(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092964
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】基板収納ケースおよび基板収納体
(51)【国際特許分類】
G03F 1/66 20120101AFI20240701BHJP
H01L 21/673 20060101ALI20240701BHJP
B65D 85/86 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G03F1/66
H01L21/68 T
B65D85/86 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023201093
(22)【出願日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2022207881
(32)【優先日】2022-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】橋口 浩一
【テーマコード(参考)】
2H195
3E096
5F131
【Fターム(参考)】
2H195BB29
2H195BB30
2H195BE11
2H195BE12
3E096AA01
3E096BA15
3E096BB03
3E096CA01
3E096CB03
3E096DB07
3E096EA02X
3E096EA02Y
3E096EA06X
3E096EA06Y
3E096FA03
3E096GA07
5F131AA10
5F131AA32
5F131AA33
5F131CA12
5F131FA13
5F131FA32
5F131FA33
5F131GA12
5F131GA24
5F131GA32
5F131GA68
5F131GA83
5F131GA85
5F131GA87
(57)【要約】
【課題】ケース内での異物発生がある場合でも、収納されている基板の主表面上への異物の回り込みを防止することのできる技術を提供する。
【解決手段】基板2の収納に用いる基板収納ケース1であって、内部に支持部材11を有する本体部10と、内部に仕切り部材21を有する蓋部20とを備え、対向する2つの四角形状の主表面、4つの側面、および各主表面と各側面との間に設けられた面取り面を備える基板2を収納したとき、支持部材11は、一方の主表面と本体部10の底面とが対向する状態で基板2を支持し、仕切り部材21は、他方の主表面と面取り面との間の4つの稜線部のうちの少なくとも一つの稜線部の全ての部分と当接する、または、少なくとも一つの面取り面上において稜線部の方向の全ての部分で当接する、または、少なくとも1つの稜線部の近傍の他方の主表面上において稜線部の方向の全ての部分で当接する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の収納に用いる基板収納ケースであって、
内部に支持部材を有する本体部と、内部に仕切り部材を有する蓋部とを備え、
対向する2つの四角形状の主表面、4つの側面、および各主表面と各側面との間に設けられた面取り面を備える前記基板を収納したとき、
前記支持部材は、一方の前記主表面と前記本体部の底面とが対向する状態で前記基板を支持し、
前記仕切り部材は、他方の前記主表面と前記面取り面との間の4つの稜線部のうちの少なくとも一つの稜線部の全ての部分と当接する、または、少なくとも一つの前記面取り面上において前記稜線部の方向の全ての部分で当接する、または、少なくとも1つの前記稜線部の近傍の前記他方の主表面上において前記稜線部の方向の全ての部分で当接する
基板収納ケース。
【請求項2】
前記仕切り部材の前記基板と当接する側とは反対側は、前記蓋部の内側に固定されている請求項1に記載の基板収納ケース。
【請求項3】
前記仕切り部材が当接する側の前記側面は、基板収納ケースを運搬するときに上向きの位置になる請求項1に記載の基板収納ケース。
【請求項4】
前記基板の前記他方の主表面には、薄膜が設けられている請求項1に記載の基板収納ケース。
【請求項5】
基板の収納に用いる基板収納ケースであって、
内部に支持部材を有する本体部と、内部に枠状の仕切り部材を有する蓋部とを備え、
対向する2つの四角形状の主表面、4つの側面、および各主表面と各側面との間に設けられた面取り面を備える前記基板を収納したとき、
前記支持部材は、一方の前記主表面と前記本体部の底面とが対向する状態で前記基板を支持し、
前記仕切り部材は、他方の前記主表面、前記他方の主表面側の面取り面、および前記他方の主表面と前記面取り面との稜線部のうち、少なくともいずれかに当接し、前記他方の主表面の前記仕切り部材が当接する箇所から内側の領域を囲う
基板収納ケース。
【請求項6】
前記仕切り部材の前記基板と当接する側とは反対側は、前記蓋部の内側に固定されている請求項5に記載の基板収納ケース。
【請求項7】
前記仕切り部材の前記基板と当接する側とは反対側は、塞がれている請求項5に記載の基板収納ケース。
【請求項8】
前記基板の前記他方の主表面には、薄膜が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の基板収納ケース。
【請求項9】
基板が収納ケースに収納された基板収納体であって、
前記基板は、対向する2つの四角形状の主表面、4つの側面、および各主表面と各側面との間に設けられた面取り面を備え、
前記収納ケースは、内部に支持部材を有する本体部と、内部に仕切り部材を有する蓋部とを備え、
前記支持部材は、一方の前記主表面と前記本体部の底面とが対向する状態で前記基板を支持し、
前記仕切り部材は、他方の前記主表面と前記面取り面との間の4つの稜線部のうちの少なくとも一つの稜線部の全ての部分と当接している、または、少なくとも一つの前記面取り面上において前記稜線部の方向の全ての部分で当接している、または、少なくとも1つの前記稜線部の近傍の前記他方の主表面上において前記稜線部の方向の全ての部分で当接している
基板収納体。
【請求項10】
前記仕切り部材の前記基板と当接する側とは反対側は、前記蓋部の内側に固定されている請求項9に記載の基板収納体。
【請求項11】
前記仕切り部材が当接する側の前記側面は、前記収納ケースを運搬するときに上向きの位置になる請求項9に記載の基板収納体。
【請求項12】
前記基板の前記他方の主表面には、薄膜が設けられている請求項9に記載の基板収納体。
【請求項13】
基板が収納ケースに収納された基板収納体であって、
前記基板は、対向する2つの四角形状の主表面、4つの側面、および各主表面と各側面との間に設けられた面取り面を備え、
前記収納ケースは、内部に支持部材を有する本体部と、内部に枠状の仕切り部材を有する蓋部とを備え、
前記支持部材は、一方の前記主表面と前記本体部の底面とが対向する状態で前記基板を支持し、
前記仕切り部材は、他方の前記主表面、前記他方の主表面側の面取り面、および前記他方の主表面と前記面取り面との稜線部のうち、少なくともいずれかに当接し、前記他方の主表面の前記仕切り部材が当接する箇所から内側の領域を囲っている
基板収納体。
【請求項14】
前記仕切り部材の前記基板と当接する側とは反対側は、前記蓋部の内側に固定されている請求項13に記載の基板収納体。
【請求項15】
前記仕切り部材の前記基板と当接する側とは反対側は、塞がれている請求項13に記載の基板収納体。
【請求項16】
前記基板の前記他方の主表面には、薄膜が設けられている請求項13に記載の基板収納体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板収納ケースおよび基板収納体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイパネル(LCDP)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、OLEDディスプレイパネル等といった表示装置の製造工程で用いられるフォトマスクは、マスクケースと呼ばれる基板収納ケースに収納された状態で、運搬や保管等がされることが一般的である。マスクケースとしては、フォトマスクより大きい平面形状の基部および蓋部を有し、基部が支持するフォトマスクを蓋部が覆うことで、基部と蓋部の間に形成される内部空間にフォトマスクを収納するように構成されたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板収納ケースには、基板上に薄膜パターンが形成されたフォトマスクのほか、フォトマスクを製造するための原版となる、基板上に薄膜が形成されたマスクブランク、そのマスクブランクを製造するための基板など(以下、これらを総称してフォトマスク等という。)を収納するためにも用いられている。フォトマスク等を収納した状態の基板収納ケース内においては、何らかの理由(例えば運搬中の振動の影響)により、例えばフォトマスク等の側端面からパーティクル(異物)が発生することがあり得る。ケース内での異物発生については、フォトマスク等とケース構成部材(例えば蓋部)との接触面積の低減によって抑制することが提案されているが(例えば特許文献1参照)、接触面積を低減させてもケース内での異物発生を完全に防止し得るとは限らない。特に、基板収納ケースにマスクブランクを収納する場合、ケース内で発生した異物がマスクブランクの主表面上に設けられた薄膜の表面に回り込んで付着すると、そのマスクブランクを用いてフォトマスクを製造するときに、薄膜パターンに欠陥が多発する等の支障を来すため、このような事態の発生については未然に回避すべきである。また、基板収納ケースに薄膜を設ける前の基板を収納する場合でも、ケース内で発生した異物が基板の主表面(特に、薄膜が形成される側の主表面)に回り込んで付着すると、マスクブランクの薄膜に欠陥が発生する等の支障を来たしてしまう。
【0005】
本発明は、仮に基板収納ケース内での異物発生がある場合でも、収納されている基板の主表面上への異物の回り込みを防止することのできる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(第1の態様)
本発明の第1の態様は、
基板の収納に用いる基板収納ケースであって、
内部に支持部材を有する本体部と、内部に仕切り部材を有する蓋部とを備え、
対向する2つの四角形状の主表面、4つの側面、および各主表面と各側面との間に設けられた面取り面を備える前記基板を収納したとき、
前記支持部材は、一方の前記主表面と前記本体部の底面とが対向する状態で前記基板を支持し、
前記仕切り部材は、他方の前記主表面と前記面取り面との間の4つの稜線部のうちの少なくとも一つの稜線部の全ての部分と当接する、または、少なくとも一つの前記面取り面上において前記稜線部の方向の全ての部分で当接する、または、少なくとも1つの前記稜線部の近傍の前記他方の主表面上において前記稜線部の方向の全ての部分で当接する
基板収納ケースである。
【0007】
(第2の態様)
本発明の第2の態様は、
前記仕切り部材の前記基板と当接する側とは反対側は、前記蓋部の内側に固定されている第1の態様に記載の基板収納ケースである。
【0008】
(第3の態様)
本発明の第3の態様は、
前記仕切り部材が当接する側の前記側面は、基板収納ケースを運搬するときに上向きの位置になる第1の態様に記載の基板収納ケースである。
【0009】
(第4の態様)
本発明の第4の態様は、
前記基板の前記他方の主表面には、薄膜が設けられている第1の態様に記載の基板収納ケースである。
【0010】
(第5の態様)
本発明の第5の態様は、
基板の収納に用いる基板収納ケースであって、
内部に支持部材を有する本体部と、内部に枠状の仕切り部材を有する蓋部とを備え、
対向する2つの四角形状の主表面、4つの側面、および各主表面と各側面との間に設けられた面取り面を備える前記基板を収納したとき、
前記支持部材は、一方の前記主表面と前記本体部の底面とが対向する状態で前記基板を支持し、
前記仕切り部材は、他方の前記主表面、前記他方の主表面側の面取り面、および前記他方の主表面と前記面取り面との稜線部のうち、少なくともいずれかに当接し、前記他方の主表面の前記仕切り部材が当接する箇所から内側の領域を囲う
基板収納ケースである。
【0011】
(第6の態様)
本発明の第6の態様は、
前記仕切り部材の前記基板と当接する側とは反対側は、前記蓋部の内側に固定されている第5の態様に記載の基板収納ケースである。
【0012】
(第7の態様)
本発明の第7の態様は、
前記仕切り部材の前記基板と当接する側とは反対側は、塞がれている第5の態様に記載の基板収納ケースである。
【0013】
(第8の態様)
本発明の第8の態様は、
前記基板の前記他方の主表面には、薄膜が設けられていることを特徴とする第5の態様に記載の基板収納ケース。
【0014】
(第9の態様)
本発明の第9の態様は、
基板が収納ケースに収納された基板収納体であって、
前記基板は、対向する2つの四角形状の主表面、4つの側面、および各主表面と各側面との間に設けられた面取り面を備え、
前記収納ケースは、内部に支持部材を有する本体部と、内部に仕切り部材を有する蓋部とを備え、
前記支持部材は、一方の前記主表面と前記本体部の底面とが対向する状態で前記基板を支持し、
前記仕切り部材は、他方の前記主表面と前記面取り面との間の4つの稜線部のうちの少なくとも一つの稜線部の全ての部分と当接している、または、少なくとも一つの前記面取り面上において前記稜線部の方向の全ての部分で当接している、または、少なくとも1つの前記稜線部の近傍の前記他方の主表面上において前記稜線部の方向の全ての部分で当接している
基板収納体である。
【0015】
(第10の態様)
本発明の第10の態様は、
前記仕切り部材の前記基板と当接する側とは反対側は、前記蓋部の内側に固定されている第9の態様に記載の基板収納体である。
【0016】
(第11の態様)
本発明の第11の態様は、
前記仕切り部材が当接する側の前記側面は、前記収納ケースを運搬するときに上向きの位置になる第9の態様に記載の基板収納体である。
【0017】
(第12の態様)
本発明の第12の態様は、
前記基板の前記他方の主表面には、薄膜が設けられている第9の態様に記載の基板収納体である。
【0018】
(第13の態様)
本発明の第13の態様は、
基板が収納ケースに収納された基板収納体であって、
前記基板は、対向する2つの四角形状の主表面、4つの側面、および各主表面と各側面との間に設けられた面取り面を備え、
前記収納ケースは、内部に支持部材を有する本体部と、内部に枠状の仕切り部材を有する蓋部とを備え、
前記支持部材は、一方の前記主表面と前記本体部の底面とが対向する状態で前記基板を支持し、
前記仕切り部材は、他方の前記主表面、前記他方の主表面側の面取り面、および前記他方の主表面と前記面取り面との稜線部のうち、少なくともいずれかに当接し、前記他方の主表面の前記仕切り部材が当接する箇所から内側の領域を囲っている
基板収納体である。
【0019】
(第14の態様)
本発明の第14の態様は、
前記仕切り部材の前記基板と当接する側とは反対側は、前記蓋部の内側に固定されている第13の態様に記載の基板収納体である。
【0020】
(第15の態様)
本発明の第15の態様は、
前記仕切り部材の前記基板と当接する側とは反対側は、塞がれている第13の態様に記載の基板収納体である。
【0021】
(第16の態様)
本発明の第16の態様は、
前記基板の前記他方の主表面には、薄膜が設けられている第13の態様に記載の基板収納体である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基板収納ケース内に基板を収納した状態で、仮に基板収納ケース内での異物発生がある場合でも、収納されている基板の主表面上への異物の回り込みを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る基板収納ケースの概略構成を模式的に示す分解斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る基板収納体を構成する基板の要部構成例を示す側断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る基板収納体の構成例を模式的に示す側断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る基板収納体の要部構成例を拡大して示す側断面図である。
【
図5】本発明の別の実施形態に係る基板収納体の要部構成例を拡大して示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る基板収納ケースおよび基板収納体の実施形態について説明する。
【0025】
本発明に係る基板収納ケースは、フォトマスク、マスクブランク、およびマスクブランク用基板のいずれにも適用可能である。本実施形態では、基板収納ケースがマスクブランクケースである場合を例に挙げる。マスクブランクケースは、主表面(他方の主表面)上にパターン形成用の薄膜を備えた基板であるマスクブランクを収納するように構成されたものである。
【0026】
また、本明細書では、基板(パターン形成用薄膜の有無、および薄膜パターンの有無は不問。)が収納された状態の基板収納ケースのことを基板収納体という。したがって、本実施形態においては、マスクブランクが収納された状態のマスクブランクケースが基板収納体に相当する。
【0027】
(全体構成)
図1は、本実施形態に係る基板収納ケース(マスクブランクケース)の概略構成を模式的に示す分解斜視図である。
図例のように、本実施形態に係るマスクブランクケース1は、マスクブランク2の収納に用いるものであって、大別すると、本体部10と蓋部20とを備えている。そして、本体部10と蓋部20との間に形成される内部空間に、マスクブランク2を収納するように構成されている。
以下、これらの各部について順に説明する。
【0028】
(マスクブランク)
図2は、本実施形態に係る基板収納体を構成する基板(マスクブランク)の要部構成例を示す側断面図である。
【0029】
マスクブランク2は、LCDP、PDP、OLED等といった表示装置の製造工程で用いられるフォトマスクの基になるもので、主表面の一辺が300mm以上(例えば、300~2000mm)の四角形状の薄膜付き基板である。マスクブランク2は、基板3とパターン形成用の薄膜4で構成される。基板3は、対向する2つの四角形状の主表面3a,3bと、4つの側面3cとを備え、各主表面3a,3aと各側面3cとの間に面取り面3d,3eが設けられており、これらの各面3a~3eによって平面形状が四角形状の板状基板として構成されている。
【0030】
また、マスクブランク2は、基板3の主表面3bの面上に、転写用パターンを形成するための薄膜(例えば、クロム系材料、金属シリサイド系材料等の金属系薄膜)4が形成されている。なお、薄膜4は、金属薄膜上にレジスト膜が積層されたものであってもよい。
【0031】
なお、マスクブランク2を構成する各面3a~3eのうち、隣接する面同士の間には、稜線部が存在することになる。したがって、例えば、主表面3bと、その主表面3bの各辺で隣接する面取り面3eとの間には、4つの稜線部3fが存在することになる。
【0032】
(マスクブランクケース)
以上のようなマスクブランク2を、マスクブランクケース1は、本体部10と蓋部20との間の内部空間に収納する。本体部10および蓋部20は、例えば、機械的強度を有する樹脂材料の成形加工によって形成されている。ただし、これに限定されることはなく、他の材料(金属材料等)によって形成されていてもよい。
【0033】
図3は、本実施形態に係る基板収納体(マスクブランクが収納された状態のマスクブランクケース)の構成例を模式的に示す側断面図である。
図例のように、マスクブランクケース1は、無蓋有底容器である本体部10と、本体部10の無蓋部分を覆う蓋部20と、を備えている。そして、蓋部20が本体部10を覆うことで形成される内部空間に、マスクブランク2を収納するように構成されている。したがって、本体部10および蓋部20は、いずれも、マスクブランク2より大きい平面形状を有していることになる。
なお、マスクブランク2は、一方の主表面3aと本体部10の底面とが対向し、他方の主表面(薄膜4が設けられた主表面)3bが蓋部20の側に位置する状態で、マスクブランクケース1の内部空間に収納されるようになっている。
【0034】
(本体部)
マスクブランクケース1を構成する本体部10は、マスクブランク2を収納するために、当該マスクブランク2を支持する支持部材11を、内部(すなわち無蓋有底容器の容器内)に有している。
【0035】
支持部材11は、マスクブランク2における一方の主表面(薄膜4が設けられていない側の主表面)3aと本体部10の底面とが対向する状態で、当該マスクブランク2を支持するように構成されている。例えば、支持部材11は、平面形状が四角形状のマスクブランク2に対して、当該マスクブランク2の主表面3aの四隅を支持するように、本体部10の内部に配置されている。ただし、必ずしも主表面3aの四隅の支持に限定されることはなく、主表面3aの他の箇所を支持するようにしてもよいが、いずれの場合においても、支持部材11とマスクブランク2との接触面積を低減させるようにすることが、ケース内での異物発生を抑制する上では好ましい。
【0036】
このような支持部材は、例えば、本体部10と同様に、機械的強度を有する樹脂材料の成形加工によって形成することができる。
【0037】
(蓋部)
マスクブランクケース1を構成する蓋部20は、本体部10の無蓋部分を覆うことで、マスクブランク2を収容する内部空間を形成するとともに、その内部空間を封止するものである。そのために、蓋部20は、本体部10に対応する平面形状(例えば本体部10と同形状)に形成されている。
【0038】
また、蓋部20には、内部空間の天井面に相当する箇所に、当該天井面から本体部10の開口側に向けて延びる仕切り部材21が設けられている。つまり、蓋部20は、内部に仕切り部材21を有している。仕切り部材21については、詳細を後述する。
【0039】
このような蓋部20で本体部10の無蓋部分(すなわち開口部分)を覆うことで、マスクブランクケース1が構成される。つまり、マスクブランクケース1は、本体部10と蓋部20とを組み合わせることで構成される。そして、マスクブランクケース1のケース内部(すなわち本体部10と蓋部20とによる内部空間)にマスクブランク2を収容することで、基板収納体が構成される。
【0040】
なお、マスクブランク2を収容したマスクブランクケース1、すなわち基板収納体については、本体部10と蓋部20が上下に位置する関係となる状態のみならず、本体部10と蓋部20が左右に位置する関係となるようにマスクブランクケース1を立てた状態であっても、運搬や保管等を行うことが可能である。
本体部10と蓋部20の結合構造は、
図4に示されるように、本体部10の上端部が蓋部20の下端部の内側に入り込むことができるように、蓋部20の下端部を外側に膨らませている。そして、蓋部20の膨らんだ部分の内面側に本体部10の上端部の外面が接するようにしている。さらに、蓋部20の膨らんだ部分の内面側には段部が設けられており、マスクブランクケース1にマスクブランク2を収納しているときは、
図4に示されているように本体部10の上端から少し浮くような設計になっている。一方、マスクブランクケース1にマスクブランク2を収納していないときは、この蓋部20の段部に本体部10の上端が突き当たるようになっている。ただし、このような結合構造は一例であり、例えば、蓋部20の下端部を外側に膨らませることなく、本体部10の上端部、蓋部20の下端部の一方に全長にわたって凹部を設け、他方には全長にわたって前記凹部に入り込む凸部を設ける構造とすることもできる。この場合、本体部10と蓋部20の外面を平坦にすることができる。
【0041】
(仕切り部材)
ここで、マスクブランクケース1の蓋部20が有する仕切り部材21について、さらに詳しく説明する。
【0042】
図4は、本実施形態に係る基板収納体(マスクブランクが収納された状態のマスクブランクケース)の要部構成例を拡大して示す側断面図である。
【0043】
図例のように、仕切り部材21は、蓋部20の内部において天井面から本体部10の開口側に向けて延びるように形成されているが、当該天井面からの突出量が、本体部10と蓋部20を組み合わせた際にマスクブランク2と当接する量に設定されている。つまり、仕切り部材21は、蓋部20の側(すなわち、マスクブランク2と当接する側とは反対側)が当該蓋部20の内側に固定されている一方で、突出する先端側がマスクブランク2と当接するように構成されている。
【0044】
仕切り部材21とマスクブランク2との当接はマスクブランク2の周縁部近傍のみであり、主表面3bにおける薄膜4には当接しない。つまり、仕切り部材21は、マスクブランク2の周縁部近傍のみで当接するような枠状に形成されている。これにより、仕切り部材21の当接箇所よりも内側となる薄膜4の側の空間と、当該当接箇所よりも外側の空間とが、当該仕切り部材21によって互いに仕切られることになる。
【0045】
枠状に形成された仕切り部材21は、マスクブランク2の周縁部近傍の全域、すなわちマスクブランク2における主表面3bを構成する4つの辺の近傍全てに対して、当接するように形成されていることが最も望ましい。その場合、仕切り部材21は、マスクブランク2の主表面3b上の薄膜4の周りを囲うような枠状に形成されることになる。
ただし、仕切り部材21は、必ずしも主表面3b上の薄膜4を完全に囲うものでなくてもよい。例えば、仕切り部材21は、マスクブランク2の主表面3bを構成する4つの辺のうち、マスクブランクケース1を立てた状態において上方側に位置する一辺に対して、当該一辺の近傍全長にわたって当接するように形成されたものであってもよい。その場合、仕切り部材21とマスクブランク2との当接は、例えばマスクブランクケース1を立てた状態で運搬するときに上方側の位置にて行うことが可能となる。また、より好ましくは、マスクブランクケース1を立てた状態において下方側に位置する一辺を除き、他の3つの辺(すなわち、上方側および左右側に位置する辺)近傍に対して、それぞれの辺の全長にわたって当接するように形成されたものであってもよい。
つまり、仕切り部材21は、マスクブランク2の主表面3b上の薄膜4を完全に囲う枠状に形成されていることが最も望ましいが、これに限定されるものではなく、当該主表面3bを構成する4つの辺のうちの少なくとも一辺に対応して形成されたものであればよい。
【0046】
仕切り部材21によるマスクブランク2への当接箇所は、例えば、当該マスクブランク2の稜線部3f、面取り面3e、または、主表面3bにおける稜線部3fの近傍領域のいずれかである。詳しくは、一方の主表面3aとマスクブランクケース1の本体部10の底面とが対向する状態でマスクブランク2が収納されている場合に、仕切り部材21は、他方の主表面(すなわち薄膜4が設けられた主表面)3bと面取り面3eとの間の4つの稜線部3fのうちの少なくとも一つの稜線部3fの全ての部分と当接する、または、少なくとも一つの面取り面3e上において稜線部3fが延びる方向の全ての部分で当接する(すなわち、少なくとも1つの面取り面3eにおいて、その1つの面取り面3e上で稜線部3fが伸びる方向に設定した仮想線上の全ての部分で仕切り部材21が当接するようにする。)、または、少なくとも1つの稜線部3fの近傍の他方の主表面3b上において稜線部3fが延びる方向の全ての部分で当接する(すなわち、他方の主表面3bにおいて、少なくとも1つの稜線部3fの近傍領域で、その稜線部3fが伸びる方向に設定した仮想線上の全ての部分で仕切り部材21が当接するようにする。)。仕切り部材21が他方の主表面3b上に当接する場合には、稜線部3fから薄膜4の側に例えば3mmの距離の範囲内の領域において、仕切り部材21が当該主表面3bに対して当接することが望ましい。なお、上記の説明中の「全ての部分と」および「全ての部分で」は、「全長にわたって」と換言してもよい。
【0047】
このように、仕切り部材21は、他方の主表面3b、他方の主表面3b側の面取り面3e、および、他方の主表面3bと面取り面3eとの間の稜線部3fのうち、少なくともいずれかに当接する。これにより、他方の主表面3b上における仕切り部材21の当接箇所から内側の領域(すなわち薄膜4の形成領域)と、当該当接箇所の外側の領域とは、仕切り部材21によって仕切られる。
さらに、仕切り部材21は、マスクブランク2と当接する側とは反対側(すなわち蓋部20の天井面側)が蓋部20の内側に固定されている。そして、マスクブランク2と仕切り部材21の当接箇所から内側の領域については、蓋部20の側が当該蓋部20の天井面によって塞がれている。したがって、仕切り部材21に区画されるマスクブランク2の主表面3b上の薄膜形成領域は、蓋部20およびそこに固定された仕切り部材21によって、マスクブランク2と仕切り部材21の当接箇所の外側の空間とは別の空間として区画されることになる。
【0048】
また、仕切り部材21は、基台部22と、先端当接部23と、を有して構成されている。
基台部22は、蓋部20と同様の形成材料(例えば、機械的強度を有する樹脂材料)の成形加工によって形成されており、蓋部20からの突出部分を構成するものである。つまり、基台部22は、稜線部3fに沿った全ての部分で、空間を仕切るための壁面として機能するように構成されている。
先端当接部23は、基台部22の突出先端側に取り付けられており、例えばシリコンゴムやウレタンゴム等の弾性部材によって形成されたものである。先端当接部23は、基台部22の突出先端側の全域にわたって設けられている。つまり、先端当接部23は、当接相手となるマスクブランク2の稜線部3fが延びる方向の全ての部分に対応するように配置されている。なお、先端当接部23は、
図4に示されるように、基台部22への装着側とは反対側(すなわち、マスクブランク2と当接する側)が円弧状となる断面形状を有していることが望ましい。
【0049】
(ケース使用時の作用効果)
次に、以上に説明した構成のマスクブランクケース1にマスクブランク2を収納して基板収納体を構成する場合の作用効果、すなわちケース使用時の作用効果について説明する。
【0050】
マスクブランクケース1へのマスクブランク2の収納に際しては、まず、蓋部20に覆われていない状態の本体部10を用意して、その本体部10が有する支持部材11上に、収納すべきマスクブランク2を載置する。このとき、マスクブランク2は、一方の主表面3aと本体部10の底面とが対向し、他方の主表面(すなわち、薄膜4が設けられた主表面)3bが本体部10の無蓋部分から露出する状態とする。これにより、マスクブランク2は、例えば主表面3aにおける四隅近傍領域が本体部10における支持部材11によって支持される。
【0051】
その後、本体部10の無蓋部分を蓋部20で覆うように、これら本体部10および蓋部20を互いに組み合わせる。これにより、本体部10および蓋部20によってマスクブランクケース1の内部空間が形成され、その内部空間にマスクブランク2が収納されることになる。
【0052】
このとき、マスクブランクケース1の内部空間では、蓋部20における仕切り部材21が、マスクブランク2の稜線部3f、面取り面3e、または、主表面3bにおける稜線部3fの近傍領域のいずれかに当接する。このようなマスクブランク2に対する仕切り部材21の当接によって、当該マスクブランク2の主表面3b上における薄膜4の形成領域は、仕切り部材21の当接箇所よりも外方側に位置する空間(具体的には、マスクブランク2の側面3cよりも外方側の空間)とは別の空間として仕切られることになる。
【0053】
つまり、本体部10と蓋部20とを組み合わせてマスクブランクケース1を構成し、そのマスクブランクケース1の内部空間にマスクブランク2を収納した場合において、そのマスクブランクケース1の内部空間では、仕切り部材21がマスクブランク2の主表面(薄膜4が設けられた主表面)3b上の空間と他の空間(マスクブランク2と仕切り部材21の当接箇所より外側の空間)とを互いに別の空間として区画する。
【0054】
このように、マスクブランクケース1にマスクブランク2を収納して基板収納体を構成した状態で、その基板収納体は、運搬や保管等がされる。運搬や保管等を行う場合には、基板収納体について、例えば、本体部10と蓋部20が上下に位置する関係となる状態のみならず、本体部10と蓋部20が左右に位置する関係となるようにマスクブランクケース1を立てた状態としてもよい。
【0055】
ところで、基板収納体について運搬や保管等を行う場合には、例えば
図3に示すように、マスクブランクケース1の内部空間において、何らかの理由(例えば運搬中の振動の影響)により、例えばマスクブランク2の側面3cからパーティクル(異物)5が発生することがあり得る。具体的には、側面3cは他の面に比べて表面状態が粗い場合があり、基板製造過程で用いられる研磨剤等が残存することがあり得るため、マスクブランクケース1への収納後に残存していた研磨剤等が異物としてマスクブランクケース1の内部空間に出現するといったことが起こる可能性がある。このような異物5の発生については、例えば、マスクブランク2と本体部10の支持部材11との接触面積を低減させても、完全に防止し得るとは限らない。
【0056】
したがって、マスクブランクケース1については、収納されているマスクブランク2の側面3cからの異物5が当該マスクブランク2の主表面(薄膜4が設けられた主表面)3b上に回り込むのを防止できるようにすべきである。
この点について、本実施形態に係るマスクブランクケース1および基板収納体では、蓋部20が有する仕切り部材21によって、マスクブランク2の主表面(薄膜4が設けられた主表面)3b上の空間と他の空間とが互いに別の空間として区画されている。したがって、例えば、マスクブランク2の側面3cから異物5が発生した場合であっても、その異物5がマスクブランク2の主表面(薄膜4が設けられた主表面)3b上の空間に回り込んでしまうことがない。つまり、主表面3b上の薄膜4への異物5の付着を有効に防止することができる。このことは、収納されたマスクブランク2を用いてフォトマスクを製造した場合に、異物5に起因して薄膜パターンに欠陥が多発する等の支障を来すといった事態の発生を未然に回避し得ることを意味する。特に、マスクブランク2の主表面3b上の薄膜4が金属系薄膜とレジスト膜との積層構造である場合には、レジスト膜に異物5が付着し易い一方で、レジスト膜に対する洗浄処理が困難であるため、仕切り部材21による異物5の回り込み防止の効果が非常に大きなものなる。
【0057】
マスクブランクケース1については、収納されているマスクブランク2との接触面積を極力少なくすることが望ましい、ということが技術常識として知られている。これに対して、本実施形態においては、マスクブランクケース1に仕切り部材21を設け、その仕切り部材21をマスクブランク2に対して当接させる、という従来の技術常識に反する構成を採用し、これにより上述した異物5の回り込み防止を図っているのである。
【0058】
以上のような異物5の回り込み防止は、仕切り部材21がマスクブランク2の主表面3bを構成する4つの辺の全てに対して当接するように形成されていると、最も有効である。仕切り部材21が主表面3b上の薄膜4の周囲を完全に囲うことになるからである。
【0059】
ただし、仕切り部材21が薄膜4の周囲を完全に囲っていなくても、マスクブランク2の主表面3bを構成する4つの辺のうちの少なくとも一辺に対応して形成されていれば、異物5の回り込みを防止することができる。例えば、マスクブランクケース1を立てた状態で運搬や保管等がされる場合には、発生した異物5が重力方向に沿って移動すると考えられることから、仕切り部材21が少なくとも上方側の位置でマスクブランク2の上方側の一辺に対して当接するように形成されていれば、その一辺に沿って仕切り部材21が壁として機能することで、その下方に位置する主表面3b上の薄膜4への異物5の回り込みを防止することができる。その場合、仕切り部材21が当接する側のマスクブランク2における側面3cは、マスクブランクケース1を立てて運搬するときに上方側の位置になる。また、マスクブランク2の下方側に位置する一辺を除く3つの辺(すなわち、上向きおよび左右の位置)に対して仕切り部材21が当接するように形成されていれば、上方側からの異物5の回り込みに加えて、横方向からの異物5の回り込みについても防止し得るので、異物5の回り込みを防止する上でより好ましいものとなる。
【0060】
仕切り部材21は、マスクブランク2の主表面3b、主表面3b側の面取り面3e、および、主表面3bと面取り面3eとの間の稜線部3fのうち、少なくともいずれかに当接する。仕切り部材21がこれらのいずれの箇所に当接した場合であっても、その当接によって仕切り部材21とマスクブランク2との間が塞がれていれば、上述したような異物5の回り込みを防止することができる。
【0061】
マスクブランク2に対して仕切り部材21を当接させる場合に、当該仕切り部材21が基台部22と先端当接部23とを有して構成されていれば、基台部22の突出先端側に取り付けられた先端当接部23がマスクブランク2に接することになる。先端当接部23は弾性部材で形成されているので、マスクブランク2に接する際に、先端当接部23は、弾性変形することが可能である。
【0062】
したがって、マスクブランク2に対して仕切り部材21を当接させても、マスクブランク2の側に傷等の損傷が生じてしまうのを防止することができる。このことは、先端当接部23が円弧状の断面形状を有している場合に、マスクブランク2に対する接触面積の低減が可能となるので、より一層顕著となる。
【0063】
また、弾性を有する先端当接部23を介在させることで、マスクブランク2に対して仕切り部材21を当接させた際の発塵を防止する上でも有効なものとなる。
【0064】
さらに、先端当接部23の弾性変形を利用することで、基台部22の形成寸法精度によらず(すなわち、寸法公差内で基台部22の突出量がばらついても)、マスクブランク2の稜線部3fが延びる方向の全ての部分で、先端当接部23をマスクブランク2の側に隙間なく当接させて、これらの間を確実に塞ぐことができる。さらには、先端当接部23の弾性変形を利用することで、マスクブランク2の稜線部3fが延びる方向の全ての部分で、マスクブランク2に対する当接の連続性(すなわち、隙間が生じていない状態)を容易に維持することもできる。つまり、仕切り部材21において、基台部22の突出先端側(すなわち、マスクブランク2の側)に弾性を有する先端当接部23を配することで、上述した異物5の回り込みを防止する上で非常に有効なものとなる。
【0065】
さらにまた、先端当接部23の弾性変形を利用することで、本体部10の支持部材11に対するマスクブランク2の押圧力を十分に確保することができ、これによりマスクブランクケース1内でのマスクブランク2のガタつき等の発生を有効に防止することができる。このことは、蓋部20に設けられた仕切り部材21が、マスクブランク2の固定部材としても機能することを意味する。したがって、仕切り部材21の多機能化により、マスクブランクケース1の構成の複雑化を抑制することも実現可能となる。
【0066】
なお、仕切り部材21がこれまで述べてきた基板への当接の条件を満たせば、仕切り部材21に隙間(開口、スリット等)があっても構わない。仕切り部材21に隙間を設ける場合、その隙間にパーティクルの侵入を抑制するフィルタを装着することが好ましい。仕切り部材21の基台部22に、通気孔を設けてもよい。その場合、通気孔にフィルタを装着することが好ましい。
【0067】
一方、
図5は、本発明の別の実施形態に係る基板収納体(マスクブランクが収納された状態のマスクブランクケース)の要部構成例を拡大して示す側断面図である。この別の実施形態に係る基板収納体は、基台部22に、
図4に示した先端当接部23とは異なる先端当接部24を設けた仕切り部材25を用いている点が、上述の実施形態の基板収納体とは大きく異なる。
【0068】
具体的には、先端当接部24の基板3と当接する側の部分が斜断面形状になっている。マスクブランク2をマスクブランクケース1に収納したとき、この先端当接部24は、基板3(マスクブランク2)における他方の主表面3bの面取り面3eとの稜線部3fと面取り面3eに少なくとも当接するようになっている。これにより、先端当接部24がマスクブランク2と当接する面積を大きく取れるため、マスクブランク2の保持する状態がより安定させることができる。また、マスクブランク2のマスクブランクケース1への収納作業において、マスクブランク2を本体部10内に置くときの位置が多少ずれた場合であっても、先端当接部24の面取り面3eとの当接領域を大きくとられていることにより、仕切り部材25の当接箇所から内側の領域(すなわち薄膜4の形成領域)と当該当接箇所の外側の領域とを、確実に仕切ることができる。
【0069】
図5におけるマスクブランクケース1では、本体部10側の支持部材11に、基板3(マスクブランク2)の一方の主表面3aと当接する裏面当接部30を設けている。この裏面当接部30は、先端当接部24と同様に弾性部材で構成されている。マスクブランクケース1にマスクブランク2を収納した際、マスクブランク2の一方の主表面3aが弾性部材の裏面当接部30と当接し、他方の主表面3b側の面取り面3eが弾性部材の先端当接部24と当接することになる。マスクブランクケース1の中で、マスクブランク2が2つの弾性部材(先端当接部24と裏面当接部30)に挟まれた状態になるため、マスクブランク2を安定して保持することができる。
なお、その他、この別の実施形態に係る基板収納体に関するその他の事項については、上述の本発明の実施形態に係る基板収納体の場合と同様である。
【0070】
(変形例等)
以上に、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明の技術的範囲は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0071】
本実施形態では、マスクブランク2を収納するマスクブランクケース1を基板収納ケースの例として挙げたが、本発明がこれに限定されることはなく、他種の基板収納ケースについても同様に適用可能である。他種の基板収納ケースとしては、例えば、マスクブランク用基板(薄膜4を設ける前の基板3)を収納するための基板ケースや、フォトマスクを収納するマスクケースが挙げられる。このことは、本実施形態で説明した基板収納ケースを、マスクブランクケース、基板ケースおよびマスクケースとして共用し得ることを意味する。
【0072】
本実施形態で説明した基板収納ケースを基板ケースとして使用する場合には、マスクブランク用の基板3における薄膜を形成する側の主表面3bの側を蓋部20の側に向け、その主表面3bを仕切り部材21で仕切るようにした状態で、基板3を基板ケース内に収納する。一方、本実施形態で説明した基板収納ケースをマスクケースとして使用する場合には、フォトマスクにおける薄膜パターンの側を蓋部20の側に向け、その薄膜パターンの周囲を仕切り部材21で仕切るようにした状態で、フォトマスクをマスクケース内に収納することが考えられる。
【0073】
上記マスクブランクケース1の第1の変形例として、マスクブランク2における他方の主表面(薄膜が設けられた側の主表面)3bを本体部10の底面に対向させた状態で、マスクブランク2をマスクブランクケース1内に収納するようにしてもよい。その場合には、主表面3b上の薄膜4の表面への異物の回り込みを防止すべく、本体部10の内部に上述した仕切り部材21と同様の仕切り部材21を配設することが望ましい。さらに、仕切り部材21には、マスクブランク2を、本体部10から取り出しやすいように、仕切り部材21の先端当接部23と基台部22の適切な個所に切り欠きを設けることが好ましい。また、この変形例は、基板ケースおよびマスクケースにも適用可能である。
【0074】
一方、仕切り部材21がマスクブランク2の固定部材として機能するという技術的思想は、それ単体で一つの発明足りうる。すなわち、この技術的思想のマスクブランクケース1は、マスクブランク2をマスクブランクケース1に収納したときに、マスクブランク2の一方の主表面3aを支持部材11で支持しつつ、他方の主表面3b、隣接する面取り面3e、または稜線部3fを仕切り部材21(枠状の固定部材)の先端当接部23で押圧することで、マスクブランクケース1内でマスクブランク2がガタつかないように固定する構成を備える。そして、マスクブランクケース1からマスクブランク2を取り出す際には、蓋部20を本体部10から持ち上げて取り外すだけで、仕切り部材21もマスクブランク2から同時に取り外され、マスクブランク2を取り出し可能になる。この場合、マスクブランク2をマスクブランクケース1に収納しているとき、マスクブランクの他方の主表面3bにおける仕切り部材が当接している箇所から内側の領域を囲うことは必須ではない。仕切り部材21に開口が設けてもよい。さらに、仕切り部材21の先端当接部23は、基板3を固定する機能を満たせば、基板3の主表面3bに対向する側の全てに設ける必要はない。たとえば、基板3を固定する機能を満たる範囲で、先端当接部23の一部に切り欠き部を設け、その切り欠き部が基板3と当接しないようにしてもよい。
つまり、以下のような技術的思想が成り立つ。
【0075】
基板の収納に用いる基板収納ケースであって、
内部に支持部材を有する本体部と、内部に枠状の固定部材を有する蓋部とを備え、
対向する2つの四角形状の主表面、4つの側面、および各主表面と各側面との間に設けられた面取り面を備える前記基板を収納したとき、
前記支持部材は、一方の前記主表面と前記本体部の底面とが対向する状態で前記基板を支持し、
前記固定部材の先端当接部は、前記主表面の4辺で、他方の前記主表面、前記他方の主表面側の面取り面、および前記他方の主表面と前記面取り面との稜線部のうち、少なくともいずれかに当接し、
前記支持部材と前記固定部材によって前記基板を前記本体部内に固定する
基板収納ケース。
【0076】
基板が収納ケースに収納された基板収納体であって、
前記基板は、対向する2つの四角形状の主表面、4つの側面、および主表面と側面との間に設けられた面取り面を備え、
前記収納ケースは、内部に支持部材を有する本体部と、内部に枠状の固定部材を有する蓋部とを備え、
前記支持部材は、一方の前記主表面と前記本体部の底面とが対向する状態で前記基板を支持し、
前記固定部材の先端当接部は、前記主表面の4辺で、他方の前記主表面、前記他方の主表面側の面取り面、および前記他方の主表面と前記面取り面との稜線部のうち、少なくともいずれかに当接し、
前記支持部材と前記固定部材によって前記基板を前記本体部内に固定している
基板収納体。
【0077】
上記の固定部材として機能するという技術的思想に基づく発明に関しては、収納対象には限定は無く、基板3であってもフォトマスクであっても構わない。
【符号の説明】
【0078】
1…マスクブランクケース(基板収納ケース)、2…マスクブランク、3…基板、3a,3b…主表面、3c…側面、3d,3e…面取り面、3f…稜線部、4…薄膜、10…本体部、11…支持部材、20…蓋部、21,25…仕切り部材、22…基台部、23,24…先端当接部、30…裏面当接部