IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アース製薬株式会社の特許一覧

特開2024-92943鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤
<>
  • 特開-鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤 図1
  • 特開-鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤 図2
  • 特開-鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤 図3
  • 特開-鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤 図4
  • 特開-鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤 図5
  • 特開-鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤 図6
  • 特開-鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤 図7
  • 特開-鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤 図8
  • 特開-鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤 図9
  • 特開-鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤 図10
  • 特開-鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092943
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/02 20060101AFI20240701BHJP
   A61P 29/02 20060101ALI20240701BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240701BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240701BHJP
   A61K 36/11 20060101ALI20240701BHJP
   A61K 36/756 20060101ALI20240701BHJP
   A61K 36/346 20060101ALI20240701BHJP
   A61K 36/65 20060101ALI20240701BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240701BHJP
【FI】
A61K36/02 ZNA
A61P29/02
A61P25/04
A61P43/00 111
A61K36/11
A61K36/756
A61K36/346
A61K36/65
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023150099
(22)【出願日】2023-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2022208951
(32)【優先日】2022-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 典江
【テーマコード(参考)】
4C088
【Fターム(参考)】
4C088AA12
4C088AA18
4C088AB30
4C088AB51
4C088AB62
4C088AC01
4C088AC03
4C088AC05
4C088AC06
4C088AC11
4C088AC15
4C088BA08
4C088CA03
4C088NA14
4C088ZA08
4C088ZC41
(57)【要約】
【課題】侵害受容性疼痛等の疼痛に対して有効であり、簡便に投与し得る、新規な鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤を提供する。
【解決手段】スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物を含有する鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物を含有する鎮痛剤。
【請求項2】
スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物を含有する、発痛関連物質の発現抑制剤。
【請求項3】
前記発痛関連物質がCOX-2、及びBdkrb1から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の発痛関連物質の発現抑制剤。
【請求項4】
スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物を含有する、痛覚伝達物質の遊離抑制剤。
【請求項5】
前記痛覚伝達物質がサブスタンスPである、請求項4に記載の痛覚伝達物質の遊離抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
痛みには侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛の2種があり、侵害受容器を介する痛み(侵害受容性疼痛)と、介さない痛みに大別される。侵害受容器とは痛みを起こす刺激(侵害刺激)の受容器で、熱刺激・機械刺激・化学刺激の受容器がこれにあたる。
侵害受容器を介さない痛みとしては、神経障害に起因する痛み(神経障害性疼痛)がある。
侵害受容器を介する痛みである侵害受容性疼痛は、種々の疾患や外傷に伴って生じるが、その一つとして口内炎が挙げられる。
【0003】
例えば、口内炎は、口腔粘膜に生じる炎症の総称であり、原因によってカタル性口内炎、アフタ性口内炎、薬剤性口内炎、放射線性口内炎などに分類される。カタル性口内炎は、義歯や矯正器具の接触、不正咬合などの物理的な刺激により発症する口内炎である。アフタ性口内炎は、主に心理的なストレスにより発症する口内炎であるが、その発症のメカニズムは不明である。薬剤性口内炎は、抗がん剤等が誘発する口内炎であり、強い痛みを伴い、広範囲に広がる重度の難治性口内炎である。放射線性口内炎は、主に口腔がん、咽頭がんなどの治療に用いる放射線によって発症する口内炎である。
口内炎の主要な病態の一つとして強い接触痛が挙げられ、摂食・嚥下時や発語時、ブラッシング時等に困難を伴うことが大きな問題となっている。
口内炎を治療するための薬剤として、例えば、特許文献1には、アラントイン又はその誘導体と、ビタミンB又はその誘導体とを含有する口腔用組成物が記載されている。また、特許文献2には、局所麻酔剤を用いることで患部の痛みを緩和することができる口内炎用薬剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-8831号公報
【特許文献2】特開平9-95456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術においては、様々な鎮痛剤が検討されているが、特許文献1に記載のものは口腔内の創傷治癒作用による口内炎治療のための口腔用組成物であるため、疼痛そのものを抑制できるわけではない。特許文献2に記載のものは所望の場所に適用することが難しく、また局所麻酔剤により口腔内が鈍麻し、正常な感覚が喪失するため、飲食物の摂取や会話等、使用中のQOLが著しく損なわれる。
そこで、十分な鎮痛効果を有し、かつ、簡便に投与し得る新たな鎮痛剤の開発が求められている。
【0006】
本発明は、十分な鎮痛効果を有し、炎症箇所に対し特異的かつ局所的に作用し、かつ簡便に使用できる新規な鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物が侵害受容性疼痛及び神経障害性疼痛等の疼痛に対して鎮痛効果を有し、かつ、簡便に投与し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記に示す手段により上記課題を解決することができたものである。
〔1〕
スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物を含有する鎮痛剤。
〔2〕
スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物を含有する、発痛関連物質の発現抑制剤。
〔3〕
前記発痛関連物質がCOX-2、及びBdkrb1から選択される少なくとも1種である、〔2〕に記載の発痛関連物質の発現抑制剤。
〔4〕
スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物を含有する、痛覚伝達物質の遊離抑制剤。
〔5〕
前記痛覚伝達物質がサブスタンスPである、〔4〕に記載の痛覚伝達物質の遊離抑制剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明の鎮痛剤は、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物を含有することにより、侵害受容性疼痛等の疼痛に対して有効であり、簡便に投与し得る。また、本発明の発痛関連物質の発現抑制剤は、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物を含有することにより、発痛関連物質の発現を抑制することができる。さらに、本発明の痛覚伝達物質の遊離抑制剤は、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物を含有することにより、痛覚伝達物質の遊離を抑制することができる。また、本発明の鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤は、簡便な方法により投与が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実験例1における治癒率(創傷部の面積)の推移を示す図である。
図2図2は、実験例1における供試動物の体重増加率の推移である。
図3図3は、実験例2で得られたGAPDHの発現量に対するCOX-2 mRNAの発現量(COX-2/GAPDH)を示す図である。
図4図4は、実験例2で得られたGAPDHの発現量に対するTNF-α mRNAの発現量(TNF-α/GAPDH)を示す図である。
図5図5は、実験例2で得られたGAPDHの発現量に対するIL-6 mRNAの発現量(IL-6/GAPDH)を示す図である。
図6図6は、実験例2で得られたGAPDHの発現量に対するBdkrb1 mRNAの発現量(Bdkrb1/GAPDH)を示す図である。
図7図7は、実験例3におけるサブスタンスPの遊離量比を評価した結果を示す図である。
図8図8は、実験例4における供試動物の体重増加率の推移である。
図9図9は、実験例5で得られたGAPDHの発現量に対するTNF-α mRNAの発現量(TNF-α/GAPDH)を示す図である。
図10図10は、実験例5で得られたGAPDHの発現量に対するIL-6 mRNAの発現量(IL-6/GAPDH)を示す図である。
図11図11は、実験例5で得られたGAPDHの発現量に対するBdkrb1 mRNAの発現量(Bdkrb1/GAPDH)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0012】
本発明の実施形態に係る鎮痛剤は、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物を含有することを特徴とする。
【0013】
スギナの抽出物(スギナ抽出物)は、生薬の一種であるトクサ科(Equisetaceae)トクサ属(Equisetum)スギナ(Equisetum arvense)、の全草に含まれている成分を抽出したものであり、スギナエキス、油溶性スギナエキスが挙げられる。
スギナエキスは、例えば、医薬部外品原料規格 2021(厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課)1571頁に記載の方法に準じて得られる。
具体的には、スギナエキスは、スギナの全草より水、エタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール又はこれらの混液、もしくは1%尿素含有エタノール溶液、1%尿素含有1,3-ブチレングリコール溶液にて抽出して得られる。
中でも、スギナの全草より、水、エタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール又はこれらの混液にて抽出して得られるエキスが好ましく、水、1,3-ブチレングリコール又はこれらの混液にて抽出して得られるエキスがより好ましい。
【0014】
油溶性スギナエキスは、例えば、上記医薬部外品原料規格の3040頁に記載の方法に準じて得られる。
具体的には、スギナ(Equisetum arvense L.(Equisetaceae))の栄養茎を乾燥したものに、「ヒマワリ油(1)」を加え、抽出したものである。
【0015】
海藻の抽出物(海藻抽出物)は、海藻の全藻に含まれている成分を抽出したものであり、例えば、上記医薬部外品原料規格の845~848頁に記載の方法に準じて得られる海藻エキス(2)~(5)を挙げることができる。
具体的には、海藻エキス(2)は、褐藻類(Phaeophyceae)の全藻から塩化ナトリウム溶液で抽出して得られるエキスである。海藻エキス(2)は、主としてアルギン酸からなる。
海藻エキス(3)は、コンブ属(Laminaria(Laminariaceae))又はイギス属(Ceramium(Ceramiaceae))の全藻から水にて抽出して得られるエキスである。海藻エキス(3)は、主としてアルギン酸及びカラギーナンよりなる。
海藻エキス(4)は、褐藻類(Phaeophyceae),紅藻類(Rhodophyta)又は緑藻類(Chlorophyta)の全藻から1,3-ブチレングリコール溶液にて抽出して得られるエキスである。
海藻エキス(5)は、紅藻類(Rhodophyta)の全藻から水又はジプロピレングリコール溶液で抽出して得られるエキスである。
中でも、コンブ属又はイギス属の全藻から水にて抽出して得られるエキスや褐藻類,紅藻類又は緑藻類の全藻から1,3-ブチレングリコール溶液にて抽出して得られるエキスが好ましい。
【0016】
オウバクの抽出物(オウバク抽出物)は、例えば、上記医薬部外品原料規格の767頁に記載の方法に準じて得られるオウバクエキスを挙げることができる。
具体的には、キハダ(Phellodendron amurense Rupr.(Rutaceae))又はその他同属植物の周皮を除いた樹皮から水、エタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール又はこれらの混液で抽出して得られるエキスである。
中でも、キハダの周皮を除いた樹皮から、水、エタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール又はこれらの混液で抽出して得られるエキスが好ましく、水、1,3-ブチレングリコール又はこれらの混液で抽出して得られるエキスがより好ましい。
【0017】
セージの抽出物(セージ抽出物)は、例えば、上記医薬部外品原料規格の1678頁に記載の方法に準じて得られるセージエキスを挙げることができる。
具体的には、セージ(Salvia officinalis L.(Labiatae))の花、葉又は全草から、水、エタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール又はこれらの混液もしくは1%尿素含有エタノール溶液、1%尿素含有1,3-ブチレングリコール溶液にて抽出して得られるエキスである。
中でも、セージの全草から、水、エタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール又はこれらの混液にて抽出して得られるエキスが好ましく、水、1,3-ブチレングリコール又はこれらの混液にて抽出して得られるエキスがより好ましい。
【0018】
シャクヤクの抽出物(シャクヤク抽出物)は、例えば、上記医薬部外品原料規格の1492頁に記載の方法に準じて得られるシャクヤクエキスを挙げることができる。
具体的には、シャクヤク(Paeonia lactiflora Pall.(Paeonia albiflora Pall. var. trichocarpa Bunge) (Paeoniaceae))又はその他近縁植物(Paeoniaceae)の根から、水、エタノール、1,3-ブチレングリコール、又はこれらの混液にて抽出して得られるエキスである。
中でも、シャクヤクの根から、水、エタノール、1,3-ブチレングリコール又はこれらの混液にて抽出して得られるエキスが好ましく、水、1,3-ブチレングリコール又はこれらの混液にて抽出して得られるエキスがより好ましい。
【0019】
痛み(疼痛)は、「機械的・化学的・熱刺激等のストレスによる組織損傷がもたらす不快な感覚的体験」と定義される。皮膚などに侵襲が加わると、侵襲ストレスが末梢神経のAδ線維(伝導速度が速い)とC線維(伝導速度が遅く痛みが永く続く)の末端で認識され、脊髄後根、脊髄後角、脊髄視床路を経て大脳皮質に伝えられる。機械的刺激はAδ/C線維、熱刺激と化学刺激はC線維によって感知される。
痛覚に関する神経伝達物質(以下、痛覚伝達物質という)の多くは神経線維Aδ線維及びC線維によって伝達され、限局した鋭く速い痛みはAδ線維によって伝達され、鈍く遅い痛みはC線維によって伝達される。
【0020】
発痛関連物質としては、例えば、ブラジキニン、セロトニン、ヒスタミン、プロスタグランジン等の発痛関連物質、COX-2(Cyclooxygenase-2)等の発痛関連物質の合成酵素、Bdkrb1(Bradykinin receptor B1)等の痛みの受容器が挙げられる。
遊離した発痛関連物質が、神経に存在する痛みの受容器(例えば、Bdkrb1(Bradykinin receptor B1)に作用すると、痛覚伝達物質が産生・放出され脊髄を介し痛みの情報として脳へ伝わる。また、痛覚伝達物質により神経性炎症が起こる。
炎症性サイトカインは、生体内における様々な炎症症状を引き起こす原因因子として関与する物質である。炎症性サイトカインとしては、例えば、TNF-α(Tumor Necrosis Factor-α)、IL-1β(Interleukin 1 beta)、IL-6(Interleukin 6)、IFN-γ(Interferon gamma)、IL-8(Interleukin 8)等が挙げられる。炎症性サイトカインは発痛関連物質と相互作用することで、炎症性疼痛を増強することが知られている。
痛覚伝達物質としては、例えば、アデノシン三リン酸(ATP)、グルタミン酸等のアミノ酸、サブスタンスP等の神経ペプチド等が挙げられる。
【0021】
本発明の実施形態に係る鎮痛剤における鎮痛効果のメカニズムは定かではないが、発明者は以下のように推測している。
すなわち、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物は、例えば、サブスタンスPなどの痛覚伝達物質の遊離及び放出を抑制することで、血管透過性の亢進及びヒスタミンの放出を抑え、さらに、COX-2、および/または、PGE2(Prostaglandin E2)等の発痛関連物質の産生を抑制することで鎮痛効果を発揮していると推察される。また、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物は、TRPV1(Transient receptor potential V1)に作用すると推測され、痛覚伝達物質の遊離及び放出を抑制し、鎮痛効果を得ることができる。
【0022】
スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物(固形分換算)は、本発明の実施形態に係る鎮痛剤の全量に対して、例えば、0.001質量ppm以上、好ましくは0.01質量ppm以上、より好ましくは0.05質量ppm以上、さらに好ましくは0.1質量ppm以上含有することができ、また3質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以下含有することができる。例えば、0.001質量ppm~3質量%、好ましくは0.01質量ppm~0.1質量%、より好ましくは0.05質量ppm~0.05質量%、さらに好ましくは0.1質量ppm~0.01質量%含有することができる。0.001質量ppm以上とすることによって、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物の鎮痛効果の増強が期待され、3質量%以下とすることによって、処方化が容易となり、特に口腔用組成物において良好な使用感が得られる。
【0023】
スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物は、実施例で後述するように市販のものを使用することもできる。
スギナの抽出物の市販品としては、例えば、「スギナ抽出液BG」(丸善製薬株式会社製)、「スギナ抽出液」(丸善製薬株式会社製)、「すぎな抽出液」(香栄興業株式会社製)等が挙げられる。
海藻の抽出物の市販品としては、例えば、「アルジェレックス S」(一丸ファルコス株式会社製)、「アルガヴィータT」(香栄興業株式会社製)、「マリンパージ」(一丸ファルコス株式会社製)等が挙げられる。
オウバクの抽出物の市販品としては、例えば、「オウバク抽出液BG-J」(丸善製薬株式会社製)、「オウバク抽出液 BG」(香栄興業株式会社製)、「オウバクリキッド B」(一丸ファルコス株式会社製)等が挙げられる。
セージの抽出物の市販品としては、例えば、「ファルコレックス セージB」(一丸ファルコス株式会社製)、「サルビア抽出液BG-J」(丸善製薬株式会社製)、「セージエキス-BG」(株式会社ヤマダ薬研製)等が挙げられる。
シャクヤクの抽出物の市販品としては、例えば、「シャクヤク抽出液BG-JC」(丸善製薬株式会社製)、「ファルコレックス シャクヤク B」(一丸ファルコス株式会社製)、「シャクヤク抽出液 BG-50」(香栄興業株式会社製)等が挙げられる。
【0024】
スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物は、上述したとおり、医薬部外品原料規格に記載の方法に準じて得られるものを好ましく使用できるが、従来公知の方法等により抽出した抽出物を使用することもできる。
【0025】
すなわち、本発明の実施形態に係る鎮痛剤において、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物の抽出方法は特に制限されず、従来公知の方法を用いることができる。
例えば、スギナ、海藻、オウバク、セージ、又はシャクヤクの任意の部位をそのまま、または裁断、粉砕等したのち、搾取、溶媒抽出、水蒸留、及び水蒸気蒸留等によって抽出物を得ることができる。
【0026】
溶媒抽出の方法としては、当該技術分野において公知の方法を採用すればよく、例えば水(温水、熱水を含む)抽出、アルコール抽出、超臨界抽出、マイクロウェーブ抽出、及び圧搾抽出等の従来公知の抽出方法を利用することができる。
【0027】
溶媒抽出を行う場合、溶媒としては、例えば水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、及び1,3-ブチレングリコール等のアルコール類;アセトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;アセトニトリル等のニトリル類;酢酸エチルエステル等のエステル類;ヘキサン、キシレン、ベンゼン、及びクロロホルム等が例示される。
溶媒抽出における溶媒として好ましくは、水、アルコール類、ケトン類、及びヘキサン等であり、より好ましくは水、アルコール類、及びケトン類である。これらの溶媒は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
得られた抽出物は、そのままの状態で使用してもよく、乾燥させて使用してもよい。また、必要に応じて、得られた抽出物に精製、及び濃縮処理等を施してもよい。精製処理としては、例えば濾過またはイオン交換樹脂や活性炭カラム等を用いた吸着、脱色、及び分離といった処理を例示できる。また、濃縮処理としては、エバポレーター等を用いた常法を例示できる。
また、これらに対して更に凍結乾燥等の乾燥処理を施してもよく、更に従来公知の方法に従って粉末化させてもよい。また、このようにして得た抽出物を、必要に応じて水やエタノール等に溶解して用いてもよい。
【0029】
上述のとおり、本発明の実施形態に係る鎮痛剤による発痛関連物質及び痛覚伝達物質の遊離抑制効果は、例えば、発痛関連物質遺伝子の合成酵素や発痛関連物質遺伝子の受容体又は炎症性サイトカインのmRNAの発現量を指標に評価することができる。
炎症性サイトカインは、生体内における様々な炎症症状を引き起こす原因因子として関与する物質である。炎症性サイトカインとしては、例えば、TNF-α、IL-1β、IL-6、IFN-γ、IL-8等が挙げられる。
【0030】
本発明の実施形態に係る鎮痛剤による痛覚伝達物質の遊離抑制効果は、例えば、ラットの脊髄後根神経節(DRG)から神経細胞群を単離培養したものを用いて評価することができる。例えば、痛覚伝達物質として、サブスタンスP(Substance P)に着目し高濃度カリウムイオン(K100mM)やカプサイシンにより神経細胞を脱分極させた際に遊離するサブスタンスPを測定する評価系で、刺激の前後におけるサブスタンスPの遊離量比を指標として評価できる。
より具体的には実施例にて詳述する。
【0031】
本発明の実施形態に係る鎮痛剤は、発痛関連物質の発現抑制剤、又は痛覚伝達物質の遊離抑制剤として用いることができる。また、本発明の実施形態に係る鎮痛剤は、炎症性サイトカインの発現抑制剤として用いることができる。
すなわち、本発明の実施形態に係る発痛関連物質の発現抑制剤は、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物を含有する。また、本発明の実施形態に係る発痛関連物質の発現抑制剤においては、発痛関連物質がCOX-2、及びBdkrb1から選択される少なくとも1種であってもよい。
本発明の実施形態に係る炎症性サイトカインの発現抑制剤は、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物を含有する。
また、本発明の実施形態に係る痛覚伝達物質の遊離抑制剤は、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物を含有する。
本発明の実施形態に係る発痛関連物質の発現抑制剤、炎症性サイトカインの発現抑制剤、及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤は、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物を有効成分として含有し、発痛関連物質、及び炎症性サイトカインの発現並びに痛覚伝達物質の遊離・放出を抑制するため、鎮痛効果を奏する。
【0032】
上述したとおり、発痛関連物質としては、例えば、ブラジキニン、セロトニン、ヒスタミン、プロスタグランジン等が挙げられる。
痛覚伝達物質としては、例えば、アデノシン三リン酸(ATP)、グルタミン酸等のアミノ酸、サブスタンスP等の神経ペプチド等が挙げられる。本発明の実施形態に係る痛覚伝達物質の遊離抑制剤において、痛覚伝達物質がサブスタンスPであってもよい。
【0033】
本発明の実施形態に係る発痛関連物質の発現抑制剤、炎症性サイトカインの発現抑制剤及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤において、有効成分であるスギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物の含有量(固形分換算)は、発痛関連物質の発現抑制剤、炎症性サイトカインの発現抑制剤及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤の全量に対して、例えば、0.001質量ppm以上、好ましくは0.01質量ppm以上、より好ましくは0.05質量ppm以上、更に好ましくは0.1質量ppm以上、より更に好ましくは0.0001質量%以上、特に好ましくは0.0005質量%以上、最も好ましくは0.001質量%以上含有することができ、また、例えば3質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下、特に好ましくは0.015質量%以下、最も好ましくは0.01質量%以下含有することができる。例えば0.0001~1.0質量%、好ましくは0.0005~0.1質量%、より好ましくは0.001~0.015質量%含有することができる。また、例えば、0.001質量ppm~3質量%、好ましくは0.01質量ppm~0.1質量%、より好ましくは0.05質量ppm~0.05質量%、さらに好ましくは0.1質量ppm~0.01質量%含有してもよい。
【0034】
本発明の実施形態に係る鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、炎症性サイトカインの発現抑制剤又は痛覚伝達物質の遊離抑制剤は、ヒト、又は動物に使用することができる。
【0035】
本発明の実施形態に係る鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、炎症性サイトカインの発現抑制剤及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤は、食品組成物、化粧品、口腔用組成物、入浴剤組成物、医薬品又は医薬部外品として用いることができる。
【0036】
本発明の実施形態に係る鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、炎症性サイトカインの発現抑制剤及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤は、スギナ、海藻、オウバク、セージ、又はシャクヤクの抽出物のみからなってもよく、食品組成物、化粧品、口腔用組成物、入浴剤組成物、医薬部外品又は医薬品に使用可能な材料を更に含有してもよい。食品組成物、化粧品、口腔用組成物、入浴剤組成物、医薬部外品又は医薬品に使用可能な材料としては、特に制限されるものではないが、例えば、アミノ酸、タンパク質、炭水化物、油脂、甘味料、ミネラル、ビタミン、香料、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤等が挙げられる。
【0037】
本発明の実施形態に係る鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、炎症性サイトカインの発現抑制剤及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤の形状は制限されず、固体(粉末、顆粒等)、液体(溶液、懸濁液等)、ゲル、ジェル、ペースト、クリーム等のいずれの形状であってもよく、散剤、丸剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、スプレー剤、液剤、懸濁剤、フィルム剤、貼付剤等のいずれの剤形であってもよく、口腔内全体にわたって均一かつ簡便に投与し得る点から液体であることが好ましい。
【0038】
食品組成物としては、例えば、健康食品、特定保健用食品、機能性食品、栄養機能食品、サプリメント等の形態で提供されてもよい。
化粧品としては、例えば、ローション、クリーム、ゲル、パウダーなどが例示される。化粧品には、化粧水、シャンプー、石けん、ボディーソープ、ボディークリーム、スキンパウダー等の形態で提供されてもよい。
口腔用組成物としては、例えば、洗口液、口中清涼剤、うがい薬(含嗽剤)、液状歯磨き及び練り歯磨き等の歯磨き類、ジェル、軟膏、泡、トローチ、フィルム、チューインガム等の形態とすることができる。
【0039】
本発明の実施形態に係る鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、炎症性サイトカインの発現抑制剤及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤は患部に直接塗布してもよく、経口投与がされてもよく、経皮投与や静脈投与等の非経口投与がされてもよい。
【0040】
本発明の実施形態に係る鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、炎症性サイトカインの発現抑制剤及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤が患部に経皮又は経粘膜投与や直接塗布される場合、その使用量としては、例えば、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物の総量(固形分換算)が1回当たり5pg/kg(体重)以上となるように適用されるのが好ましく、50pg/kg(体重)以上となるように使用されるのがより好ましく、500pg/kg(体重)以上となるように使用されるのが更に好ましい。また、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物の総量が1日当たり5pg/kg(体重)以上となるように使用されるのが好ましく、50pg/kg(体重)以上となるように使用されるのがより好ましく、500pg/kg(体重)以上となるように使用されるのが更に好ましい。また、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物の総量が1回当たり2000mg/kg(体重)以下となるように使用されるのが好ましく、1500mg/kg(体重)以下となるように使用されるのがより好ましく、1000mg/kg(体重)以下となるように使用されるのが更に好ましく、500mg/kg(体重)以下となるように使用されるのがより更に好ましく、100mg/kg(体重)以下となるように使用されるのがより一層好ましく、50mg/kg(体重)以下となるように使用されるのが特に好ましく、10mg/kg(体重)以下となるように使用されるのが最も好ましい。
また、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物の総量が1日当たり3000mg/kg(体重)以下となるように使用されるのが好ましく、2500mg/kg(体重)以下となるように使用されるのがより好ましく、2000mg/kg(体重)以下となるように使用されるのが更に好ましく、1500mg/kg(体重)以下となるように使用されるのがより更に好ましく、1000mg/kg(体重)以下となるように使用されるのがより一層好ましく、500mg/kg(体重)以下となるように使用されるのが特に好ましく、100mg/kg(体重)以下となるように使用されるのが最も好ましい。
上記の範囲であれば、十分な量が患部に吸収及び又は浸透移行することや、十分な血中濃度を達成することができ、鎮痛、発痛関連物質の発現抑制、又は痛覚伝達物質の遊離抑制作用をより効果的に発現することができる。
また、経粘膜投与の場合、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物の総量が単位面積当たり0.1pg/cm以上となるように使用されるのが好ましく、0.5pg/cm以上となるように使用されるのがより好ましく、1pg/cm以上となるように使用されるのが更に好ましく、5pg/cm以上となるように使用されるのがより更に好ましく、10pg/cm以上となるように使用されるのがより一層好ましく、50pg/cm以上となるように使用されるのが特に好ましく、100pg/cm以上となるように使用されるのが最も好ましい。
また、経粘膜投与の場合、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物の総量が単位面積当たり100mg/cm以下となるように使用されるのが好ましく、50mg/cm以下となるように使用されるのがより好ましく、10mg/cm以下となるように使用されるのが更に好ましく、5mg/cm以下となるように使用されるのがより更に好ましく、1mg/cm以下となるように使用されるのがより一層好ましく、0.5mg/cm以下となるように使用されるのが特に好ましく、0.1mg/cm以下となるように使用されるのが最も好ましい。
【0041】
本発明の実施形態に係る鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、炎症性サイトカインの発現抑制剤及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤が経口投与される場合、投与量としては、例えば、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物の総量(固形分換算)が1回当たり5pg/kg(体重)以上となるように投与されるのが好ましく、50pg/kg(体重)以上となるように投与されるのがより好ましく、500pg/kg(体重)以上となるように投与されるのが更に好ましい。また、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物の総量が1日当たり5pg/kg(体重)以上となるように投与されるのが好ましく、50pg/kg(体重)以上となるように投与されるのがより好ましく、500pg/kg(体重)以上となるように投与されるのが更に好ましい。また、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物の総量が1回当たり2000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのが好ましく、1500mg/kg(体重)以下となるように投与されるのがより好ましく、1000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのが更に好ましい。また、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物の総量が1日当たり3000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのが好ましく、2500mg/kg(体重)以下となるように投与されるのがより好ましく、2000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのが更に好ましい。この範囲であれば、十分な血中濃度を達成することができ、鎮痛、発痛関連物質の発現抑制、炎症性サイトカインの発現抑制又は痛覚伝達物質の遊離抑制作用をより効果的に発現することができる。
【0042】
本発明の実施形態に係る鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、炎症性サイトカインの発現抑制剤及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤が、非経口投与される場合、投与量としては、例えば、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物の総量(固形分換算)が1回当たり5pg/kg(体重)以上となるように投与されるのが好ましく、50pg/kg(体重)以上となるように投与されるのがより好ましく、500pg/kg(体重)以上となるように投与されるのが更に好ましい。また、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物の総量が1日当たり5pg/kg(体重)以上となるように投与されるのが好ましく、50pg/kg(体重)以上となるように投与されるのがより好ましく、500pg/kg(体重)以上となるように投与されるのが更に好ましい。また、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物の総量が、1回当たり4000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのが好ましく、3000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのがより好ましく、2000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのが更に好ましい。また、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物の総量が1日当たり4000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのが好ましく、3000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのがより好ましく、2000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのが更に好ましい。この範囲であれば、十分な血中濃度を達成することができ、鎮痛効果、発痛関連物質の発現抑制、炎症性サイトカインの発現抑制、及び痛覚伝達物質の遊離抑制をより効果的に発現することができる。
【0043】
本発明の実施形態に係る鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、炎症性サイトカインの発現抑制剤、及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤は、粘膜で吸収されやすいため簡便な方法により適用が可能である。例えば、口腔内の粘膜で吸収が可能であることから、口腔用組成物に用いることが好ましい。
【0044】
本発明の実施形態に係る鎮痛剤を、口腔用組成物に用いる場合は、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物の総量(固形分換算)を、例えば、0.001質量ppm以上、好ましくは0.01質量ppm以上、より好ましくは0.05質量ppm以上、更に好ましくは0.1質量ppm以上、より更に好ましくは0.0001質量%以上、特に好ましくは0.0005質量%以上、最も好ましくは0.001質量%以上含有することができ、また、例えば3質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下、特に好ましくは0.015質量%以下、最も好ましくは0.01質量%以下含有することができる。例えば0.0001~1.0質量%、好ましくは0.0005~0.1質量%、より好ましくは0.001~0.015質量%含有することができる。また、例えば0.001質量ppm~3質量%、好ましくは0.01質量ppm~0.1質量%、より好ましくは0.05質量ppm~0.05質量%、さらに好ましくは0.1質量ppm~0.01質量%含有してもよい。0.001質量ppm以上とすることによって、上記抽出物(固形分換算)の鎮痛効果を発揮しうる濃度となり、3質量%以下にすることにより、抽出物由来の苦味、えぐ味等の味やにおい等による嗜好性、使用感の低下、抽出物による褐変等の変色や析出等の製剤の安定性、容器への着色等への影響も少ない。
【0045】
本発明の実施形態に係る鎮痛剤の有効成分であるスギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物は、粘膜から吸収されやすく、低刺激で優れた鎮痛効果を発揮するため、鎮痛剤を、口腔用組成物として用いることが好ましい。
本発明の実施形態に係る鎮痛剤を、口腔用組成物に用いる場合、口腔内に生じる種々の炎症性疾患に伴う痛み、例えば、歯肉炎や歯周炎等の歯周病や、口内炎やカンジダ菌等の真菌感染に起因する炎症、義歯等の補綴物との接触により生じる粘膜炎等に伴う痛みや、歯科治療に伴う創傷部の痛み等に適用することができる。
【0046】
ここで、「歯周病」とは、デンタルプラーク中の歯周病原細菌等により、歯周組織辺縁部に炎症がひき起こされる炎症性疾患をいい、歯肉炎と歯周炎が包含される。
【0047】
口腔用組成物は、組成物全体を口腔内に十分にいきわたらせるため、口腔内に適量を含み使用する洗口液または、液状歯磨き剤としての用途が好適である。洗口液とするには、例えば、水やエタノール等を溶剤とし、常法によって調製すればよい。
また、液状歯磨き剤としては、例えば、リン酸水素カルシウム、水酸化アルミニウム、無水ケイ酸、及び炭酸カルシウム等の研磨剤を必要に応じて含有したものとして使用することもできる。
【0048】
また、口腔用組成物は、本発明の効果を損なわない限り、その他任意の成分を含有してよい。
例えば、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物;アズレン、アズレンスルホン酸塩、グリチルリチン酸又はその塩、β-グリチルレチン酸、ジヒドロコレステロール、エピジヒドロコレステリン、酢酸dl-α-トコフェロール、ニコチン酸dl-α-トコフェロール、ε-アミノカプロン酸、トラネキサム酸、アラントイン、アスコルビン酸等の抗炎症剤;リン酸塩、ポリリン酸塩、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、塩化亜鉛、有機酸亜鉛等の歯石予防剤;ヒノキチオール、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム、塩化ナトリウム等の収斂剤;グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール等の湿潤剤;ラウリル硫酸ナトリウム等の発泡剤;ピネン、ペパーミント油、スペアミント油、和種ハッカ油、シナモンオイル、クローブオイル、オイゲノール、レモンオイル、バニリン、シネオール、ユーカリオイル等の香料;セイヨウサンザシ、ハマメリス、シラカバ等の植物抽出物;サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、ステビア等の甘味料;青色1号、黄色5号、黄色4号、黄色203号、緑色3号、緑色201号、赤色102号等の着色剤;パラベン類、安息香酸ナトリウム等の保存剤;リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム等のpH調整剤;POE硬化ヒマシ油、POE・POPブロックポリマー、POE・POPアルキルエーテル、POEアルキルエーテル、POEアルキルフェニルエーテル、POE脂肪酸エステル、POE高級アルコールエーテル、POE・POP脂肪酸エステル、POEソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤;ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、POEアルキルエーテル硫酸塩、ラウロイルサルコシナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩、POEアルキルエーテルリン酸塩、N-アシルタウリン塩、POEアルキルエーテルリン酸・リン酸塩、スルホン酸塩等のアニオン性界面活性剤;塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、POEアルキルアミン・脂肪酸アミド等のカチオン性界面活性剤;2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム等の両性界面活性剤等が挙げられる。
【0049】
本発明の実施形態に係る鎮痛剤、発痛関連物質の発現抑制剤、炎症性サイトカインの発現抑制剤、又は痛覚伝達物質の遊離抑制剤を動物へ使用する場合、動物用医薬部外品又は動物用医薬品、飼料、飼料添加物として用いることができる。
【0050】
飼料としては、ドッグフード、キャットフード等のコンパニオン・アニマル用飼料、家畜用飼料、家禽用飼料等が挙げられる。「飼料」には、動物が栄養目的で経口的に摂取するもの全てが含まれる。より具体的には、養分含量の面から分類すると、粗飼料、濃厚飼料、無機物飼料、特殊飼料の全てを包含し、また公的規格の面から分類すると、配合飼料、混合飼料、単体飼料の全てを包含する。また、給餌方法の面から分類すると、直接給餌する飼料、他の飼料と混合して給餌する飼料、又は飲料水に添加し栄養分を補給するための飼料の全てを包含する。
【0051】
本発明の実施形態に係る発痛関連物質の発現抑制剤、炎症性サイトカインの発現抑制剤、及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤の具体的な態様は、上述した鎮痛剤における態様と同様であってもよい。すなわち、上述した鎮痛剤に関する記載は、発痛関連物質の発現抑制剤、炎症性サイトカインの発現抑制剤、及び痛覚伝達物質の遊離抑制剤に適用することができる。
【実施例0052】
以下、本発明を下記実験例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0053】
<実験例1:鎮痛剤の鎮痛効果の評価1>
本試験では、スギナ抽出物を含む鎮痛剤の鎮痛効果について、口内炎モデルハムスターを用いて評価した。
【0054】
〔検体の調製〕
まず、スギナ抽出物(丸善製薬社製、(製品名)スギナ抽出液BG)及び生理食塩水(大塚製薬社製、(製品名)大塚生食)を用いてスギナ抽出物を固形分換算で15μg/mL含むスギナ抽出物含有生理食塩水(鎮痛剤)を調製した。
なお、生理食塩水をコントロール溶液とした。
【0055】
〔方法〕
4週齢のSyrian系ハムスター(雄)を1週間ケージで予備飼育し、5週齢とした(n=4)。
ハムスターを麻酔下でコルクボードに固定し、右側頬嚢に10(w/v)%酢酸生理食塩水を30μL皮内注射して、口内炎(創傷)を作製した。
口内炎作製後、創傷部の長径と短径を測定した後、1頭あたり鎮痛剤50μLを創傷部に塗布した。鎮痛剤の塗布及び体重測定は1日1回、創傷部の長径と短径の測定は2日に1回とし、これを6日間連続で行い、7日目は創傷部の長径と短径の測定、及び体重測定を行った。得られた結果から口内炎治癒率及び体重増加率の経日推移を評価した。
鎮痛剤を生理食塩水(コントロール溶液)に変更した以外は同様にして評価した。
【0056】
また、口内炎治癒率及び体重増加率は、以下の式を用いて算出した。
口内炎治癒率(%)={(創傷作製時の面積-測定時点の面積)/創傷作製時の面積}×100
体重増加率(%)={(測定時点の体重-創傷作製時の体重)/創傷作製時の体重}×100
【0057】
〔結果〕
結果を図1及び図2に示す(n=4)。
図1は、鎮痛剤を塗布した場合と生理食塩水を塗布した場合の治癒率(創傷部の面積)の推移である。
図2は、鎮痛剤を塗布した場合と生理食塩水を塗布した場合の体重増加率の推移である。
【0058】
図1に示すように、コントロール溶液を塗布した場合と鎮痛剤を塗布した場合とで、治癒率(創傷部の面積)の推移に差は見られなかった。図2に示す体重増加率は、鎮痛剤を塗布した場合、コントロール溶液を塗布した場合と比較して、全ての測定時点で高く推移することがわかった。
【0059】
試験に供試したSyrian系ハムスターの雄は、生後から6週齢にかけて生涯で最も体重が増加することが知られている。その間、飼料が豊富に存在する場合は摂食行動を続け、一次関数的な体重増加率を示す。また、口内炎を誘発したハムスターの場合、摂食時に創傷の程度(創傷部の面積)に比例した痛みを感じるため、摂食行動が低下し、結果として体重増加率も低下することが予想される。しかしながら、スギナ抽出物含有生理食塩水を塗布したハムスターでは、治癒率がコントロール溶液と変わらないにも関わらず、体重増加率は高い値を示した。このことから、スギナ抽出物は、口内炎の治癒効果には影響を及ぼさず、鎮痛効果を有することが示唆された。
【0060】
<実験例2:発痛関連物質の発現抑制効果の評価>
本試験ではスギナの抽出物を含む鎮痛剤による発痛関連物質の発現抑制効果について評価を行った。
【0061】
〔検体の調製〕
まず、スギナ抽出物及び生理食塩水を用いてスギナ抽出物を固形分換算で15μg/mL含む水溶液(鎮痛剤)を調製した。
なお、生理食塩水をコントロール溶液とした。
【0062】
〔方法〕
4週齢のSyrian系ハムスター(雄)を1週間ケージで予備飼育し、5週齢とした(n=5)。
ハムスターを麻酔下でコルクボードに固定し、右側頬嚢に検体(鎮痛剤及びコントロール溶液)50μL塗布した後、10(w/v)%酢酸生理食塩水30μLを皮内注射し、口内炎(創傷)を作製した。その後、1頭あたり検体(鎮痛剤及びコントロール溶液)50μLを再度創傷部に塗布した。
10時間後にCOガスを用いハムスターをサクリファイスした後、創傷部を含む口腔組織を回収し、-80℃にて凍結保管した。
口内炎の誘発及び検体による処理を行わなかった無処理群、及び上記の操作により得た鎮痛剤処理群及びコントロール溶液処理群について、下記(1)~(9)の操作を行った。
【0063】
(1)凍結保管した各群の口腔組織を氷上で解凍し、剃刀で細断した後、容量が1.5mLのチューブに入れ、RNA抽出試薬(Molecular Research Center inc.社製TRI Reagent)を600μL加え、ホモジナイズ棒を用いて粉砕した。
(2)クロロホルムを120μL加え、ボルテックスした。
(3)13,200rpmで20分間4℃の条件で遠心分離した。
(4)上清を回収し、上清と等量の2-プロパノールを加えて転倒混和した後、一晩-20℃で静置した。
【0064】
(5)13,200rpmで20分間4℃の条件で遠心分離した後、上清を除去してペレットのみとし、75(v/v)%エタノールを加えた。
(6)13,200rpmで10秒間4℃の条件で遠心分離した後、上清を除去してペレットのみとし、75(v/v)%エタノールを加えた。
(7)(6)の操作を3~5回繰り返した。
【0065】
(8)上清を除去してペレットのみとし、常温で乾燥させた後、RNaseフリー水(RNase free water)を20μL加えた。
(9)氷上で静置後、超微量分光計(Thermo scientific社製Nano drop)を用いてtotal RNAの収量を測定した後、逆転写酵素(東洋紡株式会社製ReverTra Ace)を用いてプロトコルに従いRNAを鋳型にcDNAを合成した。
【0066】
下記の操作にてmRNA発現を解析した。
(リアルタイムPCR)
Applied Biosystems StepOneTM Real time PCR System (Thermo Fisher Scientific社製)を用いて、ΔΔCt法によるリアルタイム(Real time)PCRを行った。試験には、FastStart Essential DNA Green Master(Roche社製)用い、プロトコルに従い以下の条件で実施した。
【0067】
(プライマー情報)
・配列番号1: GAPDH Forward: 5’-ACAGTCAAGGCTGAGAACGG-3’
・配列番号2: GAPDH Reverse: 5’-CAGGCGACATGTGAGATCCA-3’
・配列番号3: COX-2 Forward: 5’- ATGACTGCCCAACTCCCTTG-3’
・配列番号4: COX-2 Reverse: 5’- ACACCTCTCCACCAATGACC-3’
・配列番号5: TNF-alpha Forward: 5’-CTCCTTCCTGCTTGTGGGAG-3’
・配列番号6: TNF-alpha Reverse: 5’-GAGCCGATGATAGGGTTGGG-3’
・配列番号7: IL-6 Forward: 5’-TCTTCTTGGGACTGCTGCTG-3’
・配列番号8: IL-6 Reverse: 5’-TGTTCGTCACAAACTCCAGGT-3’
・配列番号9: Bdkrb1 Forward: 5’-CCCTCTAACCAAAGCCAGCA-3’
・配列番号10: Bdkrb1 Reverse: 5’-GCAGGCAGAGATGTTCAGGT-3’
【0068】
上記配列番号1及び2に示される塩基配列を有するプライマーは、ハムスター由来GAPDH 遺伝子mRNA配列(NCBI Nucleotide アクセッション番号 DQ403055.1)に基づき、上記配列番号3及び4に示される塩基配列を有するプライマーは、ハムスター由来COX-2遺伝子mRNA配列(NCBI Nucleotide アクセッション番号 AF345331.1)に基づき、上記配列番号5及び6に示される塩基配列を有するプライマーは、ハムスター由来TNF-α遺伝子mRNA配列(NCBI Nucleotide アクセッション番号 AF046215.1)に基づき、上記配列番号7及び8に示される基配列を有するプライマーは、ハムスター由来IL-6遺伝子mRNA配列(NCBI Nucleotide アクセッション番号 AB028635.1)に基づき、上記配列番号9及び10に示される基配列を有するプライマーは、ハムスター由来Bdkrb1遺伝子mRNA配列(NCBI Nucleotide アクセッション番号 XM 005139231.3)に基づきそれぞれ設計した。
【0069】
(リアルタイムPCR条件)
・95℃で10分を1サイクル
・95℃で10秒、55℃で10秒、及び72℃で1分のサイクルを計45サイクル
・72℃で5分を1サイクル
【0070】
〔結果〕
無処理群、コントロール溶液処理群(口内炎+生食)、及び鎮痛剤処理群(口内炎+スギナ)における、GAPDHの発現量に対するCOX-2の発現量(COX-2/GAPDH)、GAPDHの発現量に対するTNF-αの発現量(TNF-α/GAPDH)、GAPDHの発現量に対するIL-6の発現量(IL-6/GAPDH)、及びGAPDHの発現量に対するBdkrb1の発現量(Bdkrb1/GAPDH)をそれぞれ図3~6に示す(n=5)。
【0071】
酢酸生理食塩水を皮内注射して口内炎及び痛みを誘発した場合、スギナ抽出物を含有する鎮痛剤を2回塗布した鎮痛剤処理群においては、コントロール溶液処理群と比較して発痛関連物質(COX-2、Bdkrb1)の発現が抑制される傾向が見られた。
【0072】
酢酸生理食塩水の皮内注射によりCOX-2の産生が遺伝子レベルで上昇する傾向を認めた。また、スギナ抽出物を含有する鎮痛剤を塗布することで、COX-2の産生が遺伝子レベルで抑制される傾向を認めた。COX-2は痛みに寄与する代表的な因子であることから、スギナ抽出物を含有する鎮痛剤が疼痛の緩和に寄与した可能性が遺伝子の動きからも考察される。
【0073】
また、酢酸生理食塩水を皮内注射して口内炎及び痛みを誘発した場合、コントロール溶液処理群、及び鎮痛剤処理群では、無処理群と比較して、炎症性サイトカイン(TNF-α及びIL-6)を含む発痛関連物質の発現が高くなる傾向を認めた。また、鎮痛剤処理群はコントロール溶液処理群に比べて炎症性サイトカインの発現を抑えることができた。
【0074】
酢酸生理食塩水の皮内注射によりTNF-α、IL-6の発現が遺伝子レベルで上昇する傾向を認めた。また、スギナ抽出物を含有する鎮痛剤を塗布することで、TNF-α、IL-6の発現が遺伝子レベルで抑制される傾向を認めた。炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6)は炎症に寄与する代表的な因子であることから、スギナ抽出物を含有する鎮痛剤が炎症の緩和に寄与した可能性が遺伝子の動きからも考察される。
【0075】
また、酢酸生理食塩水の皮内注射によりBdkrb1の発現が遺伝子レベルで上昇する傾向を認めた。また、スギナ抽出物を含有する鎮痛剤を塗布することで、酢酸生理食塩水の皮内注射により誘発したBdkrb1の発現が抑制される傾向を認めた。
【0076】
ブラジキニンは、炎症と内臓痛に関係するキニン類の一種で、部分的に活性化マスト細胞からの受容体非依存的なヒスタミン及びセロトニンの放出を通して炎症を誘発する。ブラジキニンの作用を媒介する膜受容体には、7つの推定膜貫通領域を有する代表的なG蛋白質結合受容体であるBdkrb1(ブラジキニンB1受容体)及びBdkrb2(ブラジキニンB2受容体)がある。両者とも炎症性及び神経因性の痛覚過敏に寄与するが、Bdkrb2が恒常的に発現している一方、Bdkrb1は恒常的に発現せず、外傷や炎症により発現が誘発される。
このため、Bdkrb1の発現量への影響を評価することで、発痛関連物質であるブラジキニンのスギナ抽出物を含有する鎮痛剤による発現抑制効果を評価することができる。
【0077】
口内炎モデルハムスターの創傷部における炎症性サイトカインの発現上昇を、スギナ抽出物を含有する鎮痛剤が有意に抑制する傾向が確認されていることから、サイトカインにより発現が誘導されるBdkrb1もスギナ抽出物の効果により発現が抑制されたと考察する。
【0078】
以上の実験結果から、スギナ抽出物を含有する鎮痛剤には、抗炎症効果及び鎮痛効果がある可能性が遺伝子レベルで示され、発痛関連物質の発現抑制、炎症性サイトカインの発現抑制、及び痛覚伝達物質の遊離抑制に有効であることが示された。
【0079】
<実験例3:痛覚伝達物質の遊離抑制効果の評価>
本実験では、医薬部外品原料規格 2021(厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課)に記載の方法に準じて得た各種植物エキスを含有する鎮痛剤による痛覚伝達物質の遊離抑制効果について評価を行った。試験に供した植物エキス及びその製品名を下記に示した。
【0080】
(植物エキス)
・スギナエキス(丸善製薬社製、(製品名)スギナ抽出液BG、スギナの全草から50容量1,3-ブチレングリコール溶液にて抽出したもの)
・オウバクエキス(丸善製薬社製、(製品名)オウバク抽出液BG-J、キハダ又はその他同属植物の周皮を除いた樹皮から1,3-ブチレングリコール溶液にて抽出し、50容量%1,3-ブチレングリコール溶液としたもの)
・海藻エキス(4)(一丸ファルコス社製、(製品名)アルジェレックス S、褐藻類、紅藻類及び緑藻類の全藻から1,3-ブチレングリコール溶液にて抽出したもの)
・セージエキス(一丸ファルコス社製、(製品名)ファルコレックスセージB、セージの花、葉又は全草から1,3-ブチレングリコール溶液にて抽出したもの)
・シャクヤクエキス(丸善製薬社製、(製品名)シャクヤク抽出液BG-JC、シャクヤク又はその他近縁植物の根から50容量%1,3-ブチレングリコール溶液にて抽出したもの)
・ニンジンエキス(丸善製薬社製、(製品名)ニンジン抽出液BG)
・セイヨウサンザシエキス(一丸ファルコス社製、(製品名)ファルコレックスセイヨウサンザシB)
【0081】
7~8週齢のWistar系ラット(雄)の脊髄後根神経節(DRG)から神経細胞群を単離培養したものを用い、各種植物エキスを含有する鎮痛剤による痛覚伝達物質の遊離抑制効果を検証した(n=3)。
【0082】
〔検体の調製〕
Krebs-Hepes Bufferを検体1(コントロール)とした。また、表1に従って各種植物エキスを固形分換算で15μg/mL含むK Krebs-Hepes Buffer混合液(鎮痛剤)を調製し、それぞれ検体2~8とした。
【0083】
(Krebs-Hepes Bufferの調製)
滅菌水にNaCl(100mM)、KCl(4.5mM)、CaCl(2mM)、MgSO(1.2mM)、KHPO(1.2mM)、NaHCO(25mM)、glucose(11.7mM)、HEPES(10mM)を溶解し、1N NaOHを用いてpH7.4に調整した。
【0084】
(K Krebs-Hepes Bufferの調製)
滅菌水にNaCl(15.7mM)、KCl(98.8mM)、CaCl(2mM)、MgSO(1.2mM)、KHPO(1.2mM)、NaHCO(25mM)、glucose(11.7mM)、HEPES(10mM)を溶解し、1N NaOHを用いてpH7.4に調整した。
【0085】
【表1】
【0086】
〔方法〕
〔1〕ラミニンコート培養シャーレの作製
(1)Φ3.5mm培養シャーレに1mLの滅菌水を加え、4℃で2時間静置した。
(2)(1)で加えた滅菌水を除去した後、70(v/v)%エタノールを1mL加え、4℃で2時間静置した。
(3)(2)で加えた70(v/v)%エタノールを除去した後、滅菌水で1回洗浄した。
(4)1%ポリエチレンイミン溶液を1mL加え、4℃で一晩静置した。
(5)滅菌水で6回洗浄した。
(6)ラミニンを5μg/mLとなるように添加した0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH7.2)を1mL加え、4℃で一晩静置した。
(7)(6)で加えたリン酸緩衝液を除去した後、使用直前に、1mLのハンクス液で洗浄した。
【0087】
〔2〕DRGの単離
(1)ラットをCOガスを用いサクリファイスした。
(2)ラットの脊椎から脊髄後根神経節(DRG:Dorsal Root Ganglion)を単離し、ハンクス液中に回収した。
(3)DRGを容積が50mLのファルコンチューブ内のハンクス液で洗浄した。
(4)1000rpmで5分間、常温で遠心分離した。
(5)上清を除去してペレットのみとし、0.125質量%コラゲナーゼ入りの無血清DRG培地(DMEM10g/L、グルコース3.5g/L、グルタミン0.584g/L、HEPES2.38g/L、炭酸水素ナトリウム2g/L、ペニシリン100units/mL、ストレプトマイシン100μg/mLになるように滅菌水に溶解させた水溶液)を5mL加え、37℃で90分間振盪した。
(6)1000rpmで10分間、常温で遠心分離した。
(7)再度上清を除去してペレットのみとし、0.125質量%コラゲナーゼ入りの無血清DRG培地を5mL加え、37℃で90分間振盪した。
(8)1000rpmで15分間、常温で遠心分離した。
(9)上清を除去してペレットのみとし、ハンクス液を5mL加え、ピペッティングで軽く分散した。
(10)再度1000rpmで15分間、常温で遠心分離した。
(11)上清を除去してペレットのみとした後、0.25%トリプシン添加PBS 5mLを加え、37℃で30分間振盪した。
(12)1000rpmで15分間、常温で遠心分離した。
(13)上清を除去してペレットのみとした後、10%馬血清(Horse Serum heat inactivated:GIBCO,Invitrogen社製)及びNGF(Nerve Growth Factor;Promega社製)を30ng/mLとなるように添加したDRG培地8mLを加えて懸濁後、φ3.5mm培養シャーレに1mLずつ播種した。
(14)37℃ COインキュベータで一晩培養後、培地交換を行った。
(15)2日ごとに培地交換を行い、神経細胞の軸索伸長、及び、非神経細胞が密な状態になるまで培養した。
【0088】
〔3〕DRGを用いた痛覚伝達物質(サブスタンスP)遊離抑制効果の検証
(1)各培養シャーレからDRG培地を除去し、表2に記載の反応前液を1mL添加した。(2)37℃ COインキュベータ内で10分間静置した。
(3)上清を回収した(回収反応前液)。
(4)表2に記載の刺激用の反応液を各培養シャーレに添加した。
(5)37℃ COインキュベータ内で10分間静置した。
(6)上清を回収した(回収反応液)。
(7)回収した上清(回収反応全液及び回収反応液)をそれぞれ-80℃にて凍結保管した。
(8)氷上で融解した後、ELISA法(ParameterTM Substance P:R&D Systems社製)にて、サブスタンスP量をプロトコルに従い解析した。また、以下の式を用い、得られた結果から各サンプルにおける反応前後の遊離サブスタンスPの遊離量比を算出し、検体間で評価した。
【0089】
サブスタンスPの遊離量比=回収反応液中のサブスタンスP(pg/mL)-回収反応前液中のサブスタンスP(pg/mL)
【0090】
【表2】
【0091】
〔結果〕
結果を図7に示す(n=3)。
図7は、実験例3-1~3-8におけるサブスタンスPの遊離量比を評価した結果を示す図である。
【0092】
脊髄後根神経節(DRG)は、末梢からの感覚情報の中継点として機能する神経細胞の集団であり、疼痛を含む知覚の伝達に重要な役割を果たす。今回、ラットの脊髄後根神経節から神経細胞群を単離培養したものを用い、各種植物エキスを含有する鎮痛剤の痛覚伝達物質遊離抑制効果を検証した。痛覚伝達物質として、サブスタンスPに着目し高濃度カリウムイオン(K100mM)により誘発されたサブスタンスP遊離を測定する評価系で、刺激の前後におけるサブスタンスPの遊離量比を指標として検証した。
【0093】
その結果、実験例3-1(コントロール)では、高濃度カリウムイオンの刺激によりサブスタンスPの遊離量が上昇した。一方で、スギナエキス、オウバクエキス、海藻エキス、セージエキス、シャクヤクエキスをそれぞれ含有する鎮痛剤(検体2~6)を用いた実験例3-2~3-6では、実験例3-1(コントロール)に比べサブスタンスPの遊離量の上昇が抑制される傾向を認めた。また、ニンジンエキス、セイヨウサンザシエキスをそれぞれ含有する検体7、8を用いた実験例3-7、3-8では、実験例3-1(コントロール)に比べサブスタンスPの遊離量が顕著に上昇する傾向を認めた。
【0094】
<実験例4:鎮痛剤の鎮痛効果の評価2>
本試験では、オウバク、海藻、セージ、シャクヤクの各抽出物を含む鎮痛剤の鎮痛効果について、それぞれ、口内炎モデルハムスターを用いて評価した。
【0095】
〔検体の調製〕
まず、スギナ抽出物に替えてオウバク、海藻、セージ、シャクヤクの各抽出物を用いた以外は実験例1と同様にしてオウバク、海藻、セージ、シャクヤクの各抽出物を固形分換算で15μg/mL含む生理食塩水(鎮痛剤)を、それぞれ調製した。
また、試験に供した植物エキス及びその製品名を下記に示した。
【0096】
(植物エキス)
・オウバクエキス(丸善製薬社製、(製品名)オウバク抽出液BG-J)
・海藻エキス(4)(一丸ファルコス社製、(製品名)アルジェレックス S)
・セージエキス(一丸ファルコス社製、(製品名)ファルコレックスセージB)
・シャクヤクエキス(丸善製薬社製、(製品名)シャクヤク抽出液BG-JC)
【0097】
〔方法〕
4週齢のSyrian系ハムスター(雄)を1週間ケージで予備飼育し、5週齢とした(n=4)。
ハムスターを麻酔下でコルクボードに固定し、右側頬嚢に10(w/v)%酢酸生理食塩水を30μL皮内注射して、口内炎(創傷)を作製した。
口内炎作製後、1頭あたり鎮痛剤50μLを創傷部に塗布し続けた。鎮痛剤の塗布及び体重測定は1日1回とし、これを7日間連続で行った。得られた結果から体重増加率の経日推移を評価した。
【0098】
また、体重増加率は、以下の式を用いて算出した。
体重増加率(%)={(測定時点の体重-創傷作製時の体重)/創傷作製時の体重}×100
【0099】
〔結果〕
結果を図8に示す(n=4)。
図8は、オウバク、海藻、セージ、シャクヤクの各抽出物を含む鎮痛剤を、それぞれ塗布した場合の体重増加率の推移である。図8には、実験例1で得られたスギナ抽出物を含む鎮痛剤を塗布した場合と生理食塩水(コントロール溶液)を塗布した場合の体重増加率の推移についても記載した。
【0100】
実験例4の結果を示す図8から、植物エキス(海藻、オウバク、セージ、シャクヤク)を含む鎮痛剤を塗布した場合、体重増加率は、生理食塩水と比較し全ての測定時点で高く推移することがわかった。このことから、海藻、オウバク、セージ、シャクヤクの各抽出物を含む鎮痛剤は、鎮痛効果を有することが示唆された。
【0101】
<実験例5:発痛関連物質の発現抑制効果の評価2>
本試験ではオウバク、海藻、セージ、シャクヤクの各抽出物を含む鎮痛剤について、それぞれ、発痛関連物質の発現抑制効果の評価を行った。
【0102】
〔検体の調製〕
まず、スギナ抽出物に替えてオウバク、海藻、セージ、シャクヤクの各抽出物を用いた以外は実験例2と同様にして、オウバク、海藻、セージ、シャクヤクの各抽出物を固形分換算で15μg/mL含む水溶液(鎮痛剤)をそれぞれ調製した。
なお、生理食塩水をコントロール溶液とした。また、試験に供した植物エキス及びその製品名を下記に示した。
【0103】
(植物エキス)
・オウバクエキス(丸善製薬社製、(製品名)オウバク抽出液BG-J)
・海藻エキス(4)(一丸ファルコス社製、(製品名)アルジェレックス S)
・セージエキス(一丸ファルコス社製、(製品名)ファルコレックスセージB)
・シャクヤクエキス(丸善製薬社製、(製品名)シャクヤク抽出液BG-JC)
【0104】
〔方法〕
実験例2と同様の操作により、cDNAを合成し、リアルタイムPCRを実施し、mRNA発現を解析した。
【0105】
〔結果〕
無処理群、コントロール溶液処理群(口内炎+生食)、セージ抽出物を含む鎮痛剤処理群(口内炎+セージ)、及びシャクヤク抽出物を含む鎮痛剤処理群(口内炎+シャクヤク)における、GAPDHの発現量に対するTNF-αの発現量(TNF-α/GAPDH)を図9に示す(n=5)。図9には、実験例2で得られたスギナ抽出物を含む鎮痛剤処理群(口内炎+スギナ)における、GAPDHの発現量に対するTNF-αの発現量(TNF-α/GAPDH)も記載した。
【0106】
無処理群、コントロール溶液処理群、海藻抽出物を含む鎮痛剤処理群(口内炎+海藻)、セージ抽出物を含む鎮痛剤処理群、及びシャクヤク抽出物を含む鎮痛剤処理群における、GAPDHの発現量に対するIL-6の発現量(IL-6/GAPDH)を図10に示す(n=5)。図10には、実験例2で得られたスギナ抽出物を含む鎮痛剤処理群における、GAPDHの発現量に対するIL-6の発現量(IL-6/GAPDH)も記載した。
【0107】
また、無処理群、コントロール溶液処理群、オウバク抽出物を含む鎮痛剤処理群(口内炎+オウバク)、海藻抽出物を含む鎮痛剤処理群、セージ抽出物を含む鎮痛剤処理群、及びシャクヤク抽出物を含む鎮痛剤処理群における、GAPDHの発現量に対するBdkrb1の発現量(Bdkrb1/GAPDH)を図11に示す(n=5)。図11には、実験例2で得られたスギナ抽出物を含む鎮痛剤処理群における、GAPDHの発現量に対するBdkrb1の発現量(Bdkrb1/GAPDH)も記載した。
【0108】
酢酸生理食塩水を皮内注射して口内炎及び痛みを誘発した場合、図9から、セージ抽出物、シャクヤク抽出物を含有する鎮痛剤を塗布した鎮痛剤処理群においては、コントロール溶液処理群と比較して、TNF-αの産生が遺伝子レベルで抑制される傾向を認めた。図10から、海藻抽出物、セージ抽出物、シャクヤク抽出物を含有する鎮痛剤を塗布した鎮痛剤処理群においては、コントロール溶液処理群と比較して、IL-6の産生が遺伝子レベルで抑制される傾向を認めた。また、図11から、オウバク抽出物、海藻抽出物、セージ抽出物、シャクヤク抽出物を含有する鎮痛剤を塗布した鎮痛剤処理群においては、コントロール溶液処理群と比較して、酢酸の皮内注射により誘発した発痛関連物質(Bdkrb1)の発現が遺伝子レベルで抑制される傾向を認めた。
【0109】
発明者はこれまでに生体(in vivo)評価結果から、頬粘膜に誘発した創傷の疼痛を、創傷部に塗布したスギナエキスを含有する鎮痛剤が抑制する傾向を確認してきたが、本結果より、その作用の一部が、末梢神経の痛覚伝達物質の遊離を抑制することで発揮されている可能性が示された。
【0110】
以上の実験例の結果より、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物から選ばれる少なくとも1つの抽出物を含有する鎮痛剤は、鎮痛効果を有し、発痛関連物質の発現抑制、炎症性サイトカインの発現抑制、及び痛覚伝達物質の遊離抑制に有効であることがわかった。
また、スギナ、海藻、オウバク、セージ、及びシャクヤクの抽出物から選ばれる少なくとも1つの抽出物を含有する鎮痛剤は口腔内の粘膜で吸収が可能であり、簡便な方法により適用が可能であることが示された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
2024092943000001.xml