(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093012
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】再生用樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/00 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
B29B17/00 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219807
(22)【出願日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2022208647
(32)【優先日】2022-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 奎都
(72)【発明者】
【氏名】岸本 洋昭
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AB10
4F401AC10
4F401AD01
4F401BA13
4F401CA25
4F401CA58
(57)【要約】
【課題】2種以上の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物から、再生用樹脂を高純度で分離する工程を含む再生用樹脂の製造方法を提供すること。
【解決手段】再生用樹脂A、樹脂B及び成分Cを含有する樹脂組成物をフィルター処理に供して、該再生用樹脂Aを分離する分離工程を含む、再生用樹脂の製造方法であって、前記再生用樹脂Aが熱可塑性樹脂であり、前記樹脂Bがポリエステル樹脂Pを含有し、前記成分Cが、該ポリエステル樹脂Pと混合すると、得られる混合物に対する前記再生用樹脂Aの接触角を、該ポリエステル樹脂Pに対する前記再生用樹脂Aの接触角より増大させる化合物であり、前記フィルター処理に供する樹脂組成物の温度が、前記再生用樹脂Aの融点以上、前記樹脂Bと前記成分Cの混合物の融点未満である、再生用樹脂の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生用樹脂A、樹脂B及び成分Cを含有する樹脂組成物をフィルター処理に供して、該再生用樹脂Aを分離する分離工程を含む、再生用樹脂の製造方法であって、
前記再生用樹脂Aが熱可塑性樹脂であり、
前記樹脂Bがポリエステル樹脂Pを含有し、
前記成分Cが、該ポリエステル樹脂Pと混合すると、得られる混合物に対する前記再生用樹脂Aの接触角を、該ポリエステル樹脂Pに対する前記再生用樹脂Aの接触角より増大させる化合物であり、
前記フィルター処理に供する樹脂組成物の温度が、前記再生用樹脂Aの融点以上、前記樹脂Bと前記成分Cの混合物の融点未満である、
再生用樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記成分Cが、ポリエステル樹脂Pと反応し得る官能基を有する化合物である、請求項1記載の再生用樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記再生用樹脂がポリオレフィン樹脂である、請求項1記載の再生用樹脂の製造方法。
【請求項4】
さらに、前記再生用樹脂Aを分離する分離工程の前に、前記再生用樹脂Aの融点以上、前記樹脂B及び前記成分Cの混合物の融点未満の温度で、前記樹脂組成物を混練する工程を含む、請求項1~3いずれか記載の再生用樹脂の製造方法。
【請求項5】
さらに、前記再生用樹脂Aを分離する分離工程の前に、前記樹脂B及び前記成分Cの混合物の結晶化温度以上融点未満の温度で、前記樹脂組成物を混練する工程を含む、請求項1~3いずれか記載の再生用樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記フィルター処理に供する樹脂組成物における、前記成分Cの含有量が、前記樹脂B100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下である、請求項1記載の再生用樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記フィルター処理に供する樹脂組成物における前記成分Cの含有量が、0.1質量%以上10質量%以下である、請求項1記載の再生用樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂Bにおけるポリエステル樹脂Pの含有量が、10質量%以上である、請求項1、6又は7記載の再生用樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂Bにおけるポリエステル樹脂Pの含有量が、90質量%以下である、請求項1、6又は7記載の再生用樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生用樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの包装材は、熱可塑性複合材料及び/又は積層材料を用いたものであり、例えば、ボトル容器、詰め替え用パウチ等に成形される。これらの材料は、機能的な理由から、全く異なる種類の樹脂フィルムから構成されることがある。よって、これらの材料から成る包装材等を回収して樹脂を再生する場合、主成分のポリマーと非相溶なポリマーが存在する材料となる。例えば、パウチを回収再生したポリエチレン樹脂は、未溶融のポリアミド樹脂やPETを含み、またポリアミド樹脂やPETは非均質ブレンドを生じるため、バージンポリエチレンと比較してフィルムの成形性が著しく低下するものである。特に未溶融のポリアミド樹脂やPETなどの樹脂はポリエチレン樹脂とは相溶せず、またサイズが大きいので成形性に大きな影響を与える。
【0003】
そこで、再生用樹脂を他の樹脂から分離する方法としては、例えば、特許文献1、2に記載の方法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2022-230331号
【特許文献2】米国特許出願公開第2021/114335号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2には、熱可塑性樹脂の混合物から目的の熱可塑性樹脂(再生用樹脂)を分離する方法が記載されているものの、再生用樹脂を高純度で分離する方法が望まれる。
【0006】
本発明は、2種以上の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物から、再生用樹脂を高純度で分離する工程を含む再生用樹脂の製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記〔1〕~〔9〕に関する。
〔1〕 再生用樹脂A、樹脂B及び成分Cを含有する樹脂組成物をフィルター処理に供して、該再生用樹脂Aを分離する分離工程を含む、再生用樹脂の製造方法であって、
前記再生用樹脂Aが熱可塑性樹脂であり、
前記樹脂Bがポリエステル樹脂Pを含有し、
前記成分Cが、該ポリエステル樹脂Pと混合すると、得られる混合物に対する前記再生用樹脂Aの接触角を、該ポリエステル樹脂Pに対する前記再生用樹脂Aの接触角より増大させる化合物であり、
前記フィルター処理に供する樹脂組成物の温度が、前記再生用樹脂Aの融点以上、前記樹脂Bと前記成分Cの混合物の融点未満である、
再生用樹脂の製造方法。
〔2〕 前記成分Cが、ポリエステル樹脂Pと反応し得る官能基を有する化合物である、前記〔1〕記載の再生用樹脂の製造方法。
〔3〕 前記再生用樹脂がポリオレフィン樹脂である、前記〔1〕又は〔2〕記載の再生用樹脂の製造方法。
〔4〕 さらに、前記再生用樹脂Aを分離する分離工程の前に、前記再生用樹脂Aの融点以上、前記樹脂B及び前記成分Cの混合物の融点未満の温度で、前記樹脂組成物を混練する工程を含む、前記〔1〕~〔3〕いずれか記載の再生用樹脂の製造方法。
〔5〕 さらに、前記再生用樹脂Aを分離する分離工程の前に、前記樹脂B及び前記成分Cの混合物の結晶化温度以上融点未満の温度で、前記樹脂組成物を混練する工程を含む、前記〔1〕~〔4〕いずれか記載の再生用樹脂の製造方法。
〔6〕 前記フィルター処理に供する樹脂組成物における、前記成分Cの含有量が、前記樹脂B100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下である、前記〔1〕~〔5〕いずれか記載の再生用樹脂の製造方法。
〔7〕 前記フィルター処理に供する樹脂組成物における前記成分Cの含有量が、0.1質量%以上10質量%以下である、前記〔1〕~〔6〕いずれか記載の再生用樹脂の製造方法。
〔8〕 前記樹脂Bにおけるポリエステル樹脂Pの含有量が、10質量%以上である、前記〔1〕~〔7〕いずれか記載の再生用樹脂の製造方法。
〔9〕 前記樹脂Bにおけるポリエステル樹脂Pの含有量が、90質量%以下である、前記〔1〕~〔8〕いずれか記載の再生用樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法により、2種以上の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物から、再生用樹脂を高純度で分離することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、熱可塑性樹脂である再生用樹脂A、ポリエステル樹脂Pを含む樹脂B、及び成分Cを含有する樹脂組成物をフィルター処理に供して、再生用樹脂Aを分離する分離工程を含む再生用樹脂の製造方法であり、成分Cとして、樹脂Bに含まれるポリエステル樹脂Pと混合すると、得られる混合物に対する再生用樹脂Aの接触角を、該ポリエステル樹脂Pに対する前記再生用樹脂Aの接触角より増大させる化合物を用いる点に大きな特徴を有する。再生用樹脂Aとポリエステル樹脂Pを含む樹脂Bを含有する組成物を、さらに、上記成分Cと混合することで、界面張力差を利用して樹脂Bに含まれるポリエステル樹脂Pの粒子を粗大化させることができる。
【0010】
さらに、樹脂組成物をフィルターにかける際に、樹脂組成物の温度を再生用樹脂Aの融点以上、樹脂Bと成分Cの混合物の融点未満にすることで、再生用樹脂Aは溶融状態に、樹脂Bと成分Cは粒子状の固体状態となり、再生用樹脂Aを樹脂Bから効率よく分離することができる。
【0011】
本発明において、再生用樹脂Aは熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、ビニルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂等が挙げられる。
【0012】
前記熱可塑性樹脂のなかで、本発明の製造方法により分離する再生用樹脂Aとしては、一般的に包装材料の主原料として用いられることが多く、再生利用に対する需要が高いポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂がより好ましく、ポリオレフィン樹脂の中では比較的融点が低いポリエチレン樹脂がさらに好ましく、低密度ポリエチレンがさらに好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンがさらに好ましい。
【0013】
再生用樹脂Aの融点は、分離工程の生産性の観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上であり、そして、樹脂Bとの融点差の観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、さらに好ましくは160℃以下、さらに好ましくは140℃以下である。
【0014】
フィルター処理に供する樹脂組成物における再生用樹脂Aの含有量は、分離工程の歩留まり及び分離後の再生用樹脂の純度の向上の観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上であり、そして、易分離性の観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
【0015】
樹脂Bは、再生用樹脂を高純度で分離する観点から、ポリエステル樹脂Pを含有する。
【0016】
ポリエステル樹脂Pとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等が挙げられる。
【0017】
樹脂Bにおけるポリエステル樹脂Pの含有量は、成分Cの添加により、樹脂Bに含まれるポリエステル樹脂Pの粒子を粗大化させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、そして、再生用樹脂を高純度で分離する観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0018】
樹脂Bの融点は、再生用樹脂Aとの融点差の観点から、好ましくは200℃以上、より好ましくは210℃以上、さらに好ましくは220℃以上であり、そして、溶融混練時における再生用樹脂Aの劣化抑制の観点から、好ましくは300℃以下、より好ましくは290℃以下、さらに好ましくは280℃以下である。樹脂Bが2種以上の樹脂からなる場合は、それぞれの樹脂が上記融点を有することが好ましい。
【0019】
再生用樹脂Aと樹脂Bの融点の差は、分離工程の生産性及び分離後の再生用樹脂の純度の向上の観点から、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは60℃以上、さらに好ましくは80℃以上であり、そして、溶融混練時における再生用樹脂Aの劣化抑制の観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、さらに好ましくは160℃以下、さらに好ましくは140℃以下、さらに好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下である。樹脂Bが2種以上の樹脂からなる場合は、最も融点の低い樹脂と再生用樹脂Aの融点の差が上記範囲であることが好ましい。
【0020】
フィルター処理に供する樹脂組成物における樹脂Bの含有量は、易分離性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、そして、分離工程の歩留まり及び分離後の再生用樹脂の純度の向上の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。
【0021】
また、フィルター処理に供する樹脂組成物における樹脂Bの含有量は、易分離性の観点から、再生用樹脂A100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上であり、そして、分離工程の歩留まり及び分離後の再生用樹脂の純度の向上の観点から、好ましくは100質量部以下、より好ましくは60質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。
【0022】
成分Cは、ポリエステル樹脂Pと混合すると、得られる混合物に対する再生用樹脂Aの接触角を、ポリエステル樹脂Pに対する再生用樹脂Aの接触角より増大させる化合物である。
【0023】
ポリエステル樹脂Pに対する再生用樹脂Aの接触角をCA1、成分Cとポリエステル樹脂Pの混合物に対する再生用樹脂Aの接触角をCA2とすると、CA1とCA2の差が大きいほど、界面張力差が大きく、ポリエステル樹脂Bの粒子を粗大化させる効果が高い。かかる観点から、CA1とCA2の差は、好ましくは1°以上、より好ましくは3°以上、さらに好ましくは5°以上であり、そして、好ましくは30°以下、より好ましくは28°以下、さらに好ましくは25°以下である。本明細書において、ポリエステル樹脂P又は成分Cとポリエステル樹脂Pの混合物に対する再生用樹脂の接触角は、シート状に成形したポリエステル樹脂P又は成分Cとポリエステル樹脂Pの混合物に、再生用樹脂を滴下して測定する。また、成分Cとポリエステル樹脂Pの混合物とは、両者が溶融状態で均一に混ざり合った後、固化した状態のものであり、両者の一部が反応した反応物を含むもの及び全部が反応した反応物も混合物に含める。
【0024】
成分Cは、ポリエステル樹脂Pと反応し得る官能基を有する化合物であることが好ましい。かかる官能基としては、エポキシ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、酸無水物基等が挙げられ、これらのなかでは、再生樹脂を高純度で分離する観点から、エポキシ基又はカルボジイミド基が好ましく、エポキシ基がより好ましい。
これら官能基を有する化合物として、再生樹脂を高純度で分離する観点から、エポキシ基を含有する化合物、カルボジイミド基を含有する化合物が好ましく、グリシジルメタクリレートの共重合体、モノ又はジカルボジイミド化合物、ポリカルボジイミド化合物がより好ましく、グリシジルメタクリレートの共重合体、モノカルボジイミド化合物、芳香族ポリカルボジイミド化合物がより好ましく、グリシジルメタクリレートの共重合体がさらに好ましい。
【0025】
エポキシ基を有する化合物としては、ポリ(スチレン-メチルメタクリレート-グリシジルメタクリレート)、ポリ(スチレン-グリシジルメタクリレート)等のグリシジルメタクリレートの共重合体が挙げられる。
【0026】
カルボジイミド基を有する化合物としては、ジイソプロピルカルボジイミド、ジオクチルデシルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、ジ-2,6-ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N-トルイル-N’-フェニルカルボジイミド、ジ-p-ニトロフェニルカルボジイミド、ジ-p-アミノフェニルカルボジイミド、ジ-p-ヒドロキシフェニルカルボジイミド、ジ-p-クロロフェニルカルボジイミド、ジ-p-メトキシフェニルカルボジイミド、ジ-3,4-ジクロロフェニルカルボジイミド、ジ-2,5-ジクロロフェニルカルボジイミド、ジ-o-クロロフェニルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジ-o-トルイルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジシクロヘキシルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジ-p-クロロフェニルカルボジイミド、エチレン-ビス-ジフェニルカルボジイミド等のモノ又はジカルボジイミド化合物;及びポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,5’-ジメチル-4,4’-ビフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(3,5’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(1,3-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1-メチル-3,5-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5-トリエチルフェニレンカルボジイミド)及びポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)等のポリカルボジイミド化合物等が挙げられる。
【0027】
成分Cは、再生用樹脂Aと相溶性の低い化合物が好ましく、再生用樹脂Aと反応しない化合物がより好ましい。例えば、再生用樹脂Aがポリオレフィン樹脂の場合、ポリオレフィン鎖を有していない化合物が好ましい。
【0028】
成分Cが高分子化合物である場合の重量平均分子量は、成分Cとポリエステル樹脂Pの混合物に対する再生用樹脂Aの接触角を増大させ、再生樹脂を高純度で分離する観点から、好ましくは100以上、より好ましくは1000以上、さらに好ましくは3000以上であり、そして、好ましくは100000以下、より好ましくは20000以下、さらに好ましくは10000以下である。
【0029】
成分Cの官能基当量は、成分Cとポリエステル樹脂Pの混合物に対する再生用樹脂Aの接触角を増大させ、再生樹脂を高純度で分離する観点から、好ましくは10g/mol以上、より好ましくは100g/mol以上、さらに好ましくは200g/mol以上であり、そして、好ましくは5000g/mol以下、より好ましくは1000g/mol以下、さらに好ましくは800g/mol以下、さらに好ましくは600g/mol以下、さらに好ましくは400g/mol以下である。
【0030】
フィルター処理に供する樹脂組成物における成分Cの含有量は、成分Cとポリエステル樹脂Pの混合物に対する再生用樹脂Aの接触角を増大させ、再生樹脂を高純度で分離する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0031】
また、フィルター処理に供する樹脂組成物における成分Cの含有量は、成分Cとポリエステル樹脂Pの混合物に対する再生用樹脂Aの接触角を増大させ、再生樹脂を高純度で分離する観点から、樹脂B100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは12質量部以下である。
【0032】
樹脂組成物には、再生用樹脂A及び樹脂B以外の樹脂、例えば、熱硬化性樹脂、ラミネート剤等や、アルミニウム、酸化アルミナ、酸化ケイ素等の無機物、印刷用インク、顔料、他の添加剤等が含まれていてもよいが、再生用樹脂A、樹脂B、及び成分Cの合計含有量は、樹脂組成物中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。また、他の添加剤としては、可塑剤;結晶核剤;充填剤(無機充填剤、有機充填剤);加水分解抑制剤;難燃剤;酸化防止剤;炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;防曇剤;光安定剤;顔料;防カビ剤;抗菌剤;発泡剤;界面活性剤;でんぷん類、アルギン酸、セルロース繊維等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属粉末等の無機化合物;香料;流動調整剤;レベリング剤;導電剤;紫外線分散剤;消臭剤等が挙げられる。
【0033】
なお、本発明の製造方法に用いる樹脂組成物(成分Cを添加する前のもの)には、例えば、使用済みの詰め替え用パウチ、食品用レトルトパウチ、洗剤ボトル等を回収し、適宜、洗浄、乾燥、破砕等させたものを好適に用いることができる。回収された熱可塑性樹脂組成物は、本発明の製造方法にそのまま用いても、回収された熱可塑性樹脂組成物を溶融混練等の公知の方法によって成形された樹脂組成物を用いてもよい。
【0034】
本発明の製造方法は、再生用樹脂Aを分離する分離工程の前に、さらに、再生用樹脂Aの融点以上、樹脂Bと成分Cの混合物の融点未満の温度で、樹脂組成物を混練する工程Xを行うことが好ましい。
【0035】
工程Xでは、再生用樹脂Aの融点以上、樹脂Bと成分Cの混合物の融点未満の温度で前記樹脂組成物を混練することにより、分散相を形成する樹脂Bと成分Cの混合物と、再生用樹脂Aとの界面張力差が増大され、凝集が促進されやすい条件下で、前記樹脂組成物に剪断がかかることにより、分散相を形成する樹脂Bと成分Cの混合物の配向による結晶化が誘起され、さらに樹脂Bと成分Cの混合物が合一することにより、樹脂Bと成分Cの混合物の分散粒径の大きさが増大するものと考えられる。
【0036】
前記工程Xにおける混合(混練)温度は、分離工程の歩留まり及び分離後の再生用樹脂の純度の向上の観点から、好ましくは樹脂Bと成分Cの混合物の結晶化温度(TcBC)以上、より好ましくは(TcBC+5)℃以上、さらに好ましくは(TcBC+10)℃以上、さらに好ましくは(TcBC+30)℃以上であり、そして、好ましくは樹脂Bと成分Cの混合物の融点(MpBC)未満、より好ましくは(MpBC-5)℃以下、さらに好ましくは(MpBC-10)℃以下、さらに好ましくは(MpBC-20)℃以下である。
【0037】
工程Xの時間は、特に限定されないが、樹脂組成物が前記混練温度範囲内にある時間が、分離工程の歩留まり及び分離後の再生用樹脂の純度の向上の観点から、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上、さらに好ましくは50秒以上、さらに好ましくは1分以上であり、そして、好ましくは5分以下、より好ましくは4分以下となる時間が望ましい。
【0038】
樹脂Bと成分Cの混合物の結晶化温度は、分離工程の歩留まり及び分離後の再生用樹脂の純度の向上の観点から、好ましくは160℃以上、より好ましくは170℃以上、さらに好ましくは175℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは210℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。
【0039】
樹脂Bと成分Cの混合物の結晶化温度は、分離工程の歩留まり及び分離後の再生用樹脂の純度の向上の観点から、再生用樹脂Aの融点より高いことが好ましく、樹脂Bの結晶化温度と樹脂Aの融点との差は、好ましくは1℃以上、より好ましくは5℃以上、さらに好ましくは10℃以上、さらに好ましくは20℃以上、さらに好ましくは30℃以上、さらに好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。
【0040】
樹脂Bを一度溶融させる観点から、工程Xの前に、樹脂Bの融点よりも高い温度で溶融混練する工程X’を行うことが好ましい。
【0041】
前記溶融混練工程X’における混練温度は、樹脂Bを溶融させる観点から、樹脂Bの融点より、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは15℃以上高い温度が好ましく、樹脂Bの融点との差は、環境負荷低減の観点から、100℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、50℃以下がさらに好ましい。樹脂Bが2種以上の樹脂からなる場合は、最も融点の高い樹脂の融点との差が上記範囲であることが好ましい。
【0042】
工程X’及び工程Xは、一軸もしくは二軸の混練機、オープンロール型混練機等の連続式の混練機を用いて、一連の工程として実施することができる。
【0043】
工程Xの後、樹脂組成物がフィルター処理に適した温度であれば、そのままフィルター処理に供してもよい。または、工程Xの後(混練停止後)、樹脂組成物を等温保持した後に所定の温度に下げてからフィルター処理に供しても、混練温度の設定温度を途中で下げて、樹脂組成物の温度が所定の温度に下がるまで混練してからフィルター処理に供してもよいが、再生用樹脂をより高純度で分離する観点からは前者が好ましく、作業効率の観点からは後者が好ましい。
【0044】
フィルター処理に供する樹脂組成物の温度は、再生用樹脂Aの融点(MpA)以上であり、好ましくは(MpA+10)℃以上、より好ましくは(MpA+20)℃以上、さらに好ましくは(MpA+30)℃以上であり、そして、分離工程の歩留まり及び分離後の再生用樹脂の純度の向上の観点から、樹脂Bと成分Cの混合物の融点(MpBC)未満であり、好ましくは(MpBC-10)℃以下、より好ましくは(MpBC-20)℃以下、さらに好ましくは(MpBC-30)℃以下である。
【0045】
フィルターには、樹脂Bと成分Cの分散粒径に応じて、これらの通過を阻害する大きさの目開きのものを適宜選択する。
【0046】
フィルター処理は、例えば、混練機とダイスの間にフィルターを設置して行うことができるが、フィルターのスクリーンチェンジャーを備えた装置を用いて、連続して行うこともできる。スクリーンチェンジャーを備えた連続処理可能な装置としては、金属メッシュを用いたプレートタイプ、逆洗浄するバックフラッシュタイプ、平板又はドラム形状金属フィルターとスクレーパーを用いたレーザーフィルタータイプ等が挙げられる。
【0047】
フィルター処理により、フィルターを通過した再生用樹脂Aを、2種以上の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物から効率よく分離し、回収することができる。
【0048】
本発明の製造方法により分離した再生用樹脂Aは、公知の方法により、目的、用途に応じて適宜成形して、再利用することができる。成形体としては、フィルム、シート、繊維、フィラメント、射出成形体等が挙げられる。再生用樹脂を日用品に用いられるパウチの原料として使用するには、再生用樹脂の純度は、好ましくは85%以上、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは95%以上である。
【0049】
また、本発明の製造方法により、除去した成分Cは、本発明の製造方法を連続的に行うに際して、樹脂組成物と混合する樹脂として、再利用することもできる。
【0050】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の再生用樹脂の製造方法を開示する。
【0051】
[1] 再生用樹脂A、樹脂B及び成分Cを含有する樹脂組成物をフィルター処理に供して、該再生用樹脂Aを分離する分離工程を含む、再生用樹脂の製造方法であって、
前記再生用樹脂Aが熱可塑性樹脂であり、
前記樹脂Bがポリエステル樹脂Pを含有し、
前記成分Cが、該ポリエステル樹脂Pと混合すると、得られる混合物に対する前記再生用樹脂Aの接触角を、該ポリエステル樹脂Pに対する前記再生用樹脂Aの接触角より増大させる化合物であり、
前記フィルター処理に供する樹脂組成物の温度が、前記再生用樹脂Aの融点以上、前記樹脂Bと前記成分Cの混合物の融点未満である、
再生用樹脂の製造方法。
【0052】
[2] 前記成分Cが、ポリエステル樹脂Pと反応し得る官能基を有する化合物であり、好ましい官能基が、エポキシ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、酸無水物基である、前記[1]記載の再生用樹脂の製造方法。
[3] 前記ポリエステル樹脂Pと反応し得る官能基を有する化合物が、エポキシ基を含有する化合物又はカルボジイミド基を含有する化合物であり、好ましくはグリシジルメタクリレートの共重合体、モノ又はジカルボジイミド化合物又はポリカルボジイミド化合物であり、より好ましくはグリシジルメタクリレートの共重合体、モノカルボジイミド化合物、芳香族ポリカルボジイミド化合物であり、更に好ましくはグリシジルメタクリレートの共重合体である、前記[2]記載の再生用樹脂の製造方法。
[4] 前記成分Cが、ポリ(スチレン-メチルメタクリレート-グリシジルメタクリレート)、ポリ(スチレン-グリシジルメタクリレート)等のグリシジルメタクリレートの共重合体、ジイソプロピルカルボジイミド、ジオクチルデシルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、ジ-2,6-ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N-トルイル-N’-フェニルカルボジイミド、ジ-p-ニトロフェニルカルボジイミド、ジ-p-アミノフェニルカルボジイミド、ジ-p-ヒドロキシフェニルカルボジイミド、ジ-p-クロロフェニルカルボジイミド、ジ-p-メトキシフェニルカルボジイミド、ジ-3,4-ジクロロフェニルカルボジイミド、ジ-2,5-ジクロロフェニルカルボジイミド、ジ-o-クロロフェニルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジ-o-トルイルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジシクロヘキシルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジ-p-クロロフェニルカルボジイミド、エチレン-ビス-ジフェニルカルボジイミド等のモノ又はジカルボジイミド化合物;及びポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,5’-ジメチル-4,4’-ビフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(3,5’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(1,3-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1-メチル-3,5-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5-トリエチルフェニレンカルボジイミド)及びポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)等のポリカルボジイミド化合物である、前記[1]~[3]のいずれか1項に記載の再生用樹脂の製造方法。
[5]段落0029より 前記成分Cの官能基当量が、好ましくは10g/mol以上、より好ましくは100g/mol以上、さらに好ましくは200g/mol以上であり、一方、好ましくは5000g/mol以下、より好ましくは1000g/mol以下、さらに好ましくは800g/mol以下、さらに好ましくは600g/mol以下、さらに好ましくは400g/mol以下である、前記[1]~[4]のいずれか1項に記載の再生用樹脂の製造方法。
[6] 前記再生用樹脂がポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、ビニルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂である、前記[1]~[5]のいずれか1項に記載の再生用樹脂の製造方法。
[7] ポリエステル樹脂Pがポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)である、前記[1]~[6]のいずれか1項に記載の再生用樹脂の製造方法。
[8] さらに、前記再生用樹脂Aを分離する分離工程の前に、前記再生用樹脂Aの融点以上、前記樹脂B及び前記成分Cの混合物の融点未満の温度で、前記樹脂組成物を混練する工程Xを含み、前記工程Xにおける混合(混練)温度が好ましくは樹脂Bと成分Cの混合物の結晶化温度(TcBC)以上、より好ましくは(TcBC+5)℃以上、さらに好ましくは(TcBC+10)℃以上、さらに好ましくは(TcBC+30)℃以上であり、そして、好ましくは樹脂Bと成分Cの混合物の融点(MpBC)未満、より好ましくは(MpBC-5)℃以下、さらに好ましくは(MpBC-10)℃以下、さらに好ましくは(MpBC-20)℃以下であり、樹脂Bと成分Cの混合物の結晶化温度が好ましくは160℃以上、より好ましくは170℃以上、さらに好ましくは175℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは210℃以下、さらに好ましくは200℃以下である、前記[1]~[7]のいずれか1項に記載の再生用樹脂の製造方法。
[9] 工程Xの時間が、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上、さらに好ましくは50秒以上、さらに好ましくは1分以上であり、そして、好ましくは5分以下、より好ましくは4分以下である、前記[1]~[8]のいずれか1項に記載の再生用樹脂の製造方法。
[10] さらに、前記再生用樹脂Aを分離する分離工程の前に、前記再生用樹脂Aの融点以上、前記樹脂B及び前記成分Cの混合物の融点未満の温度で、前記樹脂組成物を混練する工程Xと、該工程Xの前に、樹脂Bの融点よりも高い温度で溶融混練する工程X’を行う、前記[1]~[9]のいずれか1項に記載の再生用樹脂の製造方法。
[11] 溶融混練工程X’における混練温度が、樹脂Bの融点より好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは15℃以上高い温度であり、そして好ましは100℃以下、より好ましは70℃以下、更に好ましくは50℃以下である、前記[1]~[10]のいずれか1項に記載の再生用樹脂の製造方法。
[12] 工程X’及び工程Xは、一軸もしくは二軸の混練機、オープンロール型混練機等の連続式の混練機を用いて、一連の工程として実施する、前記[1]~[11]のいずれか1項に記載の再生用樹脂の製造方法。
[13] さらに、前記再生用樹脂Aを分離する分離工程の前に、前記樹脂B及び前記成分Cの混合物の結晶化温度以上融点未満の温度で、前記樹脂組成物を混練する工程を含む、前記[1]~[12]のいずれか1項に記載の再生用樹脂の製造方法。
[14] 前記フィルター処理に供する樹脂組成物における、前記成分Cの含有量が、前記樹脂B100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは12質量部以下である、前記[1]~[13]のいずれか1項に記載の再生用樹脂の製造方法。
[15] 前記フィルター処理に供する樹脂組成物における前記成分Cの含有量が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である、前記[1]~[14]のいずれか1項に記載の再生用樹脂の製造方法。
[16] 前記樹脂Bにおけるポリエステル樹脂Pの含有量が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である、前記[1]~[15]のいずれか1項に記載の再生用樹脂の製造方法。
[17] 前記樹脂Bにおけるポリエステル樹脂Pの含有量が、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である、前記[1]~[15]のいずれか1項に記載の再生用樹脂の製造方法。
【実施例0053】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。なお、この実施例は、単なる本発明の例示であり、何ら限定を意味するものではない。特記しない限り、例中の「部」は質量部であり、「%」は質量%である。樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
【0054】
〔融点〕
示差走査熱量分析装置「DSC8500」(PerkinElmer社製)を用いて、スタンダードアルミパンに試料10mgを測り取り、25℃から280℃まで15℃/minで昇温し、吸熱ピークのピークトップを融点とする。
【0055】
〔結晶化温度〕
示差走査熱量分析装置「DSC8500」(PerkinElmer社製)を用いて、スタンダードアルミパンに試料10mgを測り取り、280℃から15℃まで15℃/minで降温し、発熱ピークのピークトップを結晶化温度とする。
【0056】
〔接触角〕
(1) 接触角1:ポリエステル樹脂に対する再生用樹脂の接触角
<全ての実施例及び比較例で共通>
シート状に成形したポリエステル樹脂に、再生用樹脂を滴下して、ポリエステル樹脂に対する再生用樹脂の接触角を測定する。ポリエステル樹脂及び再生用樹脂には、実施例及び比較例で用いた樹脂、即ち、ポリエステル樹脂にはポリエチレンテレフタレート(ユニチカ社製、MA-2103)を、再生用樹脂にはLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン、プライムポリマー社製、エボリューSP0510)をそれぞれ用いる。
(a) シートの作製
乾燥状態のポリエステル樹脂20gをプレス成形機(東洋精機製作所社製)で、200mm×200mm×0.4mmの金属製スペーサー及び金属板で挟み、オートプレスにて270℃に加熱し、0.5MPaで2分間、次いで20MPaで2分間溶融圧縮する。その後直ちにハンドプレスへ移し、20MPaで、150℃で10分間保持し、結晶化する。結晶化させた後、15℃、0.5MPaで1分間冷却し、シート状に成形する。
(b) 接触角の測定
得られたシートに、再生用樹脂を230℃庫内で滴下した際の接触角を、シェル付き温度可変接触角計(DMC-3、KYOWA製)を用いて撮影する。液滴接触後の接触角を測定間隔1分間で計測し、接触角が平衡に達した点を終点とする。撮影した画像から接触角をθ/2法で求める。なお、測定は2回実施し、平均値を求める。
【0057】
(2) 接触角2:ポリエステル樹脂と成分Cの混合物に対する再生用樹脂の接触角
<実施例1~11>
表1~3に記載のポリエステル樹脂(PET)と成分Cを、表1~3に示す質量比で混合し、二軸混練機(日本製鋼所社製、TEX28V(スクリュー径28mm、L/D=42))を用いて、吐出量1.5kg/h、回転数70r/min、270℃で溶融混練し、その後、放冷し、ポリエステル樹脂と成分Cの混合物を得る。
ポリエステル樹脂の代わりに得られた混合物を使用する以外は、前記(1)と同様にして該混合物のシートを作製し、ポリエステル樹脂と成分Cの混合物に対する再生用樹脂の接触角を測定する。
<実施例12>
ポリエステル樹脂としてポリエチレンテレフタレート(ユニチカ社製、MA-2103)を用い、ポリエステル樹脂9.0質量部と表4に記載の成分C0.6質量部を混合した以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂と成分Cの混合物を得、前記(1)と同様にして該混合物のシートを作製し、ポリエステル樹脂と成分Cの混合物に対する再生用樹脂の接触角を測定する。
【0058】
<実施例21~35、比較例33~35、参考例25~26>
表5~9に記載のポリエステル樹脂(PET)と成分Cを、表5~9に示す質量比で混合し、二軸混練機(日本製鋼所社製、TEX28V(スクリュー径28mm、L/D=42))を用いて、吐出量1.5kg/h、回転数70r/min、270℃で溶融混練し、その後、放冷し、ポリエステル樹脂と成分Cの混合物を得る。
ポリエステル樹脂の代わりに得られた混合物を使用する以外は、前記(1)と同様にして該混合物のシートを作製し、ポリエステル樹脂と成分Cの混合物に対する再生用樹脂の接触角を測定する。
【0059】
(3) 接触角3:ポリアミド樹脂に対する再生用樹脂の接触角
<参考例1、2>
ポリアミド樹脂として表1に記載のNy6を、再生用樹脂として表1に記載のLLDPEをそれぞれ用い、以下の方法により、シート状に成形したポリアミド樹脂に、再生用樹脂を滴下して、ポリアミド樹脂に対する再生用樹脂の接触角を測定する。
(a) シートの作製
乾燥状態のポリアミド樹脂20gをプレス成形機(東洋精機製作所社製)で、200mm×200mm×0.4mmの金属製スペーサー及び金属板で挟み、オートプレスにて240℃に加熱し、0.5MPaで2分間、次いで20MPaで2分間溶融圧縮する。その後直ちにハンドプレスへ移し、20MPaで、80℃で2分間保持し、結晶化する。結晶化させた後、15℃、0.5MPaで1分間冷却し、シート状に成形する。
(b) 接触角の測定
得られたシートを使用し、前記(1)と同様にして、ポリアミド樹脂に対する再生用樹脂の接触角を測定する。
【0060】
(4) 接触角4:ポリアミド樹脂と成分Cの混合物に対する再生用樹脂の接触角
<参考例2>
表1に記載のポリアミド樹脂(Ny6)と成分Cを、表1に示す質量比で混合し、前記(2)と同様にして、ポリアミド樹脂と成分Cの混合物を得る。
ポリアミド樹脂の代わりに得られた混合物を使用する以外は、前記(3)と同様にして該混合物のシートを作製し、ポリアミド樹脂と成分Cの混合物に対する再生用樹脂の接触角を測定する。
【0061】
実施例1~12、比較例1、2及び参考例1、2
〔溶融混練工程〕
表1~4に示す樹脂を混合し、二軸混練機(日本製鋼所社製、TEX28V(スクリュー径28mm、L/D=42))を用いて、吐出量1.5kg/h、回転数70r/min、表1~4に示す温度で溶融混練した。「前半の混練温度」(工程X’における混練温度)は、二軸混練機の上流から中間(二軸混練機の混練部の全長の半分)までの設定温度であり、「後半の混練温度」(工程Xにおける混練温度)は、二軸混練機の中間から下流の設定温度である。樹脂組成物の二軸混練機内での滞留時間は、480秒であった。
【0062】
〔分離工程〕
二軸混練機とダイスの間に、80メッシュの目開きの金属メッシュを設置し、樹脂組成物から再生用樹脂を分離した。なお、金属メッシュは補強のため、60メッシュ/80メッシュ/60メッシュの3枚の金属メッシュを順次重ねて設置した。分離工程開始後2分経過前に、金属メッシュが目詰まりして樹脂圧力が5MPaを超えた場合は、その時点で分離を停止し、分離開始から分離停止までに分離された再生用樹脂を評価した。分離工程開始後2分経過前に目詰まりを起こさず、樹脂圧力が5MPaを超えない場合、分離開始から分離開始後2分経過までに分離された再生樹脂を評価した。
【0063】
以下の方法により、分離した樹脂組成物中の再生用樹脂の純度、及び純度増加率を測定した。結果を表1~4に示す。
【0064】
〔分離した樹脂組成物中の再生用樹脂の純度〕
分離後の樹脂組成物を、ヘキサフルオロ-2-プロパノールに1時間浸漬させて、分離除去する樹脂を溶出させ、溶出前後の質量変化から、下記式により分離した樹脂組成物中の再生用樹脂の純度を算出した。
純度(%)=溶出後の質量(g)/溶出前の質量(g)×100
【0065】
〔純度増加率〕
下記式により、再生用樹脂の純度増加率を算出した。
純度の増加率(%)=(分離した樹脂組成物中の再生用樹脂の純度(%)-溶融混練工程での樹脂組成物中の再生用樹脂の濃度(%))/溶融混練工程での樹脂組成物中の再生用樹脂の濃度(%)×100
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
以上の結果より、比較例1、2と対比して、実施例1~12では、所定の特性を有する成分Cを配合することで、ポリエステル樹脂を含む樹脂組成物から、高純度の再生用樹脂が得られることが分かる。
これに対し、参考例1と2の対比から、ポリエステル樹脂を含まない組成物に成分Cを配合しても、得られる再生用樹脂の純度は変わらないことから、成分Cを配合する効果は、ポリエステル樹脂からの再生用樹脂の分離において奏されるものであることが分かる。
【0071】
実施例21~24
〔溶融混練工程〕
表5~表6に示す樹脂を混合し、二軸混練機(芝浦機械社製、TEM41SS(スクリュー径41mm、L/D=60))を用いて、吐出量75kg/h、回転数230r/min、表5~表6に示す温度で溶融混練した。「前半の混練温度」(工程X’における混練温度)は、二軸混練機の上流から中間(二軸混練機の混練部の全長の半分)までの設定温度であり、「後半の混練温度」(工程Xにおける混練温度)は、二軸混練機の中間から下流の設定温度である。樹脂組成物の二軸混練機内での滞留時間は、60秒であった。
【0072】
〔分離工程〕
二軸混練機とダイスの間に、レーザーフィルター(FUKURO社製、LF-400-W-G2-R)を設置し、樹脂組成物から再生用樹脂を分離した。混練機の設定温度、用いたフィルターの目開き、フィルターの設定温度は表5~表6に示すとおりとした。
ここで、実施例22、24は、それぞれ実施例21、23で得られた再生用樹脂を原料として、再度、溶融混練工程と分離工程を実施した。
【0073】
分離した樹脂組成物中の再生用樹脂の純度、及び純度増加率の測定方法は上記と同じである。結果を表5~表6に示す。
【0074】
【0075】
【0076】
参考例25~26
〔溶融混練工程〕
表7に示す樹脂を混合し、二軸混練機(芝浦機械社製、TEM41SS(スクリュー径41mm、L/D=60))を用いて、吐出量36kg/h、回転数200r/min、表7に示す温度で溶融混練した。「前半の混練温度」(工程X’における混練温度)は、二軸混練機の上流から中間(二軸混練機の混練部の全長の半分)までの設定温度であり、「後半の混練温度」(工程Xにおける混練温度)は、二軸混練機の中間から下流の設定温度である。
【0077】
〔分離工程〕
二軸混練機とダイスの間に、レーザーフィルター(FUKURO社製、LF-400-W-G2-R)を設置し、樹脂組成物から再生用樹脂を分離した。混練機の設定温度、用いたフィルターの目開き、フィルターの設定温度は表7に示すとおりとした。
【0078】
実施例25~26
〔溶融混練工程〕
実施例25及び26では、それぞれ参考例25及び26で得られた再生用樹脂を原料の樹脂として、再度、溶融混練工程と分離工程を実施した。
即ち、表7に示す樹脂を混合し、二軸混練機(芝浦機械社製、TEM41SS(スクリュー径41mm、L/D=60))を用いて、吐出量75kg/h、回転数230r/min、表7に示す温度で溶融混練した。「前半の混練温度」(工程X’における混練温度)は、二軸混練機の上流から中間(二軸混練機の混練部の全長の半分)までの設定温度であり、「後半の混練温度」(工程Xにおける混練温度)は、二軸混練機の中間から下流の設定温度である。樹脂組成物の二軸混練機内での滞留時間は、60秒であった。
【0079】
〔分離工程〕
二軸混練機とダイスの間に、レーザーフィルター(FUKURO社製、LF-400-W-G2-R)を設置し、樹脂組成物から再生用樹脂を分離した。混練機の設定温度、用いたフィルターの目開き、フィルターの設定温度は表7に示すとおりとした。
【0080】
分離した樹脂組成物中の再生用樹脂の純度、及び純度増加率の測定方法は上記と同じである。結果を表7に示す。
【0081】
【0082】
実施例27~33及び比較例33
〔溶融混練工程〕
表8に示す樹脂を混合し、二軸混練機(芝浦機械社製、TEM41SS(スクリュー径41mm、L/D=60))を用いて、吐出量36kg/h、回転数200r/min、表8に示す温度で溶融混練した。「前半の混練温度」(工程X’における混練温度)は、二軸混練機の上流から中間(二軸混練機の混練部の全長の半分)までの設定温度であり、「後半の混練温度」(工程Xにおける混練温度)は、二軸混練機の中間から下流の設定温度である。
【0083】
〔分離工程〕
二軸混練機とダイスの間に、レーザーフィルター(FUKURO社製、LF-400-W-G2-R)を設置し、樹脂組成物から再生用樹脂を分離した。混練機の設定温度、用いたフィルターの目開き、フィルターの設定温度は表8に示すとおりとした。
【0084】
【0085】
実施例34~35及び比較例34~35
〔溶融混練工程〕
表9に示す樹脂を混合し、二軸混練機(芝浦機械社製、TEM41SS(スクリュー径41mm、L/D=60))を用いて、吐出量36kg/h、回転数200r/min、表9に示す温度で溶融混練した。「前半の混練温度」(工程X’における混練温度)は、二軸混練機の上流から中間(二軸混練機の混練部の全長の半分)までの設定温度であり、「後半の混練温度」(工程Xにおける混練温度)は、二軸混練機の中間から下流の設定温度である。
【0086】
〔分離工程〕
二軸混練機とダイスの間に、レーザーフィルター(FUKURO社製、LF-400-W-G2-R)を設置し、樹脂組成物から再生用樹脂を分離した。混練機の設定温度、用いたフィルターの目開き、フィルターの設定温度は表9に示すとおりとした。
【0087】
【0088】
実施例、比較例及び参考例で用いた樹脂の詳細は以下の通りである。
・LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン、プライムポリマー社製、エボリューSP0510、融点:120℃
・LLDPE Evolue SP2020:直鎖状低密度ポリエチレン、プライムポリマー社製、エボリューSP2020、融点:112℃
・HDPE:高密度ポリエチレン、プライムポリマー社製、ハイゼックス2110JH、融点:129℃
・h-PP:ホモポリプロピレン、プライムポリマー社製、F113G、融点:162℃
・r-PP:ランダムポリプロピレン、プライムポリマー社製、F-730NV、融点:140℃
・PET:ポリエチレンテレフタレート、ユニチカ社製、MA-2103、融点:255℃、結晶化温度:221℃
・Ny6:ナイロン6(ポリアミド6)、宇部興産社製、UBE Nylon1022B、融点:225℃、結晶化温度:188℃
・リサイクル樹脂:LLDPE(79質量%)、Ny6(10質量%)、PET(9質量%)及びその他の成分(2質量%)からなるリサイクル樹脂
・Joncryl ADR 4468:ポリ(スチレン-メチルメタクリレート-グリシジルメタクリレート)、BASF社製、重量平均分子量7250、官能基当量310g/mol
・Arufon UG 4070:ポリ(スチレン-メチルメタクリレート-グリシジルメタクリレート)、東亜合成社製、重量平均分子量9700、官能基当量714g/mol
・Stabaxol P:芳香族ポリカルボジイミド化合物、ランクセス社製、重量平均分子量3500、官能基当量241g/mol
・Carbodilite HMV-15CA:ポリカルボジイミド、日清紡ケミカル社製、重量平均分子量5200、官能基当量262g/mol
・Stabaxol I powder:モノカルボジイミド化合物、ランクセス社製、官能基当量262g/mol
本発明の方法により分離することができる再生用樹脂は、シャンプー、洗剤、化粧品等の日用品、食品等の各種分野で用いられるボトル容器、詰め替え用パウチ等の包装材料として、好適に用いられるものである。