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特開2024-93085乾燥処理システム及び乾燥物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093085
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】乾燥処理システム及び乾燥物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 1/00 20060101AFI20240702BHJP
   F26B 3/347 20060101ALI20240702BHJP
   F26B 3/353 20060101ALI20240702BHJP
   F26B 3/34 20060101ALI20240702BHJP
   F26B 5/04 20060101ALI20240702BHJP
   F26B 25/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
F26B1/00
F26B3/347
F26B3/353
F26B3/34
F26B5/04
F26B25/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209229
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000229047
【氏名又は名称】日本スピンドル製造株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516309866
【氏名又は名称】ATTACCATO合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】近藤 千夏
(72)【発明者】
【氏名】木嶋 敬昌
(72)【発明者】
【氏名】坂本 太地
(72)【発明者】
【氏名】向井 孝志
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA01
3L113AB02
3L113AC08
3L113AC10
3L113AC12
3L113AC24
3L113AC53
3L113AC67
3L113BA01
3L113CA08
3L113CA09
3L113CB06
3L113CB07
3L113CB16
3L113CB17
3L113DA10
3L113DA24
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、食品の状態を容易に確認することが可能であり、食品の風合いや風味、色調といった生来の性質を損なうことなく、食品に対して十分な乾燥処理を行うことが可能な乾燥処理システムを提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、内部空間が除湿環境下であるドライブースと、前記ドライブースの内部で食品の乾燥処理を行う乾燥処理部と、を備えることを特徴とする、乾燥処理システムを提供する。
これにより、食品の状態を容易に確認することが可能であり、食品の風合いや風味、色調といった生来の性質を損なうことなく、食品に対して十分な乾燥処理を行うことが可能な乾燥処理システムを提供することができる。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間が除湿環境下であるドライブースと、
前記ドライブースの内部で食品の乾燥処理を行う乾燥処理部と、を備えることを特徴とする、乾燥処理システム。
【請求項2】
前記乾燥処理部は、食品の内部の水分を表面へ移動させる処理を行い、表面に移動させた水分をドライブースの内部で除湿することを特徴とする、請求項1に記載の乾燥処理システム。
【請求項3】
前記乾燥処理部の内、食品の内部の水分を表面へ移動させる処理としては、マイクロ波照射装置、赤外線照射装置、LED照射装置、又は、真空ポンプであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の乾燥処理システム。
【請求項4】
前記ドライブースは、人の出入りが可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の乾燥処理システム。
【請求項5】
前記ドライブースは、人の入室が制限される、又は、人の入室により前記乾燥処理部が停止若しくは出力低下することを特徴とする、請求項4に記載の乾燥処理システム。
【請求項6】
前記ドライブースの内部には、第1の乾燥処理部と第2の乾燥処理部を備え、前記第1の乾燥処理部と前記第2の乾燥処理部は、処理条件が異なることを特徴とする、請求項1又は2に記載の乾燥処理システム。
【請求項7】
前記ドライブースの内部には、イオナイザーを備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の乾燥処理システム。
【請求項8】
内部空間が除湿環境下であるドライブースの内部で食品の乾燥処理を行う乾燥処理工程を備えることを特徴とする、食品の乾燥物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の対象物を乾燥させるために、除湿環境下のドライブース内に乾燥処理部を備える乾燥処理システム及び除湿環境下のドライブース内で乾燥処理を行う乾燥物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ドライフラワーやドライフルーツの製造では、対象物を高真空環境下で加熱することにより、対象物を乾燥している。例えば、特許文献1には、フラワー類又はフルーツ類を、-60~-95kPaのゲージ圧力を示す高真空環境下において外気の吸入を絶つとともに、40~60℃に加熱し、かつ除湿を行いながら乾燥することを特徴とするドライフラワー又はドライフルーツの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-199503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のドライフラワー又はドライフルーツの製造方法では、対象物が高真空環境下に配置されているため、乾燥経過における対象物の状態を確認する場合には、乾燥処理システムを停止する必要がある。そして、対象物の状態を確認した後は、乾燥処理を再開するために、高真空環境を形成している。しかし、高真空環境を形成するには、長時間の真空引きが必要であり、頻繁に対象物の状態を確認できないという問題があった。
【0005】
これらの問題に対して、本発明者らは、ドライブースを利用した乾燥処理システムを検討している。ドライブースとは、精密機械などの製造において、その作業空間を所定の低湿度状態に保持するために用いられる除湿環境空間である。このようなドライブースを用いて対象物を乾燥すると、高真空環境下とする必要が無いため、対象物の状態を頻繁に確認することができる。また、ドライブースを食品の乾燥に用いる場合、強い条件設定による変性、例えば、加熱処理による熱変性や減圧による細胞壁の破壊等防ぐことができ、食品の風合いや風味、色調といった生来の性質を損なうことなく食品の乾燥を行うことが可能となる。しかしながら、ドライブースによる常温の除湿乾燥によっては、乾燥対象の内部の水分を表層へ引き出す力が足りず、食品の乾燥が不十分となり得る場合がある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、対象物となる食品の状態を容易に確認することが可能であり、食品の風合いや風味、色調といった生来の性質を損なうことなく、食品に対して十分な乾燥処理を行うことが可能な乾燥処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討し、ドライブースの内部で食品の乾燥処理を行うことにより、食品の内部に含まれる水分が表面に移動し、ドライブース内における除湿乾燥を促進できるという知見に至り、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の乾燥処理システム及び乾燥物の製造方法である。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の乾燥処理システムは、内部空間が除湿環境下であるドライブースと、前記ドライブースの内部で食品の乾燥処理を行う乾燥処理部と、を備えることを特徴とするものである。
この乾燥処理システムによれば、ドライブースを用いて食品を乾燥することにより、乾燥処理中も食品の状態を頻繁に確認することができる。また、ドライブースにより提供される一定の除湿環境下、乾燥処理部の乾燥処理により、食品内部の水分を表層に移動させることができ、ドライブース内における除湿乾燥を促進することができる。同時に、ドライブースによる除湿環境と、食品への直接的な乾燥処理による多様な条件設定が可能となり、より緩和な乾燥環境により食品の本来の風合いや風味、色調を損なうことなく十分な乾燥状態を付与することができるという効果を奏する。
【0009】
さらに、本発明の乾燥処理システムの一実施態様としては、乾燥処理部は、食品の内部の水分を表面へ移動させる処理を行い、表面に移動させた水分をドライブースの内部で除湿することを特徴とするものである。
この乾燥処理システムによれば、乾燥処理部が食品内部の水分を乾燥の進捗に合わせて食品の表面へと移動させ、表面へと移動させた水分をより緩和なドライブースの除湿環境により除湿するという二段階の乾燥処理により、食品の本来の風合いや風味を損なうことなく十分な乾燥状態を食品全体に付与できるという効果を奏する。
【0010】
さらに、本発明の乾燥処理システムの一実施態様としては、乾燥処理部は、マイクロ波照射装置、赤外線照射装置、又は、真空ポンプであることを特徴とするものである。
この乾燥処理システムによれば、食品毎にその食品の特徴、乾燥態様に応じて、マイクロ波照射装置、赤外線照射装置、又は、真空ポンプを適宜組み合わせて条件設定を行い、除湿乾燥を促進することができることから、より確実に食品の本来の風合いや風味を損なうことなく十分な乾燥状態を食品に付与できるという効果を奏する。
【0011】
さらに、本発明の乾燥処理システムの一実施態様としては、ドライブースは、人の出入りが可能であることを特徴とするものである。
この乾燥処理システムによれば、乾燥処理を実行中であってもドライブースに人の出入りが可能である。これにより、食品の状態を確認しながら乾燥処理の態様を変更でき、また、乾燥処理の終了したものから順にドライブース外に搬出や乾燥処理前の食品をさらに追加して乾燥処理に供することが可能となる。よって、連続的な乾燥処理を多数の食品に対して並行して実施することができるという効果を奏する。
【0012】
さらに、本発明の乾燥処理システムの一実施態様としては、ドライブースは、人の入室が制限される、又は、人の入室により前記乾燥処理部が停止若しくは出力低下することを特徴とするものである。
この乾燥処理システムによれば、ドライブース内がその環境や乾燥処理の内容により、ドライブース内への人の入室が制限されるべき状態である場合、又は人の入室があった場合に、人の入室が制限、又は乾燥処理部の動作を停止、若しくは出力を低下させるように予め設定することにより、作業する人の安全を確保することができるという効果を奏する。
【0013】
さらに、本発明の乾燥処理システムの一実施態様としては、ドライブースの内部には、第1の乾燥処理部と第2の乾燥処理部を備え、前記第1の乾燥処理部と前記第2の乾燥処理部は、処理条件が異なることを特徴とするものである。
この乾燥処理システムによれば、処理する食品の品目や乾燥処理の目的が異なる等の場合に、品目や乾燥処理の目的毎に異なる乾燥処理の条件を任意に設定することができる。例えば、異種の装置の選択や照射するマイクロ波や赤外線等の強度や時間を変更する等が可能である。これにより、同時に多品目の乾燥処理を並行して実行できるという効果を奏する。
【0014】
さらに、本発明の乾燥処理システムの一実施態様としては、ドライブースの内部に、イオナイザーを備えるものである。
この構成によれば、イオナイザーから発せられるイオンにより、菌や細菌の繁殖を抑制することができる。また、低露点環境内に設けていることから、乾燥物の加湿を抑制するという効果を奏する。
【0015】
上記課題を解決するための本発明の食品の乾燥物の製造方法は、内部空間が除湿環境下であるドライブースの内部で食品の乾燥処理を行う乾燥処理工程を備えることを特徴とするものである。
この食品の乾燥物の製造方法によれば、ドライブースを用いて食品を乾燥することにより、乾燥処理中も食品の状態を頻繁に確認することができる。また、ドライブースにより提供される一定の除湿環境下、乾燥処理部の乾燥処理により、食品内部の水分を表層に移動させることができ、ドライブース内における除湿乾燥を促進することができる。同時に、ドライブースによる除湿環境と、食品への直接的な乾燥処理による多様な条件設定が可能となり、より緩和な乾燥環境により食品の本来の風合いや風味、色調を損なうことなく十分な乾燥状態を付与することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、食品の状態を容易に確認することが可能であり、食品の風合いや風味、色調といった生来の性質を損なうことなく、食品に対して十分な乾燥処理を行うことが可能な乾燥処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施態様の乾燥処理システムの構造を示す概略説明図である(斜視図)。
図2】本発明の第1の実施態様の乾燥処理システムの構造を示す概略説明図である(正面断面図)。
図3】本発明の第1の実施態様の乾燥処理システムの構造を示す概略説明図である(平面断面図)。
図4】本発明の第1の実施態様の乾燥処理システムの構造と給排気の空気の流れを示す概略説明図である(正面断面図)。
図5】本発明の第1の実施態様の乾燥処理システムにおける乾燥処理の制御方法を示すブロック図である。
図6】本発明の第2の実施態様の乾燥処理システムの構造を示す概略説明図である。(A)乾燥処理システムの正面図である。(B)乾燥処理システムの背面図である。
図7】本発明の第3の実施態様の乾燥処理システムの構造と排気の空気の流れを示す概略説明図である。(A)乾燥処理システムの正面図である。(B)乾燥処理システムの背面図である。
図8】本発明の第3の実施態様の乾燥処理システムにおける排気部の構造を示す概略説明図である。(A)排気部の正面図である。(B)排気部の斜視図である。(C)排気部内部の吸い込みファンの平面図である。(D)排気部内部の吸い込みファンの断面斜視図である。
図9】本発明の第3の実施態様の乾燥処理システムの構造と給排気の空気の流れを示す概略説明図である(平面図)。
図10】本発明の第3の実施態様の乾燥処理システムの構造と吸排気の空気の流れを示す概略説明図である(正面断面図)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る乾燥処理システムの実施態様を詳細に説明する。なお、実施態様に記載する乾燥処理システムについては、本発明に係る乾燥処理システムを説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。また、本発明に係る乾燥物の製造方法の説明については、本発明に係る乾燥処理システムに係る説明に置き換えるものとする。
【0019】
〔第1の実施態様〕
図1図4は、本発明の第1の実施態様における乾燥処理システム1Aの構造を示す概略説明図である。本発明の第1の実施態様における燥処理システム1Aは、ドライブース本体と、一組の給気路と排気路と、除湿空調機と、ドライブースの管理空間内に設置される、乾燥処理部から構成される乾燥処理システムである。
【0020】
図1は乾燥処理システム1Aの斜視図であり、図2は乾燥処理システム1Aの正面断面図であり、図3は乾燥処理システム1Aの平面断面図であり、図4は、乾燥処理システム1Aの正面断面図である。なお、図4においては、除湿空調機、給気路、排気路及び管理空間15における空気の流れを一点鎖線と矢印によって図示している。また、乾燥処理システム1A~1Cにおけるドライブース3A~3Bの実施態様においては、床面を備えていないため、明細書中において底面図については省略した。なお、これには限定されず、床面を有する構成としてもよいし、床面に給気部や排気部を設ける構成としてもよい。
【0021】
ここで、本発明の乾燥処理システムは、工場や建屋内に配置されるものであり、内部の空間の露点温度を外部の空間より低く調節することにより、製造工程等の低湿度環境下で行う作業の作業空間を提供するものである。さらに、乾燥処理システムを構成するドライブース内には、乾燥処理を実行可能である乾燥処理部が設置されており、低湿度環境下においてさらに細かい条件設定により作業対象となる対象物の乾燥状態を自在にコントロールすることができる。なお、本発明において、「露点温度」とは、実質的には空間の乾燥の程度を示すものであり、実際に露点温度により管理しても、湿度など空間の乾燥状態を示す他の指標で管理してもよい。
【0022】
図1は、本発明の乾燥処理システム1Aの斜視図を示す簡略説明図である。図1に示すように、本発明の乾燥処理システム1Aのドライブース3Aは、4本の支柱31a~31dと天井4を備え、前記4本の支柱と天井4が形成する略直方体形状の空間の周囲をビニールカーテン5a~5dで囲うことにより、その内部に、外部の空間より露点温度が低い管理空間15を形成している。
【0023】
ドライブース3Aの天井4の略中央には、ドライブース3A内部の管理空間15へ空気を給気するための給気部6が形成されており、除湿空調機16と給気ホース28を介して管理空間15に接続されている。これにより、除湿空調機16で除湿された空気を、給気ホース28を介して、給気部6からドライブース3A内部に供給する。
【0024】
また、ビニールカーテン5dには、管理空間15の内部の空気を外部に排気するための排気部21が形成されている。この排気部21は、排気ホース26を介して除湿空調機16に接続されている。これにより、管理空間15から排気された空気は、排気ホース26を通過して除湿空調機16に流入する。
【0025】
さらに、ドライブース3Aは、外部空間からの入退室が可能な出入口7を備えている。これにより、作業員の入退室のほか、対象物の乾燥の進捗状態等を随時確認しながら、製品や機器の搬出入を管理空間15の除湿環境を維持したまま実施することができる。
【0026】
また、支柱31a~31dの底部には、アジャスタ8及びキャスタ19を備える。支柱31a~31dに取り付けられたアジャスタ8は、乾燥処理システム1Aの位置を固定し、各支柱の高さを個別に調整するものである。また、キャスタ19は、乾燥処理システム1Aの移動時に資するものである。これにより、乾燥処理システム1Aの移動と固定を簡便且つ自由自在とすることが可能となる。
【0027】
図2は、本発明の乾燥処理システム1Aの略中央における正面断面図を示す概略説明図である。低湿度に管理された管理空間15には、2つの台座状の保持部23a、23bが設置されており、それら保持部23a、23bの上には、乾燥処理の対象となる対象物9a、9bがそれぞれ載せられている。それぞれの保持部23a、23bのビニールカーテン側には、第1検出部22a、22bが設置されている。また、対象物9a、9bの上方には、対象物に対して乾燥処理を行う乾燥処理部20a、20bがそれぞれ設けられている。これにより、第1検出部22a、22bが検知した情報、例えば、対象物近傍の雰囲気、対象物表面、及び対象物の内部の温度を測定することにより、対象物の乾燥状態を把握又は推測することができる。そして、当該情報に基づいて乾燥処理部の行う乾燥処理の変更(異種装置の選択や強度、時間の変更等)及び停止、対象物の搬出入の決定、並びに除湿空調機の露点温度の調整等を適宜行うことができる。加えて保持部23aと保持部23bの間には人の移動が可能な通路30が設けられている。これにより、処理の終わった乾燥物9a、9bの搬出及び未処理の乾燥物の搬入、乾燥処理部20a、20bの操作等の作業が可能となる。
【0028】
また、本実施例における対象物9aと対象物9bとは、性質が異なる被乾燥物である。「性質が異なる」とは、例えば、穀物、果物等の食品の種類、又はそれらの大きさ等が異なることをいい、これらの違いに応じて乾燥処理部20a、20bが異なる乾燥処理を実行可能に構成されている。
【0029】
また、図示はしていないが天井4の内部は空洞となっており、給気部6から流入した空気が移動可能に構成されている。さらに、天井4の管理空間15側には、給気孔60が複数設けられている。これにより、給気部6からドライブース3Aに流入した空気は、天井4内部を移動した後、給気孔60を介して管理空間15へ流入する。
【0030】
図3は、本発明の乾燥処理システム1Aの平面断面図を示す簡略説明図である。なお、全体構造の理解のため、断面上方の構成を破線で示している。前述したように、天井4の管理空間15側には、複数の給気孔60が全体に均等になるよう設けられている(本実施態様では16個)。これにより、給気部6からドライブース3A内部へと給気された空気は、天井4内の空洞を移動して給気孔60から管理空間15全体へ均一に流入することができる。よって、管理空間15内の低湿度環境は一様に保たれ、対象物9a、9bをむらなく乾燥することができる。
【0031】
図4は、本発明の乾燥処理システム1Aの略中央の構造を示す正面断面図と空気の流れを示す概略説明図である。なお、図4中の一点鎖線と矢印が、装置部や配管を介した空気の流れを示している。図4に示すように、除湿空調機16で低い露点温度に調節された空気は、給気ホース28を介して、給気部6からドライブース3Aの天井4内の空洞に移動する。天井4内の空洞を移動した空気は、天井4に複数設けられた給気孔60から管理空間15内に流入し、管理空間15内をドライブース3Aの右側面に設けられた排気部21に向かって移動する。移動した空気は、排気部21から排気ホース26を介して除湿空調機16に再び流入し、乾燥処理システム1A内において空気は除湿を繰り返しながら循環する。これにより、除湿空調機16により低い露点温度に連続的に調整された空気が、管理空間15内の低湿度環境を維持することで、対象物9a、9bの表層の水分を乾燥させることができる。
【0032】
前記ドライブースの内部には、イオナイザーを備えることが好ましい。より具体的には、管理空間15内に設置することが好ましい。イオナイザーを設けることで、管理空間15内に設けられた乾燥物が除電され、凝集や拡散を抑制することができる。また、乾燥物が食品の場合では、さらに菌や細菌の繁殖を抑制できる。なお、十分な除菌ができる限り設置するイオナイザーの個数、大きさ、設置する位置等は限定されない。複数設置してもよいし、管理空間15内の床面やビニールカーテン5a~5d、天井4に設置することもできる。
【0033】
イオナイザーは、プラズマ放電により、HイオンとOイオンを発生させ、管理空間15内に放出し、浮遊カビ菌や浮遊菌などの表面に付着し、酸化力の強いヒドロキシ(OH)ラジカルに変化し、タンパク質を分解する作用をもつ。なお、管理空間15は極めて低湿度であるが、完全に水分が除去されているわけではなく、微量の水分が存在する。この微量の水分でイオン(HイオンとOイオン)を発生させることができる。これにより、外部から水分を供給してイオンを発生させる必要が無く、より低コストな乾燥処理システムを提供することができる。
【0034】
ただし、上記のイオナイザーによるタンパク質の分解では、分解と同時に水分を生成させるため、乾燥物が吸湿される難点をもつ。本発明においては低露点環境の管理空間15内で起こるため、乾燥物が加湿状態となることを防ぐことができる。また、イオナイザーから発せられるイオンにより、乾燥物の脱臭も同時に行うことができる。
【0035】
以下、乾燥処理システム1Aの各構成についてさらに詳細に説明する。
【0036】
(管理空間)
管理空間15は、前述のように、支柱31a~31d、天井4、正面、背面及び両側面を覆うビニールカーテン5a~5dによって構成される。天井4には、露点温度が調節された空気を管理空間15内に給気する給気部6及び給気孔60が設けられ、ドライブース3Aの左側面のビニールカーテン5d下方には、管理空間15内の空気を排気する排気部21を備えている。これにより、支柱31a~31dと天井4、ビニールカーテン5a~5dにより、外部と隔離した閉鎖空間が形成され、同時に湿度を管理することができる管理空間15を提供することができる。また、正面のビニールカーテン5aには、作業者等が入出するための出入口7を備える。これにより、管理空間15に作業者の出入りの他、製品の搬入出が可能となる。なお、管理空間15は、作業者が作業等を行う空間であってもよく、機械等のみの無人空間であってもよい。
【0037】
なお、ドライブース3Aの大きさや形、出入口7の設置場所や数は、管理空間15の用途に適した任意のものでよい。例えば、図1に示したドライブース3Aの背面に出入口7を設け、別の同様のドライブース3Aの前面の出入口7と一体とすることで、複数のドライブースを連結するように構成してもよい。また、一つのドライブース3A内にしきりを設けて複数の管理空間15を有するようにしてもよい。なお、給気部6からの空気の供給量は、排気部21の排気量よりも大きくなるように設定し、管理空間15内部が外部空間より陽圧に設定されるよう調節してもよい。これにより、作業者の入出等の際に、出入口7が一時的に開放された場合でも、外部の空気が管理空間15の内部に流入しにくいという効果がある。
【0038】
また、ドライブース3A内の作業環境を向上させるために、ドライブース3A内に照明器具を設置してもよい。例えば、照明器具の設置場所は、柱部31a~31dや天井4の表面や内部が挙げられる。好ましくは、天井4の内部である。
【0039】
(ビニールカーテン)
また、ビニールカーテン5a~5dの素材は、管理空間15内の空気を通さないものであれば特に限定されない。例えば、透明や遮光の素材や帯電を防止する高分子素材が挙げられる。管理空間15で人が作業を行う場合では、安全性等の点から透明で帯電を防ぐものが好ましい。さらに、ビニールカーテン5a~5dの裾部から、管理空間15内の空気が過剰に漏れ出ないように重りを配置してもよい。また、入出口7においては、管理空間15内の空気が必要以上に漏れ出ないようにビニールカーテン5a~5dに重りを持たすことが望ましい。
【0040】
なお、本発明のドライブースにおいては、管理空間15を形成するため、ビニールカーテン5a~5d以外の囲いを用いてもよい。例えば、ビニールカーテン5a~5dに変えて、木材、鉄鋼、石材、硬質プラスチック等の板材を使用してもよい。ビニールカーテン5a~5dは、空気を通さず、軽く移動しやすいという点で好ましい。また、透明のビニールカーテンを使用することにより、内部の作業者の安全状況を外部から確認することができるという利点もある。
【0041】
(アジャスタ及びキャスタ)
支柱31a~31dの底部には、アジャスタ8及びキャスタ19を備える。支柱31a~31dに取り付けられたアジャスタ8は、ドライブース3Aの位置を固定し、各支柱の高さを個別に調整するものである。また、キャスタ19は、ドライブース3Aの移動時に資するものである。これにより、ドライブース3Aの移動と固定を簡便且つ自由自在とすることができる。
【0042】
(給気部)
本発明のドライブース3Aは、図2に示すように、天井4の上部の中央に、ドライブース内に露点温度が調節された空気を給気する給気部6が配置されている。給気部6は、給気ホース28を介して除湿空調機16に連結されている。除湿空調機16で処理され、露点温度の調節された空気は、給気部6から給気ホース28を通ってドライブース3Aの管理空間15に供給される。なお、天井4は、水平方向に広がる空間(不図示)を有しており、さらに、天井4の管理空間15側には、複数の給気孔60が形成されている。給気部6から供給された空気は、天井4の内部の空間を流通することにより、水平方向に拡散し、各給気孔60から管理空間15の内部に流入する(なお、空気の流れは、図4中の一点鎖線により示す)。これにより、管理空間15の広範囲にわたって除湿空調機16で処理された空気を一様に供給することが可能となる。
【0043】
なお、給気部6の配置される場所や数は、ドライブース3A内の湿度管理を迅速に行えるものであれば任意のものでよい。天井4から供給される露点温度の調節された空気の流れは、管理空間15に空気を速やかに行き渡らせることが可能であれば特に限定されるものではない。例えば、平行な流線で一定の流速で一方向に進む一方向流であっても、方向が定まっていない非一方向流であってもよい。なお、一方向流は、乱れのない押し出し流れにより汚染の拡散を抑えて管理空間を清浄な気体で置換できるので、管理空間15の湿度管理だけでなく清浄度も維持できることから好ましい。また、給気孔60の個数や形状、位置は特に限定されない。床面を設けて床面に給気孔60を設ける構成としてもよい。
【0044】
また、給気部6より流入する空気を、任意のエアフィルターで処理してもよい。これにより、除湿空調機16で除去しきれなかった浮遊微粒子や浮遊微生物等を除去することができる。さらに、除湿後の空気をUV殺菌等の方法により空気を殺菌するよう構成してもよい。これにより、食品等の菌の増殖を抑え、安全な乾燥物を提供できるという効果を奏する。
【0045】
除湿空調機16は、管理空間15の湿度管理を行えるものであれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、コンプレッサー式やデシカント式、これらのハイブリッド式の除湿空調機が使用できるが、除湿性能が高いデシカント式除湿空調機が好ましい。なお、ドライブース3Aに供給される空気は常温であることが好ましい。常温で乾燥することにより、食品の菌の繁殖を抑えるという効果を奏する。
【0046】
(排気部)
図1に示すように、ドライブース3Aの左側面のビニールカーテン5d下方には、ドライブース内の空気を外部に排気する、排気部21が設けられている。排気部21は、管理空間15内の空気をドライブース3Aの外部へ排気し、さらに排気ホース26を介して除湿空調機16に排気した空気が流入する。排気の方法としては、除湿空調機16と管理空間15との圧力差(管理空間15側が陽圧)により空気を移動させてもよいし、排気部21や除湿空調機16にファン(不図示)を設けて排気してもよい。なお、排気部21の大きさや形状、位置、個数等は限定されない。また、排気した空気を乾燥処理システム1Aの内部で循環させてもよいし、そのまま外部空間へ放出させてもよい。管理空間15内の湿度の調整や圧力の調整が容易であるため、排気した空気を乾燥処理システム1Aの内部で循環させることが好ましい。
【0047】
(対象物)
乾燥処理を実行する対象物(被乾燥物)としては、本発明の効果を奏する限り特に限定はされない。例えば、野菜、果物、牛肉、豚肉、魚介類等の食品類が挙げられる。より風味や風合いを維持できるという観点から、野菜、果物、牛肉、豚肉、魚介類等の食品が好ましく、野菜、果物がより好ましい。なお、食品類は必要に応じて切断した切断片を対象物として用いてもよい。
【0048】
(保持部)
保持部は、対象物を固定する部材である。この保持部23a,23bとしては対象物9a,9bを安定的に保持することができ、乾燥処理を適切に実行できるものであれば特に限定されず、保持部の形状、大きさ、態様は、対象物の形状、大きさ、性質に応じて変更可能である。例えば、形状として、台座、箱型、球形、カプセル型、袋状であってもよく、態様として、網状、透明であってもよい。また、保持部が回転して、対象物全体を乾燥させるよう構成してもよい。なお、本実施態様においては、ドライブース1A内に対象物9a,9bを2カ所に並べて一段に配置したがこれには限定されない。管理空間15内の除湿環境が一様に保たれる限りにおいて、例えば、対象物を4カ所以上に複数段積み重ねて配置してもよい。
【0049】
(乾燥処理部)
乾燥処理部20は、対象物9a、9bの近傍に設置され、直接的に対象物9a、9bへの乾燥処理を実行する。乾燥処理部は、ドライブース内における除湿乾燥を促進するものである。実行する乾燥処理としては、本発明の効果を奏する限り特に限定はされないが、例えば、熱風乾燥、送風乾燥、間接加熱乾燥、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電乾燥、赤外線加熱乾燥、減圧乾燥、等が挙げられる。なかでも、対象物内部の水分を乾燥できることから、赤外線加熱乾燥、マイクロ波加熱乾燥、減圧乾燥が好ましい。これらの乾燥処理を1種又は2種以上組み合わせて実行することができる。これらの乾燥処理を実行する乾燥処理部を構成する装置としては特に限定されないが、例えば、マイクロ波照射装置、赤外線照射装置、真空ポンプ、送風装置(熱風を含む)等が挙げられる。なかでも、マイクロ波照射装置、赤外線照射装置、真空ポンプが好ましく使用できる。これらの乾燥装置は、異種の装置を同時に備えてもよく、1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0050】
熱風乾燥とは、加熱した空気を送風することで対象物の除湿乾燥を促進する乾燥処理である。該熱風乾燥に用いる装置としては特に限定されないが、例えば、市場で入手可能な送風定温乾燥器が挙げられる。ドライブース3A内の温度管理が容易なため、循環型の装置が好ましい。熱風の温度は、特に制限されないが、例えば、40~100℃である。熱風の温度の上限は、好ましくは80℃以下であり、より好ましくは60℃以下である。
送風乾燥とは、常温の空気を送風することで対象物の除湿乾燥を促進する乾燥処理である。該送風乾燥に用いる装置としては特に限定されないが、例えば、熱風乾燥と同様に市場で入手可能な送風定温乾燥器が挙げられる。
間接加熱乾燥とは、ドラム乾燥に代表される、熱風等で熱した熱保持壁などによって対象物に間接的に熱を供給することで、対象物の除湿乾燥を促進する乾燥処理である。
マイクロ波加熱乾燥とは、マイクロ波の照射により対象物を加熱乾燥させることで、対象物の除湿乾燥を促進する乾燥処理である。マイクロ波とは、電波の周波数による分類の一つであり、短い波長域(周波数300MHz~300GHz)のものである。マイクロ波の周波数は特に制限されないが、例えば、マイクロ波加熱処理に一般に用いられる電子レンジと同じ2.45GHzの周波数が挙げられる。乾燥処理の投与エネルギー(電力(W)×時間(分))としては特に制限されないが、例えば、単位質量(g)当たり10(W・分/g)~50(W・分/g)である。
高周波誘電乾燥とは、高周波を用いた誘電加熱によって、対象物の除湿乾燥を促進する乾燥処理である。使用する赤外線の波長は特に制限されないが、対象物が木材である場合、加熱処理の温度の観点から1MHz~100MHzの周波数が好ましい。
赤外線加熱乾燥とは、熱エネルギー電磁波により対象物の分子運動を起こし加熱乾燥させることで、対象物の除湿乾燥を促進する乾燥処理である。使用する赤外線の波長は特に制限されないが、対象物が穀物や衣類である場合、加熱処理の温度の観点から遠赤外線が好ましい。赤外線加熱処理に用いる装置としては特に限定されないが、例えば、市場で入手可能なセラミックを用いた遠赤外線乾燥装置が挙げられる。
減圧乾燥とは、対象物の周囲の圧力を減圧し、除湿空気による乾燥を促進させる乾燥処理である。乾燥処理に用いる装置としては特に限定されないが、例えば、市場で入手可能な真空ポンプなどが挙げられる。
【0051】
このように、本発明の乾燥処理システムは、乾燥処理部の乾燥処理により、対象物内部の水分を表層に移動させることができ、ドライブース内における除湿乾燥を促進することができる。前述したように乾燥処理部は、対象物の乾燥の進捗に合わせて細かな条件設定が可能な直接的な乾燥処理により、対象物内部の水分をその表面へと移動させることができる。さらに、表面に移動させた水分をより緩和なドライブースの除湿環境により、除湿するという二段階の乾燥処理を行うことにより、対象物の本来の風合いや風味を損なうことなく十分な乾燥状態を対象物全体に付与できるという効果を奏する。
【0052】
(第1検出部)
第1検出部22a、22bは、対象物9a、9bの近傍の雰囲気温度、対象物9a、9bの表面及び深部の温度が検出するものが使用できる。温度検出が可能な検出器としては特に限定はされず、接触式、又は非接触式の公知の温度検出器が利用できる。対象物9a、9bに応じて、乾燥処理の進捗の把握や熱変形や熱変性を防止するための多角的な温度測定ができる。なお、第1検出部22a、22bの設置個数、位置、態様は本例に限定されず、対象物9a、9bの品目、個数等に応じて変更可能である。また、第1検出部22a、22bにより検出可能なものは温度に限定されず、対象物の乾燥の進捗、熱変性や熱変形の有無を推測できるものであればよく、例えば、近傍の露点温度、湿度等であってもよい。さらに、対象物全体の乾燥状態を検出するために、対象物の水分量を直接的に検出するものであってもよい、例えば、中心部まで含めた内部水分まで測定可能なマイクロ波水分計や内部にニードルを指すことで内部の水分を検出可能な電気抵抗式水分計、表面のみを測定可能な近赤外式水分計等が挙げられる。これらを組み合わせて使うこともでき、乾燥処理部による表面への水分の移動の進捗をより確実に検出することができる。
【0053】
(制御部)
図5は、本発明の第1の実施態様の乾燥処理システムにおける乾燥処理の制御を示すブロック図である。図5に示すように、制御部40は、第1検出部22と乾燥処理部20と連絡する。これらの連絡は、ケーブルで直接接続されるものでもよいし、無線等の通信技術を介して間接的に接続されるものであってもよい。制御部40は、第1検出部22a、22bで検出された情報に基づいて、乾燥処理部20a、20bの対象物9a、9bへの動作を制御することができる。第1検出部22a、22bは、検出した温度等の情報を制御部20に送信する。制御部20は対象物9a、9bの性質(熱変性する温度、必要な乾燥処理時間及び温度等)に応じて、乾燥処理部の運転動作(使用する装置の選択、強度、時間の設定及び停止等)及び対象物9a、9bの搬出入を決定し、乾燥処理部20a、20bに指示を送る。なお、制御部40は、ドライブース3A内の任意の箇所に設けられてもよいし、ドライブース3A外に設置されてもよい。これにより、対象物9a、9bの状態、乾燥の進捗に基づく適切な乾燥処理を随時実行することができ、効率的に内部の水分を表面に表出させることができる。また、これら処理条件の調整はプログラムによる自動制御に限定されず、作業員の手動操作を含むものであってもよいし、人工知能により制御してもよい。
【0054】
以上の特徴により、本発明の乾燥処理システム1Aは、除湿環境下であるドライブース内に対象物に応じた乾燥処理を実施可能な乾燥処理部20をさらに備えることにより、対象物の状態を容易に確認することが可能であり、除湿乾燥を促進できると同時に、緩和な乾燥環境により対象物の本来の風合いや風味、色調を損なうことなく十分な乾燥状態を付与することができるという効果を奏する。
【0055】
[第2の実施態様]
図6は、本発明の第2の実施態様の乾燥処理システム1Bの構造を示す概略説明図である。なお、図6(A)は正面図であり、図6(B)は背面図である。第2の実施態様の乾燥処理システム1Bは、第1の実施態様の乾燥処理システム1Aに、さらに第2検出部10a~10d、第3検出部14及び第4検出部18を備えるものである。なお、その他の構成は、第1の実施態様の乾燥処理システム1Aと同様であるため、説明を省略する。
【0056】
(第2検出部)
第2の実施態様のドライブース3Bは、各支柱31a~31d近傍の温度の異常な上昇や酸素濃度の不足、有害物質の発生等の人体に悪影響を与える環境変化を検知する、第2検出部10a~10dを備える。これにより、作業員がドライブース3B内で作業を開始、又は継続するのに適さない状況になったことを検知し、作業員の入室を抑制、又は乾燥処理部20a、20bの出力を低下、若しくは停止させることにより作業員の安全を確保することができる。この入室の禁止や出力低下、停止の決定は、予め設定された安全な環境の閾値に達した場合に自動に作動するように制御されていることが好ましい。作業員の安全が確保された状態を確認後、手動又は自動制御により、入室禁止の解除、乾燥処理部20a、20bの出力の上昇又は作動が実行される。なお、作業員の安全確保のため、必要に応じて除湿空調機16の作動を同時に低下又は停止してもよい。
【0057】
(第3検出部)
ドライブース3Bは、図6(A)に示すように、管理空間外の支柱31aに第3検出部14を備える。第3検出部14は、例えば、作業者25の入室を検出して、乾燥処理部20a、20bの出力を低下若しくは停止させる、又は第3検出部14が作業者25の入室を検出した場合に、第2検出部10a~10dの検出結果により、作業員25のドライブース3B内での作業が適さない場合に、作業員の入室を制限、又は乾燥処理部20a、20bの出力を低下、若しくは停止させることを決定し、作業員25の安全な作業を確保することができる。
【0058】
第3検出部14としては、作業員の入室を検知するものであればよく、その数、大きさ、設置位置、設置態様は特に限定されない。第3検出部を構成する装置としては、例えば、監視カメラ、赤外線センサ、重量測定器が挙げられる。なお、第2検出部14は、管理空間外であれば、支柱31bに設置しなくともよい。例えば、ドライブース3Bと独立した装置として、製造設備等におけるドライブース3Bまでの作業者の導線上に設置してもよい。
【0059】
(第4検出部)
第4検出部18は、監視カメラからなり、管理空間15内の作業者25の位置や管理空間内の異常を検出し、作業員の安全を確保することができる。例えば、作業者25の位置を第4検出部18により検出し、作業者25が乾燥処理装置20a近傍で作業をしている場合、乾燥処理装置20aの出力を低下又は停止することで、作業員25のより高い安全の確保が可能となる。作業者25が乾燥処理装置20b近傍への移動に伴い、出力低下させた乾燥処理装置20aの出力を上昇又は作動を開始し、他方、作業者25の移動先の乾燥処理装置20bの出力を低下又は停止する。
【0060】
以上の特徴により、本発明の乾燥処理システム1Bは、第2~第4検出部により作業員の入室及び管理空間15内の環境の異常を検知することにより、作業員25の入室の禁止、乾燥処理部20a、20bの出力を低下又は停止することによって作業員25の安全な作業環境を確保するという効果を奏する。
【0061】
[第3の実施態様]
図7図10は、本発明の第3の実施態様の乾燥処理システム1Cの構造を示す概略説明図である。第3の実施態様の乾燥処理システム1Cは、第1の実施態様の乾燥処理システム1Aの支柱31a~31dの内部に排気部21a~21dを備えるものである。なお、その他の構成は、第1の実施態様のドライブース3Aと同様であるため、説明を省略する。
【0062】
図7は、本発明の第3の実施態様の乾燥処理システム1Cの構造を示す概略説明図である。図7(A)は正面図であり、図7(B)は背面図である。図7に示すように、支柱31a~31dの内部には、空気が通気する通気路(不図示)があり、管理空間15の空気を排気するための排気部21a~21dを構成する。図8には、排気部21aの構造を示す。図8(A)は正面図であり、図8(B)は斜視図である。なお、排気部21a~21dは同様の構造であるため、排気部21b~21dについては省略する。支柱31aの底部には、管理空間15の空気を支柱31aに吸い込むための吸い込み口12aが形成され、上部には、支柱31a内の空気を外部に排気する排気ダクト13aが形成されている。なお、各排気ダクト13aは、排気ホース26により除湿空調機16と連結されている。この排気ダクト13aと排気ホース26の構造については省略しており、図9で後述する。
【0063】
また、支柱31aの内部の通気路には、支柱31aの内部の空気を吸い込み口12aから排気ダクト13へ送風する吸い込みファン17aが設置されている。図8(C)及び図8(D)に、支柱31aの内部構造を示す。図(C)は、図8(A)のA-A’で切断した断面図であり、図8(D)は、その斜視図である。なお、各支柱31a~31dにそれぞれ設置された吸い込みファン17a~17d(吸い込みファン17b~17dは不図示)は、個別に送風量を調整することが可能である。
【0064】
図9は、本発明の第3の実施態様の乾燥処理システムの構造と給排気の空気の流れを示す概略説明図である(平面図)。図8に示すように、各排気部21a~21dの排気ダクト13が一つの排気ホース26に連結されており、排気ホース26は除湿空調機16に連結する。また、排気ホース26は、ドライブース3Cから排気された空気を除湿空調機16に送風する排気ファン20を備えており、排気ファン20によりドライブース3Cからの総排気量を設定することができる。なお、排気ファン20を設けた場合は、排気部21a~21dの吸い込みファン17a~17dは設置せずに排気ファン20のみで排気量を調節するように構成してもよい。
【0065】
また、排気部21a~21dにおける排気量の調整は、どのような手段であってもよい。例えば、吸い込み口12a~12dに開度を調整できるダンパを設け、ダンパの開度で排気量を調整する手段や、複数のダンパを設けて、開くダンパの数で排気量を調整する手段などが挙げられる。
【0066】
図10は、本発明の第3の実施態様の乾燥処理システム1Cの構造と吸排気の空気の流れを示す概略説明図である(正面断面図)。図10に示すように対象物9a、9bは、3段に積み重なる構成になっており、それぞれに第1検出部22a、22b及び乾燥処理部20a、20bを備えている。、管理空間15はより密な空間となっており、空気の流れを遮断し易くなっている。そこで、複数の排気部21a~21dを支柱31a~31dにそれぞれ設けることにより、給気孔60から流出した除湿された空気が、4方向の排気部21a~21dへと一様に移動できるため、対象物9a、9bの数量や配置によらず、むらなく管理空間15の湿度調整ができるという効果がある。
【0067】
なお、各排気部21a~21dの排気量を個別に調整できるよう構成してもよい。例えば、第2検出部10a~10dを設けて、作業者25やその他露点温度の上昇を引き起こす物質の存在を検出し、検出した第2検出部10近傍の吸い込みファン17の回転を早くしたり、ダンパの開度を高くしたりすることで排気量を大きくするように制御する。これにより、露点温度の上昇への影響を最低限にすることができるという効果を奏する。
【0068】
以上の特徴により、本発明の乾燥処理システム1Cは、管理空間15内において、給気孔60から流入した除湿された空気が各排気部21a~21dの各方向に一様に移動するため、管理空間15内の除湿環境をむらなく均一に調整することが容易であるという効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の乾燥処理システムは、対象物を緩和な条件で熱変形、熱変性等を起こすことなく十分な乾燥処理の実施に適用することができる。具体的には、ドライフルーツやドライ野菜、ドライ水産物、茶葉、穀物等の乾燥食品に好適に利用することができる。なお、これら食品以外にも、衣類、布団、枕等の寝具、介護用品、乗り物用カバー等の各種繊維製品、靴、鞄等の革類に適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1A,1B,1C…乾燥処理システム、3A,3B,3C…ドライブース、4…天井、5a,5b,5c,5d…ビニールカーテン、6…給気部、7…出入口、8…アジャスタ、9a,9b…対象物、10a,10b,10c,10d…第2検出部、12a,12b,12c,12d…吸い込み口、13a,13b,13c,13d…排気ダクト、14…第3検出部、15…管理空間、16…除湿空調機、17a,17b,17c,17d…吸い込みファン、18…第4検出部、19…キャスタ、20,20a,20b…乾燥処理部、21,21a,21b,21c,21d…排気部、22,22a,22b…第1検出部、23a,23b…保持部、24…排気ファン、25…作業者、26…排気ホース、28…給気ホース、通路…30、支柱…31a,31b,31c,31d、40…制御部、60…給気孔

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10