(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093038
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】フィラメントワインディング装置及びフィラメントワインディング方法
(51)【国際特許分類】
B29C 70/54 20060101AFI20240702BHJP
B29C 70/16 20060101ALI20240702BHJP
B29C 70/32 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B29C70/54
B29C70/16
B29C70/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209135
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】藤木 弘栄
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AA36
4F205AD05
4F205AD12
4F205AD16
4F205AG07
4F205AH55
4F205AJ08
4F205AR02
4F205HA02
4F205HA33
4F205HA37
4F205HA46
4F205HB01
4F205HB11
4F205HC02
4F205HF05
4F205HK04
4F205HK05
4F205HK19
4F205HK23
4F205HL02
4F205HT22
4F205HT26
(57)【要約】
【解決手段】フィラメントワインディング装置(FW装置10)は、中空の樹脂製のライナー12の内部を加圧した状態でライナーの外周面に繊維部材14を巻き付ける。FW装置は、繊維部材をライナーに巻き付けることにより形成される繊維層22の外形寸法La、Lbを示す物理量L1、L2を繊維部材の巻き付け中に取得する取得部80と、外形寸法が繊維部材の巻き付け中に予め決定された目標値に近づくように、ライナーの内部圧力を制御する圧力制御部84と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の樹脂製のライナーの内部を加圧した状態で前記ライナーの外周面に繊維部材を巻き付けるフィラメントワインディング装置であって、
前記繊維部材を前記ライナーに巻き付けることにより形成される繊維層の外形寸法を示す物理量を前記繊維部材の巻き付け中に取得する取得部と、
前記繊維部材の巻き付け中に、前記外形寸法が予め決定された目標値に近づくように、前記ライナーの内部圧力を制御する圧力制御部と、を備える、フィラメントワインディング装置。
【請求項2】
請求項1記載のフィラメントワインディング装置であって、
前記ライナーは、前記ライナーの軸方向の中間に位置する円筒状のライナー中間部を有し、
前記取得部は、前記繊維部材を前記ライナー中間部に巻き付けることにより形成される繊維層中間部の外形寸法を取得する、フィラメントワインディング装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフィラメントワインディング装置であって、
前記ライナーは、前記ライナーの軸方向の端部に位置する半球状のライナー端部を有し、
前記取得部は、前記繊維部材を前記ライナー端部に巻き付けることにより形成される繊維層端部の外形寸法を取得する、フィラメントワインディング装置。
【請求項4】
請求項1記載のフィラメントワインディング装置であって、
前記外形寸法と前記目標値との差分を算出する差分算出部を有し、
前記圧力制御部は、前記差分が予め決められた差分閾値未満となるように、前記ライナーの前記内部圧力をフィードバック制御する、フィラメントワインディング装置。
【請求項5】
請求項1記載のフィラメントワインディング装置であって、
前記目標値は、前記ライナーに対する前記繊維部材の巻付量と前記外形寸法の前記目標値との関係が規定された目標値取得マップから取得される、フィラメントワインディング装置。
【請求項6】
請求項1記載のフィラメントワインディング装置であって、
前記取得部は、測距センサを用いて前記物理量を取得する、フィラメントワインディング装置。
【請求項7】
請求項6記載のフィラメントワインディング装置であって、
前記測距センサは、レーザ光を用いた測距センサである、フィラメントワインディング装置。
【請求項8】
請求項1記載のフィラメントワインディング装置であって、
前記繊維部材は、繊維強化プラスチックにより構成されている、フィラメントワインディング装置。
【請求項9】
中空の樹脂製のライナーの内部を加圧した状態で前記ライナーの外周面に繊維部材を巻き付けるフィラメントワインディング方法であって、
前記繊維部材を前記ライナーに巻き付けることにより形成される繊維層の外形寸法を示す物理量を前記繊維部材の巻き付け中に取得する取得ステップと、
前記外形寸法が前記繊維部材の巻き付け中に予め決定された目標値に近づくように、前記ライナーの内部圧力を制御する圧力制御ステップと、を備える、フィラメントワインディング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメントワインディング装置及びフィラメントワインディング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能且つ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する燃料電池システムに関する研究開発が行われている。燃料電池システムは、水素ガスを充填するためのガスタンクを備える。
【0003】
この種のガスタンクは、フィラメントワインディング方法により製造される。例えば、特許文献1には、中空の樹脂製のライナーの内部を加圧した状態で当該ライナーに繊維部材を巻き付けることにより繊維層を形成するフィラメントワインディング方法が開示されている。このようなフィラメントワインディング方法によれば、繊維部材の巻付力によってライナーが内方に潰れることを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
中空の樹脂製のライナーの内部を単に加圧した状態で当該ライナーに繊維部材を巻き付けた場合には、必ずしも良好なガスタンクを製造し得ない。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、中空の樹脂製のライナーの内部を加圧した状態で前記ライナーの外周面に繊維部材を巻き付けるフィラメントワインディング装置であって、前記繊維部材を前記ライナーに巻き付けることにより形成される繊維層の外形寸法を示す物理量を前記繊維部材の巻き付け中に取得する取得部と、前記繊維部材の巻き付け中に、前記外形寸法が予め決定された目標値に近づくように、前記ライナーの内部圧力を制御する圧力制御部と、を備える、フィラメントワインディング装置である。
【0008】
本発明の他の態様は、中空の樹脂製のライナーの内部を加圧した状態で前記ライナーの外周面に繊維部材を巻き付けるフィラメントワインディング方法であって、前記繊維部材を前記ライナーに巻き付けることにより形成される繊維層の外形寸法を示す物理量を前記繊維部材の巻き付け中に取得する取得ステップと、前記外形寸法が前記繊維部材の巻き付け中に予め決定された目標値に近づくように、前記ライナーの内部圧力を制御する圧力制御ステップと、を備える、フィラメントワインディング方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、繊維層の外形寸法が予め決定された目標値に近づくように、ライナーの内部圧力を制御するため、簡単な制御によってライナーの内部圧力と繊維部材の巻付力とのバランスを適切に保つことができる。よって、繊維部材の巻き付け完了後にライナーの内部圧力を低下させた際に繊維層とライナーとの間に隙間が形成されることを抑制できる。よって、良好なガスタンクを製造し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るフィラメントワインディング装置の概略構成図である。
【
図2】
図2Aは、
図1のフィラメントワインディング装置を用いて製造されたガスタンクの縦断面図である。
図2Bは、
図2Aの一部拡大断面図である。
【
図3】
図3は、繊維層中間部の外形寸法の説明図である。
【
図4】
図4は、繊維層端部の外形寸法の説明図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係るフィラメントワインディング方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
従来のフィラメントワインディング方法では、ライナーの内部圧力と繊維部材の巻付力とのバランスを保つことが容易ではない。繊維部材の巻き付け中に内部圧力が巻付力よりも過度に大きく又は小さくなった場合には、巻き付け完了後におけるライナーの内部圧力の低下の際に、繊維層とライナーとの間に隙間が形成され得る。繊維層とライナーとの間に過度の隙間が形成された場合には、充分な耐圧を備えるガスタンクが得られない。
【0012】
本発明の一実施形態によるフィラメントワインディング装置及びフィラメントワインディング方法について図面を用いて以下に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るフィラメントワインディング装置(以下、「FW装置10」という)は、ライナー12の外周面に繊維部材14を巻き付けることによりガスタンク15(
図2A参照)を製造するための装置である。FW装置10によって製造されるガスタンク15は、例えば、燃料電池車両に搭載される。この場合、ガスタンク15は、水素ガスが高圧で充填される高圧ガスタンクである。なお、ガスタンク15には、水素ガス以外の燃料ガスが充填されてもよい。
【0013】
図2Aに示すように、ガスタンク15は、中空の樹脂製のライナー12と、第1口金16と、第2口金18と、補強部20とを備える。ライナー12は、例えば、水素ガスの透過を抑制する高密度ポリエチレン(HDPE)又はナイロン樹脂(PA6)からなる。
【0014】
ライナー12は、ライナー中間部12aと、第1ライナー端部12bと、第2ライナー端部12cとを有する。ライナー中間部12aは、円筒状に形成されている。第1ライナー端部12bは、ライナー中間部12aの一端部に設けられている。第2ライナー端部12cは、ライナー中間部12aの他端部に設けられている。第1ライナー端部12b及び第2ライナー端部12cの各々は、半球状に形成されている。第1口金16は、第1ライナー端部12bに取り付けられている。第2口金18は、第2ライナー端部12c取り付けられている。補強部20は、ライナー12の厚さ方向に積層された複数の繊維層22を有する(
図2B参照)。
【0015】
図1に示すように、FW装置10は、巻付装置30と、圧力付与装置32と、第1測距センサ34と、第2測距センサ36と、制御装置38とを備える。巻付装置30は、ライナー12の軸線Ax(
図2A参照)を中心としてライナー12を回転させながらライナー12の外周面に繊維部材14を巻き付ける。巻付装置30は、ライナー支持部40と、繊維部材送出部42とを有する。
【0016】
ライナー支持部40は、第1支軸44と、第1支持台46と、第2支軸48と、第2支持台50と、モータ52とを含む。第1支軸44は、第1口金16に着脱可能である。第1支軸44は、例えば、中実部材である。第1支持台46は、第1支軸44を回転可能に支持する。第2支軸48は、第2口金18に着脱可能である。第2支軸48は、例えば、中空のパイプである。第2支持台50は、第2支軸48を回転可能に支持する。モータ52は、第1支持台46に固定されている。モータ52は、ライナー12の軸線Axを中心として、第1支軸44、ライナー12及び第2支軸48を一体的に回転させる。
【0017】
繊維部材送出部42は、繊維部材14をライナー12の外周面に向けて供給する供給ヘッド54を有する。供給ヘッド54は、ライナー12の軸方向に沿って移動可能(トラバース移動可能)である。繊維部材14は、繊維強化プラスチックによって構成されている。繊維部材14は、多数本の繊維が束ねられて形成された繊維束である。繊維束を形成する繊維としては、例えば、カーボン繊維又はガラス繊維が用いられる。繊維束には、予め樹脂が含浸されている。繊維束に含浸されている樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂が用いられる。このような繊維束は、トウプリプレグと称される。
【0018】
巻付装置30は、ライナー12の軸線Axを中心としてライナー12を回転させると共に供給ヘッド54をライナー12の軸方向に移動させながら供給ヘッド54から繊維部材14を送出することにより、ライナー12の外周面に繊維部材14を巻き付ける。補強部20を形成する繊維層22は、ライナー12の外周面に繊維部材14を巻き付けることにより形成される。このとき、ライナー12には、繊維部材14から径方向内方に向かう比較的大きな巻付力が作用する。
【0019】
圧力付与装置32は、繊維部材14の巻付力によってライナー12が径方向内方に変形することを抑制するために、ライナー12の内部に圧縮空気を供給する。これにより、ライナー12の内部は、加圧される。圧力付与装置32は、エアポンプ56と、供給路58と、供給弁60と、排気路62と、排気弁64とを有する。エアポンプ56は、供給路58に圧縮空気を供給する。供給路58は、エアポンプ56から供給された圧縮空気を、中空の第2支軸48の内部を介してライナー12の内部に導く。
【0020】
供給弁60は、供給路58に設けられている。供給弁60は、供給路58を開放及び閉塞する。供給弁60は、制御装置38からの出力信号によって駆動する自動弁である。供給弁60は、例えば、電磁弁である。供給弁60は、弁体の開度を調節可能な調節弁であってもよい。
【0021】
排気路62は、供給弁60の下流側で供給路58に接続されている。排気路62は、外気に連通している。排気弁64は、排気路62に設けられている。排気弁64は、排気路62を開放及び閉塞する。排気弁64は、制御装置38からの出力信号によって駆動する自動弁である。排気弁64は、例えば、電磁弁である。排気弁64は、弁体の開度を調節可能な調節弁であってもよい。
【0022】
図3に示すように、第1測距センサ34は、ライナー中間部12aと向かい合っている。第1測距センサ34は、第1測定点P1と第1測距センサ34との間の直線距離である第1距離L1を測定する。第1測定点P1は、繊維部材14をライナー中間部12aに巻き付けることにより形成される繊維層中間部22aの最外面に位置する点である。第1測距センサ34は、非接触センサである。第1測距センサ34は、レーザ光を用いた測距センサである。
【0023】
具体的には、第1測距センサ34は、例えば、スポット状のレーザ光を用いたレーザ変位計である。ただし、第1測距センサ34は、帯状(ライン状)のレーザ光を用いたレーザ変位計であってもよい。第1測距センサ34は、レーザ変位計に限定されず、ステレオカメラ等であってもよい。第1測距センサ34は、測定した第1距離L1(第1測定信号)を制御装置38に供給する。
【0024】
図4に示すように、第2測距センサ36は、第1ライナー端部12bと向かい合っている。第2測距センサ36は、第2測定点P2と第2測距センサ36との間の直線距離である第2距離L2を測定する。第2測定点P2は、繊維部材14を第1ライナー端部12bに巻き付けることにより形成される繊維層端部22bの最外面に位置する点である。第2測距センサ36は、非接触センサである。第2測距センサ36は、レーザ光を用いた測距センサである。
【0025】
具体的には、第2測距センサ36は、例えば、ライン状のレーザ光を用いたレーザ変位計である。この場合、第2測距センサ36は、ライナー12の軸方向に沿うようにライン状のレーザ光を繊維層端部22bに照射する。そのため、第2測距センサ36は、繊維層端部22bの最外面の複数の第2測定点P2の各々についての第2距離L2を測定し得る。
【0026】
なお、第2測距センサ36が測定する第2測定点P2の数は、適宜設定可能である。繊維層端部22bに照射するレーザ光の照射範囲は、適宜設定可能である。第2測距センサ36は、スポット状のレーザ光を用いたレーザ変位計であってもよい。また、第2測距センサ36は、レーザ変位計に限定されず、ステレオカメラ等であってもよい。第2測距センサ36は、測定した第2距離L2(第2測定信号)を制御装置38に供給する。
【0027】
図1において、制御装置38は、演算部70と、記憶部72と、操作部74と、表示部76とを備える。演算部70は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサ(processor)によって構成される。すなわち、演算部70は、処理回路(processing circuitry)によって構成される。
【0028】
演算部70は、巻付制御部78と、取得部80と、差分算出部82と、圧力制御部84と、判定部86と、表示制御部88とを有する。取得部80と、差分算出部82と、圧力制御部84と、判定部86と、表示制御部88とは、記憶部72に記憶されているプログラムが演算部70によって実行されることによって実現され得る。
【0029】
なお、巻付制御部78、取得部80、差分算出部82、圧力制御部84、判定部86及び表示制御部88の少なくとも一部が、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路によって実現されるようにしてもよい。また、巻付制御部78、取得部80、差分算出部82、圧力制御部84、判定部86及び表示制御部88の少なくとも一部が、ディスクリートデバイスを含む電子回路によって構成されるようにしてもよい。
【0030】
記憶部72は、不図示の揮発性メモリと、不図示の不揮発性メモリとによって構成される。揮発性メモリとしては、例えばRAM(Random Access Memory)等が挙げられる。揮発性メモリは、プロセッサのワーキングメモリとして使用され、処理又は演算に必要なデータ等を一時的に記憶する。不揮発性メモリとしては、例えばROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等が挙げられる。不揮発性メモリは、保存用のメモリとして使用され、プログラム、テーブル、マップ等を記憶する。記憶部72の少なくとも一部が、上述したようなプロセッサ、集積回路等に備えられていてもよい。
【0031】
操作部74は、ユーザがFW装置10を操作する際に用いられる。操作部74としては、キーボード、マウス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
表示部76には、不図示の表示素子が備えられている。表示素子としては、例えば、液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス表示素子等が用いられる。このような表示素子が備えられた不図示のタッチパネルによって、操作部74と表示部76とが構成されるようにしてもよい。
【0033】
巻付制御部78は、巻付装置30の制御を司る。具体的には、巻付制御部78は、モータ52及び供給ヘッド54の動作を制御する。
【0034】
図3に示すように、取得部80は、第1測距センサ34から供給された第1距離L1(物理量)に基づいて繊維層中間部22aの外形寸法(以下、「中間外形寸法La」という)を繊維部材14の巻き付け中に取得する。中間外形寸法Laは、ライナー12の径方向に沿った寸法である。中間外形寸法Laは、例えば、繊維層中間部22aの半径である。
【0035】
また、
図4に示すように、取得部80は、第2測距センサ36から供給された複数の第2距離L2(物理量)に基づいて繊維層端部22bの複数箇所の外形寸法(以下、「端部外形寸法Lb」という)を取得する。端部外形寸法Lbは、例えば、ライナー12の軸方向と径方向とに交差する方向に沿った寸法である。端部外形寸法Lbは、ライナー12の軸方向に沿った寸法とライナー12の径方向に沿った寸法との少なくともいずれかが変化した場合に変化する。端部外形寸法Lbは、例えば、ライナー12の軸線Ax上に位置する基準点P3と各第2測定点P2との間の直線距離である。なお、端部外形寸法Lbは、ライナー12の軸方向に沿った寸法であってもよいし、ライナー12の径方向に沿った寸法であってもよい。
【0036】
差分算出部82(
図1参照)は、第1測定点P1に対応する予め決定された第1目標値と中間外形寸法Laとの差分(以下、「第1差分」という)を算出する。差分算出部82は、例えば、中間外形寸法Laから第1目標値を減算することにより第1差分を算出する。差分算出部82は、第1目標値から中間外形寸法Laを減算することにより第1差分を算出してもよい。
【0037】
差分算出部82は、予め決定された第1目標値取得マップに基づいて繊維部材14の巻付量に応じた第1目標値を取得する。第1目標値取得マップは、記憶部72に記憶されている。第1目標値取得マップには、例えば、繊維部材14の巻付量と第1目標値との関係が示されている。ここで、巻付量は、繊維層22毎の巻付量であってもよいし、巻き付けを開始してからの積算量であってもよい。なお、第1目標値は、ライナー12が変形しない場合の中間外形寸法Laである。また、差分算出部82は、例えば、繊維部材14の巻き付けが開始されからのモータ52の回転数等に基づいて繊維部材14の巻付量を把握できる。
【0038】
また、差分算出部82は、複数の第2測定点P2の各々に対応する予め決定された複数の第2目標値と複数の端部外形寸法Lbとのそれぞれの差分(以下、「第2差分」という)を算出する。差分算出部82は、例えば、端部外形寸法Lbから第2目標値を減算することにより第2差分を算出する。差分算出部82は、第2目標値から端部外形寸法Lbを減算することにより第2差分を算出してもよい。
【0039】
差分算出部82は、予め決定された第2目標値取得マップに基づいて繊維部材14の巻付量に応じた第2目標値を取得する。第2目標値取得マップは、記憶部72に記憶されている。第2目標値取得マップには、例えば、繊維部材14の巻付量と複数の第2目標値との関係が示されている。なお、第2目標値は、ライナー12が変形しない場合の端部外形寸法Lbである。第1目標値取得マップ及び第2目標値取得マップの設定は、繊維部材14の巻付量を用いた例に限定されず、例えば、積層角度(巻き付け角度)又は第1ライナー端部12bでの繊維部材14の折り返し位置等を用いてもよい。
【0040】
圧力制御部84は、圧力付与装置32の動作を司る。具体的には、圧力制御部84は、エアポンプ56を駆動及び停止する。また、圧力制御部84は、供給弁60及び排気弁64の各々の動作を制御する。圧力制御部84は、取得部80によって取得された外形寸法が目標値に近づくように、ライナー12の内部の圧力をフィードバック制御する。なお、圧力制御部84は、取得部80によって取得された外形寸法が目標値に近づくように、ライナー12の内部の圧力を制御すれば、フィードバック制御をしなくてもよい。
【0041】
具体的には、圧力制御部84は、第1差分の絶対値が第1差分閾値未満になり且つ第2差分の絶対値が第2差分閾値未満になるように、供給弁60及び排気弁64の動作を制御する。第1差分閾値及び第2差分閾値は、予め決定され、記憶部72に記憶されている。ライナー12の内部圧力が繊維部材14の巻付力よりも大きい場合には、第1差分及び第2差分は例えば正の値になる。圧力制御部84は、第1差分及び第2差分の各々が正の値である場合には、ライナー12の内部圧力が低下するように供給弁60及び排気弁64の動作を制御する。一方、ライナー12の内部圧力が繊維部材14の巻付力よりも小さい場合には、第1差分及び第2差分は例えば負の値になる。圧力制御部84は、第1差分及び第2差分の各々が負の値である場合には、ライナー12の内部圧力が上昇するように供給弁60及び排気弁64の動作を制御する。
【0042】
判定部86は、繊維部材14の巻き付けが完了したか否かを判定する。
【0043】
表示制御部88は、表示部76の表示の制御を司る。表示制御部88は、例えば、内部圧力の制御状況、繊維部材14の巻付状況(巻き付けの進捗率)等を、表示部76の図示しない表示画面に表示する。
【0044】
次に、本実施形態に係るフィラメントワインディング方法について
図5を参照しながら説明する。
【0045】
図5のステップS1において、ライナー12を巻付装置30に取り付ける。この後、ステップS2に遷移する。
【0046】
ステップS2において、ライナー12の内部を加圧する。具体的には、圧力制御部84は、供給弁60の動作を制御して供給路58を開放させると共に排気弁64の動作を制御して排気路62を閉塞させる。また、圧力制御部84は、エアポンプ56を駆動させる。エアポンプ56が駆動すると、圧縮空気は、供給路58と中空の第2支軸48の内部とを介してライナー12の内部に供給される。これにより、ライナー12の内部圧力が上昇する。この後、ステップS3に遷移する。
【0047】
ステップS3において、ライナー12に対する繊維部材14の巻き付けを開始する。すなわち、巻付制御部78は、モータ52を制御してライナー12を回転させると共に供給ヘッド54を制御して供給ヘッド54をライナー12の軸方向に沿って移動させる。これにより、繊維部材14がライナー12に巻き付けられる。なお、ライナー12に対する繊維部材14の巻き方は、フープ巻き又はヘリカル巻きである。この後、ステップS4に遷移する。
【0048】
ステップS4において、取得ステップを行う。取得ステップにおいて、取得部80は、第1測定点P1の第1距離L1を繊維部材14の巻き付け中に取得する。取得部80は、第1距離L1に基づいて中間外形寸法La(
図3参照)を取得する。また、取得部80は、複数の第2測定点P2の各々の第2距離L2を繊維部材14の巻き付け中に取得する。取得部80は、複数の第2距離L2に基づいて複数の端部外形寸法Lb(
図4参照)を取得する。この後、ステップS5に遷移する。
【0049】
ステップS5において、差分算出ステップを行う。差分算出ステップにおいて、差分算出部82は、中間外形寸法Laから第1目標値を減算することにより第1差分を算出する。また、差分算出部82は、複数の端部外形寸法Lbから複数の第2目標値をそれぞれ減算することにより複数の第2差分を算出する。第1差分及び第2差分は、ライナー12の内部圧力が繊維部材14の巻付力よりも大きい場合に正の値になり、ライナー12の内部圧力が繊維部材14の巻付力よりも小さい場合に負の値になる。この後、ステップS6に遷移する。
【0050】
ステップS6において、圧力制御ステップを行う。圧力制御ステップにおいて、圧力制御部84は、第1差分の絶対値が第1差分閾値未満となると共に第2差分の絶対値が第2差分閾値未満となるように、ライナー12の内部圧力をフィードバック制御する。換言すれば、圧力制御部84は、中間外形寸法Laが第1目標値に近づくと共に端部外形寸法Lbが第2目標値に近づくように、ライナー12の内部圧力をフィードバック制御する。
【0051】
具体的には、第1差分が正の値であり且つ各第2差分が正の値である場合、圧力制御部84は、供給弁60及び排気弁64の動作を制御して、供給路58を閉塞すると共に排気路62を開放する。これにより、ライナー12の内部の圧縮空気は、排気路62から外部に排出されるため、ライナー12の内部圧力が低下する。
【0052】
第1差分が負の値であり且つ各第2差分が負の値である場合、圧力制御部84は、供給弁60及び排気弁64の動作を制御して、供給路58を開放すると共に排気路62を閉塞する。これにより、ライナー12の内部圧力は上昇を続ける。
【0053】
第1差分が0であり且つ各第2差分が0である場合、圧力制御部84は、供給弁60及び排気弁64の動作を制御して、供給路58を開放すると共に排気路62を閉塞する。なお、本実施形態において、第1差分及び第2差分のいずれか一方が正の値でありいずれか他方が負の値になることはない。ステップS6の後、ステップS7に遷移する。
【0054】
ステップS7において、判定部86は、繊維部材14の巻き付けが完了したか否かを判定する。繊維部材14の巻き付けが完了していない場合(ステップS7においてNO)、ステップS4に遷移する。繊維部材14の巻き付けが完了した場合(ステップS7においてYES)、
図5に示す処理が完了する。
【0055】
上述したフィラメントワインディング方法の処理が完了した後、ライナー12及び繊維層22を加熱する。これにより、繊維層22が硬化して補強部20となる。この後、ライナー12の内部圧力を大気圧まで低下させる。
【0056】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0057】
本実施形態によれば、中間外形寸法Laが第1目標値に近づくと共に複数の端部外形寸法Lbが複数の第2目標値にそれぞれ近づくように、ライナー12の内部圧力をフィードバック制御している。そのため、簡単な制御によってライナー12の内部圧力と繊維部材14の巻付力とのバランスを適切に保つことができる。よって、繊維部材14の巻き付け完了後にライナー12の内部圧力を低下させた際に繊維層22とライナー12との間に隙間が形成されることを抑制できる。
【0058】
[変形実施形態]
本発明は、上述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を取り得る。
【0059】
上記実施形態では、取得部80が複数箇所の第2距離L2(端部外形寸法Lb)を取得する例について説明したが、取得部80は、1箇所の第2距離L2(端部外形寸法Lb)のみを取得してもよい。また、上記実施形態では、FW装置10が第1測距センサ34と第2測距センサ36を備える例について説明したが、これに限定されない。FW装置10は、第1測距センサ34及び第2測距センサ36のいずれか一方のみを備えてもよい。この場合、第1測距センサ34又は第2測距センサ36を省略できるため、FW装置10が簡素になる。第2測距センサ36は、第2ライナー端部12cを向くように配置されてもよい。
【0060】
[実施形態から得られる発明]
上記実施形態から把握し得る発明について、以下に記載する。
【0061】
本発明の一態様は、中空の樹脂製のライナー(12)の内部を加圧した状態で前記ライナーの外周面に繊維部材(14)を巻き付けるフィラメントワインディング装置(10)であって、前記繊維部材を前記ライナーに巻き付けることにより形成される繊維層(22)の外形寸法(La、Lb)を示す物理量(L1、L2)を前記繊維部材の巻き付け中に取得する取得部(80)と、前記繊維部材の巻き付け中に、前記外形寸法が予め決定された目標値に近づくように、前記ライナーの内部圧力を制御する圧力制御部(84)と、を備える、フィラメントワインディング装置である。
【0062】
このような構成によれば、繊維層の外形寸法が予め決定された目標値に近づくように、ライナーの内部圧力を制御するため、簡単な制御によってライナーの内部圧力と繊維部材の巻付力とのバランスを適切に保つことができる。よって、繊維部材の巻き付け完了後にライナーの内部圧力を低下させた際に繊維層とライナーとの間に隙間が形成されることを抑制できる。
【0063】
上記のフィラメントワインディング装置において、前記ライナーは、前記ライナーの軸方向の中間に位置する円筒状のライナー中間部(12a)を有し、前記取得部は、前記繊維部材を前記ライナー中間部に巻き付けることにより形成される繊維層中間部(22a)の外形寸法を取得してもよい。
【0064】
このような構成によれば、繊維部材の巻き付け完了後にライナーの内部圧力を低下させた際に繊維層中間部とライナー中間部との間に隙間が形成されることを効果的に抑制できる。
【0065】
上記のフィラメントワインディング装置において、前記ライナーは、前記ライナーの軸方向の端部に位置する半球状のライナー端部(12b)を有し、前記取得部は、前記繊維部材を前記ライナー端部に巻き付けることにより形成される繊維層端部(22b)の外形寸法を取得してもよい。
【0066】
このような構成によれば、繊維部材の巻き付け完了後にライナーの内部圧力を低下させた際に繊維層端部とライナー端部との間に隙間が形成されることを効果的に抑制できる。
【0067】
上記のフィラメントワインディング装置において、前記外形寸法と前記目標値との差分を算出する差分算出部(82)を有し、前記圧力制御部は、前記差分が予め決められた差分閾値未満となるように、前記ライナーの前記内部圧力をフィードバック制御してもよい。
【0068】
このような構成によれば、ライナーの内部圧力のフィードバック制御を簡単に行うことができる。
【0069】
上記のフィラメントワインディング装置において、前記目標値は、前記ライナーに対する前記繊維部材の巻付量と前記外形寸法の前記目標値との関係が予め規定された目標値取得マップから取得されてもよい。
【0070】
このような構成によれば、繊維部材の巻付量に応じた目標値を目標値取得マップより簡単に得ることができる。
【0071】
上記のフィラメントワインディング装置において、前記取得部は、測距センサ(34、36)を用いて前記物理量を取得してもよい。
【0072】
このような構成によれば、測距センサを用いて繊維層の外形寸法を示す物理量を簡単に取得できる。
【0073】
上記のフィラメントワインディング装置において、前記測距センサは、レーザ光を用いた測距センサであってもよい。
【0074】
このような構成によれば、レーザ光により繊維層の外形寸法を示す物理量を簡単に取得できる。
【0075】
上記のフィラメントワインディング装置において、前記繊維部材は、繊維強化プラスチックにより構成されてもよい。
【0076】
本発明の他の態様は、中空の樹脂製のライナーの内部を加圧した状態で前記ライナーの外周面に繊維部材を巻き付けるフィラメントワインディング方法であって、前記繊維部材を前記ライナーに巻き付けることにより形成される繊維層の外形寸法を示す物理量を前記繊維部材の巻き付け中に取得する取得ステップ(S4)と、前記外形寸法が前記繊維部材の巻き付け中に予め決定された目標値に近づくように、前記ライナーの内部圧力を制御する圧力制御ステップ(S6)と、を備える、フィラメントワインディング方法である。
【符号の説明】
【0077】
10…フィラメントワインディング装置(FW装置)
12…ライナー
12a…ライナー中間部
12b…第1ライナー端部
12c…第2ライナー端部
14…繊維部材
22…繊維層
22a…繊維層中間部
22b…繊維層端部
32…圧力付与装置
34…第1測距センサ
36…第2測距センサ
38…制御装置
80…取得部
82…差分算出部
84…圧力制御部
L1…第1距離
L2…第2距離
La…中間外形寸法
Lb…端部外形寸法