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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092939
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】電解液およびリチウム空気電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 12/08 20060101AFI20240701BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
H01M12/08 K
H01M4/86 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023142752
(22)【出願日】2023-09-04
(31)【優先権主張番号】P 2022208353
(32)【優先日】2022-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】397038037
【氏名又は名称】学校法人成蹊学園
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】弁理士法人MIP
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 守弘
(72)【発明者】
【氏名】堀場 達雄
(72)【発明者】
【氏名】福西 美香
(72)【発明者】
【氏名】小沢 文智
(72)【発明者】
【氏名】菅原 一輝
(72)【発明者】
【氏名】東 翔太
(72)【発明者】
【氏名】野村 晃敬
【テーマコード(参考)】
5H018
5H032
【Fターム(参考)】
5H018AA10
5H018AS05
5H018EE11
5H032AA02
5H032AS02
5H032AS11
5H032CC11
5H032CC16
5H032EE01
5H032EE03
5H032EE04
5H032HH01
5H032HH02
(57)【要約】
【課題】 レドックスメディエータ(RM)による効果を持続させることができ、サイクル寿命を向上させることができる電解液およびリチウム空気電池を提供すること。
【解決手段】 リチウム空気電池に用いられる電解液は、電解質として亜硝酸塩を含む。亜硝酸塩は、亜硝酸リチウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウムの少なくとも1つを含む。電解液は、電解質を溶解または分散させる溶媒を含み、溶媒は、アミド系溶媒である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム空気電池に用いられる電解液であって、
電解質として亜硝酸塩を含む、電解液。
【請求項2】
前記亜硝酸塩が、亜硝酸リチウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウムの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の電解液。
【請求項3】
前記電解液は、前記電解質を溶解または分散させる溶媒を含み、
前記溶媒は、エーテル系溶媒またはアミド系溶媒である、請求項1または2に記載の電解液。
【請求項4】
前記エーテル系溶媒は、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEG)を含み、
前記アミド系溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-methyl-ε-caprolactam(NMC)、N-ethyl-2-pyrrolidone(NEP)、N-methyl-2-piperidone(NMPi)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド(DEAc)の少なくとも1つを含む、請求項3に記載の電解液。
【請求項5】
ハロゲン化リチウムをさらに含む、請求項1に記載の電解液。
【請求項6】
前記亜硝酸塩は、溶媒に対して0.05モル濃度~3.5モル濃度で添加される、請求項1に記載の電解液。
【請求項7】
前記電解液は、水分が1000ppm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の電解液。
【請求項8】
空気極と、リチウムを含む負極と、前記空気極と前記負極との間に電解液とを含み、
前記電解液が、電解質として亜硝酸塩を含む、リチウム空気電池。
【請求項9】
前記亜硝酸塩が、亜硝酸リチウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウムの少なくとも1つを含む、請求項8に記載のリチウム空気電池。
【請求項10】
前記電解液は、前記電解質を溶解または分散させる溶媒を含み、
前記溶媒は、エーテル系溶媒またはアミド系溶媒である、請求項8または9に記載のリチウム空気電池。
【請求項11】
前記エーテル系溶媒は、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEG)を含み、
前記アミド系溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-methyl-ε-caprolactam(NMC)、N-ethyl-2-pyrrolidone(NEP)、N-methyl-2-piperidone(NMPi)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド(DEAc)の少なくとも1つを含む、請求項10に記載のリチウム空気電池。
【請求項12】
前記電解液は、ハロゲン化リチウムをさらに含む、請求項8に記載のリチウム空気電池。
【請求項13】
前記亜硝酸塩は、溶媒に対して0.05モル濃度~3.5モル濃度で添加される、請求項8に記載のリチウム空気電池。
【請求項14】
前記電解液は、水分が1000ppm以下であることを特徴とする、請求項8に記載のリチウム空気電池。
【請求項15】
前記空気極が、ハロゲン化リチウムを含む、請求項8に記載のリチウム空気電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解液およびリチウム空気電池に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、ノートPC(Personal Computer)、タブレットPC、電気自動車等に搭載する蓄電池として、リチウムイオン電池が用いられている。リチウム空気電池は、リチウムイオン電池と比べて顕著に高い重量エネルギー密度を有するため、リチウムイオン電池から置き換える存在として研究が行われている。
【0003】
リチウム空気電池は、正極活物質として空気中の酸素を用い、負極活物質としてリチウム金属、またはリチウムイオンを挿入及び脱離可能な物質を用いた二次電池である。リチウム空気電池の放電時の正極(空気極)及び負極における反応を以下に示す。
正極:2Li + O + 2e → Li
負極:2Li → 2Li + 2e
【0004】
また、リチウム空気電池の充電時の正極(空気極)及び負極の反応を以下に示す。
正極:Li → O + 2Li + 2e
負極:2Li + 2e → 2Li
【0005】
リチウム空気電池は、放電時の正極においてスーパーオキシドアニオンラジカル(O ・)が発生し、電解質の分解や耐久性等に関していくつかの課題を有している。O ・に対する耐性が高い溶媒として、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶媒等が知られている。しかしながら、NMP溶媒等は、Li金属負極の存在下でOガスと反応して自動酸化してしまうという問題があった。
【0006】
そこで、NMP溶媒にLiNOを溶解した1モル濃度(M:mol/L)のLiNO/NMP電解液を用いることが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。この電解液は、NO がLi金属表面にLiO保護層を形成し、直接NMPがLi金属負極に触れ難くすることで、上記の自動酸化を抑制する。
【0007】
通常、放電反応によって空気極に析出した過酸化リチウム(Li)は、充電時に電子を奪われて酸化分解される(Li→O+2Li+2e)。Liは、空気極の表面の近くから分解されていき、空気極から遠ざかるにつれて分解に必要な電圧(過電圧)が上昇する。
【0008】
LiNO/NMP電解液を用いると、Li金属表面におけるLiO保護層の形成と同時にNO は還元され、NO となる。このように発生したNO が電解液中に共存している場合、充電時にLiが空気極表面を介して酸化分解されるに先だって、NO が酸化されてNOとなる。このNOはLiから電子を奪い、LiとOへ酸化分解させると同時に、NOはNO へ戻る。すなわち、NO /NOの酸化還元(レドックス)を媒介してLiの酸化分解が可能となる。
【0009】
このような機能を有する化学種は酸化還元媒介体(Redox Mediator,RM)と呼ばれる。適切な酸化還元電位を有するRM種を電解液中に共存させることによって、RMの酸化還元(レドックス)電位においてLiを酸化分解させることができるため、空気極を介して酸化分解させるよりも充電過電圧の上昇を抑制することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Dong Wook Kim, Dong Hun Lee, Su Mi Ahn, Do Youb Kim, Jungdon Suk, Dong Hoon Choi, Yongku Kang,“Autoxidation in amide-based electrolyte and its suppression for enhanced oxygen efficiency and cycle performance in non-aqueous lithium oxygen battery”, Journal of Power Sources, 2017, 347, p.186-192
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来のLiNO/NMP電解液では、NO の生成量が限定的であり、RMによる効果も小さく、充放電のサイクルを繰り返した際のその効果の持続性も十分でなく、サイクル寿命が短いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明の発明者らは、鋭意検討の結果、LiNOではなく、LiNO等の亜硝酸塩を含む電解液を用いることで、上記の課題を解決することができることを見出した。上記課題は、本発明の電解液およびリチウム空気電池を提供することにより解決される。
【0013】
本発明によれば、リチウム空気電池に用いられる電解液であって、電解質として亜硝酸塩を含む、電解液が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、RMによる効果を持続させることができ、サイクル寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】リチウム空気電池の概略構成の一例を示した図。
図2】従来のLiNOを電解質として用いた物質循環について説明する図。
図3】充放電試験を行った装置の構成を示した図。
図4】比較例1、実施例1~4の充放電カーブを示した図。
図5】比較例1、実施例1~4の各サイクルステップ数の放電・充電容量を示した図。
図6】比較例2、実施例5~8の充放電カーブを示した図。
図7】比較例2、実施例5~8の各サイクルステップ数の放電・充電容量を示した図。
図8】比較例3、実施例9、10の充放電カーブを示した図。
図9】比較例3、実施例9、10の各サイクルステップ数の放電・充電容量を示した図。
図10】比較例4、実施例11、12の充放電カーブを示した図。
図11】比較例4、実施例11、12の各サイクルステップ数の放電・充電容量を示した図。
図12】比較例および実施例で用いたアミド溶媒電解液の分子構造を示した図。
図13】比較例6~10および実施例13~17のリチウム空気電池における放充電カーブを示した図。
図14】比較例11~16および実施例18~23のリチウム空気電池における放充電カーブを示した図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。
【0017】
図1は、リチウム空気電池の概略構成の一例を示した図である。リチウム空気電池10は、空気極11と、負極12と、空気極11と負極12との間に存在する電解液13とを含む。空気極11と負極12との間には、両極間の絶縁を担うセパレータ14を含むことができる。セパレータ14の空気極側と負極側にそれぞれ存在する電解液は、電解質として亜硝酸塩を含むものであれば、溶媒等が同じであっても、異なっていてもよい。
【0018】
添加する亜硝酸塩(NO )の有効な濃度は、例えば1mM以上で10M未満とすることができ、10mM以上で5M未満が望ましく、さらに50mM以上で4M未満が望ましい。
【0019】
リチウム空気電池10は、充電時に、電源15が空気極11と負極12とを電気的に接続し、放電時に、電源15に代えて負荷(図示せず)が接続される。
【0020】
空気極11は、集電体を含んでいてもよく、導電性材料、結着材、触媒等を含むことができる。
【0021】
空気極11の作製方法は、特に限定されるものではなく、例えば導電性材料や結着材を含有するスラリーを調製し、調製したスラリーを集電体に付与し、必要に応じて乾燥して触媒層を形成することにより作製することができる。
【0022】
集電体は、導電性を有する限り特に限定されず、ニッケル、アルミニウム等の金属、ステンレス鋼等の合金、カーボン材料等により作製される。空気極11は、1種の材料を単独で用いて作製されていてもよいし、2以上の種類の材料を併用して作製されていてもよい。
【0023】
空気極11の形状は、特に制限はなく、シート状、板状、メッシュ状、繊維状等であってもよい。空気極11は、多孔質構造を有さなくてもよいが、反応場を増やして充放電効率を向上させる観点において、多孔質構造を有することが望ましい。一例としては、空気極11は、その材料として、カーボンペーパーやカーボンクロス等を用いることができる。
【0024】
導電性材料は、導電助剤としての働きを有するものであってもよく、触媒の担体としての働きを有するものであってもよい。導電性材料としては、ケッチェンブラック(KB)、アセチレンブラック(AB)等のカーボンブラック、天然黒鉛、グラファイト、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン等を挙げることができる。導電性材料は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。導電性材料の形状は、例えば粒子状、扁平状、繊維状等であってもよい。導電性材料は、多孔質構造を有していても、有していなくてもよいが、反応場を増やして充放電効率を向上させる観点からは、多孔質構造を有することが望ましい。
【0025】
触媒層中の導電性材料の含有率は特に制限はないが、スラリーに含まれる各種成分による特性のバランスの観点から、例えばスラリーの質量に対して20質量%~80質量%とすることができる。
【0026】
空気極11は、充放電反応を促進する触媒を含んでいてもよく、触媒としては、白金、金等の貴金属や、マンガン、コバルト、ニッケル、鉄、ルテニウム、イリジウム等の金属や、それらの金属酸化物や金属錯体等を挙げることができる。触媒の含有率は、充放電反応促進の効果を好適に発揮する観点から、スラリーの質量に対して5質量%~60質量%とすることができる。
【0027】
結着材(バインダー)は、空気極11上に導電性材料等を良好に固定させるために使用される。なお、バインダーを用いて空気極11に導電性材料等を良好に固定することで、充放電効率を向上させることができる。バインダーの種類は、特に制限されず、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム等のフッ素系樹脂や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。また、バインダーとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の水溶性高分子、ポリイミド樹脂等を用いてもよい。バインダーは、これらのうちの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
バインダーの含有率は、スラリーに含まれる各種成分の特性および分散性のバランスの観点から、例えばスラリーの質量に対して1質量%~20質量%とすることができる。
【0029】
導電性材料等を含有するスラリーを調製する際、スラリーは溶媒を含有してもよい。溶媒としては、スラリーに含まれる各成分を分散または溶解可能なものであれば特に制限されず、水系溶媒であっても、有機系溶媒であってもよい。溶媒としては、例えばN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、ジオキソラン、水等を挙げることができる。溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
スラリー中の溶媒の含有率は、特に制限されず、粘度や集電体への付与の均一性等の観点から、スラリーの質量に対して60質量%~95質量%とすることができる。
【0031】
負極12は、リチウムイオンを挿入および脱着可能な負極活物質を含む。負極12は、負極活物質を含む層が表面に形成されたものであってもよい。負極活物質としては、金属リチウム、リチウム合金等が挙げられる。リチウム合金としては、アルミニウム、スズ、ケイ素等とリチウムとの合金が挙げられる。負極活物質としては、一酸化ケイ素(SiO)や二酸化スズ(SnO)などの酸化物等を用いてもよい。
【0032】
負極12は、表面に負極活物質を含む層が形成されていれば、その内部の負極集電体は導電性を有する限り、その材質は特に限定されない。負極集電体材料としては、ニッケル、銅等の金属、ステンレス鋼等の合金、カーボン材料等を挙げることができる。負極集電体の形状も特に限定されず、シート状、板状、メッシュ状、繊維状等であってもよい。負極集電体は、多孔質構造を有していても、有していなくてもよい。
【0033】
負極12の厚みは、特に制限されないが、電池容量の観点から、10μm以上であることが望ましい。ただし、負極12の厚みは、小型化の観点から、500μm以下であることが望ましい。負極12の幅や長さは、特に制限されない。
【0034】
電解液13は、電解質が非水溶媒に溶解された溶液で、粘性が高い固体に近い状態のものも含む。電解液13は、電解質として、例えば亜硝酸リチウム(LiNO)等の亜硝酸塩を含む。
【0035】
電解液13は、電解質を溶解する溶媒を含む。溶媒の種類は、電解質を溶解可能なものであれば特に制限されない。溶媒としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールエチルエーテル等のエーテル類を挙げることができる。また、溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート類を挙げることができる。さらに、溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル類や、イオン液体、ジメトキシエタン、ジメチルスルホキシド、エチルメチルスルホン、スルホラン、2-ピロリドン、N-methyl-2-pyrrolidone(NMP)、N-methyl-ε-caprolactam(NMC)、N-ethyl-2-pyrrolidone(NEP)、N-methyl-2-piperidone(NMPi)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド(DEAc)、N-メチルアセトアミド(NMA)、N-エチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMFA)等のアミド系の溶媒を挙げることができる。
【0036】
充放電時の分解安定性の観点からは、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEG)、テトラエチレングリコールエチルエーテル等のエーテル系溶媒、2-ピロリドン、NMP、NMC、HMTA、DMAc、DMFA等のアミド系溶媒、DMAからなる群より選択される少なくとも1つが望ましい。なお、溶媒は、これらの1種を単独で用いてもよいし、これらのうちの2種以上を併用してもよい。
【0037】
電解液13は、亜硝酸塩の濃度に特に制限はないが、例えば0.05モル濃度~3.5モル濃度とすることができる。
【0038】
セパレータ14は、リチウムイオンの透過性を有し、空気極11と負極12の絶縁性を維持できるものであれば特に制限されない。セパレータ14の材質としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系ポリマー、セルロース系ポリマー、フッ素系ポリマー、ガラス、紙等を挙げることができる。セパレータ14は、多孔膜や不織布等であってもよい。セパレータ14の厚みは、特に制限されず、例えば10μm~1000μmとすることができる。
【0039】
ここで、図2を参照して、従来の硝酸リチウム(LiNO)を電解質として用いた物質循環について説明する。図2に示す例では、空気極11が、多孔質カーボン材料から作製され、負極12が、金属リチウムから作製されている。空気極11と負極12との間の電解液13は、LiNOを1Mでテトラエチレングリコールジメチルエーテル(G4)に溶解したものである。
【0040】
負極12では、負極12から溶解したLiにより形成される樹状突起(デンドライト)を抑制するべく、LiがNO により酸化され、負極12の表面にLiO保護層が形成される。デンドライトは、充放電の頻度が増えると形成され始め、成長すると、セパレータ14を突き破り、ショートや発火を引き起こす。負極12では、LiO保護層の形成と同時に、NO がNO に還元される。
2Li + NO → NO + Li
【0041】
NO は、充電時に空気極11に蓄積したLiが酸化分解される前にNOに酸化される。Eは、標準電極電位である。
NO → NO + e,E=3.5V vs.Li/Li
【0042】
LiはNOによりアタックされて酸化分解される。このため、NOは、RMとして機能する。
Li + 2NO → 2NO + 2Li + O
【0043】
NO は、再びNOに酸化され、RMとして使用される。
【0044】
ところで、放電時は、LiとOの反応によりLiが生成される。充電時は、LiがLiとOに分解される。
放電時:2Li + O + 2e → Li
充電時:Li → 2Li + O + 2e
【0045】
上記の充放電時の反応の理論電位は、2.96V(V vs.Li/Li)であり、充放電時の過電圧は、理論電位からの電位差であり、小さいほど望ましい。通常、充電時に4Vを超える電位が必要になり、過電圧は1Vを超えるが、RMとして機能するNOを使用することで、充電電圧を3.5Vに抑え、過電圧を0.5V近くまで下げることができる。このため、RMの存在により、充電過電圧を低減することができる。
【0046】
従来のLiNO電解液では、このような2つの効果、すなわち負極に対するLiO保護層の形成とRMによる充電過電圧を低減する効果を得ることができるが、その1つであるRMによる効果について、NO の生成量が十分でないことから、その効果が比較的小さく、充放電のサイクルを繰り返した際の効果の持続性が十分ではない。これでは、サイクル寿命も短い。
【0047】
そこで、鋭意検討の結果、電解質としてLiNOを用い、これを溶媒に分散または溶解させたLiNO電解液を用いることを見出した。LiNOを電解質として含むことで、十分な量のNO を提供することができ、RMによる効果の持続性を延ばし、サイクル寿命を向上させることができる。
【0048】
また、LiNOは、電解液中でNO として存在するが、Oと反応することでNO を生成することができ、LiO保護層の形成も可能である。このため、溶媒がLi金属負極12に接触することを防ぎ、自動酸化してしまうことを防止することができる。
【0049】
これらの効果について確認するため、図3に示す装置を使用して試験を行った。試験装置20は、二極式セルであり、正極端子と酸素を供給する供給ノズル21と酸素を排出する排出ノズル22とを有する正極ボディ23と、負極端子を有する負極ボディ24とを含む。試験装置20は、正極ボディ23と負極ボディ24との間に、スペーサ25、スプリング26、電極押え27、SUSメッシュ28、空気極29、電極ガイド30、セパレータ31、Li金属負極32、Oリング33を有する。空気極29とセパレータ31の間、Li金属負極32とセパレータ31の間に電解液34を含む。
【0050】
空気極29は、以下の方法で作成した。N-メチルピロリドン(NMP)中、ケッチェンブラックとポリフッ化ビニリデン(PVDF,結着材)を100:6の質量比で混合してスラリーを調整し、調整したスラリーをカーボンペーパー(東レ製TGP-H-060,空気極集電体)の表面に塗布し、乾燥させることで、多孔質炭素シート(KB)を得た。
【0051】
また、臭化リチウム(LiBr)、ケッチェンブラック、PVDFを50:50:6の質量比で混合してスラリーを調整し、上記と同様に、調整したスラリーをカーボンペーパーの表面に塗布し、乾燥させることで、LiBrを導入した多孔質炭素シート(KB-Br)を得た。
【0052】
また、純水中に単層カーボンナノチューブ(日本ゼオン製ZEONANO SG101)を超音波処理により濃度0.1質量%で分散させた。これにより得られたCNT分散液をろ過し、得られたCNT膜を真空乾燥して、カーボンナノチューブからなる多孔質炭素シート(CNT)を得た。
【0053】
上記の方法で得られた多孔質炭素シート試料の性状を、以下の方法で測定した。
【0054】
(1)BET法比表面積
3Flex(Micromeritics Instrument Corp.製)を用いて、窒素吸着法により得られた吸着等温線からBET法に従って求めた。
(2)直径2nm以上、1000nm以下の細孔の占める細孔容積
3Flex(Micromeritics Instrument Corp.製)を用いて、窒素吸着法により得られた吸着等温線からBJH法を用いて求めた。
(3)直径0.1μm以上、10μm以下の細孔の占める細孔容積
AutoPoreIV(Micromeritics Instrument Corp.製)を用いた水銀圧入法により、細孔径10nm~200000nm(0.01μm~200μm)の範囲の細孔容積を測定し、細孔直径0.1μmから10μmの細孔容積の値を用いた。
(4)シート密度、空隙率
シート密度(ρsheet)は、シートの目付量をシート厚さで除算することにより求めた。空隙率(Porosity)は、以下の式に従い、算出した。
Porosity=1-(ρsheet/ρ)
【0055】
ここで、ρはシート構成物の真密度を示し、KBはρを2.1g/cmと仮定し、KB-Brはρを2.8g/cmと仮定し、CNTはρを1.3g/cmと仮定した。いずれの多孔質炭素シートも、直径16mm(面積2cm)の円形にカットし、空気極として用いた。表1に、空気極の性状を示す。
【0056】
【表1】
【0057】
電解液34は、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEG)、またはN-メチルピロリドン(NMP)を溶媒とし、1または2種類の塩を所定の濃度で溶解させたものとを用いた。電解液34の液量は、80μLとした。塩は、LiNO、LiNO、NaNO、KNOを用いた。いずれの電解液も含まれる水分量が1000ppm以下となるように調整した。
【0058】
このようにして得られた空気極29や電解液34を用いて作成したリチウム空気電池セルを、30℃恒温槽内において、純酸素フロー(流量1.0mL/s)、定電流、カットオフ電圧(2.0~4.5V)の条件下で、放電・充電サイクル試験を行い、評価した。
【0059】
リチウム空気電池セルの構成および放電・充電サイクル試験の条件を、表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
表2中、サイクル数は、放電・充電サイクルを繰り返した際に、最初に放電カットオフ電圧2.0Vに達したステップ数から1を差し引いた数を示す。すなわち、既定のサイクル容量(0.5mAh/cm、2.0mAh/cm、4.0mAh/cm)放電できた回数である。
【0062】
図4は、表2に示す比較例1、実施例1~4の電解液溶媒にTEGを用いたリチウム空気電池において亜硝酸の効果を確認するために放電・充電サイクル試験を行い、その試験結果としての充放電カーブを示した図である。図4(a)は、比較例1の充放電カーブを示し、図4(b)は、実施例1の充放電カーブを示し、図4(c)は、実施例2の充放電カーブを示す。図4(d)は、実施例3の充放電カーブを示し、図4(e)は、実施例4の充放電カーブを示す。
【0063】
亜硝酸塩を含まない比較例1は、図4(a)に示すように10サイクル(10th)目において充電電圧の上昇のために、最後(容量0.5mAh/cm)まで充電させることができなくなり、15サイクル目においては規定容量(容量0.5mAh/cm)の20%程度(約0.1mAh/cm)までしか放電・充電させることができなかった。
【0064】
これに対し、図4(b)~(d)に示す亜硝酸塩を50mM含む実施例1~4では、いずれも、10サイクル目まで電圧が安定しており、最後まで放電・充電させることができた。このことから、亜硝酸イオンからなる塩を含んでいれば、リチウムの亜硝酸塩(LiNO)だけではなく、亜硝酸ナトリウム(NaNO)や亜硝酸カリウム(KNO)でも、サイクル数を増加させる効果が得られることが確認できた。
【0065】
また、亜硝酸塩のみからなる電解液を用いた実施例4においても、図4(e)に示すように、10サイクル目まで電圧が安定しており、亜硝酸塩を含まない比較例1よりも、サイクル数の増加が見られた。
【0066】
図5は、比較例1、実施例1~4の各サイクルステップ数の放電・充電容量を示した図である。図5に示す結果からも、既定容量(0.5mAh/cm)から充電容量および放電容量が低下しはじめるサイクル数が、比較例1よりも実施例1~4のほうが増加していることが分かる。図4および図5に示す結果から、亜硝酸塩を含む電解液を用いることにより、電池寿命が改善できることが確認できた。
【0067】
図6は、比較例2、実施例5~8の電解液溶媒にNMPを用いたリチウム空気電池において亜硝酸の効果を確認するために放電・充電サイクル試験を行い、その試験結果としての充放電カーブを示した図である。図6(a)は、比較例2の充放電カーブを示し、図6(b)は、実施例5の充放電カーブを示し、図6(c)は、実施例6の充放電カーブを示す。図6(d)は、実施例7の充放電カーブを示し、図6(e)は、実施例8の充放電カーブを示す。
【0068】
亜硝酸塩を含まない比較例2は、サイクル数を増加させる亜硝酸塩を含んでいないが、O ・に対して耐性を有するNMPを溶媒に用いることによって、図6(a)に示すように、20サイクル以上まで規定容量放電・充電させることができた。しかしながら、25サイクルまでは規定容量放電・充電させることはできなかった。
【0069】
これに対し、亜硝酸を50mM添加した実施例5、6では、図6(b)、(c)に示すように、30サイクル以上まで規定容量放電・充電させることができ、サイクル数を増加させることができた。亜硝酸塩のみからなる電解液を用いた実施例7においては、図6(d)に示すように、40サイクル以上まで規定容量放電・充電させることができ、さらにサイクル数を増加させることができた。
【0070】
ハロゲン化リチウムの一例であるLiBrを含ませた空気極と、亜硝酸塩のみからなる電解液とを用いた実施例8においては、図6(e)に示すように、50サイクル近くまで規定容量放電・充電させることができ、LiBrを含まない実施例7より、さらにサイクル数を増加させることができた。
【0071】
図7は、比較例2、実施例5~8の各サイクルステップ数の放電・充電容量を示した図である。図7に示す結果からも、既定容量から充電容量および放電容量が低下しはじめるサイクル数が、比較例2よりも実施例5~8のほうが増加していることが分かる。図6および図7に示す結果から、亜硝酸塩を含む電解液を用いることにより、電解液を構成する溶媒が異なっていても、電池寿命が改善できることが確認できた。
【0072】
図8は、比較例3、実施例9、10のCNT空気極を用いたリチウム空気電池において、より高レートかつ容量の大きな放電・充電サイクル条件(2.0mAh/cm=0.4mAh/cm×5h)で亜硝酸の効果を確認するために放電・充電サイクル試験を行い、その試験結果としての充放電カーブを示した図である。図8(a)は、比較例3の充放電カーブを示し、図8(b)は、実施例9の充放電カーブを示し、図8(c)は、実施例10の充放電カーブを示す。
【0073】
亜硝酸塩を含まない比較例3では、図8(a)に示すように、放電・充電できる容量が急減し、5サイクル程度までしか規定容量放電・充電することができなかった。これに対して、亜硝酸塩からなる電解液(1.0M LiNO)を用いた実施例9では、10サイクル以上まで規定容量放電・充電させることができた。亜硝酸塩の濃度を2倍に高めた電解液(2.0M LiNO)を用いた実施例10でも、10サイクル以上まで規定容量放電・充電させることができた。
【0074】
図9は、比較例3、実施例9、10の各サイクルステップ数の放電・充電容量を示した図である。図9に示す結果からも、既定容量から充電容量および放電容量が低下しはじめるサイクル数が、比較例3よりも実施例9、10のほうが増加していることが分かる。図8および図9に示す結果から、亜硝酸塩を含む電解液を用いることにより、空気極材料が異なっていても、電池寿命が改善できることが確認できた。
【0075】
図10は、比較例4、実施例11、12のCNT空気極を用いたリチウム空気電池において、さらに大きな放電・充電サイクル条件(4.0mAh/cm=0.4mAh/cm×10h)で亜硝酸の効果を確認するために放電・充電サイクル試験を行い、その試験結果としての充放電カーブを示した図である。図10(a)は、比較例4の充放電カーブを示し、図10(b)は、実施例11の充放電カーブを示し、図10(c)は、実施例12の充放電カーブを示す。
【0076】
亜硝酸塩を含まない比較例4では、図10(a)に示すように、既定容量放電・充電できる回数は3回が限度であった。これに対して、亜硝酸塩からなる電解液(1.0M LiNO)を用いた実施例11では、既定容量放電・充電できる回数が、4回に増加させることができ、亜硝酸塩からなる電解液(2.0M LiNO)を用いた実施例12では、既定容量放電・充電できる回数が、7回まで増加させることができた。
【0077】
その一方で、亜硝酸塩の濃度が4.0M LiNOまで高くなると、図示しないが、放電・充電させることができなかった(比較例5)。これは、亜硝酸塩の濃度が所定以上に高くなりすぎると、電解液が高粘度化し、酸素やリチウムイオンの迅速な供給が妨げられるためと考えられる。
【0078】
図11は、比較例4、実施例11、12の各サイクルステップ数の放電・充電容量を示した図である。図11に示す結果からも、既定容量から充電容量および放電容量が低下しはじめるサイクル数が、比較例4よりも実施例11、12のほうが増加していることが分かる。図10および図11に示す結果から、亜硝酸塩を含む電解液を用いることにより、放電・充電条件が異なっていても、電池寿命が改善できることが確認できた。
【0079】
さらに亜硝酸塩の効果を確認するため、NMPのほか、各種アミド系溶媒電解液として、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド(DEAc)、N-ethyl-2-pyrrolidone(NEP)、N-methyl-2-piperidone(NMPi)、N-methyl-ε-caprolactam(NMC)を用い、放電・充電サイクル試験を行った。図12に、比較例および実施例で用いたアミド溶媒電解液の分子構造を示す。
【0080】
電解液34の液量を32μLとした以外は、上記と同様にしてリチウム空気電池セルを作製し、評価した。リチウム空気電池セルの構成および放電・充電サイクル試験の条件を表3に示す。
【0081】
【表3】
【0082】
上記表3に示すサイクル数より、DMAcの場合を除く、いずれの電解液溶媒種であっても、亜硝酸塩を含まない電解液(1.0M LiNO)よりも亜硝酸塩を含む電解液(1.0M LiNO)を用いた場合のほうが、サイクル数が増大していることが分かる。これにより、亜硝酸塩を含む電解液を用いることで、電解液溶媒種が異なっていても電池寿命を改善できることが確認できた。
【0083】
図13は、上記表3に示す比較例6~10および実施例13~17のリチウム空気電池における放充電カーブを示した図である。図13に示すように、いずれの電解液溶媒種であっても、亜硝酸塩を含まない電解液(1.0M LiNO)を用いた比較例6~10より、亜硝酸塩を含む電解液(1.0M LiNO)を用いる実施例13~17のほうが、充電電圧が低下していることが分かる。すなわち、亜硝酸塩を含む電解液を用いることにより、電解液溶媒種が異なっていても、より低いエネルギーで充電することが可能となり、充電特性を改善できることが確認できた。
【0084】
さらに放電出力レートを高めた放充電条件における亜硝酸塩の効果を確認するべく実施した放電・充電サイクル試験の条件を表4に示す。ここで、放電条件は表4に示す通りだが、いずれもサイクル容量(2.0mAh/cm)および充電条件(0.4mA/cm×5h)は上記表3と同様とした。
【0085】
【表4】
【0086】
上記表4に示すサイクル数より、いずれの電解液溶媒種であっても、亜硝酸塩を含まない電解液(1.0M LiNO)よりも亜硝酸塩を含む電解液(1.0M LiNO)を用いた場合のほうが、サイクル数が増大していることが分かる。これにより、亜硝酸塩を含む電解液を用いることで、より高い放電出力条件においても電池寿命を改善できることが確認できた。
【0087】
図14は、上記表4に示す比較例11~16および実施例18~23のリチウム空気電池における放充電カーブを示した図である。図14に示すように、いずれの電解液溶媒種であっても、亜硝酸塩を含まない電解液(1.0M LiNO)を用いた比較例11~16より、亜硝酸塩を含む電解液(1.0M LiNO)を用いた実施例18~23のほうが、充電電圧が低下していることが分かる。すなわち、亜硝酸塩を含む電解液を用いることにより、より高い放電出力条件においても低いエネルギーで充電することが可能となり、充電特性を改善できることが確認できた。
【0088】
以上のように、亜硝酸塩を含む電解液を提供することで、充電反応の全域に渡ってNO /NOのレドックス電位に一定に維持でき、サイクル寿命を向上させることができる。また、溶媒としてNMP等のアミド系溶媒を使用し、ハロゲン化リチウムを添加し、電解液中の水分を極力除去することで、サイクル寿命をさらに向上させることができる。
【0089】
このような電解液を含むリチウム空気電池は、エネルギー産業全般で利用することができ、例えば、電気自動車用の駆動電源、次世代送電網(スマートグリッド)のための定置用蓄電池、太陽光や風力等の自然エネルギーによる発電施設における電力平準化や蓄電用電池、モバイル用大容量電池等に利用可能である。
【0090】
これまで本発明の電解液およびリチウム空気電池について上述した実施形態をもって詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0091】
10…リチウム空気電池
11…空気極
12…負極
13…電解液
14…セパレータ
15…電源
20…試験装置
21…供給ノズル
22…排出ノズル
23…正極ボディ
24…負極ボディ
25…スペーサ
26…スプリング
27…電極押え
28…SUSメッシュ
29…空気極
30…電極ガイド
31…セパレータ
32…Li金属負極
33…Oリング
34…電解液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14