(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092974
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】曲管部用断熱材
(51)【国際特許分類】
F16L 59/22 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
F16L59/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023210241
(22)【出願日】2023-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2022207964
(32)【優先日】2022-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390032090
【氏名又は名称】マグ・イゾベール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 匠
【テーマコード(参考)】
3H036
【Fターム(参考)】
3H036AB13
3H036AB18
3H036AB24
3H036AE13
(57)【要約】
【課題】配管の曲管部の形状に適合するとともに、所望の断熱効果を発揮することができる曲管部用断熱材を提供する。
【解決手段】曲管部用断熱材であって、ガラス繊維と、バインダと、を含み、前記曲管部用断熱材にけるバインダの含有率が3質量%以上10.5質量%以下であり、前記曲管部用断熱材の密度が16kg/m3以上24kg/m3以下である、曲管部用断熱材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲管部用断熱材であって、
ガラス繊維と、バインダと、を含み、
前記曲管部用断熱材にけるバインダの含有率が3質量%以上5質量%以下であり、
前記曲管部用断熱材の密度が16kg/m3以上24kg/m3以下である、曲管部用断熱材。
【請求項2】
直管状の形状を有する、請求項1に記載の曲管部用断熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲管部用断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の省エネルギ需要の高まりから、建築物等において、断熱することが重要となっている。また、建築物の配管等の設備においても、熱損失を防ぐために断熱することは、一般的であり、断熱材が配管に隣接して、または取り巻くように設置されている。
【0003】
このような配管用断熱材には、配管径、配管形状、断熱条件等に応じた形状が求められる。直管状および曲管状の配管に使用される断熱材は、予め作製された直管状および曲管状の断熱材から、配管径および断熱条件を考慮して選択される。一方、曲管状の配管においては、曲管部の曲率半径の精度が決めされていないため、配管の曲管部毎に、形状に若干の違いが生じることがあった。そのため、曲管状の配管の配管径等に一致するよう選択された曲管状の断熱材であっても、曲管状の配管の形状に適合しないことがあった。そこで、施工現場において、曲管部用断熱材の長さや形状等を調節して、曲管状の配管に曲管部用断熱材を装着することがあり、施工効率が低下することがあった。
【0004】
そこで、予め曲管部の形状の異なる複数の曲管部用断熱材を準備し、その中から、配管の曲管部に合った曲管部用断熱材を選択することが考えられる。しかし、このような曲管部用断熱材を製造する方法には、配管の径、曲率半径等に合った専用の金型が必要であり、多品種少量生産には適さなかった。また、曲管部用断熱材の内径が曲管状の配管の外径より大きくなるように曲管部用断熱材を形成し、配管毎に形状に違いがあっても、曲管状の配管に曲管部用断熱材を装着することができるようにすることが考えられる。しかしながら、曲管部用断熱材の内径と曲管状の配管の外径が一致していないため、曲管状の配管から曲管部用断熱材が脱落することや、所望の断熱効果が得られないことが生じる懸念があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、配管の曲がりに合わせて曲げて使用することができるように、断熱材にスリットを形成した湾曲可能な断熱材を開示している。しかしながら、断熱材にスリットを形成しているため、スリットから断熱材が破断する可能性や、スリットを経由して、熱が移動し、それにより所望の断熱効果が得られない可能性があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、配管の曲管部の形状に適合するとともに、所望の断熱効果を発揮することができる曲管部用断熱材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
曲管部用断熱材であって、
ガラス繊維と、バインダと、を含み、
前記曲管部用断熱材にけるバインダの含有率が3質量%以上10.5質量%以下であり、
前記曲管部用断熱材の密度が16kg/m3以上24kg/m3以下である曲管部用断熱材が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、配管の曲管部の形状に適合するとともに、所望の断熱効果を発揮することができる曲管部用断熱材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。
【0011】
<本実施形態に係る曲管部用断熱材>
本実施形態に係る曲管部用断熱材は、ガラス繊維と、バインダと、を含むものである。また、曲管部用断熱材にけるバインダの含有率が3質量%以上10.5質量%以下であり、曲管部用断熱材の密度が16kg/m3以上24kg/m3以下である。これにより、柔軟な(フレキシブルな)断熱材となり、曲管部用断熱材の内側形状が配管の曲管部の外側形状に適合することができ、また、それにより、所望の断熱効果を発揮することができる。
【0012】
本実施形態に係る曲管部用断熱材は、特に負荷をかけていない状態で、曲管状の形状または直管状の形状を有するものである。曲管部用断熱材は、柔軟な断熱材であり、曲管状の配管に装着した場合、曲管部用断熱材の形状は、配管の曲管部の形状に適合するよう変形することができるものである。そのため、曲管部用断熱材は、種々の形状の曲管に適用することができ、例えば、L字形(エルボ)やS字形状の配管等に適用することができる。また、曲管部用断熱材は、施工現場に、配管の形状に合わせて、形状の異なる複数の曲管部用断熱材を持ち込む必要がない。また、曲管部用断熱材の寸法は、特に限定されるものでなく、配管の外径に応じた内径を有していればよい。
【0013】
一実施形態において、曲管部用断熱材は、管の軸方向に沿って、スリットまたは切り欠きを有するものとすることができる。曲管部用断熱材に形成されたスリットまたは切り欠きに、そのスリットまたは切り欠きが開くように押圧力を加えることによって、押し開いたスリットまたは切り欠きを経て配管を容易に曲管部用断熱材の中空部分に収めることができる。別の実施形態において、曲管部用断熱材は、左右に分割して形成した一対の半割曲管または半割直管を組み合わせとすることができる。これにより、配管を、半割曲管または半割直管の曲管部用断熱材によって挟み込み、曲管部用断熱材の中空部分に収めることができる。
【0014】
(ガラス繊維)
本実施形態に係るガラス繊維は、無機材料で構成されるガラス質の繊維を含むものである。一実施形態において、無機材料は、金属酸化物、または複合金属酸化物を含むものである。一例として、無機材料は、ケイ素、アルミニウム、ホウ素、アルカリ金属、アルカリ土類、およびその他の金属等の少なくとも1種を含む酸化物が含まれる。一実施形態において、ガラス繊維は、耐熱性金属繊維等を含むものであってもよい。また、ガラス繊維から、グラスウール、およびロックウール等が形成される。
【0015】
ガラス繊維の平均繊維径としては、一実施形態において1μm以上、別の実施形態において2μm以上、さらに別の実施形態において3μm以上とすることができ、一実施形態において30μm以下、別の実施形態において20μm以下、さらに別の実施形態において10μm以下、さらに別の実施形態において5μm以下とすることができる。これより、曲管部用断熱材が、優れた強度を有し、優れた断熱性を有することができる。
【0016】
(バインダ)
本実施形態に係るバインダは、主成分として熱硬化性樹脂を含むものである。熱硬化性樹脂としては、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂として、ホルムアルデヒドを実質的に放出しない、天然由来の材料を主成分とする材料を用いてもよい。また、バインダは、硬化促進剤、シランカップリング剤、着色剤、pH調整剤等の添加剤を含むことができる。
【0017】
(バインダの含有率)
曲管部用断熱材における硬化後のバインダの含有率(内数)は、一実施形態において1重量%以上、別の実施形態において2重量%以上、さらなる実施形態において3重量%以上、さらなる実施形態において3.5重量%以上とすることができ、また、一実施形態において13重量%以下、別の実施形態において10.5重量%以下、さらなる実施形態において5重量%以下、さらなる実施形態において4重量%以下とすることができる。曲管部用断熱材にけるバインダの含有率(内数)の範囲は、一実施形態において1重量%以上13重量%以下、別の実施形態において2重量%以上10.5重量%以下、さらなる実施形態において3重量%以上5重量%以下、さらなる実施形態において3.5重量%以上4重量%以下とすることができる。
【0018】
これにより、曲管部用断熱材が、優れた柔軟性、優れた強度を有することができ、ガラス繊維にムラなく塗布することができる。また、曲管部用断熱材にけるバインダの含有率を変更することによって、断熱材の柔軟性を調節することができる。例えば、曲管部用断熱材にけるバインダの含有率を少なくすることによって、断熱材の柔軟性が向上し、断熱材が変形しやすくなる。
【0019】
曲管部用断熱材にけるバインダの含有率は、曲管部用断熱材を所定の寸法に切断し、切断された試験片の質量を測定し、その試験片をバインダが分解する温度(例えば530℃)に加熱し、再度、試験片の質量を測定し、加熱前の試験片の質量に対する加熱後の試験片の質量の割合から求められる。
【0020】
(曲管部用断熱材の密度)
曲管部用断熱材の密度は、一実施形態において10kg/m3以上、別の実施形態において13kg/m3以上、さらなる実施形態において16kg/m3以上とすることができ、さらなる実施形態において19kg/m3以上とすることができ、一実施形態において30kg/m3以下、別の実施形態において27kg/m3以下、さらなる実施形態において24kg/m3以下、さらなる実施形態において21kg/m3以下とすることができる。曲管部用断熱材の密度の範囲は、一実施形態において10kg/m3以上30kg/m3以下、別の実施形態において13kg/m3以上27kg/m3以下、さらなる実施形態において16kg/m3以上24kg/m3以下、さらなる実施形態において19kg/m3以上21kg/m3以下とすることができる。
【0021】
これにより、曲管部用断熱材が、優れた柔軟性、優れた強度を有することができる。また、曲管部用断熱材の密度を変更することによって、断熱材の柔軟性を調節することができる。例えば、曲管部用断熱材の密度を低くすることによって、断熱材の柔軟性が向上し、断熱材が変形しやすくなる。また、曲管部用断熱材の密度は、JIS A 9504に従い測定することができる。
【0022】
<本実施形態に係る曲管部用断熱材の製造方法>
一実施形態に係る曲管部用断熱材の製造方法において、曲管部用断熱材は、特定の成形型にグラスウールを所定の厚さに充填し、他方の成形型で圧縮し、加熱硬化させて半割管の断熱材を形成し、対となる他方の半割管の断熱材も同様にグラスウールを成形型で圧縮し、加熱硬化させて形成し、両者を合わせることで形成されることができる。また、グラスウールは、以下で述べるように硬化前のバインダが付着しているものである。また、硬化の際の加熱温度は、例えば、180℃以上300℃以下とすることができ、硬化の際の加熱時間は、例えば、30秒以上300秒以下とすることができる。
【0023】
グラスウールは、遠心法で製造されることができる。例えば、ガラス繊維の原料を側面に小孔を多数有するスピナーに投入し、熱溶融して、スピナーを高速回転させることで、繊維状態で吹き出され、空冷され、1から7μm程度の直径のガラス繊維が絡み合ったグラスウールが製造される。次いで、グラスウールに、上記する曲管部用断熱材にけるバインダの含有率と曲管部用断熱材の密度となるように、バインダが付与される。
【0024】
別の実施形態に係る曲管部用断熱材の製造方法において、曲管部用断熱材は、マンドレルにマット状に堆積したグラスウールを同心円状に所定の厚さに巻き付け、グラスウールの内周部および外周部を硬化させ、次いで管の軸方向にスリットを入れてその部分を広げてマンドレルから取り外すことで、形成される。なお、グラスウールは、上記のものを使用することができ、硬化前のバインダが付着しているものである。また、硬化の際の加熱温度および加熱時間も一実施形態に係る曲管部用断熱材の製造方法で示した条件を採用することができる。
【0025】
<本実施形態に係る曲管部用断熱材の施工方法>
本実施形態に係る曲管部用断熱材は、建築物の曲管状または直管状の配管に設置されることができる。本実施形態に係る曲管部用断熱材の施工では、スリットまたは切り欠きを有する曲管部用断熱材の場合は、そのスリットまたは切り欠きが開くように押圧力を加えて、押し開いたスリットまたは切り欠きに曲管状または直管状の配管を配置することで曲管部用断熱材が施工される。または、半割の曲管部用断熱材の場合は、曲管状または直管状の配管を半割の曲管部用断熱材によって挟み込むことで、曲管部用断熱材が施工される。
【0026】
本実施形態に係る曲管部用断熱材は、柔軟性を有しているため、配管毎の形状に若干の違いがあったりしても、施工現場において、断熱材の長さや形状を調節する必要はなく、配管に断熱材を施工することができる。また、断熱材の内側形状が配管の曲管部の外側形状に適合するため、所望の断熱効果を発揮することができる。
【0027】
<実施形態のまとめ>
本明細書の開示は、以下の曲管部用断熱材を含む。
【0028】
(項目1)
曲管部用断熱材であって、
ガラス繊維と、バインダと、を含み、
前記曲管部用断熱材にけるバインダの含有率が3質量%以上5質量%以下であり、
前記曲管部用断熱材の密度が16kg/m3以上24kg/m3以下である、曲管部用断熱材。
【0029】
(項目2)
直管状の形状を有する、項目1に記載の曲管部用断熱材。
【実施例0030】
以下に、実施例により本実施形態を説明する。しかしながら、本実施形態は、その要旨を超えない限り、以下の実施例には限定されない。
【0031】
(実施例1)
まず、グラスウールを遠心法で製造し、このグラスウールにフェノール樹脂を主成分とするバインダを添加した。この際、曲管部用断熱材にける硬化後のバインダ含有率が表1に示す値とるようにバインダを添加した。
【0032】
次に、表1に示す密度、内径、および外径を有する曲管部用断熱材となるように、鉄芯に上記グラスウールを巻き付け、成形し、加熱硬化させて、特に負荷をかけていない状態で、直管状の形状を有する曲管部用断熱材を形成した。また、硬化の際の加熱温度は、180℃以上300℃以下とし、硬化の際の加熱時間は、30秒以上300秒以下とした。
【0033】
(実施例2、比較例1、および比較例2)
曲管部用断熱材にける硬化後のバインダ含有率、曲管部用断熱材の密度、曲管部用断熱材の内径および外径を、表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2、比較例1、および比較例2の曲管部用断熱材を得た。
【0034】
(曲げ試験)
直管状の形状を有する曲管部用断熱材が、湾曲部において曲管部用断熱材の中心軸線間の角度が略90度となる形状(L字形状)となるように、曲管部用断熱材に負荷をかけたとき、曲管部用断熱材がL字形状となる場合を「〇」、曲管部用断熱材がL字形状とならない場合を「×」とした。表1に曲げ試験の結果を示す。
【0035】
【0036】
実施例1および2の曲管部用断熱材は負荷をかけたときL字形状に曲げることができた。これにより、実施例1および2の曲管部用断熱材は、曲管部用断熱材の内側形状を配管の曲管部の外側形状に適合させることができるものであった。
【0037】
一方、比較例1および2の曲管部用断熱材は負荷をかけたときL字形状に曲げることができなかった。これにより、比較例1および2の曲管部用断熱材は、曲管部用断熱材の内側形状を配管の曲管部の外側形状に適合させることができないものであった。
【0038】
なお、曲管部用断熱材にける硬化後のバインダ含有率が3質量%未満、および曲管部用断熱材の密度が16kg/m3未満で、曲管部用断熱材の内径および外径が実施例1と同様のものの作成を行ったが管状の断熱材を形成することができなかった。
【0039】
以上、発明の実施形態について説明したが、発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。