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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093022
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 17/06 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
F25D17/06 313
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209116
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河井 良二
(72)【発明者】
【氏名】岡留 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】田口 翔一
(72)【発明者】
【氏名】服部 圭介
(72)【発明者】
【氏名】山口 和也
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 真也
【テーマコード(参考)】
3L345
【Fターム(参考)】
3L345AA02
3L345AA14
3L345AA24
3L345BB02
3L345CC01
3L345DD18
3L345DD19
3L345DD21
3L345DD33
3L345DD42
3L345DD65
3L345DD70
3L345EE13
3L345EE46
3L345EE53
3L345FF13
3L345FF41
3L345FF44
3L345KK01
3L345KK03
3L345KK04
3L345KK05
(57)【要約】
【課題】扉と冷蔵庫本体の間に隙間が生じた場合においても庫内の良好な冷却保存状態を維持しやすくした冷蔵庫を提供する。
【解決手段】本発明の冷蔵庫は,貯蔵室を開閉する扉と,該扉の閉時に該扉が密着する仕切と,前記貯蔵室に配される容器と,冷却器と,該冷却器で生成した冷気を前記貯蔵室内に吐出する吐出口と,前記貯蔵室から前記冷却器に向けて冷気を通過させる戻り口と,前記貯蔵室に送風する送風機と,を備え,前記扉と前記仕切の間に隙間が生じた状態において,前記送風機の駆動によって、前記容器下方の圧力を下げ、庫外の静圧より前記容器下方の静圧を低くする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室を開閉する扉と,該扉の閉時に該扉が密着する仕切と,前記貯蔵室に配される容器と,冷却器と,該冷却器で生成した冷気を前記貯蔵室内に吐出する吐出口と,前記貯蔵室から前記冷却器に向けて冷気を通過させる戻り口と,前記貯蔵室に送風する送風機と,を備え,前記扉と前記仕切の間に隙間が生じた状態において,前記送風機の駆動によって,前記容器下方の圧力を下げ,庫外の静圧より前記容器下方の静圧を低くする冷蔵庫。
【請求項2】
前記貯蔵室の上方にあって前記仕切の後方で前記貯蔵室と連通する空間を形成する第二貯蔵室を開閉する第二扉と,前記冷却器で生成した冷気を前記第二貯蔵室に吐出する第二吐出口と,をさらに備え,前記戻り口は,前記第二貯蔵室からの冷気も通過させ,前記送風機は,前記第二貯蔵室へも送風することを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記扉が前記仕切と所定値以上離間した状態であることを検知する扉センサと,前記扉の開放状態を報知する報知手段を備え,前記扉が前記仕切と所定値以上離間した状態が所定時間以上継続された場合に,前記報知手段が報知することを特徴とする請求項1又は2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記容器の後縁と,前記貯蔵室の背面形成部材と,の間に,前記容器上方から前記容器下方に向けて流れる気流に抵抗を付与する背面抵抗流路が形成されることを特徴とする請求項3に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記扉と前記仕切の間に隙間が生じた状態において,前記容器の後縁の背面と前記背面形成部材の前方壁面の前面との間に形成される隙間は,前記扉と前記仕切が密着した状態において,前記容器の後縁の背面と前記背面形成部材の前方壁面の前面との間に形成される隙間より大きいことを特徴とする請求項4に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記背面形成部材は,略水平部を備え,前記扉が前記仕切と前記所定値離間した状態において,前記略水平部の前端より,前記容器の後縁の上面の後端が後方に位置することを特徴とする請求項5に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記容器の前縁と,前記扉と,の間に,前記容器上方から前記容器下方に向けて流れる気流に抵抗を付与する前面抵抗流路が形成されることを特徴とする請求項3に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記容器の側面には,前記容器側方を流れる気流を淀ませる側面抵抗流路が形成されることを特徴とする請求項3に記載の冷蔵庫。
【請求項9】
前記扉と前記仕切の間に隙間が生じた状態を推定する扉隙推定手段を備え,前記扉隙推定手段によって隙間が生じていると判定された場合に,前記送風機の回転速度を上昇させることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷蔵庫。
【請求項10】
前記扉と前記仕切の間に隙間が生じた状態において,前記隙間のうち,下部の隙間から庫内の空気が流出する状態となることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷蔵庫。
【請求項11】
前記扉と前記仕切の間に隙間が生じた状態において,前記送風機は,前記扉と前記仕切が密着した状態のときの回転速度で駆動することを特徴とする請求項10に記載の冷蔵庫。
【請求項12】
前記扉と前記仕切の間に隙間が生じた状態において,前記隙間のうち,上部の隙間から庫内の空気が流出する状態となることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷蔵庫。
【請求項13】
前記扉と前記仕切の間に隙間が生じた状態において,前記送風機の停止時に下部の隙間から流出する風量と同等の風量が上部の隙間から流出する状態となるときの前記送風機の回転速度と比べて,低い回転速度で前記送風機が駆動することを特徴とする請求項12に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として,例えば特開2014-70743号公報(特許文献1)がある。特許文献1には,引き出し容器の側外面及び底面と,冷却室の側壁及び床面との間隙に対流制御部を設け,冷気が対流制御部より前面側に対流することを抑制し,冷却室の扉近傍に空気層を発生させ,空気層を断熱層とすることで,扉近傍の断熱性を向上し,冷却室扉周辺から冷却室内への熱侵入を低減する冷蔵庫が開示されている(特許文献1の要約,図3図4等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-70743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では,冷凍室等の引き出し容器を備えた冷却室の扉近傍に,冷気が対流しない空気層を発生させることで,扉近傍の断熱性能が向上するとしている。しかしながら,ユーザーが扉を操作した際に扉と冷蔵庫本体の間に食品が挟まる等の要因によって隙間が生じて,次にユーザーが扉の開閉操作を行って隙間が解消するまでの比較的長時間にわたって冷却運転が行われると,良好な冷却保存状態を維持することが困難となる場合があった。
【0005】
本発明は,上記課題に鑑みてなされたものであり,扉と冷蔵庫本体の間に隙間が生じた状態で長時間冷却運転を行った場合においても,庫内の良好な冷却保存状態を維持しやすくした冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために,例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本発明の冷蔵庫は,上記課題を解決する手段を複数含んでいるが,その一例を挙げるならば,貯蔵室を開閉する扉と,該扉の閉時に該扉が密着する仕切と,前記貯蔵室に配される容器と,冷却器と,該冷却器で生成した冷気を前記貯蔵室内に吐出する吐出口と,前記貯蔵室から前記冷却器に向けて冷気を通過させる戻り口と,前記貯蔵室に送風する送風機と,を備え,前記扉と前記仕切の間に隙間が生じた状態において,前記送風機の駆動によって、前記容器下方の圧力を下げ、庫外の静圧より前記容器下方の静圧を低くすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば,扉と冷蔵庫本体の間に隙間が生じた状態で冷却運転を行った場合においても,庫内の良好な冷却保存状態を長時間維持しやすくした冷蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例に係る冷蔵庫の正面図
図2】実施例に係る冷蔵庫の縦断面図
図3】実施例に係る冷蔵庫の庫内の構成を示す正面図
図4】実施例に係る冷蔵庫の冷凍サイクルの構成図
図5】実施例に係る冷蔵庫の冷凍室近傍を拡大した断面図
図6】実施例に係る冷蔵庫の扉と容器の構成を表す斜視図
図7】実施例に係る冷蔵庫の制御を表すフローチャート
図8】実施例に係る冷蔵庫の送風機回転速度と扉隙間の流量の関係を表す図
図9】冷蔵庫の扉に隙間が生じた状態における流れを表す断面模式図(比較例)
図10】冷蔵庫の扉に隙間が生じた状態における流れを表す断面模式図(比較例)
図11】実施例に係る冷蔵庫の扉に隙間が生じた状態における流れを表す断面模式図
図12】実施例に係る冷蔵庫の扉に隙間が生じた状態における流れの別の態様を表す断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下,本発明に係る冷蔵庫の実施例について説明する。
【0010】
まず,実施例に係る冷蔵庫の基本構成を図1図4を参照しながら説明する。図1は実施例に係る冷蔵庫の正面図,図2図1のA-A断面図,図3図2のB-B断面図,図4は実施例に係る冷蔵庫の冷凍サイクルの構成を表す概略図である。
【0011】
図1に示すように,冷蔵庫1の冷蔵庫本体10は,前方に開口しており,上方から冷蔵室2,左右に並設された製氷室3と上段冷凍室4,下段冷凍室5,野菜室6の順に貯蔵室を形成している。以下では,製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5を,まとめて冷凍室7と呼ぶことがある。
【0012】
冷蔵室2の前方の開口は,左右に分割された回転式の冷蔵室扉210a,210bにより開閉され,製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5,野菜室6の前方の開口は,引き出し式の製氷室扉310,上段冷凍室扉410,下段冷凍室扉510,野菜室扉610によってそれぞれ開閉される。冷蔵室扉210a,210bの庫内側外周には,シール部材として冷蔵室パッキン95a,95b,製氷室扉310,上段冷凍室扉410,下段冷凍室扉510の庫内側外周には,シール部材として冷凍室パッキン96a,96b,96c,野菜室6の扉である野菜室扉610の庫内側外周には,シール部材として野菜室パッキン97をそれぞれ備えている。各パッキンは,内部に図示しないマグネットを備えており,各扉を閉じた際に,冷蔵庫本体10の前縁の鋼板部にマグネットが吸着することで庫内外の空気の流通を抑制するようにしている。冷蔵室パッキン95a,95bの周長は2551mmであり,全周長は5102mmである。冷凍室パッキン96a,96b,96cの周長は,それぞれ1391mm,1391mm,2477mmであり,全周長は5259mmである。また,野菜室パッキン97の周長は2497mmである。
【0013】
冷蔵庫1の冷蔵庫本体10と冷蔵室扉210a,210bは冷蔵室2上部及び下部に設けられた扉ヒンジ(図示せず)により固定され,上部の扉ヒンジは扉ヒンジカバー16で覆われている。また,扉210aには庫内の温度設定の操作を行う操作部99を設けている。
【0014】
冷蔵室2の温度と,冷凍室7の温度は,操作部99を介してユーザーが維持温度レベルを選択できるようになっている。具体的には,冷蔵室2と冷凍室7の維持温度レベルの設定はそれぞれ「強」「中」「弱」の3段階に設定できるようになっており,冷蔵室2は「強」では約2℃,「中」では約4℃,「弱」では約6℃に維持され,冷凍室7は「強」では約-22℃,「中」では約-20℃,「弱」では約-18℃に維持される。なお,野菜室6は平均的に7℃程度に維持される。また,冷蔵室2の下部には,冷蔵室2の温度帯より低めの約-1℃に維持される低温室35を設けている。
【0015】
冷蔵庫1の幅Wは880mm(図1参照),奥行きDは650mm(図2参照),高さHは1839mm(図1参照)であり,冷蔵庫本体10の開口部における冷蔵室高さ寸法Hは787mm,冷凍室高さ寸法Hは482mm,野菜室高さ寸法Hは334mmである(図2参照)。JISC9801-3:2015に基づく全定格内容積は665Lであり,内訳は冷蔵室が352Lであり全定格内容積の52.9%,冷凍室は192Lであり28.9%(全定格内容積の28%以上),野菜室は121Lであり全定格内容積の18.2%である。
【0016】
図2に示すように,外箱10aと内箱10bとの間に発泡断熱材(例えば発泡ウレタン)を充填して形成される冷蔵庫本体10により,冷蔵庫1の庫外と庫内は隔てられている。冷蔵庫本体10の天井面,背面,底面,両側面と下段冷凍室扉510には,発泡断熱材に加えて真空断熱材25を実装している。冷蔵室2と,上段冷凍室4及び製氷室3は断熱仕切壁28によって隔てられ,下段冷凍室5と野菜室6は断熱仕切壁29によって隔てられている。
【0017】
また,製氷室3,上段冷凍室4及び下段冷凍室5の各貯蔵室の前面側には,製氷室扉310と上段冷凍室扉410の下面と,下段冷凍室扉510の上面の間に生じる隙間を介した庫内外の空気の流通を防ぐための断熱仕切壁30と,製氷室扉310の右側面と上段冷凍室扉410の左側面の間に生じる隙間を介した庫内外の空気の流通を防ぐための断熱仕切壁31(図1参照)を備えている。また,冷蔵室扉210aの右端庫内側には,冷蔵室扉210aと210bを閉じた状態において扉210aと210bの間に生じる隙間を介した庫内外の空気の流通を防ぐための断熱仕切壁36が回動可能に取り付けられている(図1参照)。
冷蔵室2の扉210a,210bの庫内側には上方に開口した複数の扉ポケット33a,33b,33cと,複数の棚34a,34b,34c,34dを設け,複数の貯蔵スペースに区画されている。なお,最上部の扉ポケット33aの開口高さ(図2中の破線)は最上段の棚34aよりも高い位置に設けられている。冷凍室7及び野菜室6には,それぞれ扉310,410,510,610と一体に引き出される製氷室容器301,上段冷凍室容器401,下段冷凍室中段容器502,下段冷凍室下段容器503,野菜室上段容器601,野菜室下段容器602を備えている。下段冷凍室5の上部に設置される下段冷凍室上段容器501は,内箱10bに成形された図示しないガイドレールに支持されており,下段冷凍室扉510が引き出された場合に,下段冷凍室扉510とともに引き出されずに,庫内に残されるようになっている。
【0018】
冷蔵庫1は,冷蔵室2の略背部に冷蔵用蒸発器室8aを備えており,冷蔵用蒸発器室8a内には,冷蔵用蒸発器14aを収納している。冷蔵用蒸発器14aの上方には冷蔵用ファン9aを備えている。また,冷蔵室2背部の幅方向の略中心には冷蔵室送風路11を備えており,冷蔵室送風路11の上部と中間部の左右に冷蔵室吐出口11aを備えている。冷蔵室吐出口11aから吹き出された冷却空気は,図2中に矢印で示すように棚34aの上方と棚34aと34bの間をそれぞれ前方に向かって流れて,棚34a,34b,34cと扉ポケット33a,33b,33cとの間の隙間を下方に向かい,棚34cと棚34dの間の空間の左後方に設けられた開口92(図3参照)を介して低温室35の後方の領域に至る。低温室35の後方の領域に至った流れは,冷蔵用蒸発器室8aの下部前面,下部左側面,下部右前面に設けられた冷蔵室戻り風路15a,15b,15c(図3参照)から冷蔵用蒸発器室8aに戻る。また,棚34cと棚34dの間の空間を流れた空気の一部は,棚34cと棚34dの間の空間の右後方に設けられた冷蔵室戻り風路15d(図3参照)から冷蔵用蒸発器室8aに戻る。
【0019】
冷凍室7の略背部には冷凍用蒸発器室8bを備えており,冷凍用蒸発器室8b内には,冷凍用蒸発器14bが収納されている。冷凍用蒸発器14bの上方には冷凍用ファン9bを備えている。また,冷凍室7の背部には冷凍室送風路12を備えており,冷凍用ファン9b(第二送風機)の前方の冷凍室送風路12には複数の冷凍室吐出口(主に上段冷凍室4または製氷室3に吐出する第一冷凍室吐出口12a,主に下段冷凍室5に吐出する第二冷凍室吐出口12b)を備えている。冷凍用蒸発器室8bの下部前方には冷凍室7に送られた空気が戻る冷凍室戻り風路17(図2及び図3参照)を備えている。
【0020】
野菜室6への風路となる野菜室送風路13は,冷凍室送風路12の右下方から分岐形成され,断熱仕切壁29を通過している。野菜室送風路13の出口となる野菜室吐出口13aは,野菜室6背部右上の断熱仕切壁29下面の高さと略一致するように設けられ,下方に開口している。野菜室送風路13には,野菜室6の冷却制御手段である野菜室ダンパ19を備えている(図3参照)。野菜室6と冷凍室7の間の断熱仕切壁29の左下部前方には,野菜室戻り口18aを備えており,断熱仕切壁29内を通過する野菜室戻り風路18を介して冷凍用蒸発器室8bの下部前方に設けられた野菜室戻り流出口18bに至る流路が形成されている。
【0021】
本実施例の冷蔵庫では,冷蔵用ファン9aは翼径が100mmの遠心ファン(後向きファン)であり,冷凍用ファン9bは翼径が110mmの軸流ファン(プロペラファン)である。遠心ファンは軸方向から吸込んだ空気を90度転向して径方向に吹き出す特性を有する。一方,軸流ファンは軸方向から吸込んだ空気を軸方向に吹き出す特性を有する。このため,軸方向に吸込んだ流れを90度転向させる風路では,遠心ファンが実装性に優れ,軸方向に吸込んだ流れを軸方向に吹き出す風路では軸流ファンが実装性に優れる。冷蔵用ファン9aは,前方から吸込んだ空気を,90度転向して上方の冷蔵室送風路11に吹き出すように実装されるため,遠心ファンである後向きファンを採用し,冷凍用ファン9bとしては,後方から吸込んだ空気を前方の冷凍室送風路12に吹き出すように実装されるため,軸流ファンであるプロペラファンを採用してスペース効率が高い冷蔵庫としている。
【0022】
図2及び図3に示すように,冷蔵室2,冷凍室7,野菜室6の庫内背面側には,冷蔵室温度センサ41,冷凍室温度センサ42,野菜室温度センサ43を備え,それぞれ冷蔵室2,冷凍室7,野菜室6の温度を検知している。また,冷蔵用蒸発器14aの上部には冷蔵用蒸発器温度センサ40a,冷凍用蒸発器14bの上部には冷凍用蒸発器温度センサ40bを備え,冷蔵用蒸発器14a,冷凍用蒸発器14bの温度を検知している。また,冷蔵庫1の天井部の扉ヒンジカバー16の内部には,外気(庫外空気)の温度,湿度を検知する外気温湿度センサ37を備えている。扉210a,210b,310,410,510,610は扉開閉状態を検知するための図示しないマグネットをそれぞれ備えており,各扉のマグネットと対向する断熱仕切壁28,29,30の前面には磁界を検知することで扉開閉状態を判別する図示しない磁気センサ(ホールIC)である扉センサをそれぞれ備えている。
【0023】
また,冷凍用蒸発器室8bの下部には,冷凍用蒸発器14bを加熱する除霜ヒータ21を備えている。除霜ヒータ21は,例えば50W~200Wの電気ヒータで,本実施例では150Wのラジアントヒータを設けている。冷凍用蒸発器14bの除霜時に発生した除霜水(融解水)は,冷凍用蒸発器室8bの下部に備えた樋23bに流下し,排水口22b,冷凍用排水管27bを介して冷蔵庫1の後方(背面側)下部に設けられた機械室39に至り,機械室39内に設置された圧縮機24の上部の蒸発皿32に排出される。
【0024】
また,冷蔵用蒸発器14aの除霜方法については後述するが,冷蔵用蒸発器14aの除霜時に発生した除霜水は,冷蔵用蒸発器室8aの下部に備えた樋23aに流下し,排水口22a,冷蔵用排水管27aを介して圧縮機24の上部に備えた蒸発皿32に排出される。
【0025】
機械室39内には,上述の圧縮機24,蒸発皿32とともに,フィンチューブ式熱交換器である庫外放熱器50a,庫外ファン26を備えている。庫外ファン26の駆動により圧縮機24,庫外放熱器50a,蒸発皿32に空気が流れ,圧縮機24と庫外放熱器50aからの放熱が促進され,省エネルギー性能を高めるとともに,蒸発皿32に通風することで,蒸発皿32に溜まった除霜水の蒸発を促進して溢水を抑制し,信頼性を高めている。
【0026】
図3に示すように,樋23aには,樋23aにおいて凍結した除霜水を融解させる樋ヒータ101を備えている。また,冷蔵用排水管27aには排水管上部ヒータ102及び排水管下部ヒータ103を備えている。なお,樋ヒータ101,排水管上部ヒータ102,排水管下部ヒータ103は,何れも除霜ヒータ21よりも容量が低いヒータであり,本実施例では樋ヒータ101を6W,排水管上部ヒータ102を3W,排水管下部ヒータ103を1Wとしている。
【0027】
ここで,冷蔵用ファン9aを駆動すると,冷蔵用蒸発器室8aの右上に設けられた冷蔵室戻り風路15bを介して,冷蔵室2からの戻り空気を樋23aに向けて下方に流し,樋23aを加熱して温度を上げるようにしている。これにより,樋23aにおいて凍結した除霜水を融解させる樋ヒータ101の加熱量を低減する効果が得られ,省エネルギー性能を高めることができる。
【0028】
また,排水管27a下部は,冷凍室7及び冷凍用蒸発器室8bよりも外箱10aに近接させている。これにより,排水管27aにおいて凍結した除霜水を融解させる排水管下部ヒータ103の加熱量を低減することができ,省エネルギー性能が高くなる。
【0029】
図4は,実施例1に係る冷蔵庫の冷凍サイクル(冷媒回路)である。本実施例の冷蔵庫1は,圧縮機24(押除量9.2cc),冷媒の放熱を行うフィンチューブ式熱交換器である庫外放熱器50aと,外箱10a(図2図3参照)の内面側に設けられる放熱配管である庫外放熱器50b,断熱仕切壁28,29,30の前縁部への結露を抑制する結露抑制配管50c(庫外放熱器50a,庫外放熱器50b,結露抑制配管50cを放熱手段と呼ぶ),冷媒流制御手段である三方弁52,冷媒を減圧させる減圧手段である冷蔵用キャピラリチューブ53a,冷凍用キャピラリチューブ53b,冷媒と庫内の空気を熱交換させて,庫内の熱を吸熱する冷蔵用蒸発器14a,及び,冷凍用蒸発器14bを備える。また,三方弁52の上流には,冷凍サイクル中の水分を除去するドライヤ51を備え,冷蔵用蒸発器14aの下流と,冷凍用蒸発器14bの下流には,それぞれ液冷媒が圧縮機24に流入するのを防止する気液分離器54a,54bをそれぞれ備えている。さらに気液分離器54bの下流には逆止弁56を備えている。これらの構成要素を冷媒配管により接続することで冷凍サイクルを構成している。また,冷媒には可燃性冷媒のイソブタンを用いており,冷媒量封入量は100g以下の95gとしている。
【0030】
三方弁52は,流出口52aと,流出口52bを備えており,流出口52aを開放状態,流出口52bを閉鎖状態として,冷蔵用キャピラリチューブ53a側に冷媒を流す状態1(冷蔵モード),流出口52aを閉鎖状態,流出口52bを開放状態として,冷凍用キャピラリチューブ53b側に冷媒を流す状態2(冷凍モード),及び,流出口52a,52bの何れも閉鎖状態とする状態3(全閉モード)を備えた冷媒流制御弁である。
【0031】
三方弁52が状態1(冷蔵モード)に制御されている場合,圧縮機24から吐出した冷媒は,庫外放熱器50a,庫外放熱器50b,結露抑制配管50cを流れて放熱し,ドライヤ51を介して三方弁52に至る。三方弁52は状態1(流出口52aが開放状態,流出口52bが閉鎖状態)となっているため,続いて,冷媒は冷蔵用キャピラリチューブ53aを流れて減圧され冷蔵用蒸発器14aに至り,冷蔵室2の戻り空気と熱交換する。冷蔵用蒸発器14aを出た冷媒は,気液分離器54aを通り,冷蔵用キャピラリチューブ53aとの接触部57aを流れることで冷蔵用キャピラリチューブ53a内を流れる冷媒と熱交換した後に圧縮機24に戻る。
【0032】
三方弁52が状態2(冷凍モード)に制御されている場合,圧縮機24から吐出した冷媒は,庫外放熱器50a,庫外放熱器50b,結露抑制配管50cを流れて放熱し,ドライヤ51を介して三方弁52に至る。三方弁52は状態2(流出口52aが閉鎖状態,流出口52bが開放状態)となっているため,続いて,冷媒は冷凍用キャピラリチューブ53bを流れて減圧されて低温化し,冷凍用蒸発器14bで,冷凍室7の戻り空気及び野菜室6の戻り空気(野菜室ダンパ19が開放状態の場合)と熱交換する。冷凍用蒸発器14bを出た冷媒は,気液分離器54bを通り,冷凍用キャピラリチューブ53bとの接触部57bを流れることで冷凍用キャピラリチューブ53b内を流れる冷媒と熱交換した後に圧縮機24に戻る。
【0033】
三方弁52が状態3(全閉モード)に制御されている場合,圧縮機24を駆動すると,冷蔵用キャピラリチューブ53a,冷凍用キャピラリチューブ53bから冷媒が供給されない状態となるため,冷蔵用蒸発器14a内の冷媒,または,冷凍用蒸発器14b内の冷媒を放熱手段側に回収することができる。
【0034】
本実施例の冷蔵庫は,三方弁52を状態1(冷蔵モード)に制御し,圧縮機24を駆動状態,冷蔵用ファン9aを駆動状態,冷凍用ファン9bを停止状態とすることで冷蔵室2を冷却する「冷蔵運転」,三方弁52を状態2(冷凍モード)に制御し,圧縮機24を駆動状態,野菜室ダンパ19を開放状態,冷蔵用ファン9aを駆動状態,または停止状態,冷凍用ファン9bを駆動状態とすることで冷凍室7と野菜室6を冷却する「冷凍野菜運転」,三方弁52を状態2(冷凍モード)に制御し,圧縮機24を駆動状態,野菜室ダンパ19を閉鎖状態,冷蔵用ファン9aを駆動状態または停止状態,冷凍用ファン9bを駆動状態とすることで冷凍室7を冷却する「冷凍運転」,三方弁52を状態3(全閉モード)に制御し,圧縮機24を駆動状態として,冷蔵用蒸発器14a内の冷媒,または,冷凍用蒸発器14b内の冷媒を放熱手段側に回収する「冷媒回収運転」,三方弁52を状態3(全閉モード)として圧縮機24を停止状態,冷蔵用ファン9aを停止状態,冷凍用ファン9bを停止状態とする「運転停止」,三方弁52を状態2(冷凍モード)且つ圧縮機24を駆動状態に制御,または,三方弁52を状態3(全閉モード)且つ圧縮機24を停止状態に制御して,冷蔵用蒸発器14aに冷媒が流れない状態として冷蔵用ファン9aを駆動状態として,冷蔵用蒸発器14aの表面に成長した霜や蒸発器自体の蓄冷熱で冷蔵室2を冷却しつつ冷蔵用蒸発器14aの除霜を行う「冷蔵用蒸発器除霜運転」,三方弁52を状態3(全閉モード)として圧縮機24を停止状態,冷蔵用ファン9aを駆動状態または停止状態,冷凍用ファン9bを停止状態,除霜ヒータ21を通電状態とすることで,冷凍用蒸発器14bの除霜を行う「冷凍用蒸発器除霜運転」の各運転を適宜実施することで,冷蔵庫1の庫内各貯蔵室を冷却する。
【0035】
なお,「冷蔵運転」の冷蔵用ファン9aの通常回転速度は1700min-1であり冷蔵室風量は0.52m3/min,「冷凍野菜運転」の冷凍用ファン9bの通常回転速度は1400min-1であり,冷凍室7と野菜室6への送風量は,それぞれ0.75m/min,0.05m/min,「冷凍運転」の冷凍用ファン9bの通常回転速度は1400min-1であり,冷凍室7への送風量は0.78m/minである。
【0036】
冷蔵庫1の機械室39には,制御装置の一部であるCPU,ROMやRAM等のメモリ,インターフェース回路等を搭載した制御基板(不図示)を配置している。制御基板は,冷蔵室温度センサ41,冷凍室温度センサ42,野菜室温度センサ43,冷蔵用蒸発器温度センサ40a,冷凍用蒸発器温度センサ40b,扉センサ等と接続され,前述のCPUは,これらの出力値や操作部99の設定,前述のROMに予め記録されたプログラム等を基に,圧縮機24や冷蔵用ファン9a,冷凍用ファン9bのON/OFFや回転速度制御,除霜ヒータ21,樋ヒータ101,排水管上部ヒータ102,排水管下部ヒータ103,及び,後述する三方弁52の制御等を行っている。また,前述のCPUは,扉センサの出力値を基に,扉の開放状態を報知するアラーム(報知手段)のON/OFFの制御も行っている。
【0037】
図5図2の冷凍室近傍を拡大した断面図であり,下段冷凍室扉510と冷蔵庫本体10の断熱仕切壁29,30の間に隙間が生じた状態を表す図である。図6は下段冷凍室扉と下段冷凍室容器の構成を表す斜視図である。
【0038】
図5に示す下段冷凍室扉510のように,引き出し式の扉は,食品片の挟み込み等によって扉と仕切壁の間に隙間が生じることがある。図5は,下段冷凍室扉510(下段冷凍室扉パッキン96c)と断熱仕切壁29,30の間に距離L1の隙間が生じた状態であり,下段冷凍室扉510の上部には隙間301a,下部には隙間301bが形成されている。なお,距離L1は,扉開閉状態を検知する扉センサの検出下限距離であり,L1より隙間が大きくなると扉センサによって扉が開放状態にあることが検知される。距離L1の隙間が生じた状態において,下段冷凍室扉510と下段冷凍室下段容器503の前縁の間の隙間(前面抵抗流路302)の離間距離はL2,下段冷凍室下段容器503の後縁の上面503cと当該上面503cに対向する風路形成部材120(背面形成部材)の略水平部120aの下面との間に形成される隙間(第一背面抵抗流路303a)の離間距離はL3,下段冷凍室下段容器503の後縁の背面と風路形成部材120(背面形成部材)の蒸発器室前方壁面の前面との間に形成される隙間(第二背面抵抗流路303b)の離間距離はL4となっている。本実施例の冷蔵庫1では,L1が5mm,L2が1mm,L3が5mm,L4が10mmである。また,下段冷凍室下段容器503の両側面には,スリット状の開口503a(側面抵抗流路304)が設けられている。
【0039】
なお,図6に示すように,下段冷凍室下段容器503は,下段冷凍室扉510の内面側に固定された左右一対の鉄製の枠体520に支持されており,下段冷凍室下段容器503の上に,下段冷凍室中段容器502が前方と後方のそれぞれ左右一対の脚部502b,502cにより支持されるように載置される。ここで,下段冷凍室中段容器502の前方の脚部502bは,下段冷凍室下段容器503の外壁上面に形成された凹部503bに係止されるようになっている。これにより,下段冷凍室扉510が引き出されると,枠体520に支持された下段冷凍室下段容器503とともに下段冷凍室中段容器502も引き出される。なお,枠体520は変形を防ぐために下段冷凍室下段容器503の後部において,左右の枠体520の間を接続する接続部材522を備えている。また,枠体520の後縁下部にはスムーズな引き出し操作となるようにベアリング521を備えている。なお,製氷室容器301や上段冷凍室容器401は,下段冷凍室下段容器503と同様に,製氷室扉310や上段冷凍室扉410に固定された枠体に支持されており,製氷室扉310や上段冷凍室扉410とともに引き出されるようになっている。
【0040】
下段冷凍室下段容器503と下段冷凍室中段容器502は,下段冷凍室扉510とともに移動するため,図5に示す下段冷凍室扉510(下段冷凍室扉パッキン96c)と断熱仕切壁29,30の間に距離L1の隙間が生じた場合,下段冷凍室扉510が閉鎖状態にある場合に対して下段冷凍室下段容器503と下段冷凍室中段容器502も距離L1だけ前方に移動する。したがって,前述した第二背面抵抗流路303bの離間距離L4は,下段冷凍室扉510が閉鎖状態にある場合に対してL1だけ拡大している。また,下段冷凍室下段容器503の後縁の上面503cの後端は,風路形成部材120のうち,冷凍室送風路12の下面を形成する略水平部120aの前端より後方に位置している。
【0041】
次に図7及び図8を参照しながら,本実施例の冷蔵庫の制御について説明する。
【0042】
図7は本実施例の冷蔵庫の下段冷凍室扉510の状態とそれに伴う制御を表すフローチャートである。図7に示すように,本実施例の冷蔵庫1では,下段冷凍室扉510の開閉状態に伴う制御を行うプログラムが,冷蔵庫1の冷却運転を制御するメインプログラム(不図示)のサブプログラムとして実行される。はじめに,下段冷凍室扉510が開放状態にあるかが判定される(ステップS101)。下段冷凍室扉510が扉センサの検知情報によって閉鎖状態にあると判定された場合(ステップS101がNo),続いて,下段冷凍室扉510が扉隙状態にあるかが判定される(ステップS102)。本実施例の冷蔵庫1では,冷凍運転が終了し,冷凍用ファン9bが停止した後の冷凍室温度センサ42が検知する温度の上昇速度が所定値より大きいかを判定する(扉隙推定手段)。冷凍室7温度の上昇速度が所定値より高い場合,下段冷凍室扉510が扉隙状態にあると判定し(ステップS102がYes),冷凍用ファン9bの回転速度が後述する高回転状態に変更され(ステップS104),メインプログラムの制御に戻る。下段冷凍室扉510が扉隙状態にあると判定されなかった場合(ステップS102がNo),すなわち,下段冷凍室扉510が閉じている,または,扉隙状態にあると判定されない程度の隙間がある場合,回転速度が通常回転状態に変更され(ステップS103),メインプログラムに戻る。なお,ステップS103において,冷凍用ファン9bが通常回転状態であった場合には回転速度が維持される。
【0043】
次に,ステップS101において,下段冷凍室扉510が開放状態にあると判定された場合(ステップS101がYes),続いて冷凍用ファン9bが停止され(ステップS105),下段冷凍室扉510の開放状態が所定時間(本実施例の冷蔵庫1では30秒)維持されているかが判定される(ステップS106)。下段冷凍室扉510が開放状態となってから所定時間に到達していない場合は(ステップS106がNo),下段冷凍室扉510の閉鎖を判定するステップ(ステップS108)に移行する。また,下段冷凍室扉510の開放状態となってから所定時間経過した場合(ステップS106がYes),アラームが鳴動し(ステップS107),下段冷凍室扉510の閉鎖を判定するステップS108に移行する。下段冷凍室扉510が扉センサの検知情報によって閉鎖状態になったと判定された場合(ステップS108がYes),アラームが鳴動していた場合はアラームが停止され,冷凍用ファン9bの回転速度が通常回転状態で駆動されて(ステップS109),メインプログラムに戻る。
【0044】
図8は下段冷凍室扉510の上部の隙間301aの流量及び下部の隙間302bの流量と,冷凍用ファン9bの回転速度の関係を表す図である。隙間301a,301bは下段冷凍室扉センサの検出下限距離である距離L1(図5参照)としている。縦軸は庫内への流入を正としており,中央の0の状態は流入出がない状態を示す。したがって,0より上(正の流量)は,庫内に外気が流入している状態,0より下(負の流量)は,庫外に庫内空気が流出している状態となる。
【0045】
図8に示すように,下段冷凍室扉510の下部の隙間301bの流量は,冷凍用ファン9bの回転速度をN1より低くした場合,ほぼ一定の流量が庫外へ流出しており,N1より回転速度を上げると流出する流量が減少している。これは,図5に示す下段冷凍室下段容器503により区画された上方の領域の静圧より,下段冷凍室下段容器503により区画された下方の領域の静圧が低下して,庫外の静圧に対して負圧になることで,低温で高密度な庫内空気が庫外に流出することを妨げるように作用するためである。回転速度をN2とした場合は,下部の隙間301bから庫外への流出がみられなくなり,さらに,冷凍用ファン9bの回転速度を上げると,隙間301bの流量は正に転じて,庫外空気が流入する状態となっている。これは,回転速度を上げて庫内を流れる流量が増えたことで,図5に示す下段冷凍室下段容器503により区画された下方の領域の静圧がさらに低下して,庫外の静圧との差圧が拡大したことで,庫内外の差圧によって庫外空気が流入する状態になるためである。
【0046】
一方,下段冷凍室扉510の上部の隙間301aの流量は,冷凍用ファン9bの回転速度を回転速度N1より低くした場合,ほぼ一定の流量が庫外から庫内へ流入しており,N1より回転速度を上げると庫外から流入する流量が減少して,回転速度をN2とすると流入が見られなくなる。さらに,冷凍用ファン9bの回転速度を上げると,隙間301aの流量は負に転じて,庫内から庫外へ空気が流出する状態となっており,上部の隙間301aと対称的な挙動を示している。これは庫内空気の質量保存により,庫外へ流出した空気量と庫内に流入する空気量が等しくなるためである。
【0047】
なお,冷凍用ファン9bを回転速度N3とすると,回転速度をN1より低くした場合に下段冷凍室扉510の上部の隙間301aから流入していた風量と同等の風量が,下段冷凍室扉510の下部の隙間301bから流入する状態となり,回転速度をN1より低くした場合と同程度の熱負荷が庫外から流入する状態になる。冷凍用ファン9bの回転速度をN3より上げると,回転速度をN1より低くした場合よりも多くの外気(熱負荷)が庫外から流入する状態となる。
【0048】
このように,図5に示す構成を有する冷蔵庫1においては,冷凍用ファン9bの回転速度を変えることによって,下段冷凍室扉510の上部の隙間301aの流量と,下部の隙間302bの流量について,図8に示すような特性を得ることができる。そこで,冷蔵庫1におけるこの特性を予め評価して,回転速度N1と回転速度N2の間の回転速度Naを,冷凍用ファン9bの通常回転状態(図7参照)時に使用し,回転速度N2と回転速度N3の間の回転速度Nbを,冷凍用ファン9bの高回転状態(図7参照)時に使用する。このように下段冷凍室扉センサが検出可能となる下段冷凍室扉510と断熱仕切壁29,30の下限距離L1の隙間,すなわち,ユーザーに報知されることなく,冷却運転が継続し得る最大の隙間(図7参照)が生じた状態における隙間301a,301bの流量特性に基づいて冷凍用ファン9bの回転速度を設定している。なお,図8に示す特性は,例えば,下段冷凍室扉510の上部の隙間301aと下部の隙間301bに流速センサを設置して,流速の変化に基づいて簡易的に評価することでも実用上十分な結果が得られる。
【0049】
また,下段冷凍室下段容器503により区画された上方の領域の静圧より,下段冷凍室下段容器503により区画された下方の領域の静圧が低下して,庫外の静圧に対して負圧になっていることは,隙間301bから流出する流れに基づいて簡易的に確認できる。具体的には,冷凍用ファン9bを停止した状態において,下部の隙間301bから庫内空気が流出するのに対して,冷凍用ファン9bを駆動した状態においては,下部の隙間301bの空気の流出が減少するように変化することが確認できれば,冷凍用ファン9bが図8に示す回転速度N1より高い回転速度に設定されていると見做すことができる。
【0050】
以上,本実施例の冷蔵庫の構成を説明したが,次に,本実施例の冷蔵庫の奏する効果について説明する。
【0051】
本実施例の冷蔵庫は,貯蔵室(下段冷凍室5)を開閉する扉(下段冷凍室扉510)と,扉の閉時に扉が密着する仕切(断熱仕切壁29,30)と,貯蔵室に配される容器(下段冷凍室下段容器503)と,冷却器(冷凍用蒸発器14b)と,冷却器で生成した冷気を貯蔵室内に吐出する吐出口(第一冷凍室吐出口12a)と,貯蔵室から冷却器に向けて冷気を通過させる戻り口(冷凍室戻り風路17)と,貯蔵室に送風する送風機(冷凍用ファン9b)と,を備え,扉と仕切の間に隙間(隙間301a,301b)が生じた状態において,送風機の駆動によって,容器下方の圧力を下げ,庫外の静圧より容器下方の静圧を低くしている。これにより,扉と冷蔵庫本体の間に隙間が生じた場合においても庫内の良好な冷却保存状態を長時間維持しやすくなる。その理由を,図9図12を参照しながら具体的に説明する。
【0052】
図9図12は冷凍室の断面模式図であり,図9は下段冷凍室扉510と断熱仕切壁29,30の間に隙間が生じた状態で,冷凍用ファン9bを停止した際の流れを表す比較例,図10は下段冷凍室扉510と断熱仕切壁29,30の間に隙間が生じた状態で,下段冷凍室下段容器503の上部の領域から下部の領域に向けて流れる気流に十分な抵抗を付与せずに冷凍用ファン9bを駆動した際の流れを表す比較例である。図11は,実施例に係る冷蔵庫の冷凍室を表しており,下段冷凍室扉510と断熱仕切壁29,30の間に隙間が生じた状態で,下段冷凍室下段容器503の上部の領域から下部の領域に向けて流れる気流に十分な抵抗を付与して,冷凍用ファン9bを低速回転(通常回転)で駆動した際の流れを表す。図12は,実施例に係る冷蔵庫の冷凍室を表しており,下段冷凍室扉510と断熱仕切壁29,30の間に隙間が生じた状態で,下段冷凍室下段容器503の上部の領域から下部の領域に向けて流れる気流に十分な抵抗を付与して冷凍用ファン9bを高回転で駆動した際の流れを表す。
【0053】
図9に示すように,下段冷凍室扉510と断熱仕切壁29,30の間に隙間が生じた状態で,冷凍用ファン9bを停止状態とすると,図9中に矢印で示すように,外気に対して低温であり密度が高い冷凍室7内の空気が,下部の隙間301bから流出し,上部の隙間301aからは流出した流量が補われるように外気が冷凍室7内に流入するように自然対流が生じる。冷凍室7内に流入した外気は,水分(水蒸気)を含むため,冷凍室7内の食品や貯蔵スペースに着霜を生じさせ,良好な冷却保存状態を長時間維持することが困難になる場合がある。例えば特許文献1に記載の冷蔵庫では,扉が閉じた状態で,冷凍室等の引き出し容器を備えた冷却室の扉近傍に冷気が対流しない空気層を発生させるようにしているので,扉に隙間が生じた場合には,図9に示すように自然対流によって冷凍室内の低温空気と外気が置換する現象が起きて,食品や貯蔵スペースに着霜を生じさせ,良好な冷却保存状態を長時間維持することが困難となる。
【0054】
また,図10に示すように,下段冷凍室下段容器503の上部の領域から下部の領域に向けて流れる気流に十分な抵抗を付与せず,冷凍用ファン9bを駆動すると,冷凍室7内の流れによる圧力降下が十分小さくなる。したがって,上部の隙間301a近傍の静圧P3と,下部の隙間301b近傍の静圧P2の間に差は生じず,ともに庫外の静圧P1と同等となる。この状態においては,庫内外で圧力差が生じていないので,図10中に矢印で示すように下部の隙間301bから低温空気が流出し,上部の隙間301aからは外気が冷凍室7内に流入する自然対流による流れ(図9に示す流れと同様の流れ)が生じる。貯蔵室内において流れの抵抗を十分小さく抑えることは一般的な冷蔵庫の設計思想となる。したがって,一般的な冷蔵庫においては,図10に示すような自然対流が生じて,扉と断熱仕切壁の間に隙間が生じた場合には,食品や貯蔵スペースに着霜が生じて,良好な冷却保存状態を長時間維持することが困難となる。
【0055】
一方,図11は本実施例の冷蔵庫1の態様を表しており,下段冷凍室扉510と断熱仕切壁29,30の間に隙間が生じた状態で,下段冷凍室下段容器503の上部の領域から下部の領域に向けて流れる気流に十分な抵抗(前面抵抗流路302,背面抵抗流路303)を付与して,冷凍用ファン9bを図8に示す冷凍用ファン9bの回転速度Na(本実施例では1400min-1)の通常回転で駆動した際の流れ場となる。図11に示すように,下段冷凍室下段容器503の上部の領域と下部の領域を流れる気流に十分な抵抗を与えると,冷凍室7内の上部の隙間301a近傍の静圧P3に対して,前面抵抗流路302,背面抵抗流路303の作用によって下部の隙間301b近傍の静圧P2が低下し,庫外の静圧P1に対して負圧にすることができる。この状態においては,密度差を駆動力として下部の隙間301bから流出する流れに対して,静圧差(P1―P2)が抗力として作用するので流出流量が減少し,それに伴って,上部の隙間301aから補われるように流入する外気の流量も減少する。したがって,食品や貯蔵スペースに着霜を生じさせる要因となる水分の流入も減少して,良好な冷却保存状態を長時間維持しやすくなる。
【0056】
図12は本実施例の冷蔵庫1の別の態様を表しており,図11の構成において冷凍用ファン9bを,図8に示す回転速度Nb(本実施例では2100min-1)の高回転で駆動した際の流れ場となる。冷凍用ファン9bを高回転とすることで,冷凍室7を流れる風量が増加するため,下段冷凍室下段容器503の上部の領域と下部の領域を流れる気流も増加して,冷凍室7内の上部の隙間301a近傍の静圧P3と,下部の隙間301b近傍の静圧P2の圧力差が拡大する。これにより,下部の隙間301b近傍の静圧P2は庫外の静圧P1に対して,より負圧となって静圧差(P1―P2)が拡大し,図12中に破線矢印で示すように,下部の隙間301bからは庫外空気が流入し,上部の隙間301aからは冷凍室7内の低温空気が流出する状態となる。このような流れになると,食品や貯蔵スペースに着霜を生じさせる要因となる水分は,下部の隙間301bから流入して冷凍室7の底面を流れて冷凍室戻り風路17に至り冷凍用蒸発器室8bに流入する。したがって,食品や貯蔵スペースに着霜を生じさせることを回避でき,良好な冷却保存状態を長時間維持しやすくなる。
【0057】
以上のとおり,図9図10に示す比較例とは異なり,本実施例の冷蔵庫は,貯蔵室(下段冷凍室5)を開閉する扉(下段冷凍室扉510)と,扉の閉時に扉が密着する仕切(断熱仕切壁29,30)と,貯蔵室に配される容器(下段冷凍室下段容器503)と,冷却器(冷凍用蒸発器14b)と,冷却器で生成した冷気を貯蔵室内に吐出する吐出口(第一冷凍室吐出口12a)と,貯蔵室から冷却器に向けて冷気を通過させる戻り口(冷凍室戻り風路17)と,貯蔵室に送風する送風機(冷凍用ファン9b)と,を備え,扉と仕切の間に隙間(隙間301a,301b)が生じた状態において,送風機の駆動によって,容器下方の圧力を下げ,庫外の静圧より容器下方の静圧を低くすることで,食品や貯蔵スペースに着霜を生じ難くすることができ,良好な冷却保存状態を長時間維持しやすくなる。
【0058】
本実施例の冷蔵庫は,貯蔵室(下段冷凍室5)の上方にあって仕切(断熱仕切壁30)の後方で貯蔵室と連通する空間を形成する第二貯蔵室(上段冷凍室4または製氷室3)を開閉する第二扉(上段冷凍室扉410または製氷室扉310)と,冷却器で生成した冷気を第二貯蔵室に吐出する第二吐出口(第二冷凍室吐出口12b)と,をさらに備え,戻り口は,第二貯蔵室からの冷気も通過させ,送風機は,第二貯蔵室へも送風する。上部の隙間301aから高温で水分(水蒸気)を含む外気が貯蔵室に流入すると,水分の一部は上方に向かって流れて上部の隙間301aより上方の第二貯蔵室(上段冷凍室4または製氷室3)に至って着霜となる。しかし,本実施例の冷蔵庫では,庫外の静圧より容器下方の静圧を低くしているので,上部の隙間301aからの高温で水分(水蒸気)を含む外気の流入が抑制されている。これにより,特に貯蔵室(下段冷凍室5)の上部空間に配された第二貯蔵室(上段冷凍室4または製氷室3)の良好な冷却保存状態を長時間維持しやすくなる。
【0059】
本実施例の冷蔵庫は,扉(下段冷凍室扉510)と仕切(断熱仕切壁29,30)の間に隙間(隙間301a,301b)が生じた状態において,容器(下段冷凍室下段容器503)下方の圧力を下げ,庫外の静圧より容器下方の静圧を低くするとともに,前記隙間のうち,下部の隙間(隙間301b)から庫内の空気が流出する状態になる範囲(例えば,扉と仕切が密着した状態のときの通常回転速度であるNa)に送風機(冷凍用ファン9b)の回転速度を設定した冷却運転を実施する(図7図8図11)。これにより,図8に示す通り,送風機の回転速度を比較的低い速度として,扉と仕切の間の隙間から流入する外気の量を抑制した状態を得ることができるので,送風機の消費電力を小さく抑えられるとともに騒音レベルも低い冷却運転を実施できる。
【0060】
本実施例の冷蔵庫は,扉(下段冷凍室扉510)と仕切(断熱仕切壁29,30)の間に隙間(隙間301a,301b)が生じた状態において,容器(下段冷凍室下段容器503)下方の圧力をさらに下げ,前記隙間のうち,上部の隙間(隙間301b)から庫内の空気が流出する状態になる範囲に送風機(冷凍用ファン9b)の回転速度を設定した冷却運転を実施する(図7図8図12)。これにより,食品や貯蔵スペースに着霜を生じさせる要因となる水分は,下部の隙間(隙間301b)から流入して冷凍室7の底面を流れて冷凍室戻り風路17に至り冷凍用蒸発器室8bに流入する。したがって,食品や貯蔵スペースに着霜が生じることをより確実に回避でき,良好な冷却保存状態を長時間維持しやすくなる。
【0061】
本実施例の冷蔵庫は,扉(下段冷凍室扉510)と仕切(断熱仕切壁29,30)の間に隙間(隙間301a,301b)が生じた状態において,送風機の停止時に下部の隙間(隙間301b)から流出する風量と同等の風量が上部の隙間(隙間301a)から流出する状態となるときの送風機(冷凍用ファン9b)の回転速度(図8の回転速度N3)と比べて,低い回転速度を冷却運転に用いている。これにより,外気の流入に起因する省エネルギー性能の過度な低下を回避できる。
【0062】
本実施例の冷蔵庫は,扉(下段冷凍室扉510)が仕切(断熱仕切壁29,30)と所定値以上離間した状態であることを検知する扉センサと,扉の開放状態を報知する報知手段を備え,図7に示すように,扉が仕切と所定値以上離間した状態が所定時間以上継続された場合に,報知手段が報知するようにしている。これにより,良好な冷却保存状態を維持し得ない程度に扉と仕切(断熱仕切壁29,30)の間に隙間が生じた場合には,ユーザーが報知により異常を知ることができるので,使い勝手の良い冷蔵庫となる。
【0063】
本実施例の冷蔵庫は,容器(下段冷凍室下段容器503)の後縁と,貯蔵室(冷凍室7)の背面形成部材(風路形成部材120)と,の間に,容器上方から容器下方に向けて流れる気流に抵抗を付与する背面隙間流路(背面抵抗流路303)を形成している。これにより,流速が高くなり熱移動が生じやすくなる抵抗流路が庫内の風路形成部材と容器の間に形成されるので,庫外からの熱侵入の影響を受けずに,庫外の静圧より容器下方の静圧を低くすることができ,省エネルギー性能が高くなる。
【0064】
本実施例の冷蔵庫は,容器(下段冷凍室下段容器503)は,扉(下段冷凍室扉510)と一体に開放され,扉と仕切(断熱仕切壁29,30)の間に隙間が生じた状態において,容器の後縁の背面と背面形成部材(風路形成部材120)の前方壁面の前面との間に形成される隙間(第二背面抵抗流路303b)が,扉と仕切が密着した状態において,容器の後縁の背面と背面形成部材(風路形成部材120)の前方壁面の前面との間に形成される隙間(第二背面抵抗流路303b)よりも大きくなるようにしている。これにより,扉と仕切(断熱仕切壁29,30)の間に隙間が生じた状態においては,扉と前記仕切が密着した状態よりも,より多くの風量が第二背面抵抗流路303bを流れるようになるので,扉と仕切(断熱仕切壁29,30)の間に生じた隙間から庫外に流出しやすくなる扉近傍に向かう風量を抑えることができ,省エネルギー性が高くなる。
【0065】
本実施例の冷蔵庫は,貯蔵室(冷凍室7)の背面形成部材(風路形成部材120)が略水平部を備え,扉(下段冷凍室扉510)が仕切(断熱仕切壁29,30)と所定値(下段冷凍室扉センサが検出可能な範囲のうち下限値)離間した状態において,略水平部の前端より,容器(下段冷凍室下段容器503)の後縁の上面の後端が後方に位置するようにしている。これにより,扉(下段冷凍室扉510)と仕切(断熱仕切壁29,30)の間に下段冷凍室扉センサが検出できない程度の隙間が生じた場合でも,背面形成部材(風路形成部材120)の略水平部の下面と,容器(下段冷凍室下段容器503)の後縁の上面と,の間に曲げ流路部(第一背面抵抗流路303a)が形成されるので,扉(下段冷凍室扉510)と仕切(断熱仕切壁29,30)の間の隙間の大きさに依る流路抵抗の変化を小さく抑えることができ,安定した冷却性能を発揮しやすくなる。
【0066】
本実施例の冷蔵庫は,容器(下段冷凍室下段容器503)の前縁と扉(下段冷凍室扉510)との間に,容器上方から容器下方に向けて流れる気流に抵抗を付与する前面隙間流路(前面抵抗流路302)を形成している。これにより,容器(下段冷凍室下段容器503)の前面近傍に流れの淀んだ領域が形成されて,庫外からの水分(水蒸気)が滞留し,霜として成長することを効果的に抑制できる。
【0067】
本実施例の冷蔵庫は,容器(下段冷凍室下段容器503)の側面に,容器側方を流れる気流を淀ませる開口(側面抵抗流路304)を形成している。これにより,容器(下段冷凍室下段容器503)の側面に流れの淀んだ領域が形成されて,庫外からの水分(水蒸気)が滞留し,霜として成長することを効果的に抑制できる。
【0068】
本実施例の冷蔵庫は,扉(下段冷凍室扉510)と仕切(断熱仕切壁29,30)の間に隙間(隙間301a,301b)が生じた状態を推定する扉隙推定手段を備え,扉隙推定手段によって隙間が生じていると判定された場合に,送風機の回転速度を上昇させている(図7)。送風機の回転速度を上げると,食品や貯蔵スペースに着霜を生じさせる要因となりやすい上部の隙間(隙間301a)から流入する外気の流量が低下するので,良好な冷却保存状態をより長時間維持しやすくなる。
【0069】
以上が,実施例であるが,本発明は前述した実施例に限定されるものではなく,様々な変形例が含まれる。例えば,実施例では冷凍温度帯の貯蔵室(冷凍室)を対象として説明したが,冷蔵温度帯の貯蔵室に対して同様の構成を採用しても良い。その場合は,結露の過度な発生を抑制した良好な冷却保存状態をより長時間維持し得る冷蔵庫となる。実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり,必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0070】
1…冷蔵庫,2…冷蔵室,3…製氷室,4…上段冷凍室,5…下段冷凍室,6…野菜室,7…冷凍室,8a…冷蔵用蒸発器室,8b…冷凍用蒸発器室,9a…冷蔵用ファン,9b…冷凍用ファン,10…冷蔵庫本体,10a…外箱,10b…内箱,11…冷蔵室送風路,11a…冷蔵室吐出口,12…冷凍室送風路,12a…第一冷凍室吐出口,12b…第二冷凍室吐出口,13…野菜室送風路,13a…野菜室吐出口,14a…冷蔵用蒸発器,14b…冷凍用蒸発器,15a,15b,15c…冷蔵室戻り風路,17…冷凍室戻り風路,18…野菜室戻り風路,18a…野菜室戻り口,19…野菜室ダンパ,24…圧縮機,25…真空断熱材,28,29,30…断熱仕切壁,40a…冷蔵用蒸発器温度センサ,40b…冷凍用蒸発器温度センサ,41…冷蔵室温度センサ,42…冷凍室温度センサ,43…野菜室温度センサ,95a,95b…冷蔵室パッキン,96a,96b,96c…冷凍室パッキン,97…野菜室パッキン,120…風路形成部材,120a…略水平部,210a,210b…冷蔵室扉,301…製氷室容器,301a…(下段冷凍室扉上部の)隙間,301b…(下段冷凍室扉下部の)隙間,302…前面抵抗流路,303a…第一背面抵抗流路,303b…第二背面抵抗流路,304…側面抵抗流路,310…製氷室扉,401…上段冷凍室容器,410…上段冷凍室扉,501…下段冷凍室上段容器,502…下段冷凍室中段容器,503…下段冷凍室下段容器,503a…開口,503b…凹部,503c…(後縁の)上面,510…下段冷凍室扉,601…野菜室上段容器,602…野菜室下段容器,610…野菜室扉
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