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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092978
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】合成樹脂製の容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/40 20060101AFI20240701BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B65D1/40
B65D1/02 110
B65D1/02 221
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023211387
(22)【出願日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2022208081
(32)【優先日】2022-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清都 弘光
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 仁
(72)【発明者】
【氏名】門前 秀人
(72)【発明者】
【氏名】柴田 誠士
(72)【発明者】
【氏名】内山 剛志
(72)【発明者】
【氏名】木下 裕貴
【テーマコード(参考)】
3E033
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA15
3E033BA16
3E033BA18
3E033BB08
3E033DA03
3E033DB01
3E033DC10
3E033DD05
3E033EA07
3E033EA09
3E033FA03
3E033GA02
(57)【要約】
【課題】容器に視認性の高い表示部を付す。
【解決手段】容器1は、所定の容器形状を有するポリエステル樹脂製の容器本体11と、容器本体の外面側に積層されたポリオレフィン樹脂製の被覆層12とを備える。被覆層12は、少なくともその一部に表示部20を有し、表示部20は、表示内容を提示する凹凸を含む。この凹凸の凹部22と凸部21との境界は、容器1の外面の法線に対して0.05~60°の勾配を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の容器形状を有する容器本体と、
前記容器本体の外面側に積層された被覆層と
を備え、
前記被覆層は、少なくともその一部に表示部を有し、
前記表示部は、表示内容を提示する凹凸を含み、
前記凹凸の凹部と凸部との境界は、前記外面の法線に対して0.05~60°の勾配を有する、
容器。
【請求項2】
前記容器本体は、ポリエステル樹脂で形成されており、
前記被覆層は、ポリオレフィン樹脂で形成されている、
請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記容器本体の前記表示部に対応する位置には、前記表示内容を提示する凹凸は形成されていない、請求項1に記載の容器。
【請求項4】
前記表示内容は文字を含む、請求項1に記載の容器。
【請求項5】
前記表示内容は、食品表示である、請求項4に記載の容器。
【請求項6】
前記文字は、サンセリフ体フォントであり、5~9ポイントのサイズである、請求項4に記載の容器。
【請求項7】
前記凹部又は前記凸部は、粗面である、請求項1に記載の容器。
【請求項8】
前記凹部のヘーズと前記凸部のヘーズとの差は、10%以上ある、請求項1に記載の容器。
【請求項9】
前記表示内容は、前記凸部で表されており、
前記表示部は、当該容器が接する仮想平面よりも当該容器の内方側に位置する面に設けられている、
請求項1に記載の容器。
【請求項10】
前記表示内容は、前記凹部で表されている、請求項1に記載の容器。
【請求項11】
前記凸部又は前記凹部の最大長さは、3.2mm以下である、請求項1に記載の容器。
【請求項12】
前記凹凸は、ドット状であり、前記ドット状の前記凹凸で表示内容が提示されている、請求項1に記載の容器。
【請求項13】
当該容器の底部は、ペタロイド形状を有する、請求項1に記載の容器。
【請求項14】
プリフォーム本体と、前記プリフォーム本体の外周面側に積層されたプリフォーム被覆層とを有するプリフォームを、成形型を用いてブロー成形することで容器を成形することを含み、
前記容器の一部に表示内容を提示する凹凸を含む表示部が形成されるように、前記成形型は、前記凹凸に対応した凹部と凸部とを有し、
前記凹部と前記凸部との境界は、前記凹部又は前記凸部の法線に対して0.05~60°の勾配を有する、
容器の製造方法。
【請求項15】
前記プリフォーム本体と前記プリフォーム被覆層とを有する前記プリフォームをダブルモールド法により形成することをさらに含む、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記ブロー成形の延伸倍率は、縦倍率が2~3.5倍であり、横倍率が2~4倍である、請求項14に記載の製造方法。
【請求項17】
前記プリフォーム本体は、ポリエステル樹脂で形成されており、
前記プリフォーム被覆層は、ポリオレフィン樹脂で形成されている、
請求項14に記載の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製の容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、飲料などを収容する容器には、商品名、装飾、食品表示など各種の表示が付される。これらの表示内容が印刷されたラベルが容器に取り付けられることは一般的である。例えば特許文献1には、インモールド成形によりプリフォームの外表面に外装材を設け、プリフォームと外装材とを共にブロー成形により延伸し、外表面に外装材を有する収納容器を製造することについて開示されている。この外装材には商品名や模様などが印刷されていてもよいことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-239885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
容器自体に見やすい表示を付すことが求められている。本発明は、容器に視認性の高い表示を付すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、容器は、所定の容器形状を有する容器本体と、前記容器本体の外面側に積層された被覆層とを備え、前記被覆層は、少なくともその一部に表示部を有し、前記表示部は、表示内容を提示する凹凸を含み、前記凹凸の凹部と凸部との境界は、前記外面の法線に対して0.05~60°の勾配を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、容器に視認性の高い表示を付すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係る容器の構成例の概略を示す正面図である。
図2図2は、一実施形態に係る容器の製造に用いられるプリフォームの構成例の概略を示す断面図である。
図3A図3Aは、プリフォームの製造方法の一例について説明するための模式的な断面図である。
図3B図3Bは、プリフォームの製造方法の一例について説明するための模式的な断面図である。
図4図4は、容器をブロー成形するために用いる成形型の一例の概略を模式的に示す端面図である。
図5A図5Aは、変形例に係る表示部の文字の構成例を説明するための模式図である。
図5B図5Bは、変形例に係る表示部の文字の構成例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、所定の容器形状を有する容器本体と、この容器本体の外面側に積層された被覆層とを備える二層容器であり、例えば二層ボトルである。この二層ボトルは、少なくともその表面の一部に表示内容を提示する凹凸を含む表示部を有する。この表示部の凹凸によって、文字や絵画などが表されている。これに限らないが、表示内容の一例としては、食品表示(一括表示)である。この凹凸による表示部は、上述の被覆層によって形成されている。この表示は視認性が高い。
【0009】
[容器の構成]
図1は、本実施形態に係る容器1の構成例の概略を示す正面図である。図1は、容器1の右側の一部を切り欠いて、その断面を示している。図1の断面図にあらわれる部材の肉厚は、誇張して模式的に描写されている。他の図においても同様である。また、図1には、囲み部分の模式的な拡大図が示されている。以下の説明では、図1に示すように、口部2を上にして容器1を水平面に正立させた状態での容器1の上下左右等の方向を説明することがある。
【0010】
容器1は、有底筒状の容器であり、例えば飲料などの液体を収容するのに適した容器である。容器1は、端から順に、内容物を出し入れする比較的径が小さい口部2と、口部2から徐々に径が大きくなっている肩部3と、内容物を主に収容する胴部4と、閉鎖された底部5とを備えた形状を有している。
【0011】
図示する例において、容器1は、胴部4が円筒状に形成された、一般に、丸形ボトルと称される容器形状を有しているが、容器1の形状は、これに限定されない。容器形状は、例えば、胴部4の横断面が多角形である角形ボトルと称される形状であってもよいし、胴部4の一部が部分的に大きく縮径して括れた形状であってもよいし、その他どのような形状であってもよい。また、図示する例は、炭酸飲料用のボトルであり、底部5は、いわゆるペタロイド形状であるが、これに限らず所望の形状に成形され得る。
【0012】
容器1は、容器本体11と、容器本体11の外周面側に剥離可能に積層された被覆層12とを備えている。被覆層12は、口部2に周方向に沿って外方に突出するように設けられた環状のネックリング2bの下側から底部5まで、容器本体11の全体を覆うように設けられている。
【0013】
容器本体11は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのエチレンテレフタレート系熱可塑性樹脂といったポリエステル樹脂を用いて形成されている。容器本体11には、ブロー成形が可能な樹脂であれば、どのような材料が用いられてもよい。経済合理性、リサイクル性、安全性等を考慮したり、耐熱性、バリア性、透明性といった容器性能など考慮したりすると、ポリエチレンテレフタレートは、一つの好ましい材料である。
【0014】
被覆層12には、容器本体11から容易に剥離されるように、容器本体11を形成する樹脂材料と非相溶性の熱可塑性樹脂材料が用いられることが好ましい。被覆層12は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂を用いて形成され得る。容器1にガスバリア性が要求される場合には、被覆層12は、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)などのガスバリア性を有する熱可塑性樹脂を用いて形成されてもよい。被覆層12は、意匠性等のため、樹脂材料に顔料、着色剤などが添加され、所望の色に着色されてもよい。すなわち、被覆層12の色は、何色であってもよい。被覆層12は、その他の目的のため、樹脂材料に種々の添加材が添加されてもよい。被覆層12の材料の融点は、容器本体11の材料の融点よりも低い。被覆層12が容器本体11から容易に剥離される本構成は、例えば容器本体11を形成するPET等のリサイクルに好適である。
【0015】
容器1は、例えばその胴部4の側面に、表示部20を有する。表示部20は、肩部3又は底部5といった他の位置に設けられてもよい。表示部20は、文字、標識、符号、図形、図画などを含む表示内容を示す。図1の例では、表示部20は、食品表示(一括表示)を示している。この食品表示は、枠線及びその内部に配置された文字を含む。表示内容は、食品表示などに限らず、その他の内容を表す文字等であってもよいし、装飾用の絵画などであってもよく、絵画は線画であっても面を含む絵であってもよい。
【0016】
表示部20は、図1の拡大図に示されるように、被覆層12の凹凸によって、表示内容を示す。容器本体11の表面は凹凸がなく平坦であり、その上に積層された被覆層12のみが凹凸形状を有していることが好ましい。被覆層12の凸部21が文字等を表していてもよいし、被覆層12の凹部22が文字等を表していてもよい。
【0017】
凸部21が文字等を表している場合、被覆層12の摩耗で凸部21がつぶれて文字等を識別しにくくなる可能性はある。このような摩耗を防ぐため、表示部20は、容器1の最大の外径を有する部分よりも外径が小さい位置に設けられていてもよい。例えば、肩部3の最下部及び底部5の最上部で外径が最も大きくなっており、それより小径の胴部4に表示部20が設けられていてもよい。容器1が角形ボトルなどの場合も同様である。容器1に接する仮想平面を考えたときに、表示部20は、この仮想平面よりも容器1の内方側に位置する面に設けられているとよい。例えば、表示部20は、前記仮想平面よりも容器1の内方側に0.5~2mmの位置に設けられていることが好ましい。
【0018】
一方、凹部22が文字等を表している場合、凸部21側の面積が広いので、被覆層12の摩耗で文字等を識別しにくくなるおそれは比較的低い。したがって、被覆層12の摩耗を考慮すると、文字等は凹部22によって表されていることが好ましい。ただし、後述するように、文字等が凸部21によって表されている構成の方が、容器1の製造の容易さ等で優れている点もある。
【0019】
表示内容が文字を含んでいるとき、当該文字は、ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベット、数字、記号など各種の文字を含み得る。文字のフォントは、これに限らないが、例えばサンセリフ体(ゴシック体)フォントなど線幅がほぼ一定のフォントが好ましい。このようなフォントの方が、凹凸によって明瞭に表示され得る。文字のサイズは、これに限らないが、例えば食品表示などの用途では、例えば5~9ポイントであってもよい。文字等を示す場合、線幅は、例えば、1mm以下であり、好ましくは50~400μmであり、さらに好ましくは200~300μmであり得る。凸部21及び凹部22の高さの差、すなわち、凸部21又は凹部22の高さ又は深さは、例えば50~1000μmであり、好ましくは50~300μm、例えば70~110μmである。
【0020】
図1の拡大図に示されるように、凸部21と凹部22との境界は、胴部4の側面に対して垂直ではなく、容器本体11の外面の法線に対して所定の角度θをなして傾斜している。この勾配の角度θは、これに限らないが、例えば0.05~60°である。
【0021】
凸部21と凹部22との何れか一方が粗面であると、両方が平滑面である場合と比較して表示内容の視認性が向上するため、凸部21と凹部22との何れか一方が粗面であることがさらに好ましい。例えば、粗面の算術平均粗さRaは、例えば1~200μmであることが好ましい。粗面の形成などによって、例えば、凸部21と凹部22とでヘーズの差が10%以上あることが好ましい。
【0022】
[容器の製造方法]
容器1の製造方法について説明する。容器1は、プリフォームをブロー成形して形成される。
【0023】
〈プリフォームの製造〉
図2は、容器1の製造に用いられるプリフォーム40の構成例の概略を示す断面図である。プリフォーム40は、概して有底筒状の形状を有する。プリフォーム40は、プリフォーム本体41と、プリフォーム本体41の外周面側に剥離可能に積層されたプリフォーム被覆層46とを備えている。プリフォーム本体41は、ブロー成形により延伸されて容器本体11となる。プリフォーム被覆層46は、ブロー成形により延伸されて被覆層12となる。したがって、プリフォーム本体41及びプリフォーム被覆層46は、それぞれ容器本体11及び被覆層12を形成する材料で形成されている。
【0024】
プリフォーム本体41は、後述するようにしてブロー成形する際に、その形状を概ね維持して容器本体11の口部2となる開口端側の口部形成領域42と、延伸されて容器本体11の肩部3、胴部4及び底部5に成形される延伸領域43とを含む。
【0025】
プリフォーム被覆層46は、口部形成領域42の下端のネックリング42bの下側から延伸領域43を覆うように設けられている。図2の例では、延伸領域43の全面がプリフォーム被覆層46で覆われている。本実施形態に係るプリフォーム被覆層46の厚さは、これに限らないが、例えば2mm~0.3mm程度であることが好ましい。
【0026】
このようなプリフォーム40は、ダブルモールド(二色成形)などと称される射出成形法により、次のようにして作製され得る。
【0027】
図3Aに示すように、一次射出工程では、コア型61と上型62と第1の下型63とが用いられる。コア型61は、プリフォーム本体41の内周面及び上端面を成形する型である。上型62は、プリフォーム本体41のネックリング42bから上側の口部形成領域42の外周面を成形する型である。第1の下型63は、ネックリング42bの下面から底部に至るまでのプリフォーム本体41の下側の延伸領域43の外周面を成形する型である。コア型61と上型62と第1の下型63とが型締めされ、プリフォーム本体41を形成する樹脂材料が射出される。これにより、口部形成領域42と延伸領域43とを含む有底筒状に成形されたプリフォーム本体41が射出成形される。
【0028】
次に、図3Bに示すように、二次射出工程では、第1の下型63に代えて、第2の下型64が用いられる。第2の下型64は、成形されたプリフォーム本体41との間に、プリフォーム被覆層46を成形する空隙が形成されるように構成されている。第2の下型64を用いて型締めし直されてから、プリフォーム被覆層46を形成する樹脂材料が射出される。これにより、プリフォーム本体41の延伸領域43の外周面側に剥離可能に積層されたプリフォーム被覆層46が射出成形される。
【0029】
なお、第1の下型63及び第2の下型64には、通常、プリフォーム40の底部に相当する位置に、樹脂材料の射出口となるゲートが設けられるが、図3A及び図3Bでは、ゲートの図示が省略されている。
【0030】
上述の通り、本実施形態に係るプリフォーム40では、プリフォーム被覆層46の材料の融点は、プリフォーム本体41の材料の融点よりも低い。これにより、二色成形に係る射出成形が良好に行われ得る。仮にプリフォーム被覆層46の材料の融点がプリフォーム本体41の材料の融点よりも高い場合、外層のプリフォーム被覆層46を成形する二次射出工程の際に、内層のプリフォーム本体41が溶けてしまい成形不良が生じ得る。したがって、外層のプリフォーム被覆層46の成形温度は、内層のプリフォーム本体41の材料の融点より低いことが好ましく、外層のプリフォーム被覆層46の成形温度と内層のプリフォーム本体41の材料の融点との差は、30℃以上であることが好ましい。
【0031】
以上のようにして作製されたプリフォーム40は、加熱により軟化させられ、続いてブロー成形が施される。
【0032】
〈ブロー成形〉
図4は、容器1をブロー成形するために用いる成形型70の一例の概略を模式的に示す端面図である。また、図4には、囲み部分の模式的な拡大図が示されている。成形型70は、肩部3及び胴部4を成形する胴型71と、底部5を成形する底型72とを有する。胴型71は、開閉可能に構成された一対の分割型である。
【0033】
成形型70の例えば胴型71には、表示部成形部80が設けられている。表示部成形部80は、容器1の表示部20を成形する部分であり、表示部20の表示内容に応じた凹凸が設けられている。表示部20が食品表示などである場合、表示部成形部80の凹凸は小さいので、成形型70の製造において、表示部成形部80の加工は、レーザー加工などによる。
【0034】
容器1の表示部20の表示内容が凸部21で表されている場合、成形型70の表示部成形部80には、文字等を表す凹部82が形成されるので、レーザー加工による除去加工は比較的容易である。なお、成形型70に形成される凹部82の深さは、容器1に形成される凸部21の高さよりもやや深い。例えば、容器1の凸部21の高さが90μmであるとき、成形型70の凹部82の深さは100μmなどである。
【0035】
容器1の表示部20の表示内容が凹部22で表されている場合、成形型70の表示部成形部80には、文字等を表す凸部81が形成される。この場合、上述の文字等を表す凹部82が形成される場合よりも、レーザー加工による除去加工は、時間及びコスト等をより多く要する。一方で、上述のとおり、凹部22で表されている容器1の表示部20は、耐摩耗性などにおいて優れている。
【0036】
容器1の表示部20の凸部21と凹部22との何れかを粗面にする場合、対応する成形型70の表示部成形部80の凹部82又は凸部81は粗面である。例えば、容器1の表示部20の表示内容が凸部21で表されており、凹部22が粗面である場合、例えば、成形型70の製造において、表示部成形部80をブラスト処理した後に、レーザー加工で凹部82を形成すればよい。容器1の表示部20の表示内容が凸部21で表されており、凸部21が粗面である場合、例えば、成形型70の製造において、表示部成形部80の凹部82をレーザー加工で形成する際に、凹部82の底を粗面とすればよい。
【0037】
プリフォーム40のブロー成形では、加熱により軟化させられたプリフォーム40が、図4に一点鎖線で示すようにして成形型70にセットされる。成形型70内でプリフォーム40は、必要に応じて図示しない延伸ロッドにより軸方向(縦方向)に延伸されつつ、プリフォーム40内に吹き込まれたブローエアーによって軸方向及び周方向(横方向)に延伸される。
【0038】
このようにして、プリフォーム40の口部形成領域42は、そのまま、容器1の口部2となる。一方、プリフォーム40のプリフォーム本体41の延伸領域43及びその周囲のプリフォーム被覆層46は、一体として延伸されて、成形型70のキャビティ面73の形状が転写され、容器1の肩部3、胴部4及び底部5に成形される。その結果、図1に示すような、容器本体11に被覆層12が積層された容器1が形成される。
【0039】
このとき、成形型70の表示部成形部80の形状に応じて、容器1の表示部20が形成される。表示部成形部80の凹部82は体積が小さいので、容器本体11は凹凸に成形されず、被覆層12のみが凹凸に成形される。このようにして、容器1に凹凸による表示が付与される。この表示は、一例として、食品表示であり得る。
【0040】
このブロー成形の一例について説明する。例えば、容器本体11が、ポリエチレンテレフタレート製である場合、ブロー成形にあたっては、プリフォーム本体41は、ガラス転移点以上の80℃以上、融点以下の260℃以下の温度に加熱されることが好ましい。成形安定性、容器外観などを考慮すると、100℃~130℃で成形されることがさらに好ましい。被覆層12がオレフィン系樹脂製である場合、プリフォーム被覆層46は、破れなどが発生しないように融点以上に加熱されることが好ましい。ただし、温度が高すぎると成形バリ、離型不良、ドローダウン等の発生の原因となるため、融点以上であり融点+30℃以下である温度範囲内で成形されることがさらに好ましい。
【0041】
[容器及びその製造方法について]
本実施形態によれば、容器1に視認性の高い表示部20を設けて、容器1そのものに例えば食品表示(一括表示)といった情報を提示させることができる。
【0042】
本実施形態の容器1では、容器本体11には、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステル樹脂などが用いられ、被覆層12には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂が用いられ得る。PETなどは、賦形性が悪く、被覆層12を有しないPETなどのみからなる容器では、同様の方法で細かい文字などを表す小さな凹凸を形成することは困難である。これに対して、ポリオレフィン系樹脂は賦形性がよく、細かい文字などを表す小さな凹凸を形成することが容易である。本実施形態のように、容器本体11及び被覆層12の2層からなる容器1によれば、本実施形態のような細かい文字や細い線などを小さな凹凸で視認性よく表すことが可能である。
【0043】
本実施形態のように2層からなる容器によって、小さな凹凸で細かい文字や細い線などを表す場合、特にブロー成形後の離型時や製造後の保管時に、容器本体11に対して被覆層12が剥離する層間剥離が生じ得ることが課題になり得る。これに対して本実施形態では、次のようにこの課題を克服している。すなわち、本実施形態の容器1では、表示部20における文字等の凹凸の線幅が細く、高さの差が小さいため、剥離が生じにくい。例えば、線の幅や高さ又は深さは、1mm以下に設定されている。また、本実施形態の容器1では、被覆層12に凹凸を形成させる一方で、容器本体11には凹凸を形成させない。このことも剥離を生じさせないことに貢献する。
【0044】
また、上述のとおり、容器1の凸部21と凹部22との境界部分は、容器本体11の外面の法線に対して例えば0.05~60°傾斜している。このような傾斜は、ブロー成形においていわゆる抜きテーパーとして機能する。境界部分に傾斜が設けられていることで、ブロー成形後の離型時に離型抵抗により層間で剥離することが生じにくい。また、境界部分に傾斜が設けられていることで、離型時に傷がつくことが抑制される。なお、上記の離型抵抗及び離型時に生じ得る傷の程度は、ブロー成形に用いる金型の開き角、金型内の場所などの条件によって、例えばアンダーカットになる箇所が異なるなどのため、異なり得る。このため、成形機の開き角、容器において凸部及び凹部を設ける位置など、ブロー成形において一般に検討され得る種々の条件に応じて、上述の境界部分の傾斜角の最適値は異なり得る。この傾斜角は、このような各種条件に応じて適切に調整され得る。
【0045】
また、本実施形態では、プリフォーム本体41とプリフォーム被覆層46とを有するプリフォーム40を、ダブルモールド法により形成している。ダブルモールド法によりプリフォーム40を作製することで、プリフォーム本体41とプリフォーム被覆層46との層間は、ほぼ真空となり、これらの層の密着性は高くなり、上述のような剥離が生じにくい。
【0046】
また、本実施形態のプリフォーム40では、プリフォーム被覆層46の厚さは、例えば2mm~0.3mmである。プリフォーム被覆層46が薄すぎると、表示部20における賦形が不十分となり、また、上述の剥離が生じやすくなる。プリフォーム被覆層46が厚い方が、剥離は生じにくくなる。プリフォーム被覆層46の厚さが例えば2mm~0.3mmであることは、これらのことを考慮した適切な設計である。また、ブロー成形における延伸倍率が低い方が、上述の剥離が生じにくい。本実施形態では、これらのことも考慮して、剥離が生じにくい延伸倍率が設定されている。延伸倍率は、例えば縦倍率が2~3.5倍であり、横倍率が2~4倍である。
【0047】
容器1の表示部20における被覆層12の厚さは、50μm~200μm程度であることが好ましい。一方、容器1の容器本体11の厚さは、容器の要求性能に応じる。例えば、容器1がポリエチレンテレフタレート製である場合、容器1の容器本体11の平均肉厚は、50μm~400μm程度であることが好ましい。容器本体11の肉厚分布は、成形条件の調整や、プリフォーム又はボトルの形状の調整によって調整され得る。
【0048】
容器本体11及び被覆層12の質量は、容器1の容量と、必要な容器の性能とによる。例えば、成形安定性、経済合理性などを考慮すると、容器本体11の質量は、容器1の容量が500ml以下のサイズでは、10~30g程度に設計することが好ましく、容器1の容量が500ml~2Lサイズでは、20~50g程度に設計することが好ましい。容器本体11をリサイクルで使用することを考慮すると、被覆層12の質量は可能な限り小さい方が好ましい。一方で、表示部20の文字等の賦形性を考慮すると、被覆層12の質量はある程度大きい方が好ましい。これらのことと成形安定性等を考慮すると、被覆層12の質量は、容器本体11の質量の5%~30%程度の範囲内であることが好ましい。
【0049】
また、炭酸飲料用の容器の場合、凹凸部がフラットになるような引張の応力が発生し、クリープ変形が生じ得る。その過程で、容器本体11と被覆層12との間に滑りが生じ、上述の剥離が生じやすい。したがって、炭酸飲料用の容器の場合、上記の検討が特に効果を奏する。なお、炭酸飲料用の容器で生じ得るこの剥離は、容器本体11の凹凸が大きいほど、すなわち、凹凸部のサイズが大きいほど、生じやすい傾向がある。
【0050】
上述の容器本体11と被覆層12との間の剥離を抑制することで、例えば食品表示であり得る容器1の凹凸による表示の視認性は向上する。
【0051】
なお、被覆層12の光線透過率が高い色ほど、すなわち、薄い色ほど、また、内容物の色が濃いほど、剥離が目立ちやすい。このため、被覆層12の色が薄い場合や内容物の色が濃い場合に、上述の剥離防止の効果は特に大きい。
【0052】
また、表示部20の表示内容によるが、凹凸で形成される模様がつながっている場合には、一部で剥離が生じたときにその剥離は伝搬して連続しやすい。これに対して、凹凸で形成される模様が小さな文字等の場合には、凹凸で形成される模様が細かく分離しているので、生じた剥離が一部分に制限されやすく、視認性も維持されやすい。このことから、表示部20の表示内容が文字以外であっても、互いに分離された部分によって表現されるように表示部20の表示内容がデザインされてもよい。例えば、凸部21又は凹部22の最大長さが3.2mm以下であるようにデザインされてもよい。3.2mmは、9ポイントの文字サイズに相当する。
【0053】
[変形例]
〈プリフォームについて〉
上述の実施形態では、プリフォーム40をダブルモールド法で形成する例を示したが、プリフォームの製造方法はこれに限らない。例えば、容器本体11となるプリフォーム本体を射出成形し、このプリフォーム本体に、被覆層12となるフィルムを巻き付けるなどによって、2層構造を有するプリフォームが製造されてもよい。その他、2層構造を有するプリフォームの種々の製造方法が採用され得る。
【0054】
〈表示部について〉
上述の実施形態では、表示部20において、文字等が線状の凹凸で示される例について説明したが、これに限らない。例えば、文字等がドット状の凹凸で示されてもよい。すなわち、例えば図5A又は図5Bに模式的に示すように、微細な多数の錐形又は錐台形のドット91によって、例えば、文字92等が表示されてもよい。
【0055】
〈その他〉
上述の実施形態では、飲料用容器を例に挙げて説明したが、どのような用途の容器であってもよい。また、容器は、筒形に限らず、種々の形状を有し得る。
【0056】
容器1の容器本体11には、ブロー成形が可能な樹脂が用いられ、例えばポリエチレンテレフタレートといったポリエステル樹脂が用いられる。樹脂は、例えば、ポリエステル樹脂のバージン材であってもよい。また、メカニカルリサイクル及びケミカルリサイクルを含め、リサイクルポリエステルが用いられてもよいし、バイオポリエステル等が用いられてもよいし、公知のあらゆるポリエステルの何れが用いられてもよい。このような樹脂には、意匠性、ガスバリア性、その他性能を補助するなどのために、着色剤、バリア材といった様々な添加材が添加されてもよい。ただし、リサイクル性を重視する場合には、添加材が添加されないことが好ましい。あるいは、リサイクル性に与える影響が小さい種類の添加材であれば、リサイクル性に影響を与えない程度の量が添加されてもよい。また、リサイクル性を重視する場合には、バージン材が用いられることも好ましい。
【0057】
また、容器本体11の内面に、内面蒸着等が施されてもよい。また、容器本体11は、ガスバリア層などの機能性の層を含む多層構造としてもよい。この場合、プリフォーム本体41が多層構造であるプリフォーム40が作製され、これを用いたブロー成形によって容器本体11が多層構造である容器1が製造され得る。また、意匠性や軽量化などのため、容器本体11の一部を発泡構造としてもよい。例えば、多層構造のプリフォーム40を構成する一層に発泡剤を含ませる。このプリフォーム40を用いてブロー成形が行われることで、多層構造のうち一層が微細発砲を含み、着色材等を使用せずに白色で遮光性を有する容器本体11が製造され得る。
【0058】
また、容器1の被覆層12には、印刷が施されてもよい。また、被覆層12には、レーザー加工などの加工が施されてもよい。また、被覆層12には、タックラベルなどが貼付されてもよい。
【0059】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0060】
1:容器
2:口部、2b:ネックリング、3:肩部、4:胴部、5:底部
11:容器本体、12:被覆層
20:表示部、21:凸部、22:凹部
40:プリフォーム
41:プリフォーム本体、42:口部形成領域、42b:ネックリング、43:延伸領域、46:プリフォーム被覆層
61:コア型、62:上型、63:第1の下型、64:第2の下型
70:成形型
71:胴型、72:底型、73:キャビティ面、
80:表示部成形部、81:凸部、82:凹部
91:ドット、92:文字

図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B