IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミルボンの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093083
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】毛髪用乳化組成物および毛髪処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20240702BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20240702BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20240702BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240702BHJP
   A61K 8/22 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A61K8/86
A61Q5/00
A61Q5/10
A61K8/34
A61K8/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209227
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(72)【発明者】
【氏名】濱野 璃青
(72)【発明者】
【氏名】萩野 太徳
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB411
4C083AB412
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC172
4C083AC892
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD112
4C083BB12
4C083BB13
4C083CC36
4C083DD31
4C083EE07
4C083EE26
(57)【要約】
【課題】保管中に生じる外観変化を抑制可能な毛髪用乳化組成物、及びこの組成物を使用する毛髪処理方法の提供。
【解決手段】(A)油性成分、(B)酸化エチレンの平均付加モル数が15以上であるポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、(C)過酸化水素、及び(D)水を含有する毛髪用乳化組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)、(B)、(C)及び(D)成分が配合された毛髪用乳化組成物。
(A)油性成分
(B)酸化エチレンの平均付加モル数が15以上であるポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル
(C)過酸化水素
(D)水
【請求項2】
前記(A)成分として固体又はペースト状の油性成分が配合された、請求項1に記載の毛髪用乳化組成物。
【請求項3】
前記(A)成分として固体又はペースト状の高級アルコールが配合された、請求項2に記載の毛髪用乳化組成物。
【請求項4】
粘度が30,000mPa・s以下である請求項1又は2に記載の毛髪用乳化組成物。
【請求項5】
酸化反応を利用する染毛処理用又は毛髪変形処理用の第2剤として使用される請求項4に記載の毛髪用乳化組成物。
【請求項6】
前記(C)成分の配合量が5.5質量%以下である、請求項1又は2に記載の毛髪用乳化組成物。
【請求項7】
カチオン性界面活性剤、アニオン界面活性剤、及び両性界面活性剤の配合量の総量が2質量%以下であるか、カチオン性界面活性剤、アニオン界面活性剤、及び両性界面活性剤が配合されていない、請求項1又は2に記載の毛髪用乳化組成物。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の毛髪用乳化組成物を使用する毛髪処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪用乳化組成物、及び当該組成物を使用する毛髪処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪に適用する毛髪用乳化組成物には、その用途に応じた様々な成分が配合される。酸化反応を利用する染毛用第2剤、毛髪変形用第2剤などには、過酸化水素が配合される。例えば、特許文献1には、過酸化水素、両性界面活性剤および水溶性高分子を配合してなる染毛用第2剤組成物が開示され、特許文献2には、過酸化水素、pH調整剤および緩衝剤を含有し、pHが4~6であり、緩衝剤の含有量が0.2mol/l以上であるパーマネントウェーブ用第2剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-137937号公報
【特許文献2】特開2005-145870号公報
【発明の概要】
【発明の解決しようとする課題】
【0004】
ところで、毛髪用乳化組成物が製造された後、この組成物の外観が大きく変化すると、品質上の問題が無くても消費者に不安を抱かせる可能性がある。このことは、毛髪用乳化組成物を保管した場合の外観変化も同様であり、その変化の抑制が望まれる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、保管中に生じる外観変化を抑制可能な毛髪用乳化組成物、及びこの組成物を使用する毛髪処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等が油性成分を配合する毛髪用乳化組成物について鋭意検討した結果、過酸化水素が外観変化を抑制する知見を得、更に、単独では外観変化の要因となる所定のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルを過酸化水素と共に配合すると、外観変化をより抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。また、上記外観変化が生じやすい低温での保管において、その変化の抑制が発揮されることを、本発明者等は見出している。
【0007】
すなわち、本発明は以下の発明を含む。
[発明1]
下記(A)、(B)、(C)及び(D)成分が配合された毛髪用乳化組成物。
(A)油性成分
(B)酸化エチレンの平均付加モル数が15以上であるポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル
(C)過酸化水素
(D)水
【0008】
[発明2]
前記(A)成分として、固体又はペースト状の油性成分が配合された、発明1に記載の毛髪用乳化組成物。前記(A)成分の中でも固体又はペースト状の油性成分は、保管中の当該組成物の外観変化を生じさせやすくするが、発明2の毛髪用乳化組成物であれば、(B)成分及び(C)成分の配合により、その外観変化が抑えられる。
【0009】
[発明3]
前記(A)成分として、固体又はペースト状の高級アルコールが配合された、発明2に記載の毛髪用乳化組成物。発明3の毛髪用乳化組成物であれば、(B)成分及び(C)成分の配合により、その外観変化が抑えられる。
【0010】
[発明4]
粘度が30,000mPa・s以下である発明1~3のいずれか1発明に記載の毛髪用乳化組成物。
【0011】
[発明5]
酸化反応を利用する染毛処理用又は毛髪変形処理用の第2剤として使用される発明1~4のいずれか1項に記載の毛髪用乳化組成物。
【0012】
[発明6]
前記(C)成分の配合量が5.5質量%以下である、発明1~5のいずれか1発明に記載の毛髪用乳化組成物。
【0013】
[発明7]
カチオン性界面活性剤、アニオン界面活性剤、及び両性界面活性剤の配合量の総量が1質量%以下であるか、カチオン性界面活性剤、アニオン界面活性剤、及び両性界面活性剤が配合されていない、発明1~6のいずれか1発明に記載の毛髪用乳化組成物。発明7であればイオン性界面活性剤が1質量%以下又は無配合なので、他のイオン性界面活性剤が配合された組成物と混ざり合うことがあっても、その組成物による作用を損なわせにくい。
【0014】
[発明8]
発明1~7のいずれか1発明に記載の毛髪用乳化組成物を使用する毛髪処理方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る油性成分及び水が配合された毛髪用乳化組成物によれば、所定のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル及び過酸化水素が共に配合されているので、保管中における油性成分と水との分離、油性成分の析出・凝集、艶の低下などの外観変化を抑制できる。
【0016】
また、本発明に係る毛髪処理方法によれば、油性成分及び水が配合され、且つ、所定のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル及び過酸化水素が共に配合されている毛髪用乳化組成物を使用するので、保管中における油性成分と水との分離、油性成分の析出・凝集、艶の低下などの外観変化が抑制された毛髪用乳化組成物を使用して毛髪を処理できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に基づき本発明を、以下詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に記載される構成に限定されることを意図しない。
【0018】
本実施形態の毛髪用乳化組成物は、下記(A)~(D)成分が配合されたものである。また、公知の毛髪用乳化組成物に配合される成分が、本実施形態の毛髪用乳化組成物に任意配合されていても良い。
(A)油性成分
(B)酸化エチレンの平均付加モル数が30以上であるポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル
(C)過酸化水素
(D)水
【0019】
(A)成分である油性成分が配合された毛髪用乳化組成物の乳化安定性が不十分であると、当該組成物の保管中に離水が生じる(この離水は、低温保管で特に生じやすい。)。その離水に至る過程では、例えば、毛髪用乳化組成物の艶の低下、粒子析出などの順に外観変化が生じるが、(B)成分であるポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルと(C)成分である過酸化水素の双方配合は、外観変化の抑制に適する。
【0020】
((A)成分:油性成分)
本実施形態の毛髪用乳化組成物には、油性成分が(A)成分として配合される。
【0021】
本実施形態の毛髪用乳化組成物には、(A)成分として、固体の油性成分、ペースト状の油性成分、及び液状の油性成分から選ばれた一種又は二種以上が配合される(なお、油性成分の固体、ペースト状、液状の状態は、25℃における状態である。)。本実施形態の毛髪用乳化組成物における(A)成分の配合量は、適宜設定されるべきであるが、1質量%以上15質量%未満が良く、2.5質量%以上10質量%未満が好ましく、3.5質量%以上8質量%未満がより好ましい。1質量%以上であると、粘度を高めるなどの油性成分による効果を発揮させやすく、15質量%未満であると、保管中の外観変化の抑制に適する。
【0022】
本実施形態の毛髪用乳化組成物において、固体の油性成分、ペースト状の油性成分、又は、固体の油性成分及びペースト状の油性成分を、(A)成分として配合する場合、一般的には保管時の毛髪用乳化組成物の外観変化を伴い易くなるが、その外観変化は、(B)成分及び(C)成分の配合により抑制される。本実施形態の毛髪用乳化組成物において固体の油性成分及びペースト状の油性成分から選ばれた一種又は二種以上が配合されても良く、その配合量の総量は、1質量%以上15質量%未満が良く、2.5質量%以上10質量%未満が好ましく、3.5質量%以上8質量%未満がより好ましい。1質量%以上であると、粘度を高めるなどの油性成分の効果を発揮させやすく、15質量%未満であると、保管中の外観変化の抑制に適する。
【0023】
本実施形態の毛髪用乳化組成物において、固体の高級アルコール、ペースト状の高級アルコール、又は、固体の高級アルコール及びペースト状の高級アルコールを、(A)成分として配合しても良い。本実施形態の毛髪用乳化組成物において固体の高級アルコール及びペースト状の高級アルコールから選ばれた一種又は二種以上が配合されても良く、その配合量の総量は、1質量%以上15質量%未満が良く、2.5質量%以上10質量%未満が好ましく、3.5質量%以上8質量%未満がより好ましい。
【0024】
本実施形態の毛髪用乳化組成物において液状の油性成分を(A)成分として配合する場合、その配合量は、適宜設定される。液状の油性成分は、固体又はペースト状の油性成分よりも外観変化を伴いにくいが、本実施形態の毛髪用乳化組成物における液状の油性成分の配合量は、4質量%以下、2質量%以下、1質量%以下のいずれであっても良い。いずれの配合量範囲であっても、(B)成分及び(C)成分の配合が、保管中の外観変化を抑制する。
【0025】
(A)成分は、上記固体の高級アルコールなどの高級アルコール、油脂、エステル油、ロウ、炭化水素、シリコーンなどの公知の油性成分であると良い。
【0026】
上記高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコールなどの直鎖状飽和アルコール; オレイルアルコールなどの直鎖状不飽和アルコール;ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、イソセチルアルコール、ドデシルヘキサデカノール、イソステアリルアルコール、テトラデシルオクタデカノールなどの分岐状飽和アルコールが挙げられる。固体又はペースト状の高級アルコールを配合する場合、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、又は、セチルアルコール及びステアリルアルコールを配合すると良い。
【0027】
上記油脂は、脂肪酸とグリセリンとのトリエステルを主成分とするものであり、例えば、アーモンド油、アボガド油、オリーブ油、シア脂、シア脂油、月見草油、チャボトケイソウ種子油、ツバキ油、パーシック油、ババス油、ピーナッツ油、メドウフォーム油、ローズヒップ油が挙げられる。
【0028】
上記エステル油としては、例えば、イソステアリン酸イソプロピル、2-エチルヘキサン酸セチル、イソステアリン酸ヘキシル、ジ2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、イソステアリン酸イソセチル、ステアリン酸コレステリルが挙げられる。
【0029】
上記ロウは、高級脂肪酸と高級アルコールとのエステルを主成分とするものであり、例えば、 ミツロウ、モクロウ、ホホバ油、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、カルナウバロウが挙げられる。
【0030】
上記炭化水素としては、例えば、 流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスが挙げられる。
【0031】
上記シリコーンとしては、例えば、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、環状シリコーン、アルコール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーンが挙げられる。
【0032】
((B)成分:酸化エチレンの平均付加モル数が15以上であるポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル)
本実施形態の毛髪用乳化組成物には、酸化エチレンの平均付加モル数が15以上であるポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルが(B)成分として配合される。(B)成分は(C)成分である過酸化水素とともに毛髪用乳化組成物に配合されることで、毛髪用乳化組成物の保管中の外観変化を改善する。
【0033】
上記(B)成分の有する酸化エチレンの平均付加モル数は、15以上であり、25以上が好ましく、35以上がより好ましく、45以上が更に好ましく、55以上がより更に好ましい。当該平均付加モル数が15以上であると、外観変化の抑制に適する。
【0034】
上記酸化エチレンの平均付加モル数が15以上の(B)成分としては、例えば、ヘキサオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ヘキサステアリン酸ポリオキシエチレンソルビットなどのポリオキシエチレンソルビットヘキサ脂肪酸エステル;ペンタイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット、ペンタオレイン酸ポリオキシエチレンソルビットなどのポリオキシエチレンソルビットペンタ脂肪酸エステル;テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトライソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトラステアリン酸ポリオキシエチレンソルビットなどのポリオキシエチレンソルビットテトラ脂肪酸エステル;トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビットなどのポリオキシエチレンソルビットトリ脂肪酸エステル;モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビット、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビットなどのポリオキシエチレンソルビットモノ脂肪酸エステルが挙げられる。これらの中でも、低温による毛髪用乳化組成物の外観変化をより改善できる観点から好ましいものは、例えば、ポリオキシエチレンソルビットテトラ脂肪酸エステルであり、より具体的に好ましいものは、例えば、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビットである。
【0035】
前記テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビットとしては、例えば、テトラオレイン酸ソルベス-30、テトラオレイン酸ソルベス-40、テトラオレイン酸ソルベス-60、テトラオレイン酸ソルベス-230が挙げられる。
【0036】
本実施形態の毛髪用乳化組成物において、(B)成分の配合量に対する(A)成分の配合量の質量比(A)/(B)は、適宜設定されるべきものであるが、1以上100以下が良く、5以上50以下が好ましく、10以上30以下がより好ましい。1以上であると、粘度を高めるなどの(A)成分による効果を発揮させやすく、100以下であると、保管中の外観変化の抑制に適する。
【0037】
((C)成分:過酸化水素)
本実施形態の毛髪用乳化組成物には、過酸化水素が(C)成分として配合される。(C)成分が配合されることで、保管中における毛髪用乳化組成物の外観変化が改善する。
【0038】
本実施形態の毛髪用乳化組成物における(C)成分の配合量は、適宜設定されるべきものであるが、0.5質量%以上6.5質量%以下が良く、1質量%以上5.5質量%以下が好ましく、1.5質量%以上4.5質量%以下がより好ましく、1.5質量%以上3質量%以下が更に好ましい。1質量%以上であると、保管中の外観変化の抑制に適し、6.5質量%以下であると、頭皮などの皮膚への刺激抑制に適する。
【0039】
((D)成分:水)
本実施形態の毛髪用乳化組成物は、水が(D)成分として配合される。(D)成分は前記(A)、(B)及び(C)成分を毛髪用乳化組成物に分散させる目的で配合される。
【0040】
本実施形態の毛髪用乳化組成物における(D)成分の配合量は、適宜設定されるべきものであるが、50質量%以上95質量%以下が良く、65質量%以上95質量%以下が好ましく、80質量%以上95質量%以下がより好ましく、85質量%以上95質量%以下が更に好ましい。
【0041】
(任意成分)
本実施形態の毛髪用乳化組成物には、本発明の目的に反しない限り、前記(A)~(D)成分の他に、任意成分を配合させることができる。任意成分としては、例えば、(B)成分以外のノニオン界面活性剤があげられる。また、他の任意成分としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子化合物、保湿剤、酸化防止剤、ビタミン、防腐剤、香料が挙げられる。
【0042】
(B)成分以外のノニオン界面活性剤を本実施形態の毛髪用乳化組成物に配合する場合、公知のノニオン界面活性剤から選ばれた一種又は二種以上を配合すると良い。
【0043】
任意成分として配合するノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルである(以下、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを(E)成分ということがある。)。(E)成分の配合は、保管中の外観変化の抑制に適し、その配合量は、例えば0.5質量%以上3質量%以下である。
【0044】
(E)成分の酸化エチレンの平均付加モル数は、例えば、60以下である。保管中の外観変化の抑制の観点からは、二種以上の(E)成分の配合が好ましく、酸化エチレンの平均付加モル数10以下の(E)成分及び同平均付加モル数15以上50以下の(E)成分の配合がより好ましい(例えば、酸化エチレンの平均付加モル数が2以上5以下の(E)成分及び同平均付加モル数20以上30以下の(E)成分の配合である。)。
【0045】
公知のポリオキシエチレンアルキルエーテルから選択した(E)成分を配合すると良く、(E)成分としては、例えば、ラウレス-2、ラウレス-3、ラウレス-4、ラウレス-5、ラウレス-6、ラウレス-7、ラウレス-8、ラウレス-9、ラウレス-10、ラウレス-11、ラウレス-12、ラウレス-13、ラウレス-14、ラウレス-15、ラウレス-16、ラウレス-20、ラウレス-21、ラウレス-23、ラウレス-24、ラウレス-25、ラウレス-30、ラウレス-38、ラウレス-40、ラウレス-50などのポリオキシエチレンラウリルエーテル;セテス-2、セテス-3、セテス-4、セテス-5、セテス-6、セテス-7、セテス-8、セテス-10、セテス-12、セテス-13、セテス-14、セテス-15、セテス-16、セテス-17、セテス-18、セテス-20、セテス-23、セテス-24、セテス-25、セテス-30、セテス-40、セテス-45などのポリオキシエチレンセチルエーテル;ステアレス-2、ステアレス-3、ステアレス-4、ステアレス-5、ステアレス-6、ステアレス-7、ステアレス-8、ステアレス-9、ステアレス-10、ステアレス-11、ステアレス-12、ステアレス-13、ステアレス-14、ステアレス-15、ステアレス-16、ステアレス-17、ステアレス-18、ステアレス-20、ステアレス-21、ステアレス-25、ステアレス-27、ステアレス-30、ステアレス-40、ステアレス-50などのポリオキシエチレンステアリルエーテルが挙げられる。
【0046】
本実施形態の毛髪用乳化組成物には、同組成物の用途や他の組成物との組合せ使用に応じて、カチオン性界面活性剤、アニオン界面活性剤、又は両性界面活性剤を配合しても良い。これら界面活性剤活性剤の一種又は二種以上を配合する場合、他の組成物において異なるイオン性界面活性剤が配合されているときの他の組成物の作用・効果の低下抑制の観点から、本実施形態の毛髪用乳化組成物におけるカチオン性界面活性剤、アニオン界面活性剤、及び両性界面活性剤の配合量の総量は、2質量%以下が良く、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい(カチオン性界面活性剤、アニオン界面活性剤、及び両性界面活性剤の無配合が最適である。)。
【0047】
(剤型)
本実施形態の毛髪用乳化組成物は、例えば水中油型乳化組成物である。剤型は、例えば液状、クリーム状であると良い。
【0048】
本実施形態の毛髪用乳化組成物の粘度は、特に限定されないが、例えば、300mPa・s以上30,000mPa・s以下、2,000mPa・s以上20,000mPa・s以下、4,000mPa・s以上15,000mPa・s以下、6,000mPa・s以上13,000mPa・s以下に適宜設定される。ここで、当該粘度は、B型粘度計を使用して測定(温度:25℃、ロータ:粘度に応じて適宜設定、ロータの回転速度:粘度に応じて適宜設定)した場合においての粘度計測開始から60秒後の値を採用する。
【0049】
(用途)
本実施形態の毛髪用乳化組成物は、(C)成分である過酸化水素が配合されているので、酸化反応を利用する毛髪処理方法において使用される。例えば、染毛処理において、パラアミノフェノールなどの酸化染料が配合された第1剤と混合して使用される第2剤と同様、本実施形態の毛髪用乳化組成物を酸化染毛用の第2剤として使用すると良い。また、ウェーブ状や直毛状に毛髪形状を変形させるための公知の毛髪変形用処理(パーマネントウェーブ処理、縮毛矯正処理)において、チオグリコール酸などの還元剤が配合された第1剤を使用した後に使用される第2剤と同様、本実施形態の毛髪用乳化組成物を毛髪変形用の第2剤として使用すると良い。
【0050】
(pH)
本実施形態の毛髪用乳化組成物の25℃におけるpHは、染毛処理用の第2剤として使用する場合、例えば2.0以上4.0以下であり、毛髪変形処理用の第2剤として使用する場合、例えば2.5以上3.5以下である。
【実施例0051】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に詳述するが、これらの記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0052】
(毛髪用乳化組成物)
80℃に維持した水500gに対し、あらかじめ80℃で維持した(A)成分、(B)成分、テトラオレイン酸ソルベス-6、(E)成分、植物油の混合物(ホホバ油、パーシック油、メドウフォーム油及びローズヒップ油の混合物)の配合物を添加し、均一になるまで混合後、45℃まで冷却した。ここに、(C)成分、フェノキシエタノール及びエトキシジグリコールを添加し、800gになるまで精製水を添加して均一になるまで混合することで、実施例及び比較例の毛髪用乳化組成物を調製した。具体的な組成は表1に記載の通りとした。
【0053】
(毛髪用乳化組成物の評価:低温保管後の外観)
調製後1週間経過した毛髪用乳化組成物300gを500mL容のPET製容器に充填し(低温処理0回目)、‐10℃に設定した低温インキュベーター内に10日間静置後、取り出して25℃で一晩静置した。さらに上記‐10℃での低温処理と25℃での静置を2回繰り返した(低温処理3回目)。その後、容器内における毛髪用乳化組成物の離水有無の目視確認、その離水が無い場合には容器から一部取り出した毛髪用乳化組成物の外観を目視確認し、次の通り評価した。
○ : 対比基準(比較例1の毛髪用乳化組成物)よりも艶を有していた。
― : 対比基準(比較例1の毛髪用乳化組成物)と同程度の艶を有していた。
△ : 対比基準(比較例1の毛髪用乳化組成物)には無い粒子が認められた。
× :離水があった。
【0054】
下記表1に「低温保管後の外観」評価の結果と共に、実施例及び比較例の毛髪用乳化組成物の組成及び粘度を示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1における配合組成、「低温保管後の外観」結果を参照すると、次の(1)~(3)を確認できる。
(1)比較例1と比較例2の対比により、酸化エチレンの平均付加モル数が15未満のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル(テトラオレイン酸ソルベス-6)を配合した場合、保管中における外観変化が大きくなった。
(2)実施例1と比較例1との対比により、(B)成分である酸化エチレンの平均付加モル数が15以上のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル(テトラオレイン酸ソルベス-60)を配合した場合、保管中における外観変化を抑制できた。
(3)実施例1と比較例3~4との対比により、保管中における外観変化の抑制のためには、(B)成分である酸化エチレンの平均付加モル数が15以上のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル(テトラオレイン酸ソルベス-60)のみならず、(C)成分である過酸化水素の配合も必要である。