(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093007
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】積層体及びその用途
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20240701BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20240701BHJP
F21V 9/08 20180101ALI20240701BHJP
F21V 3/00 20150101ALI20240701BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240701BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240701BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240701BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B5/02 B
F21V9/08 100
F21V3/00 530
F21S2/00 481
G09F9/00 336A
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023218791
(22)【出願日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2022207845
(32)【優先日】2022-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】菅澤 真澄
(72)【発明者】
【氏名】間宮 倫孝
(72)【発明者】
【氏名】中里 睦
【テーマコード(参考)】
2H042
2H148
3K244
5G435
【Fターム(参考)】
2H042BA08
2H042BA20
2H148CA14
2H148CA19
2H148CA24
3K244AA01
3K244BA08
3K244BA26
3K244BA48
3K244CA02
3K244DA01
3K244GA10
5G435AA04
5G435BB11
5G435EE25
5G435EE29
5G435FF06
5G435FF11
5G435LL04
5G435LL07
5G435LL08
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、表示装置の光源から発せられる青色光のみをシャープにカットし、同時に点光源からの光を拡散することができるとともに、色ムラを抑制できる積層体を提供することにある。
【解決手段】基材層、樹脂層、及び、樹脂微粒子を含むコロイド結晶層を有する積層体であって、キノフタロン骨格を有する化合物(A)を含有し、前記積層体の単位面積当たりの前記化合物(A)の含有量が、0.01~2g/m2である、積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、樹脂層、及び、樹脂微粒子を含むコロイド結晶層を有する積層体であって、
キノフタロン骨格を有する化合物(A)を含有し、前記積層体の単位面積当たりの前記化合物(A)の含有量が、0.01~2g/m2である、積層体。
【請求項2】
樹脂層の膜厚と、コロイド結晶層の膜厚との合計が、5~30μmである、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
積層体の全質量に対して、黒色微粒子の含有率が0.3質量%以下である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
樹脂層が、キノフタロン骨格を有する化合物(A)を含有する、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項5】
化合物(A)がアニオン性染料であり、樹脂層が、更にカチオン性基を有する樹脂を含有する、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
波長430~480nmにおける光の透過率の最小値が30%以下である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項7】
波長480~700nmにおける光の透過率の最小値が55%以上である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項8】
HAZE値が30~100%である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項9】
光学用である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項10】
画像表示装置部材用である、請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
波長400~500nmに極大発光波長を有する光源と共に用いられる、請求項9に記載の積層体。
【請求項12】
波長400~500nmに極大発光波長を有する光源と、請求項11に記載の積層体を含む、光源ユニット。
【請求項13】
基材層及び/又は樹脂層がキノフタロン骨格を有する化合物(A)を含有し、コロイド結晶層がキノフタロン骨格を有する化合物(A)を含有せず、キノフタロン骨格を有する化合物(A)を含有する層が、コロイド結晶層を介して、光源の反対側のみに位置する、請求項12に記載の光源ユニット。
【請求項14】
請求項12に記載の光源ユニットを備える、画像表示装置。
【請求項15】
請求項14に記載の画像表示装置を備える、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ、パソコン、タブレット、スマートフォン等のLEDをバックライトに用いた表示装置は、直下型方式とエッジライト型方式とに大別される。スマートフォンやノートパソコンといった携帯端末の中小型の表示装置においては、薄型化が容易なため、通常エッジライト方式のLEDバックライトが用いられる。しかしながら、明るさや鮮やかさ等の観点から、直下型方式のLEDバックライトを用いることも検討されている。基板に複数のLED素子が配置された直下型方式では、複数のLED素子を独立して制御することにより、表示画像の明暗に合わせてLEDバックライト各領域の明るさを調整する、いわゆるローカルディミングを実現することができ、表示装置の大幅なコントラスト向上及び低消費電力化を図ることが可能となる。
【0003】
しかし、このような部分的に駆動する直下型方式のLEDバックライトにおいては、青色点光源の光を拡散してディスプレイ全体を明るくする方式のため、LED素子の上方に拡散板を配置しているが、光源の輝度ムラが起こってしまう。したがって、青色領域の波長の光を抑制することが重要である。また輝度ムラを抑制する観点から、LED素子と拡散板とを離して配置する必要があり、薄型化が困難である。光の取り出し効率向上による省エネルギーの観点から輝度を維持したまま輝度ムラを抑制すること重要であるが、コスト及び消費電力を低減するためにLED素子の数を減らした場合、LED素子の配置間隔が広がるために輝度ムラが発生しやすくなる。この場合、LED素子と拡散板との距離をより長くする必要があるので、薄型化がより困難となる。したがって、従来の直下型方式のLEDバックライトでは、輝度の均一化と薄型化とを同時に実現するのが困難という問題がある。
【0004】
特許文献1には、色材の吸収による青色光カット方法が開示されている。しかし、色材を用いて青色光をカットする方法では、青色波長領域のみを選択的に吸収することは困難であり、波長500nm以上の波長に渡るブロードな吸収が発生し、色付きが発生する恐れがある。そのため高濃度の色材の添加が難しく、その結果、青色光のカット率が低くなる問題がある。
【0005】
特許文献2には、反射による青色光カット方法が開示されている。しかし、屈折率の異なる材料を交互に積層する方法では、性能を発現するために膜厚が厚くなってしまう。更に、透明性が高いことで点光源の輝点がムラとなってしまい、色ムラが生じてしまう問題がある。
【0006】
更に、特許文献3には、輝度の面内均一性の向上のために、LED素子と拡散板との間に、更に透過反射板を配置する技術が開示されている。透過反射板は、パターン状の反射部及び透過部を有するものであり、より具体的には、LED素子の直上を反射部とし、LED素子の直上から周囲に向かって透過部が徐々に大きくなるようなパターンを有する。しかしながら、このような透過反射板を用いる場合においても、輝度ムラを抑制するためには、LED素子と透過反射板とを離して配置する必要があるため、薄型化が困難である。また、透過反射板は、パターン状の反射部及び透過部を有しており、反射部をLED素子の直上に配置することから、LED素子と透過反射板との位置合わせが必要になる。
【0007】
また、特許文献4には、プライマー層と、コアシェル型樹脂微粒子からなり有彩色色素を有するコロイド結晶層とを組み合わせる積層体に関する技術が開示されている。しかしながら、例示されている有彩色色素のほとんどは波長選択性が低く、光源から発される光を余分にカットしてしまい、映し出される画像の色域を狭めるだけでなく、コロイド結晶と相乗的に作用せず光源のムラを解消することができない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-116713号公報
【特許文献2】特開2022-54572号公報
【特許文献3】特開2018-67441号公報
【特許文献4】特開2022-094771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、表示装置の光源から発せられる青色光のみを選択的にカットし、同時に点光源からの光を拡散することができるとともに、色ムラを抑制できる積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者が鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本発明の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は次の[1]~[14]に関する。
[1]
基材層、樹脂層、及び、樹脂微粒子を含むコロイド結晶層を有する積層体であって、
キノフタロン骨格を有する化合物(A)を含有し、前記積層体の単位面積当たりの前記化合物(A)の含有量が、0.01~2g/m2である、積層体。
[2]
樹脂層の膜厚と、コロイド結晶層の膜厚との合計が、5~30μmである、[1]に記載の積層体。
[3]
積層体の全質量に対して、黒色微粒子の含有率が0.3質量%以下である、[1]又は[2]に記載の積層体。
[4]
樹脂層が、キノフタロン骨格を有する化合物(A)を含有する、[1]~[3]いずれかに記載の積層体。
[5]
化合物(A)がアニオン性染料であり、樹脂層が、更にカチオン性基を有する樹脂を含有する、[4]に記載の積層体。
[6]
波長430~480nmにおける光の透過率の最小値が30%以下である、[1]~[5]いずれかに記載の積層体。
[7]
波長480~700nmにおける光の透過率の最小値が55%以上である、[1]~[6]いずれかに記載の積層体。
[8]
HAZE値が30~100%である、[1]~[7]いずれかに記載の積層体。
[9]
光学用である、[1]~[8]いずれかに記載の積層体。
[10]
画像表示装置部材用である、[9]に記載の積層体。
[11]
波長400~500nmに極大発光波長を有する光源と共に用いられる、[9]に記載の積層体。
[12]
波長400~500nmに極大発光波長を有する光源と、[11]に記載の積層体を含む、光源ユニット。
[13]
基材層及び/又は樹脂層がキノフタロン骨格を有する化合物(A)を含有し、コロイド結晶層がキノフタロン骨格を有する化合物(A)を含有せず、キノフタロン骨格を有する化合物(A)を含有する層が、コロイド結晶層を介して、光源の反対側のみに位置する、[12]に記載の光源ユニット。
[14]
[13]に記載の光源ユニットを備える、画像表示装置。
[15]
[14]に記載の画像表示装置を備える、電子機器。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、表示装置の光源から発せられる青色光のみを選択的にカットし、同時に点光源からの光を拡散することができるとともに、色ムラを抑制できる積層体を提供することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<積層体>
本発明の積層体は、基材層、樹脂層、及び、樹脂微粒子を含むコロイド結晶層を有する積層体であって、キノフタロン骨格を有する化合物(A)を含有し、前記積層体の単位面積当たりの前記化合物(A)の含有量が、0.01~2g/m2であることを特徴とする。本発明の積層体は、前記化合物(A)を含有することによって、コロイド結晶と相乗的に作用し、青色波長を選択的にカットし、光拡散性と輝度ムラ抑制を両立することができる。なお、本発明の積層体は、全光線透過率の低下にともない輝度が低下するため、黒色微粒子の含有率が、積層体の全質量中、0.3質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることが更に好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
【0014】
本発明の積層体においては、後述する樹脂層の膜厚と、コロイド結晶層の膜厚との合計が、5~30μmであることが好ましく、10~25μmであることがより好ましい。膜厚が5μm以上であると、青色波長を選択的にカットし光拡散性と輝度ムラ抑制を十分に両立することができ、30μm以下であると、全光線透過率の低下による輝度低下が生じにくい。
【0015】
(光の透過率)
本発明の積層体は、波長430~480nmにおける光の透過率の最小値が30%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましい。波長430~480nmにおける光の透過率の最小値が30%以下であると、青色波長をカットし輝度ムラを抑制することができる。
【0016】
本発明の積層体は、波長480~700nmにおける光の透過率の最小値が55%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。波長480~700nmにおける光の透過率の最小値が55%以上であると、青色以外の波長を透過するため輝度低下を抑制することができる。
【0017】
(HAZE値)
本発明の積層体は、HAZE値が30~100%であることが好ましく、50~100%であることがより好ましい。HAZE値とは、全光線透過率(Tt)のうち散乱光率(Td)の割合であり、HAZE値=(Td/Tt)×100として算出される値である。HAZE値が30%以上であると、光源の光を拡散し、光源ムラを抑制しながらより均一な明るさを提供できる。
【0018】
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0019】
<キノフタロン骨格を有する化合物(A)>
本発明の積層体は、キノフタロン骨格を有する化合物(A)を含む。化合物(A)としては、顔料及び/又は染料を用いることが好ましく、波長選択性の観点から、より好ましくは染料である。化合物(A)を用いることで、コロイド結晶層と相乗的に作用し、化合物(A)由来の吸収及びコロイド結晶の反射によって、光源の青色を選択的にカットすると同時に光を拡散する積層体が得られる。
【0020】
積層体の単位面積当たりの化合物(A)の含有量は、好ましくは0.01~2g/m2の範囲であり、より好ましくは0.02~1g/m2の範囲である。積層体の単位面積当たりの化合物(A)の含有量が0.01g/m2以上であると、化合物(A)由来の青色吸収能が適切に発揮され、光源の色ムラを抑えることができる。2g/m2以下であると、化合物(A)による画面の色付きへの影響が小さいため好ましい。
【0021】
化合物(A)は、基材層、樹脂層、又はコロイド結晶層のうち、いずれの層に存在してもよいが、波長選択性を向上させる観点から、コロイド結晶層に隣接する樹脂層に存在することが好ましく、樹脂層の中でも、後述するプライマー層に存在することが更に好ましい。なお、化合物(A)は、基材層、樹脂層、又はコロイド結晶層のうち、一つの層のみに存在してもよく、複数の層に存在してもよい。さらに、化合物(A)を含有する層は、光源と共に用いる際、コロイド結晶層に対し光源と同じ側、又は反対側いずれの位置に存在してもよいが、輝度(全光線透過率)を向上させる観点及び色ムラ抑制の観点から、コロイド結晶層を介して、光源の反対側に位置することが好ましい。
【0022】
化合物(A)は、1種を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。化合物(A)としては例えば、染料として、水溶性のアシッドイエロー3、油溶性のソルベントイエロー33、顔料としてピグメントイエロー138又は特許第4993026号公報に記載の化合物などが挙げられ、透明性の観点から、アシッドイエロー3であることが好ましい。
【0023】
化合物(A)としては、顔料又は染料として用いられる化合物であることが好ましい。化合物(A)が水溶性染料である場合、分散性の観点から、アニオン性であることが好ましい。水溶性染料がアニオン性である場合、スルホン酸塩構造を有することが好ましく、スルホン酸塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等が好ましく挙げられる。化合物(A)におけるスルホン酸(塩)基の導入数としては、1~3が好ましい。
【0024】
(化合物(A)の配合方法)
化合物(A)が染料である場合、染料を各層中に配合する方法としては、公知の方法から適宜選択でき、好ましくは、染料を溶媒に溶解させて配合する方法である。化合物(A)が水溶性染料である場合、水溶性染料に対するカウンターイオンを持つ樹脂に配合することが好ましい。カウンターイオンを持つ樹脂と化合物(A)とが反応造塩物を形成することで、均一な塗膜を作ることができる。
【0025】
化合物(A)が顔料である場合、顔料を各層中に配合する方法としては、公知の方法から適宜選択でき、好ましくは、顔料を分散樹脂によって分散した顔料分散体として配合する方法である。顔料分散体において、化合物(A)の分散性を安定的に保持する方法として、(1)水溶性顔料分散樹脂を顔料表面に吸着させ分散する方法、(2)水溶性及び/又は水分散性の界面活性剤を顔料表面に吸着させ分散する方法、(3)顔料表面に親水性官能基を化学的・物理的に導入し、分散樹脂や界面活性剤なしで分散する方法(自己分散顔料)、(4)水不溶性樹脂で顔料を被覆し、必要に応じて更に別の水溶性顔料分散樹脂や界面活性剤を用いて分散させる方法等を挙げることができる。顔料の分散安定性と膜物性に優れるという観点から、好ましくは、(1)の水溶性顔料分散用樹脂を用いる方法である。
【0026】
(水溶性顔料分散用樹脂)
前記水溶性顔料分散用樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリ(メタ)アクリル樹脂、スチレン-(メタ)アクリル樹脂、(無水)マレイン酸樹脂、スチレン-(無水)マレイン酸樹脂、オレフィン-(無水)マレイン酸樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。
水溶性顔料分散用樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1,000以上300,000以下の範囲内であり、より好ましくは5,000以上200,000以下の範囲である。重量平均分子量が前記範囲であることにより、顔料が水中で安定的に分散し保存安定性が向上する。重量平均分子量が1,000以上であると、プライマー層やコロイド結晶層内に含まれる場合に、水や溶剤に溶出しにくくなり、耐水性や耐溶剤性等の膜物性が良好となる。重量平均分子量が300,000以下であると、顔料分散体の粘度が低く抑えられる。
【0027】
<基材層>
本発明の積層体は、基材層を有する。基材層の材質は特に制限されず、公知の基材から選択することができる。基材層としては、例えば、ポリ塩化ビニルシート、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ナイロン(Ny)フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリイミドフィルムのような樹脂基材;ガラス基材;が挙げられる。中でも透明性を有する基材が好ましく、透明度と耐光性の観点から、PETフィルムが特に好ましい。
【0028】
基材層は、表面が平滑であってもよく凹凸を有していてもよい。また、基材層は、プライマー層組成物の塗工性を改善する目的で、コロナ処理やプラズマ処理が施されていてもよい。これら基材層は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を積層したものを用いてもよい。
【0029】
<樹脂層>
本発明の積層体は、樹脂層を有する。樹脂層は、基材とコロイド結晶層との間に設けても、コロイド結晶層に対して基材と反対側の面に設けてもよく、プライマー層又はオーバーコート層としてはたらくことが好ましい。樹脂層は単独でも複数でもよい。
【0030】
樹脂層の膜厚は、特に制限されず、プライマー層あるいはオーバーコート層の機能発現と生産性の観点から、好ましくは1~25μmであり、より好ましくは2~20μmであり、更に好ましくは2~10μmである。樹脂層の厚みが1μm以上であることにより、樹脂層と基材層及び樹脂層とコロイド結晶層との結着性が向上し、積層体の基材追従性、耐摩擦性及び耐水性が優れる。
本発明における各層の膜厚は、走査型電子顕微鏡を使用して積層体の断面を観察することにより測定できる。
【0031】
(プライマー層)
基材とコロイド結晶層との間に設けられる樹脂層は、本発明においてプライマー層とし、基材とコロイド結晶層との間の界面剥離を抑制する働きを担う。プライマー層を設けることで、コロイド結晶層との結着性が向上し、基材追従性、耐摩擦性、耐水性等に優れる積層体を得ることができるため、本発明の積層体はプライマー層を有することが好ましい。また、形成されたプライマー層は、水に不溶であることが好ましい。
【0032】
プライマー層を形成する樹脂は特に制限されず、基材やコロイド結晶層の種類に応じて適宜選択できる。好ましくは、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、及びこれらの樹脂を複合した複合樹脂、からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含むものである。中でも、基材やコロイド結晶層への密着性に優れる点、プライマー層の耐水性、耐溶剤性及び透明性に優れる点から、好ましくは、アクリル樹脂及び/又はウレタン樹脂を含み、より好ましくはアクリル樹脂を含み、更に好ましくはスチレン由来の構成単位を有するアクリル樹脂(以下、スチレンアクリル樹脂)を含むものである。アクリル樹脂を用いると、基材やコロイド結晶層への密着性、プライマー層の基材追従性及び耐水性に優れ、積層体の基材追従性、耐摩擦性及び耐水性が良好となるため好ましい。
これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0033】
(オーバーコート層)
コロイド結晶層に対して基材と反対側の面に設けられる樹脂層を、本発明においてオーバーコート層とする。コロイド結晶層を保護することを目的として、本発明の積層体はオーバーコート層を有していてもよい。オーバーコート層を形成することで、耐摩擦性、耐アルコール性等の各種物性試験に対する物性を向上させることができる。
【0034】
オーバーコート層は、コロイド結晶層への浸透抑制の観点から、未反応成分や残留溶剤の含有率が低いことが好ましく、当該観点から、水性樹脂微粒子の乾燥によって造膜した層であることがより好ましい。また、形成された後のオーバーコート層は、水に不溶であることが好ましい。
【0035】
(水性樹脂微粒子)
水性樹脂微粒子の製造方法は特に制限されず、例えばアクリル樹脂である場合、下記の乳化重合により製造することができる。まず、反応槽に水性媒体と界面活性剤を仕込み、所定の温度まで昇温する。一方、滴下槽には、水、界面活性剤、及び(メタ)アクリル単量体を含むエチレン性不飽和単量体を仕込み、撹拌してエチレン性不飽和単量体の乳化液を調製する。その後、窒素雰囲気下で、反応槽に調製した乳化液を滴下しながら、ラジカル重合開始剤を添加する。反応開始後、ポリマーの粒子核が生成し、粒子は徐々に成長して、アクリル樹脂微粒子が形成される。
【0036】
(樹脂)
オーバーコート層を形成する樹脂は、特に制限されず、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂を挙げることができるが、コロイド結晶の樹脂微粒子との密着性に優れる点から、好ましくはアクリル樹脂であり、より好ましくはスチレンアクリル樹脂である。また、当該樹脂は水性樹脂であることが好ましい。
【0037】
[アクリル樹脂]
アクリル樹脂としては、水性アクリル樹脂が好ましく、水性スチレンアクリル樹脂であることがより好ましい。
【0038】
{エチレン性不飽和単量体}
上記水性アクリル樹脂の製造に使用できるエチレン性不飽和単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族系エチレン性不飽和単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tーブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐アルキル基含有エチレン性不飽和単量体;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル基含有エチレン性不飽和単量体;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート等のフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体;(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、又は、これらのアルキル若しくはアルケニルモノエステル、コハク酸β-(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸等のカルボキシ基含有エチレン性不飽和単量体;2-アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸、アリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸アンモニウム、ビニルスルホン酸等のスルホ基含有エチレン性不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ペントキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N-ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N-ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N-メトキシメチル-N-(ペントキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド基含有エチレン性不飽和単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシビニルベンゼン、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、アリルアルコール等の水酸基含有エチレン性不飽和単量体;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリオキシエチレン基含有エチレン性不飽和単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン等が挙げられ、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有エチレン性不飽和単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有エチレン性不飽和単量体;ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アセトアセトキシ(メタ)アクリレート等のケトン基含有エチレン性不飽和単量体;アリル(メタ)アクリレート、1-メチルアリル(メタ)アクリレート、2-メチルアリル(メタ)アクリレート、1-ブテニル(メタ)アクリレート、2-ブテニル(メタ)アクリレート、3-ブテニル(メタ)アクリレート、1,3-メチル-3-ブテニル(メタ)アクリレート、2-クロルアリル(メタ)アクリレート、3-クロルアリル(メタ)アクリレート、o-アリルフェニル(メタ)アクリレート、2-(アリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルラクチル(メタ)アクリレート、シトロネリル(メタ)アクリレート、ゲラニル(メタ)アクリレート、ロジニル(メタ)アクリレート、シンナミル(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルイタコン酸、ビニル(メタ)アクリレート、クロトン酸ビニル、オレイン酸ビニル,リノレン酸ビニル、2-(2’-ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタントリアクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート、ジビニルベンゼン、アジピン酸ジビニル、イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等の2個以上のエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和単量体;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリブトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、3-アクリロキシメチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有エチレン性不飽和単量体;N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アルキルエーテル化N-メチロール(メタ)アクリルアミド等のメチロール基含有エチレン性不飽和単量体;が挙げられる。
これらの単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0039】
上記エチレン性不飽和単量体は、樹脂層とコロイド結晶層との間を架橋する目的で、反応性基を有していてもよい。
上記反応性基としては、例えば、エポキシ基、カルボキシ基、水酸基、ケトン基、ヒドラジド基が挙げられ、より好ましくはケトン基である。特に、反応性基がケトン基であり、架橋剤がヒドラジド架橋剤である場合、ケトン・ヒドラジド架橋を形成することができる。また、水性アクリル樹脂が、水性媒体中に分散可能な樹脂微粒子である場合、親水性が高いケトン基を有するエチレン性不飽和単量体を共重合組成に用いると、ケトン基は樹脂微粒子の外側、すなわち水媒体との界面付近に導入され、ヒドラジド架橋剤と効率的に架橋を形成できると考えられる。
【0040】
水性アクリル樹脂がケトン基を含む場合、ケトン基の好ましい含有量は水性アクリル樹脂の質量を基準として、0.05~0.3mmol/gの範囲である。ケトン基を0.05~0.3mmol/gの範囲で導入することにより、水性アクリル樹脂の融着が阻害されない状態で架橋が形成されるため、樹脂層とコロイド結晶層とがより強固に結着する。これにより、コロイド結晶塗膜の追従性がより向上し、密着性及び耐摩擦性の良好な積層体を得ることができる。
【0041】
{ラジカル重合開始剤}
水性アクリル樹脂の製造に用いられるラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性重合開始剤や水溶性重合開始剤を使用することができ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0042】
油溶性重合開始剤としては特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシ(2-エチルヘキサノエート)、tert-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、ジ-tert-ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス-シクロヘキサン-1-カルボニトリル等のアゾビス化合物;が挙げられる。
【0043】
乳化重合においては水溶性重合開始剤を使用することが好ましく、水溶性重合開始剤としては例えば、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸カリウム(KPS)、過酸化水素、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライドのような従来既知のものを好適に使用することができる。
【0044】
{界面活性剤}
水性アクリル樹脂の製造には一般的に界面活性剤が用いられ、界面活性剤を用いることで、樹脂微粒子の安定性や単分散性を向上させることができる。界面活性剤としては、アニオン性又はノニオン性のものが挙げられ、好ましくはアニオン性界面活性剤である。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0045】
界面活性剤としては、例えば、アニオン性反応性界面活性剤、アニオン性非反応性界面活性剤、ノニオン性反応性界面活性剤、ノニオン性非反応性界面活性剤が挙げられ、反応性界面活性剤が好ましい。ここで反応性界面活性剤とは、上述のエチレン性不飽和単量体と重合可能な界面活性剤を指す。より詳細には、エチレン性不飽和結合と重合反応し得る反応性基を有する界面活性剤を意味する。反応性基としては、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基等のアルケニル基や(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
【0046】
反応性界面活性剤を使用することで、水性アクリル樹脂中に含まれる遊離の界面活性剤成分が低減し、コロイド結晶の粒子配列への悪影響が抑えられるため、より波長選択性に優れる積層体を得ることができる。
【0047】
{その他成分}
水性アクリル樹脂の製造では、必要に応じて還元剤、緩衝材、連鎖移動剤、中和剤を使用することができる。
【0048】
[ウレタン樹脂]
樹脂層を形成する樹脂が水性ウレタン樹脂である場合、水性ウレタン樹脂は特に制限されない。水性ウレタン樹脂は、例えば、非水系にて任意のポリオールとポリイソシアネートとを重付加反応させて得られたウレタン樹脂を、界面活性剤を用いて水中に分散させる方法、又は、ウレタン樹脂中にカルボキシ基等の親水基を導入して自己乳化させる方法、により得ることができる。
水性ウレタン樹脂は、末端イソシアネート基にジアミンやジヒドラジド化合物を反応させて、末端に官能基を導入してもよく、鎖延長により高分子量化を行ってもよい。また、水性ウレタン樹脂は、反応性基を介してアクリル樹脂骨格やオレフィン樹脂骨格をグラフトする等して、異なる樹脂と複合化してもよい。
【0049】
ウレタン樹脂を構成するポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ひまし油ポリオール;が挙げられる。
【0050】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン/プロピレン)グリコール、ポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
【0051】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、二官能ポリオール又は三官能ポリオールと、二塩基酸との反応生成物が挙げられる。二官能ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAが挙げられる。三官能ポリオールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。二塩基酸としては、例えば、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸が挙げられる。
【0052】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、前述の二官能ポリオールとジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネートとの反応生成物が挙げられる。
【0053】
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、水酸基含有ポリブタジエン、酸基含有水添ポリブタジエン、水酸基含有ポリイソプレン、水酸基含有水添ポリイソプレン、水酸基含有塩素化ポリプロピレン、水酸基含有塩素化ポリエチレンが挙げられる。
【0054】
ウレタン樹脂を構成するポリイソシアネートといえば、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート;が挙げられる。
【0055】
ウレタン樹脂合成において、ウレタン結合濃度調節や各種官能基導入を目的として、低分子ジオールを併用してもよい。低分子ジオールとしては分子量500以下のジオールが好ましく、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレンジオール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)アニリン、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールペンタン酸等のジメチロールアルカン酸や、ジヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシ安息香酸が挙げられる。
【0056】
末端変性や鎖延長反応に使用できる化合物としては、例えば、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジン及びその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン等のジアミン類、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類が挙げられる。
【0057】
水性ウレタン樹脂の市販品としては、例えば、第一工業製薬製スーパーフレックスシリーズ(SF-170、SF-210等)、三洋化成社製ユーコート、パーマリンシリーズ(UX-310、UX-3945等)、荒川化学製ユリアーノシリーズ(W-600、W-321等)、ADEKA製アデカポンタイターシリーズ(HUX-420A、HUX-386等)、宇部興産製UWシリーズ(UW-5002、UW-5020等)、大成ファインケミカル社製アクリットシリーズ(WBR2000U、WBR2101、WEM-200U等)が挙げられる。
【0058】
[ポリオレフィン樹脂]
樹脂層を構成する樹脂が水性ポリオレフィン樹脂である場合、該水性ポリオレフィン樹脂としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、及びエチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体のようなベース樹脂を、マレイン酸等で変性した酸変性ポリオレフィンを用いることができる。ポリオレフィン樹脂は、アクリル樹脂骨格をグラフトする等、異なる樹脂と複合化してもよい。
上記水性ポリオレフィン樹脂は、界面活性剤により水中に分散させる方法、又は、ポリオレフィン樹脂中に親水基を導入して自己乳化させる方法、により水分散体を得ることができる。
【0059】
水性ポリオレフィン樹脂の市販品としては、例えば、日本製紙社製スーパークロンシリーズやアウローレンシリーズ(E-480T、AE-301等)、ユニチカ製アローベースシリーズ(SB-1230N、SB-1200等)、三菱化学製アプトロックシリーズ(BW-5550等)が挙げられる。
【0060】
[ポリエステル樹脂]
樹脂層を形成する樹脂が水性ポリエステル樹脂である場合、水性ポリエステル樹脂は特に制限されない。該水性ポリエステル樹脂は、二官能又は三官能ポリオールと二塩基酸とを反応させて得ることができる。二官能又は三官能ポリオール、及び二塩基酸としては、上述の[ウレタン樹脂]の項の記載を援用できる。
水性ポリエステル樹脂は、界面活性剤により水中に分散させる方法、又は、ポリエステル樹脂中に親水基を導入して自己乳化させる方法により、水分散体を得ることができる。
水性ポリエステル樹脂の市販品としては、例えば、互応化学製プラスコートシリーズ(Z-730、Z-760等)が挙げられる。
【0061】
(カチオン性基)
また、化合物(A)がアニオン性で、樹脂層に存在する場合、樹脂層を形成する樹脂はカチオン性基を有することが好ましい。樹脂と化合物(A)とが反応造塩物を形成することで、均一な塗膜を形成することができる。
【0062】
[カチオン性基を有する樹脂]
樹脂層を形成する樹脂がカチオン性基を有する場合、当該カチオン性基は、化合物(A)におけるアニオン性基との造塩物を形成する妨げにならなければ特に限定されないが、下記一般式(1)で示す単位を含むことが好ましい。
【0063】
【0064】
一般式(1)中、R1は、水素原子、又はアルキル基を表す。R2~R4は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基を表し、R2~R4のうち2つが互いに結合して環を形成してもよい。Qはアルキレン基、アリーレン基、-CONH-R5-、-COO-R5-を表し、R5はアルキレン基を表す。P-は無機又は有機のアニオンを表す。なお、本発明でアルキル基、アルケニル基、及びアリール基は、置換基を有してもよい。
【0065】
R1におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基が挙げられる。アルキル基は、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基が更に好ましい。
R1で表されるアルキル基が置換基を有する場合、当該置換基としては、例えば、水酸基、アルコキシル基が挙げられる。
【0066】
R1は、水素原子、メチル基が特に好ましい。
【0067】
一般式(1)中、R2~R4は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基を表す。
【0068】
R2~R4におけるアルキル基としては、例えば、直鎖アルキル基(メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-オクチル、n-デシル、n-ドデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル及びn-オクタデシル等)、分岐アルキル基(イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、イソヘキシル、2-エチルヘキシル及び1,1,3,3-テトラメチルブチル等)、シクロアルキル基(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等)、架橋環式アルキル基(ノルボルニル、アダマンチル及びピナニル等)が挙げられる。アルキル基は、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより好ましい。
【0069】
R2~R4におけるアルケニル基としては、例えば、直鎖又は分岐のアルケニル基(ビニル、アリル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル及び2-メチル-2-プロぺニル等)、シクロアルケニル基(2-シクロヘキセニル及び3-シクロヘキセニル等)が挙げられる。アルケニル基は、炭素数2~18のアルケニル基が好ましく、炭素数2~8のアルケニル基がより好ましい。
【0070】
R2~R4におけるアリール基としては、例えば、単環式アリール基(フェニル等)、縮合多環式アリール基(ナフチル、アントラセニル、フェナンスレニル、アントラキノリル、フルオレニル及びナフトキノリル等)及び芳香族複素環炭化水素基(チエニル(チオフェンから誘導される基)、フリル(フランから誘導される基)、ピラニル(ピランから誘導される基)、ピリジル(ピリジンから誘導される基)、9-オキソキサンテニル(キサントンから誘導される基)及び9-オキソチオキサンテニル(チオキサントンから誘導される基)等)が挙げられる。
【0071】
R2~R4で表されるアルキル基、アルケニル基、アリール基が置換基を有する場合の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルケニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、及びフェニル基等から選択される置換基が挙げられる。置換基は、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシル基、フェニル基が好ましい。
【0072】
R2~R4としては、保存安定性の観点からアルキル基が好ましく、無置換のアルキル基がより好ましい。
【0073】
一般式(1)中、C-C主鎖部位とアンモニウム塩基を連結するQ部位は、アルキレン基、アリーレン基、-CONH-R5-、-COO-R5-を表し、R5としてはアルキレン基が挙げられる。これらの中でも、重合性、入手性の理由から、-CONH-R5-、-COO-R5-が好ましい。また、R5は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0074】
一般式(1)中、P-ユニットは、無機又は有機のアニオンが好ましい。P-ユニットは、キノフタロン骨格を有する化合物(A)と造塩物を形成する妨げにならないアニオンであれば良く、限定されないことはいうまでもない。
【0075】
無機アニオンとしては、例えば、水酸化物イオン;塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲンイオンが挙げられる。有機アニオンは、例えば、ギ酸イオン、酢酸イオン等のカルボン酸イオン;炭酸イオン、重炭酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、クロム酸イオン、ニクロム酸イオン、リン酸イオン、シアン化物イオン、過マンガン酸イオン;ヘキサシアノ鉄(III)酸イオン等の錯体イオンが挙げられる。これらに中でも反応性や安定性の面でハロゲンイオン、カルボン酸イオンが好ましく、ハロゲンイオンがより好ましい。なお、アニオンがカルボン酸イオン等の有機アニオンの場合、樹脂中の有機アニオンが共有結合し、分子内塩を形成していてもよい。
【0076】
カチオン性基を有する樹脂の合成方法としては、例えば、4級アンモニウム塩基を有するモノマーを単量体成分として共重合する方法、アミノ基を有するモノマーを単量体成分として共重合したアミノ基を有する樹脂に対して、オニウム塩化剤を反応させて、アンモニウム塩を形成する方法が挙げられる。なお、本明細書では、以下例示するカチオン性基を形成可能なモノマーを総称してアミノモノマーという。
【0077】
4級アンモニウム塩基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルモルホリノアンモニウムクロライド等のアルキル(メタ)アクリレート系第4級アンモニウム塩、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリエチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等のアルキル(メタ)アクリロイルアミド系第4級アンモニウム塩、ジメチルジアリルアンモニウムメチルサルフェート、トリメチルビニルフェニルアンモニウムクロライドが挙げられる。
【0078】
アミノ基を有するモノマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジt-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジt-ブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミドが挙げられる。ジメチルアミノスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン等のジアルキルアミノ基を有するスチレン、ジアリルメチルアミン、ジアリルアミン等のジアリルアミン化合物、N-ビニルピロリジン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール等のアミノ基含有芳香族モノマーが挙げられる。
【0079】
オニウム塩化剤としては、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、又はジプロピル硫酸等のアルキル硫酸、p-トルエンスルホン酸メチル、又はベンゼンスルホン酸メチル等のスルホン酸エステル、メチルクロライド、エチルクロライド、プロピルクロライド、又はオクチルクロライド等のアルキルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、プロピルブロマイド、又はオクチルクロブロマイド等のアルキルブロマイド、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイドが挙げられる。
【0080】
アミノ基に対するオニウム塩化剤の反応は、例えば、アミノ基に対して等モル以下のオニウム塩化剤を、アミノ基を有する化合物の溶液に対して滴下して行うことが好ましい。アンモニウム塩形成反応時の温度は、90℃程度以下であり、特にアミノ基を有するモノマーをアンモニウム塩化する場合には30℃程度以下が好ましい。反応時間は1~4時間程度である。
【0081】
他のオニウム塩化剤として、アルコキシカルボニルアルキルハライドが挙げられる。アルコキシカルボニルアルキルハライドは下記一般式(2)で示す化合物である。
一般式(2)Z-R6-COOR7
一般式(2)中、Zは、塩素、又は臭素等のハロゲン、好ましくは臭素であり、R6は、炭素数1~6、好ましくは1~5、より好ましくは1~3のアルキレン基であり、R7は、炭素数1~6、好ましくは1~3のアルキル基である。)。一般式(2)で示す化合物は、例えば、クロロ酢酸が挙げられる。
【0082】
(カルボキシル基)
樹脂層を形成する樹脂は、カルボキシル基を有していることが好ましい。樹脂がカルボキシル基を有する場合、当該樹脂の酸価は、好ましくは5~70mgKOH/gの範囲である。酸価が上記の範囲であると、樹脂層と基材との密着性が向上する。また、コロイド結晶層と樹脂層との結着も良好となる。更に、樹脂層が水分等により膨潤又は溶出して、コロイド結晶の規則配列を崩すことも抑制される。これにより、得られる積層体は、優れた波長選択性を発現し、高温高湿条件下における経時試験、各種耐性試験を行った後も、良好な波長選択性をより維持することができる。
【0083】
樹脂層を形成する樹脂は、-30~70℃の範囲にガラス転移点(Tg)を有することが好ましく、-30~20℃の範囲にガラス転移点を有することがより好ましい。また、複数のガラス転移点を有していてもよい。上記範囲にガラス転移点を有することで、コロイド結晶層の空隙部への樹脂層の樹脂成分の過剰な侵入が抑制され、良好な構造色を長期間維持することができる。また、基材及びコロイド結晶層の樹脂微粒子表面との濡れ性が良好となり、密着性に優れる。また、樹脂層とコロイド結晶の樹脂微粒子との融着が促進され、結着部分の強度に優れる。これにより、得られる積層体は、波長選択性、保存安定性、各種耐性(耐摩擦性、基材追従性)に優れる。 本発明におけるガラス転移点は、DSC(示差走査熱量計)を用いて求めることができる。
【0084】
[樹脂層の形成方法]
樹脂層の形成方法は特に制限されないが、例えば、樹脂層を形成する水性樹脂と水とを含む樹脂組成物を、基材上に塗布し、必要に応じて乾燥することで形成することができる。
樹脂組成物は、積層体の諸物性に悪影響を及ぼさない範囲で、塗工性、膜耐性を向上させる目的で、親水性溶剤、架橋剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0085】
{親水性溶剤}
親水性溶剤としては、例えば、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコールのような一価のアルコール溶剤;エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、のようなグリコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルのようなグリコールエーテル系溶剤;N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、ε-カプロラクタムのようなラクタム系溶剤;ホルムアミド、N-メチルホルムアミドのようなアミド系溶剤;が挙げられる。
【0086】
{架橋剤}
架橋剤は特に制限されず、例えば、活性カルボニル基と反応してケトン・ヒドラジド架橋を形成するヒドラジノ基を2つ以上有するヒドラジド化合物(ポリヒドラジド)、水酸基やアミノ基と反応してウレタン結合やウレア結合を形成するイソシアネート化合物、カルボキシ基やアミノ基等と反応するエポキシ化合物、カルボジイミド化合物が挙げられ、用途に応じて適宜選択することができる。
例えば、樹脂層の組成物に含まれる樹脂がカルボキシ基を有する場合は、エポキシ架橋剤やカルボジイミド架橋剤を介して架橋を形成することができる。例えば、樹脂層の組成物に含まれる樹脂が水酸基を有する場合は、ポリイソシアネート架橋剤を介して架橋を形成することができる。例えば、樹脂層の組成物に含まれる樹脂がケトン基を有する場合、ヒドラジド架橋剤を介して架橋することができる。
架橋剤としては、上述のとおり、ケトン・ヒドラジド架橋を形成するために、ヒドラジド架橋剤を用いることが好ましい。ヒドラジド架橋剤としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジド、多官能のヒドラジド基が変性された水溶性樹脂が挙げられる。
【0087】
<コロイド結晶層>
本発明の積層体は、コロイド結晶層を有する。当該コロイド結晶層は、樹脂微粒子が規則的に配列した構造を有するためブラッグ反射由来の構造色を発現し、波長選択的に光を反射・透過することで、化合物(A)と相乗的に作用し、光源のムラ抑制機能を担う。また、コロイド結晶層は、樹脂微粒子を含み、該樹脂微粒子が規則的に配列した構造を有する。また、コロイド結晶層は、空隙を有することが好ましい。
【0088】
本発明の積層体におけるコロイド結晶層は、例えば、微粒子が密充填構造をとり、空隙を残しながら、微粒子間で結着している形態が好ましい。コロイド結晶はフォトニック結晶の一種で、屈折率が異なる物質を光の波長と同程度の間隔で並べた構造をとることで、結晶内で屈折率が周期的に変化し、ブラッグ反射により特定波長の光を反射及び透過する。
【0089】
[空隙]
コロイド結晶層においては、樹脂微粒子の粒子間隙に空隙が存在することで、粒子と粒子間隙の屈折率差が大きくなり積層体の発色性が良好となるため好ましい。
ここで空隙とは、空気を有する粒子間隙である。コロイド結晶層において、窒素吸着法により最頻細孔径10~200nmの空隙が検出される場合、コロイド結晶層の粒子間隙が空気であると判断できる。最頻細孔径は、Barrett- Joyner-Hale
nda法(BJH法)に基づいて解析して得られる、吸着側の窒素吸着等温線におけるピークトップを最頻細孔径として用いることができる。BJH法においては、Harkins-Jura型の式を用いて基準t曲線を算出し、体積頻度分布に基づいて解析する。本発明では、マイクロトラック・ベル株式会社製の、装置名BELSORP-maxIIを使用して測定できる。
【0090】
[コロイド結晶層を構成する樹脂微粒子]
コロイド結晶層を構成する樹脂微粒子は特に制限されないが、好ましくはエチレン性不飽和単量体の重合体であり、より好ましくはアクリル樹脂であり、更に好ましくはスチレンアクリル樹脂である。コロイド結晶層を構成する樹脂微粒子がアクリル樹脂である場合、(メタ)アクリル単量体を含むエチレン性不飽和単量体を乳化重合することにより、目的の樹脂を得ることができる。
【0091】
例えば、コロイド結晶層にはコアシェル型樹脂微粒子が好適に用いられる。コアシェル型樹脂微粒子が規則配列構造を有することで、隣接したコアシェル型樹脂微粒子のシェル同士、及び、コアシェル型樹脂微粒子のシェルと該シェルに接する層とが容易に結着するため、良好な粘着物性及び各種耐性を発現する。また、コロイド結晶層が空隙を有することで、粒子と空隙との屈折率差が大きくなるため、優れた波長選択性を発現する。
【0092】
[コアシェル型樹脂微粒子]
上記コアシェル型樹脂微粒子は、コア及びシェルが水に不溶なポリマーであり、互いに相溶しないコア(内層)とシェル(外層)の構造を含む。コアは球状形状の維持、シェルは流動性を有して結着部位として機能する。本発明におけるコアシェル型樹脂微粒子は、コア、シェルの其々の内部において、多層構造を有していてもよく、組成に傾斜がついていてもよい。
【0093】
コアシェル型樹脂微粒子を含む組成物は、基材等に塗布され水等の媒体が揮発するにつれて、粒子が移流集積して規則的に配列し、空隙が埋まらない程度に粒子のシェル同士が融着し、コロイド結晶層を形成する。
一方で、積層体に一定以上の熱エネルギーを与えると、シェルが流動して加熱部分の空隙が埋まる。これにより、コロイド結晶層の構造色が退色するため、積層体の波長選択的な反射性は大きく変化する。また、退色した箇所は、流動したシェルにより造膜され柔軟性に優れるため、クラックは発生しない。これにより、加熱した積層体は、非加熱の積層体と同様に、膜耐性に優れる。
【0094】
本発明におけるコアシェル型樹脂微粒子は特に制限されないが、好ましくはエチレン性不飽和単量体の重合体であり、より好ましくはアクリル樹脂であり、更に好ましくはスチレンアクリル樹脂である。
【0095】
コアシェル型樹脂微粒子の製造方法は特に制限されず、乳化重合のように水性媒体中でエチレン性不飽和単量体を重合する方法や、非水系で重合を行った後に脱溶剤しながら水相に転相する転相乳化法等が挙げられるが、高分子量、低粘度、且つ高固形分濃度化が可能である点から、乳化重合を用いることが好ましい。また、乳化重合では、一段目と二段目とで単量体の組成を変えて滴下する二段重合、又は、三段以上の多段で単量体の組成を変えて滴下する多段重合のいずれを用いてもよい。
コアシェル型樹脂微粒子は、上記二段重合により、具体的には、下記に示す手順で調整できる。
(1)まず、反応槽に水性媒体と界面活性剤とを仕込み、昇温する。その後、窒素雰囲気下でコアを形成する一段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液を滴下しながら、ラジカル重合開始剤を添加する。反応開始後、滴下量にしたがって粒子は徐々に成長してコア粒子を形成する。
(2)次いで、一段目の滴下が完了し、発熱が落ちついたところで、シェルを形成する二段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液の滴下を開始する。その際、追加の開始剤を添加してもよい。滴下された二段目のエチレン性不飽和単量体は、一旦コア粒子に分配されるが、重合が進むにつれてコア粒子の外層に重合体として析出していき、シェル層を形成する。
【0096】
{エチレン性不飽和単量体}
コアシェル型樹脂微粒子の製造に使用できるエチレン性不飽和単量体としては、上述の<樹脂層>における〈エチレン性不飽和単量体〉の項の記載を援用できる。
コア粒子を形成するエチレン性不飽和単量体は、コア粒子を形成するエチレン性不飽和単量体の全質量を基準として、芳香族系エチレン性不飽和単量体を50~100質量%の範囲で含むことが好ましい。芳香族系エチレン性不飽和単量体を上記範囲で含むことで、コア部の屈折率が高くなり、コロイド結晶中における粒子部分と空気の空隙部分の屈折率差が拡大し、コロイド結晶層の波長選択性が向上する。また、コア部とシェル部のコントラストが明確となり、シェル部が十分に融着することができる。これにより、膜耐性や波長選択性をより維持できる。
【0097】
また、エチレン性不飽和単量体は、コロイド結晶層内、及び、コロイド結晶層と該コロイド結晶層に接する層との間、に架橋を形成する目的で反応性基を有していてもよい。コロイド結晶層内及びコロイド結晶層と該コロイド結晶層に接する層との間に架橋を形成することで、得られる積層体の塗膜耐性が向上する。
【0098】
コロイド結晶層内、及びコロイド結晶と該コロイド結晶層に接する層との間の架橋は、コアシェル型樹脂微粒子の反応性基同士を反応させる方法、コアシェル型樹脂微粒子の反応性基と前述した樹脂層が有する反応性基とを反応させる方法、多官能の架橋剤を介してコアシェル型樹脂微粒子の反応性基同士を架橋させる方法、により導入することができる。
【0099】
エチレン性不飽和単量体が有していてもよい反応性基としては、上述の<樹脂層>における〈エチレン性不飽和単量体〉の項の記載を援用できる。
コアシェル型樹脂微粒子がケトン基を有する場合、ケトン基の好ましい含有量は、コアシェル型樹脂微粒子の質量を基準として、0.05~0.3mmol/gの範囲である。0.05~0.3mmol/gの範囲で導入することにより、シェルの融着が阻害されない状態で架橋が形成されるため、粒子間及び層間の結着がより強固になり、耐摩擦性試験のような各種耐性試験を行った後も、良好な波長選択性を維持できる。また、0.3mmоl/g以内であると、コアシェル型樹脂微粒子の重合安定性が向上して粒子径の均斉度が良化するため、波長選択性が良好になる。
【0100】
コアシェル型樹脂微粒子に反応性基を導入する場合、高分子鎖の絡み合いによる熱融着と架橋形成の相乗効果をより効果的に発現できる点から、反応性基はシェル部に導入することが好ましい。
【0101】
{ラジカル重合開始剤}
コアシェル型樹脂微粒子の製造に用いられるラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性重合開始剤や水溶性重合開始剤を使用することができ、上述の<樹脂層>における〈エチレン性不飽和単量体〉の項の記載を援用できる。
【0102】
{界面活性剤}
コアシェル型樹脂微粒子の製造には一般的に界面活性剤が用いられ、界面活性剤を用いることで、コアシェル型樹脂微粒子の安定性や単分散性を向上させることができる。界面活性剤としては、アニオン性又はノニオン性のものが挙げられ、好ましくはアニオン性界面活性剤である。これら界面活性剤は、上述の<樹脂層>における〈界面活性剤〉の項の記載を援用できる。
【0103】
{その他成分}
コアシェル型樹脂微粒子の製造では、必要に応じて還元剤、緩衝材、連鎖移動剤、中和剤を使用することができる。
【0104】
{コアシェル型樹脂微粒子の性状}
コアシェル型樹脂微粒子の平均粒子径は、好ましくは180~330nmであり、より好ましくは180~250nmである。平均粒子径が180nm以上であると、コロイド結晶の可視光領域での光の反射性が明瞭になり、より波長選択的な光の反射性に優れる積層体を得ることができる。平均粒子径が330nm以下であると、コロイド結晶の可視光領域での光の反射性に優れるとともに、粒子による散乱が抑えられ波長選択性が一層良好となる。
本明細書における平均粒子径は、動的光散乱法(測定装置はナノトラックUPA(株)マイクロトラックベル社製)により測定することができ、得られた体積粒子径分布データ(ヒストグラム)のピークを平均粒子径とする。
【0105】
また、コアシェル型樹脂微粒子における平均粒子径の変動係数(Cv値)は、30%以下であることが好ましい。変動係数は、粒子径の均斉度を表す数値であり、下記式により算出することができる。
式: 変動係数Cv値(%)=粒子径の標準偏差/平均粒子径×100
[式において、標準偏差と平均粒子径の単位は同一である]
変動係数が30%以下の単分散性の高い微粒子が配列することにより、粒子配列の規則性が良化し、より波長選択的に光を反射すると同時に、光を拡散して色ムラを抑制することができる。
【0106】
コアシェル型樹脂微粒子のコアは、好ましくは60℃以上にガラス転移点を有するものであり、より好ましくは60℃~150℃の範囲にガラス転移点を有するものである。ガラス転移点が60℃以上であると、コアの形状が、外部からの熱や力の影響で変形することが抑制される。これにより、高温での経時試験前後においても、光の反射性をより維持することができる。
【0107】
コアシェル型樹脂微粒子のシェルは、好ましくは-50~20℃の範囲にガラス転移点を有するものであり、より好ましくは-30~10℃の範囲にガラス転移点を有するものである。上記の範囲であると、コロイド結晶層の空隙部分がシェルの融着で埋まることが抑制される。更に、シェルの融着が促進され、融着部分の強度が十分に向上する。これにより、優れた波長選択性を発現し、高温条件における経時試験、耐摩擦試験のような各種耐性試験を行った後も、光の反射性をより維持することができる。
上記シェル及びコアは、複数のガラス転移点を有していてもよい。
【0108】
コアシェル型樹脂微粒子において、シェルの含有量はコアの質量を基準として、好ましくは10~150質量%の範囲であり、より好ましくは、30~70質量%の範囲である。上記範囲内であると、コロイド結晶層の空隙部分がシェルの融着で埋まることが抑制される。一方でシェルの融着は十分に進み、コアシェル型樹脂微粒子間、及び、コアシェル型樹脂微粒子とコロイド結晶層に接する層間の結着がより強固なものとなる。これにより、優れた波長選択性を発現し、高温条件における経時試験、耐摩擦試験のような各種耐性試験を行った後も、波長選択的な光の反射性をより維持することができる。
【0109】
[コロイド結晶層の形成]
コロイド結晶層の形成方法は特に制限されないが、例えば、コアシェル型樹脂微粒子と水とを含有するコロイド結晶層用組成物を、基材又はプライマー層上に塗布することで形成することができる。コロイド結晶層は、ベタ塗りで塗工されていてもよく、絵柄を形成していてもよい。
コロイド結晶層の厚みは、特に制限されず、波長選択的な光の反射性と生産性との観点から、好ましくは3~30μmであり、より好ましくは5~20μmである。
【0110】
コロイド結晶層用組成物は、粒子配列や積層体の諸物性に悪影響を及ぼさない範囲であれば、塗工性、塗膜耐性、波長選択性を向上させる目的で、親水性溶剤、ノニオン性界面活性剤、架橋剤等を含有してもよい。
【0111】
{ノニオン性界面活性剤}
コロイド結晶層用組成物がノニオン性界面活性剤を含むことで、コロイド結晶層の形成に悪影響を与えることなく印刷適性が向上し、塗面が平滑になることで形成される積層体の波長選択性が良化する。ノニオン性界面活性剤のHLB値は10.0~19.0であることが好ましい。このようなHLB値を有するノニオン性界面活性剤を用いることで、コロイド結晶層用組成物のレベリング性が向上し、積層体の波長選択性が良化する。
HLB値は、材料の親水・親油性を数値で表したものであり、前記HLB値が小さいほど親油性が高いことを示す。本明細書においてHLB値は、下記式1で表されるグリフィン法の計算式よって算出される。
式1: HLB値=20×(親水性部の式量の総和)÷(材料の分子量)
【0112】
このようなノニオン性非反応性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類(市販品としては、第一工業製薬株式会社製ノイゲンTDS-120や花王株式会社製エマルゲン1108);ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル類(市販品としては、第一工業製薬株式会社製ノイゲンEA-87、EA-137、EA-157);ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類;が挙げられる。
【0113】
{架橋剤}
コロイド結晶層用組成物が含んでもよい架橋剤としては特に制限されず、上述の<樹脂層>における〈架橋剤〉の項の記載を援用できる。
架橋剤としては、ケトン・ヒドラジド架橋を形成するために、ヒドラジド架橋剤を用いることが好ましい。ヒドラジド架橋剤としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジド、多官能のヒドラジド基が変性された水溶性樹脂が挙げられる。
【0114】
<積層体の製造方法>
本発明の積層体は、基材層、樹脂層、及びコロイド結晶層を備える積層体であって、その製造方法は特に制限されないが、好ましくは、以下の工程1及び2を有するものである。各層を形成する際は、必要に応じて乾燥工程を有していてもよい。
工程1)基材上に、樹脂組成物を塗布し、必要に応じて乾燥し、樹脂層を形成する工程。工程2)工程1で形成された樹脂層上に、樹脂微粒子を含むコロイド結晶層用組成物を塗布し、必要に応じて乾燥し、コロイド結晶層を形成する工程。
【0115】
積層体が、バックライトユニット中で他の物体と接触する場合は、工程2の後に、以下の工程3を行うことが好ましい。
工程3)工程2で形成されたコロイド結晶層上に、水性樹脂微粒子と水とを含む樹脂組成物を塗布し、必要に応じて乾燥し、樹脂層を形成する工程。
【0116】
樹脂組成物、及びコロイド結晶層用組成物の塗布方法は特に制限されず、例えば、インクジェット法、スプレー法、ディッピング法、スピンコート法のような無版印刷方式;オフセットグラビアコーター、グラビアコーター、ドクターコーター、バーコーター、ブレードコーター、フレキソコーター、ロールコーターのような有版印刷方式;が挙げられ、適宜選択することができる。樹脂組成物、及びコロイド結晶層用組成物は、ベタ印刷であってもよく、絵柄層であってもよい。
乾燥工程を有する場合、乾燥方法は特に制限されず、例えば、加熱乾燥法、熱風乾燥法、赤外線乾燥法、マイクロ波乾燥法、ドラム乾燥法といった公知の方法から適宜選択できる。乾燥方法は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、基材へのダメージを軽減し効率よく乾燥させる観点から、熱風乾燥法を用いることが好ましい。
樹脂組成物の乾燥温度は、好ましくは50~120℃の範囲であり、コロイド結晶層用組成物の乾燥温度は、好ましくは25~100℃の範囲である。
【0117】
<光学用部材>
本発明の積層体は、特定波長の光をカットすると同時に光を拡散させる光学用部材として使用することができる。
【0118】
光学用部材は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に別の層を有していてもよく、例えば、ハードコート層及び/又は粘着層を備えていてもよいし、これらを介して、更に別の基材に貼り合わせた形態であってもよい。また、これら別の層は、基材側に配置されていてもよく、コロイド結晶層側に配置されていてもよい。光学用部材が、更に粘着層を有する場合、粘着シートとして使用することができる。
【0119】
[粘着層]
粘着層は、本発明の積層体を、任意の被着体に接着させる働きを担う。粘着層の厚みは、通常、1~100μmの範囲である。
粘着層は公知の感圧接着剤を使用して形成することができ、特に限定されない。感圧接着剤は、基材やコロイド結晶層の種類に応じて適宜選択でき、好ましくは、アクリル樹脂及びウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含むものである。
粘着層を形成する樹脂は、未反応成分や残留溶剤の含有率が低いことが好ましい。樹脂中に含まれる未反応成分や残留溶剤が低いと、基材、コロイド結晶層、樹脂層への影響を抑制できる。粘着層には、粘着物性を目的として、架橋剤やタッキファイヤ等、各種添加剤を含むことができる。
【0120】
<画像表示装置用部材>
本発明の積層体は、青色LEDを光源とする画像表示装置において、青色波長をカットすると同時に光を拡散させることで、輝度ムラの改善を薄膜で実現する画像表示装置用部材として使用することができる。
【0121】
画像表示装置用部材は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に別の層を有していてもよく、例えば、ハードコート層及び/又は粘着層を備えていてもよいし、これらを介して、更に別の基材に貼り合わせた形態であってもよい。また、これら別の層は、基材側に配置されていてもよく、コロイド結晶層側に配置されていてもよい。画像表示部材が、更に粘着層を有する場合、粘着シートとして使用することができる。粘着層については、上述の<光学用部材>における〈粘着層〉の項の記載を援用できる。
【0122】
<光源ユニット>
本発明の積層体は、波長400~500nmに極大発光波長を有する光源と共に用いることも好ましい。積層体を波長400~500nmに極大発光波長を有する光源と共に用いることで、光源ユニットとすることもできる。当該光源として、LED、OLED、冷陰極蛍光管、レーザー励起プラズマ光源等を使用可能だが、薄型化及びエネルギー効率の観点から、LEDを使用することが好ましい。
光源ユニットの構成は問わないが、輝度(全光線透過率)を向上させる観点及び色ムラ抑制の観点から、基材層及び/又は樹脂層がキノフタロン骨格を有する化合物(A)を含有し、コロイド結晶層がキノフタロン骨格を有する化合物(A)を含有せず、キノフタロン骨格を有する化合物(A)を含有する層が、コロイド結晶層を介して、光源の反対側のみに位置する形態が特に好ましい。
【0123】
<画像表示装置>
上記光源ユニットは、画像表示装置に用いることができる。画像表示装置は、波長400~500nmに極大発光波長を有するLED光源と、本発明の積層体を視認側に向かって順に備えることが好ましい。当該画像表示装置は、本発明の積層体を備えるので、光源に起因するムラの問題が生じることなく、薄型で高品位とすることが可能である。また、画像表示装置は、量子ドット技術と組み合わせることで、高輝度かつムラが少ない高精彩な画像を得ることができるため好ましい。組み合わせる量子ドットは、光学シートとしても、カラーフィルターとしても、好適に使用できる。
【0124】
<電子機器>
画像表示装置は、種々の電子機器の構成の一部として使用可能である。電子機器としては例えば、テレビ、ノートパソコン、モニターディスプレイ、タブレットPC、スマートフォン、携帯電話、カーナビゲーション、ゲーム機、デジタルカメラ、ビデオカメラ、DVDプレイヤー、ブルーレイディスクプレイヤー、電子手帳、電子辞書、プリンター、電子楽器が挙げられる。
【実施例0125】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に指定がない場合は「質量部」及び「質量%」を意味する。なお、表中の数値は、特に断りがない限り「部」を表し、空欄は配合していないことを意味する。
【0126】
<平均粒子径、Cv値>
平均粒子径は、微粒子分散体を500倍に水希釈し、該希釈液約5mlを動的光散乱測定法(測定装置はナノトラックUPA(株)マイクロトラックベル社製)により測定を行い、得られた体積粒子径分布データ(ヒストグラム)のピークを平均粒子径とした。また、下記式により、粒子径の均斉度を表す変動係数Cv値を算出した。
式: Cv値(%)=粒子径の標準偏差/平均粒子径×100
[式において、標準偏差と平均粒子径の単位は同一である]
【0127】
<ガラス転移点>
ガラス転移点は、DSC(示差走査熱量計TAインスツルメント社製)により測定した。具体的には、樹脂微粒子分散体を乾固したサンプル約2mgをアルミニウムパン上で秤量し、該アルミニウムパンをDSC測定ホルダーにセットし、5℃/分の昇温条件にて得られるDSC曲線の吸熱側へのベースラインシフト(変曲点)チャートの吸熱ピークを読み取り、ガラス転移点を得た。
【0128】
<樹脂層用樹脂組成物の製造1>
[製造例1]
撹拌器、温度計、滴下ロート、及び還流器を備えた反応容器に、イオン交換水68.9部と、反応性界面活性剤として、第一工業製薬製アクアロンKH-10の20%水溶液を0.25部とを仕込んだ。別途、スチレン(St)30.0部、n-ブチルアクリレート(BA)57.0部、メチルメタクリレート(MMA)2.0部、ジビニルベンゼン(DVB)0.5部、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)10.0部、KH-10の20%水溶液4.8部、及びイオン交換水40.4部をあらかじめ混合、撹拌してエチレン性不飽和単量体の乳化液を調整し、そのうちの3%を反応容器に更に加えた。
内温を80℃に昇温して十分に窒素置換した後、開始剤として過硫酸カリウムの5%水溶液2.0部を添加して乳化重合を開始した。内温を80℃に保ちながらエチレン性不飽和単量体の乳化液の残りと、過硫酸カリウムの5%水溶液2.0部とを3時間かけて滴下し、更に4時間反応させて樹脂微粒子の水分散体(樹脂層用樹脂組成物)を得た。反応完了後、25%アンモニア水を2.4部添加して中和し、イオン交換水で固形分を45.0%に調整した。
【0129】
[製造例2]
温度計、攪拌機、蒸留管、及び冷却器を具備した反応容器に、イソプロピルアルコール100.0部を仕込み、窒素気流下で75℃に昇温した。別途、メチルメタクリレート(MMA)10.0部、ブチルアクリレート(BA)75.0部、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩(DMCMA)15.0部、2.2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)を10.0部、及びイソプロピルアルコール40.0部を均一に混合した後、滴下ロートで2時間かけて滴下した。滴下終了2時間後、固形分から重合収率が98%以上である事を確認し、50℃へ冷却した。このようにして不揮発分が40%の、側鎖にカチオン性基を有する樹脂層用樹脂組成物を得た。
【0130】
[製造例3]
温度計、攪拌機、蒸留管、及び冷却器を具備した反応容器に、メトキシプロピルアセテート100.0部を仕込み、窒素気流下で75℃に昇温した。別途、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)15.0部、ベンジルメタクリレート(BZMA)20.0部、n-ブチルアクリレート(BA)40.0部、メタクリル酸(MAA)10.0部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)15.0部、2.2’-アゾビス(イソ酪酸メチル) 10.0部、及びメトキシプロピルアセテート40.0部を均一に混合した後、滴下ロートに仕込み、4つ口セパラブルフラスコに取り付け、2時間かけて滴下した。滴下終了2時間後、固形分から重合収率が98%以上である事を確認し、50℃へ冷却した。次に、プロピルブロマイド(BP)11.7部を添加し、100℃で4時間反応させた。アミン価が2以下になったことを確認し、50℃へ冷却した。さらに、空気の雰囲気化で、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)17.9部を添加し、さらに重合禁止剤としてメチルヒドロキノン0.05部を添加し、80℃4時間反応させた。イソシアネート当量が1以下になったことを確認し、反応を終了させた。さらに、不揮発分が40%になるようにメトキシプロピルアセテートを加えて調整した。このようにして不揮発分が40%の、側鎖にカチオン性基を有する樹脂層用樹脂組成物を得た。
【0131】
<コロイド結晶層用樹脂組成物の製造>
[製造例4]
スチレン(St)60.0部、メチルメタクリレート(MMA)20.0部、アクアロンAR-10(第一工業製薬株式会社製、アニオン性の反応性界面活性剤(ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩類))の25%水溶液4.0部(固形分1.0部)、及びイオン交換水39.0部を混合、撹拌して一段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液を調整した。撹拌器、温度計、滴下ロート、及び還流器を備えた反応容器に、イオン交換水95.0部と、一段目の乳化液のうちの1.5%を加えた。反応容器の内温を70℃に昇温して十分に窒素置換した後、開始剤として過硫酸カリウムの2.5%水溶液6.0部(固形分0.15部)を添加して重合を開始した。内温を80℃に上げて温度を維持しながら、乳化液の残りとジビニルベンゼン(DVB)20.0部、過硫酸カリウムの2.5%水溶液4.2部(固形分0.11部)を2時間かけて滴下しながら反応させ、コア粒子を合成した。
次に、n-ブチルアクリレート(BA)39.0部、メチルメタクリレート(MMA)25.0部、アクリル酸(AA)2.0部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)2.0部、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)10.0部、スチレン(St)25.0部、アクアロンAR-10の25%水溶液1.7部(固形分0.4部)、及びイオン交換水16.7部を混合、撹拌して、二段目のエチレン性不飽和単量体の乳化液を調整した。一段目の滴下完了から20分後、二段目の乳化液の滴下を開始した。内温を80℃に保ちながら二段目の乳化液と過硫酸カリウムの2.5%水溶液1.6部(固形分0.04部)を2時間かけて滴下しながら反応を進め、コアシェル型樹脂微粒子の水分散体(コロイド結晶層用樹脂組成物)を得た。
反応後、水を添加して固形分を45.0%に調整した。また、25%アンモニア水(NH3(aq))を1.7部添加して中和した。上記アンモニア水の配合量は、シェルに含まれる全カルボキシ基を中和する量(以下、1当量)に相当する。得られた微粒子の平均粒子径は248nm、Cv値は12.9%、コアのTgは100.1℃、シェルのTgは-6.2℃であった。
【0132】
[製造例5]
コア粒子の合成において、Stの配合量を75.0部に、DVBの配合量を5部に変更し、シェルの合成において、BAの配合量を53.0部に、MMAの配合量を2.0部に、Stの配合量を45.0部に変更し、AA及び4HBAを使用しなかった以外は、製造例4と同様にして、コロイド結晶層用樹脂組成物を得た。
反応容器の水は、エチレン性不飽和単量体の総量に対して67%になるように仕込んだ。エチレン性不飽和単量体の乳化液は、乳化液中のエチレン性不飽和単量体の濃度が69%、界面活性剤の濃度が0.69%になるよう、水を添加して調製した。過硫酸カリウム2.5%水溶液において、反応開始時/一段目の乳化液の滴下時/二段目乳化液の滴下時の配分は、製造例4と同じ比率にした。また、シェルに含まれるカルボキシ基に対して1当量のアンモニア水を添加して中和した。
【0133】
<樹脂層用樹脂組成物の製造2>
[製造例6]
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、水68.9部を仕込み、別途、スチレン5.0部、メチルメタクリレート45.0部、n-ブチルメタクリレート5.0部、2-エチルヘキシルアクリレート5.0部、n-ブチルアクリレート34.5部、メタクリル酸2.0部、アクリル酸1.0部、ジアセトンアクリルアミド1.5部、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン1.0部、KH-10(第一工業製薬製重合性界面活性剤)の20%水溶液5.0部、水40.4部をあらかじめ混合、撹拌して調製したエチレン性不飽和単量体の乳化液のうちの3%を反応容器に添加した。反応容器の内温を70℃に昇温して窒素置換を十分行った後、開始剤として過硫酸カリウムの5%水溶液2.0部を添加して乳化重合を開始した。内温を80℃に上げて温度を保ちながらエチレン性不飽和単量体の乳化液の残りと過硫酸カリウムの5%水溶液2.0部を3時間かけて滴下し、更に4時間反応させて水性樹脂微粒子(A)の水分散体を得た。反応完了後、25%のアンモニア水を樹脂中のカルボキシ基に対して、当モルになるように添加して中和し、更に水を添加して最終固形分を43.0質量%に調整した。得られた水性樹脂微粒子(A)の平均粒子径は181nm、Tgは15.2℃、酸価は20.8mgKOH/g、重量平均分子量は樹脂が高分子量化して不溶であったため100万を超えるものとみなした。上記の樹脂微粒子(A)の水分散体にイソプロピルアルコール2.0部、アジピン酸ジヒドラジド1.0部を添加して、オーバーコート用樹脂組成物を調製した。
【0134】
[製造例7]
表1に示す配合組成で、反応容器に仕込むエチレン性不飽和単量体の乳化液量を3%から5.2%に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、水性樹脂微粒子(A)の水分散体を調製した。反応完了後、25%のアンモニア水を樹脂中のカルボキシ基に対して、当モルになるように添加して中和し、更に水を加えて最終固形分を43.0%に調整した。得られた水性樹脂微粒子(A)の平均粒子径は126nm、Tgは28.2℃、酸価は42.4mgKOH/g、重量平均分子量は84万であった。上記の樹脂微粒子(A)の水分散体にイソプロピルアルコール2.0部、アジピン酸ジヒドラジド1.5部を添加して、オーバーコート用樹脂組成物を調製した。
【0135】
【0136】
<積層体の製造>
[実施例1]
製造例2の樹脂層用樹脂組成物とアシッドイエロー3とを、後述する膜厚に応じてアシッドイエロー3の含有量が0.2g/m2となるように混合し、東洋紡エステルフィルムE5100のコロナ処理面に、乾燥後の厚みが3.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、80℃1分間乾燥し、第一の樹脂層を形成した。次いで、製造例1の樹脂層用樹脂組成物及びアジピン酸ジヒドラジドを樹脂固形分に対して1.0部混合し、乾燥後の厚みが3.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、80℃1分間乾燥し、第二の樹脂層を形成した。更に製造例5のコロイド結晶層用樹脂組成物を乾燥後の厚みが10.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、50℃1分間乾燥し、コロイド結晶層を形成した。更に得られた積層体を80℃で1分間加熱し、PET/樹脂層1/樹脂層2/コロイド結晶層の構成の積層体を得た。
【0137】
[実施例2~11]
表2に示す樹脂組成物及び色材の組み合わせ、並びに色材含有量に変更した以外は、実施例1と同様の方法により積層体を作製した。なお、実施例8においては表2に示す色材を、第二の樹脂層を形成する樹脂組成物と混合し、実施例9においては表2に示す色材を、コロイド結晶層用樹脂組成物と混合した。
【0138】
表2における、色材の略称の詳細は以下の通りである。
AY3:アシッドイエロー3(キノフタロン骨格を有する)
SY33:ソルベントイエロー33(キノフタロン骨格を有する)
PY138:ピグメントイエロー138(キノフタロン骨格を有する)
AO10:アシッドオレンジ10(キノフタロン骨格を有しない)LIONOL YELLOW:LIONOL YELLOW TT-1402G/Pigment Yellow 14(キノフタロン骨格を有しない)
【0139】
[実施例12]
製造例1の樹脂層用樹脂組成物及びアジピン酸ジヒドラジドを樹脂固形分に対して1.0部混合し、東洋紡エステルフィルムE5100のコロナ処理面に、乾燥後の厚みが3.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、80℃1分間乾燥し、第一の樹脂層を形成した。次いで、製造例5のコロイド結晶層用樹脂組成物を乾燥後の厚みが10.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、50℃1分間乾燥し、コロイド結晶層を形成した。更に得られた積層体を80℃で1分間加熱した。更に、製造例6の樹脂層用樹脂組成物を乾燥後の厚みが7.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、80℃1分間加熱して第三の樹脂層を形成し、PET/樹脂層1/コロイド結晶層/樹脂層3の構成の積層体を得た。
【0140】
[実施例13~14]
表3に示す樹脂組成物及び色材の組み合わせ、並びに色材含有量に変更した以外は、実施例12と同様の方法により積層体を作製した。なお、実施例14においては、第一の樹脂層と同様の方法で更に第二の樹脂層を形成した。
【0141】
[実施例15]
ポリエチレンテレフタレート(三井PET SA-135、三井化学社製)100質量部を二軸押出機(日本製鋼所製)に投入して溶融させた後にピグメントイエロー138を25質量部投入し、溶融混練によりポリエステル樹脂にピグメントイエロー138を分散し、ペレタイザーを使用してカッティングすることで、ペレット状のマスターバッチである樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物(マスターバッチ)と、希釈用のポリエチレンテレフタレート(三井PET SA-135、三井化学社製)を、フィルム中のピグメントイエロー138の濃度が0.2g/m2になるように単層Tダイフィルム成形機(東洋精機社製)を用いて温度280℃にて押出し成形を行い、厚さ50μmのフィルムを得た。得られたフィルムを基材として用い、表3に示す樹脂組成物及び色材の組み合わせに変更した以外は、実施例12と同様の方法により積層体を作製した。
【0142】
[比較例1]
製造例2の樹脂層用樹脂組成物とアシッドイエロー3とを、後述する膜厚に応じてアシッドイエロー3の含有量が0.2g/m2となるように混合し、東洋紡エステルフィルムE5100のコロナ処理面に、乾燥後の厚みが3.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、80℃で1分間乾燥し、第一の樹脂層を形成した。次いで、製造例1の樹脂層用樹脂組成物を乾燥後の厚みが3.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、80℃で1分間乾燥し、第二の樹脂層を形成した。PET/樹脂層1/樹脂層2の構成の積層体を得た。
【0143】
[比較例2]
東洋紡エステルフィルムE5100のコロナ処理面に、製造例2の樹脂層用樹脂組成物を、乾燥後の厚みが3.0μmになるようにバーコーターで塗工した後、オーブンにより80℃で1分間乾燥してプライマー層を形成した。次いで、製造例1の樹脂層用組成物を乾燥後の厚みが3.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、80℃で1分間乾燥し、第二の樹脂層を形成した。更に、製造例5のコロイド結晶層用樹脂組成物を乾燥後の厚みが10.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、50℃1分間乾燥し、コロイド結晶層を形成した。更に得られた積層体を80℃で1分間加熱し、PET/樹脂層1/樹脂層2/コロイド結晶層の構成の積層体を得た。
【0144】
[比較例3]
製造例2の樹脂層用樹脂組成物とアシッドオレンジ10とを、後述する膜厚に応じてアシッドオレンジ10の含有量が0.2g/m2となるように混合し、東洋紡エステルフィルムE5100のコロナ処理面に、乾燥後の厚みが3.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、80℃1分間乾燥し、樹脂層を形成した。次いで、製造例1の樹脂層用樹脂組成物を乾燥後の厚みが3.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、80℃で1分間乾燥し、第二の樹脂層を形成した。更に、製造例5のコロイド結晶層用樹脂組成物を乾燥後の厚みが10.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、50℃1分間乾燥し、コロイド結晶層を形成した。更に得られた積層体を80℃で1分間加熱し、PET/樹脂層1/樹脂層2/コロイド結晶層の構成の積層体を得た。
【0145】
[比較例4]
アシッドイエロー3の含有量を、3g/m2となるように変更した以外は、実施例1と同様にして、PET/樹脂層1/樹脂層2/コロイド結晶層の構成の積層体を得た。
【0146】
[比較例5]
LIONOL YELLOW TT-1402G(トーヨーカラー株式会社製)20部、水溶性顔料分散用樹脂(ラウリルメタクリレート/スチレン/アクリル酸=35/35/30の共重合物、不揮発分20%)を30部、イオン交換水30部をペイントコンディショナーにて2時間分散し、黄色顔料分散体を得た。得られた黄色顔料分散体を用いて、黄色顔料の含有量が製造例5で得たコロイド結晶層用樹脂組成物100部に対して5部となるように添加した。
東洋紡エステルフィルムE5100のコロナ処理面に、製造例2の樹脂層用樹脂組成物を、乾燥後の厚みが3.0μmになるようにバーコーターで塗工した後、50℃で3分間乾燥して樹脂層を形成した。次いで、樹脂層上に、上記の色材を添加したコロイド結晶層用樹脂組成物を、乾燥後の厚みが10.0μmになるようにバーコーターを選択して塗工し、50℃1分間乾燥し、コロイド結晶層を形成した。更に、得られた積層体を80℃で3分間加熱し、PET/プライマー層/コロイド結晶層の構成の積層体を得た。
【0147】
[比較例6]
比較例6の積層体として、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とを、フィードブロックを用いて積層させ、キャスティングフィルムを得たのち二軸延伸させて得られたダイクロイックフィルムを用いた。
【0148】
[透過率測定]
実施例、比較例の各積層体について、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製V-770D、積分球ユニットISN-923)を用いて、波長250~850nmの範囲で透過スペクトルを測定した。各波長における透過率は、反射率が既知の標準白板(ラブスフェア社製SRS-99-010)をリファレンスとして用いて測定した相対反射率である。なお、実施例1~11、比較例1~5については、コロイド結晶層側、又はオーバーコート層がある場合はオーバーコート層側に光源が位置するように測定した。実施例12~15については、表3に記載の通りに光源が位置するように測定した。得られた透過スペクトルについて、積層体に由来する反射率の最大値と構造色によらないベースラインの透過率の差分(△R)を算出した。△Rが430~480nmにおいて小さいほど波長カット性に優れ、480~700nmにおいて大きいほど光透過性に優れている。得られた△Rの最小値から、以下の基準で評価した。
・430~480nm
○;△Rが15%未満(良好)
△;△Rが15%以上、30%未満(使用可)
×;△Rが30%以上(使用不可)
・480~700nm
○;△Rが70%以上100%未満(良好)
△;△Rが55%以上、70%未満(使用可)
×;△Rが55%未満(使用不可)
【0149】
[膜厚測定]
樹脂層及びコロイド結晶層の膜厚は、実施例、比較例の各積層体の断面を走査電子顕微鏡(SEM)(日本電子製JSM-7800)で観察した画像を用いて測定した。
【0150】
[HAZE値測定]
実施例、比較例の各積層体のHAZE値を、分光ヘーズメーター(日本電色製SH7000)を用いて測定した。なお、実施例1~11、比較例1~5については、コロイド結晶層側、又はオーバーコート層がある場合はオーバーコート層側に光源が位置するように測定した。実施例12~15については、表3に記載の通りに光源が位置するように測定した。HAZE値とは、全光線透過率(Tt)のうち散乱光率(Td)の割合であり、HAZE値=(Td/Tt)×100として算出される値である。HAZE値が高いほど光の拡散性に優れる。得られたHAZE値から、以下の基準で評価した。
○;HAZE値が50以上100未満(良好)
△;HAZE値が30以上、50未満(使用可)
×;HAZE値が30未満(使用不可)
【0151】
[全光線透過率(Tt)測定]
実施例、比較例の各積層体の全光線透過率(Tt)を、分光ヘーズメーター(日本電色製SH7000)を用いて測定した。なお、実施例1~11、比較例1~5については、コロイド結晶層側、又はオーバーコート層がある場合はオーバーコート層側に光源が位置するように測定した。実施例12~15については、表3に記載の通りに光源が位置するように測定した。Ttが高いほど光の透過性に優れる。得られたTtから、以下の基準で評価した。
○;Ttが60%以上100%未満(良好)
△;Ttが40%以上、60%未満(使用可)
×;Ttが40%未満(使用不可)
【0152】
[色ムラの評価]
実施例、比較例の各積層体を用いて、波長400~500nmに極大発光波長を有する光源のminiLED液晶パネルを試作し、目視検査において、以下の判断基準で色ムラを評価した。
○:色ムラが見られず、問題がなかった。
△:色ムラはほとんど見られないが、4Kや8Kなどの超高精細の場合では色ムラが問題となる場合があった。
×:色ムラが見られ、問題であった。
【0153】
【0154】