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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093024
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】縁部封止スロットライナ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/34 20060101AFI20240702BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20240702BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240702BHJP
   B32B 3/02 20060101ALI20240702BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20240702BHJP
   B32B 27/06 20060101ALI20240702BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20240702BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20240702BHJP
   B32B 27/42 20060101ALI20240702BHJP
   B32B 27/02 20060101ALI20240702BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H02K3/34 C
C09J7/35
C09J201/00
B32B3/02
B32B7/12
B32B27/06
B32B27/26
B32B27/38
B32B27/42 101
B32B27/02
B32B27/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022209118
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100130041
【弁理士】
【氏名又は名称】成岡 郁子
(74)【代理人】
【識別番号】100160956
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 俊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100177046
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 百合香
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】竹本 直紘
(72)【発明者】
【氏名】平山 裕之
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 尚之
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
5H604
【Fターム(参考)】
4F100AK25
4F100AK33B
4F100AK33D
4F100AK41C
4F100AK41E
4F100AK51
4F100AK53B
4F100AK53D
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4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10E
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4F100CB00B
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4F100DB01C
4F100DB01D
4F100DB01E
4F100DE01B
4F100DE01D
4F100DG15C
4F100DG15E
4F100GB41
4F100GB51
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4F100JA02D
4F100JD05C
4F100JD05E
4F100JG04A
4F100JL11B
4F100JL11D
4J004AA13
4J004AA17
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4J004CB03
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4J040EC051
4J040HA306
4J040HC16
4J040HC20
4J040KA14
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4J040KA31
4J040LA06
4J040MA02
4J040NA19
5H604AA05
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB03
5H604BB14
5H604CC01
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5H604CC13
5H604DA15
5H604DA16
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5H604DA20
5H604DA21
5H604DB02
5H604DB26
5H604PB03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高熱環境、組み付け中の折り畳み及び粗雑な取り扱い、並びに使用中の衝撃及び振動応力により良好に耐えることを可能にするスロットライナを提供する。
【解決手段】回転電気システム用の多層スロットライナは100、電気絶縁性基材層102と、基材層の第1の表面上に配置された熱膨張性粒子を含む第1の熱活性化接着剤層104と、第1の熱活性化接着剤層上に配置された第1の接着剤透過性カバー層106と、を備える。層のうちの少なくとも2つが一緒に延び、縁部108で終端し、縁部がシール109によって覆われている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電気システム用の多層スロットライナであって、電気絶縁性基材層と、前記基材層の第1の表面上に配置された熱膨張性粒子を含む第1の熱活性化接着剤層と、前記第1の熱活性化接着剤層上に配置された第1の接着剤透過性カバー層と、を備え、前記層のうちの少なくとも2つが一緒に延び、縁部で終端し、前記縁部がシールによって覆われている、多層スロットライナ。
【請求項2】
前記基材層の第2の表面上に配置された第2の熱活性化接着剤層であって、前記第2の表面が、前記基材層の前記第1の表面とは反対側に位置する、第2の熱活性化接着剤層と、前記第2の熱活性化接着剤層上に配置された第2の接着剤透過性カバー層と、を更に備える、請求項1に記載の多層スロットライナ。
【請求項3】
前記層が全て、前記縁部で終端し、前記シールが前記縁部において前記層の各々の端部に接触する、請求項2に記載の多層スロットライナ。
【請求項4】
前記シールが、シアノアクリレート接着剤及びウレタン接着剤からなる群から選択される接着剤を含む、請求項1又は2に記載の多層スロットライナ。
【請求項5】
前記熱活性化接着剤層が、エポキシ接着剤及び潜在性硬化剤を含む、請求項1又は2に記載の多層スロットライナ。
【請求項6】
前記エポキシ接着剤が、トリフェニルメタン系フェノール樹脂から得られる、請求項5に記載の多層スロットライナ。
【請求項7】
前記接着剤透過性カバー層が、ポリエステル不織布繊維を含む、請求項1又は2に記載の多層スロットライナ。
【請求項8】
前記接着剤透過性カバー層の長さが、硬化後にその初期長さと比較して1.5%未満だけ収縮する、請求項1又は2に記載の多層スロットライナ。
【請求項9】
回転電気システム用のステータアセンブリであって、前記ステータアセンブリが、請求項1~8のいずれか一項に記載の多層スロットライナによって絶縁された複数のスロットを備える、回転電気システム用のステータアセンブリ。
【請求項10】
前記多層スロットライナは、前記スロットライナが前記スロット内に位置決めされたときに前記スロットの外側に配置された前記シールによって覆われた前記縁部を有するように構成される、請求項9に記載のステータアセンブリ。
【請求項11】
回転電気システムのステータ内のスロットを封止する方法であって、
電気絶縁性基材層と、前記基材層の第1の表面上に配置された第1の熱活性化接着剤層と、前記第1の熱活性化接着剤層上に配置された第1の接着剤透過性カバー層と、を備え、前記層のうちの少なくとも2つが一緒に延び、縁部で終端する、連続多層シートを提供することと、
前記シートの一部を切断してスロットライナを形成し、全てのスロットが充填されるまで前記スロットライナを前記ステータのスロット内に繰り返し配置することと、
前記スロットライナの前記縁部にシーリング組成物を適用することと、
前記シーリング組成物を硬化させて、前記スロットライナの前記縁部を覆うシールを形成することと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記シーリング組成物が、高粘度接着剤流体を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記熱活性化接着剤層が、発泡開始温度Tを有する熱膨張性粒子を含み、第1のステップにおいて、前記スロットライナは、前記熱活性化接着剤層の膨張を開始するために第1の温度T≦Tまで加熱され、第2のステップにおいて、前記スロットライナは、前記熱活性化接着剤層を硬化させるために第2の温度T>Tまで加熱される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記スロットライナの前記縁部を封止した後に、前記スロット内に導電性巻線を配置することと、前記スロットライナを加熱して前記熱活性化接着剤層を活性化及び硬化させることと、を更に含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットライナに関し、より詳細には、熱膨張性粒子を含むスロットライナに関する。
【背景技術】
【0002】
スロットライナは、電気モータ及び発電機において、導電性巻線と、導電性巻線を収容するステータコアのスロットとの間に電気絶縁を提供するために使用される。より最近では、電気自動車における必要な性能要件を満たすように性能、信頼性、及び製造の容易さを改善するために、厚さ、可撓性、絶縁耐力、温度定格、低表面摩擦などの厳密な仕様のために多層複合積層スロットライナが開発されてきた。
【0003】
電気機器の自動構築は、新規な材料をスロットライナに使用することにつながり、モータ用のステータの自動組み付けを助けることができる。例えば、特許文献1には、加熱すると膨張する熱活性化スロットライナが記載されている。しかしながら、積層複合材は、熱、溶媒、及び機械的衝撃への操作上の曝露によって影響を受け、変形及び層間剥離をもたらす場合がある。信頼性の向上を達成するために、これらの環境要因に耐えることができる、より耐久性のあるスロットライナに対する必要性が継続的に存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2021/0207010号明細書
【0005】
特許文献1には、基材の表面上に形成された熱膨張性接着剤層と、接着剤層の表面上に提供された接着剤浸透層と、を有する、スロットライナが記載されている。接着剤浸透性層は、接着剤の熱膨張時に、加熱された接着剤を浸透させる。したがって、接着シートを加熱することによって、熱活性化接着剤層からの接着剤が接着剤浸透性層に浸透し、接着シートの最外表面に出現し、接着剤浸透性層に隣接する表面に結合し、それによって、接着剤の堆積が単純化される。
【発明の概要】
【0006】
発明が解決しようとする課題
多層構造を有するスロットライナによって提示される問題は、硬化中並びに複数回の加熱及び冷却サイクル後に、特に高熱環境で動作するデバイスについて、1つ以上の層が変形を経験する可能性、又は更には層間剥離する可能性があることである。この問題は、各層における材料の異なる熱膨張係数、並びに冷却時の縮みに起因するそれらの収縮挙動に起因する。隣接する層の不均一な膨張及び収縮は、時間の経過とともに解決しない可能性がある層間応力をもたらし、蓄積して最終的にスロットライナを変形させる残留応力をもたらす。層間応力が十分に大きい場合、スロットライナ内の1つ以上の層間剥離が生じる可能性がある。層間剥離は、絶縁信頼性の低下につながり、これは次に、モータ又は発電機の早期故障につながる。
【0007】
課題を解決するための手段
上記の問題を解決するために、一態様では、本発明は、回転電気システム用の多層スロットライナであって、電気絶縁性基材層と、基材層の第1の表面上に配置された第1の熱活性化接着剤層と、第1の熱活性化接着剤層上に配置された第1の接着剤透過性カバー層と、を備え、層のうちの少なくとも2つが一緒に延び、縁部で終端し、縁部がシールによって覆われている、多層スロットライナを提供する。多層スロットライナは、基材層の第2の表面上に配置された第2の熱活性化接着剤層であって、第2の表面が、基材層の第1の表面とは反対側に位置する、第2の熱活性化接着剤層と、第2の熱活性化接着剤層上に配置された第2の接着剤透過性カバー層と、を更に備えてもよい。
【0008】
スロットライナの縁部が封止されるように構成された本発明によれば、スロットライナの縁部における層間剥離の開始を低減することができる。スロットライナの縁部におけるシールは、スロットライナの個々の層を機械的に一緒に保持する。それはまた、スロットライナの個々の層の縁部が、層間の凝集を弱める環境要因に直接曝露されることを防止する。加えて、シールはまた、耐熱性、弾性、及び機械的強度を有する材料を含んでもよく、それによって、スロットライナの縁部に有益な特性を付与し、高熱環境、組み付け中の折り畳み及び粗雑な取り扱い、並びに使用中の衝撃及び振動応力により良好に耐えることを可能にする。
【0009】
別の態様では、本発明は、回転電気システムのステータ内のスロットライナの縁部を封止する方法であって、電気絶縁性基材層と、基材層の第1の表面上に配置された第1の熱活性化接着剤層と、第1の熱活性化接着剤層上に配置された第1の接着剤透過性カバー層と、を備え、層のうちの少なくとも2つが一緒に延び、縁部で終端する、連続多層シートを提供することと、シートの一部を切断してスロットライナを形成し、全てのスロットが充填されるまでスロットライナをステータのスロット内に繰り返し配置することと、スロットライナの縁部にシーリング組成物を適用することと、シーリング組成物を硬化させて、スロットライナの縁部を覆うシールを形成することと、を含む、方法を提供する。その後、ステータのスロット内への導電性巻線の組み付けを行うことができる。導電性巻線が組み付けられた後、ステータを加熱して、スロットライナ内の熱活性化接着剤層に存在する接着剤を活性化及び硬化させることができる。
【0010】
このように構成された本発明では、スロットが従来のプロセスに従って充填された後、スロットライナ縁部上にシーリング組成物を堆積させるために任意の好適に設計されたアプリケータ又はコーティングプロセスを使用し、シーリング組成物を硬化させるために加熱することによって、スロットライナ縁部をステータ内でその場でバッチ方式で封止することができる。代替的に、スロットライナは、封止された縁部を有するように予め製造され、次いでステータスロット内に挿入されてもよい。いずれにしても、スロットライナ縁部の封止は、既存の機器又はプロセスステップを実質的に変更する必要なく、既存のスロットライナ組み付けプロセスと適合する。
【0011】
スロットライナをステータに組み付ける間にシールが形成される場合、シールは、好ましくは、未硬化状態で高粘度を有する接着剤を含むことが好ましい。粘性流体又はゲルの形態である粘性質を有する接着剤は、スロットライナの縁部の上への制御された堆積を容易にする。また、シールは、シアノアクリレート接着剤又はウレタン接着剤から得られるような防水性、耐熱性、及び機械的強度のある材料を含むことが好ましい場合がある。
【0012】
熱活性化接着剤層は、好ましくは、発泡開始温度Teを有する熱膨張性粒子を含む。スロットライナにおける層間の良好な接着を確実にするために、熱膨張性粒子は徐々にかつ完全に活性化されることが好ましい。この目的のために、2段階の連続的な加熱プロセスが好ましくは行われる。第1の加熱ステップにおいて、スロットライナは、接着剤層の膨張を開始するために第1の温度T1≦Tまで加熱され、第2のステップにおいて、スロットライナは、熱活性化接着剤層を完全に硬化するために第2の温度T2>Tまで加熱される。
【0013】
発明の効果
本発明は、熱膨張性粒子を含有する多層スロットライナであって、スロットライナの縁部でのその層の層間剥離の開始を防止するために、その縁部を封止することに起因して、既存のスロットライナよりも改善された耐久性を有する多層スロットライナを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態に係る、片側スロットライナの断面図である。
【0015】
図2】一実施形態に係る、両側スロットライナの断面図である。
【0016】
図3】ステータのスロット内の熱処理後の両側スロットライナの断面図である。
【0017】
図4】長縁部又は短縁部のいずれかが封止されたステータに配置されたスロットライナの斜視図である。
【0018】
図5】導電性巻線を有し、その長縁部及び短縁部の両方が封止されたスロットライナの斜視図である。
【0019】
図6】熱活性化接着剤層の成分を列挙した表1を示す。
【0020】
図7】縁部シーリング組成物A、B、及びCを列挙した表2を示す。
【0021】
図8】実施例1の試験結果を列挙した表3を示す。
【0022】
図9】実施例2の試験結果を列挙した表4を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、スロットライナ縁部をシールで封入することに起因して信頼性が向上した縁部封止スロットライナを提供する。図1は、本発明の実施形態による、多層スロットライナの構成を示す断面図である。図1に示すように、スロットライナ100は、両側に表面1021及び表面1022を有する基材層102を含む。熱活性化接着剤層104は、基材層102の表面1021上に配置される。接着剤透過性カバー層106は、熱活性化接着剤層104上に配置される。層102、104、106のうちの少なくとも2つは、スロットライナを横切って一緒に延び、終端して縁部108を形成する。シール109が縁部108に形成され、縁部108を形成する層の端部に接触し、スロットライナ内の個々の層の端部を完全に覆い、それによって、縁部108を封入する。この実施形態では、3つの層102、104、106の全てが同一の広がりを持ち、終端して縁部を形成する。シール109は、スロットライナ内の3つの層の各々の端部を完全に覆い、それによって、縁部108を封入する。別の実施形態では、熱活性化接着剤層104及び接着剤透過性カバー層106のみが終端して縁部を形成し、基材層102の端部は、当該縁部の前で終端するか、又は当該縁部を越えて延びる。したがって、この実施形態では、シールは、熱活性化接着剤層104及び接着剤透過性カバー層106の端部を覆う。この実施形態では、スロットライナは、片側のみに接着を提供する。スロットライナの反対側は基材層表面であり、スロットへの挿入を容易にする低摩擦材料、例えばポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)、又は熱伝導性材料及び電気絶縁性材料、例えば窒化ホウ素など、他の材料で任意選択的にコーティングして、導電性巻線から離れてステータ本体への熱伝導を改善することができる。
【0024】
熱活性化接着剤層及び接着剤透過性カバー層は、図1に示されるように基材層の片側のみに提供されてもよく、又は基材の両側に提供されてもよい。好ましい実施形態では、第2の熱活性化接着剤層は、基材の第2の表面上に配置され、第2の表面は、基材の第1の表面とは反対側に位置し、第2の接着剤透過性カバー層は、第2の熱活性化接着剤層上に配置される。言い換えれば、この実施形態では、基材層の両側は各々、接着剤層及び接着剤透過性カバー層を備える。図2を参照すると、スロットライナ200は、両側に表面2021及び表面2022を有する基材層202を含む。熱活性化接着剤層204は、表面2021上に配置され、接着剤透過性カバー層106は、熱活性化接着剤層204上に配置される。同様に、他方の側では、熱活性化接着剤層205は、表面2022上に配置され、接着剤透過性カバー層107は、熱活性化接着剤層205上に配置される。この実施形態では、スロットライナは、スロットライナの両側で、導電性巻線及びスロットライナに隣接するステータ壁に接着することができる。
【0025】
層202、204、205、206、及び207のうちの少なくとも2つは、スロットライナを横切って一緒に延び、終端して縁部208を形成する。シール209は、縁部208に形成され、縁部208を形成する層の各々の端部に接触して覆い、それによって、縁部208を封入する。図2に示される実施形態では、5つの層202、204、205、206、及び207の全てが同一の広がりを持ち、終端して縁部208を形成する。別の実施形態では、層のうちのいくつかのみが終端して縁部を形成する。例えば、熱活性化接着剤層204及び接着剤透過性カバー層206は、表面2021上で終端して第1の縁部を形成してもよく、熱活性化接着剤層205及び接着剤透過性カバー層207は、表面2022上で終端して第2の縁部を形成してもよく、一方、基材層202の端部は、当該第1及び第2の縁部の前で終端するか、又は当該第1及び第2の縁部を越えて延びる。この実施形態では、シール209は、第1及び第2の縁部を覆うように別個に形成されてもよい。
【0026】
基材は、スロットライナの他層を全て担持するための支持体として機能する。したがって、十分な機械的強度を有する任意の材料を使用することができる。スロットライナは、スロットへの組み付け前に折り畳まれるので、使用される材料は、剛性ではなく、弾性及び可撓性であるべきである。加えて、基材は好ましくは電気絶縁材料である。例示的な基材は、熱への曝露に耐えることができる耐熱性フィルム材料であるべきであるが、必ずしも断熱性である必要はない。例示的な基材としては、例えば、ポリアラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミド(polyimide、PI)フィルム、ポリエステル(polyester、PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(polyethylene naphthalate、PEN)フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone、PEEK)フィルム、ナイロン、又はPEN/ポリメチルメタクリレート多層フィルムが挙げられる。強度、耐熱性、及び他の因子などの複数の因子を考慮すると、例えばポリイミド又はポリエチレンナフタレートフィルムを基材層202として使用することが好ましい。
【0027】
熱活性化接着剤層204、205は、熱硬化性である任意の好適な接着剤を含む。一例は、高温で硬化する熱硬化性接着剤である。加えて、接着剤は、好ましくは熱可塑特性を有し、最初は非流体状態であるが、加熱されると流体になる。好ましい実施形態では、エポキシが接着剤層において使用される。二官能性エポキシ、三官能性エポキシ、四官能性エポキシ、及び一般に多官能性を有するエポキシは、硬く、耐久性があり、耐熱性の材料へと硬化するのに好ましい。特に、熱硬化性エポキシ樹脂を、接着剤として使用することができる。熱硬化性エポキシ樹脂として使用することができる樹脂の例としては、ビスフェノールエポキシ樹脂、例えば、ビスフェノールAエポキシ樹脂及びビスフェノールFエポキシ樹脂、脂肪族骨格を有するエポキシ樹脂、例えば、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリシジルアミンエポキシ樹脂、例えば、トリグリシジルアミノフェノール、ノボラックエポキシ樹脂、例えば、フェノールノボラックエポキシ樹脂及びクレゾールノボラックエポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。熱硬化性エポキシ樹脂は、フェノキシ樹脂(ビスフェノール及びエピクロロヒドリンから合成されたポリヒドロキシポリエーテル)を熱可塑性成分として更に含有してもよい。好ましい実施形態では、熱活性化接着剤層中の接着剤は、トリフェニルメタン系フェノール樹脂、及び他の樹脂を組み込んだその二元樹脂系又は三元樹脂系から得られる。
【0028】
一実施形態では、熱活性化接着剤層は、接着剤が発泡し、それによって膨張することを可能にする発泡剤を含む。発泡剤は、任意の好適な発泡剤であってよく、具体的には限定されない。発泡剤は、好ましくは温度感受性発泡剤である。発泡剤の例としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素アンモニウム、アジド類などの無機発泡剤;トリクロロモノフルオロメタンなどのフッ化アルカン、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、パラトルエンスルホニルヒドラジドなどのヒドラジン化合物、p-トルエンスルホニルセミカルバジドなどのセミカルバジド化合物、5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾールなどのトリアゾール化合物、ジニトロソテレフタルアミドなどのN-ニトロソ化合物などのN,N-有機発泡剤などが挙げられる。化学発泡剤の例は、アルミニウム粉末、NaOH、及びNaHCOsの組み合わせであり、エポキシ樹脂中で使用することができる。ポリシラザンは、エポキシ接着剤用のポリアミン硬化剤を変性するための化学発泡剤として使用することもできる。
【0029】
好ましくは、発泡剤は、熱膨張性粒子を含む。熱膨張性粒子は、ポリマーシェル中に捕捉された低沸点液体炭化水素を含むマイクロカプセルである。例示的なマイクロカプセルは、松本油脂製薬株式会社(日本)から入手可能な商標名Matsumoto Microsphere(マツモトマイクロスフェアー)(登録商標)として入手可能なものである。マイクロカプセルを加熱すると、マイクロカプセルの熱可塑性樹脂シェルが軟化し、マイクロカプセル内部の炭化水素液体が気体に変わり、その結果、マイクロカプセルが元の体積の数十倍に膨張する。更に加熱を続けると、シェル内部の気体がマイクロカプセルシェル壁を透過し、空気中に拡散し、それにより、完全硬化後の接着剤中にはマイクロカプセルのシェルのみが残る。
【0030】
熱膨張性粒子が熱開始膨張を開始する温度は、発泡開始温度(Te)として知られている。Teは、ある温度範囲にわたって生じ得る。Teは、例えば、90℃であってもよく、接着剤が十分に軟らかくなってから発泡が開始しやすいという観点から、95℃以上又は100℃以上であってもよい。更に、発泡剤の発泡開始温度Teは、例えば、140℃以下であってもよく、接着剤(A)の硬化前に十分な膨張倍率を容易に得ることができるという観点から、135℃以下又は130℃以下であってもよい。
【0031】
熱活性化接着剤は、他の添加剤を更に含んでもよい。エポキシなどの接着剤の硬化を促進させるために、硬化剤が含まれてもよい。高温硬化性接着剤の硬化を促進させるために、高温潜在性硬化剤を使用してもよい。一実施形態では、熱活性化接着剤層は、エポキシ接着剤及びイミダゾールなどの潜在性硬化剤を含む。フェノキシ樹脂などの添加剤は、可撓性、靭性、接着凝集強度、並びに耐薬品性、耐腐食性、及び耐熱性を付与することができる。耐衝撃性改良剤、無機充填剤粒子、カップリング剤などの他の添加剤は、エポキシ接着剤の分野で一般に採用されている。
【0032】
熱活性化の前に、接着剤透過性カバー層は、熱活性化接着剤層を取り扱い中の損傷から保護し、粘着性接着剤層表面によって拾い上げられ得る汚染物質との直接接触を防止することによって汚染を低減するように機能する。熱活性化接着剤に対して透過性である限り、接着剤透過性カバー層を構成する材料として任意の好適な材料を選択することができる。材料はまた、スロットライナのためのプロセス全体を通して使用される硬化温度及びステータの動作温度までの温度に耐えるべきである。多孔性である織物、紙、及び不織布が、この目的に好適であり得る。接着剤透過性カバー層の材料としては、天然繊維、ポリマー繊維、又はそれらの混合物ベースの不織布が好ましい。不織布の例としては、例えば、ガラス繊維不織布、ポリエステル不織布、芳香族ポリアミド(アラミド)不織布、ポリオレフィン系不織布、ポリスルホン系不織布、ポリアラミド不織布、ポリフェニルサルファイド系不織布、ポリエステル系不織布、及びナイロン系不織布が挙げられる。不織布は、典型的には、不織布材料への接着剤の浸透を可能にする50%以上の大きな流体接続された繊維間空隙率を有する。加熱すると、熱活性化接着剤層中の接着剤は、接着剤透過性カバー層の1つの表面を透過する。接着剤が不織布材料に入ると、より多くの接着剤を引き込むウィッキング効果が発生し、接着剤透過性カバー層を飽和させる。下の膨張する接着剤からの静水圧が増加すると、接着剤透過性カバー層に向かって押された接着剤は、接着剤透過性カバー層の上面から自由に滲出することができる。
【0033】
図3は、ステータのスロット内に配置されたスロットライナ200の断面図であり、スロットライナが熱的に活性化されて硬化され、スロットライナがステータ内のスロットの壁210と銅巻線212との間に配置された最終状態にある。加熱すると、熱活性化接着剤層204、205は、2つの変化を経験する。第1に、それは流動性ゲル又は流体に変わり、第2に、その中に存在する熱膨張性粒子は、温度に応じて活発に又は遅くなり得る発泡効果を伴って膨張する。これらの2つの変化は、接着剤を図3に示される黒い矢印の方向に両側で外向きに、各側の接着剤透過性カバー層に向かって膨張させ、それによって、接着剤透過性カバー層に接着剤を浸み込ませ、飽和させる。接着剤が膨張し続けると、接着剤は最終的に接着剤透過性カバー層の外面から滲出して、接着剤層2041、2051を形成する。その結果、接着剤層2041、2051は、接着剤透過性カバー層と、それぞれ、ステータスロットの壁210及び銅巻線212との間に挿入される。ここで熱活性化接着剤層が完全に膨張した状態で、接着剤透過性カバー層は、膨張した接着剤内部に本質的に埋め込まれる。ここで、膨張した接着剤を硬化させることによって、スロットライナ200とステータのスロット壁並びに銅巻線との間に接着が確立され、それによって、機構に機械的安定性が提供される。それはまた、ある程度の熱伝導を容易にし、導電性巻線において発生した熱は、接着剤を介して導電性巻線から離れてステータに向かって伝導され得る。
【0034】
熱活性化接着剤層の厚さは、具体的には限定されず、例えば、200μm以下であってもよく、良好な作業性の観点から、100μm以下、80μm以下、又は60μm以下であってもよい。
【0035】
基材と比較して、接着剤透過性カバー層は、加熱冷却サイクル後に異なるレベルの収縮を経験し得る。この結果、スロットライナ内に残留応力が生じ、その結果、接着剤透過性カバー層が基材から分離する際にスロットライナの縁部がカールする傾向があり、その結果、層間剥離が生じる。接着剤シートの縁部では、発泡は、熱活性化接着剤層が基材と接着剤透過性カバー層との間で制限されているスロットライナの内側部分と比較して、境界面のない自由発泡に起因して、より活発である。その結果、スロットライナの縁部で層間剥離が生じる傾向が高くなる。したがって、本発明者らは、スロットライナの縁部が有利に封止され得ることを見出した。シール209は、スロットライナの縁部を一緒に保持し、膨張する接着剤がスロットライナの縁部に向かって横方向に膨張し、そこから滲出することを防止する不透過性シールを提供する。
【0036】
シールの材料は具体的には限定されない。ステータが動作する高温環境に起因して、シールは、好ましくは、熱によって影響されないままであり、長年の動作を通して多くの加熱及び冷却サイクルにわたって耐久性があるべきである耐熱性材料から構成される。シールは、スロットライナの縁部の上に積層されたシーリング接着テープを含んでもよい。これは、スロットライナの挿入の前に行われてもよく、すなわち、縁部封止されたスロットライナが、挿入のために予め製造される。スロットライナ縁部はまた、スロットライナをステータのスロットに挿入した後に、スロットライナのスライシング及び挿入プロセスに対する好適な修正によって封止することができる。
【0037】
より好ましくは、シールは、スロットライナをステータに組み付けるプロセス中にスロットライナ縁部にシーリング組成物を適用することによって形成される。好ましい実施形態では、シール及びシーリング組成物は、ウレタン接着剤、エポキシ接着剤、及びアクリル接着剤から選択される接着剤を含む。例えば、3M(商標)Scotch-Weld(商標)ウレタン接着剤及び3M(商標)Scotch-Weld(商標)エポキシ接着剤による熱硬化接着剤を使用することができる。別の実施形態では、シールは瞬間接着剤を含む。例示的な瞬間接着剤としては、シアノアクリレート接着剤3M(商標)Scotch-Weld(商標)瞬間接着剤が挙げられる。別の実施形態では、シールはシリコーン接着剤を含む。高温シリコーンを含むシールは、ステータを収容している機器が異なる気候条件で動作することを可能にする場合のように、シリコーンが広範囲の温度に耐えることができることに起因して、有利であり得る。スロットライナ縁部に適用されるシーリング組成物は、好ましくは、高粘度流体の形態の接着剤であるように配合される。粘性液体、又はより好ましくはゲル若しくはゼリー、又はペーストの形態の揺変性及び粘性である接着剤は、正確な分配のための非滴下品質を達成するのに役立ち得る。粘度は具体的には限定されない。例えば、500センチポアズ(0.5Pa.s)を超え、50000センチポアズ(50Pa.s)までの粘度を有する液体及びゲルを使用することができる。シーリング組成物を直接分配するために、50,000センチポアズ(50Pa.s)を超える、又は好ましくは80,000センチポアズ(80Pa.s)を超える粘度を有するゼリー又はペーストを使用することができる。シーリング組成物によるスロットライナ縁部のディップコーティングが行われる場合、使用されるシーリング組成物は、液体又はゲルとして配合され得る。垂直に配置された縁部上に分配するために、シーリング組成物は、好ましくは粘性の非サグゼリー又はペーストである。
【0038】
硬化したシールの厚さは、具体的には限定されず、スロットライナの個々の層の厚さよりも厚くても、薄くても、あるいは、同等であってもよい。例えば、熱活性化接着剤層の厚さと同等であってもよい。硬化したシールの厚さは、50μm以上、100μm以上、又は500μm以上であってもよい。
【0039】
図4は、スロットライナがスロットのうちのいくつかに組み付けられたステータ310の斜視図である。スロットライナ300は、その長縁部309が封止されているものとして示されている。長縁部309は、矢印331によって示されるように、ステータ310の長手方向軸に平行に延びる縁部を指す。スロットライナ400は、その短縁部409が封止されているものとして示されている。短縁部409は、矢印332によって示されるように、ステータ310の半径方向軸に平行に延びる縁部を指す。図5は、折り目の間に配置された銅(coper)巻線512を有するスロットライナ500の斜視図である。この図では、長縁部及び短縁部を含む全ての縁部509が封止されている。
【0040】
上記の図によれば、本発明は、スロットライナの縁部を封止する便利な方法であって、電気絶縁性基材層と、基材層の第1の表面上に配置された第1の熱活性化接着剤層と、第1の熱活性化接着剤層上に配置された第1の接着剤透過性カバー層と、を備え、層のうちの少なくとも2つが一緒に延び、縁部で終端する、連続多層シートを提供することと、シートの一部を繰り返し切断してスロットライナを形成し、全てのスロットが充填されるまでスロットライナをステータのスロット内に配置することと、スロットライナの縁部にシーリング組成物を適用することと、シーリング組成物を硬化させて、スロットライナの縁部を覆うシールを形成することと、を含む、方法を提供する。シーリング組成物は、接着剤中で縁部をディップコーティングすることによって、又は接着剤を縁部上に直接分配するためにディスペンサーを使用することによって、短縁部に適用され得る。長縁部については、ステータの中央ボアホール内に挿入されるように設計されたアプリケータを使用してシーリング組成物が適用され得る。スロットライナの縁部へのシーリング組成物の適用は、個別にかつ連続的に行うことができ、又はより好ましくは、シーリング組成物を縁部上にバッチ方式で分配するように設計されたアプリケータを使用してバッチ方式で行うことができる。マルチノズルディスペンサーなどの好適なアプリケータを使用して、シーリング組成物をいくつかのスロットライナ縁部に同時に適用することができる。使用される接着剤に応じて、シーリング組成物は、必要な硬化温度まで加熱することによって、紫外線下で硬化させることによって、又は乾燥させることによって熱的に硬化させることができる。
【0041】
その後、ステータのスロット内への導電性巻線の組み付けを行うことができる。導電性巻線が組み付けられた後、ステータを加熱して、スロットライナ内の熱活性化接着剤層に存在する接着剤を活性化及び硬化させる。
【0042】
熱活性化接着剤及びシーリング組成物中の熱膨張性粒子及び接着剤は、熱膨張性粒子の熱活性化及び接着剤の硬化温度が相互に適合するように選択することができる。一実施形態では、スロットライナは、第1のステップにおいて、接着剤層中の熱膨張性粒子の膨張及び発泡を開始するために第1の温度T1に予熱することによって、かつ、第2のステップにおいて、スロットライナを第2の温度T2に更に加熱することによって硬化され、ここでT2>T1である。この選択された温度T1は、好ましくは、接着剤の膨張が過度に活発でないことを確実にし、熱膨張性粒子からの気体の放出に時間を与えて、硬化した接着剤中に大きな空隙をもたらし得る捕集ガスを回避するために、十分に低い。T2は、熱膨張性粒子が完全に膨張することを確実にするように選択される。
【0043】
T1及びT2は具体的には限定されない。一実施形態では、T1は50~150℃であり、より好ましくは80~110℃である。T2は、T1よりも高く、100~200℃の間、より好ましくは130~190℃の間である。熱膨張性粒子の発泡開始温度Teは、T1≦Te<T2の範囲になることが好ましい。更に、シーリング組成物を同時に硬化させることが望ましい場合、シーリング組成物の硬化温度Tsを、第1の加熱ステップにおいてT1で硬化するように、T1未満に設定することができる。代替的に、第2の加熱ステップにおいてT2で硬化するように、T1よりも高いが、T2以下に設定してもよい。純粋に一例として、熱膨張性粒子がTe=140℃であるように選択される場合、第1の加熱ステップはT1=100℃であり得、第2の加熱ステップはT2=160℃であり得、シーリング組成物はTs=160℃の硬化温度を有する。
【0044】
次に、本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例0045】
実施例1
本実施例では、熱活性化接着剤層は、図6の表1に列挙される成分を使用して調製された。成分を混合して接着剤組成物を形成し、次いでこれを75μmのPENフィルム(東洋紡フイルムソリューション株式会社からのTeonex(テオネックス)(商標)Q5175)の片側にコーティングした。接着剤組成物のコーティング重量は片側で35g/mであった。100℃のオーブン中で乾燥させた後、コーティングされた表面に、接着剤透過性カバー層としてポリエステルシート(大王製紙株式会社、坪量23g/m)を積層した。接着剤透過性カバー層の積層後、多層シートを再び87℃で加熱した。同じ接着剤組成物をPENフィルムの他方の側にコーティングし、次いで乾燥させ、再びポリエステルシートを積層して、5層多層シートを形成した。
【0046】
次に、多層シートからの一部を切断して、15mm×40mmの寸法の4つのスロットライナ試験片(参照例1、比較例1、実施例1、実施例2)を得た。スロットライナ縁部を封止するための、図7の表2に列挙されるような3つの異なる接着剤シーリング組成物(A、B、C)を調製した。参照例1にはシーリング組成物を適用しなかった。比較例1では、低粘度液体であるシーリング組成物Aをその縁部に適用した。シーリング組成物B及びCは、それぞれ、高粘度ゼリー及び樹脂ペーストであり、実施例1及び実施例2の試験片の縁部にポッティングされた。試験片を1日置いた後、各試験片を2つのSPCC試験片の間の1.65mmの間隙にセットし、熱プレス機内で、160℃で5分間にわたる1段階熱処理で硬化させた。次いで、硬化した試験片を分析した。
【0047】
光学顕微鏡(VHZ20、株式会社キーエンス)を使用して、各試験片の収縮を測定し、層間剥離の有無を目視で調べた。式1を適用する:
【数1】
データを収集し、収縮率を計算し、図8の表3にまとめた。参照例1及び比較例1の試験片は収縮し、接着剤透過性カバー層が基材から層間剥離したことが観察された。高粘度シアノアクリレート接着剤で縁部封止された実施例1及び実施例2は、はるかに低い収縮を示し、縁部で層間剥離を示さなかった。
【0048】
実施例2
この実施例では、スロットライナの熱活性化接着剤層を活性化及び硬化させるための2段階熱処理を、スロットライナの縁部を封止することなく、熱活性化接着剤層の膨張及び収縮に対するその効果について評価した。第1の加熱ステップは、熱膨張性粒子の発泡開始温度であるTe以下のより低い温度で行われる。
【0049】
熱活性化接着剤層は、図6の表1に列挙される成分を使用して同様に調製された。メチルエチルケトン(Methyl Ethyl Ketone、MEK)を溶媒として使用し、成分の混合を補助した。表1の配合情報は、乾燥重量パーセント基準(すなわち、溶媒なし)で提供される。成分を混合して熱活性化接着剤組成物を形成し、次いでこれを75μmのPENフィルム(東洋紡フイルムソリューション株式会社からのTeonex(テオネックス)(商標)Q5175)の片側にコーティングした。オーブン中で乾燥させた後、コーティングされた表面に、接着剤透過性カバー層としてポリエステルシート(大王製紙株式会社、坪量23g/m)を積層した。接着剤組成物のコーティング重量は片側当たり35g/mであった。接着剤透過性カバー層の積層後、多層シートを87℃で加熱した。同じ接着剤組成物をPENフィルムの他方の側にコーティングし、次いで乾燥させ、再びポリエステルシートを積層して、5層多層シートを形成した。
【0050】
次に、多層シートからの一部を切断して、15mm×40mmの寸法の7つのスロットライナ試験片(参照例1、比較例1、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、及び実施例6)を得た。第1の加熱ステップの持続時間は、各試験片について変動した。参照例1については、第1の加熱ステップの持続時間は0分であった。比較例1については、第1の加熱ステップは10分であった。実施例1~実施例6ついては、第1の加熱ステップの持続時間は、20分(実施例1)から60分(実施例6)まで増加した。第1の加熱ステップの温度を、約140℃である熱膨張性粒子のTeよりも低い、100℃に設定した。その後、各試験片を2枚のSPCC試験片間の1.65mmの間隙にセットし、160℃で5分間にわたる2段階加熱ステップ処理で硬化させた。次いで、硬化した試験片を分析した。
【0051】
各試験片の初期厚さ、第1の加熱ステップ後の厚さ、及び第2の加熱ステップ後の厚さを、厚さゲージ(株式会社ミツトヨ)を使用して初期測定した。厚さ測定値から、発泡率を式2を用いて計算した:
【数2】
【0052】
光学顕微鏡(VHZ20、株式会社キーエンス)を使用して、各試験片の収縮率を測定し、式1に従って各試験片の収縮率を計算した。また、試験片の層間剥離を調べた。収集したデータを使用し、発泡率及び収縮率を計算し、図9の表4にまとめた。
【0053】
実施例1~実施例5では、参照例1に比べて発泡率及び収縮率の両方に低かった。一般に、実施例1~実施例5は、1.5%未満、又はより具体的には1.3%未満の収縮を達成し、層間剥離は生じなかった。参照例1及び比較例1の両方で層間剥離が生じた。
【0054】
要約すると、これらの結果に照らして、T、次いでT2での2段階加熱プロセス(T1≦Te<T2、かつTe=熱膨張性粒子の発泡開始温度)は、加熱及び発泡プロセス中の接着剤の膨張率を緩和することができ、これにより、硬化後の接着剤透過性カバー層の収縮が有利に低減されることが見出された。代替的に、熱膨張性粒子の発泡の勢いを制御するために、TからT2まで、温度を直線的に、指数関数的に、又は対数的に上昇させることによって、加熱プロセスを適宜変動させ得ることも想到される。
【0055】
本発明の様々な他の修正形態及び適合形態は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、前述の開示を読んだ後には当業者に明らかであり、全てのそのような修正形態及び適合形態は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】