(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092977
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】衛星通信用のエミュレータシステムおよびエミュレート方法
(51)【国際特許分類】
H01Q 21/06 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
H01Q21/06
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023210654
(22)【出願日】2023-12-13
(31)【優先権主張番号】63/435,276
(32)【優先日】2022-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520307104
【氏名又は名称】稜研科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】TMY TECHNOLOGY INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】張 書維
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA06
5J021HA07
5J021JA10
(57)【要約】
【目的】衛星通信用のエミュレータシステムおよびエミュレート方法を提供する。
【解決手段】エミュレート方法は、第1方向に沿って配置された複数のアンテナユニットを含む第1アンテナアレイを提供することと、ジグにより被試験デバイスを仮想平面上に取り付けることと、第1アンテナアレイにより第1ビームを有効にすることと、デフォルトの入射角により第1ビームを被試験デバイスに向けることと、第1ビームを介して被試験デバイスに第1信号を送信するとともに、被試験デバイスから第1信号に対応する第2信号を受信することと、第2信号に基づいて位相差の値を計算することと、位相差の値および閾値に基づいて被試験デバイスがテストに合格するかどうかを判断し、テスト結果を生成することと、テスト結果を出力することと、を含む。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験デバイスに適した衛星通信用のエミュレータシステムであって、
第1方向に沿って配置された複数のアンテナユニットを含む第1アンテナアレイと、
前記被試験デバイスを仮想平面上に取り付けるために使用されるジグと、
前記第1アンテナアレイに通信可能に接続されたコントローラと、
を含み、前記コントローラが、
前記第1アンテナアレイにより第1ビームを有効にすることと、
デフォルトの入射角度により前記第1ビームを前記被試験デバイスに向けることと、
前記第1ビームを介して前記被試験デバイスに第1信号を送信するとともに、前記被試験デバイスから前記第1信号に対応する第2信号を受信することと、
前記第2信号に基づいて位相差の値を計算することと、
前記位相差の値および閾値に基づいて前記被試験デバイスがテストに合格するかどうかを判断し、テスト結果を生成することと、
前記テスト結果を出力することと、
を実行するように構成されたエミュレータシステム。
【請求項2】
前記第1アンテナアレイの前記仮想平面上の投影が、前記ジグと重なる請求項1に記載のエミュレータシステム。
【請求項3】
前記第1アンテナアレイの前記仮想平面上の投影が、前記ジグと重ならない請求項1に記載のエミュレータシステム。
【請求項4】
前記コントローラが、前記第1アンテナアレイにより前記第1ビームとは異なる第2ビームを有効にするとともに、前記第2ビームを介して前記被試験デバイスと通信し、前記テスト結果を生成する請求項1に記載のエミュレータシステム。
【請求項5】
第2方向に沿って配置された複数のアンテナユニットを含む第2アンテナアレイをさらに含み、前記第2アンテナアレイが、前記コントローラに通信可能に接続され、前記コントローラが、前記第1アンテナアレイおよび前記第2アンテナアレイにより前記第1ビームを有効にする請求項1に記載のエミュレータシステム。
【請求項6】
第2方向に沿って配置された複数のアンテナユニットを含む第2アンテナアレイをさらに含み、前記第2アンテナアレイが、前記コントローラに通信可能に接続され、前記コントローラが、前記第2アンテナアレイにより第2ビームを有効にするとともに、前記第2ビームを介して前記被試験デバイスと通信し、前記テスト結果を生成する請求項1に記載のエミュレータシステム。
【請求項7】
前記第1アンテナアレイが、さらに、
前記複数のアンテナユニットの第1アンテナユニットに電気接続された移相器を含み、
前記コントローラが、前記移相器により前記第2信号に対して位相シフトを実行し、シフトされた信号を取得するとともに、前記シフトされた信号に基づいて前記位相差の値を計算する請求項1に記載のエミュレータシステム。
【請求項8】
前記コントローラが、さらに、
前記被試験デバイスからキャリブレーション信号を受信することと、
前記キャリブレーション信号に基づいて前記シフトされた信号を補償し、前記位相差の値を計算することと、
を実行するように構成された請求項7に記載のエミュレータシステム。
【請求項9】
前記コントローラが、前記第1ビームの信号強度を調整することによって、前記衛星通信のエミュレートされた衛星の模擬高度を調整する請求項1に記載のエミュレータシステム。
【請求項10】
前記コントローラが、前記模擬高度に基づいて前記デフォルトの入射角を調整することによって、模擬入射角を調整する請求項9に記載のエミュレータシステム。
【請求項11】
前記ジグが、可動物体であるとともに、前記コントローラに電気接続され、前記コントローラが、前記仮想平面が6つの自由度を有するように前記ジグを設定する請求項1に記載のエミュレーションシステム。
【請求項12】
被試験デバイスに適した衛星通信用のエミュレート方法であって、
第1方向に沿って配置された複数のアンテナユニットを含む第1アンテナアレイを提供することと、
ジグにより前記被試験デバイスを仮想平面上に取り付けることと、
前記第1アンテナアレイにより第1ビームを有効にすることと、
デフォルトの入射角により前記第1ビームを前記被試験デバイスに向けることと、
前記第1ビームを介して前記被試験デバイスに第1信号を送信するとともに、前記被試験デバイスから前記第1信号に対応する第2信号を受信することと、
前記第2信号に基づいて位相差の値を計算することと、
前記位相差の値および閾値に基づいて前記被試験デバイスがテストに合格するかどうかを判断し、テスト結果を生成することと、
前記テスト結果を出力することと、
を含むエミュレート方法。
【請求項13】
前記第1アンテナアレイの前記仮想平面上の投影が、前記ジグと重なる請求項12に記載のエミュレート方法。
【請求項14】
前記第1アンテナアレイの前記仮想平面上の投影が、前記ジグと重ならない請求項12に記載のエミュレート方法。
【請求項15】
前記第1アンテナアレイにより前記第1ビームとは異なる第2ビームを有効にすることと、
前記第2ビームを介して前記被試験デバイスと通信し、前記テスト結果を生成することと、
をさらに含む請求項12に記載のエミュレート方法。
【請求項16】
第2方向に沿って配置された複数のアンテナユニットを含む第2アンテナアレイを提供することをさらに含み、
前記第1アンテナアレイにより前記第1ビームを有効にする前記ステップが、
前記第1アンテナアレイおよび前記第2アンテナアレイにより前記第1ビームを有効にすることを含む請求項12に記載のエミュレート方法。
【請求項17】
第2方向に沿って配置された複数のアンテナユニットを含む第2アンテナアレイを提供することをさらに含み、
前記テスト結果を生成する前記ステップが、
前記第2アンテナアレイにより第2ビームを有効にすることと、
前記第2ビームを介して前記被試験デバイスと通信し、前記テスト結果を生成することと、
を含む請求項12に記載のエミュレート方法。
【請求項18】
前記第2信号に基づいて前記位相差の値を計算する前記ステップが、
前記第2信号に対して位相シフトを実行し、シフトされた信号を取得することと、
前記シフトされた信号に基づいて前記位相差の値を計算することと、
を含む請求項12に記載のエミュレート方法。
【請求項19】
前記シフトされた信号に基づいて前記位相差の値を計算する前記ステップが、
前記被試験デバイスからキャリブレーション信号を受信することと、
前記キャリブレーション信号に基づいて前記シフトされた信号を補償し、前記位相差の値を計算することと、
を含む請求項18に記載のエミュレート方法。
【請求項20】
前記第1ビームの信号強度を調整することによって、前記衛星通信のエミュレートされた衛星の模擬高度を調整することをさらに含む請求項12に記載のエミュレート方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信の方法に関するものであり、特に、衛星通信用のエミュレータシステムおよびエミュレート方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、低地球軌道(low-earth-orbit, LEO)衛星システムが打ち上げられている。LEOシステムのおかげで、地球上のデバイスは、距離に関係なく互いに通信することができる。しかしながら、市場におけるデバイスが正常に動作する、つまり、LEO衛星と通信できるようにすることが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、衛星通信用のエミュレータシステムおよびエミュレート方法に関するものであり、本発明は、被試験デバイス(device under test, DUT)に適している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、衛星通信用のエミュレータシステムに関するものである。このエミュレータシステムは、被試験デバイスに適している。エミュレータシステムは、第1アンテナアレイ、ジグ、およびコントローラを含む。第1アンテナアレイは、第1方向に沿って配置された複数のアンテナユニットを含む。ジグは、被試験デバイスを仮想平面上に取り付けるために使用される。コントローラは、第1アンテナアレイに通信可能に接続され、コントローラは、第1アンテナアレイにより第1ビームを有効(enable)にすることと、デフォルトの入射角により第1ビームを被試験デバイスに向けることと、第1ビームを介して被試験デバイスに第1信号を送信するとともに、被試験デバイスから第1信号に対応する第2信号を受信することと、第2信号に基づいて位相差の値を計算することと、位相差の値および閾値に基づいて被試験デバイスがテストに合格するかどうかを判断し、テスト結果を生成することと、テスト結果を出力することと、を実行するように構成される。
【0005】
本発明の1つの実施形態において、第1アンテナアレイの仮想平面上の投影は、ジグと重なる。
【0006】
本発明の1つの実施形態において、第1アンテナアレイの仮想平面上の投影は、ジグと重ならない。
【0007】
本発明の1つの実施形態において、コントローラは、第1アンテナアレイにより第1ビームとは異なる第2ビームを有効にするとともに、第2ビームを介して被試験デバイスと通信し、テスト結果を生成する。
【0008】
本発明の1つの実施形態において、エミュレータシステムは、さらに、第2アンテナアレイを含む。第2アンテナアレイは、第2方向に沿って配置された複数のアンテナユニットを含み、第2アンテナアレイは、コントローラに通信可能に接続され、コントローラは、第1アンテナアレイおよび第2アンテナアレイにより第1ビームを有効にする。
【0009】
本発明の1つの実施形態において、エミュレータシステムは、さらに、第2アンテナアレイを含む。第2アンテナアレイは、第2方向に沿って配置された複数のアンテナユニットを含み、第2アンテナアレイは、コントローラに通信可能に接続され、コントローラは、第2アンテナアレイにより第2ビームを有効にするとともに、第2ビームを介して被試験デバイスと通信し、テスト結果を生成する。
【0010】
本発明の1つの実施形態において、第1アンテナアレイは、さらに、複数のアンテナユニットの第1アンテナユニットに電気接続された移相器を含み、コントローラは、移相器により第2信号に対して位相シフトを実行し、シフトされた信号を取得するとともに、シフトされた信号に基づいて位相差の値を計算する。
【0011】
本発明の1つの実施形態において、コントローラは、さらに、被試験デバイスからキャリブレーション信号を受信し、キャリブレーション信号に基づいてシフトされた信号を補償するとともに、位相差の値を計算する。
【0012】
本発明の1つの実施形態において、コントローラは、第1ビームの信号強度を調整することによって、衛星通信のエミュレートされた衛星の模擬高度を調整する。
【0013】
本発明の1つの実施形態において、コントローラは、模擬高度に基づいてデフォルトの入射角を調整することによって、模擬入射角を調整する。
【0014】
本発明の1つの実施形態において、ジグは、可動物体であるとともに、コントローラに電気接続され、コントローラは、仮想平面が6つの自由度を有するようにジグを設定する。
【0015】
本発明は、衛星通信のエミュレート方法に関するものである。このエミュレート方法は、被試験デバイスに適している。エミュレート方法は、第1方向に沿って配置された複数のアンテナユニットを含む第1アンテナアレイを提供することと、ジグにより被試験デバイスを仮想平面上に取り付けることと、第1アンテナアレイにより第1ビームを有効にすることと、デフォルトの入射角により第1ビームを被試験デバイスに向けることと、第1ビームを介して被試験デバイスに第1信号を送信するとともに、被試験デバイスから第1信号に対応する第2信号を受信することと、第2信号に基づいて位相差の値を計算することと、位相差の値および閾値に基づいて被試験デバイスがテストに合格するかどうかを判断し、テスト結果を生成することと、テスト結果を出力することと、を含む。
【0016】
本発明の1つの実施形態において、第1アンテナアレイの仮想平面上の投影は、ジグと重なる。
【0017】
本発明の1つの実施形態において、第1アンテナアレイの仮想平面上の投影は、ジグと重ならない。
【0018】
本発明の1つの実施形態において、エミュレート方法は、さらに、第1アンテナアレイにより第1ビームとは異なる第2ビームを有効にすることと、第2ビームを介して被試験デバイスと通信し、テスト結果を生成することと、を含む。
【0019】
本発明の1つの実施形態において、エミュレート方法は、さらに、第2アンテナアレイを提供することを含み、第2アンテナアレイは、第2方向に沿って配置された複数のアンテナユニットを含み、第1アンテナアレイにより第1ビームを有効にするステップは、第1アンテナアレイおよび第2アンテナアレイにより第1ビームを有効にすることを含む。
【0020】
本発明の1つの実施形態において、エミュレート方法は、さらに、第2アンテナアレイを提供することを含み、第2アンテナアレイは、第2方向に沿って配置された複数のアンテナユニットを含み、テスト結果を生成するステップは、第2アンテナアレイにより第2ビームを有効にすることと、第2ビームを介して被試験デバイスと通信し、テスト結果を生成することと、を含む。
【0021】
本発明の1つの実施形態において、第2信号に基づいて位相差の値を計算するステップは、第2信号に対して位相シフトを実行し、シフトされた信号を取得することと、シフトされた信号に基づいて位相差の値を計算することと、を含む。
【0022】
本発明の1つの実施形態において、シフトされた信号に基づいて位相差の値を計算するステップは、被試験デバイスからキャリブレーション信号を受信することと、キャリブレーション信号に基づいてシフトされた信号を補償し、位相差の値を計算することと、を含む。
【0023】
本発明の1つの実施形態において、エミュレート方法は、さらに、第1ビームの信号強度を調整することによって、衛星通信のエミュレートされた衛星の模擬高度を調整することを含む。
【発明の効果】
【0024】
上記の説明に基づき、本発明は、衛星通信デバイスの通信能力をテストするための便利な方法を提供する。
【0025】
上述した内容をより理解しやすくするために、以下、図面と併せたいくつかの実施形態について詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
添付の図面は、本発明の原理をさらに理解するために含まれており、本明細書に組み込まれ、かつその一部を構成するものである。図面は、本発明の実施形態を例示しており、説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たしている。
【0027】
【
図1】衛星通信のエミュレート環境の概略図を示したものである。
【
図2】本発明の1つの実施形態に係る衛星通信用のエミュレータシステムの概略図を示したものである。
【
図3】本発明の1つの実施形態に係る衛星通信のエミュレート環境の側面図を示したものである。
【
図4】本発明の1つの実施形態に係る衛星通信のエミュレート環境の上面図を示したものである。
【
図5】本発明の1つの実施形態に係る衛星通信のエミュレート環境の側面図を示したものである。
【
図6】本発明の1つの実施形態に係るアンテナアレイと被試験デバイス(DUT)の間の通信の概略図を示したものである。
【
図7】本発明の1つの実施形態に係る模擬入射角と距離の間の関係の概略図を示したものである。
【
図8】本発明の1つの実施形態に係る模擬入射角とエミュレートされた衛星の模擬角速度の間の関係の概略図を示したものである。
【
図9】本発明の1つの実施形態に係る衛星通信用のエミュレート方法のフローチャートを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、衛星通信のエミュレート環境の概略図を示したものである。従来のエミュレート環境は、エミュレートされた衛星として機能するデバイス11を取り付けるために使用される円弧型レール10を有し、円弧型レール10に沿ってデバイス11を移動させることができる。被試験デバイス20は、取り付けプラットフォーム上でテストすることができる。しかしながら、円弧型レール10の金属フレームは、テスト結果に影響を与える可能性があり、機械的制御手段には、精度が低い、機械構造が複雑である、設置および校正に時間がかかるなどの欠点がある。
【0029】
図2は、本発明の1つの実施形態に係る衛星通信用のエミュレータシステム100の概略図を示したものである。
図3は、本発明の1つの実施形態に係る衛星通信のエミュレート環境の側面図を示したものである。エミュレータシステム100は、被試験デバイス200の通信能力をテストするのに適している。エミュレータシステム100は、コントローラー110、ジグ120、および1つまたはそれ以上のアンテナアレイ130を含むことができる。エミュレータシステム100のアンテナアレイ130の数は、任意の正の整数であってもよいが、本発明はこれに限定されない。例えば、アンテナアレイ130は、アンテナアレイ131、アンテナアレイ132、およびアンテナアレイ13nを含むことができる。
【0030】
コントローラー110は、例えば、中央処理装置(central processing unit, CPU)、または他のプログラム可能な汎用または特殊目的のマイクロコントロールユニット(micro control unit, MCU)、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor, DSP)、プログラム可能なコントローラ、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit, ASIC)、グラフィックス処理ユニット(graphics processing unit, GPU)、演算論理回路(arithmetic logic unit, ALU)、複合プログラマブルロジックデバイス(complex programmable logic device, CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array, FPGA)、または他の類似するデバイスまたはこれらの組み合わせであってもよい。コントローラー110は、ジグ120または1つ以上のアンテナアレイ130に通信可能に、または電気的に接続することができる。
【0031】
ジグ120は、被試験デバイス200を仮想平面上に取り付けるために使用することができ、仮想平面は、例えば、デスクトップまたはプラットフォームと平行な平面であってもよい。例えば、ジグ120は、デスクトップ上に配置され、被試験デバイス200をデスクトップ上に固定することができる。1つの実施形態において、ジグ120は、可動物体(例えば、リフティングプラットフォーム)であってもよく、コントローラー110に電気的に、または通信可能に接続することができる。コントローラー110は、
図3に示すように、仮想平面が6つの自由度を有するようにジグ120を設定することができる。被試験デバイス200は、ジグ120とともに移動して、衛星通信システムの通信デバイスが移動している状況をシミュレートすることができる。
【0032】
アンテナアレイ130(例えば、アンテナアレイ131)は、一様線形アレイ(uniform linear array, ULA)であってもよく、特定の方向に沿って配置されたN個のアンテナユニット30を含むことができる。ここで、Nは、任意の正の整数であってもよい。隣接する2つのアンテナユニット30(例えば、アンテナユニット#1および#2)は、長さdで分離することができる。1つの実施形態において、長さdは、λ/2と等しくてもよい。ここで、λは、アンテナアレイ130または被試験デバイス200により放射されるテスト信号の波長であってもよい。
【0033】
単一のアンテナアレイ130は、1つまたはそれ以上のビームを有効にすることができ、1つまたはそれ以上のビームを被試験デバイス200に向けることによって、1つまたはそれ以上のビームを介して被試験デバイス200と通信することができる。ここで、コントローラー110は、1つまたはそれ以上のビームの角度を調整することによって、エミュレートされた衛星の動きをエミュレートすることができる。コントローラー110は、1つまたはそれ以上のビームを介して被試験デバイス200と通信し、被試験デバイス200をテストすることができる。有効化されたアンテナユニット30のそれぞれの位相を調整することによって、コントローラー110によりビーム方向を制御することができる。有効化されたアンテナユニット30のそれぞれのゲインを調整することによって、トータルゲインおよび/またはビーム形状を調整することができる。さらに、有効化されたアンテナユニット30の中心の角速度(被試験デバイス200に対する)は、エミュレートされた衛星の角速度と等しくてもよい。
【0034】
1つの実施形態において、コントローラー110は、複数のビームを有効にして、それぞれ複数のエミュレートされた衛星をエミュレートすることができる。各ビームは、アンテナアレイ130の(kn+m)番目のアンテナユニット30により有効にすることができる。ここで、kおよびnは、正の整数であり、mは、kより小さい非負の整数である。アンテナアレイ131を例に挙げると、アンテナアレイ131の3つのアンテナユニット30(すなわち、アンテナユニット#1、#2、および#3)は、同時に、または異なる時間にビーム41およびビーム42を有効にし、3つのアンテナユニット30は、ビーム41またはビーム42を被試験デバイス200に向けることができる。一方、アンテナアレイ131の2つのアンテナユニット30(すなわち、アンテナユニット#(N-1)および#N)は、ビーム43を有効にし、ビーム43を被試験デバイス200に向けることができる。
【0035】
1つまたはそれ以上のアンテナアレイ130は、例えば、天井に設置することができ、異なるアンテナアレイ130の複数のアンテナユニット30を同じまたは異なる方向に配置することにより、同じまたは異なる軌道を有する衛星をエミュレートすることができる。
図4は、本発明の1つの実施形態に係る衛星通信のエミュレート環境の上面図を示したものである。アンテナアレイ131を例に挙げると、アンテナアレイ131の被試験デバイス200が取り付けられた仮想平面(例えば、デスクトップ)上の投影1301は、ジグ120または被試験デバイス200と完全に/部分的に重なることができる。アンテナアレイ132を例に挙げると、アンテナアレイ132の被試験デバイス200が取り付けられた仮想平面上の投影1302は、ジグ120または被試験デバイス200と重ならなくてもよい。したがって、アンテナアレイ131およびアンテナアレイ132を使用して、それぞれ異なる入射角を有する衛星をエミュレートすることができる。
【0036】
図5は、本発明の1つの実施形態に係る衛星通信のエミュレート環境の側面図を示したものである。1つの実施形態において、異なるアンテナアレイ130は、それぞれ異なるビームを有効にし、被試験デバイス200と通信することができる。例えば、アンテナアレイ131は、ビーム51を有効にすることができ、アンテナアレイ132は、ビーム52を有効にすることができる。コントローラー110は、ビーム51および/またはビーム52を介して被試験デバイス200と通信し、被試験デバイス200をテストするともに、被試験デバイス200のテスト結果を生成することができる。1つの実施形態において、ビームは、複数のアンテナアレイ130により有効にすることができる。例えば、ビーム53は、アンテナアレイ131およびアンテナアレイ132により有効にすることができる。コントローラー110は、ビーム53を介して被試験デバイス200と通信し、被試験デバイス200をテストするとともに、被試験デバイス200のテスト結果を生成することができる。
【0037】
図6は、本発明の1つの実施形態に係るアンテナアレイ131と被試験デバイス200の間の通信の概略図を示したものである。被試験デバイス200をテストするために、被試験デバイス200は、まず、0度のステアリング角でキャリブレーション信号61を送信することができる。つまり、キャリブレーション信号61は、被試験デバイス200を通過する垂直線に沿って被試験デバイス200により送信することができる。アンテナアレイ131は、キャリブレーション信号61を受信することができ、コントローラー110は、キャリブレーション信号61の情報を記録することができる。
【0038】
その後、コントローラー110は、アンテナアレイ131によりビーム62を有効にすることができ、デフォルトの入射角φでビーム62を被試験デバイス200に向けることができる。コントローラー110は、ビーム62を介して被試験デバイス200に信号を送信することができ、被試験デバイス200は、ビーム62からの信号を受信して、信号の到着角(angle of arrival, AoA)を取得することができる。被試験デバイス200は、ステアリング角θ(つまり、応答信号63の方向と被試験デバイス200を通過する垂直線の間の角度)がAoAと同じである応答信号63を放射することができる。被試験デバイス200がAoAを正しく計算できる場合、AoAまたはステアリング角θは、デフォルトの入射角φと等しくなければならない。したがって、AoAまたはステアリング角θがデフォルトの入射角φと等しくない場合は、被試験デバイス200の位相シフト機構に何らかのエラーがあることを意味する。しかしながら、ビーム幅を有するワイヤレス信号の性質により、アンテナアレイ131の1つまたはそれ以上のアンテナユニット30は、被試験デバイス200が放射した応答信号63をまだ受信することができる。被試験デバイス200がAoAを正しく計算することができ、さらに受信した信号(例えば、アンテナアレイ131)の信号源に向かって応答信号63を正しく送信できるかどうかを判断することが重要である。
【0039】
アンテナアレイ131が一様線形アレイであり、アンテナアレイ131の2つの隣接するアンテナユニット30が長さd=λ/2で分離され、信号63のステアリング角θが第1アンテナユニット30(つまり、アンテナユニット#1)に向いていると仮定する。n番目(左から右へ)のアンテナユニット30の受信した応答信号63の位相θnを方程式(1)として与えることができる。
【0040】
【0041】
応答信号63を受信するアンテナユニット30(例えば、アンテナユニット#1)がステアリング角θに対応する位置にちょうど位置している場合、アンテナユニット30は、平面波面(planar wave front)で信号63を受信することができる。一方、応答信号63を受信するアンテナユニット30がステアリング角θと等しくないデフォルトの入射角φに対応する位置にある場合(例えば、被試験デバイス200がAoAを完全に正しく計算できず、AoAがデフォルトの入射角φと等しくない場合)、n番目のアンテナユニット30が観測する応答信号63は、方程式(2)に示すように、Pnであってもよい。ここで、Lは、被試験デバイス200の発光アレイからアンテナアレイ131までの経路の長さである。
【0042】
【0043】
1つの実施形態において、アンテナアレイ130(例えば、アンテナアレイ131)は、さらに、各アンテナユニット30に対して移相器を含むことができる。移相器は、アンテナユニット30に電気接続することができる。コントローラ110は、移相器により信号Pnの位相シフトを実行し、位相残差φをキャンセルすることができる。コントローラ110は、それに応じて、方程式(3)に示すように、シフトされた信号P’nを取得することができる。
【0044】
【0045】
【0046】
1つの実施形態において、コントローラ110は、アンテナアレイ130のアンテナユニット30のゲインを調整することによって、またはアンテナアレイ130により放射されるビームの信号強度を調整することによって、衛星通信のエミュレートされた衛星の模擬高度を調整することができる。エミュレートされた衛星の模擬高度と放射ビームの信号強度(またはアンテナユニット30のゲイン)の間のマッピング関係は、ルックアップテーブルに記録され、コントローラ110は、ルックアップテーブルを予備保存することができる。
【0047】
1つの実施形態において、コントローラ110は、エミュレートされた衛星の模擬高度を調整することによって、エミュレートされた衛星の模擬速度を調整することができる。具体的に説明すると、コントローラ110は、模擬高度に基づいてエミュレートされた衛星と地球の中心の間の距離Rを取得することができる。コントローラ110は、方程式(4)~方程式(6)に基づいてエミュレートされた衛星の速度vを取得することができる。ここで、Gは、万有引力定数(universal gravitational constant)であり、Mは、地球の質量であり、R0は、地球の半径である。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
方程式(9)は、近似方程式であり、方程式(9)と元の方程式の間の誤差は、4%未満であるが、これは、工学実践において許容可能とされている。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
図9は、本発明の1つの実施形態に係る衛星通信のエミュレート方法のフローチャートを示したものであり、エミュレート方法は、
図2に示したようなエミュレータシステム100により実施することができる。ステップS901において、第1方向に沿って配置された複数のアンテナユニットを含む第1アンテナアレイを提供する。ステップS902において、ジグにより被試験デバイスを仮想平面上に取り付ける。ステップS903において、第1アンテナアレイにより第1ビームを有効にする。ステップS904において、デフォルトの入射角度により第1ビームを被試験デバイスに向ける。ステップS905において、第1ビームを介して被試験デバイスに第1信号を送信するとともに、被試験デバイスから第1信号に対応する第2信号を受信する。ステップS906において、第2信号に基づいて位相差の値を計算する。ステップS907において、位相差の値および閾値に基づいて被試験デバイスがテストに合格するかどうかを判断し、テスト結果を生成する。ステップS908において、テスト結果を出力する。
【0059】
以上のように、本発明は、衛星通信用のエミュレータシステムを提供する。このエミュレータシステムは、衛星通信システムに複数の衛星が存在する状況、衛星軌道が地上端末の直上ではない状況、または地上端末自体が移動している状況をシミュレートすることができる。
【0060】
本分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の範囲または精神から逸脱せずに、開示された実施形態に対してさまざまな修正および変更が可能であることが理解されよう。これを考慮して、本発明は、以下の特許請求の範囲およびそれらの同等物の範囲内にある修正および変更を包含することが意図されている。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によるエミュレータシステムおよびエミュレート方法は、無線通信業界に適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
10 円弧型レール
100 エミュレータシステム
11 デバイス
110 コントローラ
120 ジグ
130、131、132、13n アンテナアレイ
1301、1302 投影
20、200 被試験デバイス
30 アンテナユニット
41、42、43、51、52、53、62 ビーム
61 キャリブレーション信号
63 応答信号
700、800 概略図
S901、S902、S903、S904、S905、S906、S907、S908 ステップ
【外国語明細書】