(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093043
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】土質管理システム、土質管理方法、及び、土質改質方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20240702BHJP
E02D 1/02 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
E02D3/12 103
E02D1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209140
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 悠紀
(72)【発明者】
【氏名】三浦 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 薫
(72)【発明者】
【氏名】福田 智之
(72)【発明者】
【氏名】藤本 真理緒
【テーマコード(参考)】
2D040
2D043
【Fターム(参考)】
2D040AB11
2D040GA02
2D043AA08
2D043AC05
(57)【要約】
【課題】高い精度で改質中の土の品質を管理可能な土質管理システム、土質管理方法、及び、土質改質方法を提供する。
【解決手段】建設現場1における土2の改質状態を評価するための土質評価値であって、土2に改質剤5を添加して攪拌することによって変わる土質評価値の面分布を測定する温度測定部41及び含水比測定部42と、土質評価値の面分布から導出される面評価値であって、土2に改質剤5を添加して攪拌した状態の面評価値が、改質剤5の添加量に応じて設定される閾値に達したか否かを判定する判定部を備える制御装置30と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設現場における土の改質状態を評価するための土質評価値であって、前記土に改質剤を添加して攪拌することによって変わる前記土質評価値の面分布を測定する測定部と、
前記土質評価値の面分布から導出される面評価値であって、前記土に前記改質剤を添加して攪拌した状態の前記面評価値が、前記改質剤の添加量に応じて設定される閾値に達したか否かを判定する判定部と、を備える
土質管理システム。
【請求項2】
前記測定部は、前記土質評価値として、前記土の温度、及び、前記土の含水比の少なくとも一方を測定する
請求項1に記載の土質管理システム。
【請求項3】
前記閾値は、前記土のコーン指数が目標値に達するために必要な添加量の前記改質剤を添加したときの前記面評価値に基づいて設定される
請求項2に記載の土質管理システム。
【請求項4】
前記土は、前記建設現場の建設機械を用いて攪拌される
請求項1ないし3のうち何れか一項に記載の土質管理システム。
【請求項5】
前記建設機械が前記土を攪拌する際の攪拌抵抗を測定する攪拌抵抗測定部をさらに備える
請求項4に記載の土質管理システム。
【請求項6】
前記建設機械が備える攪拌部であって、前記建設機械において前記土を攪拌する前記攪拌部の位置を検出する位置検出部をさらに備える
請求項5に記載の土質管理システム。
【請求項7】
建設現場における土の改質状態を評価するための土質評価値であって、前記土に改質剤を添加して攪拌することによって変わる前記土質評価値について、前記土に前記改質剤を添加して攪拌した状態の前記土質評価値の面分布を測定することと、
前記土質評価値の面分布から導出される面評価値であって、前記土に前記改質剤を添加して攪拌した状態の前記面評価値が、前記改質剤の添加量に応じて設定される閾値に達したか否かを判定することと、を含む
土質管理方法。
【請求項8】
建設現場における土の改質状態を評価するための土質評価値であって、前記土に改質剤を添加して攪拌することによって変わる前記土質評価値について、前記土に前記改質剤を添加して攪拌した状態の前記土質評価値の面分布を測定することと、
前記土に前記改質剤を添加して攪拌した状態の前記土質評価値の面分布に応じて前記土を攪拌することと、を含む
土質改質方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土質管理システム、土質管理方法、及び、土質改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築工事や土木工事などの建設工事に伴って副次的発生する土砂や汚泥(以下発生土という)を建設資材として利用することがある(非特許文献1を参照)。発生土を改質する技術の一例として、土と石灰などの改質剤とを混合することで、土の含水比を調整する方法が知られている。土質の調整における混合の度合いを評価する手法の一例として、土と水及び固化材を含んだスラリーとを攪拌する際の油圧値が一定になることに基づいて土全体が均一に混合されたことを確認する技術が提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】国土交通省、「発生土利用基準について」、[online]、[令和4年12月26日検索]、インターネット、<URL:http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/region/recycle/pdf/recyclehou/manual/180810hassei.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、土全体が均一に混合されたことは確認できても、改質中の土の性状の変化などを捉えた土質力学特性までを確認するには至っていない。そのため、改質中の土の性状やその均質性を把握できる品質管理手段が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための土質管理システムは、建設現場における土の改質状態を評価するための土質評価値であって、前記土に改質剤を添加して攪拌することによって変わる前記土質評価値の面分布を測定する測定部と、前記土質評価値の面分布から導出される面評価値であって、前記土に前記改質剤を添加して攪拌した状態の前記面評価値が、前記改質剤の添加量に応じて設定される閾値に達したか否かを判定する判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高い精度で改質中の土の品質を管理できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、土質管理システムが用いられる建設現場の模式図である。
【
図3】
図3は、改質剤との反応に伴う土の温度変化を表すグラフである。
【
図4】
図4は、改質剤との反応に伴う土の含水比の変化を表すグラフである。
【
図5】
図5は、改質剤との反応に伴う土の攪拌抵抗の変化を表すグラフである。
【
図6】
図6は、土の改質作業の工程を表すフローチャートである。
【
図7】
図7は、土の改質作業における条件設定の工程を表すフローチャートである。
【
図8】
図8は、改質剤の添加量と改質後の土のコーン指数との関係を表すグラフである。
【
図9】
図9は、改質剤の添加量と土の最大温度差との関係を表すグラフである。
【
図10】
図10は、改質剤の添加量と土の終端含水比低下率との関係を表すグラフである。
【
図11】
図11は、改質剤の添加量と土の終端攪拌抵抗との関係を表すグラフである。
【
図12】
図12は、土の改質作業における攪拌の工程を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、土質管理システムの一実施形態について
図1~
図14を参照して説明する。
図1に示すように、建築工事や土木工事などが行われる建設現場1では、土2の改質作業が行われる。土2は、一例として、建設現場1における地面の掘削によって生じる発生土である。土2は、水分を多く含むものであって、例えば、コーン指数qcが200kN/m
2未満の泥土や、コーン指数qcが200kN/m
2以上400kN/m
2以下の軟弱土である。土2は、例えば、粘性土、砂質土、または、これらの混合土である。
【0010】
土2は、土2の供給源の一例である掘削機械3から供給される。掘削機械3は、建設現場1の地面から土2を採掘した後、土2を容器4に投入する。掘削機械3は、例えばアースドリル機である。容器4は、例えば、上部に開口を有したコンテナやタンクである。土2は、容器4内での高低差がなるべく小さくなるように積み上げられていることが好ましい。
【0011】
土2の改質において、容器4に投入された土2には改質剤5が添加される。土2は、改質剤5との反応によって水分が減少することで改質される。改質剤5は、例えば、石灰系固化材や、石膏系固化材である。石灰系固化は、例えば、生石灰でもよいし、消石灰でもよい。石膏系固化材は、脱硫石膏でもよいし、廃石膏でもよい。
【0012】
改質剤5が添加された土2は、建設現場1で用いられる建設機械の一例であるバックホウ10を用いて攪拌される。バックホウ10は、バケット11を備える。バケット11は、土2を攪拌するための攪拌部の一例である。なお、土2は、バックホウ10以外の建設現場1で用いられる任意の建設機械を用いて攪拌されてもよい。
【0013】
[土質管理システム]
土質管理システム20は、土2の改質作業における改質状態を管理する。土質管理システム20は、制御装置30を備える。制御装置30は、例えば、バックホウ10を操縦する作業者が搭乗するオペレータ室に設置される。制御装置30は、バックホウ10を操縦する作業者によって操作される。
【0014】
土質管理システム20は、測定部を備える。測定部は、土2の改質状態を評価するための土質評価値の面分布を測定する。土質評価値は、土2に改質剤5を添加して攪拌することによって変わる物性値である。本実施形態における土質評価値は、例えば、土2の温度、及び、土2の含水比のうち少なくとも一方である。本実施形態の土質管理システム20は、例えば、測定部として温度測定部41と、含水比測定部42とを備える。
【0015】
温度測定部41は、例えば、容器4の上方に配置される。温度測定部41は、容器4に投入された土2の温度を面で測定する。温度測定部41は、例えば、サーモグラフィである。サーモグラフィは、物体から放射される赤外線に基づいて、土2の表面温度を面分布として表した画像を取得する。なお、土2の温度を面で測定する方法としては、例えば、土2における複数点の温度を測定することで、土2の面分布を取得してもよい。
【0016】
含水比測定部42は、容器4に投入された土2の含水比を面で測定する。含水比測定部42は、例えば、容器4の底に所定の間隔で配置された複数の水分計である。水分計は、RI(ラジオアイソトープ)式、電気抵抗式、電気容量式、マイクロ波式等の任意の計測方式によって土2の含水比を測定する。土2の含水比を面で測定する方法は、例えば、容器4に配置された複数の水分計を用いて土2における複数点の含水比を測定することで、土2の含水比の面分布を取得する。
【0017】
土質管理システム20は、攪拌抵抗測定部43と、位置検出部44とを備える。攪拌抵抗測定部43は、例えば、バックホウ10に取り付けられる。攪拌抵抗測定部43は、バックホウ10が土2を攪拌する際の攪拌抵抗Rを測定する。攪拌抵抗測定部43は、例えば、バックホウ10がバケット11を駆動する際の油圧値を測定する。バックホウ10がバケット11を駆動する際の油圧値は、バックホウ10が土2を攪拌する際の攪拌抵抗Rと正の相関を有する。そのため、バケット11を駆動する際の油圧値を攪拌抵抗Rの指標値とすることができる。
【0018】
位置検出部44は、バケット11の位置を検出する。位置検出部44は、例えば、バケット11の先端に取り付けられる。位置検出部44は、例えば、バックホウ10の作業者から見た上下、左右、前後の三次元方向のうち少なくとも一次元方向におけるバケット11の位置を検出する。位置検出部44は、例えば、バケット11における容器4の底面からの高さ、バケット11における容器4の側壁からの水平距離を検出する。
【0019】
さらに、土質管理システム20は、攪拌管理部(非図示)を備える。土質管理システム20は、攪拌時間や攪拌回数を計測する。攪拌管理部は、例えば、バックホウ10に配置される。
【0020】
[制御装置]
図2に示すように、制御装置30は、制御部31と、記憶部32と、表示部33と、操作部34と、通信部35とを備える。制御部31は、制御装置30が備える各部の動作を制御する。制御部31は、例えば、CPUやMPUなどの各種の処理をソフトウェアによって処理するプロセッサを含む。
【0021】
制御部31は、判定部31Aを備える。判定部31Aは、測定部としての温度測定部41及び含水比測定部42の測定結果に基づいて土2の改質状態が適正か否かを判定する。また、判定部31Aは、温度測定部41及び含水比測定部42の測定結果に加えて、攪拌抵抗測定部43の測定結果、位置検出部44の検出結果、及び攪拌管理部の計測結果に基づいて改質状態が適正か否かを判定してもよい。
【0022】
制御部31は、演算部31Bを備える。演算部31Bは、改質前の土2のコーン指数qc、すなわち、コーン指数qcの初期値qc1に基づいて、コーン指数qcの目標値qc2を達成するために必要な改質剤5の添加量Mを算出する。また、演算部31Bは、判定部31Aが判定を行うための各種の閾値を算出する。
【0023】
記憶部32は、一時メモリと、データベースメモリとを備える。一時メモリは、制御装置30が処理するデータを一時的に記憶する。一時メモリは、一例として、RAMである。データベースメモリは、判定部31Aが改質状態を判定するための閾値を算出するための検量線を記憶する。データベースメモリは、不揮発性メモリであって、例えばフラッシュメモリ、HDD、またはSSDである。また、データベースメモリには、作業者が制御装置30を操作するためのアプリケーションプログラムなど、制御部31が実行する各種処理のプログラムが記憶される。
【0024】
表示部33は、攪拌回数や測定部の測定結果など、土2の改質作業における種々の項目を表示するディスプレイである。操作部34は、作業者が制御装置30を操作するための入力デバイスである。操作部34は、例えば、キーボードやボタンスイッチであってもよく、表示部33と操作部34とが一体となったタッチパネルでもよい。
【0025】
通信部35は、有線または無線通信によって温度測定部41、含水比測定部42、攪拌抵抗測定部43、位置検出部44、及び、攪拌管理部のそれぞれと通信する。例えば、制御部31は、通信部35を介して温度測定部41、含水比測定部42、攪拌抵抗測定部43、位置検出部44、及び、攪拌管理部のそれぞれ動作を制御するとともに、それらが測定したデータを受信する。
【0026】
[改質剤との反応に伴う温度変化]
図3に示すグラフ100は、土2と改質剤5との反応に伴う土2の温度の変化を表す。グラフ100の横軸は、改質剤5が添加された土2の攪拌時間を表す。グラフ100の縦軸は、改質剤5が添加される前の土2の第1温度T
1を基準として、土2に改質剤5を添加して攪拌した状態の第2温度T
2までの温度上昇量である温度差ΔT(℃)を表す(ΔT=T
2-T
1)。なお、第1温度T
1及び第2温度T
2は、一例として、温度測定部41が取得した温度の面分布から算出される値であって、土2の温度が測定された領域に限定された面内における温度の平均値である。なお、第1温度T
1及び第2温度T
2は、温度測定部41が取得した温度の面分布から抽出される面内における温度の最大値や、分散(面内温度のばらつき具合)などの面内における統計値でもよい。第1温度T
1及び第2温度T
2は、温度測定部41が取得した温度の面分布から導出される面評価値の一例である。
【0027】
温度差ΔTは、攪拌を開始すると最大温度差ΔTmaxに達するまで増加する。温度差ΔTは、最大温度差ΔTmaxに達した後にさらに攪拌を続けると緩やかに減少していく。最大温度差ΔTmaxは、改質剤5の添加量M(kg/m3)と正の相関を有する。そのため、所定の添加量Mの条件下において、温度差ΔTが所定の閾値ΔTthに達したことを確認することで、改質剤5の添加量Mに見合う発熱が得られたものとみなされる。そして、改質剤5の添加量Mに見合う所定の品質(例えばコーン指数)が確保されたとみなすことができる。温度差ΔTが所定の閾値ΔTthに達することは、温度差ΔTが閾値ΔTthよりも小さい値から閾値ΔTthに達することでもよいし、温度差ΔTが閾値ΔTthよりも大きい値から閾値ΔTthに達することでもよい。
【0028】
[改質剤との反応に伴う含水比の変化]
図4に示すグラフ200は、土2と改質剤5との反応に伴う土2の含水比の変化を表す。グラフ200の横軸は、改質剤5が添加された土2の攪拌時間を表す。グラフ200の縦軸は、改質剤5が添加される前の土2の第1含水比W
1を基準として、土2に改質剤5を添加して攪拌した状態の第2含水比W
2までの含水比低下率ΔW(%)を表す(ΔW=(W
1-W
2)/W
1)。なお、第1含水比W
1及び第2含水比W
2は、一例として、含水比測定部42が取得した含水比の面分布から算出される含水比の平均値である。なお、第1温度T
1及び第2温度T
2は、含水比測定部42が取得した含水比の面分布から抽出される含水比の最大値であってもよい。第1含水比W
1及び第2含水比W
2は、含水比測定部42が取得した温度の含水比から導出される面評価値の一例である。
【0029】
含水比低下率ΔWは、攪拌時間の経過に伴って増加していく。攪拌を開始した直後では、時間あたりに含水比が低下する割合が大きいが、攪拌時間の経過に伴って時間あたりに含水比が低下する割合が小さくなる。土2と改質剤5との反応が収束すると、含水比低下率ΔWは一定となる。反応が収束したときの含水比低下率ΔWを終端含水比低下率ΔWterとすると、終端含水比低下率ΔWterは、改質剤5の添加量M(kg/m3)と正の相関を有する。そのため、所定の添加量Mの条件下において、含水比低下率ΔWが所定の閾値ΔWthに達したことを確認することで、改質剤5の添加量Mに見合う反応の収束が得られたものとみなされる。そして、改質剤5の添加量Mに見合う所定の品質が確保されたとみなすことができる。
【0030】
[改質剤との反応に伴う攪拌抵抗]
図5に示すグラフ300は、土2と改質剤5との反応に伴う土2の攪拌抵抗Rの変化を表す。グラフ300の横軸は、改質剤5が添加された土2の攪拌時間を表す。グラフ300の縦軸は、土2に改質剤5を添加して攪拌した状態の攪拌抵抗Rを表す。攪拌抵抗Rは、土2に改質剤5を添加する前の第1攪拌抵抗R
1から攪拌時間の経過に伴って増加していく。攪拌を開始した直後では、時間あたりに攪拌抵抗Rが増加する割合が大きいが、攪拌時間の経過に伴って時間あたりに攪拌抵抗Rが増加する割合が小さくなる。土2と改質剤5との反応が収束すると、攪拌抵抗Rは一定となる。反応が収束したときの攪拌抵抗Rを終端攪拌抵抗R
terとすると、終端攪拌抵抗R
terは、改質剤5の添加量M(kg/m
3)と正の相関を有する。そのため、所定の添加量Mの条件下において、攪拌抵抗Rが所定の閾値R
thに達したことを確認することで、改質剤5の添加量Mに見合う反応の収束が得られたものとみなされる。そして、改質剤5の添加量Mに見合う所定の品質が確保されたとみなすことができる。
【0031】
[改質作業の手順]
図6に示すように、土2の改質作業は、ステップS1~S4の工程を含む。
(ステップS1)まず、掘削機械3を用いて、容器4に土2を投入する。なお、投入される土2の体積は、例えば、掘削機械3が備えるバケットであって、土2を投入するバケットの容積から算出できる。
【0032】
(ステップS2)次に、改質剤5の添加量Mや、攪拌の終了条件となる各種の閾値といった攪拌における諸条件の設定を行う。
(ステップS3)次に、ステップS2で決定された添加量Mの改質剤5を土2に添加する。
【0033】
(ステップS4)次に、ステップS2で設定された攪拌の終了条件を満たすまで、バックホウ10によって土2を攪拌する。攪拌が完了した後は、バックホウ10を用いて容器4から土2を搬出する。
【0034】
以上の手順によって、土2の改質作業が完了する。改質された土2は、改良土として再利用することができる。そのため、改質前の状態では廃棄物となるような土2であっても、資源として利用できることからコストの削減が可能となる。
【0035】
[ステップS2の手順]
以下、
図7~
図11を参照してステップS2の工程について詳述する。
図7に示すように、ステップS2の工程は、以下のステップS2-1~S2-9の工程を含む。
【0036】
[改質剤の添加量の決定]
(ステップS2-1)ステップS2の工程では、まず、土2のコーン指数qcの初期値qc1を測定する。土2のコーン指数qcは、JIS A1228:2020に準拠する方法によって測定される。
【0037】
(ステップS2-2)次に、演算部31Bは、コーン指数qcの初期値qc1、及び、コーン指数qcの目標値qc2に基づいて、改質剤5の添加量Mを決定する処理を実行する。コーン指数qcの初期値qc1及び目標値qc2は、改質剤5の種類や土2の投入量と併せて作業者によって入力される。
【0038】
図8に示すように、グラフ400の横軸は、改質剤5の添加量M(kg/m
3)を表す。グラフ400の縦軸は、土2に改質剤5を添加して攪拌が完了した後のコーン指数qcを表す。グラフ400中の直線401は、改質剤5の添加量Mに対する改質後のコーン指数qcの関係を表す近似曲線である。攪拌後のコーン指数qcは、改質剤5の添加量Mに対して正の相関を有する。コーン指数qcの初期値qc
1は、改質剤5の添加量Mが0のときのコーン指数qcに相当する。
【0039】
改質剤5の添加量Mを決定する方法の一例は、土2に対して改質剤5の添加量Mを変えた複数の水準で予備試験を行うことで、添加量Mに対する攪拌後のコーン指数qcの関係を表す直線401のような検量線を予め作成する。そして、当該検量線に基づいて、コーン指数qcの目標値qc2に達するために必要な添加量Mを算出する。なお、より確実にコーン指数qcの目標値qc2を達成するために、検量線から算出される添加量Mの値よりも実際の添加量Mを多くしてもよい。コーン指数qcの目標値qc2は、例えば、目標とする区分が第4種建設発生土である場合には200kN/m3以上、第3種建設発生土である場合には400kN/m3以上、第2種建設発生土である場合には800kN/m3以上である。
【0040】
なお、添加量Mを決定するための検量線としては、土中の成分やコーン指数qcの初期値qc1などの諸条件を変えた複数の水準の検量線を予め作成したうえで、改質対象となる土2に最も条件が近い検量線を用いてもよい。または、建設現場1から掘削された土2を用いて予め作成した検量線を用いてもよい。添加量Mを決定するための検量線は、データベースメモリに記憶される。
【0041】
すなわち、コーン指数qcなどの目標とする土質の入力から添加量Mを出力するような添加量演算が予備試験によって確立されるとともに、データベースメモリが添加量演算を予め記憶する。データベースメモリは、改質対象となる土2の水準ごとに添加量演算を予め記憶してもよい。ステップS2-2において、演算部31Bは、データベースメモリに予め記憶された添加量演算を用いて、改質対象となる土2の水準と、改質後の目標とする土質と、から添加量Mを算出する。
【0042】
[閾値の設定]
(ステップS2-3)
図7に戻り、制御部31は、土2の改質作業における攪拌回数及び攪拌時間の閾値を設定する処理を実行する。攪拌回数及び攪拌時間の閾値は、例えば、添加量Mを決定するための検量線を作成する際の攪拌に要した攪拌回数及び攪拌時間を用いることができる。すなわち、データベースメモリは、添加量Mを決定するための検量線とともに、当該検量線を作成する際の攪拌に要した攪拌回数及び攪拌時間を予め記憶してもよい。
【0043】
(ステップS2-4)次に、制御部31は、温度測定部41から改質前の土2の第1温度T1を取得する処理を実行する。第1温度T1は、改質前の土2の温度の面分布から導出される第1面評価値の一例である。
【0044】
(ステップS2-5)次に、演算部31Bは、土2の改質作業における温度差ΔTの閾値ΔTthを算出する処理を実行する。閾値ΔTthは、予め作成された検量線に基づいて設定される。
【0045】
図9に示すように、グラフ500の横軸は、改質剤5の添加量M(kg/m
3)を表す。グラフ500の縦軸は、土2と改質剤5との反応に伴う最大温度差ΔT
maxを表す。グラフ500中の直線501は、改質剤5の添加量Mに対する最大温度差ΔT
maxの関係を表す近似曲線である。直線501は、土2の改質作業における温度差ΔTの閾値ΔT
thを決定するための検量線の一例である。
【0046】
温度差ΔTの閾値ΔTthを設定する方法の一例は、土2に対して改質剤5の添加量Mを変えた複数の水準で予備試験を行うことで、添加量Mに対する最大温度差ΔTmaxの関係を表す直線501のような検量線を予め作成する。そして、当該検量線に基づいて、ステップS3で決定された添加量Mの条件下における最大温度差ΔTmaxを算出する。ここで算出された最大温度差ΔTmaxを温度差ΔTの閾値ΔTthとしてもよいが、算出された最大温度差ΔTmaxを基準として任意の補正をした値を閾値ΔTthとして用いてもよい。例えば、検量線の作成を屋内で行った場合では、屋内での発熱量と屋外での発熱量との差を考慮して閾値ΔTthを設定してもよい。
【0047】
(ステップS2-6)
図7に戻り、次に、制御部31は、含水比測定部42から改質前の土2の第1含水比W
1を取得する処理を実行する。第1含水比W
1は、改質前の土2の含水比の面分布から導出される第1面評価値の一例である。
【0048】
(ステップS2-7)次に、演算部31Bは、土2の改質作業における含水比低下率ΔWの閾値ΔWthを算出する処理を実行する。閾値ΔWthは、予め作成された検量線に基づいて設定される。
【0049】
図10に示すように、グラフ600の横軸は、改質剤5の添加量M(kg/m
3)を表す。グラフ600の縦軸は、土2と改質剤5との反応に伴う終端含水比低下率ΔW
terを表す。グラフ600中の直線601は、改質剤5の添加量Mに対する終端含水比低下率ΔW
terの関係を表す近似曲線である。直線601は、土2の改質作業における含水比低下率ΔWの閾値ΔW
thを決定するための検量線の一例である。
【0050】
含水比低下率ΔWの閾値ΔWthを設定する方法の一例は、土2に対して改質剤5の添加量Mを変えた複数の水準で予備試験を行うことで、直線601のような添加量Mに対する終端含水比低下率ΔWterの関係を表す検量線を予め作成する。そして、当該検量線に基づいて、ステップS3で決定された添加量Mの条件下における終端含水比低下率ΔWterを算出する。ここで算出された終端含水比低下率ΔWterを含水比低下率ΔWの閾値ΔWthとしてもよいが、算出された終端含水比低下率ΔWterを基準として任意の補正をした値を閾値ΔWthとして用いてもよい。
【0051】
(ステップS2-8)
図7に戻り、次に、制御部31は、攪拌抵抗測定部43から改質前の土2をバックホウ10で攪拌した際の第1攪拌抵抗R
1を取得する処理を実行する。
(ステップS2-9)次に、演算部31Bは、土2の改質作業における攪拌抵抗Rの閾値R
thを算出する処理を実行する。閾値R
thは、予め作成された検量線に基づいて設定される。
【0052】
図11に示すように、グラフ700の横軸は、改質剤5の添加量M(kg/m
3)を表す。グラフ700の縦軸は、土2と改質剤5との反応に伴う終端攪拌抵抗R
terを表す。グラフ700中の直線701は、改質剤5の添加量Mに対する終端攪拌抵抗R
terの関係を表す近似曲線である。直線701は、土2の改質作業における攪拌抵抗Rの閾値R
thを決定するための検量線の一例である。
【0053】
攪拌抵抗Rの閾値Rthを設定する方法の一例は、土2に対して改質剤5の添加量Mを変えた複数の水準で予備試験を行うことで、直線701のような添加量Mに対する終端攪拌抵抗Rterの関係を表す検量線を予め作成する。そして、当該検量線に基づいて、ステップS3で決定された添加量Mの条件下における終端攪拌抵抗Rterを算出する。ここで算出された終端攪拌抵抗Rterを攪拌抵抗Rの閾値Rthとしてもよいが、算出された終端攪拌抵抗Rterを基準として任意の補正をした値を閾値Rthとして用いてもよい。
【0054】
なお、ステップS2-5,S2-7,S2-9において用いられる検量線としては、土中の成分やコーン指数qcの初期値qc1などの諸条件を変えた複数の水準の検量線を予め作成したうえで、改質対象となる土2に最も条件が近い検量線を使用してもよい。または、建設現場1から掘削された土2を用いて検量線を予め作成してもよい。これらの検量線は、データベースメモリに記憶される。
【0055】
すなわち、添加量Mの入力から閾値ΔTthを出力するような温度差閾値演算が予備試験によって確立されるとともに、データベースメモリが温度差閾値演算を記憶する。データベースメモリは、改質対象となる土2の水準ごとに温度差閾値演算を記憶してもよい。演算部31Bは、データベースメモリに記憶された温度差閾値演算を用いて、改質対象となる土2の水準と、添加量Mとから閾値ΔTthを算出してもよい。
【0056】
また、添加量Mの入力から閾値ΔWthを出力するような含水比閾値演算が予備試験によって確立されるとともに、データベースメモリが含水比閾値演算を記憶する。データベースメモリは、改質対象となる土2の水準ごとに含水比閾値演算を記憶してもよい。演算部31Bは、データベースメモリに記憶された含水比閾値演算を用いて、改質対象となる土2の水準と、添加量Mとから閾値ΔWthを算出してもよい。
【0057】
また、添加量Mの入力から閾値Rthを出力するような抵抗閾値演算が予備試験によって確立されるとともに、データベースメモリが抵抗閾値演算を記憶する。データベースメモリは、改質対象となる土2の水準ごとに抵抗閾値演算を記憶してもよい。演算部31Bは、データベースメモリに記憶された抵抗閾値演算を用いて、改質対象となる土2の水準と、添加量Mとから閾値Rthを算出してもよい。
【0058】
[ステップS4の手順]
以下、
図12を参照してステップS4の工程について詳述する。
図12に示すように、ステップS4の攪拌処理は、以下のステップS4-1及びステップS4-2の工程を含む。
【0059】
(ステップS4-1)ステップS4の工程では、まず、バックホウ10を用いて改質剤5が添加された土2の攪拌を開始する。土2の攪拌が開始されると、制御部31は、温度測定部41から攪拌中の土2の第2温度T2を連続的もしくは断続的に取得する処理を実行する。演算部31Bは、第1温度T1及び第2温度T2から温度差ΔTを算出する処理を実行する。そして、制御部31は、含水比測定部42から攪拌中の土2の第2含水比W2を連続的もしくは断続的に取得する処理を実行する。演算部31Bは、第1含水比W1及び第2含水比W2から含水比低下率ΔWを算出する処理を実行する。なお、温度差ΔTは、土2に改質剤5を添加して攪拌した状態の温度の面分布から導出される第2面評価値の一例である。含水比低下率ΔWは、土2に改質剤5を添加して攪拌した状態の含水比の面分布から導出される第2面評価値の一例である。
【0060】
さらに、制御部31は、攪拌抵抗測定部43から攪拌中の土2の第2攪拌抵抗R2を連続的もしくは断続的に取得する処理を実行する。制御部31は、位置検出部44から攪拌中のバケット11の位置を連続的もしくは断続的に取得する処理を実行する。このとき制御部31は、取得したバケット11の位置の履歴をバケット11の移動軌跡として記憶部32に記憶する。制御部31は、攪拌管理部から攪拌時間や攪拌回数を連続的もしくは断続的に取得する処理を実行する。
【0061】
[判定処理]
(ステップS4-2)判定部31Aは、以下に示す第1判定処理~第5判定処理において、判定項目が終了条件を満たしたか否かを判定する処理を実行する。
【0062】
(第1判定処理)判定部31Aは、攪拌中の土2において、面評価値の一例である温度差ΔTが閾値ΔTthに達したか否かを判定する処理を実行する。温度差ΔTが閾値ΔTthに達した場合、判定項目としての温度差ΔTが終了条件を満たしたとみなされる。
【0063】
(第2判定処理)判定部31Aは、攪拌中の土2において、面評価値の一例である含水比低下率ΔWが閾値ΔWthに達したか否かを判定する処理を実行する。含水比低下率ΔWが閾値ΔTthに達した場合、判定項目としての含水比低下率ΔWが終了条件を満たしたとみなされる。
【0064】
(第3判定処理)判定部31Aは、攪拌中の土2において、攪拌抵抗Rが閾値Rthに達したか否かを判定する処理を実行する。攪拌抵抗Rが閾値Rthに達した場合、判定項目としての攪拌抵抗Rが終了条件を満たしたとみなされる。
【0065】
(第4判定処理)判定部31Aは、攪拌中の土2において、バケット11の移動軌跡が適正か否かを判定する処理を実行する。例えば、容器4内の空間を複数の区画に仮想的に分割する。そして、位置検出部44が検出したバケット11の位置の履歴に基づいて、バケット11が各区画を通過した回数を計測する。そして、全ての区画において、バケット11が通過した回数が所定の閾値以上となったときに、バケット11の移動軌跡が適正であると判定する。バケット11の移動軌跡が適正であると判定された場合、判定項目としてのバケット11の移動軌跡が終了条件を満たしたとみなされる。
【0066】
(第5判定処理)判定部31Aは、攪拌回数及び攪拌時間が閾値に達したか否かを判定する処理を実行する。攪拌回数及び攪拌時間が閾値に達したと判定された場合、判定項目としての攪拌回数及び攪拌時間が終了条件を満たしたとみなされる。
【0067】
ステップS4-2において、判定部31Aが第1判定処理~第5判定処理の全てについて判定項目が終了条件を満たしたと判定した場合、攪拌を終了する。第1判定処理~第5判定処理のうち少なくとも1つの判定処理において終了条件を満たしていないと判定した場合、攪拌を続ける。
【0068】
[表示部]
図13には、土2の攪拌中において、表示部33に表示される画面の一例を示す。表示部33は、例えば、改質剤5の種類、改質剤5の添加量M、コーン指数qcの目標値qc
2を表示する。表示部33は、例えば、攪拌回数、攪拌時間、及び攪拌抵抗Rについて、それぞれの閾値と瞬間値とを表示する。攪拌回数、攪拌時間、及び攪拌抵抗Rの瞬間値は、土2の攪拌中の値が常時または所定の時間ごとに更新されて表示される。
【0069】
表示部33は、例えば、温度差ΔT及び含水比低下率ΔWのそれぞれについての閾値、最大値、及び瞬間値と、温度及び含水比の初期値とを表示する。温度差ΔTの最大値は、温度差ΔTが最大温度差ΔTmaxに達するまでは温度差ΔTの瞬間値と一致するが、温度差ΔTが最大温度差ΔTmaxに達した後は測定された温度差ΔTの最大値が表示される。含水比低下率ΔWの最大値は、含水比低下率ΔWの瞬間値と一致する。温度差ΔT及び含水比低下率ΔWの瞬間値は、攪拌に伴って変化する温度差ΔT及び含水比低下率ΔWが常時または所定の時間ごとに更新されて表示される。温度及び含水比の初期値は、第1温度T1及び第1含水比W1である。
【0070】
表示部33は、例えば、判定部31Aの判定結果を表示する結果表示部33Aを備える。結果表示部33Aは、判定部31Aが実行する判定処理の何れかが終了条件を満たしていないときには攪拌中を示す部分が点灯する。また、全ての判定処理において終了条件を満たしたときには攪拌完了を示す部分が点灯する。
【0071】
表示部33は、位置検出部44が検出したバケット11の現在位置を表示する位置表示部33Bを備える。
図13に示す位置表示部33Bは、一例として、バケット11の上下方向及び前後方向の位置を示す。なお、位置表示部33Bは、これに代えて、もしくは、これに加えて、バケット11の左右方向の位置を示すものであってもよく、バケット11の前後方向及び左右方向の位置を示すものであってもよい。位置表示部33Bは、バケット11の現在位置に加えて、バケット11の移動軌跡を線または複数の点もしくはその両方で表示する。表示部33にバケット11の現在位置及び移動軌跡を表示することで、バックホウ10の作業者が容器4内の土2を満遍なく攪拌することができる。
【0072】
表示部33は、攪拌中の土2の温度の面分布を表示する温度表示部33Cを備える。温度表示部33Cは、一例として、上面視において、斜線を付して示す容器4の内側の領域について、温度の高さに応じて色を変えて表示する。
【0073】
表示部33は、攪拌中の土2の含水比の面分布を表示する含水比表示部33Dを備える。含水比表示部33Dは、一例として、上面視において、斜線を付して示す容器4の内側の領域を、1つ以上の水分計が含まれるように仮想的に区画する。
図13では、縦横に3×3個の水分計を配置した場合の表示例を図示している。そして、各区画において測定された含水比の大きさに応じて、各区画の色を変えて表示する。
【0074】
表示部33に攪拌中の土2の温度の面分布及び含水比の面分布を表示することで、例えば、改質剤5との反応が不十分な箇所を重点的に攪拌するなど、攪拌中の土質評価値の面分布に応じて攪拌を行うことができる。これにより、攪拌作業の効率化が可能になる。また、土2の部分的な改質状態の差異を解消することができる。
【0075】
[実施形態の効果]
上記実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)第1判定処理及び第2判定処理では、温度差ΔTや含水比低下率ΔWといった面評価値が閾値に達したか否かを判定している。そのため、面評価値が閾値に達したことに基づいて、土2の改質状態が均質、かつ、土2が改質剤5の添加量Mに見合う所定の品質を確保できていることを確認できる。したがって、土質管理システム20を用いることによって、作業者の熟練度によらず高い精度で改質中の土2の品質を管理できる。また、判定部31Aによる判定によって攪拌を終了するタイミングを管理することで、改質剤5の使用量の削減や攪拌時間の短縮が可能となる。
【0076】
(2)温度差ΔTが土2の表面近傍の面評価値であるのに対して、含水比低下率ΔWが土2の底部近傍の面評価値である。そのため、上下方向において異なる位置の面評価値である温度差ΔT及び含水比低下率ΔWの両方について判定部31Aによる判定処理を行うことで、土2の改質状態をより高精度で判定することができる。
【0077】
(3)第1判定処理及び第2判定処理において用いられる閾値は、土2のコーン指数qcが目標値qc2に達するために必要な添加量Mの改質剤5を添加したときの面評価値に基づいて設定される。これにより、第1判定処理及び第2判定処理において、改質中の土2の面評価値が閾値に達したか否かを判定することによって、改質中の土2のコーン指数qcが目標値qc2に達したか否かを判定できる。
【0078】
(4)バックホウ10のような建設現場1において一般的に使用される建設機械を用いて土2の攪拌を行う場合であっても、(1)のような効果を達成できる。言い換えれば、土2の改質を行うための処理プラントや土2の攪拌を行うための特殊な機械を用いずとも、(1)のような効果を達成できる。
【0079】
(5)温度や含水比の面評価値に加えて、攪拌抵抗測定部43によって攪拌抵抗Rを測定することで、攪拌抵抗Rの値からも土2の改質状態が適正か否かを判定することができる。また、第3判定処理において用いられる閾値Rthは、土2のコーン指数qcが目標値qc2に達するために必要な添加量Mの改質剤5を添加したときの終端攪拌抵抗Rterに基づいて設定される。これにより、第3判定処理において、改質中の土2の攪拌抵抗Rが閾値Rthに達したか否かを判定することによって、改質中の土2のコーン指数qcが目標値qc2に達したか否かを判定できる。
【0080】
(6)温度や含水比の面評価値に加えて、位置検出部44によってバケット11の位置を検出することで、土2の全体が攪拌されているか否かを確認することができる。したがって、土2の全体を満遍なく攪拌できる。
【0081】
(7)表示部33に攪拌中の土質評価値の面分布を表示することで、例えば、改質剤5との反応が不十分な箇所を重点的に攪拌するなど、土2の部分的な改質状態の差異を解消することができる。また、土2における部分的な改質状態の差異が解消されたことを確認できることから、高い精度で改質中の土2の品質を管理できる。
【0082】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、各変更例は、技術的に矛盾しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【0083】
・
図14に示すように、土2の攪拌は、土2が容器4に投入された状態ではなく、例えば、金属板6に積まれた状態の土2を攪拌する形態であってもよい。この場合、金属板6に含水比測定部42を設けてもよい。
【0084】
・第3判定処理~第5判定処理は割愛されてもよい。例えば、第3判定処理~第5判定処理の全ての判定処理が割愛されてもよいし、第3判定処理~第5判定処理のうち何れか1つまたは2つの判定処理が割愛されてもよい。すなわち、土質管理システム20において、攪拌抵抗測定部43が割愛されてもよく、位置検出部44が割愛されてもよく、攪拌抵抗測定部43及び位置検出部44の両方が割愛されてもよい。何れの場合でも、判定部31Aが面評価値に基づいて改質中の土2の改質状態が適正か否かを判定することによって、高い精度で改質中の土2の品質を管理できる。
【0085】
・バックホウ10のような建設機械を用いて土2を攪拌する際に土質管理システム20を用いる例について説明したが、例えば、土2の改質を行うための処理プラントにおいて土質管理システム20を使用してもよい。
【0086】
・土2のコーン指数qcが目標値qc2に達するために必要な添加量Mの改質剤5を添加したときの面評価値に基づいて各種の閾値を設定する方法を例示したが、閾値を決定する方法はこれに限定されない。判定部31Aが判定を行うための閾値は、改質剤5の添加量Mに応じて決まる物性値であればよい。例えば、コーン指数qc以外の物性値(例えば粘度)が目標値に達するために必要な添加量Mの改質剤5を添加したときの面評価値に基づいて各種の閾値を設定してもよい。
【0087】
・土質管理システム20において、温度及び含水比のうち何れか一方の土質評価値の面分布から導出される面評価値について、判定部31Aが判定処理を行う構成としてもよい。言い換えれば、第1判定処理及び第2判定処理のうち一方の処理が割愛されてもよい。この場合、土質管理システム20は、温度測定部41及び含水比測定部42のうち少なくとも一方を備えていればよい。また、判定部31Aが含水比の面分布ではなく温度の面分布から導出される面評価値について判定処理を行う場合でも、容器4の底部に配置した1つまたは複数の水分計から局所的な含水比を測定してもよい。面分布ではない局所的な含水比からであっても、含水比の面分布について判定処理と同様の考え方で改質状態を判定できる。土質評価値は、面分布を測定可能なパラメータであれば、温度及び含水比以外のパラメータであってもよい。
【0088】
・温度差ΔTの閾値ΔTthの設定方法として、ステップS2-2で決定された添加量Mの条件下における最大温度差ΔTmaxに基づいて閾値ΔTthを設定する方法を例示した。これに限定されず、例えば、ステップS2-2で決定された添加量Mの条件下において、所定の攪拌時間もしくは攪拌回数に達するまで攪拌した際の温度差ΔTに基づいて温度差ΔTの閾値ΔTthを設定してもよい。同様に、例えば、ステップS2-2で決定された添加量Mの条件下において、所定の攪拌時間もしくは攪拌回数に達するまで攪拌した際の含水比低下率ΔWに基づいて含水比低下率ΔWの閾値ΔWthを設定してもよい。同様に、例えば、ステップS2-2で決定された添加量Mの条件下において、所定の攪拌時間もしくは攪拌回数に達するまで攪拌した際の第2攪拌抵抗R2に基づいて攪拌抵抗Rの閾値Rthを設定してもよい。
【0089】
・第1判定処理において、温度差ΔTについて予め設定された閾値ΔTthに達したか否かを判定する構成としたが、温度差ΔTに代えて第2温度T2が予め設定された閾値に達したか否かを判定してもよい。この場合の第2温度T2の閾値は、予め作成された検量線に基づいて、ステップS2-2で決定された添加量Mの条件下で算出される第2温度T2の値に基づいて設定される。同様に、第2判定処理において、含水比低下率ΔWに対する判定に代えて、第2含水比W2が予め設定された閾値に達したか否かを判定してもよい。この場合の第2含水比W2の閾値は、予め作成された検量線に基づいて、ステップS2-2で決定された添加量Mの条件下で算出される第2含水比W2の値に基づいて設定される。
【0090】
・なお、第1判定処理~第5判定処理を行う順序及びタイミングは限定されず、攪拌開始から継続的に判定してもよいし、所定のタイミング毎に全ての判定処理を行ってもよいし、個別に判定処理を行うタイミングを設定してもよい。判定処理を行うタイミングとしては、例えば、所定の攪拌回数に達したときや、所定の攪拌時間に達したときなどが挙げられる。例えば、第5判定処理において、攪拌回数及び攪拌時間が閾値に達したと判定されたときに、第1判定処理~第4判定処理を行うようにしてもよい。何れの形態であっても、判定部31Aが実行する全ての判定処理において終了条件を満たしたときに、攪拌を終了すればよい。
【0091】
・第2判定処理の判定処理において、含水比低下率ΔWが閾値ΔWthに達しない場合には、改質剤5の量を追加してもよい。この場合、追加した改質剤5との反応によって含水比低下率ΔWが閾値ΔWthに達したことを確認すればよい。なお、第3判定処理の判定処理において、第2攪拌抵抗R2が閾値Rthに達しない場合についても同様である。
【0092】
・バックホウ10による攪拌作業は、全自動で行われてもよい。この場合、作業者によるバックホウ10の操作は不要になる。また、攪拌終了のタイミングは、土質管理システム20によって管理できる。
【0093】
・表示部33の画面は、
図13に示す例に限定されず、任意の形態であってよい。例えば、温度表示部33C及び含水比表示部33Dのうち少なくとも一方を備える構成であってもよい。この場合でも、攪拌中の土2における温度の面分布または含水比の面分布の何れかに応じて攪拌作業を行うことができる。これにより、攪拌作業の効率化、及び、土2の部分的な改質状態の差異の解消を達成できる。
【0094】
・土2の攪拌中において、演算部31Bは、温度差ΔT、含水比低下率ΔW、及び第2攪拌抵抗R2のうちの少なくとも1つの値に基づいて、これらの閾値の設定に用いた検量線から攪拌中の土2のコーン指数qcを算出してもよい。また、同様の考え方によって、温度差ΔTや含水比低下率ΔWに代えて、第2温度T2や第2含水比W2に基づいて攪拌中の土2のコーン指数qcを算出することもできる。これにより、算出されたコーン指数qcに基づいて攪拌中の土2の品質を管理できる。
【0095】
・例えば、データベースメモリに記憶されるプログラムやデータのうち、少なくとも一部がサーバに記憶されていてもよい。この場合、制御装置30は、例えば、制御部31がネットワーク回線を介して当該サーバにアクセスすることで、当該サーバから必要なプログラムやデータを取得する構成であってもよい。
【0096】
・ステップS2の条件設定の工程は、
図6に示す改質作業の一連の流れとは別に予め行われてもよい。この場合、予め決定された改質剤5の添加量MやステップS4-2において適用される各閾値を改質作業の前に制御装置30に入力したうえで、ステップS1,S3,S4の手順によって改質作業を行えばよい。
【0097】
[付記]
上記実施形態及びその変更例によれば、さらに以下の技術的思想が導き出される。
上記実施形態では、温度や含水比といった土質評価値の面分布から導出される面評価値に基づいて、土2の改質状態を判定する形態を例示した。上記実施形態において、例えば、第3判定処理のように、土2に改質剤5を添加して攪拌した状態の第2攪拌抵抗R2に基づいて、土2の改質状態を判定することもできる。このような形態によっても、高い精度で改質中の土2の品質を管理できる。この場合、土質評価値は、例えば、土2の攪拌抵抗R、温度、及び、含水比のうち少なくとも1つであればよい。測定部は、例えば、土2の攪拌抵抗R、温度、及び、含水比のうち少なくとも1つの土質評価値を測定すればよい。以上より、以下の付記1~付記5が導き出される。
【0098】
(付記1)
建設現場における土の改質状態を評価するための土質評価値であって、前記土に改質剤を添加して攪拌することによって変わる前記土質評価値を測定する測定部と、
前記土に前記改質剤を添加して攪拌した状態の前記土質評価値が閾値に達したか否かを判定する判定部と、を備え、
前記閾値は、前記土のコーン指数が目標値に達するために必要な添加量の前記改質剤を添加したときの前記土質評価値に基づいて設定される、
土質管理システム。
【0099】
上記付記1によれば、土に改質剤を添加して攪拌した状態の土質評価値が閾値に達したか否かを判定することによって、判定処理の時点において改質中の土のコーン指数が目標値に達したかどうかを判定できる。
【0100】
(付記2)
上記付記1において、前記土は、前記土を攪拌する攪拌部を備える建設機械を用いて攪拌される構成としてもよい。上記付記2によれば、建設機械を用いた攪拌において、改質中の土のコーン指数が目標値に達したか否かを判定できる。
【0101】
(付記3)
上記付記2において、前記測定部は、前記土質評価値として、前記建設機械が前記土を攪拌する際の攪拌抵抗、前記土の温度、及び、前記土の含水比のうち少なくとも1つを測定する構成としてもよい。上記付記3によれば、攪拌抵抗、温度、または、含水比の何れかの土質評価値の変化に基づいて、改質状態が適正か否かを判定することができる。
【0102】
(付記4)
上記付記2または付記3において、前記攪拌部の位置を検出する位置検出部をさらに備える構成としてもよい。上記付記4によれば、攪拌部の位置を検出することで、土の全体が攪拌されているか否かを確認することができる。
【0103】
(付記5)
建設現場における土の改質状態を評価するための土質評価値であって、前記土に改質剤を添加して攪拌することによって変わる前記土質評価値について、前記土のコーン指数が目標値に達するために必要な添加量の前記改質剤を添加したときの前記土質評価値に基づいて閾値を設定することと、
前記土に前記改質剤を添加した状態の前記土質評価値を測定することと、
前記土に前記改質剤を添加した状態の前記土質評価値が前記閾値に達したか否かを判定することと、を含む、
土質管理方法。
【0104】
また、変更例で示すように、温度差ΔT、含水比低下率ΔW、第2攪拌抵抗R2、第2温度T2、及び、第2含水比W2のうちの少なくとも1つの値に基づいて攪拌中の土2のコーン指数qcを算出することもできる。この場合の土質評価値は、例えば、土2の攪拌抵抗R、温度、及び、含水比のうち少なくとも1つであればよい。測定部は、例えば、土2の攪拌抵抗R、温度、及び、含水比のうち少なくとも1つの土質評価値を測定すればよい。以上より、以下の付記6~付記9が導き出される。
【0105】
(付記6)
建設現場における土の改質状態を評価するための土質評価値であって、前記土に改質剤を添加して攪拌することによって変わる前記土質評価値を測定する測定部と、
前記土に前記改質剤を添加して攪拌した状態の前記土質評価値に基づいて攪拌中の前記土のコーン指数を算出する演算部と、を備える、
土質管理システム。
【0106】
上記付記6によれば、算出されたコーン指数に基づいて攪拌中の土の品質を管理できる。
(付記7)
上記付記6において、前記土は、前記土を攪拌する攪拌部を備える建設機械を用いて攪拌される構成としてもよい。上記付記7によれば、建設機械を用いた攪拌において、改質中の土のコーン指数を算出できる。
【0107】
(付記8)
上記付記7において、前記測定部は、前記土質評価値として、前記建設機械が前記土を攪拌する際の攪拌抵抗、前記土の温度、及び、前記土の含水比のうち少なくとも1つを測定する構成としてもよい。上記付記8によれば、攪拌抵抗、温度、または、含水比の何れかの土質評価値の変化に基づいて、改質中の土のコーン指数を算出できる。
【0108】
(付記9)
上記付記6において、前記測定部は、改質の対象となる1種類の前記土に相互に異なる添加量の前記改質剤を添加したときの前記土質評価値を測定し、前記演算部は、各添加量と当該添加量の前記コーン指数との関係に基づいて、前記コーン指数の目標値から当該目標値を得る前記添加量を算出してもよい。上記付記9によれば、改質の対象となる土から目標とするコーン指数を得るための改質剤の添加量が得られる。このため、改質剤の添加量に過不足が生じることを抑制できるとともに、当該添加量に基づく改質状態の評価精度も高まる。
【符号の説明】
【0109】
1…建設現場、2…土、3…採掘機械、4…容器、5…改質剤、6…金属板、10…バックホウ、11…バケット、20…土質管理システム、30…制御装置、31…制御部、31A…判定部、33…表示部、41…温度測定部、42…含水比測定部、43…攪拌抵抗測定部、44…位置検出部。