(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093060
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】飲料提供装置
(51)【国際特許分類】
B67D 1/08 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
B67D1/08 Z
B67D1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209192
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000109325
【氏名又は名称】株式会社ツインバード
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉部 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】山田 岳
(72)【発明者】
【氏名】戸部 那菜瀬
【テーマコード(参考)】
3E082
【Fターム(参考)】
3E082AA04
3E082BB03
3E082CC01
3E082DD01
3E082EE04
3E082FF09
(57)【要約】
【課題】他の部材の熱の影響を受け難い電源基板の冷却構造を備える飲料提供装置を提供する。
【解決手段】本体2と、電源基板17と、本体2内部に配設され、電源基板17を収容する基板下カバー18及び基板上カバー51と、冷却ファン48と、を備え、基板下カバー18及び基板上カバー51には、外部から空気を取り込む底面吸気口19と、空気が基板下カバー18及び基板上カバー51の外部に流出する通気孔62が形成され、本体2には、空気を外部へ排出する排気口15が形成され、本体2の内部には、底面吸気口19から通気孔62を通過して排気口15に至る第2の風路67が形成され、冷却ファン48は、空気を第2の風路67内において一方向に流動させる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
電源基板と、
前記本体内部に配設され、前記電源基板を収容する基板収容部と、
送風装置と、を備え、
前記基板収容部には、外部から空気を取り込む吸気口と、前記空気が前記基板収容部の外部に流出する通気孔が形成され、
前記本体には、前記空気を前記外部へ排出する排気口が形成され、
前記本体の内部には、前記吸気口から前記通気孔を通過して前記排気口に至る一側風路が形成され、
前記送風装置は、前記空気を前記一側風路内において一方向に流動させることを特徴とする飲料提供装置。
【請求項2】
飲料容器を収容する容器収容部と、
前記容器収容部を冷却する冷却装置と、
前記冷却装置から受熱して放熱する熱交換器と、を備え、
前記熱交換器を冷却する空気が流動する他側風路が形成され、
前記一側風路と前記他側風路は合流部で合流し、
前記一側風路において、前記通気孔が前記合流部よりも上流側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の飲料提供装置。
【請求項3】
前記通気孔が前記吸気口よりも高い位置に形成され、
前記送風装置は、前記合流部と前記排気口との間に配設されていることを特徴とする請求項2に記載の飲料提供装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体内部に配設された電源基板を冷却する風路を備えた飲料提供装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ビールサーバーとして特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載されたビールサーバー(1)は、ビールを収容する容器(10)と、ガスボンベ(5)と、容器(10)内を冷却する冷却機構(詳細は記載されていないが、突出部(2)内に配設されていると考えられる。)と、が全て別の空間に配置されている。
【0003】
ビールサーバー(1)は、飲食店等の店舗に設置される業務用のビールサーバーであると考えられるが、家庭用のビールサーバーとするためには、よりコンパクトな形状とすることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
容器(10)と、ガスボンベ(5)と、冷却機構を1つの空間に配置した場合、容器(10)を冷却する際に冷却機構から熱が発生するが、この熱によりガスボンベ(5)が高温になると、ガスボンベ(5)内の炭酸ガスが過剰に気化してしまうため温度上昇を防ぐ必要がある。
【0006】
ガスボンベ(5)の温度上昇を防止するため、ガスボンベ(5)を断熱材で被覆する方法もあるが、断熱材を設けることでビールサーバー(1)が大きくなってしまい、断熱材を設けることで、ビールサーバー(1)の内部に電源基板を設けると、ビールサーバー(1)のコンパクト化が困難であるという問題があった。
【0007】
本発明は以上の問題点を解決し、炭酸ガスボンベの冷却により発生する熱等、他の部材の熱の影響を受け難い電源基板の冷却構造を備える飲料提供装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る飲料提供装置は、本体と、電源基板と、前記本体内部に配設され、前記電源基板を収容する基板収容部と、送風装置と、を備え、前記基板収容部には、外部から空気を取り込む吸気口と、前記空気が前記基板収容部の外部に流出する通気孔が形成され、前記本体には、前記空気を前記外部へ排出する排気口が形成され、前記本体の内部には、前記吸気口から前記通気孔を通過して前記排気口に至る一側風路が形成され、前記送風装置は、前記空気を前記一側風路内において一方向に流動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る飲料提供装置は、他の部材の熱の影響を受け難い状態で電源基板を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るビールサーバーの斜視図である。
【
図2】実施形態に係るビールサーバーの正面図である。
【
図3】実施形態に係るビールサーバーの背面図である。
【
図4】実施形態に係るビールサーバーの平面図である。
【
図5】実施形態に係るビールサーバーの底面図である。
【
図6】実施形態に係るビールサーバーの左側面図である。
【
図7】実施形態に係るビールサーバーの縦断面図である。
【
図8】実施形態に係るビールタンクを取り外した状態を示すビールサーバーの斜視図である。
【
図11】実施形態に係る電源基板ユニットの上側斜視図である。
【
図12】実施形態に係る電源基板ユニットの下側斜視図である。
【
図13】実施形態に係る本体の縦断面斜視図である。
【
図14】実施形態に係る本体の下側部分の縦断面斜視図である。
【
図15】実施形態に係るビールサーバーの電気的構成を示すブロック図である。
【
図16】実施形態に係る初期温度と目標温度の関係を示す図である。
【
図17】実施形態に係る被冷却部の温度と冷却装置にかかる電圧の関係を示す図である。
【
図18】実施形態に係る目標温度を変更する場合の被冷却部の温度と冷却装置にかかる電圧の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【0012】
図1~
図6に示すように、飲料提供装置であるビールサーバー1は、本体2と、上蓋3と、を有している。本体2は、前壁部4と、後壁部5と、左壁部6と、右壁部7と、底壁部8と、を有している。上蓋3は本体2に対して着脱可能であり、ビールサーバー1は、上蓋3を本体2に取り付けた状態で外形が隅丸直方体形状となっている。
【0013】
前壁部4には、操作部である円形の操作ボタン9と、表示部である2つのLEDランプ10A、10Bが配設されている。操作ボタン9は、ビールサーバー1の電源のオン/オフ操作と、運転モードの切り替え操作を行うことができる。具体的には、ビールサーバー1の電源がオフの状態で操作ボタン9を1回長押し操作すると第1運転モードとなり、第1運転モード状態で操作ボタン9を1回押圧操作すると第2運転モードとなる。第2運転モード状態で操作ボタン9を1回押圧操作すると第1運転モードとなり、以下操作ボタン9を押圧操作すると第1運転モードと第2運転モードが切り替わる。そして、操作ボタン9を長押し操作するとビールサーバー1の電源をオフにすることができる。ビールサーバー1が第1運転モードで駆動しているときは、右側のLEDランプ10Aが点灯し、第2運転モードで駆動しているときは、左側のLEDランプ10Bが点灯する。
【0014】
前壁部4の上端部であって、左右方向(横方向)中部には、後述するビールタンク22のノズル33を係止するためのノズル開口部11が形成されている。ノズル開口部11は、下側が円弧状の半楕円形状を有している。ノズル開口部11は、操作ボタン9の真上に位置している。
【0015】
図3に示すように、後壁部5の上側部分には、矩形格子状の背面吸気口13が形成されている。背面吸気口13は、後壁部5を貫通する格子の隙間から本体2の内部に外気を取り込むことができる。また、後壁部5の下側部分には、矩形格子状の排気口15が形成されている。排気口15は、後壁部5を貫通する格子の隙間から本体2の内部の空気を外部に排出することができる。本実施形態の背面吸気口13と排気口15は、左右方向の横幅が略同一であり、上下方向(縦方向)の長さは背面吸気口13が排気口15よりも長く形成されているが、背面吸気口13と排気口15の大きさは、吸排気量等を考慮して所望の大きさとすることができる。また、形状も矩形状に限らず、他の形状とすることが可能である。
【0016】
底壁部8には、ビールサーバー1を載置する載置面P(
図6参照。)に当接する脚部16が4箇所に突設されている。また、底壁部8には、本体2の内部に電源基板17を組み込むための開口を閉塞する基板下カバー18が螺子止め固定されている。この基板下カバー18には、小さな矩形状の底面吸気口19が4箇所に形成されている(
図5及び
図12参照。)。ビールサーバー1を平坦な載置面Pに載置した場合、脚部16が基板下カバー18よりも下方の突出しているため、基板下カバー18は載置面Pに当接しない。そのため、底面吸気口19から本体2の内部に外気を取り込むことができるようになっている。底面吸気口19を小さく形成している理由は、ユーザが電源基板17に触れることを防止するためである。よって、底面吸気口19は子供の指も入らない程度の大きさに形成されている。なお、本実施形態では、底面吸気口19を4箇所に形成しているが、吸気量等を考慮して、3箇所以下や5箇所以上形成してもよい。
【0017】
図3及び
図6に示すように、底壁部8から電源コード20が後方に向かって引き出されており、電源コード20の先端の設けられた電源プラグ(図示せず)をコンセントに差し込むことでビールサーバー1に給電可能となっている。
【0018】
図7に示すように、上蓋3は、中空状に形成されており、内部に断熱材である発泡スチロール21が配設されている。なお、本実施形態では、断熱材として発泡スチロール21を使用しているが、断熱性能や重量等を考慮し、他の断熱材を使用してもよい。
【0019】
次に、本体2の内部構造について説明する。
図7に示すように、本体2の略中央部分には、飲料容器であるビールタンク22を収容するタンク収容部23が設けられている。容器収容部であるタンク収容部23は、アルミニウム材により形成される内壁部24と外壁部25を有している。内壁部24は、上側が開口した有底円筒形状を有している。外壁部25は、内壁部24を取り囲むように配設されている。内壁部24と外壁部25は上側で接続されており、内壁部24と外壁部25の間の空間Sには、断熱材である発泡ウレタン26が充填されている。なお、本実施形態では、断熱材として発泡ウレタン26を使用しているが、断熱性能や重量等を考慮し、他の断熱材を使用してもよい。
【0020】
タンク収容部23は、上側が前壁部4側に接近するように傾斜して設けられている。すなわち、タンク収容部23は、上蓋3の上面部3Aや底壁部8に対して所定の角度を有して傾斜している。
【0021】
内壁部24の後壁部5側には、内壁部24の被冷却部27に当接した熱伝導部材であるアルミブロック28が設けられている。このアルミブロック28には、冷却装置であり熱交換手段であるペルチェ素子29が熱伝導可能に接続されている。また、ペルチェ素子29には、放熱用の熱交換器であるヒートシンク30が熱伝導可能に接続されている。そのため、ペルチェ素子29によりアルミブロック28が吸熱されて冷却されることで被冷却部27、ひいては被冷却部27に接触するように収容されたビールタンク22とその内部のビール31が冷却される。一方、ペルチェ素子29の熱はヒートシンク30に伝導し、ヒートシンク30から放熱される。ビールタンク22内のビール31の量が減少した場合であっても、ビール31を効率良く冷却できるように、被冷却部27は、内壁部24の下側部分に設けられている。
【0022】
タンク収容部23には、飲料であるビール31を収容したビールタンク22が収容される。ビールタンク22の口部32には、ノズル33が着脱可能に取り付けられる。ノズル33は、ビールタンク22に取り付けられる基端部34と、ノズル開口部11に係止する係止部35と、注ぎ口36と、注ぎ口36の開閉を操作するレバー37と、ビールタンク22の内部に配置される導管38と、を有する。ビールタンク22は、ノズル33を取り付けた後にタンク収容部23に収容する(
図8参照。)。
【0023】
背面吸気口13とタンク収容部23の間の空間には、炭酸ガスボンベ41を収容するボンベ収容部42が配設されている。ボンベ収容部42は、上側が開口した有底円筒形状を有している。
図9及び
図10に示すように、炭酸ガスボンベ41の頭部43には炭酸ガスチューブ44の一端が接続されており、炭酸ガスチューブ44の他端は、ノズル33に設けられたチューブ取付部39に着脱可能に接続される。炭酸ガスボンベ41に充填された液化炭酸ガスが気化し、炭酸ガスチューブ44内を流動し、ビールタンク22内に供給されることで、ビールタンク22の内部が加圧される。そのため、レバー37を操作して注ぎ口36を開口すると、ビールタンク22の内圧により、ビール31が導管38内を流動し、注ぎ口36から流出する。また、ビールタンク22内をビール31と炭酸ガスで満たすことにより、ビール31の酸化を抑制することもできる。
【0024】
タンク収容部23の後側には、後壁部5と、左壁部6と、右壁部7と、外壁部25と、本体部2の天板部45と、後壁部5に設けられた風路壁部46と、後述する基板上カバー51と、に囲まれた一側風路である第1の風路47が形成されている。第1の風路47は、背面吸気口13から取り込まれた空気(冷却風)が排気口15まで流動する流路である。第1の風路47の下流側であって、排気口15の近傍には、送風装置である冷却ファン48が設けられている。この冷却ファン48を駆動させることで、背面吸気口13から排気口15まで、空気が一方向に流動する。
【0025】
液化炭酸ガスを充填した炭酸ガスボンベ41は、高温になると内部の液化炭酸ガスが過剰に気化するため、温度上昇を防ぐ必要がある。そのため、ボンベ収容部42は、第1の風路47内に配設されており、冷却風により冷却される構成となっている。また、ヒートシンク30も第1の風路47内に配設されており、冷却風により冷却される構成となっている。ヒートシンク30は、板状のフィン49が複数並列されている。フィン49は、第1の風路47内を流動する空気の流れと略平行となるように配設されている。そのため、隣り合うフィン49の間にも空気が流動し、ヒートシンク30が効率良く冷却される。
【0026】
タンク収容部23の下方には、電源基板ユニット50が配設されている。電源基板ユニット50は、電源基板17と、電源基板17を収容する基板収容部である基板下カバー18及び基板上カバー51と、を有している。
図7及び
図11に示すように、基板上カバー51は、タンク収容部23に沿うように配置されるため、基板上カバー51の上面部51Aは、タンク収容部23の外形に合わせた形状となっている。具体的には、上面部51Aは、外壁部25の前底面部52に対応する前上面部53と、外壁部25の中央底面部54に対応する中央上面部55を有する。前上面部53は、後側に向かって下方向に傾斜しており、中央上面部55は、前側に向かって下方向に傾斜している。
【0027】
基板上カバー51の上面部51Aは、中央上面部55の後側に後上面部56を有している。中央上面部55と後上面部56の接続部分には、前側垂直面部57と、左側垂直面部58と、右側垂直面部59と、下側水平面部60と、からなる凹状段部61が形成されている。前側垂直面部57と、左側垂直面部58と、右側垂直面部59は、下側水平面部60に対して垂直に形成されており、下側水平面部60は、上蓋3の上面部3Aや基板下カバー18と平行に形成されている。
【0028】
下側水平面部60の後側端部には、通気孔62が左右方向に3箇所形成されている。この通気孔62は、電源基板ユニット50の内外を連通する貫通孔であり、底面吸気口19よりも高い位置に形成されている。
図7に示すように、通気孔62は、外壁部25の中央底面部54と後底面部63との接続部分である接続角部64の直下位置よりも前側に位置している。そのため、外壁部25が結露し、結露水が接続角部64から真下に滴下しても結露水が通気孔62から電源基板ユニット50の内側に流入し難い構造となっている。なお、本実施形態では、通気孔62を3箇所に形成しているが、通気孔62の数は通気効率等を考慮して適宜決定することができる。
【0029】
基板上カバー51には、ビールサーバー1の制御手段である制御基板65を固定する基板固定部66が形成されている。基板固定部66は、前上面部53の前側に配設されており、一部はタンク収容部23の外壁部25と当接している。
【0030】
ここで、
図7、
図13及び
図14に基づいて、冷却ファン48を駆動した場合の空気の流れについて説明する。本実施形態では、一側風路である第1の風路47と他側風路である第2の風路67が形成されている。第1の風路47は、冷却ファン48を駆動することで、背面吸気口13から本体2内に取り込まれた空気が流動するものである。背面吸気口13から取り込まれた空気は、ボンベ収容部42を冷却し、ヒートシンク30を冷却し、冷却ファン48を通過し、排気口15から外部へ排出される。ボンベ収容部42はヒートシンク30の上側に配設されており、ヒートシンク30の熱が上昇してボンベ収容部42を加熱し易い配置となっているが、冷却ファン48を駆動することで、ボンベ収容部42がヒートシンク30に対して第1の風路47の上流側となるため、ヒートシンク30の熱がボンベ収容部42に伝導し難くなっている。
【0031】
一方、第2の風路67は、冷却ファン48を駆動することで、底面吸気口19から本体2内に取り込まれた空気が流動する流路である。第2の風路67は、左壁部6と、右壁部7と、底壁部8と、基板下カバー18と、基板上カバー51と、に囲まれて形成されている。底面吸気口19から取り込まれた空気は、基板上カバー51と基板下カバー18の内部で電源基板17を冷却し、通気孔62から電源基板ユニット50の外部に流動し、冷却ファン48を通過し、排気口15から外部へ排出される。通気孔62は、冷却ファン48や排気口15に近い位置に形成されていることから、電源基板17の熱で温められた空気は、通気孔62を通過した後すぐに排気口15から排出される。そのため、電源基板17の熱は、タンク収容部23、ヒートシンク30、ボンベ収容部42に伝導し難くなっている。
【0032】
第1の風路47と第2の風路67は、冷却ファン48の僅かに上流側に形成された合流部68で合流している。すなわち、排気口15と合流部68との間に冷却ファン48が配設されている。
【0033】
図7及び
図13に示すように、ビールサーバー1には、温度計測手段である温度センサ(サーミスタ)が3箇所に設けられている。第1の温度センサ71は、内壁部24の被冷却部27の温度を計測するものであり、被冷却部27の上方側に接続されて設けられている。第2の温度センサ72は、ヒートシンク30の温度を計測するものであり、ヒートシンク30に接続されて設けられている。第3の温度センサ73は、第1の風路47内の温度を計測するものであり、第1の風路47内に設けられている。第3の温度センサ73は、ビールサーバー1の外側の温度(外気温)を測定することを目的として設けられており、ビールサーバー1の外側に配設することが好ましいが、外観デザイン等を考慮して、第1の風路47内に設けられている。
【0034】
冷却ファン48は、ビールサーバー1の電源がオンになると共に駆動が開始し、電源をオフにした後、第2の温度センサ72が検知したヒートシンク30の温度が所定の温度以下となった場合に駆動が停止する。これは、電源をオフにしたときに、ヒートシンク30が十分に冷却されていないことにより、その余熱によってボンベ収容部42及び炭酸ガスボンベ41の温度が上昇することを防止するためである。したがって、所定の温度は、炭酸ガスボンベ41の許容温度より低い温度に設定する。本実施形態での所定の温度は、40℃に設定している。また、炭酸ガスボンベ41の許容温度によっては、常温といわれるような温度、例えば、15℃~25℃等に設定してもよい。
【0035】
図15は、ビールサーバー1の主な電気的構成を示すブロック図を示している。制御基板65に搭載された制御手段74の入力ポートには、操作ボタン9と、第1の温度センサ71と、第2の温度センサ72と、第3の温度センサ73がそれぞれ電気的に接続されている。また、制御手段74の出力ポートには、LEDランプ10A、10Bと、ペルチェ素子29と、冷却ファン48とがそれぞれ電気的に接続されている。さらに、制御手段74は、LEDランプ10A、10Bの点灯/消灯を制御するランプ制御部75と、ペルチェ素子29へ印加する電圧制御を行うペルチェ制御部76と、冷却ファン48の駆動と停止を制御するファン制御部77と、後述する初期目標温度判定部78と、時間を計測する計時手段79と、を備えている。
【0036】
本実施形態のビールサーバー1は、ペルチェ素子29によってアルミブロック28が冷却され、冷却されたアルミブロック28によって内壁部24の被冷却部27が冷却され、冷却された被冷却部27によってビールタンク22内のビール31が冷却される。そのため、ビール31よりも被冷却部27の方が早く温度が下降する。すなわち、ビール31が設定された温度に冷却されるまでは、第1の温度センサ71の検知温度とビール31の温度には温度差が生じる。ビール31の温度を直接測定することが困難であることから、本実施形態のビールサーバー1は、第1の温度センサ71の検知温度に基づいて冷却制御を行う。
【0037】
まず、事前準備として、ビールタンク22や炭酸ガスボンベ41を収容する共に両者を炭酸ガスチューブ44で接続し、上蓋3を閉め、電源コード20の電源プラグ(図示せず)をコンセントに差し込みビールサーバー1に給電する。この状態から操作ボタン9を長押し操作し、ビールサーバー1の電源をオンにすると、ペルチェ素子29による冷却が開始される。また、冷却ファン48の駆動も開始される。
【0038】
本実施形態のビールサーバー1は、第2運転モードを選択した場合に、ビール31の温度を-1℃まで冷却して保持するように設定されている。なお、ビール31の温度は、0℃や1℃等、他の温度に保持するように設定してもよく、第2運転モードを選択した場合に、第1運転モードと異なる温度に保持されるように設定してもよい。そして、第1の温度センサ71で検知する被冷却部27の温度を保持温度T1に設定することでビール31の温度を-1℃で保持するように制御している。保持温度T1はデフォルトで設定されており不変値である。冷却開始後は、ペルチェ素子29に最大電圧が印加され、被冷却部27の温度が目標温度T2以下まで冷却された後、保持温度T1に保持される。これは、より早く被冷却部27を保持温度T1に近づけるためである。以下、被冷却部27の温度を保持温度T1に保持するまでの制御について説明する。
【0039】
ビールサーバー1の電源をオンにしたとき、又は、運転モードを切り替えたときに、第3の温度センサ73が第1の風路47内の温度を検知する。電源をオンしたとき、又は、運転モードを切り替えたときの第1の風路47内の温度である初期温度T3に基づいて初期目標温度判定部78により目標温度T2が決定される。
図16に示すように、初期温度T3が5℃以下である場合には、目標温度T2が保持温度T1と同一に決定され設定される。そのため、第1の温度センサ71が目標温度T2(=保持温度T1)を検知すると、以降は被冷却部27が保持温度T1(=目標温度T2)で保持されるようにペルチェ素子29の印加電圧が制御される。
【0040】
図16に示すように、初期温度T3が5℃より高く25℃未満の場合には、保持温度T1>目標温度T2>保持温度T1-1.0℃となるように決定され設定される。目標温度T2は初期温度T3と傾きを負とする比例の関係にあり、初期温度T3が高ければ目標温度T2が低くなり、保持温度T1と目標温度T2の温度差が大きくなる。
【0041】
図16に示すように、初期温度T3が25℃以上の場合には、目標温度T2は保持温度T1よりも1℃低くなるように決定され設定される。なお、本実施形態では、初期温度T3が5℃以下の場合、5℃より高く25℃未満の場合、25℃以上の場合の3つの範囲で区切ったが、2つ又は4つ以上の範囲で区切ってもよい。また、目標温度T2の設定について、保持温度T1よりも0℃~1.0℃低い範囲での設定としたが、他の温度範囲で設定してもよい。
【0042】
図17に示すように、初期温度T3が5℃以下の場合には、最初に目標温度T2に達する前に、第1の温度センサ71が目標温度T2+0.2℃を検知すると、ペルチェ素子29に印加する電圧を徐々に下げ始める。なお、目標温度T2ではなく目標温度T2+0.2℃を起点に印加電圧を下げ始めるのは、被冷却部27の保持温度範囲である保持温度T1±0.5℃以内をアンダーシュートしないようにするためである。そのため、保持温度T1±0.5℃以内を保持できれば、印加電圧を下げる起点となる温度は目標温度T2+0.2℃に限られない。その後、第1の温度センサ71が目標温度T2を検知し、被冷却部27の温度が目標温度T2よりも低い状態から上昇に転じたことを検出すると、ペルチェ素子29に印加する電圧を一定にする(上昇時維持)。なお、本実施形態では、温度が上昇に転じたことを第1の温度センサ71の検知温度によって判定しているが、ここでは被冷却部27の温度が上昇に転じたことを検出する制御についての説明は省略する。その後、被冷却部27の温度が上昇し、第1の温度センサ71が目標温度T2を検知すると、ペルチェ素子29に印加する電圧を徐々に上げ始める(出力上昇)。そして、被冷却部27の温度が下降に転じたことを検出すると、ペルチェ素子29に印加する電圧を一定にする(下降時維持)。なお、被冷却部27の温度が下降に転じたことを検出する制御についての説明も省略する。その後は、第1の温度センサ71が目標温度T2を検知すると、ペルチェ素子29に印加する電圧を徐々に下げ始め(出力下降)、被冷却部27の温度が上昇に転じたことを検出するとペルチェ素子29に印加する電圧を一定にする(上昇時維持)。以降は、出力上昇、電圧一定(下降時維持)、出力下降、電圧一定(上昇時維持)を繰り返し、被冷却部27の温度を保持温度範囲(保持温度T1±0.5℃以内)で保持する。なお、保持温度範囲は、保持温度T1±0.4℃以内や、保持温度T1-0.4℃~保持温度T1+0.3℃の範囲等、他の範囲としてもよい。
【0043】
初期温度T3が5℃より高い場合には、最初に目標温度T2に達する前に、第1の温度センサ71が目標温度T2+0.2℃を検知すると、ペルチェ素子29に印加する電圧を徐々に下げ始める。第1の温度センサ71が目標温度T2を検知した後、被冷却部27の温度が目標温度T2よりも低い状態から上昇に転じたことを検出すると、ペルチェ素子29に印加する電圧を一定にする(上昇時維持)。その後、被冷却部27の温度が上昇し、第1の温度センサ71が目標温度T2を検知すると、ペルチェ素子29に印加する電圧を徐々に上げ始める(出力上昇)。そして、被冷却部27の温度が下降に転じたことを検出すると、ペルチェ素子29に印加する電圧を一定にする(下降時維持)。その後は、第1の温度センサ71が目標温度T2を検知すると、ペルチェ素子29に印加する電圧を徐々に下げ始め(出力下降)、被冷却部27の温度が上昇に転じたことを検出するとペルチェ素子29に印加する電圧を一定にする(上昇時維持)。以降も同様の電圧制御を行うと、被冷却部27の温度は、保持温度T1よりも低い温度である目標温度T2に保持されてしまう。そのため、初期温度T3が5℃より高い場合には、さらに以下の制御を行う。
【0044】
第1の温度センサ71が、目標温度T2よりも高い温度から下降して目標温度T2を検知し、再度目標温度T2よりも高い温度から下降して目標温度T2を検知するまでを1サイクルとした場合に、1サイクルに要する時間(周期時間)t1が3分以上である場合には、以降の目標温度T2が0.1℃高く設定される。すなわち、
図18に示すように、1サイクル目のポイントP1からポイントP2までの時間t1が3分以上の場合、2サイクル目のポイントP3は、目標温度T2+0.1℃となり、ポイントP2からポイントP3までの時間t1が3分以上の場合、3サイクル目のポイントP4は、目標温度T2+0.2℃となり、ポイントP3からポイントP4までの時間t1が3分以上の場合、4サイクル目のポイントP5は、目標温度T2+0.3℃となる。以降、1サイクルに要する時間t1が3分以上である場合には、目標温度T2が保持温度T1と同一となるまで、段階的に0.1℃ずつ目標温度T2が高くなるように決定され設定される。1サイクルに要する時間t1が3分未満である場合には、目標温度T2の変更は行われず、目標温度T2が維持され、1サイクルに要する時間t1が3分以上の場合のときのみ目標温度T2の変更が行われる。
【0045】
第1の温度センサ71が検知する被冷却部27の温度が目標温度T2に達した場合であっても、ビールタンク22に収容されたビール31の温度が一定程度高い場合があり、そのような場合には、ペルチェ素子29に印加する電圧を下げると短時間で第1の温度センサ71が検知する温度が上昇する。一方、ビールタンク22に収容されたビール31全体の温度が一定程度低温となっている場合には、目標温度T2を検知した後にペルチェ素子29に印加する電圧を下げても直ぐには温度上昇が起こらない。このように、ビール31全体の温度を早急に冷却すると共に、ビール31全体の温度が一定程度低温となってから目標温度T2を段階的に保持温度T1に近づけていくように、1サイクルに要する時間t1に応じて目標温度T2の変更の有無を決定している。1サイクルに要する時間t1は、制御手段74が備える計時手段79により計測される。
【0046】
目標温度T2を段階的に0.1℃ずつ変更し、目標温度T2が保持温度T1と同一に設定された後は、上記の初期温度T3が5℃以下の場合と同様の制御が行われ、被冷却部27が保持温度範囲(保持温度T1±0.5℃以内)で保持される。
【0047】
ビールタンク22をビールサーバー1に収容する前に冷蔵庫等で冷却していた場合、ビールタンク22及びビール31は、5℃前後の温度に冷却された状態になると考えられるが、そのように冷却されたビールタンク22であっても、目標温度T2に達するまでには一定程度の時間を要する。そのため、電源がオンになってからの駆動経過時間が3時間となった場合に、上記の目標温度T2の段階的な変更の制御を開始するように設定している。なお、本実施形態では駆動経過時間を3時間に設定しているが、2時間や3時間30分等、他の時間に設定してもよい。また、駆動経過時間に関わらず目標温度T2の段階的な変更の制御を開始してもよい。
【0048】
以上のように本実施形態のビールサーバー1は、本体2と、電源基板17と、本体2内部に配設され、電源基板17を収容する基板下カバー18及び基板上カバー51と、冷却ファン48と、を備え、基板下カバー18及び基板上カバー51には、外部から空気を取り込む底面吸気口19と、空気が基板下カバー18及び基板上カバー51の外部に流出する通気孔62が形成され、本体2には、空気を外部へ排出する排気口15が形成され、本体2の内部には、底面吸気口19から通気孔62を通過して排気口15に至る第2の風路67が形成され、冷却ファン48は、空気を第2の風路67内において一方向に流動させる。そのため、電源基板17を効率良く冷却することができる。
【0049】
また、本実施形態のビールサーバー1は、ビールタンク22を収容するタンク収容部23と、タンク収容部23を冷却するペルチェ素子29と、ペルチェ素子29から受熱して放熱するヒートシンク30と、を備え、ヒートシンク30を冷却する空気が流動する第1の風路47が形成され、第1の風路47と第2の風路67は合流部68で合流し、第2の風路67において、通気孔62が合流部68よりも上流側に位置している。そのため、第1の風路47内で発生したペルチェ素子29の熱を第2の風路67内に伝導し難くすると共に、第2の風路67内で発生した電源基板17の熱を第1の風路47内に伝導し難くすることができる。
【0050】
また、本実施形態のビールサーバー1は、通気孔62が底面吸気口19よりも高い位置に形成され、冷却ファン48は、合流部68と排気口15との間に配設されている。そのため、電源基板17を底面吸気口19と通気孔62の間に配設することで、電源基板17を効率良く冷却することができる。また、第1の風路47と第2の風路67を流動した温かい空気をまとめて機外へ排出することができる。
【0051】
なお、本発明は以上の実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変実施が可能である。例えば、飲料容器に収容する飲料はビールに限らず、他の種類の飲料であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 ビールサーバー(飲料提供装置)
2 本体
15 排気口
17 電源基板
18 基板下カバー
19 底面吸気口(吸気口)
22 ビールタンク(飲料容器)
23 タンク収容部
29 ペルチェ素子(冷却装置)
30 ヒートシンク(熱交換器)
47 第1の風路(他側風路)
48 冷却ファン(送風装置)
51 基板上カバー
62 通気孔
67 第2の風路(一側風路)
68 合流部