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特開2024-92936柑橘風味飲料および柑橘風味飲料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092936
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】柑橘風味飲料および柑橘風味飲料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/04 20190101AFI20240701BHJP
   C12G 3/06 20060101ALI20240701BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240701BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240701BHJP
   A23L 2/54 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C12G3/04
C12G3/06
A23L2/00 B
A23L2/52 101
A23L2/54
A23L2/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023135275
(22)【出願日】2023-08-23
(62)【分割の表示】P 2022208122の分割
【原出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】山下 雄大
【テーマコード(参考)】
4B115
4B117
【Fターム(参考)】
4B115LG02
4B115LH03
4B115LH11
4B115LP02
4B115MA03
4B117LC02
4B117LC14
4B117LE10
4B117LG02
4B117LG05
4B117LK04
4B117LK06
4B117LK08
4B117LK12
4B117LK30
4B117LL01
(57)【要約】
【課題】ドライでシャープな飲用感を向上できる柑橘風味飲料に関する技術を提供する。
【解決手段】本発明の柑橘風味飲料は、ペリルアルデヒドを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペリルアルデヒドを含む、柑橘風味飲料。
【請求項2】
さらにp-サイメンを含む、請求項1に記載の柑橘風味飲料。
【請求項3】
前記ペリルアルデヒドの含有量(ppb)に対する前記p-サイメンの含有量(ppb)比(p-サイメン/ペリルアルデヒド)は、0.001~1000である、請求項2に記載の柑橘風味飲料。
【請求項4】
前記ペリルアルデヒドの含有量が1ppb~200ppbである、請求項1または2に記載の柑橘風味飲料。
【請求項5】
前記p-サイメンの含有量が1ppb~500ppbである、請求項2または3に記載の柑橘風味飲料。
【請求項6】
柑橘果汁を含有する、請求項1または2に記載の柑橘風味飲料。
【請求項7】
柑橘フレーバーを含有する、請求項1または2に記載の柑橘風味飲料。
【請求項8】
レモン風味飲料である、請求項1または2に記載の柑橘風味飲料。
【請求項9】
アルコール濃度が0.4体積/体積%以上である、請求項1または2に記載の柑橘風味飲料。
【請求項10】
炭酸ガスを含有する、請求項1または2に記載の柑橘風味飲料。
【請求項11】
エキス分が0.2~10質量/体積%である、請求項1または2に記載の柑橘風味飲料。
【請求項12】
クエン酸酸度が0.20~0.90g/100mlである、請求項1または2に記載の柑橘風味飲料。
【請求項13】
容器詰め飲料である、請求項1または2に記載の柑橘風味飲料。
【請求項14】
ペリルアルデヒドを添加して飲料を調製する工程を含む、柑橘風味飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柑橘風味飲料および柑橘風味飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
柑橘風味飲料は、果実(フルーツ)のフレッシュ感、コク感、複雑味を再現し、飲用した際に、果実風味を想起させる飲料として、需要者に広く親しまれている。
通常、このような柑橘風味飲料は、果汁や果実からの抽出エキス、または果実の香味を再現した香料成分等のいずれか1種以上を用い、さらには適量の甘味料や酸味料等を配合することによって製造されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、無果汁または低果汁のアルコール飲料において、良好な柑橘香と、強いコク感及び複雑味とを得るために、リンゴ酸とリモネンを所定の割合で用いることが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、紫蘇の青臭さ、土臭さ、油臭さを低減しつつ、紫蘇の芳香を高めるために、ペリルアルデヒド、シソオールまたはペリルアルコールの少なくとも一つを含有するアルコール飲料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-176107号公報
【特許文献2】特開2020-150835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、特許文献1に開示される技術とは異なる観点から柑橘風味飲料の香味を向上させるべく検討し、柑橘果汁を飲料した際に感じられるようなドライでシャープな飲用感を向上できる飲料の開発に着目した。また、特許文献2には、紫蘇風味飲料に着目したものであり、柑橘風味飲料におけるペリルアルデヒドの香味に着目したものではなく、ドライでシャープな飲用感について検討したものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、柑橘果汁を飲料した際に感じられるようなドライでシャープな飲用感を向上すべく検討を行ったところ、ペリルアルデヒドを用いることが有効であることを見出し、本発明を完成させた。
本発明によれば、以下の柑橘風味飲料および柑橘風味飲料の製造方法が提供される。
【0008】
[1] ペリルアルデヒドを含む、柑橘風味飲料。
[2] さらにp-サイメンを含む、[1]に記載の柑橘風味飲料。
[3] 前記ペリルアルデヒドの含有量(ppb)に対する前記p-サイメンの含有量(ppb)比(p-サイメン/ペリルアルデヒド)は、0.001~1000である、[2]に記載の柑橘風味飲料。
[4] 前記ペリルアルデヒドの含有量が1ppb~200ppbである、[1]乃至[3]いずれか一つに記載の柑橘風味飲料。
[5] 前記p-サイメンの含有量が1ppb~500ppbである、[2]または[3]に記載の柑橘風味飲料。
[6] 柑橘果汁を含有する、[1]乃至[5]いずれか一つに記載の柑橘風味飲料。
[7] 柑橘フレーバーを含有する、[1]乃至[6]いずれか一つに記載の柑橘風味飲料。
[8] レモン風味飲料である、[1]乃至[7]いずれか一つに記載の柑橘風味飲料。
[9]アルコール濃度が0.4体積/体積%以上である、[1]乃至[8]いずれか一つに記載の柑橘風味飲料。
[10] 炭酸ガスを含有する、[1]乃至[9]いずれか一つに記載の柑橘風味飲料。
[11] エキス分が0.2~10質量/体積%である、[1]乃至[10]いずれか一つに記載の柑橘風味飲料。
[12] クエン酸酸度が0.20~0.90g/100mlである、[1]乃至[11]いずれか一つに記載の柑橘風味飲料。
[13] 容器詰め飲料である、[1]乃至[12]いずれか一つに記載の柑橘風味飲料。
[14] ペリルアルデヒドを添加して飲料を調製する工程を含む、柑橘風味飲料の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ドライでシャープな飲用感を向上できる柑橘風味飲料に関する技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。
【0011】
本実施形態において「ドライでシャープな飲用感」とは、飲用した際に、削った香酸柑橘の果皮を想起するような、グリーンでシャープに鼻抜けする香りと、それに伴った甘さを感じさせない飲用感が得られることを意味する。
【0012】
<柑橘風味飲料>
本実施形態の柑橘風味飲料(以下、単に「飲料」とも称して説明する)は、ペリルアルデヒドを含有する。これにより、ドライでシャープな飲用感を向上できる。すなわち、本実施形態の飲料においては、柑橘果汁を含まなくても、または柑橘果汁が低濃度であっても、ペリルアルデヒドを含まない飲料よりも、ペリルアルデヒドを含むことにより、ドライでシャープな飲用感が得られる。
かかるメカニズムの詳細は不明だが、次のように推測される。ペリルアルデヒドは濃度によっては紫蘇様の芳香を呈するが、柑橘風味が損なわれないような低濃度で飲料として飲用された際、鼻先で柑橘様のグリーンでシャープな香りが感じられつつも、口の中では甘さを感じさせないことにより、ドライでシャープな飲用感として感じられると推測される。
【0013】
本実施形態において、柑橘とは、ミカン科ミカン亜科に属する植物の果実を意味する。具体的には、ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジ、ブラッドオレンジなどのオレンジ類、うんしゅうみかん、マンダリンオレンジ、ぽんかん、紀州みかん、アンコール、ダンゼリン、コウジ、シークワーサー、タチバナ、不知火などのみかん類、ナツダイダイ、はっさく、ヒュウガナツ、サンボウカン、河内晩柑、キヌカワ、ナルトなどの雑柑類、タンカン、いよかん、マーコット、清見、オーランド、ミネオラ、セミノール等のタンゴール・タンゼロ類、メキシカンライム、タヒチライム等のライム類、リスボンレモン、ユーレカレモン、ディアマンテ、エトローグ等のレモン類、バンペイユ、土佐ブンタン等のブンタン、ダンカン、マーシュ、トムソン、ルビーレッド等のグレープフルーツ類、ゆず、カボス、スダチ、ハナユ、キズ等のユズ類、キンカン、カラタチ等が挙げられる。
なかでも、本実施形態の飲料は、オレンジ類および/またはレモン類の風味を呈する飲料として好適であり、レモン風味であることがより好適である。これによるサワーなレモン感がより顕著に得られる。
【0014】
本実施形態の飲料の柑橘風味は、後述の柑橘フレーバー、柑橘果汁等を用いることによって得られる。
【0015】
以下、本実施形態の飲料に含まれる成分について説明する。
【0016】
[ペリルアルデヒド]
ペリルアルデヒドは、ペリラアルデヒド、4-(1-メチルエテニル)シクロヘキサ-1-エン-1-カルボキシアルデヒドとも称される香気成分である。ペリルアルデヒドは、紫蘇に含まれることで知られる。
【0017】
本実施形態の飲料は、ペリルアルデヒドの含有量が0.1ppb~200ppbである。これにより、ドライでシャープな飲用感を向上できる。
また、ペリルアルデヒドの含有量の下限値は、さらに美味しさを向上する点からは、好ましくは0.5ppb以上であり、より好ましくは2ppb以上であり、さらに好ましくは5ppb以上である。
一方、ペリルアルデヒドの含有量の上限値は、好ましくは100ppb以下であり、より好ましくは80ppb以下である。ペリルアルデヒドの含有量を上記上限値以下とすることにより、ドライでシャープな飲用感を保持しつつ、サワーな柑橘感が得られ、美味しさも得られる。
【0018】
[p-サイメン]
本実施形態の飲料は、さらにp-サイメンを含むことが好ましい。
p-サイメンは、p-シメンとも称され、シトラールの劣化生成物の一つとして知られる。ペリルアルデヒドとp-サイメンを併用することで、ドライでシャープな飲用感にくわえ、サワーな柑橘感も向上しやすくなる。
【0019】
本実施形態の飲料は、p-サイメンの含有量が1ppb~500ppbであることが好ましい。
また、p-サイメンの含有量の下限値は、好ましくは2ppb以上であり、より好ましくは10ppb以上である。p-サイメンの含有量を上記下限値以上とすることにより、ドライでシャープな飲用感およびサワーな柑橘感を向上しつつ、美味しさも付与できる。
一方、p-サイメンの含有量の上限値は、好ましくは400ppb以下である。p-サイメンの含有量を上記上限値以下とすることにより、ドライでシャープな飲用感、サワーな柑橘感、および美味しさをバランスよく得られる。
【0020】
本実施形態において、ペリルアルデヒドの含有量(ppb)に対するp-サイメンの含有量(ppb)比(p-サイメン/ペリルアルデヒド)は、0.001~1000であることが好ましく、0.005~800であることがより好ましく、0.01~500であることがさらに好ましい。さらに、ドライでシャープな飲用感を得つつ、サワーな柑橘感を向上する点から、0.05~200であることがことさら一層好ましい。
【0021】
また本実施形態において、ペリルアルデヒドの含有量(ppb)と、p-サイメンの含有量(ppb)の関係は、好ましくは以下の通りである。
(i)ペリルアルデヒドの含有量が1ppb以上10ppb未満の場合、p-サイメンの含有量(ppb)は1~50ppbであることが好ましく、
(ii)ペリルアルデヒドの含有量が10ppb以上200ppb以下の場合、p-サイメンの含有量(ppb)は1~500ppbであることが好ましい。
【0022】
飲料中の香気成分の濃度は、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて行われる。例えば、以下のような条件にてp-サイメンの濃度を測定することができる。
【0023】
ポリマー樹脂に吸着させた目的成分をジクロロメタンで溶出後に濃縮しGC/MSで分離、定量する。
・装置 GC-MS
・カラム DB-WAX(60m×0.25mm;0.25μm)
・キャリアガス流量:He 1.2ml/分
・温度条件:40℃(1分)~5℃/分→210℃(5分)
・インジェクション:250℃、1.0μl(スプリット比30:1)
・検出:MS SIM
・インターフェース温度:280℃
・p-サイメン(T.lon 134(Q.lon 119)
・検量線範囲:以下の表Aに示す。
【0024】
【表1】
【0025】
[その他成分]
本実施形態の飲料は、柑橘風味および本発明の効果が得られる限りにおいて、上記以外の種々の成分を含んでもよい。例えば、果汁、上記以外の香料、甘味料、酸味料、pH調整剤、各種栄養成分、着色料、希釈剤、酸化防止剤、および増粘安定剤等を含んでもよい。
【0026】
(果汁)
本実施形態の飲料は、柑橘果汁を含んでもよい。
柑橘果汁を含む場合、飲料全量に対し、柑橘果汁の含有量(ストレート果汁換算)は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下であり、8.0質量%以下、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、1.0質量%以下の順により好ましい。また、本実施形態の飲料は、無果汁(果汁の含有量0.0%)であってもよい。これにより、低果汁または無果汁であるにもかかわらず複雑味のある果汁感を向上できる。
また柑橘果汁を含む場合、レモン果汁を含むことが好ましい。これによりサワーなレモン感がより顕著に得られる。
【0027】
さらに、本実施形態の飲料は、柑橘風味を損なわない範囲において、柑橘果汁以外の果汁を含んでもよい。柑橘果汁以外の果汁としては、例えば、トロピカルフルーツ果汁、ブドウ果汁、リンゴ果汁、モモ果汁、およびイチゴ果汁等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0028】
なお、果汁の含有量とは、果実から果汁を搾汁して得られ、濃縮等の処理を行っていない果汁の搾汁(ストレート果汁)のBrix値または酸度を100%としたときの相対濃度である。果汁の含有量をBrix値または酸度のいずれに基づいて算出するかはJAS規格に基づき果汁の種類ごとに定められている。また、果汁の含有量をJAS規格のBrix値に基づいて換算する場合、果汁に加えられた糖類、はちみつ等のBrix値は除いて算出される。
【0029】
果汁とは、果実を破砕して搾汁したり、あるいは裏ごししたりするなどして得られる液体成分をいう。また、果汁には、当該液体成分を濃縮したものや、これらの希釈還元物も含まれてもよく、パルプ分を含むもの、または、ろ過や遠心分離等の処理によりパルプ分を除去したものあってもよい。
また、果汁としては、ストレート果汁、濃縮果汁、濃縮還元果汁などを用いてもよい。
【0030】
本実施形態に係る果汁の調製に用いることのできる果実については、その品種、産地、熟度、大きさなどは特に限定されず、適宜設定することができる。
【0031】
また、果汁として市販のジュースや濃縮ジュース、ペーストなどを用いて、本実施形態の飲料を調製してもよい。具体的には、JAS規格(果実飲料の日本農林規格)で指定されたジュースや濃縮ジュースを挙げることができ、例えばこれらのうち1種または2種以上を本実施形態の飲料調製のために用いることができる。
【0032】
(香料)
香料としては、天然香料および合成香料が挙げられる。具体的には、果実フレーバーを含むことが好ましく、なかでも柑橘フレーバーを含むことがより好ましく、レモンフレーバーを用いることがさらに好ましい。
【0033】
(甘味料)
甘味料としては、公知のものを使用することができ、たとえば、ショ糖(砂糖)、ブドウ糖、グラニュー糖、果糖、乳糖、麦芽糖、果糖ブドウ糖液糖等の糖類、糖アルコール、ならびに、タウマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、サッカリンナトリウム、およびステビア等の高甘味度甘味料などが挙げられる。甘味料は1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0034】
(酸味料)
酸味料としては、例えば、クエン酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、フィチン酸、酢酸、リン酸又はそれらの塩類等が挙げられる。なかでも、果実感を得る観点から、無水クエン酸およびその塩が好ましい。
【0035】
以下、本実施形態の飲料の各種特性について説明する。
【0036】
[甘味度]
本実施形態の飲料は、甘味度が5.0以下であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましい。一方、甘味度は0であってもよい。
これにより、良好な柑橘風味が得られやすくなる。
【0037】
甘味度は、例えば、上述の甘味料、果汁、その他の各種成分などにより調整することができる。
【0038】
なお、甘味度は、ショ糖と比較した時の各甘味料の甘味の強さを示すパラメータであり、例えば「甘味料の総覧」(精糖工業会1990年5月発行)、「高甘味度甘味料スクラロースのすべて」(株式会社光琳2003年5月発行)、「飲料用語事典」(株式会社ビバリッジジャパン平成11年6月25日発行)等に記載されている値を採用することができる。なお、記載された甘味度の値に幅がある場合には、その中央値を採用する。例えば、代表的な甘味料の甘味度は、ショ糖1、ブドウ糖0.65、果糖1.5、スクラロース600、アセスルファムカリウム200、アスパルテーム200である。
【0039】
[酸度]
本実施形態の飲料は、クエン酸酸度が0.20~0.90g/100mlであることが好ましく、0.30~0.85g/100mlであることがより好ましい。
酸度を、上記数値範囲とすることで、ドライでシャープな飲用感が得られやすくなる。
【0040】
クエン酸酸度は、例えば、上述の酸味料、果汁、その他の各種成分の量などにより調整することができる。
【0041】
クエン酸酸度は、100ml中に含まれる酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100ml)で表すことができる。酸度もまた、JAS規格の酸度測定法で定められた方法、具体的には0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。
【0042】
[pH]
本実施形態の飲料の20℃におけるpHは、2.8~4.6であることが好ましく、3.1~4.2であることが好ましく、3.2~3.8であることがさらに好ましい。
当該pHを上記数値範囲内とすることにより、柑橘風味をより得られやすくなる。
【0043】
なお、pHの測定は、市販のpH測定器を用いるなどして行うことができる。pHの調整は、例えば、特定酸の量を変えることや、クエン酸三ナトリウム等のpH調整剤を用いることなどにより行うことができる。
【0044】
[エキス分]
本実施形態の飲料は、ドライでシャープな飲用感を向上する点から、エキス分が0.2~10質量/体積%であることが好ましい。
エキス分とは、温度十五度の時において原容量百立方センチメートル中に含有する不揮発性成分のグラム数をいう。
なお、アルコール飲料のエキス分は、例えば、日本国の国税庁所定分析法に準拠して比重(日本酒度)及びアルコール度を測定して算出することができる。
【0045】
[炭酸ガス]
本実施形態の飲料は、炭酸ガスを含有してもよい。
飲料の炭酸ガス圧は1.5~3.5ガスボリュームであることが好ましく、2.0~3.0ガスボリュームであることがより好ましい。炭酸感により、嗜好性を向上することができ、ドライでシャープな飲用感を向上しやすくなる。
炭酸ガスを飲料中に含有させる方法は特に限定されず、当業者が適宜設定できる。
【0046】
[アルコール]
本実施形態においてアルコールとは、特に断りがない限りエチルアルコール(エタノール)のことをいう。
アルコールは、特に制限されず、通常酒類に用いられるものを使用することができるが、例えば、醸造用アルコール;ウオッカ、ラム、テキーラ、ジン、アクアビット、およびコルン等のスピリッツ類;リキュール類、ウイスキー、ブランデー、焼酎等の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0047】
本実施形態の飲料は、アルコール飲料としてもよい。アルコール飲料としても、複雑味のある果汁感を向上できる。
アルコール飲料とした場合、アルコール濃度は0.4体積/体積%以上であることが好ましく、0.5~10体積/体積%であることがより好ましく、1.0~9体積/体積%であることがさらに好ましい。
【0048】
なお、アルコール度数は、例えば、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号、平成19年6月22日改訂)に記載の方法によって測定することができる。
【0049】
[容器]
本実施形態の飲料に用いられる容器は、ガラス、紙、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート等)、アルミ、およびスチール等の単体もしくはこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器の種類は、特に限定されるものではないが、たとえば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶等が挙げられる。
【0050】
飲料の容量としては、特に限定されないが、100~2000mlが好ましく、飲み切りやすい点からは、100~500mlがより好ましい。
【0051】
[飲用方法]
本実施形態の飲料は、希釈されずにそのまま飲用される飲料であることが好ましい。
【0052】
<飲料の製造方法>
本実施形態の柑橘風味飲料の製造方法は、ペリルアルデヒドを添加して飲料を調製する工程を含む。これにより、ドライでシャープな飲用感を向上できる。
ペリルアルデヒドは単体またはこれを含む混合物として添加されてもよく、その形態は問わない。その他の添加方法などは公知の方法を用いることができる。飲料の詳細は、上記飲料と同様である。
【0053】
容器詰めされた飲料の加熱滅菌処理の方法は、特に限定されないが、日本国内においては食品衛生法の規定に従って、加熱滅菌処理される。具体的には、高温で短時間殺菌した後、無菌条件下で殺菌処理された保存容器に充填する方法(UHT殺菌法)と、調合液を缶等の保存容器に充填した後、レトルト処理を行うレトルト殺菌法が挙げられる。
【0054】
<飲料の香味向上方法>
本実施形態の柑橘風味飲料の香味向上方法は、ペリルアルデヒドを添加して飲料を調製する工程を含む。これにより、ドライでシャープな飲用感を向上できる。飲料の詳細は、上記飲料と同様である。また、添加方法などは飲料の製造方法と同じ方法、および公知の方法を用いることができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0056】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
(1)飲料の物性
・酸度:飲料100ml中に含まれる酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100ml)をJAS規格の酸度測定法で定められた方法に基づき測定し、算出した。
【0058】
(2)官能評価
各飲料について訓練した技術者による官能試験を実施した。具体的には、5名の熟練した技術者がそれぞれ飲料(20℃)を試飲し、試飲した際に感じられる「ドライでシャープな飲用感」「サワーなレモン感」「美味しさ」のそれぞれについて、以下の評価基準に従い「比較例1-1」を1点とした5段階評価を行い、その平均値を算出した。
【0059】
・評価基準「ドライでシャープな飲用感」、「サワーなレモン感」
5:強い
4:やや強い
3:どちらともいえない
2:やや弱い
1:弱い
【0060】
・評価基準「美味しさ」
5:美味しい
4:やや美味しい
3:どちらともいえない
2:やや美味しくない
1:美味しくない
【0061】
(3)実施例、比較例および参考例
原料として、醸造用アルコール、果糖ぶどう糖液糖、クエン酸(無水)、クエン酸三ナトリウム、レモン透明濃縮果汁、レモンフレーバー(ただしペリルアルデヒド及びp-サイメンを含まない)、ペリルアルデヒド及びp-サイメンを準備した。
いずれの飲料についても、当該レモンフレーバーを100ppm用いた。
また、各飲料のエキス分は果糖ぶどう糖液糖を用いて調整し、各飲料の酸度はクエン酸(無水)、レモン透明濃縮果汁を用いて調整した。
なお、表中の「ショ糖換算糖度」は甘味度、「GV」は炭酸ガスのガスボリューム、酸度「%」はクエン酸酸度(g/100ml)、エキス「%」はエキス分(質量/体積%)、アルコール「%」はアルコール濃度(体積/体積%)をそれぞれ示す。
【0062】
[実験1]ペリルアルデヒドのみ
表1に示す配合(濃度)、および炭酸ガス圧(ガスボリューム)となるように各原料を常法で混合し、飲料を得た。得られた飲料について、上記(1)~(2)の測定及び官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
[実験2]ペリルアルデヒドとp-サイメンとの併用
表2,3に示す配合(濃度)、および炭酸ガス圧(ガスボリューム)となるように各原料を常法で混合し、飲料を得た。得られた飲料について、上記(1)~(2)の測定及び官能評価を行った。結果を表2,3に示す。
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
[実験3]ペリルアルデヒドとp-サイメンとの併用(酸度、エキス分の影響の検証)
表4に示す配合(濃度)、および炭酸ガス圧(ガスボリューム)となるように各原料を常法で混合し、飲料を得た。得られた飲料について、上記(1)~(2)の測定及び官能評価を行った。結果を表4に示す。
【0068】
【表5】
【0069】
[実験4]ペリルアルデヒドとp-サイメンとの併用(アルコール濃度の影響の検証)
表5、6に示す配合(濃度)、および炭酸ガス圧(ガスボリューム)となるように各原料を常法で混合し、飲料を得た。得られた飲料について、上記(1)~(2)の測定及び官能評価を行った。結果を表5、6に示す。
【0070】
【表6】
【0071】
【表7】
【0072】
[実験5]ペリルアルデヒドとp-サイメンとの併用(果汁濃度の影響の検証)
表7に示す配合(濃度)、および炭酸ガス圧(ガスボリューム)となるように各原料を常法で混合し、飲料を得た。得られた飲料について、上記(1)~(2)の測定及び官能評価を行った。結果を表7に示す。
【0073】
【表8】