(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093055
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】情報処理装置、プログラム、情報処理システム、情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G01S 13/74 20060101AFI20240702BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G01S13/74
G06K7/10 264
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209180
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】松尾 隆史
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AE09
5J070AE20
5J070AF01
5J070AH19
5J070AH31
5J070BC20
5J070BC23
(57)【要約】
【課題】所定空間内の状況をより簡便に推定できるようにする。
【解決手段】本発明のある態様は、所定空間に設置されている第1タグからの電波を取得する取得部と、取得部に取得された第1タグからの電波の強さの変動状態の時系列の変化に基づいて、上記空間内において予め決められた状況が発生したか否かを推定する推定部と、を備えた情報処理装置である。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定空間に設置されている第1タグからの電波を取得する取得部と、
前記取得部に取得された前記第1タグからの電波の強さの変動状態の時系列の変化に基づいて、前記空間内において予め決められた状況が発生したか否かを推定する推定部と、
を備えた情報処理装置。
【請求項2】
前記推定部は、時間経過に伴う連続的な状況変化の組合せを推定する、
請求項1に記載された情報処理装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記空間内の状況ごとに前記第1タグからの電波の強さの変動状態の時系列の変化に関する条件を対応付けたデータベースを参照して、いずれの状況が発生したか否かを推定する、
請求項1又は2に記載された情報処理装置。
【請求項4】
前記第1タグからの電波の強さの変動状態の時系列の変化に関する条件は、前記第1タグからの電波の強さの時系列におけるパターンの変化、前記第1タグからの電波の強さの所定期間内の変動幅の変化量、及び、前記第1タグからの電波の強さの所定期間内の平均値の変化量のうち少なくともいずれかに関する条件である、
請求項3に記載された情報処理装置。
【請求項5】
前記空間内において予め決められた状況として、前記空間内に設置され、かつ前記第1タグが取り付けられた揺動部材の揺動に関する状況を含み、
前記推定部は、前記データベースを参照し、前記第1タグからの電波の強さの時系列におけるパターンが変化し、かつ前記第1タグからの電波の強さの所定期間内の平均値の変化量が所定値以上である場合に、前記揺動部材が揺動したという状況を推定する、
請求項4に記載された情報処理装置。
【請求項6】
前記空間内において予め決められた状況として、前記空間内に配置される移動可能な物体に関する状況を含み、
前記推定部は、前記データベースを参照し、前記第1タグからの電波の強さの時系列におけるパターンが変化し、かつ前記第1タグからの電波の強さの所定期間内の平均値の変化量が所定値以上である場合に、前記空間内において前記物体が移動したという状況を推定する、
請求項4に記載された情報処理装置。
【請求項7】
前記第1タグからの電波の強さの変動状態の時系列の変化と、前記空間内において予め決められた状況と、を教師データとして用い、入力を前記第1タグからの電波の強さの変動状態の時系列の変化とし、かつ出力を状況とするモデルを、機械学習により生成するモデル生成部を備え、
前記推定部は、前記モデル生成部によって生成されたモデルを用いて、いずれの状況が発生したか否かを推定する、
請求項1又は2に記載された情報処理装置。
【請求項8】
前記空間内において予め決められた状況として、前記第1タグに対する人の近接若しくは離間に関する状況を含む、
請求項1又は2に記載された情報処理装置。
【請求項9】
前記空間内において予め決められた状況として、前記空間内に設置され、かつ前記第1タグが取り付けられた揺動部材の揺動に関する状況を含む、
請求項1又は2に記載された情報処理装置。
【請求項10】
前記空間内において予め決められた状況として、前記空間内に配置される移動可能な物体に関する状況を含む、
請求項1又は2に記載された情報処理装置。
【請求項11】
前記取得部は、所定空間において前記第1タグとは異なる位置に設置されている第2タグからの電波を取得し、
前記推定部は、前記取得部に取得された前記第1タグ及び前記第2タグからの電波の強さの変動状態の時系列の変化に基づいて、いずれの状況が発生したか否かを推定する、
請求項1又は2に記載された情報処理装置。
【請求項12】
前記第1タグは前記空間内に設置された可動部材に取り付けられ、前記第2タグは前記空間内に設置された固定部材に取り付けられている、
請求項11に記載された情報処理装置。
【請求項13】
前記第1タグは第1物体に取り付けられ、前記第2タグは、前記第1物体と共に使用される第2物体に取り付けられている、
請求項11に記載された情報処理装置。
【請求項14】
コンピュータを、
所定空間に設置されている第1タグからの電波を取得する取得部、及び、
前記取得部に取得された前記第1タグからの電波の強さの変動状態の時系列の変化に基づいて、前記空間内において予め決められた物体又は人の動きに関する状況の中からいずれの状況が発生したか否かを推定する推定部、
として機能させるためのプログラム。
【請求項15】
所定空間に設置されている第1タグと、
前記第1タグからの電波を取得する受信機と、
前記受信機に取得された前記第1タグからの電波の強さの変動状態の時系列の変化に基づいて、前記空間内において予め決められた状況が発生したか否かを推定する制御装置と、
を備えた情報処理システム。
【請求項16】
所定空間に設置されている第1タグからの電波を取得し、
前記取得された前記第1タグからの電波の強さの変動状態の時系列の変化に基づいて、前記空間内において予め決められた状況が発生したか否かを推定する、
ことを備えた情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、プログラム、情報処理システム、及び、情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、所定空間内における人物の行動を監視するようにしたシステムが提案されている。例えば特許文献1には、照光センサ及び温湿度センサが観測した観測情報を含むRF信号を発信器が情報処理端末装置に送信することで居室内の人物の生活行動を判定する室内状況監視システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載されたシステムでは、居室内の人物の行動を把握するために高価なセンサが必要となり、システムを広く普及させることは難しい。
【0005】
そこで、本発明は、所定空間内の状況をより簡便に推定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、所定空間に設置されている第1タグからの電波を取得する取得部と、前記取得部に取得された前記第1タグからの電波の強さの変動状態の時系列の変化に基づいて、前記空間内において予め決められた状況が発生したか否かを推定する推定部と、を備えた情報処理装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のある態様によれば、所定空間内の状況をより簡便に推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態の情報処理装置の適用例を示す図である。
【
図2】一実施形態の情報処理装置が取得する電波のRSSIの変動パターンを概略的に示す図である。
【
図3】
図1に示す適用例において、特定の状況において情報処理装置が取得する電波のRSSIの時系列の変化の例を示す図である。
【
図4】
図1に示す適用例において、特定の状況において情報処理装置が取得する電波のRSSIの時系列の変化の例を示す図である。
【
図5】
図1に示す適用例において、特定の状況において情報処理装置が取得する電波のRSSIの時系列の変化の例を示す図である。
【
図6】
図1に示す適用例において、特定の状況において情報処理装置が取得する電波のRSSIの時系列の変化の例を示す図である。
【
図7】
図1に示す適用例において、特定の状況において情報処理装置が取得する電波のRSSIの時系列の変化の例を示す図である。
【
図8】条件データベースのデータ構成例を示す図である。
【
図9】一実施形態の情報処理装置の内部構成を示すブロック図である。
【
図10】一実施形態の情報処理装置により状況分析を行う場合の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の情報処理装置、及び、プログラムの一実施形態について説明する。なお、以下に記載する形態は、図面の簡単な説明により説明される図面に限定されるものではない。
本発明のある態様の第1の態様は、所定空間に設置されている第1タグからの電波を取得する取得部と、前記取得部に取得された前記第1タグからの電波の強さの変動状態の時系列の変化に基づいて、前記空間内において予め決められた状況が発生したか否かを推定する推定部と、を備えた情報処理装置である。本発明のある態様の第1の態様によれば、所定空間内の状況をより簡便に推定できる。
【0010】
本発明のある態様の第2の態様は、前記推定部が、時間経過に伴う連続的な状況変化の組合せを推定する、前記第1の態様に記載の情報処理装置である。本発明のある態様の第2の態様によれば、1つのまとまった状況変化を推定できる。
【0011】
本発明のある態様の第3の態様は、前記推定部が、前記空間内の状況ごとに前記第1タグからの電波の強さの変動状態の時系列の変化に関する条件を対応付けたデータベースを参照して、いずれの状況が発生したか否かを推定する、第1又は第2の態様に記載の情報処理装置である。本発明のある態様の第3の態様によれば、データベースを参照することで状況を推定する際の演算負荷が低く済む。
【0012】
本発明のある態様の第4の態様は、前記第1タグからの電波の強さの変動状態の時系列の変化に関する条件が、前記第1タグからの電波の強さの時系列におけるパターンの変化、前記第1タグからの電波の強さの所定期間内の変動幅の変化量、及び、前記第1タグからの電波の強さの所定期間内の平均値の変化量のうち少なくともいずれかに関する条件である、第3の態様に記載の情報処理装置である。本発明のある態様の第4の態様によれば、状況を推定する際の演算負荷が低く済む。
【0013】
本発明のある態様の第5の態様は、前記空間内において予め決められた状況として、前記空間内に設置され、かつ前記第1タグが取り付けられた揺動部材の揺動に関する状況を含み、前記推定部は、前記データベースを参照し、前記第1タグからの電波の強さの時系列におけるパターンが変化し、かつ前記第1タグからの電波の強さの所定期間内の平均値の変化量が所定値以上である場合に、前記揺動部材が揺動したという状況を推定する、第4の態様に記載の情報処理装置である。本発明のある態様の第5の態様によれば、例えばドアの開閉に関する状況を推定できる。
【0014】
本発明のある態様の第6の態様は、前記空間内において予め決められた状況として、前記空間内に配置される移動可能な物体に関する状況を含み、前記推定部は、前記データベースを参照し、前記第1タグからの電波の強さの時系列におけるパターンが変化し、かつ前記第1タグからの電波の強さの所定期間内の平均値の変化量が所定値以上である場合に、前記空間内において前記物体が移動したという状況を推定する、第4の態様に記載の情報処理装置である。本発明のある態様の第6の態様によれば、前記空間内に配置されている移動可能な物体が人によって動かされたか否か推定できる。
【0015】
本発明のある態様の第7の態様は、前記第1タグからの電波の強さの変動状態の時系列の変化と、前記空間内において予め決められた状況と、を教師データとして用い、入力を前記第1タグからの電波の強さの変動状態の時系列の変化とし、かつ出力を状況とするモデルを、機械学習により生成するモデル生成部を備え、前記推定部は、前記モデル生成部によって生成されたモデルを用いて、いずれの状況が発生したか否かを推定する、第1又は第2の態様に記載の情報処理装置である。本発明のある態様の第7の態様によれば、学習済みモデルを使用することで状況を精度良く推定できる。
【0016】
本発明のある態様の第8の態様は、前記空間内において予め決められた状況として、前記第1タグに対する人の近接若しくは離間に関する状況を含む、第1から第7のいずれかの態様に記載の情報処理装置である。本発明のある態様の第8の態様によれば、人の特定の動きを把握することができる。
【0017】
本発明のある態様の第9の態様は、前記空間内において予め決められた状況として、前記空間内に設置され、かつ前記第1タグが取り付けられた揺動部材の揺動に関する状況を含む、第1から第8のいずれかの態様に記載の情報処理装置である。本発明のある態様の第9の態様によれば、例えばドア等の揺動部材が前記空間内に設置されている場合に、揺動部材の位置に応じた状況を推定できる。
【0018】
本発明のある態様の第10の態様は、前記空間内において予め決められた状況として、前記空間内に配置される移動可能な物体に関する状況を含む、第1から第9のいずれかの態様に記載の情報処理装置である。本発明のある態様の第10の態様によれば、前記空間内に配置されている移動可能な物体が人によって動かされたか否か推定できる。
【0019】
本発明のある態様の第11の態様は、前記取得部が、所定空間において前記第1タグとは異なる位置に設置されている第2タグからの電波を取得し、前記推定部は、前記取得部に取得された前記第1タグ及び前記第2タグからの電波の強さの変動状態の時系列の変化に基づいて、いずれの状況が発生したか否かを推定する、第1から第10のいずれかの態様に記載の情報処理装置である。本発明のある態様の第11の態様によれば、追加のタグを用いて状況を推定することで、推定の精度を上げることができる。
【0020】
本発明のある態様の第12の態様は、前記第1タグが前記空間内に設置された可動部材に取り付けられ、前記第2タグが前記空間内に設置された固定部材に取り付けられている、第11の態様に記載の情報処理装置である。本発明のある態様の第12の態様によれば、第1タグと第2タグからの電波が可動部材の動作に応じて異なるようになるため、可動部材に関連する状況を推定し易くなる。
【0021】
本発明のある態様の第13の態様は、前記第1タグが第1物体に取り付けられ、前記第2タグが、前記第1物体と共に使用される第2物体に取り付けられている、第11又は第12の態様に記載の情報処理装置である。本発明のある態様の第13の態様によれば、例えば、歯ブラシ、歯磨き粉、コップ等のほぼ同時に使用する2以上の物体に関する状況を推定できる。
【0022】
本発明のある態様の第14の態様は、コンピュータを、所定空間に設置されている第1タグからの電波を取得する取得部、及び、前記取得部に取得された前記第1タグからの電波の強さの変動状態の時系列の変化に基づいて、前記空間内において予め決められた物体又は人の動きに関する状況の中からいずれの状況が発生したか否かを推定する推定部、として機能させるためのプログラムである。本発明のある態様の第14の態様によれば、所定空間内の状況をより簡便に推定できる。
【0023】
本発明のある態様の第15の態様は、所定空間に設置されている第1タグと、前記第1タグからの電波を取得する受信機と、前記受信機に取得された前記第1タグからの電波の強さの変動状態の時系列の変化に基づいて、前記空間内において予め決められた状況が発生したか否かを推定する制御装置と、を備えた情報処理システムである。本発明のある態様の第15の態様によれば、所定空間内の状況をより簡便に推定できる。
【0024】
本発明のある態様の第16の態様は、所定空間に設置されている第1タグからの電波を取得し、前記取得するステップにおいて取得された前記第1タグからの電波の強さの変動状態の時系列の変化に基づいて、前記空間内において予め決められた状況が発生したか否かを推定する、ことを備えた情報処理方法である。本発明のある態様の第16の態様によれば、所定空間内の状況をより簡便に推定できる。
【0025】
本開示において「第1タグ」、「第2タグ」は、所定空間に電波を放射する無線タグであれば如何なる型式のタグであってもよい。タグは、UHF帯、HF帯、又は、マイクロ波帯で動作するRFID(radio frequency identification)タグであってもよい。RFIDタグは、パッシブ型(電池が内蔵されていないもの)でもよいし、アクティブ型(電池が内蔵されているもの)であってもよい。タグは、周囲の電波を収集して電力に変換し、当該電力を貯蔵するキャパシタを備えた、環境発電型のタグであってもよい。
以下の実施形態では、タグがRFIDタグである場合を例にして説明する。
【0026】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
図1は、一実施形態の情報処理システムの適用例を示している。
図1に示す空間SP内には、ドア71、ティッシュボックス72、ペン74が立てかけられたペンスタンド73などが配置されている。空間SP内で発生する状況を推定するために状況推定装置1(情報処理装置の一例)が設けられている。
図1に示す状況推定装置1は、空間SP(所定空間の一例)に設置されたタグT1~T3から発信される電波を受信するRFIDアンテナ2と、RFIDリーダ3と、制御装置4とにより構成され、空間SPにおける状況を推定する。
タグT1は、ドア71に取り付けられている。タグT2は、ティッシュボックス72に取り付けられている。タグT3は、ペンスタンド73内に収容されるペン74に取り付けられている(拡大図を参照)。各タグとRFIDアンテナ2との位置関係や、各タグが取り付けられている物体(ドア71、ティッシュボックス72、又は、ペン74)の空間SPでの状況の変化に応じて、各タグから得られるRSSIが変動する。
【0027】
RFIDアンテナ2は、空間SPに電波を放射し、その放射した電波に応じてタグTから発信される電波を受信する。RFIDリーダ3は、RFIDアンテナ2が受信した電波に含まれる信号の受信処理(例えば検波等)やRSSI(Received Signal Strength Indicator)(電波の強さの一例)の測定等を行う。受信処理によって得られるベースバンド信号には、タグTの固有のEPC(Electronic Product Code)が含まれており、RFIDリーダ3は、EPCによってタグT1~T3のいずれのタグの電波を受信したか判断する。
RFIDリーダ3は、RFIDアンテナ2がタグT1~T3の各々から受信した電波を処理する。
【0028】
タグT1~T3、及び、その取り付け対象となる物体は一例に過ぎず、空間SP内で推定したい状況に応じてタグを任意の物体に取り付けることができる。
以下の説明では、タグT1~T3に共通する事項について言及するときには「タグT」と表記する。タグT1~T3はいずれも第1タグの一例である。
図1に示す例では、RFIDアンテナ2とRFIDリーダ3が一体となっているが、互いに通信可能にして個別に配置してもよい。
なお、以下の説明において「タグから得られるRSSI」とは、タグから受信した電波から得られるRSSIを意味する。
【0029】
制御装置4は、RFIDリーダ3に接続されており、各タグからRFIDアンテナ2が電波を受信したときのRSSIの時系列の変化に基づき、空間SP内において予め決められた状況(例えば、物体の移動や物体に人が近付く等の様々な状況)が発生したか否かを推定するように構成されている。なお、制御装置4において、各タグから受信するEPCとタグが取り付けられている物体との対応付けは既知である。
制御装置4は、空間SP内に設置される必要はなく、RFIDリーダ3と通信可能であれば空間SPの外部に設置してもよい。
【0030】
次に、制御装置4によって状況の発生の推定方法について、
図2を参照して説明する。
図2は、一実施形態の情報処理装置が取得する電波のRSSIの変動パターンを概略的に示す図である。
一般的に、タグTとRFIDアンテナ2との物理的な位置関係に変化がない場合であっても、タグTから発信される電波は、揺らぎ等によってRFIDリーダ3で観測されるRSSIが時間経過に応じて変動する。しかしながら、その変動幅は、概ね一定の範囲に収まる。
また、時間経過に応じたRSSIの変動状態は、空間SP内に生ずる状況に応じて変化する。そこで、制御装置4は、RFIDリーダ3で観測されるRSSIの変動度合いを観測することで、予め決められた状況を推定する。
【0031】
図2は、特定のタグTから発信される電波をRFIDリーダ3で観測したときのRSSIの時間経過に応じた変動状態に基づく変動パターン(以下、適宜「パターン」と略記する。)を例示したものである。変動パターンとは、変動状況を推定することが可能な要素の1つである。
以下の説明において、「RSSIの変動状態」とは、所定期間(例えば10~20秒等)においてRSSIの時間経過に応じた(つまり、時系列での)変動態様を示す。
「RSSIの変動パターン」とは、所定時間内のRSSIの変動状態を類型化したものである。なお、
図2に示す3つの変動パターンは一例に過ぎない。
「RSSIの変動度合い」とは、所定時間内のRSSIの変動の程度を示す。「RSSIの変動幅」とは、RSSIの変動度合いの具体的な指標値であり、所定時間内のRSSIの最大値から最小値を引いた値である。
「RSSIの平均値」とは、所定時間内でサンプリングされた複数のRSSIの平均値であるが、簡易的に所定時間内のRSSIの最大値と最小値の中央値でもよい。
【0032】
図2を参照すると、変動パターンP1は、RSSIが相対的に高い値で比較的安定しているパターンであり、所定期間内のRSSIの平均値が所定の第1閾値TH1より高く、かつ変動幅が所定の第2閾値TH2より小さいパターンである。変動パターンP2は、RSSIの大きく変動するパターンであり、所定期間内のRSSIの変動幅が第2閾値TH2以上であるパターンである。変動パターンP3は、RSSIが相対的に低い値で比較的安定しているパターンであり、所定期間内のRSSIの平均値が所定の第1閾値TH1以下であり、かつ変動幅が所定の第2閾値TH2より小さいパターンである。
なお、
図2に示すパターンP1~P3によるRSSIの変動状態の類型化は一例に過ぎず、予め決められている状況の性質(タグの取付け対象となる物体や、空間SP内における物体の位置若しくは動きなど)に応じてより細分化したパターンを設定してもよい。また、
図2に示したような3つのパターンにRSSIの変動状態を類型化する場合であっても、予め決められている状況の性質に応じて、状況ごとに閾値(上記TH1、TH2等)を最適化することが好ましい。
タグTが設置された空間内でタグTが取り付けられた物体を人が移動させたり、タグTが取り付けられた物体の前を人が移動したりすると、時間の経過に伴ってRSSIの変動パターンがP1→P2→P1あるいはP3→P2→P3といった具合に、タグTに基づくRSSIの変動状態が時間の経過に伴って大きく変化する。
そこで、一実施形態では、空間SP内で生ずる様々な状況の各々に対して、特定のタグTから得られるRSSIの変動状態を示すデータが満たすべき1以上の条件を予め定義しておく。そして制御装置4は、運用時に、各タグから得られるRSSIの変動状態を示すデータが予め定義された条件を満たすか否か判断することで、空間SP内で特定の状況が発生したか否かを推定できる。
推定対象となる状況は、例えば、タグTが取り付けられた物体の揺動、タグTが取り付けられた物体の位置の変化、タグTが取り付けられた物体の周囲の人の移動等であるが、これらに限定されない。
【0033】
次に、
図3~
図7を参照して、
図1に示した空間SP内で生ずる状況と当該状況におけるRSSIの変動状態の例について説明する。各図では、各タグを読み取るときのRFIDアンテナ2の電波出力を例えば24dBmとした例を示している。
【0034】
図3は、
図1に示す適用例において、特定の状況において制御装置4が取得する電波のRSSIの変動状態の例を示す図である。
図3に示す例は、
図1において開閉可能なドア71を例えば10秒間「開状態」にしたときと、例えば10秒間「閉状態」にしたときとでタグT1から得られるRSSIの変動状態を示している。
ドア71が「開状態」のときは、RSSIが約-65.5~-64.5[dBm]程度の小さい変動幅で変動している。他方、ドア71が「閉状態」のときは、RSSIが約-51~-50[dBm]程度の小さい変動幅で変動している。ドア71の開閉に応じてタグT1から得られるRSSIの平均値は変化するが、いずれの場合も変動幅は小さく収まっている。ドア71に関連して空間SP内で発生する状況を推定するには、
図3に示したドア71の定常状態のRSSIの変動状態の値を基準データとして予め取得しておくことが好ましい。なお、ドア71の定常状態とは、タグが取り付けられたドア71の基準となる状態であり、例えばドア71の「閉状態」及び「開状態」の各状態を意味する。一実施形態では、制御装置4は、基準データを予め取得しておき、基準データと、ドア71の状態に変化があったとき(例えば、「閉状態」から「開状態」に変化したとき)に得られるRSSIの変動状態を示すデータと、を比較することで、ドア71が「閉状態」から「開状態」に変化した状況を推定する。
【0035】
図4は、
図1に示す適用例において、特定の状況において制御装置4が取得する電波のRSSIの時系列の変化の例を示す図である。
図4に示す例は、
図1に示すドア71に関して状況4A~4Cが発生したときに、タグT1から発信される電波をRFIDリーダで観測したときのRSSIの変動状態の時系列の変化を示している。
状況4Aは、ドア71を例えば5秒間「閉状態」とした後、次に例えば5秒間「開状態」とし、さらに例えば5秒間「閉状態」とした状況である。状況4Bは、ドア71を例えば5秒間「閉状態」とした後、次に例えば1秒間「開状態」とし、さらに例えば5秒間「閉状態」とした状況である。状況4Cは、ドア71を例えば5秒間「閉状態」とした後、次にドア71を半分だけ例えば5秒間「開状態」とし、さらに例えば5秒間「閉状態」とした状況である。
【0036】
状況4AでのRSSIは、最初と最後の5秒間の「閉状態」において約-52.5~-50[dBm]程度の小さい変動幅(つまり、変動幅が第2閾値TH2未満)で変動し、5秒間の「開状態」において約-58~-60[dBm]程度の小さな変動幅(つまり、変動幅が第2閾値TH2未満)で変動している。それに対して、ドア71が「閉状態」から「開状態」に変化する間や「開状態」から「閉状態」に変化する間、つまりドア71の状態が変わる間に、比較的変動幅が大きくなっている(つまり、変動幅が第2閾値TH2以上)。ドア71が「閉状態」である期間では、RSSIの平均値が大きく(つまり、平均値が第1閾値TH1より大きく)、RSSIの変動幅が第2閾値TH2未満より小さい変動パターンP1(
図2参照)となっている。ドア71が「開状態」である場合には、RSSIの平均値が小さく(つまり、平均値が第1閾値TH1以下であり)、RSSIの変動幅が第2閾値TH2未満より小さい変動パターンP3(
図2参照)となっている。
したがって、
図4に示すように、状況4Aでは、P1→P2→P3→P2→P1のようにパターンが変化している。
【0037】
状況4BでのRSSIは、最初と最後の5秒間の「閉状態」において約-50[dBm]前後の小さい変動幅(つまり、変動幅が第2閾値TH2未満)で変動している。それに対して、ドア71が「閉状態」から「開状態」に変化する間や「開状態」から「閉状態」に変化する間に約-69.5~-50[dBm]程度の比較的大きい変動幅(つまり、変動幅が第2閾値TH2以上)で変動している。ドア71が1秒間、「開状態」であるときには、RSSIの平均値が小さく(つまり、平均値が第1閾値TH1以下であり)、RSSIの変動幅が第2閾値TH2未満より小さい変動パターンP3(
図2参照)となっている。
したがって、
図4に示すように、状況4Bでは、P1→P2→P3→P2→P1のようにパターンが変化している。状況4Bは、パターンP3を示す期間が短い点で状況4Aと異なる。
【0038】
状況4CでのRSSIは、最初と最後の5秒間の「閉状態」において約-52.5~-50[dBm]程度の小さい変動幅(つまり、変動幅が第2閾値TH2未満)で変動している。それに対して、ドア71を半分だけ例えば5秒間「開状態」とした間には、約-64~-50[dBm]程度の比較的大きい(つまり、変動幅が第2閾値TH2以上)変動幅で変動している。
したがって、
図4に示すように、状況4Cでは、P1→P2→P1のようにパターンが変化している。
図4に示すように、状況4Bと状況4Cの場合のRSSIの変動状態を比較すると、ドア71を全開にしたとき(状況4B)とドア71を半開にしたとき(状況4C)とでは、パターンP3の有無で異なる。
このようにドア71の時間経過に伴う開閉状態の違いは、空間SP内で発生する状況の違いとして、RSSIの変動状態の時系列の変化(つまり、変動パターンの時系列の変化や、RSSIの変動幅や平均値の時系列での変化)に反映されている。
【0039】
図5は、
図1に示す適用例において、特定の状況において制御装置4が取得するタグT1からの電波のRSSIの変動状態の例を示す図である。
図5の例は、
図1においてドア71が「閉状態」のときにドア71の前を人が移動したときにタグT1から得られるRSSIの変動状態の時系列の変化を示している。
図5に示すように、ドア71が「閉状態」であるにも関わらず、例えば人がドア71の前を移動している期間のRSSIの変動幅(約13~20dB)は、人がドア71の前を移動していない期間のRSSIの変動幅(約5dB以下)より大きくなる。
すなわち、
図5では、人がドア71の前を移動していない期間では、RSSIの変動幅及び平均値が、ドア71が「閉状態」の基準データとほとんど変わらず、それ以外の期間でのRSSIの変動幅が相対的に大きくなっている。そこで、制御装置4は、取得したRSSIの変動状態のデータを基準データと比較し、かつ変動幅を閾値と比較することで、あるタイミングで人がドア71の前を移動したという状況を推定できる。
【0040】
図6は、
図1に示す適用例において、特定の状況において制御装置4が取得するタグT2からの電波のRSSIの変動状態の例を示す図である。
図6の例は、ティッシュボックス72が定位置にある状態(
図1に示す位置にある状態)、定位置を基準にRFIDアンテナ2に近付けた状態、及び、定位置を基準にRFIDアンテナ2から遠ざけた状態でタグT2から得られるRSSIの変動状態(10秒間)を示している。なお、定位置とは、タグT2が取り付けられたティッシュボックス72の基準となる位置である。
図6に示すように、ティッシュボックス72が「定位置にある状態」では、RSSIは、約-57.5~-59.5[dBm]程度の小さい変動幅で変動する。定位置を基準にティッシュボックス72を「RFIDアンテナに近付けた状態」では、RSSIは、約-50~-51.5[dBm]程度の小さい変動幅で変動する。定位置を基準にティッシュボックス72を「RFIDアンテナから遠ざけた状態」では、RSSIは、約-62.0~-60.0[dBm]程度の小さい変動幅で変動する。すなわち、いずれの状態でも、RSSIの変動幅が小さい(つまり、第2閾値TH2より小さい)ことから、
図2のパターンP1又はP3に相当する。
他方、ティッシュボックス72が「定位置にある状態」のRSSIの平均値は約-58dBであり、「RFIDアンテナに近付けた状態」のRSSIの平均値は約-51dBであり、「RFIDアンテナから遠ざけた状態」のRSSIの平均値は約-61dBである。すなわち、ティッシュボックス72とRFIDアンテナ2の間の距離に応じて、タグT2から得られるRSSIの平均値がそれぞれ大きく異なる。そのため、制御装置4は、RSSIの平均値を所定の閾値と比較し、パターンの変化(例えば、
図2のP1→P3、又はP3→P1)の有無を判定することで、ティッシュボックス72がRFIDアンテナ2に近付いた、あるいはRFIDアンテナ2から遠ざかったという状況を推定できる。
【0041】
図7は、
図1に示す適用例において、特定の状況において制御装置4が取得する電波のRSSIの変動状態の例を示す図である。
図7の例は、ペンスタンド73内のペン74を握り、その後ペン74をペンスタンド73に戻した場合にタグT3から得られるRSSIの変動状態の変化を示している。
図7において「ペンを握った期間」は、人がペン74を握ることでペン74を利用している期間(つまり、ペン74を使って文字等を書いている期間)を示している。
図7に示すように、ペン74がペンスタンド73内に置かれている状態(
図1参照)では、RSSIは、例えば-55~-51[dBm]程度の小さい変動幅(つまり、変動幅が第2閾値TH2未満)で変動する。このときのRSSIの変動状態の値が基準データとなる。
それに対して人がペン74を握った期間では、人の手がタグT3を遮蔽することでタグT3から発信される電波をRFIDリーダ3が読むことができず、タグT3からRSSIが得られない。
したがって、基準データを予め取得しておくことで、
図7に示すRSSIの変動状態のデータに基づき、タグT3からの電波を読むことができない期間(「ペンを握った期間」)が、人がペン74を利用しているという状況であることが推定できる。タグTからの電波を読むことができる期間では、RSSIの変動幅が第2閾値TH2未満であり、
図2の変動パターンP1又はP3に相当する。ここで、制御装置4は、タグTからの電波を読むことができる期間にタグT3から得られるRSSIの平均値と、基準データにおけるRSSIの平均値との差分が所定の閾値未満である場合、ペン74が定位置にある状況であると推定できる。
【0042】
図3~
図7に例示したように、空間SP内において物体に関連して空間SP内で生ずる状況は、当該物体に取り付けられたタグTから得られるRSSIの変動状態に反映されている。そこで、
図3~
図7に例示したようにして取得した空間SP内で生ずる様々な状況の各々と、各状況に対応して取得されるRSSIの変動状態のデータが満たすべき1以上の条件を予め定義しておく。そして制御装置4は、運用時に、各タグから得られるRSSIの変動状態を示すデータが予め定義された条件を満たすか否か判断することで、空間SP内の特定の状況が発生したか否かを推定する。
一実施形態では、予め決められた状況ごとに、対応するRSSIの変動状態のデータが満たすべき1以上の条件を含む条件データベースが構築される。一実施形態では、制御装置4は、この条件データベースに基づいて空間SP内で生ずる状況を推定する。
【0043】
図8は、条件データベースのデータ構成例を示す図である。
図8に示す条件データベースは、空間SP内の状況ごとにタグTからの電波の強さの変動状態の時系列の変化に関する条件を対応付けたデータベースである。
図8に示す条件データベースの各レコードには、「状況」、「対象タグ」、「条件」の各フィールドの値を含む。
「状況」フィールドには、「ドア」(つまり、
図1のドア71(揺動部材の一例))、「ティッシュボックス」(つまり、
図1のティッシュボックス72)、「ペン」(つまり、
図1のペン74)の各々について、予め決められた状況を示す値が含まれる。
「対象タグ」フィールドには、対応する状況を推定するためにRSSIの取得対象となるタグを特定する値が含まれる。
「条件」フィールドは、「パターン変化」「RSSI変動幅の変化量」「RSSI平均値の変化量」のサブフィールドからなる。
「パターン変化」フィールドには、例えば
図2に例示したパターンP1~P3に基づくパターンの変化に関する条件を示す値が含まれる。
「RSSI変動幅の変化量」フィールドには、RSSIの変動幅の変化量に関する条件を示す値が含まれる。
「RSSI平均値の変化量」フィールドには、RSSIの平均値の変化量に関する条件を示す値が含まれる。
図8の条件データベースに規定されるパターンの変化、RSSI変動幅の変化量、及び、RSSI平均値の変化量のうち少なくともいずれかに関する条件に基づいて状況を推定することで、状況を推定する際の演算負荷が低く済む。
【0044】
例えば、条件データベースにおいて、ドアの項目1に対応するレコードでは、ドア71に取り付けられたタグT1に対する条件として、予めドア71の「閉状態」に対応付けられたパターンP1(
図2参照)からドア71の「開状態」に対応付けられたパターンP3(
図2参照)への変化を登録しておく。また、パターンP1とパターンP3の間のRSSIの平均値の変化量に関する条件を、例えば「xxdBm以上」と登録しておく。なお、条件データベースへの登録は、ドア71の「P1→P3」や「P3→P1」を1つのパターンとして設定しておいてもよい。
例えば、制御装置4は、
図8に示す条件データベースを参照し、タグT1の電波から取得された所定期間におけるRSSIの変動状態が、上記パターンP1からパターンP3の組み合わせの条件を満たし、かつRSSIの平均値の変化量が「xxdBm以上」の条件を満たした場合、「ドア閉→ドア開」に対応する状況が発生したと推定する。
すなわち、制御装置4(後述する制御部41)は、条件データベースを参照し、タグT1(第1タグの一例)からの電波の強さの時系列におけるパターンが変化し、かつタグT1からの電波の強さを示すRSSIの所定期間内の平均値の変化量が所定値以上である場合に、ドア71が揺動したという状況を推定する。
【0045】
条件データベースに定義される「状況」フィールドには、空間SP内に設置されたタグT1に対する人の近接若しくは離間に関する状況(例えば、「状況」フィールドのドアの項目5,6)を含む。それによって、空間SP内の人の特定の動きを把握することができる。
具体的には、条件データベースのドアの項目5の場合(
図5の例に相当)、ドア71に取り付けられたタグT1に対する条件として、予めドア71の「閉状態」に対応付けられたパターンP1(
図2参照)からパターンP2への変化、及び、パターンP2からパターンP1への変化を登録しておく。また、パターンP1とパターンP2の間のRSSIの変動幅の変化量に関する条件を、例えば「xx~xxdBm」と登録しておく。例えば、制御装置4(後述する制御部41)は、
図8に示す条件データベースを参照し、タグT1の電波から取得された所定期間におけるRSSIの変動状態が、パターンP1→P2→P1の組合せの条件を満たし、かつRSSIの変動幅の変化量が「xx~xxdBm」の条件を満たした場合、「ドア(閉状態)を人が横切った」という状況が発生したと推定する。
【0046】
条件データベースのティッシュボックスの項目1,2の場合(
図6の例に相当)、ティッシュボックス72(移動可能な物体の一例)に取り付けられたタグT2に対する条件として、予めティッシュボックス72が「定位置」にあるときからティッシュボックス72をRFIDリーダ3に近付けたときと遠ざけたときのパターンの変化(それぞれ、P3→P1とP1→P3)を登録しておく。また、パターンP1とパターンP3の間のRSSIの平均値の変化量に関する条件を、例えば「xxdBm以上」と登録しておく。制御装置4は、
図8に示す条件データベースを参照し、タグT2の電波から取得された所定期間におけるRSSIの変動状態が、パターンP3→P1、又はパターンP1→P3の組合せの条件を満たし、かつRSSIの平均値の変化量が「xxdBm以上」の条件を満たした場合、「ティッシュボックスを近付けた」あるいは「ティッシュボックスを遠ざけた」という状況が発生したと推定することができる。
すなわち、制御装置4(後述する制御部41)は、条件データベースを参照し、タグT2(第1タグの一例)からの電波の強さの時系列におけるパターンが変化し、かつタグT2からの電波の強さであるRSSIの所定期間内の平均値の変化量が所定値以上である場合に、空間SP内においてティッシュボックス72が移動したという状況を推定する。
条件データベースのティッシュボックスの項目3の場合、人がティッシュを取ったときにタグT2から得られるRSSIが大きく変動する。そのため、条件として、パターンがP1→P2→P1と変化し、かつ人がティッシュを取った期間に相当するパターンP2のときのRSSIの変動幅の変化量が例えば「xx~xxdBm」であることを登録しておく。
【0047】
条件データベースのペンの項目2の場合(
図7の例に相当)、ペン74に取り付けられたタグT3に対する条件として、予めペン74が「定位置」にあるときのパターンP1を登録しておく。制御装置4(後述する制御部41)は、
図8に示す条件データベースを参照し、タグT3の電波から取得された所定期間におけるRSSIの変動状態に対応するパターンの変化が、P1→通信遮断→P1の組合せの条件を満たした場合、「ペンを使用して戻した」という状況が発生したと推定する。
【0048】
条件データベースに規定される、パターンの変化、RSSI変動幅の変化量、及び、RSSI平均値の変化量についての条件は、設定される条件の一例に過ぎず、これらのすべてが条件として必要であるとは限らない。条件は、実際に適用される状況に応じて適宜変更及び/又は追加することが好ましい。
【0049】
なお、前述したように、パターン変化を正確に判別するためには、各状況についての基準データを予め取得することが好ましい。例えば、ドア71の場合、ドア71が閉状態及び開状態のときの一定時間のRSSIの変動状態を示すデータが基準データとなり得る。ドア71が半分程度開いているときやドア71が動いているときの一定時間のRSSIの変動状態を示すデータも基準データとなり得る。ティッシュボックス72の場合、ティッシュボックス72が定位置にあるときの一定時間のRSSIの変動状態を示すデータが基準データとなり得る。ペン74の場合、ペン74がペンスタンド73に置かれているときの一定時間のRSSIの変動状態を示すデータが基準データとなり得る。
図2に例示したように、予め取得された基準データに基づいて、対応する変動パターンが予め設定される。
物体の様々な定常的な状態における基準データを予め取得しておくことは、各物体に取り付けられたタグから得られるRSSIに対応する変動パターンを設定する上で必要となる。
【0050】
基準データを初期設定として予め取得しておき、基準データを基に状況を推定することで、空間SP内の状況の推定精度が向上する。例えば、ドア71が閉状態及び開状態のときの基準データが既知であり、基準データに対応する各状態のパターンP1(RSSIの平均値>TH1)、パターンP3(RSSIの平均値≦TH1)が設定される。ここで、タグT1から一定期間のRSSIの変動状態を示すデータを取得したときに、基準データが既知である場合には、当該データを取得した期間のうちドア71が閉状態又は開状態である期間を精度良く推定できる。例えば、取得した所定期間のRSSIの変動状態のデータのうちRSSIの変動幅が第2閾値TH2より小さい期間のデータのRSSIの平均値と、ドア71が閉状態のときの基準データの平均値と、がほぼ同じであるならば、当該期間はドア71が閉状態であると精度良く推定できる。
【0051】
各状況に対して、対象タグから得られるRSSIの変動状態の時系列の変化に関する条件を決定する際には、各状況における対象タグから得られるRSSIのデータを多く取得し、取得した多くのデータに基づいて特定の状況を判別できるように条件を決定することが好ましい。
【0052】
次に、
図9を参照して、一実施形態の状況推定システム(情報処理システムの一例)の構成を説明する。
図9は、状況推定システムに含まれる状況推定装置1の内部構成を示すブロック図である。
図9に示すように、状況推定装置1は、RFIDアンテナ2、RFIDリーダ3、及び、制御装置4を備える。
RFIDリーダ3は、送受信部31及びRSSI測定部32を有し、RFIDアンテナ2を介して空間SP内のタグTとデータの交信を行う。送受信部31は、送信する信号の生成や、受信したタグTからの電波に含まれる応答信号の解析等の処理を行う。タグTからの電波に含まれる応答信号には、タグTに固有のEPCが含まれる。RSSI測定部32は、タグTからの電波の強さを示すRSSIを測定する。
RFIDリーダ3は、空間SP内に設置されているタグTからの電波を取得する取得部の一例である。RFIDアンテナ2及びRFIDリーダ3は、受信機の一例である。
【0053】
制御装置4は、制御部41、ストレージ42、操作入力部43、表示部44、及び、通信インタフェース(通信I/F)45を備える。
制御部41は、マイクロプロセッサを主体として構成され、所定のプログラムを実行することで、基準データ登録部411、パターン設定部412、及び、状況推定部413として機能する。なお、制御部41では、各タグから読み取られるEPCは、タグが取り付けられている物体に対応付けられている。そのため、制御部41は、各タグから得られるRSSIが、どの物体に取り付けられたタグから得られたRSSIであるか認識できる。
基準データ登録部411は、空間SP内の定常状態及び/又は初期状態においてRFIDリーダ3によって取得された各タグから得られるRSSIの変動状態を示すデータを基準データとして登録する。基準データは、ストレージ42内に記録される。基準データの登録は、例えばドア71に関連する状況である場合、以下のシーケンスにより行われる。
・タグT1をドア71に貼付
・ドア71が開状態のときにドア71を一定時間(例えば10秒)固定し、その間のRSSIの変動状態のデータを記録
・ドア71が閉状態のときにドア71を一定時間(例えば10秒)固定し、その間のRSSIの変動状態のデータを記録
【0054】
パターン設定部412は、空間SP内で予め決められた状況において取得された基準データに対応する変動パターンを設定する。
図2に、変動パターンの例を示したとおりである。
状況推定部413は、RFIDリーダ3により取得されたタグTからの電波の強さを示すRSSIの変動状態の時系列の変化に基づいて、空間SP内において予め決められた状況が発生したか否かを推定する。
ストレージ42は、例えばSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶装置であり、予め決められた状況に対する条件が記述される条件データベース(
図8参照)を記憶する。
操作入力部43は、例えばキーボード、マウス、又は、タッチパネル式入力手段を有し、利用者の操作入力を制御部41に通知する。
表示部44は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示パネルを備え、制御部41によって生成される画像を表示パネル上に表示する。
通信インタフェース45は、RFIDリーダ3との間でデータの授受を行う通信インタフェースである。
【0055】
一実施形態では、状況推定部413は、
図8に示した条件データベースを参照して空間SP内において予め決められた状況が発生したか否かを推定する。その際、状況推定部413は、時間経過に伴う連続的な状況変化の組合せを推定してもよい。それによって、空間SP内で発生した、1つのまとまった状況変化を推定できる。
図8の「状況」フィールドに定義されている2以上の状況を組み合わせることで、連続的な状況変化の組合せとなり得る。例えば、
図8の条件データベースにおいて「状況」フィールドのドアの項目2と項目5を組み合わせることで、「ドア開→ドア閉→ドア(閉状態)を人が横切った」といった連続的な状況変化の組合せとなる。そこで、状況推定部413は、「状況」フィールドのドアの項目2と項目5に対応する2つの条件をすべて満たした場合に、「ドア開→ドア閉→ドア(閉状態)を人が横切った」という状況変化の組合せが発生したと判断してもよい。
【0056】
次に、
図10のフローチャートを参照して、状況推定装置1が空間SP内の状況を推定するときの動作について説明する。
図10は、状況推定装置1により状況分析を行う場合の動作を示すフローチャートである。
図10のフローチャートの各処理は、状況推定装置1の制御部41によって実行される。
制御部41は先ず、予め決められた状況を推定する際の基礎となる基準データを取得し、記録(登録)する(ステップS2)。
図1に示す例では、基準データは、ドア71が閉状態及び開状態の各状態にあるときの一定時間のRSSIの変動を示すデータ、ティッシュボックス72が定位置にあるときの一定時間のRSSIの変動状態を示すデータ、ペン74がペンスタンド73に置かれているときの一定時間のRSSIの変動状態を示すデータ等である。
基準データの登録が完了すると制御部41は、空間SP内のタグT1~T3から受信する電波を基にRSSIを逐次取得し、記録することを開始する(ステップS4)。その後、分析を終了する所定の操作入力がない場合には(ステップS12:NO)、制御部41は、ステップS6~S10を繰り返し行う。
【0057】
制御部41は、過去の所定時間のRSSIを分析する(ステップS6)。ステップS6では、タグT1~タグT3ごとに、過去の所定時間から得られるRSSIの変動状態を示すデータから、状況を特定するためのデータを特定する。状況を特定するためのデータは、条件データベースに含まれる条件を満たすか否か判断可能であれば如何なるデータでもよい。一実施形態では、状況を特定するためのデータは、RSSIの変動パターン、RSSI変動幅の変化量、及び、RSSI平均値の変化量のうち少なくともいずれかを含む。
【0058】
次いで制御部41は、ステップS6で抽出したパラメータが条件データベース(
図8)に記述されたいずれかのレコードの条件をすべて満足するか判断する(ステップS8)。いずれかのレコードの条件をすべて満足する場合には(ステップS8:YES)、当該条件に対応する状況が発生したことを意味する。すなわち、一実施形態では、制御部41は、条件データベース(
図8)を参照して、いずれの状況が発生したか否かを推定する。条件データベースを参照することで状況を推定する際の演算負荷が低く済む。
制御部41は、いずれかの条件に対応する状況が発生した場合、その状況の発生時刻と状況を記録する(ステップS10)。状況の発生時刻は、例えばステップS6の分析対象となる所定時間の開始時刻である。
【0059】
ステップS6,S8の処理の一例は以下のとおりである。
制御部41は、過去の所定時間のRSSIの変動状態を示すデータを対象として、当該データに含まれる1以上のRSSIの変動パターンを特定する。ここで、
図2に示したように、一定期間内のRSSIの変動幅及び/又は平均値を閾値と比較することでパターンを特定してもよいし、所定時間内のRSSIの変動状態を示すデータに対して、登録済みの基準データとの間でパターンマッチングを行うことでパターンを特定してもよい。パターンを特定することで、過去の所定時間のRSSIのパターン変化がわかる。1以上のパターンが特定された後、各パターンにおけるRSSI変動幅の変化量、及び/又は、RSSI平均値の変化量を特定する。
制御部41は、パターン変化と、各パターンにおけるRSSI変動幅の変化量及び/又はRSSI平均値の変化量と、が、条件データベース(
図8)の各レコードの条件を満足するか否か判定する。そして制御部41は、満足した条件に対応する状況が発生したと推定する。
【0060】
以上説明したように、上述した状況推定装置1では、空間SPに設置されているタグTからの電波を取得するRFIDリーダ3を備え、タグTからの電波に基づくRSSIの変動状態の時系列の変化に基づいて、空間SP内において予め決められた状況が発生したか否かを推定する。この推定方法では、高価なセンサ等を必要としないため、空間SP内の状況の発生をより簡便に推定することができる。
【0061】
空間SP内の予め決められた状況の発生の推定は、条件データベースを用いる場合に限られず、学習済みモデルを用いて行ってもよい。
一実施形態では、状況推定装置1は、タグTからのRSSIの変動状態の時系列の変化と、空間SP内において予め決められた状況と、を教師データとして用い、入力をタグTからのRSSIの変動状態の時系列の変化とし、かつ出力を状況とするモデルを、機械学習により生成するモデル生成部を備えてもよい。その場合、状況推定部413は、モデル生成部によって生成されたモデルを用いて、いずれの状況が発生したか否かを推定する。学習済みモデルを使用することで状況の発生を精度良く推定できる。
【0062】
図11は、
図1とは異なる適用例を示す図である。一実施形態では、空間SP内の物体に関連する状況を推定する際に、2以上のタグのそれぞれから得られるRSSIの変動状態の時系列の変化に基づいて行ってもよい。
図11の例では、
図1に対してドア71(可動部材の一例)に関連する状況を推定するための追加のタグTsを設置した例を示している。この例では、RFIDリーダ3は、空間SPにおいてタグT1(第1タグの一例)とは異なる位置に設置されているタグTs(第2タグの一例)からの電波を取得する。制御装置4の状況推定部413は、RFIDリーダ3に取得されたタグT1及びタグTsからの電波から得られるRSSIの変動状態に基づいて、いずれの状況が発生したか否かを推定する。追加のタグTsを用いて状況を推定することで、推定の精度を上げることができる。
例えば、ドア71の開状態から閉状態への変化、あるいは閉状態から開状態への変化に応じて、タグTsから得られるRSSIは、タグT1から得られるRSSIとは異なる変動状態を示す。そのため、タグT1とタグTsの各々から得られるRSSIの変動状態を示すデータに基づいて条件データベースを構築することによって、状況推定部413は、タグT1からのRSSIの変動状態を示すデータのみを用いる場合よりも、発生した状況を特定するときの精度を上げることができる。
【0063】
追加のタグTsは、タグT1と同様にドア71に設置してもよいが、好ましくは、
図11に示すように、空間SP内に設置された壁(固定部材の一例)に取り付けられる。それにより、タグT1とタグTsから得られるRSSIの変動状態を示すデータがより大きく異なるようになるため、ドア71に関連する状況の発生をさらに推定し易くなる。すなわち、ドア71の開閉操作が行われた場合に、タグT1はRFIDリーダ3との距離等が変動するが、タグTsはRFIDリーダ3との距離等が変動しない。そのため、タグT1から得られるRSSIの変動幅と、タグTsから得られるRSSIの変動幅とは、大きく異なるようになる。そのため、タグT1とタグTsからそれぞれ得られるRSSIの変動幅の差分を指標とすることで、ドア71の開状態と閉状態の間で変化する状況がさらに推定し易くなる。
【0064】
以上の説明では、通信デバイスが、周囲の電波を収集して電力に変換し、当該電力を貯蔵するキャパシタを備えたIoTタグである場合について説明したが、その限りではなく、UHF帯、HF帯、又は、マイクロ波帯で動作するRFIDタグであっても構わない。また、いずれの場合も、RFIDタグは、パッシブ型でもよいし、アクティブ型であってもよい。
【0065】
上述した実施形態では、所定空間内のドア、ティッシュボックス及びペンにタグTを取り付けた場合を例にして説明したが、その限りではない。浴室、洗面室にRFIDリーダを設置し、シャンプーやリンス、歯ブラシ等にタグを貼付することで、シャンプーやリンス、歯ブラシ等に関する状況を推定してもよい。
また、日常的に使用する製品(歯ブラシ等)や備品(冷蔵庫のドア、風呂場のドア等)にタグを取り付けて状況を推定することで、遠隔的に住む人の生活状態を把握する見守り用途に利用できる。
店舗において来店者や従業員の行動を把握する目的に利用することもできる。例えば、店舗内の商品にタグを取り付け、店舗内の商品棚にRFIDリーダを設ける。それにより、店舗を訪れた来店客が商品を手に取ったかどうか、店舗の従業員が商品の補充等を行っているのかどうかといった状況を推定することができる。
タグTを人が携帯するカードに貼付して状況を推定してもよい。例えば、店舗の従業員が所持する従業員用カードにタグTを貼付することで、従業員が特定の物体(ペン、工具等)を利用したかどうか、あるいは利用頻度を把握することができる。あるいは、従業員が所定空間からの出入りを検出することもできる。
【0066】
空間内にタグを取り付ける場合、1つのタグ(第1タグの一例)が第1物体に取り付けられ、別のタグ(第2タグの一例)が、第1物体と共に使用される第2物体に取り付けられていてもよい。例えば、第1物体としての歯ブラシと、第2物体としての歯磨き粉又はコップとにそれぞれタグを取り付けて、各タグから得られるRSSIの変動状態を示すデータに基づいて、共に使用される物体に関する状況(例えば、人が歯を磨くという状況)を推定するように、条件データベースを構築することができる。それによって、例えば人の生活を遠隔的に見守る用途に利用できる。
【0067】
以上、本発明の情報処理装置、プログラム、情報処理システム、及び、情報処理方法の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。
例えば、制御装置4は、RFIDリーダ3とネットワークを介して通信可能なサーバであってもよい。制御装置4は、複数の装置に分散して構成してもよい。例えば、制御装置4を制御装置本体とストレージに分散して構成することができる。
【符号の説明】
【0068】
1…状況推定装置
2…RFIDアンテナ
3…RFIDリーダ
31…送受信部
32…RSSI測定部
4…制御装置
41…制御部
411…基準データ登録部
412…パターン設定部
413…状況推定部
42…ストレージ
43…操作入力部
44…表示部
45…通信インタフェース
T1~T3,Ts…タグ
71…ドア
72…ティッシュボックス
73…ペンスタンド
74…ペン
SP…空間