(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092995
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】香料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20240701BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20240701BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20240701BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/86
A61Q15/00
A61Q13/00 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217721
(22)【出願日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2022209087
(32)【優先日】2022-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(72)【発明者】
【氏名】阿部 伎
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC211
4C083AC212
4C083AC341
4C083AC342
4C083AC431
4C083AC432
4C083AC472
4C083AC692
4C083AD042
4C083AD152
4C083AD282
4C083AD531
4C083AD532
4C083BB41
4C083CC17
4C083CC31
4C083DD08
4C083EE01
4C083EE06
4C083KK03
(57)【要約】
【課題】イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油及びPPG-6デシルテトラデセス-20を特定の量、比率で組み合わせることで、人体への噴霧を前提とした香料組成物として十分な匂い強度を担保できる水準の量で香料を含有しつつ、エタノールの含有量も適度に低減し、また外観の透明度、経時での低温安定性、べたつきのなさに優れた香料組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
次の成分(A)~(C);
(A)エタノール
(B1)イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油
(B2)PPG-6デシルテトラデセス-20
(C)引火点が110℃未満である油性香料である1種又は2種以上
を含有し
香料組成物全量に対して成分(A)の含有量が40~50質量%、成分(B1)と成分(B2)を合算した含有量が0.7~1質量%、成分(C)の含有量が、3~6質量%であり、前記成分(B2)に対する成分(B1)の含有質量割合(B1)/(B2)が4.0~9.0である香料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(C);
(A)エタノール
(B1)イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油、
(B2)PPG-6デシルテトラデセス-20、
(C)引火点が110℃未満である油性香料1種又は2種以上
を含有し、
香料組成物全量に対して成分(A)の含有量が40~50質量%、成分(B1)と成分(B2)を合算した含有量が0.7~1質量%、成分(C)の含有量が、3~6質量%であり、
前記成分(B2)に対する成分(B1)の含有質量割合(B1)/(B2)が4.0~9.0である香料組成物。
【請求項2】
前記成分(C)がリナロール、ゲラニオール、ヒドロキシシトロネラール、ベンズアルデヒド、α-ターピネオール、リナリルアセテートから選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の香料組成物
【請求項3】
香水、またはボディ用フレグランスである請求項1または2に記載の香料組成物
【請求項4】
可溶化粒子または乳化粒子の平均粒子径が90nm未満である請求項1または2に記載の香料組成物
【請求項5】
成分(D)引火点が110℃以上の油性成分(油性香料を含む)及び引火点が110未満である油性香料を実質的に含有しない請求項1または2に記載の香料組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、香料組成物の分野において、香料の種類、香り立ちの良さ、香りの持続、香り立ちが起きるタイミングのコントロール、外観透明性の確保、安定性の向上(経時での変色や変臭、合一による白濁の防止)、塗布時のべたつきの改善等の香料組成物の開発が盛んに行われている。近年では、従来から存在する香料とエタノールを混合した香水に限らず、エタノールを含有しない水性香水の開発等、消費者ニーズの多様性、新たなカテゴリの香料組成物の開発も求められている。
中でも、使用時の過度な清涼感の忌避や、各国の規制による商品中のエタノール量の制限への対応や、使用感や安全性などが考慮された、毛髪、または毛髪も含めた全身への使用に適したヘア用、ボディ用フレグランスとしての開発要望等により、エタノール量を低減した香料組成物の開発も進められている。
【0003】
このようなエタノール量の低減を具現化した香料組成物として、エタノール量を低減しつつ化粧料そのものを着色し、透明又は半透明の容器に充填し、外観に鮮やかな色調を付与しつつ、内容物残量を確認できる仕様にて、光による安定性の劣化を防止するためにUV吸収剤や酸化防止剤を組み合わせた透明液状化粧料(特許文献1参照)や、ポリオキシエチレン(30)ポリオキシプロピレン(6)デシルテトラデシルエーテルを用いて、香料を可溶化した化粧水の温度変化に対する経時安定性(透明性、外観の均一性)を長期に渡って維持する外用剤の検討等がなされている(特許文献2参照)
また、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを併用する事により、油溶性香料を多く含有しつつも、十分に可溶化されて白濁が抑制された優れた保存安定性を有する技術(特許文献3参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-256215号公報
【特許文献2】特開2008-266217号公報
【特許文献3】特開2020-002042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に開示された技術においては、エタノール及び可溶化剤の含有量を低減しつつ経時安定性の向上を図った技術ではあるが、いずれの実施例においても香料成分の含有量が1%程度と低く、匂いの強度の観点から香水として用いるには不十分であった。
また特許文献3についても、活性剤及びグリセリンの含有量が多く、人体への噴霧を前提として用いられる香料組成物にはべたつきなどの使用性の観点で好ましくなく、またグリセリンの含有量が多いため、吐出時の粒子が大きくなる傾向となり、水―エタノール混合物と比較してミスト状の吐出に適していないものであるといえる。
【0006】
従って本発明は、人体への噴霧を前提とした香料組成物として十分な匂い強度を担保した水準の量で香料を含有しつつ、エタノールの含有量も適度に低減し、また外観審美性に優れた外観の透明度、経時での低温安定性に優れた香料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油及びPPG-6デシルテトラデセス-20を特定の量、比率で組み合わせることで、人体への噴霧を前提とした香料組成物として十分な匂い強度を担保できる水準の量で、特定の香料を含有することができることを見出し、上記課題を解決した。
【0008】
本発明は、香料組成物において、イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油及びPPG-6デシルテトラデセス-20を特定の量、比率で組み合わせることにより、人体への噴霧を前提とした香料組成物として十分な匂い強度を担保できる水準の量で、特定の香料を含有しつつ、エタノールの含有量も適度に低減し、また外観の透明度、経時での低温安定性に優れ、べたつきがないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下を提供する。
[1]
次の成分(A)~(C);
(A)エタノール
(B1)イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油
(B2)PPG-6デシルテトラデセス-20
(C)引火点が110℃未満である油性香料1種又は2種以上
を含有し、
香料組成物全量に対して成分(A)の含有量が40~50質量%、成分(B1)と成分(B2)を合算した含有量が0.7~1質量%、成分(C)の含有量が、3~6質量%であり、
前記成分(B2)に対する成分(B1)の含有質量割合(B1)/(B2)が4.0~9.0である香料組成物である。
[2]
前記成分(C)がリナロール、ゲラニオール、ヒドロキシシトロネラール、ベンズアルデヒド、α-ターピネオール、リナリルアセテートから選択される1種又は2種以上である、[1]に記載の香料組成物である。
[3]
香水、またはボディ用フレグランスである[1]または[2]に記載の香料組成物である。
[4]
可溶化粒子または乳化粒子の平均粒子径が90nm未満である[1]または[2]に記載の香料組成物である。
[5]
(D)引火点が110℃以上の油性成分(油性香料を含む)及び引火点が110未満である油性香料を実質的に含有しない[1]または[2]に記載の香料組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の香料組成物は、イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油及びPPG-6デシルテトラデセス-20を特定の量、比率で組み合わせることにより、人体への噴霧を前提とした香料組成物として十分な匂い強度を担保できる水準の量で、特定の香料を含有しつつ、エタノールの含有量も適度に低減し、また外観の透明度、経時での低温安定性、べたつきのなさに優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。本明細書において、範囲を示す「X~Y」は、X及びYを含み、「X以上Y以下」を意味する。
【0012】
(成分(A):エタノール)
【0013】
本発明に用いられる成分(A)エタノールは、医薬部外品原料規格2021に定義されたエタノールであり、香料組成物において、界面活性剤や油剤、香料を均一溶解し、可溶化する際に用いられることが知られている。エタノールは通常、一部水や有機不純物を含んだ95度(エタノール:95V/V%、水や有機不純物:5V/V%)、99度(エタノール:99V/V%、水や有機不純物:1V/V%)等のグレードとして用いられるが、本発明においては特に制限されず、何れのものも使用できるが、好ましいエタノールのグレードは、可溶化または乳化した組成物の安定性等に影響する界面活性剤や油剤、香料の溶解性等の観点から、99度のグレードであることが好ましい。
【0014】
本発明における成分(A)の含有量は、香料組成物全量に対して、40質量%(以下、単に%と略す)以上であって、42%以上が特に好ましい。また、50%以下であって、48%以下が特に好ましい。この範囲であれば、香料組成物の製造における可溶化または乳化時の界面活性剤や油剤、香料の均一溶解、得られた香料組成物の安定性、可溶化粒子または乳化粒子の平均粒子径の小ささ、経時での低温安定性、香り立ち等により優れるためより好ましい。
【0015】
(成分(B1):イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油、成分(B2):PPG-6デシルテトラデセス-20)
【0016】
本発明に用いられる界面活性剤である成分(B1)イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油及び成分(B2)PPG-6デシルテトラデセス-20は、通常化粧料、医薬部外品に用いられるものであれば、特に限定されるものではない。これらの市販品としては、それぞれ例えば「EMALEX RWIS-150」(日本エマルジョン社製)、「NIKKOL PEN-4620」(日本サーファクタント工業社製)等が挙げられる。
【0017】
本発明における成分(B1)と成分(B2)の含有量を合算した含有量は、香料組成物全量に対して、0.7%以上であって、0.75%以上がより好ましく、0.8%以上が特に好ましい。また、1%以下であって、0.95%以下がより好ましく、0.9%以下が特に好ましい。この範囲であれば、可溶化性、乳化性、低温保管時の安定性により優れるためより好ましい。
【0018】
本発明における成分(B1)の含有量は、香料組成物全量に対して、0.63%以上が好ましく、0.72%以上が特に好ましい。また、0.9%以下がより好ましく、0.81%以下が特に好ましい。この範囲であれば、可溶化性、乳化性、低温保管時の安定性により優れるためより好ましい。
【0019】
本発明における成分(B2)の含有量は、香料組成物全量に対して、0.07%以上が好ましく、0.075%以上がより好ましく、0.08%以上が特に好ましい。また、0.1%未満が好ましく、0.095%以下がより好ましく、0.09%以下が特に好ましい。この範囲であれば、可溶化性、乳化性、低温保管時の安定性により優れるためより好ましい。
【0020】
前記成分(B2)に対する成分(B1)の含有質量割合(B1)/(B2)が
本発明における成分(B2)に対する成分(B1)の含有質量割合(B1)/(B2)は、4.0以上であって、5.0以上が特に好ましい。また、9.0以下であって、8.0以下が特に好ましい。この範囲であれば、可溶化性、乳化性、低温保管時の安定性、べたつきのなさ等により優れるためより好ましい。
【0021】
(成分(C):引火点が110℃未満である油性香料1種又は2種以上)
【0022】
本発明に用いられる成分(C)の引火点が110℃未満である油性香料1種又は2種以上は、通常化粧料、医薬部外品に用いられるものであれば、特に限定されるものではないが、リナロール、ゲラニオール、ヒドロキシシトロネラール、ベンズアルデヒド、α-ターピネオール、リナリルアセテートが好ましく、特にリナロール、ゲラニオールが好ましい。
【0023】
本発明における成分(C)の含有量は、香料組成物全量に対して、3%であって、4%以上がさらにより好ましい。また、6%以下であって、5%以下がさらにより好ましい。この範囲であれば、可溶化性、乳化性、低温保管時の安定性により優れるためより好ましい。
【0024】
本発明は、さらに成分(C)の引火点が110℃未満である油性香料以外の油性成分として、香料ではない引火点が110℃未満である油性成分、引火点が110℃以上である油性成分(油性香料を含む)から選択される1種又は2種以上を含有する事ができる。通常化粧料、医薬部外品に用いられるものであれば、特に限定されるものではないが、ジブチルヒドロキシトルエン(引火点:127℃)、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル(引火点:204℃)が好ましい。また、成分(C)の引火点が110℃未満である油性香料以外の油性成分(油性香料を含む)は、実質的に含有しないことが好ましい。なお実質的に含有しないとは、全く含有しないか、含有したとしても、本発明に影響を与えない程度に微量であることを意味するものであり、香料組成物全量に対して、0.2%以下が好ましく、0.1%以下がさらに好ましく、0%(含有しない)ことがさらに好ましい。
【0025】
本発明の香料組成物には、上記成分(A)~(C)成分の他に、他の添加剤を添加してもよい。他の添加剤としては、例えば、水、成分(B1)、(B2)以外の界面活性剤、乳化助剤、成分(C)以外の油性成分、成分(C)以外の油性香料、水性成分、粉体、紫外線吸収剤、ゲル化剤、褪色防止剤、酸化防止剤、防腐剤、美容成分、保湿剤等の外用成分、多価アルコール等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有することができる。
【0026】
ここで、水性成分としては、成分(A)以外のものであり、水に可溶な成分であれば何れでもよく、例えば、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、ソルビトール、マルチトール、グルコースなどの糖アルコール類等が挙げられる。水としては、化粧料等に一般に用いられるものであれば、特に制限されないが、例えば、精製水、温泉水、イオン交換水、深層水、水道水、或いは植物の水蒸気蒸留水等が挙げられ、必要に応じて1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0027】
界面活性剤としては、成分(B1)、成分(B2)以外のものであり、通常化粧料に用いられる界面活性剤であればいずれのものも使用でき、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。中でも、本発明においては、香料の可溶化性、乳化性、さらには経時安定性の観点から、非イオン性界面活性剤を含有することが好ましい。
【0028】
乳化助剤としては、高級アルコール、モノグリセリルエーテル及びモノグリセリル脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0029】
油性成分としては、成分(C)以外のものであり、通常化粧料に用いられる油であればいずれのものも使用でき、動物油、合成油等の起源や、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素油類、シリコーン油、フッ素系油類、ラノリン誘導体類などが挙げられる。
【0030】
粉体成分としては、通常化粧料に用いられる粉体であればいずれのものも使用でき、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等が挙げられる。これらはフッ素化合物、シリコ-ン油、粉体、油剤、ゲル化剤、エマルションポリマー、界面活性剤等で表面処理されていてもよい。これらの粉体は、1種又は2種以上を用いることができ、更に複合化したものを用いても良い。
【0031】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系等、例えば、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル2,4,6-トリス[4-(2-エチルへキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン等があげられる。
【0032】
酸化防止剤としては、例えばトコフェロール、アスコルビン酸等、美容成分としては例えばビタミン類、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0033】
また、本発明の香料組成物の性状としては、液状、ジェル状、クリーム状、ムース状等の種々の形態にて実施することが可能であり、中でも液状とすることが本発明の効果を得る上で好ましい。ここで、液状とは、25℃で流動性を有する状態であることを意味する。具体的には、25℃において、ブルックフィールド型回転粘度計を用いて測定された粘度が、20,000mPa・s以下、好ましくは10,000mPa・s以下、より好ましくは5,000mPa・s以下であることを指す。
【0034】
本発明の香料組成物は、皮膚に適用されるものであれば、特に制限されるものではない。具体的には、医薬部外品、化粧料、皮膚洗浄料等のいずれの形態であってもよく、好ましくは化粧品である。
【0035】
本発明の香料組成物は、化粧料の用途として利用することが可能である。例えば、化粧水、乳液、クリーム、美容液、マッサージ化粧料、パック化粧料、ハンドクリーム、ボディローション、ボディクリーム、メーキャップ化粧料、化粧用下地化粧料、目元用クリーム、日焼け止め、ヘアクリーム、ヘアワックス、香水、ボディ用フレグランス等として好適であり、香水、ボディ用フレグランスが好ましく、一般的な香水と比較して香料の濃度が低いため、局所的でなく全身への使用に適した仕様であるため特にボディ用フレグランスが好ましい。またその使用方法は、手や指、コットンで使用する方法、シート材等に含浸させて使用する方法、直接噴霧して使用する方法等が挙げられ、使用性の点では直接噴霧して使用する方法が好ましい。
【0036】
本発明の香料組成物は、皮膚外用剤の用途としても利用することが可能である。例えば、外用液剤、外用ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、リニメント剤、ローション剤、ハップ剤、硬膏剤、噴霧剤、エアゾール剤等が挙げられる。またその使用方法は、前記化粧料と同様に挙げることができる。
【0037】
本発明の香料組成物の製造方法は、特に限定されず、常法により調整される。例えば、成分(A)に成分(B1)、(B2)、(C)、任意成分の全部または一部を成分(A)に混合溶解させ、水に混合し可溶化または乳化することにより調製する方法が挙げられる。
【0038】
本発明の香料組成物の可溶化または乳化粒子の平均粒子径は、香料組成物の外観の透明度の観点で90nm未満が好ましく、75nm未満がより好ましく、60nm未満が審美性に優れた外観の透明度の高い香料組成物が得られるため特に好ましい。なお、平均粒子径の測定方法は、ゼータ電位・ナノ粒子径測定システムDelsaMaxにて測定できる(後記〔実施例〕の(評価方法1:可溶化性(平均粒子径))参照)。
【0039】
また、本発明は、以下構成を採用することも可能である。
[1]
次の成分(A)~(C);
(A)エタノール
(B1)イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油
(B2)PPG-6デシルテトラデセス-20
(C)引火点が110℃未満である油性香料1種又は2種以上、香料組成物全量に対して成分(A)の含有量が40~50質量%、成分(B1)と成分(B2)を合算した含有量が0.7~1質量%、成分(C)の含有量が、3~6質量%であり、前記成分(B2)に対する成分(B1)の含有質量割合(B1)/(B2)が4.0~9.0である香料組成物である。
[2]
前記成分(C)がリナロール、ゲラニオール、ヒドロキシシトロネラール、ベンズアルデヒド、α-ターピネオール、リナリルアセテートから選択される1種又は2種以上の油性香料である、[1]に記載の香料組成物である。
[3]
香水、またはボディ用フレグランスである[1]又は[2]に記載の香料組成物である。
[4]
可溶化粒子または乳化粒子の平均粒子径が90nm未満である[1]~[3]いずれか1つに記載の香料組成物である。
[5]
成分(D)引火点が110℃以上の油性成分(油性香料を含む)及び引火点が110未満である油性香料を実質的に含有しない[1]~[4]いずれか1つに記載の香料組成物である。
【実施例0040】
本発明の効果を、以下の実施例及び比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0041】
実施例1~16、及び比較例1~40:香料組成物(香水)
表1~7に示す組成の香料組成物を下記の製造方法により製造し、可溶化性、乳化性、低温安定性、香り立ち、ミストでの吐出性、べたつきのなさについて、以下に示す方法により評価判定した。結果を併せて表1~7に示す。
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
表7
注1:一般99度合成アルコール(日本アルコール販売社製)
注2:一般95度合成アルコール(日本アルコール販売社製)
注3:EMALEX RWIS-150(日本エマルジョン社製)
注4:NIKKOL PEN-4620(日本サーファクタント工業社製)
注5:NIKKOL HCO-40(日本サーファクタント工業社製)
注6:NIKKOL HCO-60(日本サーファクタント工業社製)
注7:NIKKOL HCO-80(日本サーファクタント工業社製)
注8:レオドールTW-O 120V(花王社製)
注9:レオドールTS-10V(花王社製)
注10:NIKKOL MYS-55V(日本サーファクタント工業社製)
注11:NIKKOL MYS-40V(日本サーファクタント工業社製)
注12:NIKKOL BPS-30(日本サーファクタント工業社製)
注13:KLEAROL WHITE MINERAL OIL
(SONNNEBORN,INC社製)
注14:CETIOL SN-1(BASF社製)
注15:MYRITOL GTEH(BASF社製)
【0049】
(製造方法)
A:成分(3)~(39)を40℃で混合溶解した後、成分(1)(2)を加えてAを得た。
B:Aを成分(40)に室温にて混合、可溶化することで香料組成物を得た。
【0050】
(評価方法1:可溶化性、乳化性(平均粒子径))
可溶化性、乳化性については、実施例1~16、及び比較例1~40のサンプルについて、ゼータ電位・ナノ粒子径測定システムDelsaMaxにて可溶化粒子または乳化粒子の平均粒子径を測定し、以下の4段階判定基準を用いて判定した。
【0051】
(可溶化性、乳化性)
<4段階判定基準>
(判定) :(平均粒子径)
◎◎ :60nm未満
◎ :60nm以上75nm未満
○ :75nm以上90nm未満
△ :90nm以上
【0052】
(評価方法2:低温安定性(5℃/1ヵ月))
低温安定性については、実施例1~16、及び比較例1~40のサンプルについて、製造直後の初期のサンプルと、ガラス瓶にて5℃の恒温下で1ヵ月保管したサンプルそれぞれについて、ゼータ電位・ナノ粒子径測定システムDelsaMaxにて可溶化粒子または乳化粒子の平均粒子径を測定し平均粒子径の変化度を算出することにより、以下の4段階判定基準を用いて判定した。
【0053】
(低温安定性)
<4段階判定基準>
(判定) :(平均粒子径の変化度)
◎◎ :平均粒子径の変化度が1.2未満
◎ :平均粒子径の変化度が1.2以上1.5未満
○ :平均粒子径の変化度が1.5以上1.8未満
△ :平均粒子径の変化度が1.8以上
- :安定性不良により測定不可
※平均粒子径の変化度=5℃1ヵ月保管サンプルの平均粒子径/製造直後のサンプルの平均粒子径
(評価方法3:香り立ち)
【0054】
香り立ちについては、実施例1~16、及び比較例1~40のサンプルについて、アトマイザー容器に充填し、香料専門評価者6名にて評価を行った。以下の4段階判定基準に従って、2プッシュした際のサンプルの香り立ちを評価し、全評価者の評点の平均点を算出し判定した。
【0055】
(香り立ち)
<4段階判定基準>
(判定) :(判定基準)
◎◎ :香り立ちが非常に良い
◎ :香り立ちが良い
○ :香り立ちが比較的良い
△ :香り立ちが悪い
【0056】
(評価方法4:ミストでの吐出性)
【0057】
ミストでの吐出性については、赤色227号で着色した実施例1~16、及び比較例1~40のサンプルについてアトマイザー容器(型番:Z-155-C110-1-290(90-0)(竹本容器社製))に充填し、ミストでの吐出性の検証を行った。以下の3段階判定基準に従って、15cm離した紙に向かって1プッシュした際に噴霧したサンプルの直径を計測することで評価し、判定した。
【0058】
(ミストでの吐出性)
<3段階判定基準>
(判定) : (判定基準)
○ :直径10cm以上(霧状に吐出する)
△ :直径5cm以上10cm未満(わずかに霧状に吐出する)
× :直径5cm未満(霧状にならない(直線状に吐出される))
【0059】
(評価方法5:べたつきのなさ)
【0060】
べたつきのなさについては、実施例1~16、及び比較例1~40のサンプルについてミスト容器に充填し、化粧品専門評価者10名にて評価を行った。各サンプルを2プッシュ前腕内側部に塗布し塗り広げた際のべたつきに関して、下記絶対評価にて4段階に評価し評点をつけ、各サンプルのパネル全員の評点合計からその平均値を算出し、下記3段階判定基準により判定した。
【0061】
(べたつき)
<絶対評価基準>
(評点) : (評価)
4点 :べたつきがない
3点 :べたつきをほぼ感じない
2点 :わずかにべたつきを感じる
1点 :少しべたつきを感じる
<3段階判定基準>
(判定) : (評点の平均点)
◎ :3.5点を超える
○ :3.25点を超え、3.5点以下
△ :1.75点を超え、3.25点以下
× :1.75点以下
【0062】
表1~7の結果から明らかな如く、本発明の実施例1~16の香料組成物は、比較例1~40の香料組成物に比べ、可溶化性、乳化性及び低温安定性に優れ、さらには香り立ち及びミストでの吐出性、べたつきのなさに優れたものであった。
【0063】
これに対して、成分(B)の含有量が0.7%未満である比較例1では、可溶化性、乳化性及び経時安定性が不十分であった。また、成分(B)の含有量が1%を超える比較例2では、香り立ち及びミストでの吐出性、べたつきのなさが不十分であった。成分(B2)に対する成分(B1)の含有質量割合(B1)/(B2)が4.0-9.0から外れる比較例3及び4では、可溶化性、乳化性及び経時安定性が不十分であった。成分(B1)及び成分(B2)の1種類のみを用いた比較例5、6においては、可溶化性、乳化性または経時安定性が不十分であった。成分(B)の代わりに異なる活性剤を使用した比較例7~14では、可溶化性、乳化性及び経時安定性、香り立ちが不十分であった。成分(B1)及び成分(B2)の1種類のみを使用した比較例15及び16においては、経時安定性や香り立ち、ミストでの吐出性、べたつきのなさが不十分であった。成分(D)の含有量が多い比較例17~21においては、可溶化性、乳化性、経時安定性、香り立ちが不十分であった。成分(A)の含有量が40%未満の比較例22においては、可溶化性、乳化性及び経時安定性、香り立ちが不十分であった。成分(C)の含有量が3%未満の比較例23においては、香り立ちが不十分であった。成分(C)の含有量6%を超える比較例24においては、可溶化性、乳化性及び経時安定性が不十分であった。成分(C)の代わりに、引火点110℃を超える香料種を使用した比較例25においては、香り立ちが不十分であり、26~40においては、可溶化性、乳化性と香り立ちが不十分であり、26~38に関してはミストでの吐出性も不十分であった。
【0064】
実施例17:コロン
(成分) (質量%)
1.エタノール 50
2.イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油 0.81
3.PPG-6デシルテトラデセス-20 0.09
4.ジブチルヒドロキシトルエン 0.05
5.メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 0.1
6.香料(シトロネロール) 1.5
7.香料(ベルガモット油) 1.5
8.精製水 残量
【0065】
(製法)
A:成分(2)~(5)を40℃で混合溶解した後、成分(1)、成分(6)~(7)を加えてAを得た。
B:Aに成分(8)を室温にて混合、可溶化することでコロンを得た。
【0066】
実施例17のコロンは、可溶化性及び経時安定性に優れ、さらには香り立ち及びミストでの吐出性、べたつきのなさに優れたものであった。(平均粒径:65nm)
【0067】
実施例18:ボディミスト
(成分) (質量%)
1.エタノール 50
2.イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油 0.81
3.PPG-6デシルテトラデセス-20 0.09
4.ジブチルヒドロキシトルエン 0.05
5.メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 0.1
6.香料(ファルネソール) 3.0
7.香料(2-オクチン酸メチル) 0.5
8.ヒドロキシプロピルメチルセルロース(注16) 0.05
9.精製水 残量
注16:メトローズ 60SH-06(信越化学工業社製)
【0068】
(製法)
A:成分(2)~(5)を40℃で混合溶解した後、成分(1)、成分(6)~(7)を加えてAを得た。
B:成分(8)と成分(9)を室温にて混合し、成分(8)を膨潤した。
C:AにBを室温にて混合、可溶化することでボディミストを得た。
【0069】
実施例18のボディミストは、可溶化性及び経時安定性に優れ、さらには香り立ち及びミストでの吐出性、べたつきのなさに優れたものであった。(平均粒径:77nm)
【0070】
実施例19:ヘアフレグランス
(成分) (質量%)
1.エタノール 50
2.イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油 0.9
3.PPG-6デシルテトラデセス-20 0.1
4.ジメチコン(注17) 0.02
5.ジプロピレングリコール 10
6.香料(アネトール) 2.0
7.香料(レモン油) 1.0
8.精製水 残量
注17: KF96-10CS(信越化学工業社製)
【0071】
(製法)
A:成分(2)~(5)を40℃で混合溶解した後、成分(1)、成分(6)~(7)を加えてAを得た。
B:Aに成分(8)を室温にて混合、可溶化することでヘアフレグランスを得た。
【0072】
実施例19のヘアフレグランスは、可溶化性及び経時安定性に優れ、さらには香り立ち及びミストでの吐出性、べたつきのなさに優れたものであった。(平均粒径:85nm)
【0073】
実施例20:ヘアミスト
(成分) (質量%)
1.エタノール 50
2.イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油 0.72
3.PPG-6デシルテトラデセス-20 0.18
4.ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサフフェート(注18) 0.02
5.プロピレングリコール 2
6.香料(シトラール) 1.5
7.香料(ベンジルアルコール) 1.0
8.香料(リモネン) 0.5
9.精製水 残量
注18: DEHYQUART L80 T(BASF社製)
【0074】
(製法)
A:成分(2)~(5)を40℃で混合溶解した後、成分(1)、成分(6)~(8)を加えてAを得た。
B:Aに成分(9)を室温にて混合、可溶化することでヘアミストを得た。
【0075】
実施例20のヘアミストは、可溶化性及び経時安定性に優れ、さらには香り立ち及びミストでの吐出性、べたつきのなさに優れたものであった。(平均粒径:80nm)