げられ、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基等が挙げられ、当該アルキル基としては、炭素数1~12のアルキル基が挙げられ、炭素数1~9のアルキル基が挙げられ、直鎖アルキル基であってもよく、分岐又は環構造を含むアルキル基であってもよい。中でも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、炭素数1~9のアルキル基が好ましい。当該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルプロピル基等が挙げられる。当該アルキル基が有する水素原子は、ハロゲン原子に置換されていてもよい。
【0058】
アルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位において、R13におけるメチル基、R14及びR15におけるアルキル基、及び、R13、R14、及びR15におけるアリール基が有していてもよい置換基としては、熱架橋性基であることが好ましく、後述する共重合体(B)と同様の熱架橋性基が挙げられ、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、トリアルコキシシリル基、ブロックイソシアネート基、およびメチル基に置換されるアルコキシ基からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。自己架橋基であるヒドロキシメチル基及びアルコキシメチル基は、R13におけるメチル基に、ヒドロキシ基やアルコキシ基が置換することにより、ヒドロキシメチル基やアルコキシメチル基となるものであってよい。
熱架橋性基としては、中でも、反応性の点から、ヒドロキシ基が好ましく、第1級ヒドロキシ基がより好ましい。なお、第1級ヒドロキシ基とは、ヒドロキシ基が結合する炭素原子が第1級炭素原子であるヒドロキシ基をいう。
【0059】
非液晶性構成単位は、重合可能なエチレン性二重結合含有基を有する単量体から誘導される構成単位であることが好ましい。このようなエチレン性二重結合含有基を有する単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、(メタ)アクリルアミド、マレイミド、ビニルエーテル、又はビニルエステル等の誘導体が挙げられる。非液晶性構成単位は、垂直配向性の点から、(メタ)アクリル酸エステル誘導体又はスチレンから誘導される構成単位であることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル誘導体から誘導される構成単位であることがより好ましい。
【0060】
本開示の実施形態において前記非液晶性構成単位が、下記式(II)で表される構成単位を有することが好ましい。
【0061】
【化3】
(一般式(II)中、R
11は、水素原子又はメチル基を表し、R
12は、-L
2-R
13、又は-L
2’-R
14で表される基を表し、L
2は-(CH
2)
n-を表し、L
2’は-(C
2H
4O)
n’-で表される連結基を表し、R
13は、置換基を有してもよいメチル基、アルキル基を有してもよいアリール基、又は-OR
15を表し、R
14及びR
15はそれぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表し、n及びn’はそれぞれ独立に、1~18の整数である。)
【0062】
式(II)で表される構成単位において、-L2-R13、又は-L2’-R14で表される基は、前記と同様であって良い。
【0063】
本開示の実施形態において前記非液晶性構成単位が、非液晶性且つ非架橋性構成単位である場合、前記式(II)で表される構成単位に含まれる、有していてもよい置換基としては、前述の非架橋性置換基が挙げられる。
また、本開示の実施形態において前記非液晶性構成単位が、非液晶性且つ熱架橋性構成単位である場合、前記式(II)で表される構成単位に含まれる、有していてもよい置換基としては、前述の熱架橋性基が挙げられる。1つの非液晶性且つ熱架橋性構成単位において、熱架橋性基を1つ有することが好ましいが、2つ以上有してもよい。
【0064】
本開示の実施形態において前記非液晶性構成単位が、非液晶性且つ熱架橋性構成単位を含む場合、下記式(III)で表される構成単位を有することが、反応性が向上し、耐久性が向上する点から、好ましい。
【0065】
【化4】
(上記式(III)中、Z
aは下記式(a-1)~(a-6)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体単位を表し、R
16は炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数1~11の直鎖アルキレン基であり、Y
aは熱架橋性基を表す。)
【0066】
【化5】
(上記式(a-1)~(a-6)中、R
11は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R
17は水素原子またはメチル基を表し、R
18は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R
19は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、L
aは、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、又は-OCO-を表し、L
aが、単結合の場合、R
16はスチレン骨格に直接結合される。)
【0067】
R16は炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数1~11の直鎖アルキレン基であるが、-(CH2)n”-または-(C2H4O)m”-C2H4-である(n”は1~11、m”は1~4)ことが好ましく、n”は2~11、m”は1~4であることが好ましく、n”は4~11、m”は2~4であることが好ましい。n”およびm”が小さすぎると、熱架橋性構成単位において熱架橋性基と共重合体の主骨格との距離が短くなるため、熱架橋性基に熱架橋剤が結合しにくくなり、熱架橋性構成単位と熱架橋剤との反応性が低下するおそれがある。一方、n”およびm”が大きすぎると、熱架橋性構成単位において連結基の鎖長が長くなるため、末端の熱架橋性基が表面に出にくく、熱架橋性基に熱架橋剤が結合しにくくなり、熱架橋性構成単位と熱架橋剤との反応性が低下するおそれがある。
Yaの熱架橋性基は、前述の熱架橋性基と同様であって良く、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、トリアルコキシシリル基、ブロックイソシアネート基、およびメチル基に置換されるアルコキシ基からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。自己架橋基であるヒドロキシメチル基及びアルコキシメチル基は、メチル基(R16におけるメチレン基)に、ヒドロキシ基やアルコキシ基が置換することにより、ヒドロキシメチル基やアルコキシメチル基となるものであってよい。
【0068】
また、本開示の実施形態において前記非液晶性構成単位が、非液晶性且つ熱架橋性構成単位を含む場合、当該非液晶性且つ熱架橋性構成単位は、後述する第二の本開示の側鎖型液晶ポリマー(A)で説明している、後述の式(III)で表される構成単位と同様のものを用いることもできる。
【0069】
共重合体が有する非液晶性構成単位は、1種であってもよく、2種以上であっても良い。
一般式(II)で表される構成単位のうち、非液晶性且つ非架橋性構成単位としては、以下の化学式(II-1)~(II-10)が挙げられる。
また、一般式(II)で表される構成単位のうち、非液晶性且つ熱架橋性構成単位としては、以下の化学式(II-1)~(II-10)の炭化水素基の水素の1つが前記熱架橋性基に置換した構造が挙げられる。更に、非液晶性且つ熱架橋性構成単位としては、以下の化学式(III-1)~(III-11)が挙げられる。
【0070】
【0071】
【0072】
また、国際公開2022/158555号公報の段落0294に記載されている化学式(III-1)~(III-12)で表される構成単位を用いることもできる。
【0073】
共重合体の合成には、上記非液晶性構成単位を誘導する、(メタ)アクリル酸エステル誘導体等の単量体を用いることができる。上記非液晶性構成単位を誘導する(メタ)アクリル酸エステル誘導体等の単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
共重合体における上記非液晶性構成単位の含有割合としては、液晶性構成単位の垂直配向性を向上し、十分な液晶配向性を有する点から、共重合体全体に含まれる構成単位の量を100モル%としたとき、10モル%~60モル%の範囲内で設定することが好ましく、15モル%~50モル%の範囲内で設定することがより好ましく、更に、15モル%~45モル%の範囲内で設定することが好ましく、特に、20モル%~40モル%の範囲内であることが好ましい。
【0075】
共重合体における上記非液晶性構成単位として、非液晶性且つ非架橋性構成単位と、非液晶性且つ熱架橋性構成単位の両方を含む場合、非液晶性且つ熱架橋性構成単位の含有割合としては共重合体全体に含まれる非液晶性構成単位の合計量を100モル%としたとき、10モル%~70モル%の範囲内で設定することが好ましく、30モル%~50モル%の範囲内で設定することがより好ましい。
なお、共重合体における各構成単位の含有割合は、1H-NMR測定による積分値から算出することができる。
【0076】
(3)その他の構成単位
本開示に用いられる側鎖型液晶ポリマー(A)は、更に、その他の構成単位を有していてもよい。
その他の構成単位としては、例えば、アルキレン基を側鎖に含まず前記熱架橋性基を有する熱架橋性構成単位や、後述する共重合体(B)が有する光配向性基を側鎖に含む光配向性構成単位が挙げられる。
アルキレン基を側鎖に含まず前記熱架橋性基を有する熱架橋性構成単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸、4-ヒドロキシスチレン、4-カルボキシスチレン等が挙げられる。
本開示に用いられる側鎖型液晶ポリマー(A)は、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性且つ熱架橋性構成単位、及び、アルキレン基を側鎖に含まず前記熱架橋性基を有する熱架橋性構成単位からなる群から選択される少なくとも1種の、熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位を有することが、位相差層の耐久信頼性を向上する点から好ましい。
光配向性構成単位としては、後述する共重合体(B)が有する光配向性基を側鎖に含む光配向性構成単位と同様であって良い。
【0077】
共重合体における上記その他の構成単位の含有割合としては、液晶性構成単位の垂直配向性を向上し、十分な液晶配向性を有する点から、共重合体全体に含まれる構成単位の量を100モル%としたとき、30モル%以下の範囲内で設定することが好ましく、20モル%以下の範囲内で設定することがより好ましい。
【0078】
(4)側鎖型液晶ポリマー(A)の共重合体
本開示の実施形態において、側鎖型液晶ポリマー(A)は、液晶性構成単位からなるブロック部と、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位からなるブロック部とを有するブロック共重合体であってもよく、液晶性構成単位とアルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位とが不規則に並ぶランダム共重合体であってもよい。本実施形態においては、側鎖型液晶ポリマーの垂直配向性や位相差値の面内均一性を向上する点から、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0079】
また、共重合体である側鎖型液晶ポリマーの質量平均分子量Mwは特に限定されないが、10000~100000の範囲内であることが好ましく、30000~90000の範囲内であることがより好ましく、40000~80000の範囲内であることがさらに好ましい。上記範囲内であることにより、側鎖型液晶ポリマーの垂直配向性や、ポジティブC型位相差層の液晶配向性能に優れる。
【0080】
なお、上記質量平均分子量Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定されたポリスチレン換算値とする。
【0081】
側鎖型液晶ポリマー(A)の共重合体の合成方法としては、液晶性構成単位を誘導するモノマーとアルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位を誘導するモノマーとを従来公知の製造方法で共重合する方法が挙げられる。
側鎖型液晶ポリマー(A)は、共重合体を合成した際の溶液形態で、あるいは、粉体形態で、あるいは精製した粉末を後述する溶剤に再溶解した溶液形態で用いてもよい。
【0082】
上記側鎖型液晶ポリマー(A)は1種単独を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本実施形態において、垂直配向性を発揮する点から、上記側鎖型液晶ポリマーの含有割合は、液晶組成物の固形分100質量部に対して20質量部~80質量部であることが好ましく、25質量部~70質量部であることがより好ましく、30質量部~60質量部であることがより更に好ましい。
なお、本開示において固形分とは溶剤を除く全ての成分をいい、例えば、後述する重合性液晶化合物が液状であっても固形分に含まれるものとする。
【0083】
1-2.光配向性成分
ポジティブC型位相差層において用いられる光配向性成分としては、光配向性基を含有する化合物、又は、光配向性基を側鎖に含む光配向性構成単位を有する重合体が挙げられる。
光配向性成分としては、光配向性基を側鎖に含む光配向性構成単位と熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位とを有する共重合体であってもよく、前記共重合体とは異なる光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物であってもよい。
【0084】
光配向性成分と熱架橋剤を含む熱硬化性液晶組成物の硬化物であるポジティブC型位相差層において用いられる光配向性成分としては、良好な垂直配向性と液晶配向能を発現する点から、光配向性基を側鎖に含む光配向性構成単位と熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位とを有する共重合体を用いることが好ましい。
中でも、光配向性基を特定の構造により側鎖に含む光配向性構成単位と、熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位とを有する共重合体(B)(光配向性共重合体)を用いることが好ましい。
【0085】
(1)光配向性構成単位
本開示の光配向性構成単位は、下記式(1)で表される構成単位を有するものであっってよい。
【0086】
【化8】
(上記式(1)中、Z
1は下記式(1-1)~(1-6)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体単位を表し、Xは光配向性基を表し、L
11は、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、-OCO-、又は、これらとアリーレン基との組み合わせを表す。)
【0087】
【化9】
(上記式(1-1)~(1-6)中、R
21は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R
22は水素原子またはメチル基を表し、R
23は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R
24は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。
)
【0088】
光配向性構成単位を構成する単量体単位としては、前記式(1-1)~(1-6)からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。なお、Z1が式(1-2)からなる群から選択される少なくとも1種の場合、-L11-Xはオルト位、メタ位、パラ位のいずれに結合していてもよいが、-L11-Xがパラ位に結合していることが、光配向性基間の距離が小さくなりやすく、光配向性が得られやすい点から好ましい。
光配向性構成単位を構成する単量体単位としては、中でも、原料調達の容易さの点から、式(1-1)及び(1-2)からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。更に、式(1-2)からなる群から選択される少なくとも1種であると、共重合体(B)等の光配向性成分がより非液晶性となりやすく、前記側鎖型液晶ポリマー(A)等の液晶性成分と相分離しやすくなり、側鎖型液晶ポリマー(A)等の液晶性成分の垂直配向性が向上し、且つ、共重合体(B)等の光配向性成分の光配向性構成単位の剛直性が増すため、光配向性基間の距離が小さくなりやすく、優れた光配向性が得られやすい点から、より好ましい。
【0089】
また、共重合体中にスチレン骨格を有し、π電子系を多く含むと、π電子系の相互作用により、当該共重合体を用いて形成されたポジティブC型位相差層は、この配向能が付与されたポジティブC型位相差層上に直接積層された液晶性材料との密着性も高くなると考えられる。
【0090】
L11は、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、-OCO-、又は、これらとアリーレン基との組み合わせを表し、前記単量体単位と、光配向性基Xとを連結する。本開示に用いられる共重合体(B)等の光配向性成分は、光配向性構成単位が、光配向性基と単量体単位との間に直鎖アルキレン基を有しない場合、前述のように、非液晶性となりやすく、前記側鎖型液晶ポリマー(A)等の液晶性成分との相溶性が低下して、前記側鎖型液晶ポリマー(A)等の液晶性成分と相分離しやすくなり、且つ、剛直性が増し、光配向性基間の距離が小さくなりやすく、優れた光配向性が得られると推定される。
【0091】
上記L11が単結合の場合、光配向性基Xは単量体単位Z1に直接結合される。2価の連結基としては、具体的には、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、-OCO-、-C6H4-、-C6H4O-、-OCOC6H4O-、-COOC6H4O-、-OC6H4O-等が挙げられ、ここで-C6H4-はフェニレン基である。
【0092】
一方、光配向性基は、光照射により光反応を生じることで異方性を発現する官能基であり、光二量化反応または光異性化反応を生じる官能基であることが好ましい。
【0093】
光二量化反応を生じる光配向性基としては、例えばシンナモイル基、カルコン基、クマリン基、アントラセン基、キノリン基、アゾベンゼン基、スチルベン基等が挙げられる。
これらの官能基におけるベンゼン環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、光二量化反応を妨げないものであればよく、例えばアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基等が挙げられる。
【0094】
光異性化反応を生じる光配向性基としては、シストランス異性化反応を生じるものであることが好ましく、例えばシンナモイル基、カルコン基、アゾベンゼン基、スチルベン基等が挙げられる。これらの官能基におけるベンゼン環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、光異性化反応を妨げないものであればよく、例えばアルコキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基等が挙げられる。
【0095】
中でも、光配向性基は、シンナモイル基であることが好ましい。具体的に、シンナモイル基としては、下記式(x-1)及び(x-2)で表される基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0096】
【0097】
上記式(x-1)中、R31は水素原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアリール基または炭素数1~18のシクロアルキル基を表す。ただし、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよく、置換基を有してもよい。R32~R35はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアリール基または炭素数1~18のシクロアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基またはシアノ基を表す。ただし、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよく、置換基を有してもよい。R36およびR37はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアリール基または炭素数1~18のアルコキシ基を表す。
また、上記式(x-2)中、R41~R45はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアリール基または炭素数1~18のシクロアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基またはシアノ基を表す。ただし、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよく、置換基を有してもよい。R46およびR47はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアリール基または炭素数1~18のアルコキシ基を表す。
【0098】
なお、光配向性基がシンナモイル基の場合であって、上記式(x-1)で表される基の場合、単量体単位に含まれるスチレン骨格(式(1-2))のベンゼン環がシンナモイル基のベンゼン環となっていてもよい。
【0099】
また、上記式(x-1)で表されるシンナモイル基は、下記式(x-3)で表される基であることがより好ましい。
【0100】
【0101】
上記式(x-3)中、R32~R37は上記式(x-1)と同様である。R38は水素原子、炭素数1~18のアルコキシ基、シアノ基、炭素数1~18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基またはシクロヘキシル基を表す。ただし、アルキル基、フェニル基、ビフェニル基およびシクロヘキシル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよい。nは1~5を表し、R38はオルト位、メタ位、パラ位のいずれに結合していてもよい。nが2~5の場合、R38は互いに同一でもよく異なってもよい。中でも、nが1であり、R38がパラ位に結合していることが好ましい。
【0102】
共重合体が有する光配向性構成単位は、1種であってもよく2種以上であってもよい。
共重合体の合成には、上記光配向性構成単位を誘導する、光配向性基を有する単量体を用いることができる。光配向性基を有する単量体は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0103】
共重合体における光配向性構成単位の含有割合としては、共重合体全体に含まれる構成単位の量を100モル%としたとき、10モル%~90モル%の範囲内で設定することができ、好ましくは20モル%~80モル%の範囲内である。光配向性構成単位の含有割合が少ないと、感度が低下し、良好な液晶配向能を付与するのが困難になる場合がある。一方で、光配向性構成単位の含有割合が多いと、相対的に熱架橋性構成単位の含有割合が少なくなり、十分な熱硬化性が得られず、良好な液晶配向能を維持するのが困難になる場合がある。
【0104】
(2)熱架橋性構成単位
本開示における熱架橋性構成単位は、加熱により熱架橋剤と結合する部位である。
熱架橋性構成単位は、熱架橋性基を有する構成単位であればよい。熱架橋性基としては、例えば30℃から250℃での加熱により架橋する基であればよく、例えばヒドロキシ基、カルボキシ基、フェノール性ヒドロキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。中でも、反応性の観点から、脂肪族ヒドロキシ基が好ましく、第1級ヒドロキシ基がより好ましい。なお、第1級ヒドロキシ基とは、ヒドロキシ基が結合する炭素原子が第1級炭素原子であるヒドロキシ基をいう。
また、熱架橋性基としては、同じ架橋基同士で架橋可能な自己架橋基であってもよい。
自己架橋基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、トリアルコキシシリル基、ブロックイソシアネート基等が挙げられる。
熱架橋性構成単位が自己架橋基を有する場合、熱架橋性構成単位が熱架橋剤を兼ねることができ、光配向性能及び耐溶剤性が向上しやすい点から好ましい。熱架橋性構成単位が自己架橋基を有する場合、分子内の熱架橋性構成単位と反応しやすいことが考えられる。
熱架橋性構成単位としては、中でも、ヒドロキシ基、カルボキシ基、及びメルカプト基からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが、光配向性能及び耐溶剤性の点から好ましい。
熱架橋性構成単位としては、中でも、ヒドロキシ基、カルボキシ基、及びメルカプト基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基を有する構成単位と、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、トリアルコキシシリル基、及びブロックイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の自己架橋基を有する構成単位とを含有することが、光配向性能及び耐溶剤性をより向上しやすい点から好ましい。
なお、自己架橋基のアルコキシメチル基は、アルコキシ基の炭素数が1~6であるものが好ましく、具体的には、メトキシメチル基、エトキシメチル基、各種プロポキシメチル基、各種ブトキシメチル基、各種ペントキシメチル基等が挙げられる。アルコキシメチル基としては、中でも、アルコキシ基の炭素数が1~4であるものがより好ましく、炭素数が1~2であるものが更に好ましく、メトキシメチル基、エトキシメチル基が、架橋性が良好になる点から好ましい。
【0105】
熱架橋性構成単位を構成する単量体単位としては、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド、ビニルエーテル、ビニルエステル等が挙げられる。
熱架橋性構成単位としては、熱架橋性基がカルボキシ基の場合、アクリル酸、又はメタクリル酸由来の構成単位であってもよく、熱架橋性基がヒドロキシ基の場合、ビニルアルコール由来の構成単位であってもよい。
【0106】
熱架橋性構成単位としては、下記式(2)で表される構成単位を例示することができる。
【0107】
【化12】
(上記式(2)中、Z
2は下記式(2-1)~(2-6)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体単位を表し、R
50は炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数1~11の直鎖アルキレン基であり、Yは熱架橋性基を表す。)
【0108】
【化13】
(上記式(2-1)~(2-6)中、R
51は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R
52は水素原子またはメチル基を表し、R
53は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R
54は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、L
12は、単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、又は-OCO-を表し、L
12が、単結合の場合、R
50はスチレン骨格に直接結合される。)
【0109】
なお、Z2が式(2-2)からなる群から選択される少なくとも1種の場合、-L12-Yはオルト位、メタ位、パラ位のいずれに結合していてもよいが、-L12-Yがパラ位に結合していることが、熱架橋の反応性が優れる点から好ましい。
【0110】
熱架橋性構成単位を構成する単量体単位としては、中でも、原料調達の容易さの点から、式(2-1)及び(2-2)からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。更に、式(2-2)からなる群から選択される少なくとも1種であると、共重合体(B)がより非液晶性となりやすく、前記側鎖型液晶ポリマー(A)と相分離しやすくなり、側鎖型液晶ポリマー(A)の垂直配向性が向上する点から、より好ましい。
【0111】
上記式(2)中、Yの熱架橋性基としては、前記と同様であって良く、自己架橋性基であってもよい。
上記式(2)中、Yの熱架橋性基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、トリアルコキシシリル基、ブロックイソシアネート基、およびメチル基に置換されるアルコキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基であってよく、ヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミノ基、およびアミド基からなる群から選択される少なくとも1種の熱架橋性基であってよい。自己架橋基であるヒドロキシメチル基及びアルコキシメチル基は、メチル基(R50におけるメチレン基)に、ヒドロキシ基やアルコキシ基が置換することにより、ヒドロキシメチル基やアルコキシメチル基となるものであってよい。
Yの熱架橋性基には、中でも、反応性の観点から、脂肪族ヒドロキシ基を含むことが好ましく、第1級ヒドロキシ基を含むことがより好ましい。
【0112】
上記式(2)中、L12は単結合、-O-、-S-、-COO-、-COS-、-CO-、又は-OCO-を表す。なお、L12が単結合の場合、熱架橋性基Yは単量体単位Z2に直接結合される。
R50は炭素鎖中に-O-を有していてもよい炭素数1~11の直鎖アルキレン基であるが、-(CH2)j-または-(C2H4O)k-C2H4-である(jは1~11、kは1~4)ことが好ましく、jは2~11、kは1~4であることが好ましく、jは4~11、kは2~4であることが好ましい。jおよびkが小さすぎると、熱架橋性構成単位において熱架橋性基と共重合体の主骨格との距離が短くなるため、熱架橋性基に熱架橋剤が結合しにくくなり、熱架橋性構成単位と熱架橋剤との反応性が低下するおそれがある。一方、jおよびkが大きすぎると、熱架橋性構成単位において連結基の鎖長が長くなるため、末端の熱架橋性基が表面に出にくく、熱架橋性基に熱架橋剤が結合しにくくなり、熱架橋性構成単位と熱架橋剤との反応性が低下するおそれがある。
【0113】
共重合体が有する熱架橋性構成単位は、1種であってもよく2種以上であってもよい。
共重合体の合成には、上記熱架橋性構成単位を誘導する熱架橋性基を有する単量体を用いることができる。熱架橋性基を有する単量体は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0114】
熱架橋性基を有する単量体としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
アクリル酸エステル化合物およびメタクリル酸エステル化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルアクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、テトラエチレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、トリプロピレングリコールモノアクリレート、テトラプロピレングリコールモノアクリレート等のヒドロキシ基とアクリル基またはメタクリル基とを有するモノマーが挙げられる。
スチレン化合物としては、例えば、4-ビニル安息香酸とジオールとのエステル化物、4-ビニル安息香酸とジエチレングリコールとのエステル化物、ヒドロキシスチレンとジオールとのエーテル化物、ヒドロキシスチレンとジエチレングリコールとのエーテル化物等のヒドロキシ基とスチレン基とを有するモノマーが挙げられる。
その他にも、熱架橋性構成単位を形成するモノマーとしては、具体的には例えば、特許5626493号公報 段落0075~0079に記載されているモノマーを用いることができる。また、前記例示のヒドロキシ基が、カルボキシ基やグリシジル基に置換されたモノマーであってもよい。
【0115】
熱架橋性基を有する単量体のうち、自己架橋基を有する単量体としては、例えば、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、N-ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルメタクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルメタクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミドおよびN-ブトキシメチルメタクリルアミド等のヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基で置換されたアクリルアミド化合物又はメタクリルアミド化合物;3-トリメトキシシリルプロピルアクリレート、3-トリエトキシシリルプロピルアクリレート、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレート等のトリアルコキシシリル基を有するモノマー;2-(0-(1’-メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ)エチルメタクリレート、2-(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノエチルメタクリレート等のブロックイソシアネート基を有するモノマー等が挙げられる。
【0116】
共重合体における熱架橋性構成単位の含有割合としては、共重合体全体に含まれる構成単位の量を100モル%としたとき、5モル%~90モル%の範囲内で設定することができ、好ましくは20モル%~80モル%の範囲内である。熱架橋性構成単位の含有割合が少ないと、十分な熱硬化性が得られず、良好な液晶配向能を維持するのが困難になる場合がある。また、熱架橋性構成単位の含有割合が多いと、相対的に光配向性構成単位の含有割合が少なくなり、感度が低下し、良好な液晶配向能を付与するのが困難になる場合がある。
【0117】
(3)他の構成単位
本開示において、共重合体は、光配向性構成単位および熱架橋性構成単位の他に、光配向性基および熱架橋性基のいずれも有しない構成単位を有していてもよい。共重合体に他の構成単位が含まれることにより、例えば溶剤溶解性、耐熱性、反応性等を高めることができる。
【0118】
光配向性基および熱架橋性基を有しない構成単位を構成する単量体単位としては、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、アクリルアミド、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン、ビニル等が挙げられる。中でも、上記熱架橋性構成単位と同様に、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレンが好ましい。
【0119】
このような光配向性基および熱架橋性基を有しない構成単位を形成するモノマーとしては、例えばアクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物、ビニル化合物等が挙げられる。
具体的には例えば、国際公開第2010/150748号の段落0036~0040に記載されているモノマーのうち、前記光配向性基および熱架橋性基のいずれも有しないモノマーを用いることができる。
【0120】
また、その他の構成単位として、例えば、フッ素化アルキル基を有するモノマー由来の構成単位を含んでもよい。この場合には、共重合体(B)が塗膜表面に局在化しやすくなり、光配向性基を塗膜表面に配向させやすい。共重合体(B)を塗膜表面に局在化しやすくする点から、フッ素化アルキル基を有するモノマーのフッ素化アルキル基は、フッ素原子が直接結合した炭素原子の数が2~8のフッ素化アルキル基であってよい。
【0121】
共重合体における光配向性基および熱架橋性基を有しない構成単位は、1種であってもよく2種以上であってもよい。
【0122】
共重合体における上記光配向性基および熱架橋性基を有しない構成単位の含有割合としては、共重合体全体に含まれる構成単位の量を100モル%としたとき、0モル%~50モル%の範囲内であることが好ましく、0モル%~30モル%の範囲内であることがより好ましい。上記構成単位の含有割合が多いと、相対的に光配向性構成単位および熱架橋性構成単位の含有割合が少なくなり、感度が低下し、良好な液晶配向能を付与するのが困難になり、また十分な熱硬化性が得られず、良好な液晶配向能を維持するのが困難になる場合がある。
【0123】
(4)共重合体(B)
共重合体(B)の質量平均分子量は、特に限定されるものではなく、例えば3,000~200,000程度とすることができ、好ましくは4,000~100,000の範囲内である。質量平均分子量が大きすぎると、溶剤に対する溶解性が低くなったり粘度が高くなったりして取り扱い性が低下し、均一な膜を形成しにくい場合がある。また、質量平均分子量が小さすぎると、熱硬化時に硬化不足になり溶剤耐性や耐熱性が低下する場合がある。
なお、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定するポリスチレン換算値とする。
【0124】
共重合体(B)の合成方法としては、光配向性基を有する単量体と熱架橋性基を有する単量体とを従来公知の製造方法で共重合する方法が挙げられる。
共重合体(B)は、共重合体を合成した際の溶液形態で、あるいは、粉体形態で、あるいは精製した粉末を後述する溶剤に再溶解した溶液形態で用いてもよい。
【0125】
上記共重合体(B)は1種単独を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本実施形態において、直接積層する液晶性材料に対して配向能を発揮する点から、上記共重合体(B)の含有割合は、ポジティブC型位相差用組成物の固形分100質量部に対して1質量部~50質量部であることが好ましく、5質量部~40質量部であることがより好ましく10質量部~30質量部であることがより更に好ましい。
【0126】
1-3.熱架橋剤
ポジティブC型位相差層が、垂直配向する液晶性成分と、光配向性成分と熱架橋剤を含む熱硬化性液晶組成物の硬化物である場合、ポジティブC型位相差層の形成に熱架橋剤が用いられる。
熱架橋剤は、前記熱架橋性構成単位の熱架橋性基と結合する熱架橋剤であってよい。熱架橋剤は、少なくとも前記共重合体の前記熱架橋性基と結合することにより、耐熱性および耐溶剤性を高めることができる。また、当該熱架橋剤は、任意に含まれていてもよい、熱架橋性基を側鎖に含む側鎖型液晶ポリマー(A)や、熱架橋性基を有する化合物とも結合して、硬化膜の耐久性を向上したり、それぞれの機能向上に寄与し得る。
【0127】
熱架橋剤としては、前記熱架橋性構成単位の熱架橋性基と結合する化合物を選択して用いる。
このような熱架橋剤としては、前記熱架橋性基と反応可能な架橋性基を有する化合物が挙げられる。熱架橋剤が有する架橋性基は例えば、エポキシ基、メチロール基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、カルボキシル基、保護されたカルボキシル基、マレイミド基等が挙げられる。熱架橋剤が有する架橋性基は2個以上であることが好ましく、2~6個であることが好ましい。熱架橋剤としては、例えばエポキシ化合物、メチロール化合物、イソシアナート化合物等が挙げられ、中でも、熱硬化性液晶組成物(塗布液)の安定性および温和な硬化条件が使用可能な点から、メチロール化合物が好ましい。
メチロール化合物の具体例としては、アルコキシメチル化グリコールウリル、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン及びアルコキシメチル化メラミン等の化合物が挙げられる。
その他の熱架橋剤の具体例としては、例えば国際公開2022/158555号の段落0144~0148に記載されている熱架橋剤が挙げられる。
【0128】
これらの熱架橋剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本開示において、硬化膜の耐久性を向上する点から、上記熱架橋剤の含有量は、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の固形分100質量部に対して0.1質量部~30質量部であってよい。中でも、本開示の浸透した領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向しやすくなる点から、0.5質量部~25質量部であることがより好ましく、1質量部~20質量部であることがより更に好ましい。
また、本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物における熱架橋剤の含有割合は、上記側鎖型液晶ポリマー(A)と共重合体(B)の合計100質量部に対して1質量部~30質量部であってよいが、本開示の浸透した領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向しやすくなる点から、2質量部~25質量部であることがより好ましく、3質量部~25質量部であることがより更に好ましく、上限値は10質量未満であってもよい。
熱架橋剤の含有量が少なすぎる場合には、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物から形成される硬化膜の耐熱性および溶剤耐性が低下し、垂直配向性や液晶配向能が低下するおそれがある。また、含有量が多すぎる場合には、垂直配向性や液晶配向能および保存安定性が低下することがある。本開示の浸透した領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向しやすくなる点から、硬化膜の耐熱性を保持可能な範囲で熱架橋剤の含有量を低減することが好ましい。
【0129】
ポジティブC型位相差層に含まれる、液晶性成分、光配向性成分及び熱架橋剤由来の構造は、NMR、IR、GC-MS、XPS、TOF-SIMSおよびこれらの組み合わせた方法などを適用して分析することができる。例えば、ポジティブC型位相差層から材料を採取し、核磁気共鳴分光法(NMR)により、液晶性成分、光配向性成分および熱架橋剤成分の化学構造を分析できる。また、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)により、例えば光配向性基由来のフラグメントを検出することができる。さらに、X線光電子分光法(XPS)や赤外分光法(IR)、ラマン分光法により、熱架橋剤や光配向成分由来の結合および官能基のピークを確認できる。これらの分析結果の複合判断によってポジティブC型位相差層に含まれる成分の構造を分析することができる。
【0130】
1-4.酸または酸発生剤
ポジティブC型位相差層が、前記熱硬化性液晶組成物の硬化物である場合、前記熱硬化性液晶組成物は、酸または酸発生剤を含有してもよい。酸または酸発生剤により、前記熱硬化性液晶組成物の熱硬化反応を促進させることができる。
【0131】
酸または酸発生剤としては、スルホン酸基含有化合物、塩酸またはその塩、および塗膜の乾燥および加熱硬化時に熱分解して酸を発生する化合物、すなわち温度50℃から250℃で熱分解して酸を発生する化合物であれば特に限定されるものではない。具体的には、国際公開第2010/150748号の段落0054に記載されているものを用いることができる。
【0132】
本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物における酸または酸発生剤の含有量は、光配向性を有する熱硬化性液晶組成物の固形分100質量部に対して0.01質量部~20質量部であってよい。中でも、本開示の浸透した領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向しやすくなる点から、0.05質量部~10質量部であることがより好ましく、0.05質量部~5質量部であることがより更に好ましい。
また、本開示の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物における酸または酸発生剤の含有割合は、上記側鎖型液晶ポリマー(A)と共重合体(B)の合計100質量部に対して0.05質量部~20質量部であってよい。中でも、本開示の浸透した領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向しやすくなる点から、0.1質量部~15質量部であることがより好ましく、0.1質量部~10質量部であることがより更に好ましく、上限値は1質量部未満であってもよい。
【0133】
1-5.その他の成分
前記ポジティブC型位相差層に用いられるポジティブC型位相差層用組成物は、その他の成分を含んでも良い。その他の成分は、本開示の効果を損なわない限り適宜選択して用いることができる。その他の成分としては、具体的には例えば、その他の重合性液晶化合物、塗膜の硬度や耐久性を向上させるための1分子中に重合性基を2つ以上有する重合性化合物、光重合開始剤、重合性基と熱架橋性基とを有する化合物、その他の光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物、増感剤、レベリング剤、重合禁止剤、酸化防止剤、光安定化剤等を含有してもよい。その他の成分は、例えば国際公開2022/158555号の段落0155~0173に記載されているその他の成分と同様であって良い。
【0134】
また、前記ポジティブC型位相差層の形成に用いられる液晶性成分及び光配向性成分は、前記具体例に限定されることなく、従来公知の成分から適宜選択して用いることができる。
例えば、国際公開2022/158555号の段落0244~0350に記載されている第二の光配向性を有する熱硬化性液晶組成物を適宜選択して用いてもよい。
また、ポジティブC型位相差層の垂直配向を促進するため、国際公開2013/100115号の段落0100~0185に記載されている垂直配向促進剤や、特許第5717086号に記載の液晶デンドリマー等を用いてもよい。
【0135】
1-6.ポジティブC型位相差層の形成
本開示のポジティブC型位相差層は、例えば、前述のようなポジティブC型位相差層を構成する成分を溶剤に溶解又は希釈してなるポジティブC型位相差層用組成物(塗布液)を調製し、当該組成物を支持体上に塗布、乾燥することにより形成することができる。
【0136】
溶剤としては、例えば国際公開2022/158555号の段落0153~0154に記載されている溶剤と同様であって良い。
ここでの支持体上としては、後述する基材上であっても良いし、後述する配向膜を備えた基材の配向膜上であってもよい。
塗布方法は、所望の厚みで精度良く成膜できる方法であればよく、適宜選択すればよい。
【0137】
ポジティブC型位相差層用組成物を支持体上に塗布して、溶剤を除去する過程において、液晶性成分が垂直配向可能な温度に調整し、加熱する。具体的には、液晶相転移温度以上であって等方性転移温度以下(好ましくは等方性転移温度未満)の温度に加熱することによって垂直配向が誘起される。加熱処理により、液晶性成分の液晶性部分を少なくとも垂直配向させて乾燥することができ、前記配向状態を維持した状態で固定化することができる。
垂直配向可能な温度は、液晶組成物中の各物質に応じて異なるため、適宜調整する必要がある。例えば、40℃~200℃の範囲内で行ってよく、更に40℃~150℃の範囲内で行ってよい。
【0138】
ポジティブC型位相差層用組成物が熱硬化性を有する場合、熱硬化が進行するほど垂直配向性が低下することから、浸透した領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分を垂直配向させやすくし、ポジティブC型位相差層の面外位相差を向上する点から、前述のように組成物中の熱架橋剤量や酸触媒量を低減させることにより熱硬化を垂直配向性が低下しない程度に抑制することが好ましい。
さらに、ポジティブA型位相差層を形成時に浸透した領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分を垂直配向させやすくする点から、当該ポジティブC型位相差層形成時の乾燥工程において2段階以上の温度制御を行うことにより、垂直配向性の向上と、硬化性を両立させることが好ましい。例えば、1段階目の加熱により硬化を抑えつつ先に液晶の垂直配向を促進し、2段階目の加熱により必要な硬化度まで硬化反応を促進し、配向と硬化を両立させることができる。ここで必要な硬化度は例えば、良好な液晶配向能が維持でき、またポジティブA型位相差層が過剰に浸透することによるポジティブC型位相差層の垂直配向阻害を抑制できる程度を目安にすることができる。
また加熱温度としては、具体的には例えば、1段階目の加熱温度を、60~100℃とし、2段階目の加熱温度を110~150℃とすること、さらに、1段階目の加熱温度を、80~100℃とし、2段階目の加熱温度を120~140℃とすることが挙げられる。
【0139】
また、加熱時間は、適宜選択されれば良いが、例えば、10秒以上60分以内、好ましくは20秒以上30分以内の範囲内で選択される。
例えば、1段階目の加熱時間を、20秒~10分以内とし、2段階目の加熱時間を20秒~10分以内とすること、さらに、1段階目の加熱時間を、30秒~5分以内とし、2段階目の加熱時間を30秒~5分以内とすることが挙げられる。
加熱手段としては、例えばホットプレートやオーブン等、公知の加熱、乾燥手段を適宜選択して用いることができる。
【0140】
本開示のポジティブC型位相差層は、このようにして得られた位相差を有する硬化膜に、さらに偏光紫外線を照射することによって、前記硬化膜に液晶配向能を付与することが好ましい。
得られた硬化膜には、偏光紫外線を照射することにより、例えば共重合体(B)等の光配向成分の光配向性基が光反応を生じさせて異方性を発現させることができる。偏光紫外線の波長は通常150nm~450nmの範囲内である。また、偏光紫外線の照射方向は、基板面に対して垂直または斜め方向とすることができる。
このようにして、ポジティブA型位相差層の液晶性成分を配向させる液晶配向能が付与されたポジティブC型位相差層を形成することができる。
【0141】
1-7.ポジティブC型位相差層の構成
前記ポジティブC型位相差層は、液晶性成分の液晶性部分が垂直配向し、且つ、表面に存在する光配向性成分の光配向性基が光二量化構造または光異性化構造となっている状態で、硬化している膜であってよい。
前記ポジティブC型位相差層は、熱架橋剤を含む場合、1層に、垂直配向された前記側鎖型液晶ポリマー等の液晶性成分と、光配向性基の光二量化構造または光異性化構造および熱架橋性基と熱架橋剤とが結合してなる架橋構造を含有する構造であって良い。また、前記ポジティブC型位相差層は、1層に、垂直配向された前記側鎖型液晶ポリマーと、光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基と熱架橋剤とが結合してなる架橋構造を有する共重合体とを含有する構造であって良い。
【0142】
前記ポジティブC型位相差層に含まれる、光配向性基の光二量化構造は、例えば上記式(1)で表される光配向性構成単位の光配向性基同士が光二量化反応により架橋した構造であり、シクロブタン骨格を有する構造である。
光二量化反応は、下記に示すような反応であり、光配向性基に含まれるオレフィン構造が光反応によりシクロブタン骨格を形成する反応である。光配向性基の種類に応じてXa~XdおよびXa’~Xd’は異なる。
【0143】
【0144】
光二量化構造は、シンナモイル基の光二量化構造であることが好ましい。具体的には、前記シンナモイル基同士が光二量化反応により架橋した構造が好ましい。中でも、下記式(x-4)、(x-5)で表されるような光二量化構造を含むことが好ましい。なお、下記式中、各符号は上記式(x-1)、(x-2)、及び(x-3)と同様である。
【0145】
【0146】
ポジティブC型位相差層が、上記式(x-4)、(x-5)で表されるような光二量化構造を有する場合、芳香環が多く配置され、π電子を多く含むようになる。そのため、ポジティブC型位相差層上に形成されるポジティブA型位相差層と親和性が高くなり、液晶配向能が向上し、液晶層との密着性がさらに高くなると考えられる。
【0147】
また、光異性化構造は、光配向性構成単位が有する光配向性基が光異性化反応により異性化した構造である。例えばシストランス異性化反応の場合、光異性化構造は、シス体がトランス体に変化した構造およびトランス体がシス体に変化した構造のいずれであってもよい。
例えば、光配向性基がシンナモイル基の場合、光異性化反応は下記に示すような反応であり、光配向性基に含まれるオレフィン構造が光反応によりシス体またはトランス体を形成する反応である。光配向性基の種類に応じてXa~Xdは異なる。
【0148】
【0149】
光異性化構造は、シンナモイル基の光異性化構造であることが好ましい。具体的には、前記シンナモイル基が光異性化反応により異性化した構造が好ましい。この場合、光異性化構造は、シス体がトランス体に変化した構造およびトランス体がシス体に変化した構造のいずれであってもよい。中でも、配向層は、下記式(x-6)及び(x-7)で示されるような、上記式(x-1)及び(x-2)で表されるシンナモイル基の光異性化構造を有することが好ましい。
【0150】
【0151】
ポジティブC型位相差層形成時に熱架橋剤が用いられる場合、熱架橋性基は熱架橋剤と結合する。したがって、架橋構造は、熱架橋性基と熱架橋剤とが加熱により架橋した構造となり、三次元的な網目構造をいう。架橋構造としては、例えば、前記共重合体の熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基と熱架橋剤とが結合してなる架橋構造や、その他の成分が有する熱架橋性基と熱架橋剤とが結合してなる架橋構造とが挙げられる。例えば前記側鎖型液晶ポリマーの非液晶性且つ熱架橋性構成単位が熱架橋基を有する場合には、当該架橋構造として、前記側鎖型液晶ポリマーの熱架橋性基と熱架橋剤とが結合してなる架橋構造を含んでいても良い。なお、当該架橋構造には、光配向性基同士が光二量化反応により架橋した構造、ならびに、エチレン性不飽和二重結合基同士が重合した構造は含まれない。
但し、本発明の効果が損なわれない限り、本開示のポジティブC型位相差層に、エチレン性不飽和二重結合基同士が重合した構造がさらに含まれることを妨げるものではない。
なお、架橋構造中には、熱架橋剤が反応した後の熱架橋剤の残基が含まれる。
【0152】
ポジティブC型位相差層は、更に、酸または酸発生剤、前記その他の成分、及びそれらの分解物を含有してもよい。
【0153】
なお、ポジティブC型位相差層が上記光二量化構造または光異性化構造を含有することや上記架橋構造を含有すること、及び含有成分等は、ポジティブC型位相差層から材料を採取し分析することで確認することができる。分析方法としては、NMR、IR、GC-MS、XPS、TOF-SIMSおよびこれらの組み合わせた方法を適用することができる。
【0154】
また、ポジティブC型位相差層において、側鎖型液晶ポリマーの液晶部分等、含まれる液晶性成分が垂直配向していることは、前述のように面外位相差Rthを測定することにより確認することができる。
【0155】
ポジティブC型位相差層の面外位相差としては、Δn=面外位相差(Rth)/厚みd(nm)を指標としてよい。
なお、ここでのポジティブC型位相差層の面外位相差Δnを算出する際には、浸透領域を含む本開示のポジティブC型位相差層のうち、浸透領域を除いた部分の面外位相差の指標とするため、厚みd(nm)は浸透領域を除いたポジティブC型位相差層の厚み(ポジティブC型位相差層の厚み-浸透領域の厚み)を使用して求める。
浸透領域を除いたポジティブC型位相差層のΔnCは、-0.090未満であることが好ましく、-0.100以下であることがより好ましく、-0.110以下であることがさらに好ましい。浸透領域を除いたポジティブC型位相差層のΔnCの負の値が大きいほど、面外位相差が大きくなるとともに、本開示の浸透した領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向しやすくなる点から、好ましい。
【0156】
本開示のポジティブC型位相差層には、前述のように、ポジティブA型位相差層側の界面に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域を含み、当該浸透した領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向している。
【0157】
また、本開示の位相差板においては、屈曲耐性が良好な位相差板とする点から、ポジティブC型位相差層の複合弾性率を調整することが好ましい。前記ポジティブC型位相差層の複合弾性率は4.5GPa以上9.0GPa以下であってよく、5.0GPa以上8.5GPa以下であってよく、5.0GPa以上8.0GPa以下であってよい。前記ポジティブC型位相差層は、熱硬化性液晶組成物の硬化物である場合、前記複合弾性率を容易に調整可能である。
ポジティブC型位相差層の複合弾性率は、ポジティブC型位相差層の表面において、インデンテーション硬さ(HIT)を測定する際に求められる接触投影面積Apを用いて下記数式(1)から算出するErとする。「インデンテーション硬さ」とは、ナノインデンテーション法による硬度測定によって得られる圧子の負荷から除荷までの荷重-変位曲線から求められる値である。ポジティブC型位相差層の複合弾性率は、ポジティブC型位相差層の弾性変形および圧子の弾性変形が含まれた弾性率である。
【0158】
【数1】
(上記数式(1)中、Apは接触投影面積であり、Erは配向膜兼位相差層の複合弾性率であり、Sは接触剛性である。)
【0159】
なお、ポジティブC型位相差層の複合弾性率は、ポジティブC型位相差層のポジティブA型位相差層との界面とは反対側の表面において測定する。ポジティブC型位相差層の複合弾性率は、具体的には以下のように求めるものとする。
まず、位相差板の基板を剥離して、ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層とを粘着付きガラスに、ポジティブC型位相差層/ポジティブA型位相差層/粘着付きガラスの順になるように転写して測定用サンプルを作製する。測定用サンプルを用いて、基板を剥離して露出したポジティブC型位相差層の表面のインデンテーション硬さを測定する。インデンテーション硬さ(HIT)の測定は、測定サンプルについてナノインデンター(例えば、BRUKER製、TI950 TriboIndenter)を用いて行うものとする。以下の測定条件で、圧子としてバーコビッチ(Berkovich)圧子(三角錐)(例えば、BRUKER製、TI-0039)をポジティブC型位相差層の表面に10秒かけて最大押し込み荷重3μNとなるまで垂直に押し込む。その後、一定保持して残留応力の緩和を行った後、10秒かけて除荷させて、緩和後の最大荷重を計測し、該最大荷重Pmax(μN)と接触投影面積Ap(nm2)とを用い、Pmax/Apにより、インデンテーション硬さ(HIT)を算出する。上記接触投影面積は、標準試料の溶融石英(例えば、BRUKER製、5-0098)を用いてOliver-Pharr法で圧子先端曲率を補正した接触投影面積とする。なお、測定値の中に算術平均値から±20%以上外れるものが含まれている場合は、その測定値を除外し再測定を行う。
(測定条件)
・荷重速度:0.3μN/秒
・保持時間:5秒
・荷重除荷速度:0.3μN/秒
・測定温度:25℃
【0160】
次いで、得られたポジティブC型位相差層のインデンテーション硬さ(HIT)を測定する際に求められる上記接触投影面積Apを用いて、前記数式(1)から複合弾性率Erを求める。複合弾性率は、インデンテーション硬さを10箇所測定し、その都度複合弾性率を求め、得られた10箇所の複合弾性率の算術平均値とする。
【0161】
前記ポジティブC型位相差層の厚みは、適宜設定することができるが、前記浸透領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向しやすい点から、中でも、0.1μm~4μmであることが好ましく、0.3μm~2μmであることがより好ましい。
なおここでのポジティブC型位相差層の厚みは、浸透領域の厚みが含まれる。
【0162】
2.ポジティブA型位相差層
本開示の位相差板において、前記ポジティブA型位相差層は、水平配向(ホモジニアス配向)を示す層である。
水平配向し得る液晶性成分は、液晶ポリマーであっても液晶モノマーであってもよい。
ポジティブC型位相差層への前記浸透領域において垂直配向が容易になる点から、液晶モノマーであってよく、その分子量は250~2000であってよい。
【0163】
水平配向性を有する液晶性成分は、浸透領域での配向状態の安定性の点から、重合性基を有する重合性液晶化合物であってよい。
重合性基を有する重合性液晶化合物を含有するものを用いることができ、ポジティブA型位相差層に一般的に用いられるものを使用することができる。
重合性液晶化合物が有する重合性基としては、例えば、オキシラン環、オキセタン環等の環状エーテル含有基、エチレン性二重結合含有基等が挙げられるが、中でも光硬化性を示し、取り扱い性に優れる点から、エチレン性二重結合含有基であることが好ましい。エチレン性二重結合含有基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。
【0164】
ポジティブA型位相差層における重合性液晶組成物は、液晶性を示し、分子内に重合性基を有する重合性液晶化合物を含有することが好ましい。当該重合性液晶化合物としては、水平配向性を有する従来公知の重合性液晶化合物を、適宜選択して用いることができる。
重合性液晶組成物は、1つの液晶化合物からなるものであっても2種以上の液晶化合物の混合物であってもよい。
【0165】
ポジティブA型位相差層における重合性液晶組成物は、例えば、棒状メソゲンの少なくとも一方の末端に重合性基を有する重合性液晶化合物であることが好ましく、棒状メソゲンの両末端に重合性基を有する重合性液晶化合物であってよい。
重合性液晶化合物が有するメソゲン乃至棒状メソゲンは、前記側鎖型液晶ポリマーにおける液晶性構成単位が有するメソゲン乃至棒状メソゲンと同様のものとすることができる。
【0166】
本実施形態において、重合性液晶化合物は、液晶配向性を発揮し、耐熱性に優れるという点から、下記一般式(IV)で表される化合物、及び下記一般式(V)で表される化合物より選択される1種以上の化合物であってよい。
【0167】
【化18】
(一般式(IV)中、R
61は、水素原子又はメチル基を、R
62は、-(CH
2)
p-、又は-(C
2H
4O)
p’-で表される基を表す。L
3は、直接結合、又は、-O-、-O-C(=O)-、若しくは-C(=O)-O-で表される連結基を、Ar
3は、置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリーレン基を表し、複数あるL
3及びAr
3はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。R
63は、-F、-Cl、-CN、-OCF
3、-OCF
2H、-NCO、-NCS、-NO
2、-NHC(=O)-R
64、-C(=O)-OR
64、-OH、-SH、-CHO、-SO
3H、-NR
64
2、-R
65、又は-OR
65を、R
64は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、R
65は、炭素数1~6のアルキル基を表す。bは2~4の整数、p及びp’はそれぞれ独立に2~10の整数である。
【0168】
【化19】
(一般式(V)中、R
71及びR
72は各々独立に、水素原子又はメチル基を、R
73は、-(CH
2)
q-、又は-(C
2H
4O)
q’-で表される基を、R
74は、-(CH
2)
r-、又は-(OC
2H
4)
r’-で表される基を表す。L
4は、直接結合、又は、-O-、-O-C(=O)-、若しくは-C(=O)-O-で表される連結基を、Ar
4は、置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリーレン基を表し、複数あるL
4及びAr
4はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。cは2~4の整数、q、q’、r及びr’はそれぞれ独立に2~10の整数である。)
【0169】
L3及びL4は前記一般式(I)におけるL2と同様のものとすることができる。
また、Ar3及びAr4は前記一般式(I)におけるAr1と同様のものとすることができる。
一般式(IV)で表される化合物、及び下記一般式(V)で表される化合物は、具体的には例えば、国際公開第2018/003498号の段落0057~0064に記載されている重合性液晶化合物を用いることができる。
【0170】
ポジティブA型位相差層は、Re(450)、Re(550)及びRe(650)が、下記(i)の関係を満たしてもよい。すなわち、ポジティブA型位相差層は逆分散性を示してもよい。ポジティブA型位相差層として、下記(i)の関係を満たす逆分散性のものを用いることにより、ポジティブA型位相差層及びポジティブC型位相差層を含む光学部材全体としても逆分散性を付与しやすくすることができ、550nmから外れた波長域における視認性及び反射防止性等を良好にしやすくできる。
Re(450)<Re(550)<Re(650) (i)
【0171】
ポジティブA型位相差層が逆分散性を示す場合、浸透領域で垂直配向することによりポジティブC型位相差層の波長分散特性をわずかに逆分散性に近付けることができ、広い視野角に亘ってコントラストの向上や、視野角ごとの色の変化を抑制することができる。
【0172】
逆分散性を示すポジティブA型位相差層を形成するために、逆分散性を示す重合性液晶化合物を用いてもよい。
ポジティブA型位相差層における重合性液晶化合物としては、具体的に例えば、特許第6473537号に記載の下記一般式(1)で表される重合性液晶化合物の他、特許第5463666号、特許第4186981号、特許第5962760号、及び特許第5826759号、特許第6568103号、特許第6427340号、特開2016-166344や、Recueil des Travaux Chimiques des Pays-Bas(1996),115(6),321-328に記載されている重合性液晶化合物を用いることができる。
また、ポジティブA型位相差層における重合性液晶組成物としては、特開2014-174468号の段落0133~0143記載の組成物や、特許第6739621号の段落0083~0092記載の組成物が挙げられる。
【0173】
【化20】
(当該一般式(1)の各符号は、特許第6473537号に記載のとおりである。)
【0174】
ポジティブA型位相差層における重合性液晶組成物は、液晶化合物の他に、更に光重合開始剤や溶剤を含んでいてもよく、前記ポジティブC型位相差層で説明したようなその他の成分を更に含んでいてもよい。
【0175】
ポジティブA型位相差層は、例えば、配向層としても機能する前記ポジティブC型位相差層上に重合性液晶組成物を塗布し、重合性液晶組成物の相転移温度まで加熱して液晶性成分を配向させ、その後、前記液晶性成分が配向した重合性液晶組成物の塗膜に光照射することにより形成することができる。
【0176】
液晶性成分を配向させる工程において重合性液晶組成物の塗膜を形成する方法、相転移温度まで加熱する方法については、従来公知の方法を用いればよく、特に限定されない。
塗布方法、加熱方法については、前記ポジティブC型位相差層の製造方法における塗布方法、加熱方法と同様の方法を用いることができる。
【0177】
前記液晶性成分が配向した重合性液晶組成物の塗膜には、光照射することにより、重合反応を生じさせて、ポジティブA型位相差層に含まれる重合性液晶化合物が有する重合性基同士を重合する。更に、前記ポジティブC型位相差層が重合性基を含む化合物を含有する場合には、前記ポジティブC型位相差層との界面においてポジティブC型位相差層における重合性基を含む化合物の重合性基とポジティブA型位相差層に含まれる重合性液晶化合物が有する重合性基と重合する。浸透領域に含まれる重合性液晶化合物に含まれる重合性基についても、前記ポジティブA型位相差層に含まれる重合性液晶化合物が有する重合性基および、前記ポジティブC型位相差層における重合性基を含む化合物の重合性基と重合する。光照射方法は従来公知の方法を用いればよい。
【0178】
3.基材
本開示の位相差板には、例えば
図2のように、基材4が含まれていてもよい。
位相差板において基材は、ガラス基材、金属箔、樹脂基材等が挙げられる。中でも、基材は透明性を有することが好ましく、従来公知の透明基材の中から適宜選択することができる。透明基材としては、ガラス基材の他、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクロニトリル、メタクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー等の樹脂を用いて形成された透明樹脂基材が挙げられる。
【0179】
上記透明基材は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、透明基材の透過率は、JIS K7361-1(プラスチック-透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0180】
また、ロールトゥロール方式で位相差層を形成する場合には、透明基材は、ロール状に巻き取ることができる可撓性を有するフレキシブル材であることが好ましい。
このようなフレキシブル材としては、セルロース誘導体、ノルボルネン系ポリマー、シクロオレフィン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アモルファスポリオレフィン、変性アクリル系ポリマー、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル類などを例示することができる。なかでも本実施形態においてはセルロース誘導体やポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。セルロース誘導体は特に光学的等方性に優れるため、光学的特性に優れたものとすることができるからである。また、ポリエチレンテレフタレートは、透明性が高く、機械的特性に優れる点から好ましい。
【0181】
本実施形態に用いられる基材の厚みは、位相差板の用途等に応じて、必要な自己支持性を付与できる範囲内であれば特に限定されないが、通常、10μm~200μm程度の範囲内である。
中でも、基材の厚みは、25μm~125μmの範囲内が好ましく、中でも30μm~100μmの範囲内が好ましい。厚みが上記の範囲よりも厚いと、例えば、長尺状の位相差フィルムを形成した後、裁断加工し、枚葉の配向膜兼位相差フィルムとする際に、加工屑が増加したり、裁断刃の磨耗が早くなってしまう場合があるからである。
【0182】
本実施形態に用いられる基材の構成は、単一の層からなる構成に限られるものではなく、複数の層が積層された構成を有してもよい。複数の層が積層された構成を有する場合は、同一組成の層が積層されてもよく、また、異なった組成を有する複数の層が積層されてもよい。
例えば、基材上に配向膜を更に有し、当該配向膜が紫外性硬化性樹脂を含有するものである場合、透明基材と当該紫外線硬化性樹脂の接着性を向上させるためのプライマー層を基材上に形成してもよい。このプライマー層は、基材および紫外線硬化性樹脂との双方に接着性を有し、可視光学的に透明であり、紫外線を通過させるものであればよく、例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体系、ウレタン系のもの等を適宜選択して使用することができる。
【0183】
また、配向膜が設けられない場合、基材上にアンカーコート層を積層しても良い。当該アンカーコート層によって基材の強度を向上させることができ良好な垂直配向性を確保できる。アンカーコート材料としては、金属アルコキシド、特に金属シリコンアルコキシドゾルを用いることができる。金属アルコキシドは、通常アルコール系の溶液として用いられる。アンカーコート層は、均一で、かつ柔軟性のある膜が必要なため、アンカーコート層の厚みは0.04μm~2μm程度が好ましく、0.05μm~0.2μm程度がより好ましい。
前記基材がアンカーコート層を有する場合には、基材とアンカーコート層の間に更にバインダー層を積層したり、アンカーコート層に基材との密着性を強化する材料を含有させることにより、基材とアンカーコート層の密着性を向上させてもよい。前記バインダー層の形成に用いるバインダー材料は、基材とアンカーコート層との密着性を向上できるものを特に制限なく使用することができる。バインダー材料としては、たとえば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤等を例示できる。
【0184】
4.位相差板
本開示の位相差板においては、波長550nmにおける面外位相差Rthが-35nm~35nmであり、波長550nmにおける面内位相差Reが100nm以上であり、ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層との合計厚みが0.2μm~6μmであってよい。
波長550nmにおける面外位相差Rthは-30nm~30nmであってよく、更に-25nm~25nmであってよい。
また波長550nmにおける面内位相差Reは120nm以上であってよく、更に135nm以上であってよい。
波長550nmにおける面外位相差Rth及び面内位相差Reは、具体的には実施例に記載した方法により求めるものとする。
【0185】
また、位相差板の面外位相差Rthから、ポジティブA型位相差層の面外位相差Rthを差し引き、位相差板形成後の垂直配向成分の面外位相差Rthを算出し、浸透領域を含むポジティブC型位相差層の層厚を用いて算出した、浸透領域を含むポジティブC型位相差層のΔnACは、-0.100未満であってよく、更に-0.110未満であってよい。浸透領域を含むポジティブC型位相差層のΔnACの負の値が大きいほど、位相差板の薄膜化が可能であり、また必要材料量を削減し低価格化が可能な点から、好ましい。
浸透領域による垂直配向性の変動を表すΔnAC-ΔnCの値(浸透領域を含むポジティブC型位相差層のΔnAC-浸透領域を含まないポジティブC型位相差層のΔnCの値)が負に大きいほど、より多くのポジティブA成分が浸透し、垂直配向性が向上していることを表す。
ΔnAC-ΔnCの値は、好ましい範囲として、上限値が-0.010以下であってよく、下限値が-0.030以上であってよい。
なお、ΔnACは、具体的には実施例に記載した方法により求めるものとする。
【0186】
ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層との合計厚みは0.8μm~5μmであってよく、更に1μm~4μmであってよい。
ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層との合計厚みは実施例に記載した走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いることによって求めるものとする。
【0187】
本開示の位相差板は、ポジティブC型位相差層に直接ポジティブA型位相差層が積層されているものであるが、ポジティブC型位相差層と基材との間に、配向膜が含まれていてもよい。当該配向膜はポジティブC型位相差層を垂直配向させやすい点から垂直配向膜であってよい。
当該配向膜としては、国際公開2022/158555号の段落0209~0213と同様であってよい。
但し、生産性向上の点からは、基材とポジティブC型位相差層との間に配向膜を含有しないことが好ましく、前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置する基材を含有することが好ましい。
【0188】
また、本開示の位相差板は、更に別の位相差層を有していても良い。
本開示の位相差板は、前記ポジティブC型位相差層とは異なる第三の位相差層を更に含有し、前記第三の位相差層と、前記ポジティブC型位相差層と、前記ポジティブA型位相差層とがこの順に、直接隣接して位置し、前記第三の位相差層がポジティブC型位相差層であってもよい。
第三の位相差層がポジティブC型位相差層である場合、ポジティブC型位相差層で説明した側鎖型液晶ポリマーを用いて形成することが好ましい。
【0189】
本開示の位相差板は、ポジティブC型位相差層に直接ポジティブA型位相差層が積層され、ポジティブA型位相差層用の基材や配向膜や接着剤層等が含まれず、薄型化することができる。
本開示の位相差板は、薄型化を目指している各種画像表示装置の光学部材として好適に用いることができる。
本開示のポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層が積層された位相差板は、例えば有機エレクトロルミネッセンス表示装置での、λ/4位相差板と直線偏光板とを組み合わせた形態で円偏光板として使用され、外光反射防止フィルムとして使用される点から好ましく、また、液晶表示装置における偏光板補償フィルムの一部として好適に使用される。
【0190】
I-2.第二の態様の位相差板
本開示は、ポジティブC型位相差層と、前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置するポジティブA型位相差層との積層体を含有する位相差板であって、
前記積層体の断面の走査電子顕微鏡(SEM)-エネルギー分散型X線分光(EDX)分析において、下記条件(1)及び(2)を満たす、位相差板を提供する。
条件(1):前記ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の界面から、層厚み方向にポジティブA型位相差層側300nmの領域において検出される窒素元素の平均値(AN300)が7.0cps以上である。
条件(2):前記ポジティブC型位相差層領域において検出される窒素元素の平均値(CN)が7.0cps以上である。
【0191】
図8及び
図9は本開示の第二の態様の位相差板の一例を示す概略断面図である。
図8に例示する位相差板10においては、ポジティブC型位相差層1と、前記ポジティブC型位相差層1に直接隣接して位置するポジティブA型位相差層2との積層体を含有する。本開示の第二の態様の位相差板は、
図1に示されるように、前記ポジティブC型位相差層1に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域3を含んでいてもよいし、さらに、当該浸透した領域3において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向していてもよい。
本開示の第二の態様の位相差板はさらに基材を有していてもよい。
図9に例示する位相差板10においては、基材4に、前記基材に隣接して位置するポジティブC型位相差層1と、前記ポジティブC型位相差層1に直接隣接して位置するポジティブA型位相差層2との積層体を含有する。本開示の第二の態様の位相差板は、
図2に示されるように、前記ポジティブC型位相差層1に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域3を含んでいてもよいし、さらに、当該浸透した領域3において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向していてもよい。
【0192】
図9及び
図2の例示される位相差板10の1実施形態は、基材4とポジティブC型位相差層1とが直接積層されているが、当該基材4のポジティブC型位相差層1側表面に配向規制力を発現する手段が付されていてもよい。
位相差板の1実施形態は、基材4と配向膜とポジティブC型位相差層1がこの順に積層されていてもよい(図示せず)。
本開示の位相差板においては、生産性向上の点から、基材とポジティブC型位相差層との間に配向膜を含有しないことが好ましく、前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置する基材を含有することが好ましい。
また、本開示の位相差板においては、製造後の厚みを削減できる点から、基材1を製造後に剥離することにより、
図8及び
図1のように基材を含有しなくてもよい。
【0193】
前記積層体の断面の走査電子顕微鏡(SEM)-エネルギー分散型X線分光(EDX)分析は、積層体の断面の切片を作製し、積層体の断面の切片をSEM-EDX装置(例えば、SEM:株式会社日立ハイテクノロジーズ製、SU8000、EDX:オックスフォード社製、X-MaxN 80)を用いて、EDX測定を行うことにより求める。
積層体の断面の切片は以下のように作製する、まず、ポジティブC型位相差層と、前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置するポジティブA型位相差層との積層体に、基板などがさらに積層している場合、これら基板などを剥離し、剥離後の積層体の両面に、光学用粘着剤(厚み25μm)でトリアセチルセルロースフィルム(厚み40μm)を積層した、トリアセチルセルロースフィルム/光学用粘着剤/ポジティブC型位相差層/ポジティブA型位相差層/光学用粘着剤/トリアセチルセルロースフィルムがこの順で積層した積層サンプルを作製する。当該積層サンプルの中央部を短冊状(2mm×6mm)に切り出し、切り出したサンプルを熱硬化性樹脂にて包埋した後に、ウルトラミクロトームで切削して平滑な断面を切り出した超薄切片(厚み80nm)を作製する。
上記のように断面を切り出した超薄切片について、SEM-EDX装置を用いて断面の中央部において層厚み方向に、下記条件でEDX測定を行うものとする。
モード:ラインスキャン
加速電圧:7kV
エミッション電流:10μA
【0194】
各層の界面は断面のSEM写真から明暗のコントラストで判断する。界面が幅をもって観測される場合、前記ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の界面は、界面領域のうち最もポジティブA型位相差層側の境界とする。
また、前記ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の界面から、ポジティブA型位相差層側300nmの領域において検出される窒素元素の平均値(AN300)および、前記ポジティブC型位相差層領域において検出される窒素元素の平均値(CN)は、EDX装置から出力される値のうち、該領域内に含まれる値のみを用い、その平均値から算出する。
【0195】
反射率を低減しやすい点から、前記条件(1)において、前記ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の界面から、層厚み方向にポジティブA型位相差層側300nmの領域において検出される窒素元素の平均値(AN300)が7.0cps以上である。反射率を低減しやすい点から、前記窒素元素の平均値(AN300)は、8.0cps以上であってよく、9.0cps以上であってよく、一方で(CN-AN300)が大きくなりやすい点から、15.0cps以下であってよい。
また、反射率を低減しやすい点から、前記条件(2)において、前記ポジティブC型位相差層領域において検出される窒素元素の平均値(CN)が7.0cps以上である。反射率を低減しやすい点から、前記窒素元素の平均値(CN)は、10.0cps以上であってよく、15.0cps以上であってよく、一方でポジティブC型位相差層の設計の点から、30.0cps以下であってよい。
【0196】
また、反射率を低減しやすい点から、更に、下記条件(3)を満たすことが好ましい。
条件(3):前記ポジティブC型位相差層領域において検出される窒素元素の平均値(CN)と、前記ポジティブA型位相差層側300nmの領域において検出される窒素元素の平均値(AN300)との差(CN-AN300)が、6.0cps以上である。
反射率を低減しやすい点から、前記ポジティブC型位相差層領域において検出される窒素元素の平均値(CN)と、前記ポジティブA型位相差層側300nmの領域において検出される窒素元素の平均値(AN300)との差(CN-AN300)は、8.0cps以上であってよく、10.0cps以上であってよく、一方でポジティブC型位相差層の設計の点から、17.0cps以下であってよい。
【0197】
また、反射率を低減しやすい点から、更に、下記条件(4)を満たすことが好ましい。
条件(4):CAN300<CPN300
CAN300は、前記ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の界面から、層厚み方向にポジティブC型位相差層側300nmの領域において検出される窒素元素の平均値を表し、CPN300は、前記ポジティブC型位相差層のポジティブA型位相差層側とは反対側の界面から、層厚み方向にポジティブC型位相差層側300nmの領域において検出される窒素元素の平均値を表す。なお、CAN300とCPN300が表す領域は重複していてもよい。
すなわち、前記ポジティブC型位相差層は、窒素元素の分布が層厚み方向において均一であるよりも、ポジティブA型位相差層界面付近に比べてポジティブA型位相差層とは反対側の界面付近の方が検出される窒素元素の値が大きくなることが好ましい。前記ポジティブC型位相差層は、前記ポジティブC型位相差層の層厚み方向において、ポジティブA型位相差層側から遠ざかるほど検出される窒素元素の値が大きくなることが好ましい。
前記ポジティブC型位相差層のポジティブA型位相差層側とは反対側の界面から、層厚み方向にポジティブC型位相差層側300nmの領域において検出される窒素元素の平均値(CPN300)と、前記ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の界面から、層厚み方向にポジティブC型位相差層側300nmの領域において検出される窒素元素の平均値(CAN300)との差(CPN300-CAN300)は、7.0cps以上であってよく、8.0cps以上であってよく、10.0cps以上であってよく、一方でポジティブC型位相差層の設計の点から、18.0cps以下であってよい。
【0198】
本開示の第二の態様の位相差板は、ポジティブC型位相差層と、前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置するポジティブA型位相差層との積層体を含有する位相差板において、前記積層体の断面の走査電子顕微鏡(SEM)-エネルギー分散型X線分光(EDX)分析における、前記ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の界面から層厚み方向にポジティブA型位相差層側300nmの領域で検出される窒素元素の平均値と、前記ポジティブC型位相差層領域で検出される窒素元素の平均値とがそれぞれ所定値以上であることにより、反射率を低減することができる。
従来、ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層とが粘着剤層又は接着剤層で貼り合わせられて積層されていた場合、ポジティブC型位相差層と粘着剤層との界面および、粘着剤層とポジティブA型位相差層との界面での屈折率差による内部反射によって反射率の低減に限界があった。また、位相差板の薄型化を目的とした、従来のポジティブC型位相差層と、前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置するポジティブA型位相差層との積層体を含有する位相差板は、ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の屈折率差に伴う界面反射を完全に抑制することができず、未だ反射率の低減が不十分であり、より低反射化が望まれていた。
それに対して、本開示によれば、前記ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の界面から層厚み方向にポジティブA型位相差層側300nmの領域で検出される窒素元素の平均値と、前記ポジティブC型位相差層領域で検出される窒素元素の平均値とに着目し、各々所定値以上である場合に反射率が低減することを見出した。これは、理由は定かではないが、各層で一定以上の窒素元素を含有することで、ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層とで屈折率が類似の値をとりやすくなり、界面における屈折率変化が緩和され、内部反射が抑制できたことによるものと推定される。
【0199】
本開示の第二の態様による、前記条件(1)及び(2)を満たす方法としては、後に詳述するが、ポジティブA型位相差層に含まれる液晶性成分と、ポジティブC型位相差層に含まれる液晶性成分のそれぞれに、窒素原子を含む液晶性成分を含有し、かつ各層を形成する組成物のうち、窒素原子を含む液晶性成分の含有量を調整する方法が挙げられる。また、位相差板作成後に光照射することにより、窒素原子を含む液晶性成分の膜内の分布を制御する方法等が挙げられる。
【0200】
本開示の第二の態様の位相差板は、前記ポジティブC型位相差層に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域を含んでいてもよいし、浸透した領域を含んでいなくてもよい。さらに、前記浸透した領域を含む場合に、浸透した領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向していてもよいし、垂直配向していなくてもよい。
本開示の第二の態様の位相差板は、反射率を低減しやすく、且つ、前記第一の態様の位相差板と同様の効果を得ることができる点から、前記第一の態様を満たしていることが好ましい。
すなわち、本開示の第二の態様の位相差板は、さらに、前記ポジティブC型位相差層に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域を含み、当該浸透した領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向していることが好ましい。
また、本開示の第二の態様の位相差板は、さらに、前記ポジティブC型位相差層に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域を含み、当該浸透した領域の波長550nmにおける面内位相差Reの絶対値が2.0nm未満であることが好ましい。
また、本開示の第二の態様の位相差板は、さらに、前記ポジティブA型位相差層が逆波長分散性を示し、前記ポジティブC型位相差層に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域を含み、浸透領域を除いたポジティブC型位相差層の450nmの波長における面外位相差をRthC450、550nmの波長における面外位相差をRthC550とし、浸透領域を含むポジティブC型位相差層の450nmの波長における面外位相差をRthAC450、550nmの波長における面外位相差をRthAC550としたとき、
RthC450/RthC550>RthAC450/RthAC550
であることが好ましい。
本開示の第二の態様の位相差板が、前記第一の態様を満たす場合、前記第一の態様の説明と同様であってよい。
【0201】
また、本開示の位相差板は、ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層とが直接積層されており、従来のような貼り合わせのための粘着層が不要であることから、厚みを薄くすることが可能である。
以下、位相差板に含まれる部材について詳述する。
【0202】
1.ポジティブC型位相差層
本開示の第二の態様のポジティブC型位相差層1は、垂直配向(ホメオトロピック配向)を示す層でありながら、ポジティブA型位相差層2と直接積層されていることから、ポジティブA型位相差層を水平配向させる液晶配向能も有するものである。
本開示の第二の態様のポジティブC型位相差層1は、垂直配向する液晶性成分と、光配向性成分を含むものであってよい。
本開示の第二の態様のポジティブC型位相差層1は、前記SEM-EDX分析における前記条件(2)を満たすものであり、ポジティブC型位相差層を構成する成分に窒素原子を含有する。
本開示の第二の態様のポジティブC型位相差層1は、反射率を低下しやすい点から、窒素原子を含む垂直配向する液晶性成分と、光配向性成分を含有するものであってよい。
【0203】
また、本開示の第二の態様のポジティブC型位相差層1は、反射率を低下しやすい点から、垂直配向する液晶性成分と、光配向性成分と熱架橋剤を含有し、前記垂直配向する液晶性成分、光配向性成分、及び熱架橋剤の少なくとも1種に窒素原子を含む熱硬化性液晶組成物の硬化物であってよく、窒素原子を含む垂直配向する液晶性成分と、光配向性成分と熱架橋剤を含有する熱硬化性液晶組成物の硬化物であってよい。
【0204】
ポジティブC型位相差層およびポジティブA型位相差層がいずれも窒素元素を含有することで、理由は定かではないが、界面における屈折率変化が緩和され、内部反射が抑制できると推定される。
また、窒素原子を含む垂直配向する液晶性成分を含有する場合には、ポジティブC型位相差層の窒素元素量が多いほど膜中の液晶性成分含有量が多く、それにより配向規制力が強まり、垂直配向の配向乱れによる反射率の低下が抑制できると推定される。中でも、窒素原子を含む液晶性成分のポジティブC型位相差層内の分布を調整し、ポジティブC型位相差層のうちポジティブA型位相差層側とは反対側の界面側の窒素元素比率を増加することにより、界面での光散乱を抑制し、かつ配向乱れによる反射率低下を抑制した、より良好な反射率を示す位相差板とすることができる。
【0205】
1-1.液晶性成分
前記垂直配向する液晶性成分としては、光配向性成分と混合しても垂直配向性が良好になりやすく、且つ柔軟性を付与しやすい点から、液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位を有する側鎖型液晶ポリマーを用いることが好ましい。
第二の態様に用いられる前記垂直配向する液晶性成分としては、液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位を有し、窒素原子を含む側鎖型液晶ポリマーを用いることが好ましい。
【0206】
本開示の第二の態様に用いられる側鎖型液晶ポリマー(A)は、液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位を有し、アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位を更に有し、窒素原子を含む側鎖型液晶ポリマーであってよい。
以下、側鎖型液晶ポリマー(A)における各構成単位について説明する。
【0207】
(1)液晶性構成単位
本開示の第二の態様に用いられる液晶性構成単位は、前記第一の態様において説明した液晶性構成単位と同様であってよい。
本開示の第二の態様に用いられる液晶性構成単位は、中でも、窒素原子を含む液晶性構成単位であることが好ましい。
【0208】
液晶性構成単位が窒素原子を含む態様としては、液晶性構成単位が、(メタ)アクリルアミド又はマレイミドの誘導体から誘導される構成単位である態様が挙げられる。
また、液晶性構成単位が窒素原子を含む態様としては、液晶性を示すメソゲンの芳香環又は環状の脂肪族炭化水素中の炭素原子の一部が窒素原子に置換された構造が挙げられる。具体的には、メソゲンの一部に、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、キノリン等の含窒素複素環が含まれる態様が挙げられる。
また、液晶性構成単位が窒素原子を含む態様としては、メソゲンの環構造の連結部に窒素原子が含まれる構造が挙げられる。具体的には、当該連結部の構造としては、-NR-C(=O)-、-C(=O)-NR-、-O-C(=O)-NR-、-NR-C(=O)-O-、-NR-C(=O)-NR-、-O-NR-、若しくは-NR-O-(Rは水素原子又は炭化水素基)等が挙げられる。ここでのRは好ましくは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基である。
また、液晶性構成単位が窒素原子を含む態様としては、当該液晶性構成単位の側鎖の末端に極性基として窒素原子が含まれる構造が挙げられる。このような窒素原子を含む極性基の具体例としては、-CN、-NCO、-NCS、-NO2、-NHC(=O)-R’、-NR’2(R’は水素原子又は炭化水素基)等が挙げられる。ここでのR’は好ましくは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基である。
【0209】
液晶性構成単位が窒素原子を含む態様としては、垂直配向性が良好になりやすい点から、中でも、当該液晶性構成単位の側鎖の末端に極性基として窒素原子が含まれることが好ましい。
【0210】
本開示の第二の態様に用いられる側鎖型液晶ポリマー(A)において、
(2)アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位
(3)その他の構成単位
(4)側鎖型液晶ポリマー(A)の共重合体
については、前記第一の態様に用いられる側鎖型液晶ポリマー(A)において説明した
(2)アルキレン基を側鎖に含む非液晶性構成単位
(3)その他の構成単位
(4)側鎖型液晶ポリマー(A)の共重合体
と同様であってよい。
【0211】
本開示の第二の態様に用いられる側鎖型液晶ポリマー(A)に窒素原子が含まれる場合の、窒素原子の含量は、前記SEM-EDX分析における前記条件(2)を満たすことができればよく、特に限定されない。窒素原子を含む側鎖型液晶ポリマーの含有割合が液晶組成物の固形分100質量部に対し、60質量部以上であってよく、70質量部以上であってよい。一方で、水平配向性を発現するための光配向性成分の含有量の点から、窒素原子を含む側鎖型液晶ポリマーの含有割合が液晶組成物の固形分100質量部に対し、95質量部以下であってよい。また、窒素原子を含む側鎖型液晶ポリマーにおいて、共重合体全体に含まれる構成単位の量を100モル%としたとき、窒素原子を1原子以上含む構成単位を30モル%以上含まれるものであってよい。
【0212】
1-2.光配向性成分
第二の態様のポジティブC型位相差層において用いられる光配向性成分としては、光配向性基を含有する化合物、又は、光配向性基を側鎖に含む光配向性構成単位を有する重合体が挙げられる。
光配向性成分としては、光配向性基を側鎖に含む光配向性構成単位と熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位とを有する共重合体であってもよく、前記共重合体とは異なる光配向性基と熱架橋性基とを有する化合物であってもよい。
第二の態様のポジティブC型位相差層において用いられる光配向性成分としては、前記第一の態様のポジティブC型位相差層において用いられる光配向性成分と同様であってよい。
第二の態様のポジティブC型位相差層において用いられる光配向性成分としては、窒素原子が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
【0213】
1-3.熱架橋剤
第二の態様のポジティブC型位相差層が、垂直配向する液晶性成分と、光配向性成分と熱架橋剤を含む熱硬化性液晶組成物の硬化物である場合、ポジティブC型位相差層の形成に熱架橋剤が用いられる。
第二の態様のポジティブC型位相差層において用いられる熱架橋剤としては、窒素原子が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
第二の態様のポジティブC型位相差層において用いられる熱架橋剤としては、前記第一の態様のポジティブC型位相差層において用いられる熱架橋剤と同様であってよい。
【0214】
第二の態様のポジティブC型位相差層において、
1-4.酸または酸発生剤
1-5.その他の成分
1-6.ポジティブC型位相差層の形成
1-7.ポジティブC型位相差層の構成
については、前記SEM-EDX分析における前記条件(2)を満たす限り、前記第一の態様のポジティブC型位相差層において説明した
1-4.酸または酸発生剤
1-5.その他の成分
1-6.ポジティブC型位相差層の形成
1-7.ポジティブC型位相差層の構成
と同様であってよい。
【0215】
第二の態様のポジティブC型位相差層においては、必ずしも、ポジティブA型位相差層を形成時に浸透した領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分を垂直配向させなくてもよいことから、必ずしも、当該ポジティブC型位相差層形成時の乾燥工程において2段階以上の温度制御を行わなくてもよい。一段階の温度制御により乾燥する場合には、加熱温度としては、40~200℃とすることが挙げられ、さらに40~150℃とすることが挙げられる。
また、加熱時間は、適宜選択されれば良いが、例えば、10秒以上60分以内、好ましくは20秒以上30分以内の範囲内で選択される。
【0216】
また、第二の態様のポジティブC型位相差層においては、位相差板の反射率を低減しやすくする点から、後述するポジティブA型位相差層の重合反応のための光照射とは別に、ポジティブA型位相差層との積層体を形成した後に、更に光照射してもよい。
位相差板の反射率を低減しやすくする点から、ポジティブA型位相差層との積層体を形成した後に、積層体に光照射する場合には、ポジティブA型位相差層側から光照射することが好ましい。
光照射としては、紫外線照射が好適に用いられる。紫外線照射は、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線を使用することができる。光照射量は、適宜選択されれば良く、紫外線波長365nmでの積算露光量として、例えば400mJ/cm2以上1000mJ/cm2以下の範囲内であることが好ましい。
【0217】
2.ポジティブA型位相差層
本開示の第二の態様の位相差板において、前記ポジティブA型位相差層は、水平配向(ホモジニアス配向)を示す層である。
本開示の第二の態様のポジティブA型位相差層2は、前記SEM-EDX分析における前記条件(1)を満たすものであり、前記ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の界面から、層厚み方向にポジティブA型位相差層側300nmの領域において、ポジティブA型位相差層を構成する成分に窒素原子を含有する。
【0218】
水平配向し得る液晶性成分は、液晶ポリマーであっても液晶モノマーであってもよい。
ポジティブC型位相差層への前記浸透領域において垂直配向が容易になる点から、液晶モノマーであってよく、その分子量は250~2000であってよい。
【0219】
水平配向性を有する液晶性成分は、配向状態の安定性の点から、重合性基を有する重合性液晶化合物であってよい。
第二の態様のポジティブA型位相差層に用いられる重合性基を有する重合性液晶化合物は、ポジティブA型位相差層に一般的に用いられる重合性液晶化合物のうち、窒素原子を含む重合性液晶化合物を用いることが好ましい。
第二の態様のポジティブA型位相差層に用いられる重合性基を有する重合性液晶化合物は、前記第一の態様のポジティブA型位相差層で説明した重合性基を有する重合性液晶化合物のうち、窒素原子を含み、重合性基を有する重合性液晶化合物を好適に用いることができる。
【0220】
ポジティブA型位相差層における重合性液晶組成物は、1つの液晶化合物からなるものであっても2種以上の液晶化合物の混合物であってもよい。
ポジティブA型位相差層における重合性液晶組成物は、少なくとも1種の液晶化合物が、窒素原子を含み、重合性基を有する重合性液晶化合物であってよい。
【0221】
ポジティブA型位相差層に用いられる、窒素原子を含む重合性液晶化合物としては、具体的に例えば、特許第6473537号に記載の下記一般式(1)で表される重合性液晶化合物の他、特許第5463666号に記載の下記一般式(2)で表される重合性液晶化合物が挙げられる。
【0222】
【化21】
(一般式(1)中、L
1、L
2、L
3及びL
4はそれぞれ独立して、-O-、-S-、-OCH
2-、-CH
2O-、-CH
2CH
2-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-OCO-NH-、-NH-COO-、-NH-CO-NH-、-NH-O-、-O-NH-、-SCH
2-、-CH
2S-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CF
2S-、-SCF
2-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-COO-CH
2CH
2-、-OCO-CH
2CH
2-、-CH
2CH
2-COO-、-CH
2CH
2-OCO-、-COO-CH
2-、-OCO-CH
2-、-CH
2-COO-、-CH
2-OCO-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-、-N=CH-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表し、
A
1及びA
2はそれぞれ独立して、無置換であるか又は1つ以上の置換基Eによって置換されていても良い二価の炭素原子数3~20の脂環式炭化水素基を表すが、当該脂環式炭化水素基の任意の炭素原子はヘテロ原子に置換されていても良く、
A
3及びA
4はそれぞれ独立して、無置換であるか又は1つ以上の置換基Eによって置換されていても良い二価の炭素原子数3~20の脂環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表すが、当該脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基の任意の炭素原子はヘテロ原子に置換されていても良く、
R
1及びR
2はそれぞれ独立して、下記一般式(R-1)から選ばれる基を表し、
一般式(R-1): -L
5-R
sp1-Z
1
一般式(R-1)中、L
5は、-O-、-S-、-OCH
2-、-CH
2O-、-CH
2CH
2-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-OCO-NH-、-NH-COO-、-NH-CO-NH-、-NH-O-、-O-NH-、-SCH
2-、-CH
2S-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CF
2S-、-SCF
2-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-COO-CH
2CH
2-、-OCO-CH
2CH
2-、-CH
2CH
2-COO-、-CH
2CH
2-OCO-、-COO-CH
2-、-OCO-CH
2-、-CH
2-COO-、-CH
2-OCO-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-、-N=CH-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表し、R
sp1は、1個の-CH
2-又は隣接していない2個以上の-CH
2-が各々独立して-O-、-COO-、-OCO-、-OCO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-又は-C≡C-に置き換えられても良い炭素原子数1~20のアルキレン基又は単結合を表し、Z
1は重合性官能基を表す。
D
1及びD
2はそれぞれ独立して、下記一般式(D-1)から選ばれる基を表し、
置換基E、E
1及びE
2はそれぞれ独立して、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ペンタフルオロスルフラニル基、ニトロ基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、トリメチルシリル基、ジメチルシリル基、チオイソシアノ基、又は、1個の-CH
2-又は隣接していない2個以上の-CH
2-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられても良い炭素原子数1~20の直鎖状又は分岐状アルキル基を表すが、当該アルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子に置換されても良く、或いは、置換基E、E
1及びE
2はそれぞれ独立して、-L
E-R
spE-Z
Eで表される基を表しても良く、ここでL
E、R
spE、及びZ
Eは、それぞれ、前記L
5、R
sp1、及びZ
1で定義されるものと同一のものを表すが、それぞれ前記L
5、R
sp1、及びZ
1と同一であっても異なっていても良く、化合物内に置換基E、E
1及びE
2がそれぞれ複数存在する場合は、各々同一であっても異なっていても良く、
L
3、L
4、A
3、及びA
4がそれぞれ複数存在する場合は、各々同一であっても異なっていても良い。
m1及びm2はそれぞれ独立して1~4の整数を表し、n1及びn2はそれぞれ独立して0~3の整数を表す。)
【0223】
【化22】
(一般式(D-1)中、G
1は水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表すが、当該アルキル基は無置換であるか又は1つ以上の前記置換基Eによって置換されていても良く、
Q
1は、芳香族炭化水素基を有する炭素原子数2~30の有機基を表すが、当該芳香族炭化水素基の任意の炭素原子はヘテロ原子に置換されていても良く、芳香族炭化水素基は無置換であるか又は1つ以上の前記置換基Eによって置換されていても良く、
J
1は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-OCO-O-、-NQ
2-、-N=CQ
2-、-CO-NQ
2-、-OCO-NQ
2-又は-O-NQ
2-を表し、Q
2は水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~12のシクロアルキル基、炭素原子数3~12のシクロアルケニル基、芳香族炭化水素基(当該芳香族炭化水素基の任意の炭素原子はヘテロ原子に置換されていても良い)を有する炭素原子数2~30の有機基、又は-(L
6-A
5)
q-L
7-R
sp2-Z
2を表し、当該アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、及び芳香族炭化水素基はそれぞれ、無置換であるか又は1つ以上の前記置換基Eによって置換されていても良く、当該アルキル基は当該シクロアルキル基又はシクロアルケニル基によって置換されていても良く、当該アルキル基中の1個の-CH
2-又は隣接していない2個以上の-CH
2-は各々独立して-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-SO
2-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられても良く、当該シクロアルキル基又はシクロアルケニル基中の1個の-CH
2-又は隣接していない2個以上の-CH
2-は各々独立して-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、又は-O-CO-O-に置き換えられても良く、L
6、A
5、L
7、R
sp2、及びZ
2は、それぞれ、前記L
1~L
4、A
1~A
4、L
5、R
sp1、及びZ
1で定義されるものと同一のものを表すが、それぞれ前記L
1~L
4、A
1~A
4、L
5、R
sp1、及びZ
1と同一であっても異なっていても良く、qは0~4の整数を表し、L
6、及びA
5がそれぞれ複数存在する場合は、各々同一であっても異なっていても良い。また、Q
1とQ
2は結合して環を構成していても良い。)
【0224】
当該一般式(1)の各符号の説明は、特許第6473537号に記載のとおりであり、当該一般式(1)の各符号の説明は、特許第6473537号の記載が本明細書に組み込まれる。
J1は、窒素原子を含んで良く、-NQ2-であってよい。
Q1は、無置換であるか又は1つ以上の前記置換基Eによって置換されていても良い、窒素原子を含む芳香族複素環を有する炭素原子数2~30の有機基であってよく、窒素原子を含み、5員環と6員環の縮合環である芳香族複素環を有する炭素原子数2~30の有機基であってよい。
また、当該一般式(1)におけるZ1の重合性官能基は、それぞれ独立して下記式(Z-1)から式(Z-8)から選ばれる基を表すことが好ましい。なお、下記式(Z-1)から式(Z-8)において、*(アスタリスク)はRsp1との結合位置を示す。
【0225】
【化23】
(式(Z-1)~(Z-8)中、R
zはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、又はトリフルオロメチル基である。)
【0226】
一般式(2)
P1-F1-(B1-A1)k-E1-G1-D1-Ar-D2-G2-E2-(A2-B2)l-F2-P2
[式(2)中、Arは式(Ar-6)~式(Ar-7)で表されるいずれかの2価の基であり、Ar基中の芳香環に含まれるπ電子の数Nπは、12以上である。
【0227】
【化24】
[式(Ar-6)~式(Ar-7)中、Z
1は、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~6のアルキルスルフィニル基、炭素数1~6のアルキルスルホニル基、カルボキシル基、炭素数1~6のフルオロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、炭素数1~6のN-アルキルアミノ基、炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基、炭素数1~6のN-アルキルスルファモイル基または炭素数2~12のN,N-ジアルキルスルファモイル基を表す。
Q
1は、それぞれ独立に、-CR
7R
8-、-S-、-NR
7-、-CO-又は-O-を表す。
R
7及びR
8は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
Y
2は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基又はヘテロ原子を少なくとも一つ含む炭素数4~20の芳香族複素環基を表す。
nは、0~2の整数を表す。]
D
1及びD
2は、それぞれ独立に、*-O-CO-(*は、Arに結合する位置を表す)、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-CR
1R
2-、-CR
1R
2-CR
3R
4-、-O-CR
1R
2-、-CR
1R
2-O-、-CR
1R
2-O-CR
3R
4-、-CR
1R
2-O-CO-、-O-CO-CR
1R
2-、-CR
1R
2-O-CO-R
3R
4-、-CR
1R
2-CO-O-CR
3R
4-、-NR
1-CR
2R
3-、-CR
2R
3-NR
1-、-CO-NR
1-、又は-NR
1-CO-を表す。R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
G
1及びG
2は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4アルコキシ基、シアノ基またはニトロ基に置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、-O-、-S-又は-NH-に置換されていてもよい。
E
1、E
2、B
1及びB
2は、それぞれ独立に、-CR
5R
6-、-CH
2-CH
2-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-C(=S)-O-、-O-C(=S)-、-O-C(=S)-O-、-CO-NR
5-、-NR
5-CO-、-O-CH
2-、-CH
2-O-、-S-CH
2-、-CH
2-S-又は単結合を表す。R
5及びR
6は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
A
1及びA
2は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基又は2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基に置換されていてもよい。該炭素数1~4のアルキル基及び該炭素数1~4のアルコキシ基に含まれる水素原子は、フッ素原子に置換されていてもよい。
k及びlは、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。
F
1及びF
2は、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されていてもよく、該アルキレン基に含まれるメチレン基は、-O-又は-CO-に置換されていてもよい。
P
1及びP
2は、それぞれ独立に、水素原子又は重合性基(ただし、P
1及びP
2のうち少なくとも1つは、重合性基を表す)を表す。]
【0228】
当該一般式(2)の各符号の説明は、特許第5463666号に記載のとおりであり、当該一般式(2)の各符号の説明は、特許第5463666号の記載が本明細書に組み込まれる。
当該一般式(2)における重合性基とは、一般式(2)で表される化合物を重合させることのできる置換基であり、具体的には、ビニル基、p-スチルベン基、アクリロイル基、メタクロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクロイルオキシ基、カルボキシル基、メチルカルボニル基、水酸基、アミド基、炭素数1~4のアルキルアミノ基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、アルデヒド基、イソシアネート基又はチオイソシアネート基などが例示される。
【0229】
本開示の第二の態様のポジティブA型位相差層に用いられる重合性液晶化合物に窒素原子が含まれる場合の、窒素原子の含量は、前記SEM-EDX分析における前記条件(1)を満たすことができればよく、特に限定されない。窒素原子を含む重合性液晶化合物の含有割合が液晶組成物の固形分100質量部に対し、50質量部以上であってよく、70質量部以上であってよい。一方で、ポジティブA型位相差層の硬化度や機械物性の調整のしやすさから、窒素原子を含む重合性液晶化合物の含有割合が液晶組成物の固形分100質量部に対し、95質量部以下であってよい。また、窒素原子を含む重合性液晶化合物において、窒素原子は1分子中に1原子以上、10原子以下含まれるものであってよい。
【0230】
ポジティブA型位相差層における重合性液晶組成物は、液晶化合物の他に、更に光重合開始剤や溶剤を含んでいてもよく、前記ポジティブC型位相差層で説明したようなその他の成分を更に含んでいてもよい。
これらの液晶化合物の他に含まれる成分や、ポジティブA型位相差層の形成方法は、前記第一の態様において説明したものと同様であってよい。
【0231】
本開示の第二の態様に用いられる位相差板において、基材や、位相差板の各種特性や用途等については、前記第一の態様の位相差板において説明した
3.基材
4.位相差板
と同様であってよい。
【0232】
本開示の第二の態様に用いられる位相差板は、中でも反射率が低減されたものであり、例えば有機エレクトロルミネッセンス表示装置での、λ/4位相差板と直線偏光板とを組み合わせた形態で円偏光板として使用され、外光反射防止フィルムとして好適に使用される。また、液晶表示装置における偏光板補償フィルムの一部として好適に使用される。
【0233】
II.光学部材
本開示は、前記本開示の位相差板と、偏光板とを含有する、光学部材を提供する。
本実施形態の光学部材を、図を参照して説明する。
図4は、光学部材の1実施形態を示す模式断面図である。
【0234】
図4の光学部材30の例では、前記本開示の位相差板10と、当該位相差板に隣接して位置する偏光板20とを含有する。位相差板10と偏光板20との間には、必要に応じて粘着層(接着層)を含有していてもよい(図示せず)。
図4の光学部材30の例では、前記本開示のポジティブC型位相差層1とポジティブA型位相差層2が直接積層されている位相差板10上に、偏光板20が配置されている。偏光板20は、位相差板10におけるポジティブA型位相差層2側に配置されてよい。
図4の光学部材30の例では、本開示の位相差板10として、第一の態様に相当する前記浸透した領域3を有する位相差板10を示しているが、第二の態様の位相差板10においては、前記浸透した領域3を有していなくてよい。
【0235】
本実施形態において偏光板は、特定方向に振動する光のみを通過させる板状ものであり、従来公知の偏光板の中から適宜選択して用いることができる。本実施形態において偏光板は直線偏光板であって良い。
直線偏光板としては、偏光子と、偏光子の少なくとも片面に設けられた偏光子保護層を含有するものが挙げられる。
偏光子としては、吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルム若しくは延伸層、または吸収異方性を有する色素を塗布し硬化させたフィルムが挙げられる。吸収異方性を有する色素としては、例えば二色性色素が挙げられる。二色性色素として、具体的には、ヨウ素や二色性の有機染料が用いられる。
吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムとしては、例えば、沃素又は染料により染色し、延伸してなるポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等を用いることができる。
直線偏光板としては、例えば、特開2021-51287号公報の段落0025~0059を参照して用いることができる。
偏光板の厚みは、例えば2μm以上100μm以下であり、好ましくは10μm以上60μm以下である。
【0236】
また、本実施形態において粘着層(接着層)用の粘着剤又は接着剤としては、従来公知のものの中から適宜選択すればよく、感圧接着剤(粘着剤)、2液硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、熱溶融型接着剤等、いずれの接着形態のものも好適に用いることができる。本実施形態において粘着層または接着層は、透明性及び耐久性が高いことが好ましく、更に本開示の第二の態様においては、位相差板の成分が粘着層又は接着層に浸透し難い粘着剤組成物又は接着剤組成物であることが好ましい。
粘着層又は接着層用の粘着剤又は接着剤としては、透明性、耐候性、耐熱性、成分の浸透し難さ等の点から好ましくは(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする粘着剤組成物、又は、(メタ)アクリレート系接着剤若しくはビニルエーテル系接着剤の紫外線硬化型接着剤であってよい。
粘着層(接着層)の厚みは、その接着力等に応じて決定されるが、例えば1μm~50μmであってよく、好ましくは2μm~45μm、より好ましくは3μm~40μm、さらに好ましくは5μm~35μmである。
【0237】
本実施形態の光学部材は、反射率としてY(SCI)が4.50%以下であることが好ましく、4.30%以下であることがより好ましく、4.20%以下であることが更に好ましい。
本実施形態の光学部材における反射率は、ポジティブC型位相差層に隣接する基材を剥離し、ポジティブC型位相差層表面に光学用粘着剤を用いて波長380nm以上780nm以下の分光反射率の平均が20%のアルミ板と貼り合わせた測定用サンプルを用いて、以下の測定条件にて反射率測定装置により、反射率Y(SCI)を測定するものとする。
・測定方式:反射SCI(測定径φ8mm)
・光源:D65
・観察条件:10°
・測定項目:XYZ表色系
・JIS Z 8722に準拠して、ゼロ校正及び白色校正を実施
【0238】
本実施形態の光学部材には、偏光板の他にも、公知の光学部材が備える他の層を更に有していても良い。当該他の層としては、例えば、前記本実施形態の位相差層とは異なる他の位相差層の他、反射防止層、拡散層、防眩層、帯電防止層、保護フィルム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0239】
本実施形態の光学部材は、例えば、円偏光板として好適に用いることができる。本実施形態の光学部材は、例えば、発光表示装置用の外光反射を抑制するための光学部材として好適に用いることができる。
【0240】
III.光学部材の製造方法
また、本開示は、偏光板を準備する工程と、
前記本開示の位相差板を準備する工程と、
位相差板と偏光板とを積層する工程とを有する、光学部材の製造方法を提供する。
本開示の光学部材の製造方法において、各工程の順序は任意である。
例えば、偏光板を準備する工程を行い、当該偏光板上に、前記本開示の位相差板を形成することにより、本開示の位相差板を準備してもよく、この場合には、位相差板と偏光板とを積層する工程は、位相差板を準備する工程と同時に進行する。
【0241】
1.偏光板を準備する工程
偏光板を準備する工程として、例えば、吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムを偏光子として用いる場合を挙げる。吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムは、通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、および二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、およびホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造することができる。得られた偏光子の片面または両面に偏光子保護層を貼合したもの偏光板として準備することができる。
偏光板としては、例えば、特開2021-51287号公報の段落0025~0059を参照して準備することができる。
【0242】
2.位相差板を準備する工程
前記本開示の位相差板を準備する工程としては、本開示の位相差板を準備できれば、その工程としては特に限定されない。
本開示の位相差板を準備する工程としては、前述の位相差板の製造方法と同様にして行うことができる。
例えば、液晶性部分を側鎖に含む液晶性構成単位を有する側鎖型液晶ポリマーと、光配向性構成単位と熱架橋性基を側鎖に含む熱架橋性構成単位とを有する共重合体と、前記熱架橋性構成単位の熱架橋性基と結合する熱架橋剤とを含有する、ポジティブC型位相差層用組成物を成膜する工程と、
前記成膜された前記組成物を加熱することにより、位相差を有する硬化膜を形成する工程と、
前記位相差を有する硬化膜に、偏光紫外線を照射することにより、液晶配向能が付与されたポジティブC型位相差層を形成する工程と、
前記ポジティブC型位相差層上に、重合性液晶組成物を塗布して前記重合性液晶組成物の塗膜を形成し、当該塗膜を前記重合性液晶組成物の相転移温度まで加熱することにより前記ポジティブC型位相差層によって前記重合性液晶組成物中の液晶分子を配向させる工程と、
前記液晶分子が配向した重合性液晶組成物の塗膜に光照射して硬化することにより、ポジティブA型位相差層を形成する工程と、を有してよい。
【0243】
位相差板を準備する際には、後から剥離可能な基材上に、ポジティブC型位相差層及びポジティブA型位相差層を形成することが好ましい。
剥離可能な基材は、剥離可能なように適宜選択して用いることができる。基材は表面処理が施されていてもよく、離型処理が施されていてもよく、あるいは離型層が形成されていてもよい。
【0244】
3.位相差板と偏光板とを積層する工程
位相差板と偏光板とを積層する工程において、位相差板と偏光板とは、粘着層(接着層)により貼合してよい。或いは、前述のように偏光板上に直接位相差板を形成することにより、位相差板を準備すると同時に、位相差板と偏光板とを積層してもよい。
粘着層(接着層)としては前述と同様のものを用いることができる。
【0245】
位相差板と偏光板の積層の際に、位相差層におけるポジティブA型位相差層の遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角は、好ましくは45°±5°である。
偏光板は、位相差板におけるポジティブA型位相差層側に配置されてよい。
【0246】
当該位相差板と偏光板とを積層する工程においては、低反射化を向上する点から、偏光板側から光照射する工程を有してもよい。
前記位相差板と偏光板とを積層する工程において、低反射化を向上する点から、前記位相差板の前記ポジティブA型位相差層側表面に偏光板を積層し、前記位相差板の前記ポジティブA型位相差層側から光照射する工程を有してもよい。
当該偏光板側から光照射する工程は、粘着層(接着層)として紫外線硬化型接着剤を用いて偏光板を積層する場合には、紫外線硬化型接着剤を硬化させる工程と同時であってもよい。
光照射量は、適宜選択されれば良く、紫外線波長365nmでの積算露光量として、例えば400mJ/cm2以上1000mJ/cm2以下の範囲内であることが好ましい。
【0247】
位相差板と偏光板とを積層する工程において、位相差板と偏光板とを、粘着層(接着層)により貼合する場合には、貼合後に、位相差板の基材を剥離することが好ましい。位相差板の基材を後から剥離することにより、偏光板と、前記本開示の位相差板のうち前記ポジティブC型位相差層及びポジティブA型位相差層のみを備えた光学部材を得ることができる。
【0248】
IV.表示装置
本開示の表示装置は、前記本開示の位相差板、又は当該位相板と偏光板とを含有する光学部材、を備えることを特徴とする。
表示装置としては、例えば、発光表示装置、液晶表示装置等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。表示装置は、タッチセンサを備えたタッチパネルであっても良い。また、表示装置はフレキシブル表示装置であってもよい。
【0249】
本開示の表示装置は、中でも発光表示装置であることが好ましい。
前記本開示の位相差板又は前記本開示の光学部材を備えるため、特に、透明電極層と、発光層と、電極層とをこの順に有する有機発光表示装置等の発光表示装置においては、外光反射を抑制しながら、視野角が向上するという効果を有する。
【0250】
また、本開示の表示装置は、中でもフレキシブル表示装置であることが好ましい。
厚みを薄くすることが可能で、密着性や屈曲耐性が良好な前記本開示の位相差板又は前記本開示の光学部材を備えるため、フレキシブル表示装置において、屈曲耐性が向上するという効果を有する。フレキシブル表示装置としては、フォルダブル表示装置であってもよい。
なお、本開示の表示装置において、位相差板又は光学部材以外の他の構成については、適宜選択した公知の構成とすることができる。
【0251】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例0252】
以下に実施例および比較例を示し、本開示をさらに詳細に説明する。
本明細書において、各種のパラメータは、特に断りのない限り、温度25℃±2℃、相対湿度40%以上65%以下で測定した値とする。また、各測定の開始前に、対象サンプルを上記雰囲気に30分以上晒してから測定及び評価を行うものとする。
【0253】
実施例Iシリーズ:本開示の第一の態様
(合成例1:液晶モノマーI-1の合成)
国際公開第2018/003498号の段落0121~0124を参照して、4’-シアノ-4-{4-[2-(アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾアート}を得た。
【0254】
(合成例2:液晶モノマーI-2の合成)
国際公開第2018/003498号の段落0127~0130を参照して、4-[(4-プロポキシカルボニルフェニルオキシカルボニル)フェニル-4-[6-(アクリロイルオキシ)ヘキシルオキシ]ベンゾアートを得た。
【0255】
非液晶モノマーII-1としてアクリル酸ステアリル(東京化成社製)を用いた。
また、熱架橋性基を有する非液晶モノマーII-2tcとしてメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(共栄社化学社製)を用いた。
【0256】
(合成例3:光配向性モノマーIII-1の合成)
特許第5626492号の合成例3の光配向性モノマー3と同様にして、表2に示される光配向性モノマーIII-1を合成した。
【0257】
(合成例4:光配向性モノマーIII-2の合成)
国際公開第2022/158555号の段落0453の合成例II-9の光配向性モノマーII-1と同様にして、表2に示される光配向性モノマーIII-2を合成した。
【0258】
(合成例5:光配向性モノマーIII-3の合成)
国際公開第2021/167075号の段落0133のモノマーmA-9と同様にして、表2に示される光配向性モノマーIII-3を合成した。
【0259】
(合成例6:光配向性モノマーIII-4の合成)
国際公開第2013/081066号の段落0065の合成例2の化合物(10)と同様にして、表2に示される光配向性モノマーIII-4を合成した。
【0260】
また、熱架橋性モノマーIV-1としてアクリル酸4-ヒドロキシブチル(共栄社化学社製)を用いた。
また、国際公開第2022/158555号の段落0447の合成例II-5の熱架橋性基を有する非液晶モノマーII-8tcと同様にして、表2に示される熱架橋性モノマーIV-2を合成した。
また、第三成分モノマーとして、自己架橋基を有する熱架橋性モノマーIV-3としてN-(メトキシメチル)メタクリルアミド(東京化成工業製)を用いた。
【0261】
(製造例A1~A13:側鎖型液晶ポリマーA1~A3の製造)
前記液晶モノマーI-1とI-2、及び、非液晶モノマーII-1とII-2tcを表1に従って組み合わせ、側鎖型液晶ポリマーを合成した。
側鎖型液晶ポリマーA2の合成例を具体的に説明する。
非液晶モノマーII-1と非液晶モノマーII-2tcとをモル比で50:50として組み合わせ、これら非液晶モノマーの合計と、液晶モノマー1とをモル比で40:60となるように組み合わせて混合し、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を加え、40℃で撹拌し溶解させた。溶解後24℃まで冷却し、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を加え同温にて溶解させた。80℃に加温したDMAcに上記反応溶液を30分かけて滴下し、滴下終了後、80℃で6時間撹拌した。反応終了後室温まで冷却した後、メタノールを撹拌している別の容器に滴下し20分撹拌した。上澄み液を除去後スラリーをろ過し、得られた粗体を再びメタノール中で20分撹拌、上澄み液の除去、ろ過をした。
得られた結晶を乾燥させることにより側鎖型液晶ポリマーA2を収率76.5%で得た。
得られた側鎖型液晶ポリマーについて、質量平均分子量を測定し、構造解析を行った。
質量平均分子量測定は、東ソー(株)製のHLC-8220GPCを用い、溶出溶剤を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN-メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw377400、210500、96000、50400、206500、10850、5460、2930、1300、580(以上、Polymer Laboratories社製 Easi PS-2シリーズ)及びMw1090000(東ソー(株)製)とし、測定カラムをTSK-GEL ALPHA-M×2本(東ソー(株)製)として行った。
また、Py-GC-MS、乃至、MALDI-TOFMSにより、用いた1種、2種又は3種の非液晶モノマー由来の構成単位を含むことを確認した。
【0262】
【0263】
(製造例B1~B3:共重合体B1~B3の製造)
前記光配向性モノマーIII-1、熱架橋性モノマーIV-1~2、及び、第三成分モノマーを表2に従って組み合わせ、共重合体(B)を合成した。
共重合体B1の合成例を具体的に説明する。
光配向性モノマーIII-1を3.08g、熱架橋性モノマーIV-1(アクリル酸4-ヒドロキシブチル)を1.44g、重合触媒としてα,α’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)50mgをジオキサン25mlに溶解し、90℃にて6時間反応させた。反応終了後、再沈殿法により精製することで、共重合体B1を得た。得られた共重合体B1の質量平均分子量は15000であった。
なお、合成した各共重合体の質量平均分子量(以下、Mwと称す)は、東ソー(株)製HLC-8220 GPCを用いて、ポリスチレンを標準物質とし、NMPを溶離液としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて算出した。
【0264】
【0265】
[製造例1~11:ポジティブC型位相差層用組成物(光配向性を有する熱硬化性液晶組成物)1~11の調製]
表3に示す側鎖型液晶ポリマーと光配向性共重合体とを、表3に示す質量比で混合し、下記に示す組成のポジティブC型位相差層用組成物(光配向性を有する熱硬化性液晶組成物)を調製した。
・表3に示す側鎖型液晶ポリマーと光配向性共重合体の組成物:100質量部
・熱架橋剤(ヘキサメトキシメチルメラミン、HMM):5質量部
・p-トルエンスルホン酸1水和物(PTSA):0.5質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME):170質量部
・シクロヘキサノン:400質量部
【0266】
【0267】
[製造例6:ポジティブA型位相差層用組成物1の調製]
特許第6473537号の式(1-1)で表される化合物1と同様にして調製した下記化学式(LC-1)の重合性液晶化合物100質量部、光重合開始剤(2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン:BASF社製、イルガキュア907)4質量部をシクロペンタノン900質量部に溶解させ、ポジティブA型位相差層用組成物1を調製した。
【0268】
【0269】
[実施例1~11:位相差板の製造]
(1)ポジティブC型位相差層:配向層兼位相差層の形成
PET基板(東洋紡(株)製、E5100、厚み38μm)の片面上に、表4に示すポジティブC型位相差層用組成物1~11のいずれかを、硬化後の層厚が0.6μmとなるようにバーコートにより塗布し、90℃のオーブンで1分間、続いて120℃のオーブンで1分間加熱して乾燥、液晶性成分の配向、及び熱硬化を行い、位相差を有する硬化膜を形成した。その後、この硬化膜表面にHg-Xeランプおよびグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線を基板法線から垂直方向に100mJ/cm2照射することで、前記硬化膜に配向層としての機能を更に付与したポジティブC型位相差層(配向層兼位相差層)を基材上に形成した。
(2)ポジティブA型位相差層の形成
ポジティブC型位相差層(配向層兼位相差層)上に、ポジティブA型位相差層用組成物1を、硬化後の層厚が1μmになるようにバーコートにより塗布し、140℃で120秒間乾燥させた後に、Fusion社製のHバルブを用いて紫外線(UV)を照射量400mJ/cm2で照射して、ポジティブA型位相差層を形成し、位相差板を製造した。
【0270】
[比較例1]
特開2022-003361号公報の段落0107~0108を参照して、下記式(30)で表される単量体1と下記式(31)で表される単量体2とを合成し、段落0109に記載されている重合体1と同様にして、単量体1と単量体2をモル比3:7で用いて比較共重合体C1を得た。
【0271】
【0272】
特開2022-003361号公報の段落0113に記載の実施例1と同様にして、ポジティブC層用塗布液1(C1)を調製し、ポジティブC型位相差層を作製した。
続いて、本明細書の実施例1と同様にして、ポジティブA型位相差層用組成物1を用い、ポジティブA型位相差層を形成し、位相差板を製造した。
【0273】
[比較例2]
トリアセチルセルロース樹脂フィルム(TAC)基板(富士フイルム株式会社、TD80UL、厚み80μm)の片面上に、特許第6770634号公報の段落0155に記載の液晶1-1(C2)を塗布し、次いで熟成工程、紫外線照射について同様に行い、光学異方性層1と同様にしてポジティブC型位相差層を形成した。
続いて、本明細書の実施例1と同様にして、ポジティブA型位相差層用組成物1を用い、ポジティブA型位相差層を形成し、位相差板を製造した。
【0274】
[比較例3]
トリアセチルセルロース樹脂フィルム(TAC)基板(富士フイルム株式会社、TD80UL、厚み80μm)の片面上に、国際公開2021/167075号公報の段落0155の実施例2に記載の第1光学異方性層形成用組成物を塗布し、次いで加熱、冷却、紫外線照射、アニーリングを同様に行い、ポジティブC型位相差層を作製した。
続いて、本明細書の実施例1と同様にして、ポジティブA型位相差層用組成物1を用い、ポジティブA型位相差層を形成し、位相差板を製造した。
【0275】
[評価]
得られた位相差板について以下の評価を行った。
(1)位相差層の厚み測定
位相差層の層厚は、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、製品名「S-4800」)を用いて、位相差層の断面を撮影し、その断面の画像においてポジティブC型位相差層およびポジティブA型位相差層の厚みを10箇所測定し、その10箇所の層厚の算術平均値とした。なお、浸透領域は、TOF-SIMSからポジティブA型位相差層に含まれる成分由来のフラグメントと、ポジティブC型位相差層に含まれる成分由来のフラグメントイオンが両方検出される部分として観測され、ポジティブC型位相差層の厚みに含めた。
位相差層の断面写真は、以下のようにして撮影した。まず、1mm×10mmに切り出したサンプルを包埋樹脂によって包埋したブロックを作製し、このブロックから一般的な切片作製方法によって穴等がない均一な、厚み70nm以上100nm以下の切片を切り出した。切片の作製には、ウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ株式会社製、EM UC7)を用いた。そして、この穴等がない均一な切片を測定サンプルとした。その後、走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて、測定サンプルの断面写真を撮影した。この断面写真の撮影の際には、検出器を「TE」、加速電圧を「30kV」、エミッション電流を「10μA」にしてSTEM観察を行った。倍率については、フォーカスを調節しコントラストおよび明るさを各層が見分けられるか観察しながら5000倍~20万倍で適宜調節した。
【0276】
(2)浸透領域の厚み測定
UIvac-PHI社RTIFT V Nano TOF(一次イオン_Bi3++、加速電圧30kV)を用いて、試料表面からガスクラスターイオンビーム(Ar-GCIB)銃(15kV、2.5nA、500×500μm)でエッチングしながら、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)でポジティブA型位相差層由来の重合性液晶化合物の成分由来のフラグメントイオン、光配向成分由来のフラグメントイオンについて、それぞれの層厚方向分布を分析した。前述の位相差層の厚み測定結果を基準とし、重合性液晶化合物の成分由来のフラグメントイオンと光配向成分由来のフラグメントイオンが両方検出される部分の分布から浸透領域の厚みを算出した。例えば実施例1において、(1)位相差板の厚み測定から、ポジティブC型位相差層の厚みが0.6μmであることを確認した。TOF-SIMSより、光配向成分由来のフラグメントイオンが検出されポジティブA型位相差層由来の重合性液晶化合物の成分由来のフラグメントイオンが検出されない部分と、ポジティブA型位相差層由来の重合性液晶化合物の成分由来のフラグメントイオンと光配向成分由来のフラグメントイオンが両方検出される部分の比が88.4:11.6であったことから、浸透領域の厚みを70nmと算出した。
【0277】
(3)浸透領域の面内位相差
位相差板の上面から表面・界面切削試験装置(ダイプラウィンテス社製 SAICAS DN-20型)による斜め方向の切削を行った。切削条件は以下のとおりとした。
切刃:単結晶ダイヤモンド製
刃幅:1mm
切刃のすくい角:10°
切刃の水平速度:10μm/秒
切刃の垂直速度:0.05μm/秒
図3は、本開示の位相差板において、浸透領域とポジティブC型位相差層との界面まで斜め方向に切削したサンプルを作成する際の模式図である。
具体的には、切刃を、位相差板の表面(ポジティブA型位相差層2表面)からフィルムの厚み方向(垂直方向)に、前記すくい角で垂直速度0.05μm/秒で移動させて切削5した。次いで、切刃が浸透領域3とポジティブC型位相差層1との界面まで到達(切削5)した時点で、垂直速度を0μm/分とし、切刃をフィルム面に平行方向(水平方向)にのみ移動させ、切削5した(
図3参照)。
切削したサンプルについて、基板4を剥離し粘着付きガラスに転写して測定用サンプルを作製した。測定用サンプルに対し、微小領域位相差測定システム(アクソメトリクス社製、AxoStep)を用いて、浸透領域3の厚み方向の中心部を測定中心とし、ポジティブA型位相差層が測定領域に含まれない領域を測定し、550nmの波長に基づいてポジティブC型位相差層/浸透領域/粘着付きガラスとなる微小領域における面内位相差Reを測定し、浸透領域の面内位相差とした。
【0278】
(4)浸透領域を除いたポジティブC型位相差層の垂直配向性ΔnC
前記切削したサンプルについて、切刃が浸透領域とポジティブC型位相差層との界面まで到達(切削)した後の基板/ポジティブC型位相差層となる領域に対し、基板4を剥離し、ポジティブC型位相差層を粘着付きガラスに転写して測定用サンプルを作製した。測定用サンプルに対して、位相差測定装置(王子計測機器(株)製、KOBRA-WR)により、波長450nm及び波長550nmにおける面外位相差Rthを測定した。
また、上記切削したサンプルについて、評価(1)と同様にして面外位相差Rthを測定した箇所のポジティブC型位相差層の厚みを測定し、下記式より浸透領域を除いたポジティブC型位相差層の垂直配向性ΔnCを算出した。
ΔnC=浸透領域を除いたポジティブC型位相差層の面外位相差Rth(nm)/浸透領域を除いたポジティブC型位相差層厚み(nm)
【0279】
(5)位相差板の面外位相差Rth及び面内位相差Re
位相差板の基板を剥離して、ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層とを粘着付きガラスに、ポジティブC型位相差層/ポジティブA型位相差層/粘着付きガラスの順になるように転写して測定用サンプルを作製した。測定用サンプルに対して、位相差測定装置(王子計測機器(株)製、KOBRA-WR)により、波長450nm及び波長550nmにおける面外位相差Rth、及び面内位相差Reを測定した。四角形の測定サンプルの外縁から0.5cmの領域を余白として、該余白よりも内側の領域を縦方向及び横方向に5等分した線の交点の16箇所を中心として測定を行い、その平均値を算出した。
なお、本明細書において、波長450nm及び波長550nmにおける面外位相差Rth、及び面内位相差Reは、入射角を0°~40°の10°刻みで測定し、入射角0°および40°の測定結果から、面内位相差Reおよび面外位相差Rthを算出した。測定法を標準、傾斜中心角を進相軸とし、平均屈折率は1.55、層厚1.0μmと設定した際の算出値を用いた。
【0280】
(6)浸透領域を含むポジティブC型位相差層の垂直配向性ΔnAC
評価(5)で測定した、位相差板の面外位相差Rth、及び面内位相差Reから、下記式より浸透領域を含むポジティブC型位相差層の波長450nm及び波長550nmにおける面外位相差Rthを算出し、評価(1)で測定した浸透領域を含むポジティブC型位相差層の層厚を用いてΔnACを算出した。
浸透領域を含むポジティブC型位相差層の面外位相差Rth(nm)=位相差板の面外位相差Rth(nm)-(位相差板の面内位相差Re(nm)/2)
ΔnAC=浸透領域を含むポジティブC型位相差層の面外位相差Rth(nm)/浸透領域を含むポジティブC型位相差層厚み(nm)
なお、前述のように、ポジティブA型位相差層における面外位相差Rth=ポジティブA型位相差層における面内位相差Re/2と見積もることができ、ポジティブC型位相差層の面内位相差はポジティブA型位相差層の面内位相差と比較し非常に小さいことから、位相差板の面内位相差はポジティブA型位相差層における面内位相差Reとみなすことができる。
【0281】
(7)密着性
位相差板の基板を剥離して、ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層とを粘着付きガラスに、ポジティブC型位相差層/ポジティブA型位相差層/粘着付きガラスの順になるように転写して測定用サンプルを作製した。測定用サンプルに対して、JIS K5400-8.5(JIS D0202)に準拠した方法で付着性-碁盤目試験を実施した。カッターナイフを使用して、ポジティブC型位相差層側からポジティブA型位相差層まで達する切込みを11本入れた後、90°向きを変えて11本切込みを入れた。カットした塗膜面にセロテープ(登録商標)(24mm×35m、ニチバン製、CT405AP-24)を貼り付け、消しゴムでこすって塗膜に前記テープを付着させ、1~2分後に前記テープの端を持って塗膜面に直角に保ち、瞬間的にひきはがした。剥離した後の、残存したポジティブC型位相差層のカット部数の比をもとめ、下記の基準にて評価した。
(評価基準)
A:90/100~100/100
B:50/100~89/100
C:0/100~49/100
【0282】
(8)視野角色相変化
シミュレーションにより、
図5に示した有機EL表示パネルに倣って積層体をモデル化し、ここに含まれる位相差板10のポジティブA型位相差層及びポジティブC型位相差層の特性を評価(5)及び評価(6)で得られた値に変更して、60°視野角における色相変化について評価した。
図5は、位相差板10を含む有機EL表示パネル50の層構成を示す図である。
この有機EL表示パネル50において、光学部材30は、有機EL表示素子40の出射面側に配置される外光反射防止フィルムである。この光学部材30は、直線偏光させるための偏光板20、及び位相差板を含み、いわゆる円偏光板として外光反射防止機能を有するものとなる。
有機EL表示パネル50は、有機EL表示素子40で自発光した映像光を観察者に提供する装置であり、有機EL表示素子40の出射面に光学部材30が配置される。この光学部材30は、外光反射防止のための円偏光板として機能し、位相差板10、直線偏光子としての偏光板20、表面材である基材(保護フィルム)21を備える。なお、このとき、位相差板10のポジティブAプレート2がλ/4位相差層として機能し、これとポジティブCプレート1が直接積層された態様となる。
【0283】
有機EL表示パネルのシミュレーションはLCD-MASTER(シンテック(株))を用い、光源(パネルに入射する外光)をD65光源として行った。モデルの層構成は、偏光子の吸収軸とポジティブA型位相差層の遅相軸とがなす角度を45°とした。また、ポジティブC型位相差層のポジティブA型位相差層が設けられている側と反対側に、反射板(100%反射)を設けた。
図6に模式図を示したように、評価対象である積層体(光学部材)の面の中心から延びる法線nに対してθ=60°傾斜した視野角における色を測定した。
図6の上方の図は積層体を平面視した図、
図6の下方は積層体を側面から見た図である。
図6からわかるように、θ=60°の視野角はOを中心に円を描くように存在するので、Tを起点として矢印Kに沿ってOを中心とした円を描くように一周に亘って各位置における色相を得た。
その結果として
図7(a)、
図7(b)に例を示すように、一周した際に色の変化が生じることからこれをx-y表色系のxy座標に表した。これにより、60°視野角における方位(周方向位置)と色の変化との関係を評価することができる。色相の変化は少ない方がよく、60°視野角で一周する際に様々な色を跨がないことが好ましい。従って、
図7(a)にE1で示したような円形に近いものより、
図7(b)にE2で示した細い形状のものが色相の変化が少なく好ましいといえる。
すなわち、x-y表色系のxy座標に表したときに、60°視野角で一周したときに、上述のように、色相の変化が少ないとともに、白色(x=0.33、y=0.33)からの距離の総和が小さいことが好ましく、また、色度図の色の跨ぎがないことが好ましい。
各例について、上記60°視野角で一周(360°)を5°刻みで、a
*及びb
*を得る。そしてある角度でのa
*、b
*をそれぞれa
*
2、b
*
2とし、その1つ前(ある角度-5°)における角度でのa
*、b
*をa
*
1、b
*
1とする。そして、次式により、5°分の色変動値を得る。
{(a
*
2-a
*
1)
2+(b
*
2-b
*
1)
2}
0.5
この5°分の色変動値を、0°~360°で5°刻みで得て、全ての和をとることで色変動総和を得て評価した。この色変動総和は小さい方が色の変動が少ないことを意味する。
【0284】
【0285】
[結果のまとめ]
実施例1~11の位相差板においては、ポジティブC型位相差層に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域を含み、当該浸透した領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向していることから、密着性が良好で、浸透領域を含むポジティブC型位相差層のΔnがより小さくなり、垂直配向性が向上することが示された。また、実施例1~11の位相差板は、前記浸透した領域において、ポジティブA型位相差層中に含まれる逆分散性を示す液晶性成分が垂直配向することにより、浸透領域を含むポジティブC型位相差層における面外位相差Rthの波長分散特性がより逆分散性に近付いたことから、位相差板全体としてより広い波長域に亘って光学的補償機能を発揮することができ、60°視野角で一周する際に色変動が小さいことも示された。
それに対して、特許文献2及び5に対応した比較例1の位相差板では、ポジティブC型位相差層に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域が存在したことからポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の密着性は良好であったが、当該浸透した領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向していなかった。比較例1の位相差板は、垂直配向性を有する液晶性成分の末端に感光性基として光配向性基を結合させた構造を有する第一の液晶性材料を用いて形成されているので、浸透層を含むポジティブC型位相差層の垂直配向性に劣るものであった。また、比較例1の位相差板は、60°視野角で一周する際に色変動が大きいことも示された。
また、特許文献3に対応した比較例2の位相差板では、ポジティブC型位相差層が重合性液晶化合物を含む光硬化性樹脂組成物の硬化物であり、ポジティブC型位相差層に前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域は形成されなかった。その結果、比較例2の位相差板は、ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の密着性が不十分であった。さらに、比較例2の位相差板は、ポジティブC型位相差層を構成する液晶性成分の配向性が低いことから、垂直配向性が不十分であった。
また、特許文献4に対応した比較例3の位相差板では、ポジティブC型位相差層に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域が存在したことからポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の密着性は良好であったが、当該浸透した領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向していなかった。また、比較例3の位相差板は、浸透層を含むポジティブC型位相差層の垂直配向性に劣るものであり、60°視野角で一周する際に色変動も実施例に比べて大きいことが示された。
【0286】
実施例IIシリーズ:本開示の第二の態様
[製造例7:ポジティブA型位相差層用組成物2の調製]
特許第6762336号の段落0121~0126記載の塗工液作成と同様にして、特許第5899607号の段落0462~0475記載の化合物(A11-1)と同様にして調製した下記化学式(LC-2)の重合性液晶化合物100質量部、レベリング剤(商品名:BYK-361N、BYK-Chemie社製)0.01質量部、光重合開始剤1(商品名:イルガキュアOXE-03、BASF社製)7.5質量部、光重合開始剤2(商品名:オムニラッド369、IGM Resins社製)3質量部をN-メチル-2-ピロリジノンに固形分が9%になるように添加し、ポジティブA型位相差層用組成物2を調製した。
【0287】
【0288】
[実施例12~27:位相差板の製造]
(1)ポジティブC型位相差層:配向層兼位相差層の形成
PET基板(東洋紡(株)製、E5100、厚み38μm)の片面上に、表5に示すように、表3に示すポジティブC型位相差層用組成物1~8,10~11のいずれかを、硬化後の層厚が0.6μmとなるようにバーコートにより塗布し、90℃のオーブンで1分間、続いて120℃のオーブンで1分間加熱して乾燥、液晶性成分の配向、及び熱硬化を行い、位相差を有する硬化膜を形成した。その後、この硬化膜表面にHg-Xeランプおよびグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線を基板法線から垂直方向に100mJ/cm2照射することで、前記硬化膜に配向層としての機能を更に付与したポジティブC型位相差層(配向層兼位相差層)を基材上に形成した。
(2)ポジティブA型位相差層の形成
ポジティブC型位相差層(配向層兼位相差層)上に、ポジティブA型位相差層用組成物2を、硬化後の層厚が1.2μmになるようにバーコートにより塗布し、120℃で60秒間乾燥させた後に、80℃に加温しながらFusion社製のHバルブを用いて紫外線(UV)を照射量400mJ/cm2で照射して、ポジティブA型位相差層を形成し、位相差板を製造した。
(3)UV照射
実施例13,14,16,17,19,20においては、表5及び後述する反射率測定のサンプル作製に記載したように、更にポジティブA型位相差層側又はポジティブC型位相差層側から所定の紫外線(UV)を照射した。
【0289】
[比較例4]
特開2022-003361号公報の段落0107~0108を参照して、下記式(30)で表される単量体1と下記式(31)で表される単量体2とを合成し、段落0109に記載されている重合体1と同様にして、単量体1と単量体2をモル比3:7で用いて比較共重合体C1を得た。
【0290】
【0291】
特開2022-003361号公報の段落0113に記載の実施例1と同様にして、ポジティブC層用塗布液1(C1)を調製し、ポジティブC型位相差層を作製した。
続いて、本明細書の実施例12と同様にして、ポジティブA型位相差層用組成物2を用い、ポジティブA型位相差層を形成し、位相差板を製造した。
【0292】
[比較例5]
国際公開2022/158555号公報の段落0425~0437記載の実施例1と同様にして、位相差板を作成した。
【0293】
[比較例6]
特許第6972663号の段落0174に記載の実施例1の液晶組成物を用いた段落0177記載の位相差フィルムの作製と同様にして、ポジティブC型位相差層を作製した。続いて、特許第6762336号の段落0126記載の積層体(1)の作製と同様にして、ポジティブA型位相差層を得た。ポジティブC型位相差層の基材と反対の面と、ポジティブA型位相差層の基材と反対の面とを光学用粘着剤(PSA)を用いて貼り合わせ、ポジティブA型位相差層の基材を剥離し、位相差板を作成した。
【0294】
[評価]
得られた位相差板について以下の評価を行った。
(1)反射率測定
(1-1)サンプル作成
偏光板を特許第4390117号の段落0082~0084と同様にして準備した。
光学用粘着剤としては全て、厚み25μmの光学用粘着剤(商品名:パナクリーンPD-S1、25μm、パナック社製、アクリル系粘着剤)を用いた。
アルミ板としては全て、特開2021-63984号の段落0079と同様にして、波長380nm以上780nm以下の分光反射率の平均が20%のアルミ板を作製し用いた。
(i)UV照射なしのサンプルの作成
偏光板の吸収軸に対し、ポジティブA型位相差層の遅相軸方向が45°になるように光学用粘着剤を用いて、ポジティブA型位相差層表面に偏光板を貼り合わせた。続いて、ポジティブC型位相差層に隣接する基材を剥離し、ポジティブC型位相差層表面に光学用粘着剤を用いてアルミ板と貼り合わせ、測定用サンプルを作製した。
(ii)ポジティブA型位相差層面からUV照射したサンプルの作成
ポジティブA型位相差層表面に光学用粘着剤を貼り合わせた。続いて、ポジティブC型位相差層に隣接する基材を剥離し、ポジティブC型位相差層表面に光学用粘着剤を貼り合わせた。ポジティブA型位相差層側の光学用粘着剤の保護フィルムを剥離後、ポジティブA型位相差層側からFusion社製のHバルブを用いて紫外線(UV)を照射量500mJ/cm2で照射した。その後、偏光板の吸収軸に対し、ポジティブA型位相差層の遅相軸方向が45°になるように、ポジティブA型位相差層側光学用粘着剤表面に偏光板を貼り合わせた。続いて、ポジティブC型位相差層側の光学用粘着剤の保護フィルムを剥離後、アルミ板と貼り合わせ、測定用サンプルを作製した。
(iii)ポジティブC型位相差層面からUV照射したサンプルの作成
ポジティブA型位相差層表面に光学用粘着剤を貼り合わせた。続いて、ポジティブC型位相差層に隣接する基材を剥離し、ポジティブC型位相差層表面に光学用粘着剤を貼り合わせた。ポジティブC型位相差層側の光学用粘着剤の保護フィルムを剥離後、ポジティブC型位相差層側からFusion社製のHバルブを用いて紫外線(UV)を照射量500mJ/cm2で照射後にアルミ板を貼り合わせた。続いて、ポジティブA型位相差層側の光学用粘着剤の保護フィルムを剥離後、偏光板の吸収軸に対し、ポジティブA型位相差層の遅相軸方向が45°になるように、ポジティブA型位相差層側光学用粘着剤表面に偏光板と貼り合わせ、測定用サンプルを作製した。
【0295】
(1-2)反射率測定
反射率測定装置(コニカミノルタ製、CM-25d)を用いて、下記条件に設定し、測定サンプルの中央部を測定した。
・測定方式:反射SCI/SCE(測定径φ8mm)
・光源:D65
・観察条件:10°
・測定項目:XYZ表色系
JIS Z 8722に準拠して、ゼロ校正及び白色校正を実施し、反射率Yを測定した。
【0296】
(2)断面の走査電子顕微鏡(SEM)-エネルギー分散型X線分光(EDX)分析
(2-1)サンプル作成
反射率を測定したサンプルから偏光板およびアルミ板を剥離し、光学用粘着剤の各表面にトリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム社製、ZRD-60)を貼り合わせ、トリアセチルセルロースフィルム/光学用粘着剤/ポジティブC型位相差層/ポジティブA型位相差層/光学用粘着剤/トリアセチルセルロースフィルムがこの順で積層した積層サンプルを作製した。当該積層サンプルの中央部を短冊状(2mm×6mm)に切り出し、切り出したサンプルを熱硬化性樹脂にて包埋した後に、ウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ株式会社、EM UC7)のクライオ切削モードにより、サンプルの短辺側を切削して、平滑な断面を切り出した超薄切片(厚み80nm)を作製した。
【0297】
(2-2)SEM-EDX測定
上記のように作製した断面を切り出した超薄切片について、SEM-EDX装置(SEM:株式会社日立ハイテクノロジーズ製、SU8000、EDX:オックスフォード社製、X-MaxN 80)を用いて、下記条件で断面の中央部において層厚み方向にラインスキャンを行い、EDX測定を行った。
(設定)
モード:ラインスキャン
加速電圧:7kV
エミッション電流:10μA
プローブ電流:High
焦点範囲:Full
コンデンサレンズ1:2.0
コンデンサレンズ2:焦点深度-1.0
検出器とサンプル間距離:15mm
(収集データ)
スキャン回数:1
ピクセルデュアルタイム(ms):200
ポイント数:500
スキャンのライブタイム(s):100
【0298】
各層の界面は断面のSEM写真から明暗のコントラストで判断した。界面が幅をもって観測される場合、前記ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の界面は、界面領域のうち最もポジティブA型位相差層側の境界とした。
前記ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の界面から、層厚み方向にポジティブA型位相差層側300nmの領域において検出される窒素元素の平均値(AN300)、および、前記ポジティブC型位相差層領域において検出される窒素元素の平均値(CN)は、EDX装置から出力される値のうち、該領域内に含まれる値のみを用い、その平均値から算出した。
【0299】
また、実施例12~27及び比較例4~5についても、第一の態様の実施例と同様にして、前記ポジティブC型位相差層に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域を含むか、当該浸透した領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向しているかを確認した。当該評価結果を表6に示す。
比較例6は前記ポジティブC型位相差層と前記ポジティブA型位相差層との間に粘着剤層が存在し、前記浸透した領域は存在しないため、前記浸透領域を含むポジティブC型位相差層の垂直配向性ΔnAC及びRthAC450/RthAC550と同様にしてΔnACとRthAC450/RthAC550を求めたが、浸透領域を含まないため、浸透領域を除いたポジティブC型位相差層のΔnC及びRthC450/RthC550として、表6に記載した。
また、実施例12~27の位相差板はいずれも、第一の態様の密着性評価において「A」を示した。
【0300】
【0301】
【0302】
[結果のまとめ]
実施例12~27の位相差板においては、ポジティブC型位相差層と、前記ポジティブC型位相差層に直接隣接して位置するポジティブA型位相差層との積層体を含有する位相差板において、前記積層体の断面のSEM-EDX分析における、前記ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の界面から層厚み方向にポジティブA型位相差層側300nmの領域で検出される窒素元素の平均値と、前記ポジティブC型位相差層領域で検出される窒素元素の平均値とがそれぞれ所定値以上であることにより、反射率が低減することが示された。
また、ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層との積層体を形成後に、光照射することによっても、前記積層体の断面のSEM-EDX分析における、前記ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の界面から層厚み方向にポジティブA型位相差層側300nmの領域で検出される窒素元素の平均値と、前記ポジティブC型位相差層領域で検出される窒素元素の平均値とを調整することが可能であり、前記ポジティブC型位相差層領域において検出される窒素元素の平均値(CN)と、前記ポジティブA型位相差層側300nmの領域において検出される窒素元素の平均値(AN300)との差(CN-AN300)が、6.0cps以上であると、反射率をより低減しやすいことが示された。また、前記ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の界面から、層厚み方向にポジティブC型位相差層側300nmの領域において検出される窒素元素の平均値(CAN300)よりも、前記ポジティブC型位相差層のポジティブA型位相差層側とは反対側の界面から層厚み方向にポジティブC型位相差層側300nmの領域において検出される窒素元素の平均値(CPN300)が大きい方が、反射率をより低減しやすいことが示された。
実施例12~27の位相差板においては、いずれも、ポジティブC型位相差層に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域を含み、当該浸透した領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向していることから、密着性が良好で、浸透領域を含むポジティブC型位相差層のΔnがより小さくなり、垂直配向性が向上することも示された。
それに対して、特許文献5に対応した比較例4の位相差板では、前記積層体の断面のSEM-EDX分析における、前記ポジティブC型位相差層領域で検出される窒素元素の平均値が所定値以上を満たさず、反射率も高いことが示された。特許文献5に対応した比較例4の位相差板では、ポジティブC型位相差層に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域が存在したものの、当該浸透した領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向しておらず、垂直配向性にも劣るものであった。
また、特許文献6に対応した比較例5の位相差板では、前記積層体の断面のSEM-EDX分析における、前記ポジティブC型位相差層とポジティブA型位相差層の界面から層厚み方向にポジティブA型位相差層側300nmの領域で検出される窒素元素の平均値が所定値以上を満たさず、反射率も高いことが示された。特許文献6に対応した比較例5の位相差板では、ポジティブC型位相差層に、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が浸透した領域が存在したものの、当該浸透した領域において、前記ポジティブA型位相差層中に含まれる液晶性成分が垂直配向していなかった。特許文献6に対応した比較例5の位相差板では、実施例の位相差板に比べて垂直配向性にも劣るものであった。
比較例6の位相差板は、前記ポジティブC型位相差層と前記ポジティブA型位相差層とを粘着剤を介して積層した積層体であるため、反射率が高くなることが示された。