(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092976
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】マイクロプラスチック検出装置用の光学フィルタユニット、マイクロプラスチック検出方法、及び、マイクロプラスチック観察具
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
G01N21/64 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023210447
(22)【出願日】2023-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2022207930
(32)【優先日】2022-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】513279283
【氏名又は名称】株式会社堀場テクノサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(74)【代理人】
【識別番号】100231038
【弁理士】
【氏名又は名称】正村 智彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】清水 智
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043CA06
2G043DA02
2G043EA01
2G043FA01
2G043HA01
2G043JA03
2G043KA02
2G043KA08
2G043LA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】携帯型のマイクロプラスチック検出装置において、試料の採取現場における電池切れのリスクを低減する。
【解決手段】蛍光体により染色されたマイクロプラスチックを含む試料に励起光を照射し、当該試料から発生する蛍光を撮像することで前記試料からマイクロプラスチックを検出するマイクロプラスチック検出装置用のものであり、発光部210及び撮像部220を有する携帯型撮影機器200に着脱可能に取り付けて使用されるものであって、前記発光部から発せられた光のうち励起光を選択的に透過する第1光学フィルタ2と、励起光を遮光して、前記試料から発生した蛍光を透過させる第2光学フィルタ3と、前記第1光学フィルタ及び前記第2光学フィルタに対して前記発光部及び前記撮像部がそれぞれ向かい合うようにして前記携帯型撮影機器が取り付けられるアタッチメント4とを備えるマイクロプラスチック検出装置用の光学フィルタユニット100。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体により染色されたマイクロプラスチックを含む試料に励起光を照射し、当該試料から発生する蛍光を撮像することで前記試料からマイクロプラスチックを検出するマイクロプラスチック検出装置用のものであり、発光部及び撮像部を有する携帯型撮影機器に着脱可能に取り付けて使用されるものであって、
前記発光部から発せられた光のうち励起光を選択的に透過する第1光学フィルタと、
前記励起光を遮光して、前記試料から発生した蛍光を透過させる第2光学フィルタと、
前記第1光学フィルタ及び前記第2光学フィルタに対して前記発光部及び前記撮像部がそれぞれ向かい合うようにして前記携帯型撮影機器が取り付けられるアタッチメントとを備えるマイクロプラスチック検出装置用の光学フィルタユニット。
【請求項2】
第1光学フィルタが、透光性を有する緑色のフィルムからなるものであり、
第2光学フィルタが、透光性を有する赤色のフィルムからなるものである請求項1に記載の光学フィルタユニット。
【請求項3】
前記試料を収容する暗室を形成するものであり、前記発光部から発せられた光を取り込む光取込窓と、前記撮像部により前記試料を撮像するための撮影用窓とが一側面に形成された筐体をさらに備え、
前記第1光学フィルタが前記光取込窓に設けられ、前記第2光学フィルタが前記撮影用窓に設けられている請求項1又は2に記載の光学フィルタユニット。
【請求項4】
前記試料に対して、前記光取込窓から取り込まれた前記発光部からの光を直接照射させることなく、前記筐体の内壁面で反射させた間接光として照射させるようにする間接照明化ユニットをさらに備える請求項3に記載の光学フィルタユニット。
【請求項5】
前記間接照明化ユニットが、前記光取込窓に挿入して固定された透光性を有する筒状部材と、当該筒状部材の前記筐体内側の底面に設けられた遮光部材とを有する請求項4に記載の光学フィルタユニット。
【請求項6】
前記第1光学フィルタが、前記筐体内に露出した前記筒状部材の側周面に取り付けられている請求項5に記載の光学フィルタユニット。
【請求項7】
前記筐体が、前記発光部の光出射方向に向かうにつれて拡径する形状をなすものである請求項4~6のいずれか一項に記載の光学フィルタユニット。
【請求項8】
前記筐体の内壁面が反射部材により覆われている請求項7に記載の光学フィルタユニット。
【請求項9】
前記アタッチメントは、前記筐体の前記一側面から前記携帯型撮影機器側に突出し、前記携帯型撮影機器側からの平面視において、前記光取込窓と前記撮影用窓をそれぞれ取り囲むように環状に形成された突条を有している請求項3~8のいずれか一項に記載の光学フィルタユニット。
【請求項10】
発光部及び撮像部を有する携帯型撮影機器を用いて、蛍光体により染色されたマイクロプラスチックを含む試料からマイクロプラスチックを検出する方法であって、
前記発光部の前方に発せられた光のうち励起光を選択的に透過する第1光学フィルタを配置し、
前記撮像部の前方に、前記励起光を遮光して、前記試料から発生した蛍光を透過させる第2光学フィルタを配置し、
前記発光部を点灯して、前記第1光学フィルタを介して前記試料に励起光を照射し、
前記撮像部により、前記第2光学フィルタを介して前記試料から発生する蛍光を撮像するマイクロプラスチックの検出方法。
【請求項11】
蛍光体により染色されたマイクロプラスチックを含む試料に励起光を照射し、当該試料から発生する蛍光を撮像することで前記試料からマイクロプラスチックを検出するマイクロプラスチック検出装置用のものであり、撮像部を有する携帯型撮影機器に着脱可能に取り付けて使用されるものであって、
前記携帯型撮影機器から電力を供給されて発光する発光部と
前記発光部の前方に置かれ、前記発光部から発せられた光のうち励起光を選択的に透過する第1光学フィルタと、
前記励起光を遮光して、前記試料から発生した蛍光を透過させる第2光学フィルタと、
前記第2光学フィルタに対して前記撮像部が向かい合うようにして前記携帯型撮影機器が取り付けられるアタッチメントとを備えるマイクロプラスチック検出装置用の光学フィルタユニット。
【請求項12】
蛍光体により染色されたマイクロプラスチックを観察するためのマイクロプラスチック観察具であって、
内部に拡大レンズが設けられた筒状部材と、
前記筒状部材において前記拡大レンズの下側に設けられ、前記マイクロプラスチックを含む試料に向けて蛍光用励起光を照射する光源部と、
前記筒状部材の上端部に設けられた観察窓とを有している、マイクロプラスチック観察具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロプラスチック検出装置用の光学フィルタユニット、マイクロプラスチックの検出方法、及び、マイクロプラスチック観察具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境中の移動過程で微細化したマイクロプラスチックによる環境汚染が注目を集めている。例えば特許文献1には、海岸等において採取した試料中にマイクロプラスチックが存在しているかどうかをその場で簡易に検出できる検出方法が記載されている。この検出方法では、試料に含まれるマイクロプラスチックをナイルレッド等の蛍光体で染色し、当該蛍光体に蛍光用励起光を照射して放射される蛍光をカメラで撮像し、その撮像画像を観察することで、採取した試料中におけるマイクロプラスチックの位置や個数を知ることができる。
【0003】
この特許文献1には、試料中のマイクロプラスチックを採取現場で簡易に検出できるようにするための構成として、携帯可能な筐体内に、蛍光用励起光を発するLEDを用いた蛍光用光源と、蛍光用励起光を遮断して蛍光を透過させるロングパスフィルタとを取付け、この筐体内をスマートフォンで撮影できるようにしたものが記載されている。この構成によれば、筐体内に載置した試料に蛍光用励起光を照射して蛍光を発生させ、その発生した蛍光を、ロングパスフィルタを介してスマートフォンで撮影することで、マイクロプラスチックの有無を簡易に検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2022/114053号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで前記したマイクロプラスチック検出装置は、LED等の電気部品とこれに電力を供給する電池とを筐体内に取り付けて構成しているため、バッテリーが採取現場で電池切れになると、その後マイクロプラスチックの検出ができなくなる恐れがある。このような電池切れのリスクを低減するために、大容量のバッテリーを備え付けることが考えられるが、採取現場における持ち運びのし易さや製造コストを考慮すると望ましくはない。
【0006】
本発明は上述した課題を一挙に解決すべくなされたものであり、携帯型のマイクロプラスチック検出装置において、製造コストを抑え、かつ小型化を図りながら、試料の採取現場における電池切れのリスクを低減することをその主たる所期課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る光学フィルタユニットは、蛍光体により染色されたマイクロプラスチックを含む試料に励起光を照射し、当該試料から発生する蛍光を撮像することで前記試料からマイクロプラスチックを検出するマイクロプラスチック検出装置用のものであり、発光部及び撮像部を有する携帯型撮影機器に着脱可能に取り付けて使用されるものであって、前記発光部から発せられた光のうち励起光を選択的に透過する第1光学フィルタと、前記励起光を遮光して、前記試料から発生した蛍光を透過させる第2光学フィルタと、前記第1光学フィルタ及び前記第2光学フィルタに対して前記発光部及び前記撮像部がそれぞれ向かい合うようにして前記携帯型撮影機器が取り付けられるアタッチメントとを備えることを特徴とする。
【0008】
このような構成であれば、従来、蛍光を撮影するために用いていたスマートフォン等の携帯型撮影機器が備えるフラッシュライト等の発光部を光源として利用することで、LED等の専用の蛍光用光源を別途設ける必要が無くなる。これにより、電源を必要とする電子部品数を減らし、試料の採取現場における電池切れのリスクを低減することができる。また、光学フィルタユニットにバッテリーを備え付ける必要が無いので、装置構成を簡単にして小型化できるとともに、その製造コストも下げることができる。この場合、光学フィルタユニットと別体である携帯型撮影機器が備える発光部と撮像部を利用するため、各光学フィルタに対する発光部と撮像部の位置合わせが難しくなるが、第1光学フィルタ及び第2光学フィルタに対して発光部及び撮像部がそれぞれ向かい合うようにして携帯型撮影機器が取り付けられるアタッチメントを備えることで、各光学フィルタと撮像部及び発光部の位置合わせを簡単に行うことができる。
【0009】
前記光学フィルタユニットは、第1光学フィルタが、透光性を有する緑色のフィルムからなるものであり、第2光学フィルタが、透光性を有する赤色のフィルムからなるものであるのが好ましい。
このような構成であれば、高価な光学フィルタを用いることなく、簡易で安価な装置構成によりマイクロプラスチックを検出することができる。
【0010】
前記光学フィルタユニットの具体的態様としては、前記試料を収容する暗室を形成するものであり、前記発光部から発せられた光を取り込む光取込窓と、前記撮像部により前記試料を撮像するための撮影用窓とが一側面に形成された筐体をさらに備え、前記第1光学フィルタが前記光取込窓に設けられ、前記第2光学フィルタが前記撮影用窓に設けられたものが挙げられる。
【0011】
前記光学フィルタユニットは、前記試料に対して、前記光取込窓から取り込まれた前記発光部からの光を直接照射させることなく、前記筐体の内壁面で反射させた間接光として照射させるようにする間接照明化ユニットをさらに備えるのが好ましい。
本願発明者が鋭意検討したところ、例えばスマートフォンやデジカメ等のフラッシュライトを発光部として用いる場合、出射された光を試料に直接照射すると、光が強すぎるため撮像画像においてハレーションが生じ、マイクロプラスチックを検出しにくいことがある。そこでこのような間接照明化ユニットを設け、発光部からの光を試料に直接照射させることなく、光量を落とした間接光として照射させることで、撮像画像におけるハレーションを低減し、マイクロプラスチックを検出しやすくできる。
【0012】
前記間接照明化ユニットの具体的態様として、前記光取込窓に挿入して固定された透光性を有する筒状部材と、当該筒状部材の前記筐体内側の底面に設けられた遮光部材とを有するものが挙げられる。
このような構成であれば、光取込窓を通って試料に直接向かう光を遮光部材により遮光することができる。一方で筒状部材が透光性を有するので、光取込窓から取り込んだ光を例えば側周面から横向きに照射することができる。これにより筐体の内壁等で光を反射させ、間接光として励起光を試料に照射することができる。
【0013】
前記第1光学フィルタが、前記筐体内に露出した前記筒状部材の側周面に取り付けられているのが好ましい。
このようにすれば、間接照明化ユニットに第1光学フィルタを取付けるようにすることで、第1光学フィルタを着脱するための専用の構成を設ける必要が無いので、部品点数を低減しより簡易な構成にできる。
【0014】
間接照明化ユニットを備える場合には、前記筐体が、前記発光部の光出射方向に向かうにつれて拡径する形状をなすものであるのが好ましい。
このようにすれば、筒状部材の側周面から横向きに照射された光を、試料の方向に向かって反射させることができるので、試料に対して励起光をしっかりと照射し、試料から発生する蛍光を観測しやすくできる。
【0015】
前記筐体の内壁面が反射部材により覆われているのが好ましい。
このようにすれば、試料に対して励起光をよりしっかりと照射でき、試料から発生する蛍光をより観測しやすくできる。
【0016】
前記アタッチメントは、前記筐体の前記一側面から前記携帯型撮影機器側に突出し、前記携帯型撮影機器側からの平面視において、前記光取込窓と前記撮影用窓をそれぞれ取り囲むように環状に形成された突条を有しているのが好ましい。
このような構成であれば、環状に形成された突条に、携帯型撮影機器の撮像部や発光部を嵌め込むことで、携帯型撮影機器に光学フィルタユニットを取付けられる。また、突条は、光取込窓と撮影用窓を取り囲むとともに、当該窓が形成された一側面から携帯型撮影機器側に突出しているので、この突条が光遮光部として機能し、発光部から射出された光が撮像部に迷光として取り込まれることを防止できる。
【0017】
また本発明のマイクロプラスチックの検出方法は、発光部及び撮像部を有する携帯型撮影機器を用いて、蛍光体により染色されたマイクロプラスチックを含む試料からマイクロプラスチックを検出する方法であって、前記発光部の前方に発せられた光のうち励起光を選択的に透過する第1光学フィルタを配置し、前記撮像部の前方に、励起光を遮光して、前記試料から発生した蛍光を透過させる第2光学フィルタを配置し、前記発光部を点灯して、前記第1光学フィルタを介して前記試料に励起光を照射し、前記撮像部により、前記第2光学フィルタを介して前記試料から発生する蛍光を撮像することを特徴とする。
このような検出方法であれば、前記したマイクロプラスチック検出装置用の光学フィルタユニットと同様の作用効果を奏し得る。
【0018】
また本発明の光学フィルタユニットは、蛍光体により染色されたマイクロプラスチックを含む試料に励起光を照射し、当該試料から発生する蛍光を撮像することで前記試料からマイクロプラスチックを検出するマイクロプラスチック検出装置用のものであり、撮像部を有する携帯型撮影機器に着脱可能に取り付けて使用されるものであって、前記携帯型撮影機器から電力を供給されて発光する発光部と、前記発光部の前方に置かれ、前記発光部から発せられた光のうち励起光を選択的に透過する第1光学フィルタと、前記励起光を遮光して、前記試料から発生した蛍光を透過させる第2光学フィルタと、前記第2光学フィルタに対して前記撮像部が向かい合うようにして前記携帯型撮影機器が取り付けられるアタッチメントとを備えることを特徴とする。
このような構成であっても、携帯型撮影機器から発光部に電力を供給することで、光学フィルタユニット自体にバッテリーを備え付ける必要が無くなるので、前記した本発明の光学フィルタユニットと同様の作用効果を奏し得る。
【0019】
また本発明に係るマイクロプラスチック観察具は、蛍光体により染色されたマイクロプラスチックを観察するためのマイクロプラスチック観察具であって、内部に拡大レンズが設けられた筒状部材と、前記筒状部材において前記拡大レンズの下側に設けられ、前記マイクロプラスチックを含む試料に向けて蛍光用励起光を照射する光源部と、前記筒状部材の上端部に設けられた観察窓とを有していることを特徴とする。
この構成であれば、試料にマイクロプラスチック観察具を被せるだけで、当該試料におけるマイクロプラスチックを簡単に観察することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、携帯型のマイクロプラスチック検出装置において、製造コストを抑え、かつ小型化を図りながら、試料の採取現場における電池切れのリスクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る一実施形態におけるマイクロプラスチック検出装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】同実施形態におけるマイクロプラスチック検出装置の機能ブロック図である。
【
図3】同実施形態におけるマイクロプラスチックの染色工程を説明したフローチャートである。
【
図4】同実施形態における試料中のマイクロプラスチックの撮像工程を説明したフローチャートである。
【
図5】変形実施形態におけるマイクロプラスチック検出装置の構成を模式的に示す図である。
【
図6】変形実施形態におけるマイクロプラスチック観察具の構成を模式的に示す断面図である。
【
図7】変形実施形態におけるマイクロプラスチック観察具の構成を模式的に示す断面図である。
【
図8】変形実施形態におけるマイクロプラスチック観察具の構成を模式的に示す断面図である。
【
図9】変形実施形態における光学顕微鏡用の光学フィルタユニットの構成を模式的に示す断面図である。
【
図10】変形実施形態における染色工程を示す模式図である。
【
図11】変形実刑形態における染色ユニットを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係るマイクロプラスチック検出装置300について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0023】
本実施形態のマイクロプラスチック検出装置300は、例えば海岸等の試料採取現場に持ち出して使用される携帯型のものであり、当該試料採取現場にて採取した試料中に含まれるマイクロプラスチックをその場で検出することを可能とするものである。マイクロプラスチックとは、例えば直径5mm未満のプラスチック粒子又はプラスチック断片をいう。
【0024】
具体的にこのマイクロプラスチック検出装置300は、
図1に示すように、少なくとも発光部210と撮像部220とを備える携帯型撮影機器200と、この携帯型撮影機器200に着脱可能に取り付けられ、発光部210から発せられる光のうち蛍光用励起光のみを選択的に透過する光学フィルタユニット100とを備えている。このマイクロプラスチック検出装置300を用いて、携帯型撮影機器200の発光部210から出た光を光学フィルタユニット100により蛍光用透過光のみを透過させて試料に照射し、試料から発せられる蛍光を撮像部220で撮像し、その撮像画像に画像処理を施すことで、試料に含まれるマイクロプラスチックを検出することができる。なお試料は、例えば海岸で採取されたマイクロプラスチップや木くず等を含む砂であり、後述する染色処理を予め施すことにより、マイクロプラスチックが蛍光体により染色されている。以下、各部について説明する。
【0025】
本実施形態の携帯型撮影機器200は、光を発する発光部210と、試料を撮像する撮像部220と、ディスプレイ230と、コンピュータ本体240とを一体的に備えるモバイル型のコンピュータであり、具体的にはスマートフォンである。この携帯型撮影機器200は略板状をなし、一方の面にディスプレイ230が設けられ、他方の面(裏面)に発光部210と撮像部220とが設けられている。なおこの携帯型撮影機器200は、発光部210と撮像部220とを備えるものであれば、スマートフォンに限らず、タブレット端末やノートPC等であってもよい。
【0026】
発光部210は、白色LEDを用いて構成されるフラッシュライト等である。撮像部220は、試料の分析対象領域を1回で撮像してその画像データを出力する二次元エリアセンサ(ここではCMOSカメラ又はCCDカメラ)等のカメラである。
【0027】
コンピュータ本体240は、CPU、内部メモリ、入出力インターフェースを有したものであり、前記内部メモリに予め格納されたプログラムに従ってCPUや周辺機器が協動することによって、
図2に示すように、マイクロプラスチック識別部241としての機能を発揮する。
【0028】
マイクロプラスチック識別部241は、撮像部220から試料の画像データを受信し、その画像データに対して例えば二値化処理や色抽出処理等の画像処理を施すことで試料からマイクロプラスチックを識別し、画像内におけるマイクロプラスチックの個数及び占有面積を算出するものである。この占有面積は、複数のマイクロプラスチックの総面積でもよく、各マイクロプラスチックの個別の面積でもよく、マイクロプラスチックの1個当たりの平均面積でもよい。
【0029】
光学フィルタユニット100は、暗室を形成する筐体1と、筐体1に着脱可能に取付けられた第1光学フィルタ2及び第2光学フィルタ3と、携帯型撮影機器200に取付けられるアタッチメント4とを備えている。
【0030】
筐体1は、携帯可能な大きさ及び重さの有底筒状をなすものである。具体的にこの筐体1は、一方の底面(上面11ともいう)の面積が他方の底面(下面12ともいう)の面積よりも小さい中空円錐台形状をなしている。筐体1は、その上面11が携帯型撮影機器200の裏面に対向するようにして、携帯型撮影機器200に取り付けられる。この上面11には、携帯型撮影機器200の発光部210から発せられた光を筐体1内に取り込む光取込窓11aと、筐体1内の試料を携帯型撮影機器200の撮像部220により撮像するための撮像用窓とが形成されている。一方筐体1の下面12は開口しており、下面12を下向きにして試料をすっぽり覆うことで外光を遮断し、試料の周りに暗室を形成することができる。
【0031】
筐体1の内壁面13は、上面11から下面12に向かうにつれて拡径する形状をなしている。本実施形態では、内壁面13はその略全面が反射部材により覆われている。この反射部材は、例えばアルミ箔等の金属箔や白色塗料等であるがこれに限らない。また、光をより均一に反射させるために、反射部材の表面は凹凸形状をなすように加工されていてもよい。
【0032】
第1光学フィルタ2は、筐体1の上面11の光取込窓11aに設けられ、発光部210から発せられた光のうち緑波長の蛍光用励起光のみを透過させるものである。具体的にこの第1光学フィルタ2は、約400nm~600nmの波長の光(好ましくは約550nm以下の波長の光)を選択的に透過するバンドパスフィルタである。装置構成を簡単にするため、第1光学フィルタ2は、フィルム状をなす緑色のセロファンにより構成されている。
【0033】
また本実施形態の光学フィルタユニット100は、試料に対して、第1光学フィルタ2を透過した携帯型撮影機器200からの光を直接照射させることなく、内壁面13等で反射した間接光を照射させるようにする間接照明化ユニット5を、光取込窓11aの下に備えている。具体的にこの間接照明化ユニット5は、光取込窓11aの真下に間を開けて設けられ、携帯型撮影機器200からの光を遮光する遮光部5aを備えている。この遮光部5aは、筐体1の下面12側から見て、光取込窓11aを完全に隠すようにして設けられている。より具体的にこの間接照明化ユニット5は、透光性を有する材料からなる有底の筒状部材51と、その底面に設けられた遮光部材52とを用いて構成されている。この筒状部材51は底面を下に向けた状態で光取込窓11aに挿入して固定されており、光取込窓11aの真下にその底面が位置するようにされている。遮光部材52は例えば、遮光性を有する有色(例えば黒色)の塗料であり、筒状部材51の底面全体に塗布されている。このような間接照明化ユニット5により、光取込窓11aから取り込まれた携帯型撮影機器200からの光は、遮光部材52により遮光される。その一方で携帯型撮影機器200からの光は、透光性を有する筒状部材51の側壁を通って横向きに射出され、筐体1の内側壁で反射して試料に照射される。なお前記した第1光学フィルタ2は、筒状部材51の側周面に貼り付けられている。
【0034】
第2光学フィルタ3は、撮影用窓11bを覆って塞ぐようにして取り付けられており、蛍光を透過させるとともに、蛍光用励起光をある程度遮断するバンドパスフィルタである。この第2光学フィルタ3は、少なくとも600nm~700nm以上の波長の光を選択的に透過するものであればよく、ここでは少なくとも約625nm以上の波長の光を選択的に透過するものである。
【0035】
装置構成を簡易で安価なものにするため、本実施形態では第2光学フィルタ3としては、試料からの散乱光や反射光をほぼ完全に遮断して蛍光のみを透過させる高価な光学フィルタではなく、透過波長範囲がよりブロードな特性を有するものを用いている。この第2光学フィルタ3は、試料により散乱される散乱光と、蛍光体から発生する蛍光の両方を透過させ、試料からの散乱光に対する透過率よりも蛍光体からの蛍光に対する透過率が高い光学特性を有しており、そのため蛍光を透過させるだけでなく、試料からの散乱光をある程度透過させるものとなっている。この第2光学フィルタ3は、例えば蛍光体からの蛍光の波長域における透過率が、試料からの散乱光の波長域における透過率の3倍以上が好ましく、5倍以上がより好ましく、7倍以上がさらに好ましい。これにより、フィルタを介して撮像部220により撮像される撮像画像では全体が薄暗い緑となるので、フィルタなしでの撮像画像との比較がし易くなる。すなわち、第2光学フィルタ3により、蛍光のみを透過させて散乱光をほぼ完全に遮断するようにすると、撮像画像は全体が真っ暗になり、その中に蛍光を示す赤い点のみがポツポツと映るようになり、フィルタなしでの撮像画像との比較がしにくい。なおこの第2光学フィルタ3は、フィルム状をなす赤色のセロファンにより構成されている。また、撮像部200の下側に拡大レンズを設けても良い。具体的には、第2光学フィルタ3の下側に拡大レンズを設けても良い。
【0036】
アタッチメント4は、筐体1の上面11に設けられている。このアタッチメント4は、撮影用窓11bと光取込窓11aに対して、携帯型撮影機器200の撮像部220と発光部210を位置決めする位置決め構造を有している。具体的にこのアタッチメント4は、筐体1の上面11から上向きに突出しており、上方からの平面視において、光取込窓11aと撮影用窓11bをそれぞれ取り囲むように環状に形成された突条41を有している。そしてこの突条41の内壁に、携帯型撮影機器200のカメラ及びフラッシュライトの側周面を当接させて設置すると、そのカメラとフラッシュライトが、撮影用窓11bと光取込窓11aにそれぞれ臨む位置となり、筐体1内に光を導入するとともに、試料のマイクロプラスチックからでる蛍光を撮像できるように構成されている。
【0037】
次に、以上のような構成のマイクロプラスチック検出装置300を用いて、試料中のマイクロプラスチックを検出する手順の一例を説明する。
【0038】
<染色工程>
図3に示すように、まず脂質二重膜の染色材であるナイルレッド(C
20H
18N
2O
2)を溶媒であるトルエンに溶かしてナイルレッド溶液を生成する(ステップS11)。そして、このナイルレッド溶液に試料Wを浸す(ステップS12)。このとき、トルエンによりマイクロプラスチックの表面が若干溶融してそこにナイルレッドが潜り込む一方、その他の粒子(ガラス、石、木くずなど)は、トルエンによる影響はほとんど受けず、表面にナイルレッドが付着しただけの状態になると考えられる。
【0039】
次に、試料Wを乾燥させた上で過酸化水素を含む洗浄溶液で洗浄する(ステップS13)。具体的には、2.5w/v%以上、3.5w/v%以下の過酸化水素を含有する洗浄溶液(より具体的にはオキシドール)を用いて試料Wを洗浄する。この洗浄ステップでは、例えば、(a)過酸化水素を含む常温の洗浄溶液に試料Wを24時間以上浸漬させる、又は(b)過酸化水素を含む洗浄溶液中で試料Wを0.5時間以上、2時間以内の時間で煮沸させるのが好ましい。これにより、試料W中の前記その他の粒子は、表面に付着しているナイルレッドが分解して除去され、マイクロプラスチックのみがナイルレッドで染色された状態となる。特に、試料Wに含まれる木くずをオキシドールより分解して微細化することができ、木くずの複雑に入り組んだ表面に付着したナイルレッドを効率よく分解して除去することができる。なお、洗浄液としては、過酸化水素を含むものに限らず、マイクロプラスチックをほとんど溶解せず、かつ木くずの表面に付着した蛍光体を除去しやすいものであればよい。
【0040】
<撮像工程>
図4に示すように、まず、光学フィルタユニット100を携帯型撮影機器200に取り付けてマイクロプラスチック検出装置300とし(ステップS21)、このマイクロプラスチック検出装置300の筐体1を試料に覆いかぶせてセットする(ステップS22)。
【0041】
そして、フラッシュライトを点灯し、間接照明化ユニット5により筐体1の内壁面13で反射された間接光である蛍光用励起光を試料表面の全面に照射する(ステップS23)。ナイルレッドは553nmの光によって最大励起されるが、400nm~600nmの光でも十分な強度の蛍光を発することができる。したがって、本実施形態のように、波長550nm以下の光を選択的に透過する第1光学フィルタ2を透過した蛍光用励起光によっても蛍光する。
【0042】
この状態で、携帯型撮影機器200のカメラにより試料表面の全面を撮像する(ステップS24)。カメラの前段には上述したように波長625nm以上の光を選択的に透過する第2光学フィルタ3が設けられている。蛍光体から発生する蛍光は、波長625nm以上においても十分な強度を有しているから、この第2光学フィルタ3を選択的に透過する一方、蛍光用励起光は550nm未満の波長なので、これが試料にあたって反射した光は、第2光学フィルタ3によってある程度遮断される。したがって、カメラは、この蛍光と、第2光学フィルタ3をわずかに透過した散乱光を捉えて撮像することとなり、試料Wを撮像した撮像画像は、わずかに透過した散乱光によって全体がやや緑がかるとともに、蛍光部位のみが赤く光っているものとなる。
【0043】
次に、マイクロプラスチック識別部241が、撮像画像に対して色抽出処理等の画像処理を施す等して、試料における蛍光が発せられている部位(以下、蛍光部位ともいう。)を特定し、その個数及び大きさを算出し、ディスプレイ230に出力する(ステップS25)。
【0044】
このように構成した本実施形態のマイクロプラスチック検出装置300によれば、従来、蛍光を撮影するために用いていたスマートフォン等の携帯型撮影機器200が備えるフラッシュライト等の発光部210を光源として利用することで、LED等の専用の蛍光用光源を別途設ける必要が無くなる。これにより、電源を必要とする電子部品数を減らし、試料の採取現場における電池切れのリスクを低減することができる。また、光学フィルタユニット100にバッテリーを備え付ける必要が無いので、装置構成を簡単にして小型化できるとともに、その製造コストも下げることができる。この場合、光学フィルタユニット100と別体である携帯型撮影機器200が備える発光部210と撮像部220を利用するため、各光学フィルタに対する発光部210と撮像部220の位置合わせが難しくなるが、第1光学フィルタ2及び第2光学フィルタ3に対して発光部210及び撮像部220がそれぞれ向かい合うようにして携帯型撮影機器200が取り付けられるアタッチメント4を備えることで、各光学フィルタと撮像部220及び発光部210の位置合わせを簡単に行うことができる。
【0045】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、前記実施形態の光学フィルタユニット100は間接照明ユニットを備えていたが、他の実施形態では間接照明ユニットを備えていなくてもよい。他の実施形態では、携帯型撮影機器200から発せられた光が、第1光学フィルタ2を介して試料に直接照射されてもよい。
【0046】
また他の実施形態の間接照明化ユニット5では、遮光部材52は筒状部材51の底面の一部のみを覆うように設けられていてもよい。また遮光部材52は、ハレーションを抑制できる程度であれば、発光部210からの光を完全に遮光することなく透過させるものであってもよい。
【0047】
また前記実施形態では、光学フィルタユニット100の筐体1は中空円錐台形状をなし、その内壁面が傾斜した形状をなしていたがこれに限らない。他の実施形態では、筐体1はその内壁面が真っすぐな筒型形状等であってもよい。
【0048】
また前記実施形態の光学フィルタユニット100は、スマートフォンである携帯型撮影機器200に取付けられるものであったがこれに限らない。他の実施形態では、携帯型撮影機器200は、発光部210と撮像部220とを備えるものであれば、スマートフォンに限らず、例えば携帯電話、デジタルカメラ、フィルムカメラ、インスタントカメラ等であってもよい。
【0049】
また他の実施形態の携帯型撮影機器200は、発光部210と撮像部220としての機能を備えていれば、マイクロプラスチック識別部241としての機能を有していなくてもよく、撮影した画像をディスプレイ230に表示するだけでもよい。また携帯型撮影機器200は、何らかの態様で撮像画像を出力(例えば、他のディスプレイへの表示、写真の現像等)できるのであれば、ディスプレイ230を備えていなくてもよい。
【0050】
また前記実施形態のマイクロプラスチック検出装置300では、携帯型撮影機器200は発光部210及び撮像部220とコンピュータ本体240とを一体的に備えていたがこれに限らない。他の実施形態では、撮像部220及び発光部210とコンピュータ本体240とを別々に備えていてもよい。この場合には、コンピュータ本体240は、ノートPC等であってもよい。
【0051】
また前記実施形態ではマイクロプラスチック識別部241としての機能が、携帯型撮影機器200により発揮されていたがこれに限らない。当該機能は、携帯型撮影機器200と通信ネットワークを介して接続されたサーバ装置により発揮されてもよい。
【0052】
なお前記実施形態では、第1光学フィルタ2は、筒状部材51の側周面に貼り付けられていたがこれに限らない。他の実施形態では、第1光学フィルタ2は、携帯型撮影機器200の発光部210に対向する筒状部材51の上面に貼り付けられていてもよく、上面と側周面の両方に貼り付けられていてもよい。
【0053】
また前記実施形態では、第2光学フィルタは、蛍光と散乱光の両方を透過させるものであったがこれに限らない。他の実施形態では、第2光学フィルタは、散乱光をほぼ完全に遮断し、蛍光のみを透過させる特性を有するものであってもよい。
【0054】
また前記実施形態では蛍光体としてナイルレッドを用いていたがこれに限らない。例えばトルエン等の有機溶媒に溶解可能であれば、蛍光体として任意の蛍光物質を用いてもよく、例えば蛍光チョーク等の市販の蛍光物質等を用いてもよい。
【0055】
また他の実施形態の光学フィルタユニット100としては、
図5に示すものが挙げられる。
図5に示すように他の実施形態の光学フィルタユニット100では、アタッチメント4は、携帯型撮影機器200両面から挟んで取り付くようにしたクリップ式のものであってもよい。このクリップ式のアタッチメント4は、携帯型撮影機器200を挟み込む一対の板状部材42a、42bを有しており、撮像部220側の側面を抑える一方の板状部材42aに第2光学フィルタ3が取り付けられている。またこの実施形態の光学フィルタユニット100は、アタッチメント4により携帯型撮影機器200に取付けられることで、撮像部220の前方に配置されるレンズユニット6を更に備えていてもよい。このレンズユニット6を備えることで、より小さなマイクロプラスチックを観察することができるようになる。このレンズユニット6は例えば広角レンズやマクロレンズを含むものであるのが好ましい。そしてこの実施形態では、暗室を形成する筐体1はレンズユニット6の先端を覆うようにして取り付けられていてよい。さらにこの実施形態の光学フィルタユニット100は、筐体1内に蛍光用励起光を照射する光源部7をさらに備えていてもよい。この光源部7は、図示しない白色LEDである発光部と、当該発光部の光射出方向前方に配置された第1光学フィルタ2により構成されてよい。そしてこの発光部は、電力ケーブルを介して携帯型撮影機器200により電力を供給されて発光するように構成されてよい。あるいは、発光部は、筐体1内に設けられたバッテリーから電力を供給されるようにしてもよい。
【0056】
またアタッチメント4の態様としては、前記したような嵌め込み式やクリップ式に限らず、接着式、マグネット式、シール式、バンドによる締め付け式等、任意の態様であってよい。また、携帯型撮影機器200の筐体全体がはめ込まれるようなものであってもよい。
【0057】
前記各実施形態では、マイクロプラスチック検出装置用の光学フィルタユニットについて説明したが、以下の構成であっても良い。
【0058】
図6には、マイクロプラスチック観察具400を示している。このマイクロプラスチック観察具400は、蛍光体により染色されたマイクロプラスチックを含む試料Wが収容される容器401と、当該容器401の開口を塞ぐ蓋体402と、当該蓋体402に設けられ、容器401内部を観察するための観察窓403とを有している。
【0059】
そして、容器401の側壁には、容器外部からの光のうち蛍光用励起光のみを選択的に透過する第1光学フィルタ404が設けられている。ここで、容器401は、例えば透明等の透光性を有する材料により形成されている。なお、第1光学フィルタ404は、前記実施形態と同様のものである。なお、容器401の側壁自体を蛍光用励起光のみを選択的に透過する材質から形成しても良い。
【0060】
また、蓋体402の観察窓403には、蛍光用励起光を遮光して、試料Wから発生した蛍光を透過させる第2光学フィルタ405が設けられている。なお、第2光学フィルタ405は、前記実施形態と同様のものである。さらに、観察窓403には、観察窓403から外部に延びる遮光用の筒部材を設けても良い。
【0061】
その他、第1光学フィルタ404が設けられた部位及び第1光学フィルタ404が設けられた部位(観察窓403)以外の部位にも、第1光学フィルタ404を設けることが望ましいが、困難な場合には、例えばアルミテーブ等の遮光部材406により遮光されている。なお、容器401の底面にも遮光部材を設けても良いし、遮光が不要であれば遮光部材は設けなくても良い。また、容器全体に第1光学フィルタ404が設けられ、蓋体402が遮光性を有する場合には、遮光部材は不要である。
【0062】
このマイクロプラスチック観察具400であれば、容器401内に試料Wを収容するだけで、当該試料Wにおけるマイクロプラスチックを簡単に観察することができる。
【0063】
なお、容器401の側壁にピンセット等の採取具を挿し込める開口部(不図示)を設ける構成としても良い。この構成であれば、マイクロプラスチック観察具400を用いてマイクロプラスチックを観察しつつ、開口部から採取具を挿し込んで、マイクロプラスチックを採取することができる。
【0064】
図7には、別のマイクロプラスチック観察具500を示している。このマイクロプラスチック観察具500は、蛍光体により染色されたマイクロプラスチックを含む試料Wを観察するルーペタイプのものである。具体的にこのマイクロプラスチック観察具500は、内部に拡大レンズ501(例えば倍率15倍)が設けられた筒状部材502と、当該筒状部材502において拡大レンズ501の下側に設けられた光取り込み窓503と、筒状部材502の上端部に設けられた観察窓504とを有している。ここで、筒状部材502は、遮光性を有する材料により形成されている。
【0065】
光取り込み窓503には、外部からの光のうち蛍光用励起光を選択的に透過する第1光学フィルタ505が設けられている。なお、第1光学フィルタ505は、前記実施形態と同様のものである。なお、光取り込み窓503は、
図7に示すように、筒状部材502の周方向の一部に設けてもよいし、筒状部材502の周方向全体に設けても良い。
【0066】
また、観察窓504には、蛍光用励起光を遮光して、試料Wから発生した蛍光を透過させる第2光学フィルタ506が設けられている。なお、第2光学フィルタ506は、前記実施形態と同様のものである。さらに、観察窓504には、観察窓504から外部に延びる遮光用の筒部材を設けても良い。
【0067】
このマイクロプラスチック観察具500であれば、試料Wにマイクロプラスチック観察具500を被せるだけで、当該試料Wにおけるマイクロプラスチックを簡単に観察することができる。
【0068】
なお、筒状部材502の側壁又は第1光学フィルタ505にピンセット等の採取具を挿し込める開口部を設ける構成としても良い。この構成であれば、マイクロプラスチック観察具500を用いてマイクロプラスチックを観察しつつ、開口部から採取具を挿し込んで、マイクロプラスチックを採取することができる。
【0069】
図8には、別のマイクロプラスチック観察具600を示している。このマイクロプラスチック観察具600は、蛍光体により染色されたマイクロプラスチックを含む試料Wを観察するルーペタイプのものである。具体的にこのマイクロプラスチック観察具600は、内部に拡大レンズ601(例えば倍率15倍)が設けられた筒状部材602と、当該筒状部材602において拡大レンズ601の下側に設けられ、試料Wに向けて蛍光用励起光を照射する光源部603と、筒状部材602の上端部に設けられた観察窓604とを有している。ここで、筒状部材602は、遮光性を有する材料により形成されている。
【0070】
光源部603は、約400nm~600nmの波長の光(好ましくは約550nm以下の波長の光)を照射するものであり、例えば緑色LEDを用いることができる。
【0071】
また、観察窓604には、蛍光用励起光を遮光して、試料Wから発生した蛍光を透過させる第2光学フィルタ605が設けられている。なお、第2光学フィルタ605は、前記実施形態と同様のものである。さらに、観察窓604には、観察窓604から外部に延びる遮光用の筒部材を設けても良い。
【0072】
このマイクロプラスチック観察具600であれば、試料Wにマイクロプラスチック観察具600を被せるだけで、当該試料Wにおけるマイクロプラスチックを簡単に観察することができる。
【0073】
なお、筒状部材602の側壁にピンセット等の採取具を挿し込める開口部(不図示)を設ける構成としても良い。この構成であれば、マイクロプラスチック観察具600を用いてマイクロプラスチックを観察しつつ、開口部から採取具を挿し込んで、マイクロプラスチックを採取することができる。
【0074】
また、上述した
図6、
図7及び
図8に示すマイクロプラスチック観察具400、500、600をスマートフォン等の携帯端末に取り付ける構造としても良い。
【0075】
さらに、
図7及び
図8の構成において、ヘリコイド機構を用いて拡大倍率を変更できる構成としても良い。この場合、複数のレンズを用いて、それら複数のレンズの少なくとも1つを移動させることにより、拡大倍率を変更する構成が考えられる。
【0076】
図9には、光学顕微鏡用のマイクロプラスチック観察治具700を示している。このマイクロプラスチック観察治具700は、光学顕微鏡を用いて蛍光体により染色されたマイクロプラスチックを含む試料Wを観察する際に用いられるものであり、光学顕微鏡の対物レンズ10に着脱可能に取り付けられる。具体的にこのマイクロプラスチック観察治具700は、対物レンズ10に装着される装着部701と、光学顕微鏡のステージ20に載置された試料Wに蛍光用励起光を照射するための照明用筒状部材702とを備えている。
【0077】
装着部701は、対物レンズ10の先端部の全周を覆うように取り付けられるものであり、例えば止めねじ701aにより対物レンズ10に固定される。
【0078】
照明用筒状部材702は、例えば円筒状をなすものであり、例えばステージ20上に載置されたプレパラート30に接触して試料Wを覆うものである。また、照明用筒状部材702の側壁には、試料Wに向けて蛍光用励起光を照射する光源部703が設けられている。この光源部703は、約400nm~600nmの波長の光(好ましくは約550nm以下の波長の光)を照射するものであり、例えば緑色LEDを用いることができる。なお、光源部703は、外部に設けられた光源から蛍光用励起光を導光する光ファイバであっても良い。
【0079】
そして、装着部701と照明用筒状部材702とは、筒状をなす連結部材704により連結されている。この連結部材704の内部を通じて対物レンズ10に試料Wからの蛍光が入射する。この連結部材704には、照明用筒状部材702がスライド可能に接続されている。具体的には照明用筒状部材702が、ステージ20の上下移動に追従して連結部材704に対して自重でスライド移動するように構成されている。また、連結部材704と照明用筒状部材702とは隙間嵌めされていても良いし、それらの間にOリング又は潤滑剤が設けられていても良い。また、連結部材704は、装着部701に対して、例えば磁石701mで連結される等によって、着脱可能に構成されている。なお、ステージ20に追従してスライド移動するスライド部を連結部材704に設けても良いし、照明用筒状部材702に設けても良い。
【0080】
このマイクロプラスチック観察治具700であれば、光学顕微鏡を用いて蛍光体により染色されたマイクロプラスチックを含む試料Wを観察することができる。なお、このマイクロプラスチック観察治具700を用いて試料Wを観察する際には、ステージ20の絞り部20sは閉じておく。
【0081】
なお、照明用筒状部材702の側壁にピンセット等の採取具Pを挿し込める開口部705を設ける構成としても良い。この構成であれば、光学顕微鏡を用いてマイクロプラスチックを観察しつつ、開口部705から採取具Pを挿し込んで、マイクロプラスチックを採取することができる。
【0082】
また、染色工程を簡単かつ安全に行う構成として、
図10に示すものが考えられる。この染色工程は、染色前の試料、染色液及び洗浄液を処理容器800に収容し、処理容器800を振って試料に含まれるマイクロプラスチックを染色する(
図10(a)参照)。
【0083】
その後、一時静置することにより、染色液及び洗浄液の比重の違いによって、染色液及び洗浄液が分離し、染色液が下方に溜まる(
図10(b)参照)。この分離状態を視認するための視認窓801が処理容器800に設けられている。下方に分離された染色液を、容器800の下方に設けられたノズル802によって外部に排出する(
図10(c)参照)。
【0084】
次に、再び処理容器800を振ることによって、処理容器800内に残った洗浄液により試料Wが洗浄される(
図10(c)参照)。この洗浄が終わった後に、処理容器800の下方に設けられたノズル802によって洗浄液を排出する(
図10(d)参照)。以上により、試料Wの染色工程が終了する。
【0085】
さらに、染色工程を簡単かつ安全に行う構成として、
図11に示す染色ユニット900が考えられる。この染色ユニット900は、染色前の試料Wを収容するとともに底部がメッシュフィルタ等の通液部材901により構成された容器902と、当該容器902の通液部材901から容器内部に染色液及び洗浄液を供給する処理液供給機構903とを備えている。
【0086】
処理液供給機構903は、容器902の底部を取り囲む処理液貯留部904と、当該処理液貯留部904に染色液又は処理液を供給する処理液供給部905とを有している。処理液貯留部904の上部開口は、容器902の底部が嵌る嵌合部であり、その内側周面には、液密にするためのシール部材906が設けられている。処理液供給部905は、例えば三方弁等の切り替え部905aを有しており、この切り替え部905aにより、供給する処理液を染色液と洗浄液とで切り替えることができる。また、処理液貯留部904には、処理後の液を排出するための排出部907が設けられている。なお、排出部907には開閉弁(不図示)が設けられている。
【0087】
この染色ユニット900を用いる場合には、まず、容器902内に染色前の試料Wを収容し、その容器902の底部を処理液貯留部904の嵌合部に嵌める。この状態で、処理液供給部905により染色液を処理液貯留部904に供給する。このとき、排出部907の開閉弁が閉じた状態である。これにより、容器902の通液部材901から容器内部に染色液が流入し、試料Wの染色が行われる。その後、排出部907の開閉弁を開放して、染色後の染色液が排出される。
【0088】
次に、処理液供給部905により洗浄液を処理液貯留部904に供給する。このとき、排出部907の開閉弁が閉じた状態である。これにより、容器902の通液部材901から容器内部に洗浄液が流入し、試料Wの洗浄が行われる。その後、排出部907の開閉弁を開放して、洗浄後の洗浄液が排出される。以上により、試料の染色工程が終了する。
【0089】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、種々の変形や実施形態の組合せを行ってもかまわない。
【符号の説明】
【0090】
300 ・・・マイクロプラスチック検出装置
200 ・・・携帯型撮影機器
210 ・・・発光部
220 ・・・撮像部
100 ・・・光学フィルタユニット
2 ・・・第1光学フィルタ
3 ・・・第2光学フィルタ
4 ・・・アタッチメント