(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092997
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】安定化された水性懸濁状農薬組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 47/16 20060101AFI20240701BHJP
A01N 41/10 20060101ALI20240701BHJP
A01N 43/66 20060101ALI20240701BHJP
A01N 25/04 20060101ALI20240701BHJP
A01P 13/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
A01N47/16 Z
A01N41/10 A
A01N43/66
A01N25/04 102
A01P13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217841
(22)【出願日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2022208744
(32)【優先日】2022-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】303020956
【氏名又は名称】三井化学クロップ&ライフソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】大日(大園) 侑花
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AB01
4H011BA05
4H011BA06
4H011BB07
4H011BB09
4H011BB13
4H011BC18
4H011BC19
4H011DA15
4H011DG16
4H011DH02
4H011DH03
(57)【要約】
【課題】長期保管後の再分散性に優れる水性懸濁状農薬組成物を提供する。
【解決手段】本発明の水性懸濁状農薬組成物は、(1)シクロピリモレート、ベンゾビシクロン、およびトリアファモンと、(2)ポリカルボン酸系界面活性剤と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)シクロピリモレート、ベンゾビシクロン、およびトリアファモンと、
(2)ポリカルボン酸系界面活性剤と、
を含む水性懸濁状農薬組成物。
【請求項2】
ポリカルボン酸系界面活性剤(2)が、ポリアクリル酸またはその塩である、請求項1に記載の水性懸濁状農薬組成物。
【請求項3】
さらに、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル系界面活性剤(3)を含む、請求項1に記載の水性懸濁状農薬組成物。
【請求項4】
ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル系界面活性剤(3)が、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル燐酸エステルまたはそれらの塩である請求項3に記載の水性懸濁状農薬組成物。
【請求項5】
さらに、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(4)を含む、請求項1に記載の水性懸濁状農薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬分野における新しい製剤技術に関する。より詳しくは、本発明はより長期保管後に再分散性良好な水性懸濁状農薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農薬の省力散布の要望が高まることで、製剤の施用量を減ずる少量施用剤の需要が増大し、農薬活性成分を高含量含有した製剤が主流になっている。このような背景から、農薬活性成分の安定性に対する要望は近年さらに高まっている。
【0003】
従来、農薬製剤の主たる剤型は、水和剤、水溶剤、乳剤、水溶液、粒剤などであった。この中で、水和剤や水溶剤には、粉立ちによる作業者の健康上の問題や環境中への拡散の問題があり、乳剤には溶媒や乳化剤による環境汚染の問題や、有機溶媒による火災の危険の問題がある。また、農薬活性成分の多くは、水に溶けにくいものが多く、水溶液への製剤化は難しい。以上のことから、最近の製剤は、このような問題の少ない水性懸濁状農薬組成物や顆粒状水和剤に置き換わりつつある。
【0004】
一方、水田用農薬製剤は、従来から粒剤が主流であった。粒剤は、以前は10アール当り3~4kg施用されるのが主流であったが、近年の農薬の省力散布についての要望が高まりに応じて、製剤の施用量を減じた1kg粒剤などの少量散布剤が普及している。
【0005】
水田用除草剤の分野では、散布時の省力化・効率化を図る目的で、水性懸濁状組成物が開発されている。この剤型は、畑地、非農耕地などで使われる水性懸濁状組成物とは異なり、製剤を希釈することなく容器から直接水田に滴下したり注下したりするので、特別な散布機器を要せず、また処理量も10アール当たり100ミリリットル乃至1リットル程度と少ないので、軽くて扱いやすいという特徴を有し、圃上の面積によっては、畦畔から振込み処理したり(いわゆる額縁処理)、入水時に水口からかん注するだけで処理することができ(いわゆる水口処理)、極めて省力的であるため、一定のシェアーを獲得している。
【0006】
これらの除草剤は複数の農薬活性成分を組み合わせることが多く、製剤中の農薬活性成分濃度が高くなると農薬活性成分が沈降しやすくなる。また、農薬活性成分が沈降すると、製剤分離しやすくなり、ひどい場合は容器底に固形原料が固まりハードケーキングを起こす場合もある。
【0007】
このため、長期保管下でも再分散性良好な状態を担保するため、これまでいくつかの方法が提案されている。一般的に農薬活性成分の分解を抑制する対策としては、農薬活性成分の沈降防止剤を添加する方法(例えば、特許文献1)などが提案されている。特許文献1には、水に難溶性の農薬有効成分、界面活性剤、水、スメクタイト系粘土鉱物及びゼオライトを含有する水性懸濁状農薬組成物において、40℃×30日経時後、再分散性が良好であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
水田用農薬製剤の中でも、水田用除草剤の分野において、水性懸濁状組成物は、水中に農薬活性成分を分散又は乳化させた製剤であるので、長期保管すると農薬活性成分が沈降し、再分散性が悪くなる場合があった。
【0010】
特許文献1には、スメクタイト系粘土鉱物及びゼオライトを補助剤として含む水性懸濁剤組成物は、40℃30日間保管後の再分散性が良好であることが記載されている。しかし、半年、1年後などのより長期間に亘る保管後の再分散性について特許文献1に記載はなく、保管期間が長くなるにつれ農薬活性成分等が沈降しやすくなるため、再分散性が悪くなる場合があった。
本発明者らは、特定の農薬活性成分の組み合わせにおいて、特に再分散性が低下することを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するべく、鋭意研究を行った結果、農薬活性成分として、シクロピリモレート、ベンゾビシクロン、およびトリアファモンを何れも含む製剤において、ポリカルボン酸系界面活性剤を配合することで、長期経時後にも再分散性に優れることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下[1]-[5]の通りである。
【0012】
[1](1)シクロピリモレート、ベンゾビシクロン、およびトリアファモンと、
(2)ポリカルボン酸系界面活性剤と、
を含む水性懸濁状農薬組成物。
[2] ポリカルボン酸系界面活性剤(2)が、ポリアクリル酸またはその塩である、[1]に記載の水性懸濁状農薬組成物。
[3] さらに、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル系界面活性剤(3)を含む、[1]または[2]に記載の水性懸濁状農薬組成物。
[4] ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル系界面活性剤(3)が、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル燐酸エステルまたはそれらの塩である[3]に記載の水性懸濁状農薬組成物。
[5] さらに、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(4)を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の水性懸濁状農薬組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、長期保管後の再分散性に優れる水性懸濁状農薬組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。また、例えば「1~10」は特に断りがなければ「1以上」から「10以下」を表す。
【0015】
本実施形態の水性懸濁状農薬組成物は、
(1)シクロピリモレート、ベンゾビシクロン、およびトリアファモンと、
(2)ポリカルボン酸系界面活性剤と、を含む。
本実施形態の水性懸濁状農薬組成物は、農薬活性成分(除草剤有効成分)として成分(1)を含む場合において、ポリカルボン酸系界面活性剤(2)を含むことにより長期保管後においても再分散性に優れ、さらに高温保管後においても再分散性に優れ高温安定性に優れる。
【0016】
本実施形態の水性懸濁状農薬組成物に含まれる農薬活性成分の量(成分(1)の合計量)は、懸濁製剤が製剤可能な量であればよく、通常、本発明組成物100重量部に対して、通常0.1~30重量部、好ましくは1~10重量部である。
また、成分(1)100重量%において、
シクロピリモレートを10~70重量%、好ましくは20~60重量%、より好ましくは30~55重量%となる量で含み、
ベンゾビシクロンを5~60重量%、好ましくは10~50重量%、より好ましくは20~45重量%となる量で含み、さらに
トリアファモンを1~40重量%、好ましくは3~35重量%、より好ましくは5~30重量%となる量で含むことができる。
【0017】
本実施形態の水性懸濁状農薬組成物は、成分(1)(シクロピリモレート、ベンゾビシクロンおよびトリアファモン)以外に、後述する「他の農薬活性成分」を含むことができる。
【0018】
本実施形態の水性懸濁状農薬組成物は、ポリカルボン酸系界面活性剤(2)を、農薬活性成分(成分(1))100重量部に対して、0.1~60重量部、好ましくは5~50重量部、より好ましくは10~45重量部の量で含むことができる。
当該量でポリカルボン酸系界面活性剤(2)を含むことで、水性懸濁状農薬組成物の長期経時後の再分散性がより改善される。
【0019】
本実施形態の水性懸濁状農薬組成物は、さらに、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル系界面活性剤(3)を含むことが好ましい。
本発明の効果の観点から、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル系界面活性剤(3)を、農薬活性成分(成分(1))100重量部に対して、0.1~20重量部、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは0.1~5重量部の量で含むことができる。
【0020】
本実施形態の水性懸濁状農薬組成物は、さらに、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(4)を含むことが好ましい。
本発明の効果の観点から、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(4)を、農薬活性成分(成分(1))100重量部に対して、0.1~20重量部、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは0.1~8重量部、特に好ましくは0.1~5重量部の量で含むことができる。
本実施形態の水性懸濁状農薬組成物は水を含み、当該水に上記成分(1)~(4)およびその他の成分が分散(懸濁)した状態で含まれる。
【0021】
以下、本実施形態の水性懸濁状農薬組成物に含まれる各成分について説明する。
「他の農薬活性成分」とは、特に制限はないが、白化型除草性化合物もしくはその塩および/又はアセトラクテート合成酵素阻害型除草性化合物もしくはその塩が好適である。
【0022】
白化型除草性化合物は、雑草を白化させて枯死させる、よく知られた除草剤である。白化型除草性化合物としては、例えば、ピラゾール系除草性化合物およびトリケトン系除草性化合物が広く知られている。
【0023】
ピラゾール系除草性化合物は、例えば、ピラゾレート、ピラゾキシフェン、ベンゾフェナップなどであり、トリケトン系除草性化合物は、例えば、メソトリオン、スルコトリオン、テフリルトリオン、ビシクロピロンなどが挙げられる。
【0024】
アセトラクテート合成酵素(ALS)阻害型除草性化合物は、ALSを阻害することで必須アミノ酸である、バリン、ロイシンおよびイソロイシンの合成を阻害し雑草を枯死させる、よく知られた除草性化合物である。ALS阻害型除草性化合物としては、例えば、スルホニルウレア系除草性化合物、ピリミジニルサリチル酸系除草性化合物およびトリアゾロピリミジン系除草性化合物などが広く知られている。
【0025】
スルホニルウレア系除草性化合物は、例えば、アジムスルフロン、ベンスルフロンメチル、シクロスルファムロン、ハロスルフロンメチル、エトキシスルフロン、イマゾスルフロン、ピラゾスルフロンエチル、クロリムロンエチル、シノスルフロン、メトスルフロンメチル、フルセトスルフロン、プロピリスルフロン、メタゾスルフロンなどである。
【0026】
ピリミジニルサリチル酸系除草性化合物は、例えば、ビスピリバック、ピリベンゾキシム、ピリフタリド、ピリミノバックメチル、ピリミスルファンなどである。
トリアゾロピリミジン系除草性化合物は、例えば、ペノキススラムなどである。
【0027】
他の農薬活性成分としては、さらにトリアジン系除草性化合物が挙げられ、当該除草性化合物は、例えば、ジメタメトリン、シメトリンなどである。
【0028】
本実施形態の水性懸濁状農薬組成物に含まれる他の農薬活性成分の量(成分(1)以外の量)は、懸濁製剤が製剤可能な量であればよく、通常、本発明組成物100重量部に対して、通常0.1~30重量部である。
【0029】
「ポリカルボン酸系界面活性剤」とは、カルボキシル基を有する界面活性剤であり、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリ無水マレイン酸、マレイン酸または無水マレイン酸とオレフィン(例えばイソブチレンおよびジイソブチレン等)との共重合物、アクリル酸とイタコン酸の共重合物、メタクリル酸とイタコン酸の共重合物、マレイン酸または無水マレイン酸とスチレンの共重合物、アクリル酸とメタクリル酸の共重合物、アクリル酸とアクリル酸メチルエステルとの共重合物、アクリル酸と酢酸ビニルとの共重合物、アクリル酸とマレイン酸または無水マレイン酸の共重合物、N-メチル-脂肪酸(例えばC8~18)サルコシネート、樹脂酸および脂肪酸(例えばC8~18)等のカルボン酸、並びにそれらカルボン酸の塩が挙げられる。
ポリカルボン酸系界面活性剤としては、ポリアクリル酸またはその塩が好ましい。
【0030】
また、ポリカルボン酸塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩やマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩及び各種アミン塩などが挙げられるが、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましく、ポリアクリル酸のナトリウム塩が特に好ましい。
【0031】
具体例として、汎用されているポリアクリル酸塩としては、例えば、ポリティ(登録商標)A540(ライオン製、ポリアクリル酸塩)、アグリゾール(登録商標)G-200(花王製)、ソルポール(登録商標)7248S(東邦化学製)、アロン(登録商標)A ―7100S(東亜合成製)、ニューカルゲンWG-5(竹本油脂製)などが挙げられる。
【0032】
「ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル系界面活性剤」とは、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル構造を有する界面活性剤であり、ノニオン性のポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテルだけでなく、アニオン性のポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル燐酸エステル、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル硫酸エステルおよびそれらの塩も含まれる。
【0033】
具体的には、例えば、ノニオン性のポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテルとしては、ポリオキシエチレン(モノ、ジ若しくはトリ)フェニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(モノ、ジ若しくはトリ)ベンジルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレン(モノ、ジ若しくはトリ)ベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(モノ、ジ若しくはトリ)スチリルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレン(モノ、ジ若しくはトリ)スチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(モノ、ジ若しくはトリ)スチリルフェニルエーテルのポリマーおよびポリオキシエチレンポリオキシプロピレン(モノ、ジ若しくはトリ)スチリルフェニルエーテルが挙げられる。
【0034】
具体的には、例えば、アニオン性のポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル燐酸エステルおよびそれらの塩としては、ポリオキシエチレン(モノ、ジ若しくはトリ)フェニルフェニルエーテル燐酸エステル、ポリオキシエチレン(モノ、ジ若しくはトリ)ベンジルフェニルエーテル燐酸エステル、ポリオキシエチレン(モノ、ジ若しくはトリ)スチリルフェニルエーテル(モノ又はジ)燐酸エステル、ポリオキシエチレン(モノ、ジ若しくはトリ)スチリルフェニルエーテルのポリマーの燐酸エステル、およびそれらの塩が挙げられ、特に好ましくはポリオキシエチレン(モノ、ジ若しくはトリ)スチリルフェニルエーテル(モノ又はジ)燐酸エステル、ポリオキシエチレン(モノ、ジ若しくはトリ)スチリルフェニルエーテル(モノ又はジ)燐酸エステルのジエタノールアミン塩などが挙げられる。
【0035】
「モノ又はジ燐酸エステル」とは、有機基を1又は2有する燐酸エステルを意味する。具体的には、例えば、モノ燐酸エステル、ジ燐酸エステルなどが挙げられる。
【0036】
「ケイ酸アルミニウムマグネシウム」とは、鉱物の一種であり、例えば、VEEGUM T(登録商標)(Vanderbilt Minerals製)、VEEGUM R(登録商標)(Vanderbilt Minerals製)、VEEGUM GRANULES(登録商標)(Vanderbilt Minerals製)VEEGUM K(登録商標)(Vanderbilt Minerals製)などが挙げられる。
【0037】
本実施形態の水性懸濁状農薬組成物には種々の目的でその他の補助剤を配合することができる。その他の補助剤としては、例えば、成分(2)および(3)以外の他の界面活性剤、増粘剤、消泡剤、防黴剤、溶剤又は安定化剤すなわち、着色剤、防腐剤、pH調節剤などの補助剤成分を添加することができる。また、製剤可能な量で、例えば、塩酸を含んでも含まなくてもよい。
【0038】
本実施形態の水性懸濁状農薬組成物は、成分(2)および(3)以外の他の界面活性剤として、任意の陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤又は両性イオン性界面活性剤などのいずれの界面活性剤をも用いることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0039】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル燐酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル燐酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルアリール燐酸エステル塩、アルキルアリール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル燐酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、アルキルフェノール燐酸塩、アルキルフェノール燐酸エステル塩、アルキルフェノール硫酸塩、アルキルフェノール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール燐酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール燐酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール硫酸エステル塩、スチリルフェノール燐酸塩、スチリルフェノール燐酸エステル塩、スチリルフェノール硫酸塩、スチリルフェノール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンスチリルフェノール燐酸塩、ポリオキシアルキレンスチリルフェノール燐酸エステル塩、ポリオキシアルキレンスチリルフェノール硫酸塩、ポリオキシアルキレンスチリルフェノール硫酸エステル塩、ジスチリルフェノール燐酸塩、ジスチリルフェノール燐酸エステル塩、ジスチリルフェノール硫酸塩、ジスチリルフェノール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンジスチリルフェノール燐酸塩、ポリオキシアルキレンジスチリルフェノール燐酸エステル塩、ポリオキシアルキレンジスチリルフェノール硫酸塩、ポリオキシアルキレンジスチリルフェノール硫酸エステル塩、トリスチリルフェノール燐酸塩、トリスチリルフェノール燐酸エステル塩、トリスチリルフェノール硫酸塩、トリスチリルフェノール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレントリスチリルフェノール燐酸塩、ポリオキシアルキレントリスチリルフェノール燐酸エステル塩、ポリオキシアルキレントリスチリルフェノール硫酸塩、ポリオキシアルキレントリスチリルフェノール硫酸エステル塩、アルキルサクシネートスルホン酸塩、ジアルキルサクシネートスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンジアルキルサクシネートスルホン酸塩、又はアルキルナフタレンスルホン酸塩及びそのホルマリン縮合物などが挙げられ、好適には、アルキル燐酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル燐酸エステル塩、アルキルアリール燐酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル燐酸エステル塩、アルキルフェノール燐酸塩、スチリルフェノール燐酸エステル塩、ポリオキシアルキレンスチリルフェノール燐酸エステル塩、ジスチリルフェノール燐酸塩、ジスチリルフェノール燐酸エステル塩、ポリオキシアルキレンジスチリルフェノール燐酸塩、ポリオキシアルキレンジスチリルフェノール燐酸エステル塩、トリスチリルフェノール燐酸塩、トリスチリルフェノール燐酸エステル塩、ポリオキシアルキレントリスチリルフェノール燐酸塩、ポリオキシアルキレントリスチリルフェノール燐酸エステル塩、又はアルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物などが挙げられる。
【0040】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族アルコールアルキレンオキサイド付加物、ポリアルキレンオキシ脂肪酸エステル、ソルビタン系界面活性剤もしくはそのアルキレンオキサイド付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルポリサッカライド系界面活性剤、シュクログリセライド、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシアルキレンスチリルフェノールエーテル、ポリオキシアルキレンジスチリルフェノールエーテル又はポリオキシアルキレントリスチリルフェノールエーテルなどが挙げられ、好適には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシアルキレンスチリルフェノールエーテル、ポリオキシアルキレンジスチリルフェノールエーテル又はポリオキシアルキレントリスチリルフェノールエーテルなどが挙げられる。
なお、これらエチレンオキサイドを付加したタイプの界面活性剤においては、その一部にプロピレンオキサイドを含有してもよい。
【0041】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族第三級アミンもしくはその塩、脂肪族第三級アミン脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物もしくはその塩又は脂肪族第四級アミン塩などが挙げられる。
【0042】
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウムなどのアミノ酸型両性界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジジヒドロキシエチルベタインなどのベタイン型両性界面活性剤などのカルボン酸塩型両性界面活性剤;硫酸エステル塩型両性界面活性剤;スルホン酸塩型両性界面活性剤;又は燐酸エステル塩型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0043】
本実施形態の水性懸濁状農薬組成物に含まれる他の界面活性剤の量は、通常、農薬組成物中に、0.01~20重量%であり、好適には、0.1~10重量%である。
【0044】
増粘剤としては、通常農薬製剤に用いられるものであれば特に限定はないが、例えば、ホワイトカーボン、アルミノ珪酸塩、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、アタパルジャイトのような鉱物又はアラビアガム、トラガントガム、キサンタンガム、グアーガム、ローストビーンガム、カゼイン、アルギン酸、セルロース系ポリッサッカライド、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースのような高分子増粘剤などが挙げられ、好適には、高分子増粘剤であり、より好適には、キサンタンガムである。
【0045】
消泡剤としては、通常農薬製剤に用いられるものであれば特に限定はないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、sec-ブタノール、ブタノールのような低級アルコール系消泡剤;アミルアルコール、ジイソブチルカルビトール、トリブチルフォスフェート、オレイン酸、トール油、金属セッケン、HLBの低い界面活性剤(例えば、ソルビタンラウリン酸モノエステル、ソルビタンラウリン酸トリエステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アセチレングリコール誘導体、プルロニック型非イオン界面活性剤など)、アセチレングリコール誘導体のような有機極性化合物系消泡剤;鉱物油の界面活性剤配合品、鉱物油と脂肪酸金属塩の界面活性剤配合品のような鉱物油系消泡剤;シリコーン樹脂、シリコーン樹脂の界面活性剤配合品、シリコーン樹脂の無機粉末配合品のようなシリコーン樹脂系消泡剤などが挙げられる。
【0046】
防黴剤としては、通常農薬製剤に用いられるものであれば特に限定はないが、例えば、パラクロロメタキシレノール、ポリへサメチレンビグアニジドハイドロクロライド、1,2-ベンジソチアゾリン-3-オン、メチルパラヒドロキシベンゾエート、エチルパラヒドロキシベンゾエート、プロピルパラヒドロキシベンゾエート、ブチルパラヒドロキシベンゾエート、ヘプチルパラヒドロキシベンゾエート、ベンジルパラヒドロキシベンゾエート、パラオキシ安息香酸エステル、ソルビン酸、オルソフェニルフェノール、ソディウムオルソフェニルフェネート、グルタルジアルデヒド、第四級アンモニウム化合物、トリ-(N-クロロヘキシルジアゼニウムジオキシ)-アルミニウム、テトラヒドロ-3,5-ジメチル-2H-1,3,5-チアジアジン-2-チオン、2,5-ジメトキシテトラヒドロフラン、ジメチロール尿素、N-メチルジチオカルバミン酸ナトリウム、フェノキシエタノール、グリオキサール、グルタルアルデヒド、1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)-1,3,5-ヘキサヒドロトリアジン、塩化ベンザルコニウム、フェノキシプロパノール、テトラメチルアセチレンジ尿素、ポビドンイオディン、ソルビン酸カリウム、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、チアゾロン、有機窒素硫黄系複合物などが挙げられる。
【0047】
溶剤としては、通常農薬に用いられるものであれば特に限定はないが、第2石油類以上の引火点を有するものが望ましい。例えば、アルキルベンゼン、メチルナフタレン、流動パラフィン、リグロイン、ケロシン、灯油、n-デカン、イソドデカン、テトラリン、デカリン、テレピン油、パイン油、アジピン酸、グルコン酸、マレイン酸、乳酸、安息香酸、フタル酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、ラウリン酸、オレイン酸、やし油脂肪酸、シクロヘキサノン、シクロへキセニルシクロヘキサノン、アセチルアセトン、アセトフェノン、メチルブチルケトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エピクロールヒドリン、ジグリシジールエーテ、ジオキサン、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、大豆油、なたね油、ゴマ油、コメ油、やし油、サンフラワー油、いわし油、鯨油、ジメチルスルホキサイド、N,N-ジメチルアセトアミド又はN-メチルピロリドンなどが挙げられる。
【0048】
着色剤としては、通常農薬に用いられるものであれば特に限定はなく、例えば、色素が挙げられ、好適には、ブリリアントブルーFCF、シアニングリーンG又はエリオグリーンGである。用いられる着色剤の量は、通常、粒状農薬組成物中に、0.05~0.5重量%であり、好適には、0.1~0.3重量%である。
【0049】
防腐剤としては、通常農薬に用いられるものであれば特に限定はなく、好適には、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラクロロメタキシレノ-ル、パラオキシ安息香酸ブチル又はデヒドロ酢酸ナトリウムである。用いられる防腐剤の量は、通常、除草性農薬組成物中に、0.1~3重量%であり、好適には、0.2~2重量%である。
【0050】
pH調節剤としては、通常農薬に用いられるものであれば特に限定はなく、例えば、リン酸のような無機酸;クエン酸、フタル酸、コハク酸のような有機酸;クエン酸ナトリウム、フタル酸水素カリウムのような有機金属塩;リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ホウ酸ナトリウムのような無機金属塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような水酸化物;又はトリエタノールアミンのような有機アミン類などを挙げることができ、好適には、無機酸、無機金属塩又は水酸化物などであり、より好適には、塩酸、クエン酸、コハク酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は炭酸ナトリウムなどである。また、使用されるpH調節剤は、1種又は2種以上を併用することができる。
【0051】
次に、本発明の水性懸濁状農薬組成物の製造方法について説明する。本発明の農薬組成物は、通常の農薬製剤の製造に用いられる混合、粉砕などの公知の製剤化工程によって製造することができる。
例えば、農薬活性成分を湿式粉砕する場合に、農薬活性成分、界面活性剤および消泡剤を水に添加して混合懸濁させたのち、下記のような湿式粉砕機を用いて、所定の粒度まで湿式粉砕し、次いで、予め加えて混合し分散・溶解したものを加えて均一化し、更に、pH調節剤により組成物のpHを調整することにより、本発明の水性懸濁状農薬組成物を得ることができる。
【0052】
湿式粉砕機は、例えば、アトライタ(登録商標)(三井金属鉱山(株))などのアトリションミル;ダイノミル(登録商標)(シンマルエンタープライゼス(株))、リサーチラボTM(シンマルエンタープライゼス(株))、サンドグラインダー(登録商標)(五十嵐機械製造(株))、アペックスミル(登録商標)(コトブキ技研工業(株))、スーパーアペックスミル(登録商標)(コトブキ技研工業(株))、ウルトラアペックスミル(登録商標)(コトブキ技研工業(株))、ダイヤモンドファインミル(登録商標)(三菱重工(株))、コボールミル(登録商標)(神鋼パンテック(株))、ドライスヴェルケパールミル(日本アイリッヒ(株))などのビーズミル;コロイドミル(登録商標)(特殊機化工業(株))、ウエットアトマイザー(登録商標)(不二パウダル(株))などのハンマーミルが挙げられる。
【0053】
活性成分の粉砕は、湿式粉砕に限らず、例えば、活性成分を、必要があれば、鉱物質担体やその他の助剤類と共に混合し、乾式粉砕機を用いて、所定の粒度まで粉砕することも可能である。得られた粉砕物は、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、凍結防止剤、防菌剤およびその他の補助剤と共に水中に加えて懸濁分散させ、混合・均一化することにより、本発明の水性懸濁状農薬組成物を得ることができる。
【0054】
乾式粉砕機は、例えば、SK-ジェット・オー・ミル(登録商標)((株)セイシン企業)、シングルトラック・ジェットミル(登録商標)((株)セイシン企業)などのジェットミル;ACMパルペライザー(登録商標)(ホソカワミクロン(株))、サンプルミルTM(不二パウダル(株))などのハンマーミル;ピンミル(登録商標);ボールミル(登録商標);ターボミル(登録商標)などが挙げられる。
【0055】
更に、農薬活性成分の粉砕は、これらの各粉砕機による粉砕を適宜組み合わせることができる。例えば、予めコロイドミルTMやウエットアトマイザー(登録商標)などの湿式粉砕機で予備粉砕した後、ビーズミルで微粉砕することや、予め乾式粉砕した活性成分を界面活性剤や消泡剤と共に水中に懸濁分散させ、これを更に上記の湿式粉砕機を用いて微粉砕することも可能である。又、アトライタ(登録商標)のようなバッチ式の粉砕機で予備粉砕した後、連続式ビーズミルで微粉砕することも可能である。
【0056】
農薬活性成分の粉砕の程度は、湿式粉砕および乾式粉砕のいずれによる場合も、通常は、活性成分の大部分が10μm以下になるように粉砕し、好ましくは0.1μm~5μmの重量中位径になるように粉砕する。
【0057】
本発明の水性懸濁状農薬組成物は、通常、灌注処理剤、茎葉処理剤または直接散布剤として用いることができる。調製した水性懸濁状農薬組成物を希釈して、農薬液剤を含有する水性組成物を製造するときは、上記の水に加えて、農業用水、工業用水、井戸水、水道水など当該農薬液剤の機能・性能を阻害しない限り、使用することができる。水性組成物を調製する際の希釈倍率は、使用の対象となる、作物、土壌などにより、適宜選択して使用することができるが、10倍から5000倍、好ましくは50倍から2000倍で行うことができる。
【0058】
灌注処理または茎葉処理に用いる場合、有効成分の種類や含有量にもよるが、一般に100~5000倍程度に水で希釈した農薬液剤の希釈液を茎葉散布する。また、10~1000倍程度に水で希釈した農薬液剤の希釈液をヘリコプターで空中散布してもよい。また、直接散布に用いる場合、農薬液剤を内栓に穴の空いた100mL~1000mLのプラボトルなどに入れ、稀釈せずにそのまま振り込み処理する方法、薬剤吐出機器、ラジコンボートや無人ヘリコプター、ドローン等により機械散布する方法などにより処理することができるが、これらに限定されるものではない。また、水性懸濁状農薬組成物および水性懸濁状農薬組成物を含有する水性組成物の施用量、施用時期は、配合する農薬有効成分に応じて適宜決定することができる。
本発明の組成物および防除方法は、例えば、下記の種類の雑草に対して有効である。以下に、本発明が防除対象とする具体的病害虫を例示する。
【0059】
雑草としては、水田において問題となる種々の雑草、例えば、タイヌビエのようなイネ科雑草;アゼナ、アゼトウガラシ、キカシグサ、ミゾハコベ、アブノメ、ヒメミソハギ、コナギのような広葉雑草;タマガヤツリ、ホタルイ、マツバイ、ミズガヤツリ、シズイ、クログワイのようなカヤツリグサ科雑草;及び、ウリカワ、オモダカ、ヘラオモダカのようなオモダカ科雑草、非農耕地、畑地及び果樹園で問題となる種々の雑草、例えば、イヌホウズキ及びチョウセンアサガオのようなナス科雑草、イチビ及びアメリカキンゴジカのようなアオイ科雑草、マルバアサガオ及びセイヨウヒルガオのようなヒルガオ科雑草、イヌビユ及びアオゲイトウのようなヒユ科雑草、オナモミ、ブタクサ、ノボロギク及びヒメジョオンのようなキク科雑草、カラシナ及びナズナのようなアブラナ科雑草、シロザ及びアカザのようなアカザ科雑草、フィールドパンジーのようなスミレ科雑草、ハコベのようなナデシコ科雑草、シロツメクサ、クサネム及びエビスグサのようなマメ科雑草、スベリヒユのようなスベリヒユ科雑草、オオイヌノフグリのようなゴマノハグサ科雑草、ホトケノザのようなシソ科雑草、コニシキソウのようなトウダイグサ科雑草、イヌビエ、セイバンモロコシ、メヒシバ、オヒシバ、スズメノカタビラ、スズメノテッポウ、カラスムギ、ボウムギ、ライグラス、エノコログサ及びギョウギシバのようなイネ科雑草、コゴメガヤツリ及びキハマスゲのようなカヤツリグサ科雑草、ツユクサ及びマルバツユクサのようなツユクサ科雑草、スギナのようなトクサ科雑草などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【実施例0060】
以下に、本発明に使用する農薬組成物の製剤例を示し具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。なお、下記製剤例において、「%」とあるのは、質量%を示す。
【0061】
(実施例1)
シクロピリモレート原体(純度98.2%)82.92部、トリアファモン原体(純度97.00%)21.21部、ベンゾビシクロン原体(純度99.34%)62.99部、Morwet(登録商標)D-425 Powder(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ製、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物)3.00部、ニューコール(登録商標)607-PDE(日本乳化剤製、ポリオキシエチレン(モノ、ジ若しくはトリ)スチリルフェニルエーテル(モノ又はジ)燐酸エステル ジエタノールアミン塩)6.00部、SURFYNOL(登録商標)104PG50(エボニック・ジャパン製、アルキレンジオール)0.45部、AF(登録商標)-128(10%水溶液)(旭化学工業製、シリコーン消泡剤)0.45部、VEEGUM R(登録商標)(Vanderbilt Minerals製、ケイ酸アルミニウムマグネシウム)1.50部および水道水121.48部を混合し、アトライター(登録商標)(三井金属鉱山製)にて湿式粉砕し、シクロピリモレート/トリアファモン/ベンゾビシクロンプレミックススラリーを得た。次いで、ポリティ(登録商標)A540(ライオン製、ポリアクリル酸塩)60.00部、Morwet(登録商標)D-425 Powder(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ製、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物)37.20部および水道水502.80部を混合溶解し、分散剤混合液を得た。また、クニピア(登録商標)F(ベントナイト、クニミネ工業製)9.00部、RHODOPOL(登録商標)23(アゼリス・ジャパン製、キサンタンガム)2.40部、VEEGUM R(登録商標)(Vanderbilt Minerals製、ケイ酸アルミニウムマグネシウム)8.58部、プロピレングリコール159.96部および水道水420.06部を加えて混合し、増粘剤混合液を得た。シクロピリモレート/トリアファモン/ベンゾビシクロンプレミックススラリー280.00部、分散剤混合液600.00部、増粘剤混合液600.00部、防黴剤(バイオホープ(登録商標)L(ケイ・アイ化成社製))を4.0部および水道水516.00部を加えて混合し、水性懸濁状農薬組成物を得た。
【0062】
(比較例1)
ピラゾレート原体(純度94.7%)239.49部、シクロピリモレート原体(純度98.20%)112.02部、Morwet(登録商標)D-425 Powder(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ製、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物)26.40部、ニューコール(登録商標)607-PDE(日本乳化剤製、ポリオキシエチレン(モノ、ジ若しくはトリ)スチリルフェニルエーテル(モノ又はジ)燐酸エステル ジエタノールアミン塩)8.45部、SURFYNOL(登録商標)104PG50(エボニック・ジャパン製、アルキレンジオール)1.12部、AF(登録商標)-128(10%水溶液)(旭化学工業製、シリコーン消泡剤)0.99部および水道水271.53部を混合し、アトライター(登録商標、三井金属鉱山製)にて湿式粉砕し、ピラゾレート/シクロピリモレートプレミックススラリーを得た。次いで、硫酸アンモニウム1.78部、アグリゾールG-200(花王製、ポリアクリル酸塩)53.99部、ニューコール(登録商標)PB60(日本乳化剤製、ポリスチリルフェニルエーテル・ホルマリン縮合物)5.41部、Morwet(登録商標)D-425 Powder17.27部および水道水465.79部を混合溶解し、分散剤混合液を得た。また、クニピア(登録商標)F(クニミネ工業製、ベントナイト)6.03部、RHODOPOL(登録商標)23(アゼリス・ジャパン製、キサンタンガム)1.62部、VEEGUM R(登録商標)(Vanderbilt Minerals製、ケイ酸アルミニウムマグネシウム)9.00部、プロピレングリコール126.00部、防腐剤としてプロクセル(登録商標)GXL-S(アークサーダジャパン社製)3.60部および水道水307.35部を加えて混合し、増粘剤混合液を得た。ピラゾレート/シクロピリモレートプレミックススラリー594.00部、分散剤混合液544.43部、増粘剤混合液450.00部、フェントラザミド原末(純度70.60%)114.73部および水道水93.24部を加えて混合し、水性懸濁状農薬組成物を得た。
【0063】
(比較例2)
ピラゾレート原体(純度94.9%)238.99部、シクロピリモレート原体(純度98.50%)111.68部、Morwet(登録商標)D-425 Powder(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ製、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物)26.40部、ニューコール(登録商標)607-PDE(日本乳化剤製、ポリオキシエチレン(モノ、ジ若しくはトリ)スチリルフェニルエーテル(モノ又はジ)燐酸エステル ジエタノールアミン塩)8.45部、SURFYNOL(登録商標)104PG50(エボニック・ジャパン製、アルキレンジオール)1.12部、AF(登録商標)-128(10%水溶液)(旭化学工業製、シリコーン消泡剤)0.99部および水道水272.38部を混合し、アトライター(登録商標、三井金属鉱山製)にて湿式粉砕し、ピラゾレート/シクロピリモレートプレミックススラリーを得た。次いで、硫酸アンモニウム1.78部、アグリゾールG-200(花王製、ポリアクリル酸塩)53.99部、ニューコール(登録商標)PB60(日本乳化剤製、ポリスチリルフェニルエーテル・ホルマリン縮合物)5.41部、Morwet(登録商標)D-425 Powder17.27部および水道水467.86部を混合溶解し、分散剤混合液を得た。また、クニピア(登録商標)F(クニミネ工業製、ベントナイト)7.56部、RHODOPOL(登録商標)23(アゼリス・ジャパン製、キサンタンガム)1.98部、プロピレングリコール126.00部、防腐剤としてプロクセル(登録商標)GXL-S(アークサーダジャパン社製)3.60部および水道水314.46部を加えて混合し、増粘剤混合液を得た。ピラゾレート/シクロピリモレートプレミックススラリー594.00部、分散剤混合液546.50部、増粘剤混合液450.00部、フェントラザミド原末(純度71.90%)112.66部および水道水93.24部を加えて混合し、水性懸濁状農薬組成物を得た。
【0064】
(再分散性試験)
実施例1および比較例1、2で製造した水性懸濁状農薬組成物を除草剤用500mLプラスチックボトルに封入し、室温(25℃)下、または40℃、54℃の恒温機中に所定の時間保管した。また、サイクル試験は、-15℃恒温機中に3日間保管→室温で1日保管→40℃の恒温機中に30日間保管→室温で1日保管、を1サイクルとして行った。保管後、恒温機から水性懸濁状農薬組成物の入ったプラスチックボトルを取り出し、当該プラスチックボトル片手で持ち、水平位置からボトル底部を垂直に持ち上げた後、元の水平位置まで戻す操作を1回とし、底に沈降していた水性懸濁状農薬組成物が分散しボトル底部全体が透けて見えるまでの回数を以下の基準にしたがって評価した。その結果を表1に示す。
【0065】
【0066】
表1の再分散性試験の結果から明らかなように、本発明の水性懸濁状農薬組成物は特定の農薬活性成分を含む場合にポリカルボン酸系界面活性剤を配合することにより、長期経時後の再分散性に優れていた。このように、本発明の水性懸濁状農薬組成物は、比較例として挙げた公知技術などによる製剤では達成困難であった長期経時後の再分散性を実現することができ、実用性の高い水性懸濁状農薬組成物を提供できることが明らかとなった。また、本発明の水性懸濁状農薬組成物は、54℃保管後の再分散性にも優れており、高温安定性に優れることが明らかとなった。