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▶ 日立住友重機械建機クレーン株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093036
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】クレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/16 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
B66C13/16 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209133
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】503032946
【氏名又は名称】住友重機械建機クレーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】福島 恵介
(72)【発明者】
【氏名】津田 玲二
(57)【要約】
【課題】張力検出装置にねじれトルクが伝わり得る状況においても張力検出装置でロープの張力を精度良く検出することが可能なクレーンを提供する。
【解決手段】ロープRの張力を検出する張力検出装置20を有するクレーン1であって、ロープは、前記張力検出装置は前記ロープと一体的に前記ロープの長手方向周りに回転可能に設けられ、ロープRの長手方向周りにロープを回転することを規制する規制部24を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープの張力を検出する張力検出装置を有するクレーンであって、
前記張力検出装置は前記ロープと一体的に前記ロープの長手方向周りに回転可能に設けられ、
前記ロープの長手方向周りに前記ロープを回転することを規制する規制部を備えることを特徴とするクレーン。
【請求項2】
前記規制部は、前記ロープの長手方向に移動可能である、
ことを特徴とする請求項1記載のクレーン。
【請求項3】
前記ロープは、ソケットを介して前記張力検出装置に接続されており、
前記規制部は、前記ソケットの回転を規制するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のクレーン。
【請求項4】
前記ソケットは、前記ロープの長手方向に平行な2枚の側面を有しており、
2つの前記規制部で前記ソケットの2枚の側面を挟むように構成されていることを特徴とする請求項3に記載のクレーン。
【請求項5】
前記規制部の孔と前記ソケットの孔とにピンが挿通されることで、前記張力検出装置と前記ソケットと前記規制部とが接続されていることを特徴とする請求項1又は3に記載のクレーン。
【請求項6】
前記張力検出装置の孔の大きさが前記ソケットの孔の大きさよりも大きく形成されていることを特徴とする請求項5に記載のクレーン。
【請求項7】
前記規制部は、前記張力検出装置を固定するための固定部に、前記ロープの長手方向に移動可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のクレーン。
【請求項8】
前記ロープは、前記固定部に設けられたガイド用のシーブを介して前記張力検出装置に接続されていることで、前記ガイド用のシーブによって前記ロープの長手方向に垂直な方向への移動を規制することを特徴とする請求項7に記載のクレーン。
【請求項9】
前記ロープは、ブームを起伏させるために上部スプレッダと下部スプレッダとの間に掛け回される起伏ロープであり、
前記固定部は、前記下部スプレッダ又は前記上部スプレッダであることを特徴とする請求項7に記載のクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンのブーム等の起伏部材を起伏させる場合、起伏部材の上端部に繋がれた起伏ロープをウインチで巻き上げたり巻き下げることで起伏動作させるように構成されている場合がある(例えば特許文献1等参照)。
このようなクレーンでは、起伏部材が所定の角度以上に起立することを抑制するために、起伏部材の起立角度を計測したり起伏ロープの張力を検出したりするように構成される場合がある。
【0003】
起伏ロープの張力を検出する場合、一端側がウインチに接続された起伏ロープの他端側に、ソケットを介して張力検出装置を接続し、張力検出装置で張力を検出するように構成される場合が少なくない。
張力検出装置は、例えばロードセル等で構成され、張力が電気信号に変換されて検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-1443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、起伏ロープは、ワイヤロープで構成されている場合が多いが、ワイヤロープはワイヤが撚り合わされて形成されているため、起伏ロープに長手方向に張力が加わると、起伏ロープに、その長手方向周りに回転すなわちねじれが生じる場合がある。
そのため、ソケットにねじれトルクが加わり、張力検出装置にもねじれトルクが伝わるため、張力検出装置で検出される張力の精度が低下する可能性があることが本発明者の研究で分かった。
【0006】
なお、この問題は、ブーム等の起伏部材を起伏させるための起伏ロープの場合に限らず、クレーンに用いられている、ワイヤロープで構成されているロープの張力を検出する場合に、どのようなロープでも生じ得る問題である。
また、ロープがワイヤロープでない場合でもロープが何らかの原因でねじれが生じた場合には生じ得る問題である。
【0007】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、張力検出装置でロープの張力を精度良く検出することが可能なクレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るクレーンの一観点によれば、
ロープの張力を検出する張力検出装置を有するクレーンであって、
前記張力検出装置は前記ロープと一体的に前記ロープの長手方向周りに回転可能に設けられ、
前記ロープの長手方向周りに前記ロープを回転することを規制する規制部を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、張力検出装置にねじれトルクが伝わり得る状況においても張力検出装置でロープの張力を精度良く検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るクレーンの構成例を表す側面図である。
図2】(a)下部スプレッダの部分を斜め後方から見た斜視図であり、(b)斜め前方から見た斜視図である。
図3図2(a)の要部拡大図である。
図4】本実施形態に係る張力検出装置を表す側面図である。
図5】本実施形態に係るソケットを表す斜視図である。
図6】本実施形態に係る規制部を表す斜視図である。
図7】起伏ロープに生じるねじれや張力検出装置の変形を説明する図である。
図8】張力検出装置の孔の内径とソケットの孔の内径が同じ大きさである場合を表す断面図である。
図9】(a)張力検出装置の孔の内径がソケットの孔の内径より大きく形成されている場合を表す断面図であり、(b)ピン22が張力検出装置20に係合した状態を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るクレーンの実施の形態について、図面を参照して説明する。
なお、本実施形態では、クレーンがクローラクレーンである例を示して説明するが、本発明は、ホイールクレーン、トラッククレーン、ラフテレーンクレーン、オールテレーンクレーン等の他のあらゆる移動式クレーン、及び、タワークレーン、天井クレーン、ジブクレーン、引込みクレーン、スタッカークレーン、門型クレーン、アンローダ等のあらゆるクレーンにも適用可能である。
【0012】
また、以下では、クレーンの記載に関して、車両前進方向を「前」、後退方向を「後」とし、前を向いた状態で左手側を「左」(後述する図1では紙面奥側)、右手側を「右」(図1では紙面手前側)とする。
さらに、後述するように、クレーンは走行を行う下部走行体とその上で旋回を行う上部旋回体とを備えるが、特に言及しない場合には、原則として、下部走行体と上部旋回体とは前後方向が一致した状態(基準姿勢とする)にあるものとして各部の方向を説明する。
【0013】
また、以下では、張力検出装置で張力を検出するロープが起伏ロープであり、張力検出装置が下部スプレッダに固定されている場合について説明するが、本発明はこれらの場合に限定されない。
【0014】
図1は、本実施形態に係るクレーンの構成例を表す側面図である。
なお、図1では、クレーン1が、マスト9を備えるクレーンである場合が示されているが、図示を省略するが、クレーンは、ガントリ等を備えるタイプのクレーンであってもよい。
【0015】
クレーン1は、自走可能な下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3に対して起伏可能なブーム4と、ブーム4の先端部から吊り下げられた吊具5とを備えている。
上部旋回体3の前部には、運転室であるキャブ6が設けられており、後部には、ブーム4及び吊荷との重量バランスをとるためのカウンタウエイト7が取り付けられる。
【0016】
上部旋回体3の後部から前方上方に向けて、ブーム4の起伏方向の過回動を制限するためのブーム過巻防止装置8(例えばバックストップ)が配置されている。
また、上部旋回体3の前部でブーム4の後方には、マスト9が前後方向に回動可能に軸支されている。そして、ブーム4の先端部とマスト9の先端部は、ペンダントロープ10で接続されている。
【0017】
マスト9の先端部には、上部スプレッダ11が設けられており、上部旋回体3の後端部には、下部スプレッダ13が設けられている。
上部スプレッダ11と下部スプレッダ13にはそれぞれ複数のシーブ12、14が設けられており、シーブ12、14の間にワイヤロープ等からなる起伏ロープRが掛け回されている。
【0018】
図2(a)は下部スプレッダの部分を斜め後方から見た斜視図であり、図2(b)は斜め前方から見た斜視図であり、図3図2(a)の要部拡大図である。
下部スプレッダ13の一端には、複数(図2(a)等では6つ)の円形のシーブ14が同軸に並設されており、軸15を中心にそれぞれ回転可能に支持されている。なお、各シーブ14にはそれぞれ起伏ロープRが掛け回されているが、図2(a)、(b)では、各シーブ14に掛け回された起伏ロープRの図示が省略されている。
【0019】
また、図示を省略するが、上部スプレッダ11にも複数の円形のシーブ12が同軸に並設されており、下部スプレッダ13と同様に各シーブ12が軸を中心にそれぞれ回転可能に支持されている。
そして、起伏ロープRは、上部スプレッダ11の各シーブ12と下部スプレッダ13の各シーブ14に交互に掛け回されており、図1に簡略化されて示されているように、上部スプレッダ11と下部スプレッダ13の間に複数列の起伏ロープRが互いに平行に張架されている。
【0020】
なお、図1の状態において上部スプレッダ11は下部スプレッダ13の上方にあり、下部スプレッダ13の各シーブ14は上部スプレッダ11に対向する側に配置されている。
そのため、以下、下部スプレッダ13の各シーブ14が設けられた部分を下部スプレッダ13の上端といい、反対側の端部を下部スプレッダ13の下端という。また、下部スプレッダ13における位置関係についても、より上端に近い側を上側、より下端に近い側を下側として説明する。
【0021】
また、下部スプレッダ13を構成する部材や下部スプレッダ13に取り付けられる部材等についても、下部スプレッダ13の上端側及び下端側にあわせて上端側及び下端側という。
なお、起伏ロープRについては、後述するように、張力検出装置20に接続されている側の端部を一端、ウインチに接続されている側の端部を他端という。
【0022】
下部スプレッダ13の下端側には、1つのシーブ16が設けられており、軸17を中心に回転可能に支持されている。図2(a)、(b)では、起伏ロープRのうち、シーブ16に掛け回されている部分の記載も省略されている。
そして、前述したように、起伏ロープRの他端がシーブ16を介して前述したウインチ(不図示)に接続されており、ウインチにより巻き取られたり巻き出されたりするようになっている。
【0023】
また、起伏ロープRの一端は、下部スプレッダ13の上端に設けられた複数のシーブ14と同軸に並設されたガイド用のシーブ19を介して張力検出装置20に接続されている。起伏ロープRは、上部スプレッダ11のシーブ12からガイド用のシーブ19に張架されている。張力検出装置20の部分の構成については後で詳しく説明するが、張力検出装置20は下部スプレッダ13に固定されている。
張力検出装置20は、起伏ロープRと一体的に起伏ロープRの長手方向周りに回転可能に設けられている。起伏ロープRと一体的に回転可能とは、後述する規制部24が無い場合に起伏ロープRと一体的に回転可能であることを意味する。
なお、符号18で示される棒状の各部材は、各シーブ14やシーブ16から起伏ロープRが外れないようにするための抑え棒(抑え部)である。抑え棒は、棒状に限らず、各シーブ14やシーブ16から起伏ロープRが外れなければよい。例えば、板状の形状をしていてもよい。
【0024】
上部スプレッダ11や下部スプレッダ13等が上記のように構成されているため、起伏ロープRの一端側をウインチで巻き取ったり巻き出したりすると、上部スプレッダ11が、下部スプレッダ13側に引き寄せられたり下部スプレッダ13から遠ざかったりする。
そのため、マスト9が前後方向に回動し、その動きがペンダントロープ10を介してブーム4に伝わることで、ブーム4が起伏するようになっている。
【0025】
なお、本実施形態では、上記のように、張力検出装置20がガイド用のシーブ19の下側で下部スプレッダ13に固定されているため、張力検出装置20とガイド用のシーブ19との相対的な位置関係が固定されている。
そのため、ガイド用のシーブ19と張力検出装置20の間の起伏ロープRが、張力検出装置20を常に一定方向すなわちガイド用のシーブ19に向かう方向に引っ張る状態になる。そのため、本実施形態では、起伏ロープRから張力検出装置20に上記の一定方向(ガイド用のシーブ19に向かう方向)の力だけが加わるようになっており、それ以外の方向からは力が加わらないようになっている。
【0026】
また、本実施形態では、張力検出装置20が下部スプレッダ13に固定されている。そのため、下部スプレッダ13が回動軸13A(図2(a)、(b)参照)周りに回動しても、張力検出装置20と下部スプレッダ13やガイド用のシーブ19との相対的な位置関係が変化しない。
そのため、下部スプレッダ13が回動軸13A周りに回動しても、起伏ロープRから張力検出装置20に上記の一定方向(ガイド用のシーブ19に向かう方向)の力だけが加わる状態は変わらない。
【0027】
次に、張力検出装置20の部分の構成について説明する。図4は、本実施形態に係る張力検出装置を表す側面図である。
本実施形態では、張力検出装置20は、略矩形状の平板状に形成されており、張力検出装置20の長手方向の中央部分に、図示しない圧電素子等を含むセンサ部20Aが設けられている。なお、張力検出装置20の長手方向が下部スプレッダ13の上下方向に相当する。
【0028】
また、張力検出装置20の長手方向の両端部分、すなわちセンサ部20Aの下側と上側に、それぞれ孔20B、20Cが形成されている。
そして、図2(a)に示すように、張力検出装置20の下側の孔20Bにはピン21が挿通されており、張力検出装置20がピン21で下部スプレッダ13に固定されている。
【0029】
また、図3等に示すように、張力検出装置20の上側の孔20Cにはピン22が挿通されており、ピン22を介して張力検出装置20にソケット23と規制部24が接続されている。
ソケット23の内部には起伏ロープRを係止するための図示しない係止部が設けられている。そして、起伏ロープRは、ソケット23の上端側からソケット23内に挿入され、係止部に係止されて上側に折り返され、ソケット23外で留め具Aによって起伏ロープR自体に固定されている。
【0030】
このようにして起伏ロープRがソケット23に接続されている。
そして、本実施形態では、起伏ロープRが、ソケット23を介して張力検出装置20に接続されている。
【0031】
本実施形態では、ソケット23の下端側に、互いに平行に突設した2枚の取付片23Aが形成されている。ソケット23の2枚の取付片23Aは、それらの外側の側面23Bが図示しない起伏ロープRの長手方向に平行に形成されている。ただし、必ずしも長手方向にそって平行でなくてもよい。また平行の場合も、±15度程度は許容される。
また、図5に示すように、取付片23Aの下端部分にはそれぞれ孔23Cが形成されている。
【0032】
また、本実施形態では、規制部24は、2枚の長円状の平板で形成されており、図6に示すように、規制部24には孔24A、24Bが形成されている。
そして、2つの規制部24でソケット23の2枚の取付片23Aの各側面23Bを挟むように構成されている。当該構成によれば、規制部24によって、ソケット23の起伏ロープRの長手方向に垂直な方向(特に2つの規制部24が位置する方向)への動きを規制できる。
【0033】
具体的には、ソケット23の2枚の取付片23Aの間に張力検出装置20が配置され、ソケット23の2枚の取付片23Aの外側にそれぞれ規制部24が配置される。
そして、規制部24の孔24Aと、ソケット23の取付片23Aの孔23Cと、張力検出装置20の孔20Cにピン22が挿通されることで、図3等に示すように張力検出装置20とソケット23と規制部24とが接続されている。当該構成によれば、ソケット23の起伏ロープRの長手方向に垂直で、かつ、2つの規制部24が位置する方向に垂直な方向への動きを規制できる。
【0034】
また、図3等に示すように、規制部24の孔24Bにはピン25が挿通されており、規制部24がピン25によって下部スプレッダ13に取り付けられている。
その際、規制部24は、ピン25を軸として起伏ロープRの長手方向に自在に移動(この場合は揺動)可能に取り付けられている。自在に移動とは、起伏ロープRに所定以上の反力を及ぼすことなく自由に移動することを意味する。上記所定以上の反力とは、張力検出装置20の検出精度に±3%以上の影響を与える力未満の反力を意味する。すなわち、規制部24が起伏ロープRの長手方向に移動(揺動)する際に抵抗なく移動(揺動)することができるように下部スプレッダ13に取り付けられている。規制部材24は、ピン25周りに自在に回動可能に取り付けられていると言ってもよい。
【0035】
次に、本実施形態に係るクレーン1の作用効果について説明する。
例えば、起伏ロープRの一端側をクレーン1のウインチで巻き取るようにウインチを作動させると、上部スプレッダ11の各シーブ12と下部スプレッダ13の各シーブ14がそれぞれ回転して、上部スプレッダ11が下部スプレッダ13側に引き寄せられ、ブーム4が起立する方向に回動する。
【0036】
そして、この場合、張力検出装置20には、起伏ロープRからソケット23を介して上部スプレッダ11側に引っ張られる張力が加わる。
上記のように、張力検出装置20は、下部スプレッダ13に固定されているため下部スプレッダ13との相対的な位置関係は変わらないが、上部スプレッダ11側に引っ張られることでその方向に僅かに歪む(変形する)。その歪みを張力検出装置20の圧電素子等のセンサ部20Aで検出することで、起伏ロープRに加わっている張力を検出する。
【0037】
その際、起伏ロープRが、ワイヤが撚り合わされたワイヤロープであると、起伏ロープRに長手方向に張力が加わった場合、図7に矢印αで示すように、起伏ロープRにねじれが生じる場合がある。
しかし、本実施形態では上記のような規制部24が設けられているため、起伏ロープRがねじれても、張力検出装置20が起伏ロープRの長手方向周りに回転すること(すなわち張力検出装置20が矢印αの方向にねじれること)が規制される。
【0038】
このように、本実施形態では、規制部24により、張力検出装置20に起伏ロープRのねじれが伝わることが抑制される。
そのため、張力検出装置20で起伏ロープRにその長手方向に加わる張力のみを検出することが可能となる。
【0039】
また、規制部24で張力検出装置20を下部スプレッダ13に固定してしまうと、張力検出装置20が起伏ロープRで引っ張られても歪みにくくなり、起伏ロープRに加わる張力を精度良く検出することができなくなる可能性がある。
しかし、本実施形態では、上記のように、規制部24が下部スプレッダ13にピン25を軸として起伏ロープRの長手方向に自在に揺動可能に取り付けられるなどして、規制部24が起伏ロープRの長手方向に移動できるようになっている。
【0040】
そのため、張力検出装置20は、起伏ロープRに引っ張られた際に、規制部24により邪魔されることなく図7に矢印βで示す方向に変形することが可能となる。そのため、張力検出装置20で起伏ロープRの長手方向に加わる張力を検出することができる。
このように、本実施形態に係るクレーン1では、このように張力検出装置20にねじれトルクが伝わり得るような状況においても、張力検出装置20でロープ(起伏ロープR)の長手方向に加わる張力をより精度良く検出することが可能となる。すなわち、本実施形態の張力検出装置20によれば、規制部24が張力検出装置20を下部スプレッド13に固定する構成に比べて、より精度の高い直力検出が可能となる。
【0041】
以上のように、本実施形態に係るクレーン1によれば、ロープ(起伏ロープR)の張力を検出する張力検出装置20を有するクレーン1において、規制部24により張力検出装置20がロープの長手方向周りに回転することが規制される。したがって、ロープの張力により張力検出装置20が的確に歪み(変形し)、ロープにねじれが生じても張力検出装置20の張力の検出への悪影響を与えにくい。さらに、本実施形態に係るクレーン1によれば、規制部24がロープの長手方向に移動可能とされている。したがって、ロープの張力により張力検出装置20が的確に歪み(変形し)、ロープにねじれが生じても張力検出装置20の張力の検出への悪影響を与えにくい。
【0042】
そのため、本実施形態に係るクレーン1によれば、ロープ側にねじりトルクが生じた場合においても張力検出装置20でロープの張力を精度良く検出することが可能となる。
【0043】
なお、上記のような構造の張力検出装置20やソケット23において、張力検出装置20の孔20Cの内径がソケット23の孔23Cの内径よりも大きく形成されていることが望ましい。
具体的には、張力検出装置20の孔20Cの内径をd20C、ソケット23の孔23Cの内径をd23Cとするとき、
20C>d23C …(1)
であることが望ましい。尚、孔は円形状じゃなくてもよい。例えば、楕円形状であったり小判状形状であってもよい。この場合は、ソケット23は、起伏ロープRにその長手方向に直交する方向の長さをそれぞれd20C,d23Cとし、上記(1)を満たすことが望ましい。
さらに、規制部24の孔24Aの内径d24A図6)は、孔20Cの内径d20Cよりも小さいことが望ましい。さらに、規制部24の孔24Aの内径d24A図6)は、孔23Cの内径をd23Cよりも小さいことが望ましい。尚、孔24A、20C、23Cは円形状じゃなくてもよい。例えば、楕円形状であったり小判状形状であってもよい。この場合、各孔24A、20C、23Cは、起伏ロープRにその長手方向に直交する方向の長さを、それぞれ、d24A、d20C,d23Cとし、上記の関係を満たすことが望ましい。
【0044】
例えば、張力検出装置20の孔20Cの内径d20Cとソケット23の孔23Cの内径d23Cを同じ大きさとした場合、図8に示すように、張力検出装置20の孔20Cとソケット23の孔23Cがピン22で充填される状態になる。
そのため、ソケット23に、起伏ロープRにその長手方向に直交する方向に動きが生じると、その動きがピン22を介して張力検出装置20に伝達されてしまい、張力検出装置20でロープの張力を精度良く検出することができなくなる可能性がある。
【0045】
しかし、張力検出装置20の孔20Cの内径がソケット23の孔23Cの内径よりも大きく形成されていれば、図9(a)に示すように、張力検出装置20の孔20Cの部分でピン22の周りにいわゆる遊びができる。
そのため、ソケット23に、仮に起伏ロープRの長手方向に直交する方向に動きが生じても、その動きがピン22を介して張力検出装置20に伝達されることが抑制される。そのため、張力検出装置20でロープの張力を精度良く検出することが可能となる。
【0046】
なお、このように張力検出装置20の孔20Cの部分でピン22の周りに遊びがあっても、起伏ロープRが引っ張られソケット23がその方向に移動すれば、上記のように起伏ロープRが引っ張られる方向に規制部24が揺動する。
そして、図9(b)に示すようにピン22が張力検出装置20に係合する状態になるため、張力検出装置20でロープの張力を的確に検出することができる。
【0047】
一方、前述したように、下部スプレッダ13の上端に設けられたガイド用のシーブ19(図2(a)等参照)を介してロープ(起伏ロープR)が張力検出装置20に接続されるように構成すると、張力検出装置20が常に一定方向すなわちガイド用のシーブ19に向かう方向に引っ張られる状態になる。
そのため、このように構成すれば、起伏ロープRから張力検出装置20に上記の一定方向(ガイド用のシーブ19に向かう方向)の力だけが加わるようになり、それ以外の方向からは力が加わらない。そのため、張力検出装置20でロープの張力を精度良く検出することが可能となる。
【0048】
さらに、本実施形態のクレーン1によれば、規制部24は下部スプレッダ13(固定部)に移動可能に取り付けられ、張力検出装置20は下部スブレッダ13(固定部)に取り付けられている。このように、規制部24と張力検出装置20とが同じ固定部に取り付けられていることにより、下部スプレッダ13(固定部)自体の動きに影響されずに、前述した規制部24による張力検出装置20の規制を実現できる。
さらに、本実施形態のクレーン1によれば、起伏ロープRは、下部スプレッダ13(固定部)に設けられたガイド用のシーブ19を介して張力検出装置20に接続されている。そして、ガイド用のシーブ19によって起伏ロープRの長手方向に垂直な方向への移動が規制される。したがって、張力検出装置20側の起伏ロープRの長手方向周りの回動(あるいは、当該回動と、上記長手方向に垂直な方向への移動を含んだ動き)を規制部24が規制し、起伏ロープRの反検出装置側(シーブ19を挟んで張力検出装置20の反対側)の動き(長手方向に垂直方向の動き)をガイド用のシーブ19によって規制することができる。したがって、起伏ロープRの反検出装置側と張力検出装置20側との両側の動きが適宜に規制され、張力検出装置20で起伏ロープRの張力を精度良く検出することが可能となる。
【0049】
なお、本発明が上記の実施形態等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
例えば、上記の実施形態では、張力検出装置20で張力を検出するロープが起伏ロープRである場合について説明したが、本発明はこの場合に限定されず、ロープは、例えば、ペンダントロープ10(図1参照)や、ブーム4に取り付けられた図示しないジブ用のペンダントロープ、吊具5の巻上げロープ等であってもよい。
また、上記実施形態では、規制部24がピン22を介してソケット23に接続する構成を示したが、ソケット23が規制部24に直接に当たる構成が採用されてもよい。また、上記実施形態では、ピン24がソケット23の孔に挿通される構成を示したが、ソケット23にピン24が連結されており、当該ピン24が規制部24の孔24Aに挿通される構成が採用されてもよい。
【0050】
また、上記の実施形態では、張力検出装置20を固定するための固定部が下部スプレッダ13である場合について説明したが、固定部は、上部スプレッダ11であってもよく、ウインチ等であってもよい。
あるいは、固定部は、上部旋回体3等のクレーン1の本体部であってもよい。すなわち、張力検出装置20がクレーン1の本体部に直接固定されていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 クレーン
3 上部旋回体(固定部、クレーンの本体部)
4 ブーム
11 上部スプレッダ(固定部)
13 下部スプレッダ(固定部)
19 ガイド用のシーブ
20 張力検出装置
20C 張力検出装置の孔
22 ピン
23 ソケット
23B 側面
23C ソケットの孔
24 規制部
24A 規制部の孔
20C 張力検出装置の孔の内径
23C ソケットの孔の内径
R 起伏ロープ(ロープ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9