(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093033
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】環境構築装置、システム、方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 8/70 20180101AFI20240702BHJP
G06F 11/34 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G06F8/70
G06F11/34 176
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209129
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】窪庭 亮太
【テーマコード(参考)】
5B042
5B376
【Fターム(参考)】
5B042MA08
5B042MC38
5B376AA34
5B376DA16
(57)【要約】
【課題】インフラ構築を自動化する環境構築処理の正常な動作を支援すること。
【解決手段】環境構築装置(10)は、所定の情報システムにおける特定の環境構築処理の実行結果と、当該環境構築処理の実行時に用いられた複数の環境要素の処理条件情報と、を対応付けた複数の履歴情報を登録する登録部(11)と、特定の環境構築処理の実行要求に応じて、複数の履歴情報の中から、成功を示す実行結果に対応付けられた処理条件情報を特定する特定部(12)と、特定された処理条件情報に対応する各環境要素を用いて環境構築処理を実行する実行部(13)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の情報システムにおける特定の環境構築処理の実行結果と、当該環境構築処理の実行時に用いられた複数の環境要素の処理条件情報と、を対応付けた複数の履歴情報を登録する登録手段と、
前記特定の環境構築処理の実行要求に応じて、前記複数の履歴情報の中から、成功を示す前記実行結果に対応付けられた前記処理条件情報を特定する特定手段と、
前記特定された処理条件情報に対応する各環境要素を用いて前記環境構築処理を実行する実行手段と、
を備える環境構築装置。
【請求項2】
前記実行手段は、前記情報システムの環境を構築するために作成されたIaC(Infrastructure as code)に基づき動作する環境構築ツールを用いて、前記環境構築処理を実行する
請求項1に記載の環境構築装置。
【請求項3】
前記複数の環境要素は、前記IaC、前記環境構築ツール、及び、前記情報システムの運用環境の設定情報、並びに、前記IaC、前記環境構築ツール及び前記情報システムの運用環境の少なくともいずれかから参照される参照情報のうち、少なくとも2以上である
請求項2に記載の環境構築装置。
【請求項4】
前記処理条件情報は、前記IaC、前記環境構築ツール、前記運用環境の設定情報、及び、前記参照情報のそれぞれのバージョン情報の組合せである
請求項3に記載の環境構築装置。
【請求項5】
前記特定手段は、前記複数の履歴情報の中から、前記実行結果が成功を示す各履歴情報に含まれる前記組合せのうち、最新のバージョン情報の組合せを前記処理条件情報として特定する
請求項4に記載の環境構築装置。
【請求項6】
前記特定手段は、前記複数の履歴情報の中から、前記実行結果が成功を示す各履歴情報に含まれる前記組合せのうち、より直近に実行されたバージョン情報の組合せを前記処理条件情報として特定する
請求項4に記載の環境構築装置。
【請求項7】
前記実行結果は、前記情報システムのテスト環境に対して特定の前記処理条件情報を用いて前記特定の環境構築処理が実行された結果である
請求項1に記載の環境構築装置。
【請求項8】
記憶装置と、
前記記憶装置と接続された情報処理装置と、を備え、
前記情報処理装置は、
所定の情報システムにおける特定の環境構築処理の実行結果と、当該環境構築処理の実行時に用いられた複数の環境要素の処理条件情報と、を対応付けた複数の履歴情報を前記記憶装置に登録する登録手段と、
前記特定の環境構築処理の実行要求に応じて、前記複数の履歴情報の中から、成功を示す前記実行結果に対応付けられた前記処理条件情報を特定する特定手段と、
前記特定された処理条件情報に対応する各環境要素を用いて前記環境構築処理を実行する実行手段と、
を備える環境構築システム。
【請求項9】
コンピュータが、
所定の情報システムにおける特定の環境構築処理の実行結果と、当該環境構築処理の実行時に用いられた複数の環境要素の処理条件情報と、を対応付けた複数の履歴情報を記憶装置に登録し、
前記特定の環境構築処理の実行要求に応じて、前記複数の履歴情報の中から、成功を示す前記実行結果に対応付けられた前記処理条件情報を特定し、
前記特定された処理条件情報に対応する各環境要素を用いて前記環境構築処理を実行する、
環境構築方法。
【請求項10】
所定の情報システムにおける特定の環境構築処理の実行結果と、当該環境構築処理の実行時に用いられた複数の環境要素の処理条件情報と、を対応付けた複数の履歴情報を記憶装置に登録する登録処理と、
前記特定の環境構築処理の実行要求に応じて、前記複数の履歴情報の中から、成功を示す前記実行結果に対応付けられた前記処理条件情報を特定する特定処理と、
前記特定された処理条件情報に対応する各環境要素を用いて前記環境構築処理を実行する実行処理と、
をコンピュータに実行させる環境構築プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、環境構築装置、システム、方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報システムの環境構築を自動化する手法としてIaC(Infrastructure as Code)と呼ばれる手法が普及しつつある。IaCを実現する環境構築ツール(又はオーケストレータ)は、IaCコードと呼ばれるプログラムコードを用いて、環境構築処理を実行する。IaCコードは、環境構築処理や環境ごとの設定値等が記述されたスクリプトファイルである。
【0003】
特許文献1には、構築対象システムの構成管理に関する技術が開示されている。特許文献1では、IaCに基づいて構築対象システムが構築される。そして、構築対象システムを構成する機器に設定変更がされた場合に、構築対象システムの構成が変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
運用対象の情報システムにおける環境構築処理を任意のタイミングで実行した場合、環境構築処理に関連する様々な外的要因により実行が失敗することがある。そのため、インフラ構築を自動化する環境構築処理を正常に動作させるための技術が求められる。
【0006】
本開示の目的は、上述した課題を鑑み、インフラ構築を自動化する環境構築処理の正常な動作を支援するための環境構築装置、システム、方法、及び、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる環境構築装置は、
所定の情報システムにおける特定の環境構築処理の実行結果と、当該環境構築処理の実行時に用いられた複数の環境要素の処理条件情報と、を対応付けた複数の履歴情報を登録する登録手段と、
前記特定の環境構築処理の実行要求に応じて、前記複数の履歴情報の中から、成功を示す前記実行結果に対応付けられた前記処理条件情報を特定する特定手段と、
前記特定された処理条件情報に対応する各環境要素を用いて前記環境構築処理を実行する実行手段と、
を備える。
【0008】
本開示にかかる環境構築システムは、
記憶装置と、
前記記憶装置と接続された情報処理装置と、を備え、
前記情報処理装置は、
所定の情報システムにおける特定の環境構築処理の実行結果と、当該環境構築処理の実行時に用いられた複数の環境要素の処理条件情報と、を対応付けた複数の履歴情報を前記記憶装置に登録する登録手段と、
前記特定の環境構築処理の実行要求に応じて、前記複数の履歴情報の中から、成功を示す前記実行結果に対応付けられた前記処理条件情報を特定する特定手段と、
前記特定された処理条件情報に対応する各環境要素を用いて前記環境構築処理を実行する実行手段と、
を備える。
【0009】
本開示にかかる環境構築方法は、
コンピュータが、
所定の情報システムにおける特定の環境構築処理の実行結果と、当該環境構築処理の実行時に用いられた複数の環境要素の処理条件情報と、を対応付けた複数の履歴情報を記憶装置に登録し、
前記特定の環境構築処理の実行要求に応じて、前記複数の履歴情報の中から、成功を示す前記実行結果に対応付けられた前記処理条件情報を特定し、
前記特定された処理条件情報に対応する各環境要素を用いて前記環境構築処理を実行する。
【0010】
本開示にかかる環境構築プログラムは、
所定の情報システムにおける特定の環境構築処理の実行結果と、当該環境構築処理の実行時に用いられた複数の環境要素の処理条件情報と、を対応付けた複数の履歴情報を記憶装置に登録する登録処理と、
前記特定の環境構築処理の実行要求に応じて、前記複数の履歴情報の中から、成功を示す前記実行結果に対応付けられた前記処理条件情報を特定する特定処理と、
前記特定された処理条件情報に対応する各環境要素を用いて前記環境構築処理を実行する実行処理と、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示により、インフラ構築を自動化する環境構築処理の正常な動作を支援するための環境構築装置、システム、方法、及び、プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態1にかかる環境構築装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態1にかかる環境構築方法の流れを示すフローチャートである。
【
図3】本実施形態2にかかる環境構築システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態2にかかる環境構築装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】本実施形態2にかかるテスト履歴DBの構成を示す図である。
【
図6】本実施形態2にかかる環境構築処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】本実施形態2にかかるテスト履歴DBの例を示す図である。
【
図8】本実施形態3にかかる環境構築処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0014】
<実施形態1>
図1は、本実施形態1にかかる環境構築装置10の構成を示すブロック図である。環境構築装置10は、所定の情報システムの環境構築処理を実行するための情報処理装置である。ここで、環境構築処理は、情報システムの実行環境の構築をソフトウェアにより自動化する処理である。情報システムの実行環境とは、サーバやネットワーク機器等のハードウェアの構成、サーバ等で動作するOS(Operating System)、ミドルウェア、アプリケーション、ドライバ等のソフトウェアの構成、ネットワーク構成等を含む。また、情報システムの実行環境は、情報システムが実運用される運用環境と、情報システムの開発時、リリース前の動作確認、運用中の障害調査等に用いられるテスト環境とを含む。情報システムの実行環境は、仮想システムで実現される仮想環境を含む。つまり、運用環境及びテスト環境の両方、又は、いずれか一方は、仮想環境を含んでも良い。
【0015】
また、環境構築処理は、上述したIaCコード等を用いて環境構築ツールの実行により実現されてもよい。IaCコード、環境構築ツール又は実行環境(運用環境やテスト環境)は、外部組織により開発され、提供されるパッケージソフトウェア(モジュール群)等を示す参照情報を参照する場合があるものとする。IaCコード、環境構築ツール、実行環境、又は、参照情報等は、情報システムの環境構築処理に影響を与え得る環境要素である。環境構築処理に与える影響とは、環境構築処理の実行内容や実行結果の変化であり、例えば、環境構築処理の実行に失敗すること、環境構築処理が正常の動作しないこと等が挙げられる。但し、環境構築処理に与える影響は、これらに限定されない。
【0016】
環境構築装置10は、登録部11、特定部12及び実行部13を備える。登録部11は、所定の情報システムにおける特定の環境構築処理の実行結果と、当該環境構築処理の実行時に用いられた複数の環境要素の処理条件情報と、を対応付けた複数の履歴情報を登録する。ここで、登録部11は、環境構築装置10の内部又は外部の記憶装置(不図示)へ、履歴情報を登録する。また、実行結果は、成功又は失敗の少なくともいずれかを示す情報を含むものとする。また、処理条件情報とは、環境構築処理を実行する際に用いられる情報の条件を示す情報である。例えば、処理条件情報とは、複数の環境要素のバージョン情報等の組合せである。
【0017】
特定部12は、特定の環境構築処理の実行要求に応じて、複数の履歴情報の中から、成功を示す実行結果に対応付けられた処理条件情報を特定する。
【0018】
実行部13は、特定された処理条件情報に対応する各環境要素を用いて環境構築処理を実行する。具体的には、実行部13は、情報システムの運用環境に対して、特定部12が特定した処理条件情報を用いた環境構築処理を実行する。
【0019】
図2は、本実施形態1にかかる環境構築方法の流れを示すフローチャートである。まず、登録部11は、所定の情報システムにおける特定の環境構築処理の実行結果と、当該環境構築処理の実行時に用いられた複数の環境要素の処理条件情報と、を対応付けた複数の履歴情報を記憶装置に登録する(S11)。次に、特定部12は、特定の環境構築処理の実行要求に応じて、複数の履歴情報の中から、成功を示す実行結果に対応付けられた処理条件情報を特定する(S12)。そして、実行部13は、特定された処理条件情報に対応する各環境要素を用いて環境構築処理を実行する(S13)。
【0020】
このように、本実施形態にかかる環境構築装置10は、事前に実行済みの環境構築処理の実行結果の履歴情報に、環境構築処理時に用いられた複数の環境要素の処理条件情報を含めて記録しておく。そして、任意のタイミングで特定の環境構築処理の実行要求を受け付けた場合に、環境構築装置10は、環境構築処理の実行に成功した際の処理条件情報を用いて、環境構築処理を実行する。そのため、環境構築処理の実行の失敗確率を軽減できる。つまり、インフラ構築を自動化する環境構築処理の正常な動作を支援することができる。
【0021】
尚、環境構築装置10は、図示しない構成としてプロセッサ、メモリ及び記憶装置を備えるものである。また、当該記憶装置には、本実施形態にかかる環境構築方法の処理が実装されたコンピュータプログラムが記憶されている。そして、当該プロセッサは、記憶装置からコンピュータプログラム等を前記メモリへ読み込ませ、当該コンピュータプログラムを実行する。これにより、前記プロセッサは、登録部11、特定部12及び実行部13の機能を実現する。
【0022】
または、環境構築装置10の各構成要素は、それぞれが専用のハードウェアで実現されていてもよい。また、各装置の各構成要素の一部又は全部は、汎用または専用の回路(circuitry)、プロセッサ等やこれらの組合せによって実現されてもよい。これらは、単一のチップによって構成されてもよいし、バスを介して接続される複数のチップによって構成されてもよい。各装置の各構成要素の一部又は全部は、上述した回路等とプログラムとの組合せによって実現されてもよい。また、プロセッサとして、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、量子プロセッサ(量子コンピュータ制御チップ)等を用いることができる。
【0023】
また、環境構築装置10の各構成要素の一部又は全部が複数の情報処理装置や回路等により実現される場合には、複数の情報処理装置や回路等は、集中配置されてもよいし、分散配置されてもよい。例えば、情報処理装置や回路等は、クライアントサーバシステム、クラウドコンピューティングシステム等、各々が通信ネットワークを介して接続される形態として実現されてもよい。また、環境構築装置10の機能がSaaS(Software as a Service)形式で提供されてもよい。
【0024】
<実施形態2>
本実施形態2は、上述した実施形態1の具体的な実施例である。ここで、本実施形態が解決しようとする課題について改めて説明する。情報システムのインフラ構築を自動化するIaCにより、情報システムの実行環境を、高速、低コスト、再現性を高く、構築することができるようになった。しかしながら、以前の環境構築時に実行可能であったIaCが、次の環境構築時に動作が不可となることや、実行に失敗することが起こり得る。このようなことをIaCの劣化やIaCの鮮度が落ちるということができる。その理由は、IaCを用いた環境構築処理は、様々な外的要因(環境要素)により影響を受けるためである。外的要因としては、例えば、IaCコード自体、環境構築ツールもしくは実行環境(運用環境等)、又は、これらが参照する外部パッケージ等の変化が挙げられる。例えば、運用環境の変化には、OSの設定内容の変更(設定ファイルの更新)、パッチの適用等が含まれる。
【0025】
そのため、IaCの鮮度を保つことが難しいといえる。そして、IaCが劣化した場合、インフラエンジニアが工数をかけて作成したIaCを作成し直さなければならない可能性がある。そのため、コストが増加する。また、環境構築の自動化に対する信頼が下がる。それ故、環境構築の自動化に取り組むインフラエンジニアにおけるモチベーションがダウンするといった問題も起こり得る。そこで、これらの課題の少なくとも一部を解決するための実施形態を以下に説明する。
【0026】
図3は、本実施形態2にかかる環境構築システム1000の構成を示すブロック図である。環境構築システム1000は、運用環境100、アプリケーションリポジトリ200、IaCリモートリポジトリ300、開発端末400、環境構築装置500、テスト環境600及び外部パッケージリポジトリ700を備える。運用環境100、アプリケーションリポジトリ200、IaCリモートリポジトリ300、開発端末400、環境構築装置500、テスト環境600及び外部パッケージリポジトリ700のそれぞれは、ネットワークNを介して接続されている。尚、
図3では、運用環境100、アプリケーションリポジトリ200、IaCリモートリポジトリ300、開発端末400、環境構築装置500及びテスト環境600は、同一のネットワーク内に存在する例を示すが、環境構築システム1000はこれに限定されない。ここで、ネットワークNは、有線又は無線の通信回線である。
【0027】
運用環境100は、情報システム110が稼働し、実運用される環境である。情報システム110は、インフラ構成120とアプリケーション130を含む。インフラ構成120は、ネットワーク要素121、ハードウェア要素122、OS123及びミドルウェア124を含む。尚、インフラ構成120は、物理的な構成もしくは仮想的な構成のいずれか、又は、これらの組合せであり、これらの設定情報を含む。ネットワーク要素121は、通信機器やサーバ内のネットワーク機能等である。ハードウェア要素122は、サーバ等のコンピュータである。OS123は、サーバ等で動作する基本ソフトである。ミドルウェア124は、OS123上で動作し、アプリケーション130を実行させるためのソフトウェアである。アプリケーション130は、ミドルウェア124上で動作するソフトウェア群であり、運用対象のソフトウェア及び設定情報を含む。
【0028】
テスト環境600は、情報システム110のテスト版である情報システム610が稼働し、運用環境100に対応するテスト用の実行環境である。情報システム610は、インフラ構成620とアプリケーション630を含む。インフラ構成620は、ネットワーク要素621、ハードウェア要素622、OS623及びミドルウェア624を含む。インフラ構成620、ネットワーク要素621、ハードウェア要素622、OS623、ミドルウェア624のそれぞれは、上述した運用環境100内の各構成に対応する。また、アプリケーション630は、上述したアプリケーション130におけるテスト環境600向けのソフトウェア及び設定情報を含む。
【0029】
アプリケーションリポジトリ200は、アプリケーション130(及びアプリケーション630)のプログラムのソースファイルや設定ファイル、ディレクトリ構造等について、バージョン管理を行うデータベースシステムである。
【0030】
IaCリモートリポジトリ300は、情報システム110の環境構築を行うための環境構築処理が記述されたIaCコードのバージョン管理を行うデータベースシステムである。IaCリモートリポジトリ300は、複数の種類のIaCコードについて、種類ごとにバージョン管理を行っても良い。または、IaCリモートリポジトリ300は、特定の情報システム110の環境構築を行うための複数の種類のIaCコードについて、まとめてバージョン管理を行っても良い。
【0031】
開発端末400は、情報システム110の開発者、特に、環境構築を担当するインフラエンジニアが操作する情報処理装置である。開発端末400は、例えば、インフラエンジニアが情報システム110及び610の環境構築用のIaCコードを開発するために用いられる。開発端末400は、IaCローカルリポジトリ410を備える。IaCローカルリポジトリ410は、IaCコードのバージョン管理を行うデータベースシステムである。IaCローカルリポジトリ410は、開発端末400で稼働するリポジトリ用のソフトウェアと記憶領域により実現される。IaCローカルリポジトリ410は、インフラエンジニアが作成したIaCコード等を開発端末400内で管理するためのリポジトリである。そのため、IaCローカルリポジトリ410は、IaCリモートリポジトリ300で管理するIaCの少なくとも一部のIaCを管理する。そして、IaCローカルリポジトリ410に登録(更新)されたIaCコードは、IaCリモートリポジトリ300へ同期される。つまり、IaCローカルリポジトリ410へコミットされたIaCコードは、IaCリモートリポジトリ300へもコミットされる。
【0032】
外部パッケージリポジトリ700は、環境構築システム1000の外部環境に設置されたリポジトリである。外部パッケージリポジトリ700は、IaCコード、環境構築ツール5131等、インフラ構成120から参照されるソフトウェアモジュール群(外部パッケージ)や設定ファイル、ディレクトリ構造等について、バージョン管理を行うデータベースシステムである。外部パッケージは、IaC、環境構築ツール及び情報システムの運用環境の少なくともいずれかから参照される参照情報の一例である。
【0033】
尚、アプリケーションリポジトリ200、IaCリモートリポジトリ300及び外部パッケージリポジトリ700は、コンピュータサーバ群であり、各サーバで稼働するリポジトリ用のソフトウェアと記憶領域により実現される。また、運用環境100のインフラ構成120(特に設定情報)、IaCリモートリポジトリ300、IaCローカルリポジトリ410、環境構築ツール5131等、外部パッケージリポジトリ700は、環境要素の一例である。
【0034】
環境構築装置500は、上述した環境構築装置10の一例である。環境構築装置500は、実行履歴DB(DataBase)512、並びに、環境構築ツール5131、・・・513n(nは2以上の自然数。)を備える。実行履歴DB512及び環境構築ツール5131等の詳細は、後述する。尚、実行履歴DB512及び環境構築ツール5131等は、環境構築装置500の外部の記憶装置に記憶されていてもよい。また、環境構築装置500は、複数台のサーバに冗長化されてもよく、各機能ブロックが複数台のコンピュータで実現されてもよい。
【0035】
図4は、本実施形態2にかかる環境構築装置500の構成を示すブロック図である。環境構築装置500は、記憶部510、メモリ520、通信部530及び制御部540を備える。記憶部510は、ハードディスク、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶装置の一例である。記憶部510は、プログラム511、実行履歴DB512、並びに、環境構築ツール5131、・・・513nを記憶する。また、記憶部510に記憶される情報の一部又は全部は、外部の記憶装置に記憶されても良い。プログラム511は、本実施形態2にかかる環境構築処理等が実装されたコンピュータプログラム(環境構築プログラム)である。尚、記憶部510は、図示しない構成としてOSを記憶していてもよい。
【0036】
実行履歴DB512は、上述した履歴情報を管理するデータベースである。特に、本実施形態にかかる実行履歴DB512は、テスト環境600に対して実行された環境構築処理のテスト実行における履歴情報を少なくとも管理する。尚、実行履歴DB512は、運用環境100に対して実行された環境構築処理の実行における履歴情報を含んでも良い。履歴情報は、環境構築処理の実行結果と、実行時に使用された各環境要素の処理条件情報とを対応付けた情報である。ここで、実行結果は、情報システム110のテスト環境600に対して特定の処理条件情報を用いて特定の環境構築処理が実行された結果である。また、処理条件情報は、IaCコード、環境構築ツール、運用環境の設定情報及び外部パッケージのそれぞれのバージョン情報の組合せである。尚、本実施形態にかかる処理条件情報に含まれる複数の環境要素は、IaC、環境構築ツール、及び、情報システムの運用環境の設定情報、並びに、参照情報のうち、少なくとも2以上であるとよい。参照情報は、IaC、環境構築ツール及び情報システムの運用環境の少なくともいずれかから参照される情報である。
【0037】
図5は、本実施形態2にかかる実行履歴DB512の構成を示す図である。実行履歴DB512は、履歴情報5121~512m(mは2以上の自然数。)を記憶する。履歴情報5121は、履歴ID551、環境構築種別552、環境要素の処理条件情報553及び実行結果554を対応付けた情報である。履歴ID551は、履歴情報の識別情報である。履歴ID551は、実行順序に従って増加する番号を含んでもよい。つまり、履歴ID551は、他の履歴IDとの実行順序の前後関係を識別可能な情報であるとよい。尚、履歴ID551の代わりに、又は、併せて、テスト実行の日時等を用いても良い。環境構築種別552は、環境構築処理の種類を示す情報である。尚、動作確認テストのために環境構築処理が実行された場合には、環境構築種別552は、動作確認テストの種別であってもよい。環境構築種別552は、例えば、実行対象のIaCコードの種類、又は、IaCコードの識別情報等であってもよい。
【0038】
環境要素の処理条件情報553は、複数の環境要素のバージョン情報の組合せである。環境要素の処理条件情報553は、IaC5531、環境構築ツール5532、運用環境5533及び外部パッケージ5534のそれぞれのバージョン情報の組合せを示す。実行結果554は、指定された実行環境に対して、環境要素の処理条件情報553に対応する情報を用いて環境構築種別552の環境構築処理が実行された時の実行結果を示す情報である。動作確認テストの場合、実行結果554は、テスト環境600に対して実行されたテストの結果を示す情報である。尚、履歴情報5122(不図示)、・・・512mのそれぞれは、履歴情報5121と同等の構成である。
【0039】
図4に戻り説明を続ける。環境構築ツール5131等は、IaCコードに基づいて環境構築処理を実行するソフトウェアである。環境構築ツール5131等のそれぞれは、異なる種類、又は、(同一種類の)異なるバージョンのツールである。環境構築ツール5131等は、指定されたIaCコードを読み込み、実行することで、指定された環境に対する環境構築処理を実現する。尚、環境構築ツール5131等は、IaCコードの自動実行エンジンともいえる。また、環境構築ツール5131等の一部又は全ては、環境構築装置500の外部の記憶装置に保存されるか、自動実行エンジン用のサーバ内に保存されてもよい。
【0040】
ここで、複数のIaCコードは、特定の情報システム110の環境構築を行うために、個別に環境構築ツールを用いて実行されてもよい。このとき、各IaCコードの全て又は一部は、種類が共通する環境構築ツール、種類が共通するがバージョンが異なる環境構築ツール、又は、種類が異なる環境構築ツールを用いて実行されてもよい。
【0041】
メモリ520は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性記憶装置であり、制御部540の動作時に一時的に情報を保持するための記憶領域である。通信部530は、環境構築装置500と外部との通信インタフェースである。
【0042】
制御部540は、環境構築装置500の各構成を制御するプロセッサつまり制御装置である。制御部540は、記憶部510からOS及びプログラム511をメモリ520へ読み込ませ、OS及びプログラム511を実行する。これにより、制御部540は、検出部541、特定部542、テスト部543、登録部544及び実行部545の機能を実現する。
【0043】
検出部541は、情報システム110の環境構築処理に影響を与え得る環境要素の変化を検出する。ここで、環境要素は、IaC、環境構築ツール5131等、情報システム110の運用環境100の設定情報(インフラ構成120)、外部パッケージを含む。そして、環境要素の変化は、例えば、IaCの更新、環境構築ツール5131等のいずれかの更新、情報システム110の運用環境100の設定情報の更新、外部パッケージの更新を含む。そのため、検出部541は、複数の環境要素の中から変化を検出する。
【0044】
さらに、検出部541は、外部から環境要素の種類と当該環境要素に対応する処理条件情報とを含む通知を受信することにより、当該通知に含まれる環境要素の変化を検出するとよい。ここで、各環境要素に更新を検出するトリガー(GitAction等)が設定されていてもよい。例えば、環境要素である運用環境100、IaCリモートリポジトリ300、IaCローカルリポジトリ410、外部パッケージリポジトリ700は、トリガーが設定されていてもよい。また、環境構築ツール5131等が環境構築装置500の外部のサーバ等(環境要素の一例)に保存されている場合、当該サーバは、環境構築ツールの更新を検出するトリガーが設定されていてもよい。各環境要素は、トリガーにより環境要素の更新が検出された場合に、環境構築装置500へ上記通知を送信してもよい。または、各環境要素は、更新を検出した場合に、Webhook等のAPI(Application Programming Interface)通信により、上記通知を送信してもよい。または、環境構築システム1000内に監視装置(不図示)が設置され、監視装置が各環境要素の更新を監視してもよい。監視装置は、環境要素の更新が検出された場合に、環境構築装置500へ上記通知を送信してもよい。
【0045】
または、検出部541は、情報システム110における複数の環境要素の更新を定期的に監視する監視機能を有しても良い。具体的には、検出部541は、監視対象に対して上述した更新確認を送信し、受信した更新内容に応じて、環境要素の変化を検出しても良い。
【0046】
特定部542は、検出部541により変化が検出された環境要素に対応する処理条件情報を特定するとよい。例えば、特定部542は、通知に含まれる処理条件情報を特定する。また、特定部542は、変化が検出された環境要素以外の環境要素について、対応する最新の処理条件情報を特定するとよい。
【0047】
また、特定部542は、上述した特定部12の一例である。特定部542は、開発端末400等から環境構築種別の指定を含む実行要求を受信した場合、実行履歴DB512を参照し、成功を示す前記実行結果に対応付けられ、かつ、最新のバージョン情報の組合せを処理条件情報として特定する。すなわち、特定部542は、複数の履歴情報の中から、実行結果が成功を示す各履歴情報に含まれるバージョン情報の組合せのうち、最新のバージョン情報の組合せを処理条件情報として特定する。言い換えると、特定部542は、複数の履歴情報の中から、成功を示す実行結果に対応付けられた各環境要素のバージョン情報の組合せを処理条件情報として特定する。
【0048】
テスト部543は、情報システムのテスト環境600に対して、特定部542が特定した処理条件情報を用いた環境構築処理のテストを行う。つまり、テスト部543は、情報システムの運用環境100ではなく、テスト環境600に対して環境構築処理を実行することで、環境構築処理の動作を確認するテストを行う。具体的には、テスト部543は、情報システム110の環境を構築するために作成されたIaCに基づき動作する環境構築ツール5131等のいずれかを用いて、環境構築処理のテストを行う。
【0049】
登録部544は、上述した登録部11の一例である。登録部544は、テスト部543によるテストの結果と、テスト時に用いられた処理条件情報とを対応付けて履歴情報として実行履歴DB512に登録する。尚、登録部544は、運用環境100に対する環境構築処理の実行結果と、実行時に用いられた処理条件情報とを対応付けて履歴情報として実行履歴DB512に登録してもよい。
【0050】
実行部545は、上述した実行部13の一例である。実行部545は、情報システムの運用環境100に対して、特定部542が特定した処理条件情報を用いた環境構築処理を実行する。具体的には、実行部545は、情報システムの環境を構築するために作成されたIaCに基づき動作する環境構築ツール5131等のいずれかを用いて、環境構築処理を実行する。
【0051】
図6は、本実施形態2にかかる環境構築処理の流れを示すフローチャートである。まず、環境構築装置500は、テスト種別と、環境要素ごとのバージョン情報の組合せとが指定されたテスト実行要求を受信する(S311)。例えば、環境構築装置500は、開発端末400からテスト実行要求を受信する。
【0052】
次に、環境構築装置500は、テスト実行要求に指定されたテスト種別と、環境要素ごとのバージョン情報の組合せとに基づき、テスト環境に対して、環境構築処理を実行する(S312)。例えば、環境構築装置500は、指定されたテスト種別やIaCのバージョン情報に対応するIaCコードをIaCリモートリポジトリ300から取得し、指定された環境構築ツールのバージョン情報に対応する環境構築ツール5131等を特定する。また、環境構築装置500は、指定された実行環境の設定情報のバージョン情報を特定し、外部パッケージリポジトリ700から、指定された外部パッケージのバージョン情報に対応する外部パッケージを取得する。そして、環境構築装置500は、取得したIaCコードや外部パッケージを用いて、特定した実行環境の設定情報に対応するテスト環境に対して、特定した環境構築ツールを実行する。
【0053】
尚、ステップS311の代わりに、環境構築装置500は、各環境要素等から上述したトリガーにより、環境要素の更新に応じた通知を受信してもよい。または、環境構築装置500は、各環境要素に対する更新確認の更新内容を受信してもよい。これらの場合、環境構築装置500は、通知又は更新内容に基づき、環境要素の変化を検出し、検出された環境要素に対応する処理条件情報を特定する。併せて、環境構築装置500は、検出された環境要素以外の環境要素について、対応する最新の処理条件情報を特定する。そして、ステップS312の代わりに、環境構築装置500は、特定した処理条件情報に基づき、テスト環境に対して、環境構築処理を実行してもよい。
【0054】
その後、環境構築装置500は、環境構築処理の実行結果を受信する(S313)。例えば、環境構築装置500は、環境構築処理の戻り値を取得することや、環境構築処理後にテスト環境600のインフラ構成620等に対する確認コマンドを実行し、テスト実行結果を取得してもよい。
【0055】
そして、環境構築装置500は、実行結果と、実行時の処理条件情報の組合せとを対応付けて履歴情報として実行履歴DB512へ登録する(S314)。
図7は、本実施形態2にかかる実行履歴DB512の例を示す図である。
【0056】
例えば、履歴ID「H001」は、環境構築種別「IaC01」について、対応する各環境要素のバージョンの組合せにより環境構築処理が実行され、テスト実行結果が「成功」であったことを示す。履歴ID「H001」に対応する各環境要素のバージョンの組合せは、IaC「Ver. 1.1」、環境構築ツール「Ver. 2.2」、運用環境(の設定情報)「Ver. 5.7」、外部パッケージ「Ver. 8.0」であることを示す。そして、履歴ID「H001」は、実行結果が「成功」であることを示す。
【0057】
また、履歴ID「H002」は、「H001」とは異なる環境構築種別「IaC02」について、各環境要素のバージョンの組合せのうち、環境構築ツールのバージョン「Ver. 2.2」と「Ver. 2.3」で異なることを示す。例えば、履歴ID「H002」は、環境構築ツールの更新が検出されたことによりテスト実行された際の処理条件情報の組合せとその実行結果「成功」を示す。
【0058】
また、履歴ID「H003」は、「H001」と同じ環境構築種別「IaC01」について、各環境要素のバージョンの組合せのうち、IaCのバージョン「Ver. 1.2」と環境構築ツールのバージョン「Ver. 2.3」が「H001」と異なることを示す。但し、履歴ID「H003」と直近に実行された履歴ID「H002」とは、環境構築ツールのバージョン「Ver. 2.3」が同一、つまり、更新されていないことを示す。例えば、履歴ID「H003」は、IaCの更新が検出されたことによりテスト実行された際の処理条件情報の組合せとその実行結果「成功」を示す。
【0059】
また、履歴ID「H004」及び「H005」のそれぞれは、それまでに実行された「H001」~「H003」とは異なる環境構築種別「IaC03」及び「IaC04」についてのテスト実行結果が「成功」であることを示す。例えば、履歴ID「H004」は、運用環境の設定情報が「Ver. 5.7」から「Ver. 6.0」へ更新された際のテスト実行結果である。また、例えば、履歴ID「H005」は、外部パッケージが「Ver. 8.0」から「Ver. 8.1」へ更新された際のテスト実行結果である。
【0060】
また、履歴ID「H006」は、「H002」と同じ環境構築種別「IaC02」について、4種類の環境要素の全てのバージョンが異なることを示す。但し、履歴ID「H006」と直近に実行された履歴ID「H005」とは、IaCのバージョン「Ver. 1.2」、運用環境の設定情報「Ver. 6.0」、外部パッケージのバージョン「Ver. 8.1」が同一、つまり、更新されていないことを示す。例えば、履歴ID「H006」は、環境構築ツールの更新が検出されたことによりテスト実行された際の処理条件情報の組合せとその実行結果「失敗」を示す。
【0061】
また、履歴ID「H007」は、「H005」と同じ環境構築種別「IaC04」について、各環境要素のバージョンの組合せのうち、環境構築ツールのバージョン「Ver. 2.4」と外部パッケージのバージョン「Ver. 8.1」が異なることを示す。但し、履歴ID「H007」と直近に実行された履歴ID「H006」とは、環境構築ツールのバージョン「Ver. 2.4」が同一、つまり、更新されていないことを示す。例えば、履歴ID「H007」は、外部パッケージの更新が検出されたことによりテスト実行された際の処理条件情報の組合せとその実行結果「失敗」を示す。
【0062】
図6に戻り説明を続ける。その後、一定期間が経過し、環境構築装置500は、開発端末400等から環境構築種別の指定を含む実行要求を受信する(S315)。そして、環境構築装置500は、受信した実行要求に指定された環境構築種別における履歴情報のうち、成功を示す実行結果に対応付けられ、かつ、最新のバージョン情報の組合せを特定する(S316)。例えば、指定された環境構築種別が「IaC02」の場合、履歴ID「H006」の実行結果が「失敗」を示すため、履歴ID「H006」は選択されない。そこで、環境構築装置500は、実行履歴DB512の中から、環境構築種別が「IaC02」であり、実行結果が「成功」を示す履歴ID「H002」を特定する。そして、環境構築装置500は、履歴ID「H002」に対応付けられた環境要素の処理条件情報553のバージョン情報の組合せを特定する。
図7の例では、環境構築装置500は、IaC「Ver. 1.1」、環境構築ツール「Ver. 2.3」、運用環境(の設定情報)「Ver. 5.7」、外部パッケージ「Ver. 8.0」を特定する。
【0063】
そして、環境構築装置500は、特定したバージョン情報の組合せに対応する各環境要素を用いて、運用環境に対して、環境構築処理を実行する(S317)。例えば、環境構築装置500は、IaCリモートリポジトリ300から、「Ver. 1.1」のIaCコードを取得する。また、環境構築装置500は、環境構築ツール5131等の中から、「Ver. 2.3」の環境構築ツールを特定する。また、環境構築装置500は、「Ver. 5.7」の運用環境100のインフラ構成120の設定情報を特定する。また、環境構築装置500は、外部パッケージリポジトリ700から、「Ver. 8.0」の外部パッケージを取得する。そして、環境構築装置500は、特定した「Ver. 5.7」の運用環境100に対して、取得したIaCコード及び外部パッケージを用いて、特定した環境構築ツールを実行する。
【0064】
これにより、環境構築装置500は、指定された環境構築種別において過去に実行された処理条件情報のうち、最新のバージョン情報を用いて環境構築処理を実行できる。そのため、任意のタイミングで環境構築処理を要求されたとしても、環境構築処理が正常に動作する確率を向上させることができる。よって、インフラ構築を自動化する環境構築処理の正常な動作を支援することができる。言い換えると、IaCの動作に影響を与える要因の変化によらず、IaCの動作保証を維持することができる。
【0065】
尚、環境構築装置500は、ステップS317の実行結果と処理条件情報の組合せとを、実行要求の要求元(例えば、開発端末400)へ送信してもよい。または、環境構築装置500は、ステップS317の実行結果と処理条件情報の組合せとを履歴情報として実行履歴DB512に登録してもよい。これにより、インフラエンジニア等は、環境構築処理の動作保証が維持されているか否かを把握でき、仮に不十分な結果であっても、IaCの劣化を早目に把握することができ、適切な対応(IaCその他の修正等)を実施できる。そのため、IaCの鮮度を保つことができる。
【0066】
<実施形態3>
本実施形態3は、上述した実施形態1の具体的な他の実施例である。上述した実施形態2のように、複数の環境要素のそれぞれの最新のバージョンを用いる場合とは別の観点として、直近でテスト実行され、かつ、実行に成功したバージョンの組合せを用いても良い。例えば、ある環境要素のバージョンを上げたことにより、他の環境要素のバージョンを下げなければ、環境構築処理が成功しない場合もあるためである。
【0067】
そこで、本実施形態3にかかる特定部542は、複数の履歴情報の中から、実行結果が成功を示す各履歴情報に含まれる処理条件情報の組合せのうち、より直近に実行されたバージョン情報の組合せを処理条件情報として特定する。言い換えると、本実施形態3にかかる特定部542は、複数の履歴情報の中から、より直近に実行され、かつ、成功を示す実行結果に対応付けられたバージョン情報の組合せを処理条件情報として特定する。尚、本実施形態3にかかる環境構築システムの他の構成は、上述した環境構築システム1000と同様であるため、重複する説明を適宜省略する。
【0068】
図8は、本実施形態3にかかる環境構築処理の流れを示すフローチャートである。ステップS311からS315は、上述した
図6と同様である。その後、環境構築装置500は、指定された環境構築種別における履歴情報のうち、成功を示す実行結果に対応付けられ、かつ、より直近に実行されたバージョン情報の組合せを特定する(S316b)。その後、環境構築装置500は、上述したステップS317を実行する。
【0069】
このように本実施形態では、必ずしも複数の環境要素の全てについて最新のバージョン情報の組合せとは限らない。例えば、一部の環境要素のバージョン情報は、過去に実行に成功したバージョン情報よりも低い可能性がある。しかしながら、より直近に実行し、成功したバージョン情報の組合せであるため、環境構築処理が正常に動作する確率が高いといえる。例えば、環境要素Aの変化の影響により、他の環境要素Bで過去に実行に成功したバージョン情報では実行に失敗し、その後、環境要素Bのバージョンを下げたことにより、環境構築処理に成功したとする。つまり、環境要素の単体において過去に実行結果が成功を示す最新のバージョンだとしても、他の環境要素との組合せにより、失敗する可能性がある。そのため、直近に実行に成功した複数の環境要素のバージョン情報の組合せを用いることで、インフラ構築を自動化する環境構築処理の正常な動作を支援することができる。
【0070】
<その他の実施形態>
尚、履歴情報は、同一の環境構築種別において、実行結果が成功を示し、かつ、最新のバージョン情報の組合せである場合に最新状態フラグが設定されてもよい。または、履歴情報は、同一の環境構築種別において、実行結果が成功を示し、かつ、(最新でなくても)より直近に実行されたバージョン情報の組合せである場合に最新状態フラグが設定されてもよい。これらの場合、例えば、環境構築装置500は、ステップS314において、実行結果が成功を示す場合、履歴情報に最新状態フラグを設定し、同一の環境構築種別を含む他の履歴情報における最新状態フラグを解除する。また、環境構築装置500は、ステップS314において、実行結果が失敗を示す場合、該当する履歴情報に最新状態フラグを設定しない。つまり、環境構築装置500は、同一の環境構築種別を含む複数の履歴情報の中で、最新状態フラグが設定されている履歴情報が1つ(1レコード)となるように更新する。そして、環境構築装置500は、ステップS316において、指定された環境構築種別を含む複数の履歴情報のうち、最新状態フラグが設定された履歴情報を特定する。そして、環境構築装置500は、特定した履歴情報に含まれる各環境要素のバージョン情報の組合せを特定するとよい。具体的には、環境構築装置500は、ステップS316において、まず、指定された環境構築種別を含む複数の履歴情報のうち、直近に実行された履歴情報を参照し、当該履歴情報に最新状態フラグが設定されているか否かを判定する。そして、最新状態フラグが設定されている場合、環境構築装置500は、当該履歴情報に含まれる各環境要素のバージョン情報の組合せを特定する。一方、当該履歴情報に最新状態フラグが設定されていない場合、環境構築装置500は、同一の環境構築種別を含む複数の履歴情報のうち、次に直近に実行された履歴情報に最新状態フラグが設定されているか否かを判定するとよい。
【0071】
上述の例において、プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0072】
なお、本開示は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、本開示は、それぞれの実施形態を適宜組み合わせて実施されてもよい。
【0073】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
(付記A1)
所定の情報システムにおける特定の環境構築処理の実行結果と、当該環境構築処理の実行時に用いられた複数の環境要素の処理条件情報と、を対応付けた複数の履歴情報を登録する登録手段と、
前記特定の環境構築処理の実行要求に応じて、前記複数の履歴情報の中から、成功を示す前記実行結果に対応付けられた前記処理条件情報を特定する特定手段と、
前記特定された処理条件情報に対応する各環境要素を用いて前記環境構築処理を実行する実行手段と、
を備える環境構築装置。
(付記A2)
前記実行手段は、前記情報システムの環境を構築するために作成されたIaC(Infrastructure as code)に基づき動作する環境構築ツールを用いて、前記環境構築処理を実行する
付記A1に記載の環境構築装置。
(付記A3)
前記複数の環境要素は、前記IaC、前記環境構築ツール、及び、前記情報システムの運用環境の設定情報、並びに、前記IaC、前記環境構築ツール及び前記情報システムの運用環境の少なくともいずれかから参照される参照情報のうち、少なくとも2以上である
付記A2に記載の環境構築装置。
(付記A4)
前記処理条件情報は、前記IaC、前記環境構築ツール、前記運用環境の設定情報、及び、前記参照情報のそれぞれのバージョン情報の組合せである
付記A3に記載の環境構築装置。
(付記A5)
前記特定手段は、前記複数の履歴情報の中から、前記実行結果が成功を示す各履歴情報に含まれる前記組合せのうち、最新のバージョン情報の組合せを前記処理条件情報として特定する
付記A4に記載の環境構築装置。
(付記A6)
前記特定手段は、前記複数の履歴情報の中から、前記実行結果が成功を示す各履歴情報に含まれる前記組合せのうち、より直近に実行されたバージョン情報の組合せを前記処理条件情報として特定する
付記A4に記載の環境構築装置。
(付記A7)
前記特定手段は、前記複数の履歴情報の中から、成功を示す前記実行結果に対応付けられた各環境要素のバージョン情報の組合せを前記処理条件情報として特定する
付記A1に記載の環境構築装置。
(付記A8)
前記特定手段は、前記複数の履歴情報の中から、成功を示す前記実行結果に対応付けられ、かつ、最新のバージョン情報の組合せを前記処理条件情報として特定する
付記A7に記載の環境構築装置。
(付記A9)
前記特定手段は、前記複数の履歴情報の中から、より直近に実行され、かつ、成功を示す前記実行結果に対応付けられたバージョン情報の組合せを前記処理条件情報として特定する
付記A7に記載の環境構築装置。
(付記A10)
前記実行結果は、前記情報システムのテスト環境に対して特定の前記処理条件情報を用いて前記特定の環境構築処理が実行された結果である
付記A1に記載の環境構築装置。
(付記B1)
記憶装置と、
前記記憶装置と接続された情報処理装置と、を備え、
前記情報処理装置は、
所定の情報システムにおける特定の環境構築処理の実行結果と、当該環境構築処理の実行時に用いられた複数の環境要素の処理条件情報と、を対応付けた複数の履歴情報を前記記憶装置に登録する登録手段と、
前記特定の環境構築処理の実行要求に応じて、前記複数の履歴情報の中から、成功を示す前記実行結果に対応付けられた前記処理条件情報を特定する特定手段と、
前記特定された処理条件情報に対応する各環境要素を用いて前記環境構築処理を実行する実行手段と、
を備える環境構築システム。
(付記B2)
前記実行手段は、前記情報システムの環境を構築するために作成されたIaC(Infrastructure as code)に基づき動作する環境構築ツールを用いて、前記環境構築処理を実行する
付記B1に記載の環境構築システム。
(付記C1)
コンピュータが、
所定の情報システムにおける特定の環境構築処理の実行結果と、当該環境構築処理の実行時に用いられた複数の環境要素の処理条件情報と、を対応付けた複数の履歴情報を記憶装置に登録し、
前記特定の環境構築処理の実行要求に応じて、前記複数の履歴情報の中から、成功を示す前記実行結果に対応付けられた前記処理条件情報を特定し、
前記特定された処理条件情報に対応する各環境要素を用いて前記環境構築処理を実行する、
環境構築方法。
(付記D1)
所定の情報システムにおける特定の環境構築処理の実行結果と、当該環境構築処理の実行時に用いられた複数の環境要素の処理条件情報と、を対応付けた複数の履歴情報を記憶装置に登録する登録処理と、
前記特定の環境構築処理の実行要求に応じて、前記複数の履歴情報の中から、成功を示す前記実行結果に対応付けられた前記処理条件情報を特定する特定処理と、
前記特定された処理条件情報に対応する各環境要素を用いて前記環境構築処理を実行する実行処理と、
をコンピュータに実行させる環境構築プログラム。
【0074】
以上、実施形態(及び実施例)を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態(及び実施例)に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0075】
10 環境構築装置
11 登録部
12 特定部
13 実行部
1000 環境構築システム
100 運用環境
110 情報システム
120 インフラ構成
121 ネットワーク要素
122 ハードウェア要素
123 OS
124 ミドルウェア
130 アプリケーション
200 アプリケーションリポジトリ
300 IaCリモートリポジトリ
400 開発端末
410 IaCローカルリポジトリ
500 環境構築装置
510 記憶部
511 プログラム
512 実行履歴DB
5131 環境構築ツール
513n 環境構築ツール
520 メモリ
530 通信部
540 制御部
541 検出部
542 特定部
543 テスト部
544 登録部
545 実行部
5121 履歴情報
512m 履歴情報
551 履歴ID
552 環境構築種別
553 環境要素の処理条件情報
5531 IaC
5532 環境構築ツール
5533 運用環境
5534 外部パッケージ
554 実行結果
600 テスト環境
610 情報システム
620 インフラ構成
621 ネットワーク要素
622 ハードウェア要素
623 OS
624 ミドルウェア
630 アプリケーション
700 外部パッケージリポジトリ
N ネットワーク