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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093100
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】部分メッキ部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/30 20060101AFI20240702BHJP
   C23C 18/20 20060101ALI20240702BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C23C18/30
C23C18/20 A
C23C18/20 Z
H05K3/18 B
H05K3/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209254
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100174285
【弁理士】
【氏名又は名称】小宮山 聰
(72)【発明者】
【氏名】上野 浩明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 建輝
(72)【発明者】
【氏名】原田 雄二郎
(72)【発明者】
【氏名】遊佐 敦
【テーマコード(参考)】
4K022
5E343
【Fターム(参考)】
4K022AA20
4K022AA31
4K022AA42
4K022BA14
4K022CA03
4K022CA05
4K022CA06
4K022CA08
4K022CA11
4K022CA12
4K022CA15
4K022CA21
4K022CA22
4K022CA23
4K022DA01
4K022DB02
4K022DB26
4K022DB29
5E343AA16
5E343AA17
5E343AA22
5E343AA23
5E343AA26
5E343BB24
5E343BB28
5E343BB35
5E343BB43
5E343CC71
5E343CC72
5E343CC73
5E343DD33
5E343EE42
5E343GG20
(57)【要約】
【課題】メッキの異常析出を抑制することができる部分メッキ部品の製造方法を提供する。
【解決手段】部分メッキ部品の製造方法は、基材10の表面の一部に選択的にメッキ膜が形成された部分メッキ部品の製造方法であって、基材10の表面の一部であって、メッキ膜を形成する部分である第1領域10aに選択的に表面処理をする工程と、基材10の表面の一部に選択的にメッキ触媒を付与する工程と、基材10に無電解メッキ液を接触させる工程と、を備える。前記基材の表面の一部に選択的にメッキ触媒を付与する工程は、下記の(a)及び(b)の少なくとも一つの工程を含む。
(a) 前記基材の表面の一部であって、前記第1領域を包含する領域である第3領域に選択的に前処理液を接触させる工程、
(b) 前記基材の表面の一部であって、前記第1領域を包含する領域である第2領域に選択的にメッキ触媒液を接触させる工程。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面の一部に選択的にメッキ膜が形成された部分メッキ部品の製造方法であって、
前記基材の表面の一部であって、前記メッキ膜を形成する部分である第1領域に選択的に表面処理をする工程と、
前記基材の表面の一部に選択的にメッキ触媒を付与する工程と、
前記基材に無電解メッキ液を接触させる工程と、を備え、
前記基材の表面の一部に選択的にメッキ触媒を付与する工程は、下記の(a)及び(b)の少なくとも一つの工程を含む、部分メッキ部品の製造方法。
(a) 前記基材の表面の一部であって、前記第1領域を包含する領域である第3領域に選択的に前処理液を接触させる工程、
(b) 前記基材の表面の一部であって、前記第1領域を包含する領域である第2領域に選択的にメッキ触媒液を接触させる工程。
【請求項2】
前記第2領域に選択的にメッキ触媒液を接触させる工程は、前記メッキ触媒液を吸収させた物体を前記第2領域に接触させる工程である、請求項1に記載の部分メッキ部品の製造方法。
【請求項3】
前記第3領域に選択的に前処理液を接触させる工程は、前記前処理液を吸収させた物体を前記第3領域に接触させる工程である、請求項1に記載の部分メッキ部品の製造方法。
【請求項4】
前記第2領域に選択的にメッキ触媒液を接触させる工程は、前記メッキ触媒液を前記第2領域に注液する工程である、請求項1に記載の部分メッキ部品の製造方法。
【請求項5】
前記第3領域に選択的に前処理液を接触させる工程は、前記前処理液を前記第3領域に注液する工程である、請求項1に記載の部分メッキ部品の製造方法。
【請求項6】
前記第2領域の面積及び前記第3領域の面積の各々は、前記第1領域の面積の10.0倍以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の部分メッキ部品の製造方法。
【請求項7】
前記第2領域の面積及び前記第3領域の面積の各々は、前記基材の表面の面積の75%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の部分メッキ部品の製造方法。
【請求項8】
前記表面処理は、前記基材にレーザーを照射する工程である、請求項1~5のいずれか一項に記載の部分メッキ部品の製造方法。
【請求項9】
前記表面処理は、前記基材に紫外線を照射する工程である、請求項1~5のいずれか一項に記載の部分メッキ部品の製造方法。
【請求項10】
前記表面処理をする工程の前に、前記基材に触媒失活剤を付与する工程をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の部分メッキ部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分メッキ部品の製造方法に関し、より詳しくは、基材の表面の一部に選択的にメッキ膜が形成された部分メッキ部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元の樹脂成形品上に立体的に回路を形成した立体回路成形部品(MID:Molded Interconnected Device)が、スマートホン用の内蔵アンテナを中心に市場を拡大している。MIDは、プリント基板やフレキ基板の削減、製造工程数削減等のメリットがあり、様々な製造方法が開発されている。
【0003】
特開2016-222823号公報には、無電解メッキを施すための塗料組成物が開示されている。この塗料組成物は、表面がアニオン化処理された非導電性基材に対して無電解メッキを施すための塗料組成物であって、(1)パラジウム粒子と分散剤との複合体、(2)カチオン性界面活性剤及び(3)水を含有する。
【0004】
国際公開第2021/014599号には、メッキ部品の製造方法が記載されている。このメッキ部品の製造方法は、基材の表面の一部に、レーザー光を照射することと、レーザー光を照射した基材に、重量平均分子量1,000以上の窒素含有ポリマーを含み、表面張力が20mN/m~60mN/mである前処理液を接触させることと、前処理液を接触させた基材を洗浄することと、洗浄した基材に、金属塩を含むメッキ触媒液を接触させることと、メッキ触媒液を接触させた基材に、無電解メッキ液を接触させ、レーザー光照射部に無電解メッキ膜を形成することとを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-222823号公報
【特許文献2】国際公開第2021/014599号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無電解メッキは一般的に、基材をメッキ液に浸漬させて行われる。基材の一部に選択的にメッキを施す場合であっても、無電解メッキは基材の全体をメッキ液に浸漬させて行われる。一方、基材をメッキ液に浸漬させてメッキを行うと、不要な箇所にメッキが析出する場合があり、歩留まりの低下の原因となる。
【0007】
本発明の課題は、メッキの異常析出を抑制することができる部分メッキ部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態による部分メッキ部品の製造方法は、基材の表面の一部に選択的にメッキ膜が形成された部分メッキ部品の製造方法であって、前記基材の表面の一部であって、前記メッキ膜を形成する部分である第1領域に選択的に表面処理をする工程と、前記基材の表面の一部にメッキ触媒を付与する工程と、前記基材に無電解メッキ液を接触させる工程と、を備え、前記メッキ触媒を付与する工程は、下記の(a)及び(b)の少なくとも一つの工程を含む。
(a) 前記基材の表面の一部であって、前記第1領域を包含する領域である第3領域に選択的に前処理液を接触させる工程、
(b) 前記基材の表面の一部であって、前記第1領域を包含する領域である第2領域に選択的にメッキ触媒液を接触させる工程。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、メッキの異常析出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の第1の実施形態による部分メッキ部品の製造方法のフロー図である。
図2図2は、表面処理をする領域の一例を示す模式図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態による部分メッキ部品の製造方法のフロー図である。
図4図4は、レーザービームの照射パターンを模式的に示す図である。
図5図5は、図4の領域Aを拡大して示す図である。
図6図6は、レーザービームの照射パターンを模式的に示す図である。
図7図7は、図6の領域Aを拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0012】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態による部分メッキ部品の製造方法のフロー図である。この製造方法は、基材の表面の一部に選択的にメッキ膜が形成された部分メッキ部品を製造する方法である。この製造方法は、基材の表面の一部に選択的に表面処理をする工程(ステップS1)と、基材の表面の一部にメッキ触媒を付与する工程(ステップS2)と、基材に無電解メッキ液を接触させる工程(ステップS3)とを備えている。
【0013】
基材は、市販品を用いてもよいし、又は汎用の方法により、基材を構成する材料を所望の形状に成形してもよい。基材の材料は、特に限定されず、例えば、樹脂、ガラス、金属、セラミック、木材等を用いることができる。
【0014】
樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。例えば、ナイロン6T(PA6T)、ナイロン9T(PA9T)、ポリアミドMXD6(MXD6PA)等の半芳香族ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド等の耐熱性を有する熱可塑性樹脂(耐熱樹脂)を用いることができる。また、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の結晶性樹脂も用いることができる。これらの耐熱樹脂及び/又は結晶性樹脂を含む基材は、ハンダリフロー耐性を有し、更に、高耐久性、高耐熱性、耐薬品性も有する。また、メッキ部品にハンダリフロー耐性が要求されない場合には、汎用エンプラであるABS樹脂、ポリカーボネート(PC)、ABS樹脂とPCとのポリマーアロイ(ABS/PC)、ポリプロピレン、脂肪族ポリアミド等を用いることができる。寸法安定性や剛性向上の観点から、これらの樹脂は、ガラスフィラーやミネラルフィラー等の無機フィラーを含有してもよい。また、これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0015】
また、基材の少なくとも一部に、放熱性のある金属やセラミックスを用いてもよい。金属(導体)としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、チタン、マグネシウム、ステンレス鋼(SUS)等が挙げられる。セラミックス(不導体)としては、ジルコニア、アルミナ、窒化アルミ等のセラミックスが挙げられる。これらの金属及びセラミックスは、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0016】
(表面処理工程)
基材の表面の一部に選択的に表面処理をする(ステップS1)。これによって、表面処理された部分が粗化又は改質される。ここで、基材の表面が粗化されるとは、基材の表面の表面粗さ又は凹凸の大きさが、表面処理の前と比較して大きくなることを意味する。また、基材の表面が改質されるとは、例えば、基材を構成する材料の化学結合が切断されることにより、基材の表面に官能基が生成することを意味する。基材表面の粗化と改質は、どちらか一方のみが生じてもよいし、両方が生じてもよい。
【0017】
図2は、表面処理をする領域の一例を示す模式図である。本実施形態では、基材10の表面のうち、メッキ膜を形成する部分である第1領域10aに選択的に表面処理をする。「第1領域10aに選択的に表面処理をする」とは、基材10の表面のうち、第1領域10aのみを表面処理し、第1領域10a以外の領域には表面処理をしないことを意味する。第1領域10aは、図2に示すように、不連続な複数の領域から構成された領域であってもよい。表面処理は、第1領域10aの全体を一度に処理する必要はなく、複数回に分けて処理してもよい。
【0018】
表面処理は、基材を粗化及び/又は改質できる処理であれば任意であるが、特に微細なパターンの形成が可能な表面処理の方法として、レーザービームの照射や、紫外線の照射が挙げられる。
【0019】
レーザービームの照射に用いるレーザーは、これらに限定されないが、例えばYVOレーザー(λ=1064nm)、ファイバーレーザー(λ=1090nm)、COレーザー(λ=10μm)等の赤外領域レーザーや、グリーンレーザー(λ=532nm)、UVレーザー(λ=355nm)、エキシマレーザー(λ=193nm)等を用いることができる。レーザービームを照射する場合、例えばレーザー描画装置を用いることで、第1領域10aに選択的にレーザービームを照射することができる。
【0020】
紫外線の照射に用いる光源は、これらに限定されないが、例えば低圧水銀ランプ、バリア放電ランプ、誘電体バリア放電ランプ、マイクロ波無電極放電ランプ、過渡放電ランプ等である。紫外線の波長は、例えば100nm以上450nm以下であり、好ましくは180nm以上280nm以下である。紫外線を照射する場合、例えば、第1領域10a以外の領域をマスク等で覆った状態で紫外線を照射することによって、第1領域10aに選択的に紫外線を照射することができる。
【0021】
表面処理の方法としては上記の他に、ブラスト等の物理的(機械的)手段によって表面を粗化又は改質することや、薬品によるエッチング等の化学的手段によって表面を粗化又は改質することが挙げられる。
【0022】
(触媒付与工程)
表面処理した基材の表面の一部に選択的にメッキ触媒を付与する(ステップS2)。本実施形態では、メッキ触媒を付与する工程(ステップS2)は、基材に前処理液を接触させる工程(ステップS2-1)と、基材にメッキ触媒液を接触させる工程(ステップS2-2)とを備えている。
【0023】
まず、基材に前処理液を接触させる(ステップS2-1)。前処理液は、基材とメッキ触媒との親和性を向上させてメッキ触媒を基材に付着若しくは残留させやすくする処理液、又は、触媒の活性を向上させる処理液である。前処理液は例えば、メッキ触媒液との濡れ性を向上させる表面調整剤を含有する処理液であってもよく、触媒として用いられる金属塩に対し還元効果のあるスズコロイド溶液等であってもよい。前処理液としては例えば、奥野製薬株式会社製のセンシタイザー等が挙げられる。
【0024】
また、前処理液として、国際公開第2021/014599号に記載されたものを用いることもできる。この前処理液は、具体的には、重量平均分子量1,000以上の窒素含有ポリマーを含んでおり、表面張力が20~60mN/mである。
【0025】
窒素含有ポリマーは、ステップS2-2で用いるメッキ触媒液に含まれる金属イオンを吸着可能なポリマーであり、例えば、ポリアクリルアミド、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン等であり、ポリエチレンイミンが特に好ましい。前処理液の溶媒は、特に限定されないが、例えば、水、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、アセトン、エチルメチルケトンであり、水が特に好ましい。前処理液の表面張力は、例えば、界面活性剤や表面調整剤を用いて調整することができる。
【0026】
必要に応じて、前処理液に接触させた基材を洗浄する。前処理液として窒素含有ポリマーを含む前処理液を用いた場合、窒素含有ポリマーは、ステップS1で表面処理した領域(図2の第1領域10a)に吸着又は浸透している。または、表面処理した領域が粗化されている場合には表面積が大きくなるため、表面処理されていない領域に対して相対的に吸着量が多くなる。表面処理をしていない領域には、窒素含有ポリマーは吸着していないか、又は比較的弱い力で吸着している。そのため、基材を洗浄することにより、表面処理をしていない領域に付着している窒素含有ポリマーは除去されやすくなり、表面処理をした領域に選択的に窒素含有ポリマーを相対的に多く残すことができる。洗浄は、例えば、窒素含有ポリマーを溶解可能な液体(洗浄液)に基材を浸漬することによって行うことができる。洗浄液は、上述した前処理液の溶媒として挙げたものを用いることができ、水が特に好ましい。
【0027】
次に、基材にメッキ触媒液を接触させる(ステップS2-2)。メッキ触媒液は、無電解触媒能を有する金属の塩を含有するものを用いることができる。金属塩は例えば、Pd、Pt、Cu、Ni等の塩が挙げられ、中でも、触媒能の高いPdが好ましい。Pdの塩としては、例えば、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウム錯体が挙げられ、中でも、安価で安定な塩化パラジウムが好ましい。
【0028】
ステップS1で表面処理した領域(図2の第1領域10a)は、表面が粗化又は改質されている。これによって、無電解メッキ触媒は第1領域10aに付着しやすくなるため、第1領域10aに選択的に無電解メッキ触媒を付着させることができる。
【0029】
基材にメッキ触媒液を接触させた後、必要に応じて、基材にメッキ触媒還元剤を付与する工程を行ってもよい。メッキ触媒還元剤は、例えば次亜リン酸ナトリウム水溶液である。
【0030】
本実施形態では、基材に前処理液を接触させる工程(ステップS2-1)及び基材にメッキ触媒液を接触させる工程(ステップS2-2)の少なくとも一方は、基材の全体に対して行うのではなく、基材の表面の一部に対して選択的に行う。すなわち、基材に前処理液を接触させる工程(ステップS2-1)において基材の表面の一部に選択的に前処理液を接触させるか、基材にメッキ触媒液を接触させる工程(ステップS2-2)において基材の表面の一部に選択的にメッキ触媒液を接触させるかの、少なくとも一方を行う。
【0031】
再び図2を参照して、これらの工程について詳しく説明する。基材10の表面の一部に選択的にメッキ触媒液を接触させる場合、基材10の表面の一部であって、第1領域10aを包含する領域である第2領域10bに選択的にメッキ触媒液を接触させる。「第2領域10bに選択的にメッキ触媒液を接触させる」とは、基材10の表面のうち、第2領域10bのみにメッキ触媒液を接触させ、第2領域10b以外の領域にはメッキ触媒液を接触させないことを意味する。図2では、第2領域10bが一つの連続した領域である場合を図示しているが、第2領域10bは、複数の不連続な領域から構成されていてもよい。また、第2領域10bの全体を一度に処理する必要はなく、複数回に分けて処理してもよい。
【0032】
同様に、基材10の表面の一部に選択的に前処理液を接触させる場合、基材10の表面の一部であって、第1領域10aを包含する領域である第3領域10cに選択的に前処理液を接触させる。「第3領域10cに選択的にメッキ触媒液を接触させる」とは、基材10の表面のうち、第3領域10cのみに前処理液を接触させ、第3領域10c以外の領域には前処理液を接触させないことを意味する。図2では、第3領域10cが一つの連続した領域である場合を図示しているが、第3領域10cは、複数の不連続な領域から構成されていてもよい。また、第3領域10cの全体を一度に処理する必要はなく、複数回に分けて処理してもよい。
【0033】
図2では、第2領域10bと第3領域10cとが互いに異なる領域である場合を図示しているが、第2領域10bと第3領域10cとは同一の領域であってもよい。
【0034】
第2領域10b及び第3領域10cの各々は、基材10の表面の一部であって(すなわち、基材10の表面の全部ではなく)、かつ、第1領域10aを包含する領域であればよい。「第2領域10b又は第3領域10cが第1領域10aを包含する」とは、第1領域10aの全体が第2領域10b又は第3領域10cに含まれていることを意味する。
【0035】
第2領域10b及び第3領域10cの各々は、第1領域10aを包含しつつ、できるだけ小さい領域であることが好ましい。第2領域10bの面積及び第3領域10cの面積の各々は、好ましくは、基材10の表面の面積(オモテ面、裏面及び側面等、露出している全ての面の合計の面積)の75%以下であり、より好ましくは50%以下であり、さらに好ましくは40%以下であり、さらに好ましくは30%以下である。第2領域10bの面積及び第3領域10cの面積の各々が基材10の表面の面積の75%を超えると、触媒付与面積が大きいため、異常析出が起こりやすくなる。第2領域10bの面積と第3領域10cの面積とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0036】
また、第2領域10b及び第3領域10cの各々の面積は、第1領域10aの面積の10.0倍以下であることが好ましい。第2領域10b及び第3領域10cの各々の面積は、より好ましくは第1領域10aの面積の6.0倍以下であり、さらに好ましくは第1領域10aの面積の4.0倍以下であり、さらにより好ましくは2.0倍以下である。
【0037】
第2領域10b及び第3領域10cの各々の面積は、異常析出を抑制する観点では、小さいほど、すなわち、第1領域10aの面積に近いほど好ましい。一方、第2領域10b及び第3領域10cの形状を第1領域10aの形状に一致させようとすると、第1領域10aの形状によっては、前処理液やメッキ触媒液を選択的に接触させるために特別な装置が必要になる。第2領域10b及び第3領域10cの各々の面積は、第1領域10aを包含することができる面積、すなわち第1領域10aの面積の1.0倍以上の面積であればよいが、好ましくは第1領域10aの面積の1.2倍以上である。
【0038】
前処理液やメッキ触媒液(以下、これらを総称して「処理液」と呼ぶ。)を第2領域10bや第3領域10c(以下、これらを総称して「対象領域」と呼ぶ。)に選択的に接触させる方法は、任意の方法を用いることができる。処理液を対象領域に選択的に接触させる方法として、これらに限定されないが、処理液を吸収させた物体を対象領域に接触させる方法、スポイトやノズル等を使用して処理液を対象領域に注液する方法、基材10を部分的に処理液に浸漬させる方法が挙げられる。第2領域10bに前処理液を接触させる場合と第3領域10cにメッキ触媒液を接触させる場合とで、異なる方法を用いてもよい。
【0039】
これらの方法のなかでは、処理液を対象領域に均一に接触させやすいことから、処理液を吸収させた物体を対象領域に接触させる方法が特に好適である。この場合、処理液が対象領域により効率的に付着し、メッキの反応性(析出性)がより向上する効果も得られる。また、メッキの反応性が向上することによって、接触時間をより短時間にすることができる。接触時間を短くすることによって、メッキの選択性も向上させることができる。
【0040】
処理液を吸収させる物体としては、処理液を保持できる構造を有する任意の物体を用いることができ、一般的には多孔質材料である。処理液を吸収させる物体としては、例えば、スポンジ、布、不織布等を用いることができる。なかでもスポンジが好適であり、特に、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエステル等の樹脂からなるスポンジが好適である。
【0041】
基材の表面の一部に選択的に前処理液を接触させることと、基材の表面の一部に選択的にメッキ触媒液を接触させることとは、少なくとも一方を行えばよい。すなわち、基材に前処理液を接触させる工程(ステップS2-1)において基材の表面の一部に選択的に前処理液を接触させる場合には、基材にメッキ触媒液を接触させる工程(ステップS2-2)では、基材の表面の全体にメッキ触媒液を接触させてもよい(例えば、基材の全体をメッキ触媒液に浸漬させてもよい。)。
【0042】
同様に、基材にメッキ触媒液を接触させる工程(ステップS2-2)において基材の表面の一部に選択的にメッキ触媒液を接触させる場合には、基材に前処理液を接触させる工程(ステップS2-1)では、基材の表面の全体に前処理液を接触させてもよい(例えば、基材の全体を前処理液に浸漬させてもよい。)。もっとも、基材の表面の一部に選択的に前処理液を接触させることと、基材の表面の一部に選択的にメッキ触媒液を接触させることとの、両方を行ってもよい。
【0043】
基材に前処理液を接触させる工程(ステップS2-1)は、任意の工程である。すなわち、表面処理工程(ステップS1)の後、基材に前処理液を接触させる工程(ステップS2-1)を省略し、基材にメッキ触媒液を接触させる工程(ステップS2-2)を行ってもよい。ただしこの場合、基材にメッキ触媒液を接触させる工程(ステップS2-2)において、基材の表面の一部に選択的にメッキ触媒液を接触させる。
【0044】
したがって、基材の表面の一部に選択的にメッキ触媒を付与する工程(ステップS2)は、下記のA~Dのいずれかを含む。
A 基材10の表面の一部であって、第1領域10aを包含する領域である第2領域10bに選択的にメッキ触媒液を接触させる工程、
B 基材10に前処理液を接触させた後、第2領域10bに選択的にメッキ触媒液を接触させる工程(前処理液は基材10の表面の全体に接触させてもよい)、
C 基材10の表面の一部であって、第1領域10aを包含する領域である第3領域10cに選択的に前処理液を接触させた後、基材10にメッキ触媒液を接触させる工程(メッキ触媒液は基材10の表面の全体に接触させてもよい。)、
D 第3領域10cに選択的に前処理液を接触させた後、第2領域10bに選択的にメッキ触媒液を接触させる工程。
【0045】
換言すれば、基材の表面の一部に選択的にメッキ触媒を付与する工程(ステップS2)は、下記の(a)及び(b)の少なくとも一つの工程を含む。
(a) 基材10の表面の一部であって、第1領域10aを包含する領域である第3領域10cに選択的に前処理液を接触させる工程、
(b) 基材10の表面の一部であって、第1領域10aを包含する領域である第2領域10bに選択的にメッキ触媒液を接触させる工程。
【0046】
(無電解メッキ工程)
次に、基材に無電解メッキ液を接触させる(ステップS3)。上述のとおり、メッキ触媒はステップS1で表面処理された領域(図2の第1領域10a)に選択的に付着しているため、この領域に選択的にメッキ膜が形成される。
【0047】
無電解メッキ液としては、目的に応じて任意の無電解メッキ液を使用できる。例えば、無電解ニッケルメッキ液(無電解ニッケルリンメッキ液)、無電解銅ニッケルメッキ液、無電解銅メッキ液、無電解パラジウムメッキ液等を用いることができる。
【0048】
基材に無電解メッキ液を接触させる工程(ステップS3)は、基材の表面の全体に無電解メッキ液を接触させてもよいし、基材の表面の一部だけに無電解メッキ液を接触させてもよい。基材の表面の一部だけを無電解メッキ液に接触させる場合、第1領域10aを包含する領域に無電解メッキ液を接触させる。
【0049】
形成するメッキ膜の厚さは、無電解メッキ液の温度や無電解メッキ時間(基材に無電解メッキ液を接触させる時間)によって調整することができる。メッキ膜の厚さは、特に限定されないが、例えば0.01μm以上30μm以下であり、好ましくは0.1μm以上10μm以下である。
【0050】
以上の工程によって、基材の表面の一部に選択的にメッキ膜が形成された部分メッキ部品が製造される。
【0051】
本実施形態による部分メッキ部品の製造方法によれば、メッキ触媒はステップS1で表面処理した領域(図2の第1領域10a)に選択的に付着するため、この領域に選択的にメッキ膜が形成される。一方、基材の材質や基材の元々の表面粗さ等によっては、第1領域10a以外の領域にメッキが析出する場合がある。
【0052】
本実施形態では、基材に前処理液を接触させる工程(ステップS2-1)及び基材にメッキ触媒液を接触させる工程(ステップS2-2)の少なくとも一方は、基材の表面の全体に対して行うのではなく、基材の表面の一部に対して選択的に行う。
【0053】
例えば、第2領域10bに選択的にメッキ触媒液を接触させた場合、基材の表面の全体にメッキ触媒液を接触させた場合と比較して、第2領域10b以外の領域にメッキが析出する確率を減らすことができる。同様に、第3領域10cに選択的に前処理液を接触させた場合、基材の表面の全体に前処理液を接触させた場合と比較して、第3領域10c以外の領域にメッキが析出する確率を減らすことができる。そのため、第1領域10a以外の領域にメッキが析出する確率を減らすことができる。
【0054】
これによって、本実施形態による部分めっき部品の製造方法によれば、メッキの異常析出を抑制することができる。そのため、メッキ部品の歩留まりを向上させることができる。この効果は、第2領域10b又は第3領域10cの面積を小さくする程大きくなる。
【0055】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態による部分メッキ部品の製造方法のフロー図である。この製造方法は、第1の実施形態による製造方法が備える工程(図1)に加えて、基材の表面に触媒失活剤を付与する工程(ステップS4)をさらに備えている。基材の表面に触媒失活剤を付与する工程(ステップS4)は、基材の表面の一部に選択的に表面処理をする工程(ステップS1)の前に行う。
【0056】
触媒失活剤は、メッキ触媒が触媒能を発揮することを妨げ、結果として、無電解メッキの反応を抑制する物質であれば、任意の物質を用いることができる。このような触媒失活剤としては、例えば、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)等のメッキ触媒毒となる重金属及びその化合物、ヨウ素及びその化合物、過酸化物等の酸化剤等が挙げられる。
【0057】
触媒失活剤として、触媒活性を妨害する樹脂を用いてもよい。樹脂である触媒失活剤は、妨害層として基材上に付与できる。樹脂である触媒失活剤としては、側鎖にアミド基及びジチオカルバメート基を有するポリマーが好ましい。樹脂である触媒失活剤は、デンドリマー、ハイパーブランチポリマー等のデンドリティックポリマーが好ましい。触媒活性を妨害する樹脂としては、例えば、国際公開第2017/154470号、又は国際公開第2018/131492号に開示されるポリマーを用いることができ、また、同公報に開示される方法により、基材の表面に妨害層を形成できる。
【0058】
以下は、第1の実施形態の場合と同様に、基材の表面の一部に選択的に表面処理をする工程(ステップS1)、基材の表面の一部にメッキ触媒を付与する工程(ステップS2)、及び、基材に無電解メッキ液を接触させる工程(ステップS3)を行う。
【0059】
基材の表面の一部に選択的に表面処理をする工程(ステップS1)により、表面処理された領域(図2の第1領域10a)では、触媒失活剤は変性又は変質して触媒失活剤として作用しなくなる。そのため、表面処理されていない領域においてのみ、触媒失活剤が作用する。これによって、無電解メッキの反応性及び選択性をさらに向上させることができる。
【実施例0060】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0061】
[実施例1]
(1)基材
ポリカーボネート(PC)(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、ユーピロン(登録商標)EGN2030R)を射出成形し、50mm×80mm×2mmの平板形状の基材を得た。一方の面が鏡面加工、他方の面がシボ加工の金型を用いて成形を行い、片面がシボ形状の基材とした。
【0062】
(2)触媒失活剤の付与
基材の表面に、触媒失活剤である下記式(A)で表されるハイパーブランチポリマーを含む触媒活性妨害層を形成した。式(A)で表されるハイパーブランチポリマーは、国際公開第2018/131492号に開示される方法によって合成した。式(A)において、Rはビニル基又はエチル基である。
【化1】
【0063】
合成した式(A)で表されるポリマーをポリプロピレングリコールモノメチルエーテルとイソプロピルアルコールにて溶解して、ポリマー配合量0.5重量%のポリマー溶液を調製した。室温のポリマー溶液に基材を5秒間浸漬し、その後、80℃乾燥機中で10分間乾燥した。これにより、基材表面に膜厚約100nmの触媒活性妨害層が形成された。
【0064】
(3)レーザービーム照射(レーザー描画)
選択的にメッキをするために、基材の一部に対し、表面処理を実施した。表面処理として、基材の鏡面加工面にレーザービームの照射を行った。レーザービームの照射は、UVレーザー(株式会社キーエンス製、MD-U1000C、波長355nm)を使用し、レーザー描画時のパワーは80%、周波数は80kHz、線速度は1500mm/sとした。レーザー描画後、2NのNaOH水溶液に浸漬する脱脂処理を行った。
【0065】
図4は、レーザービームの照射パターンを模式的に示す図であり、図5は、図4の領域Aを拡大して示す図である。図5でハッチングを付して示す部分が、レーザービームを照射した領域である。図4及び図5に示すように、ライン/スペース:0.25mm/0.25mm、長さ40mmの縞状の配線パターンを描画した。図5でハッチングを付した部分を0.01mmピッチの格子塗り潰しモードで表面処理を実施した。
【0066】
(4)前処理液の付与
水に、窒素含有ポリマーとして重量平均分子量70,000のポリエチレンイミン(PEI)(和光純薬製、30重量%濃度溶液)、界面活性剤としてラウリル酸ナトリウム(SLS)を混合し、ポリエチレンイミンの配合量(固形分濃度)が10g/L、ラウリル酸ナトリウムの配合量が0.1g/Lとなるように前処理液を調製した。
【0067】
40℃に調整した前処理液に、適切なサイズにカットした吸水スポンジ(アイオン株式会社製、ポリビニルホルマール、気孔径:130μm、厚さ:1mm)を浸漬し、その後、図4の領域B(50mm×30mmで、レーザー描画領域を包含する領域。)にこのスポンジを乗せ、1分間押し当てた。
【0068】
(5)基材の洗浄
前処理液に接触させた後、基材を常温の水に浸漬して洗浄した。同様の洗浄をさらにもう1回行った。
【0069】
(6)メッキ触媒液の付与
0.1gの塩化パラジウムを12Nの塩酸1mLに溶解させた後、水で希釈して1Lとし、配合量0.1g/Lの塩化パラジウム水溶液を調製した。40℃に調整した塩化パラジウム水溶液に、基材の全体を1分間浸漬した。
【0070】
(7)基材の洗浄
塩化パラジウム水溶液に接触させた後、基材を常温の水に浸漬して洗浄した。同様の洗浄をさらにもう1回行った。なお、無電解メッキ工程で用いる無電解メッキ液に還元剤が含まれているため、メッキ触媒還元剤を付与する工程は省略した。
【0071】
(8)無電解メッキ
65℃に調整した無電解ニッケルメッキ液(奥野製薬工業株式会社製、ICPニコロンLTN-NP、還元剤:次亜鉛酸ナトリウム)に、基材を2分間浸漬し、基材表面に無電解ニッケルメッキ膜を約0.5μm成長させ、部分メッキ部品を得た。
【0072】
[実施例2]
メッキ触媒液を付与する工程において、塩化パラジウム水溶液に基材を浸漬するのに代えて、スポンジを用いて塩化パラジウム水溶液を付与した。具体的には、40℃に調整した塩化パラジウム水溶液に、適切なサイズにカットした吸水スポンジ(アイオン株式会社製、ポリウレタン、厚さ:1mm)を浸漬し、その後、図4の領域C(基材の下端から2/3の面積の領域)にこのスポンジを乗せ、1分間押し当てた。それ以外は、実施例1と同様に部分メッキ部品を製造した。
【0073】
[実施例3]
平板形状の基材に代えて、立体形状の基材を準備した。具体的には40mm角の立方体の一つの面に図6に示す照射パターンを描画した。図7は、図6の領域Aを拡大して示す図である。それ以外は、実施例1と同様に部分メッキ部品を製造した。
【0074】
[実施例4]
平板形状の基材に代えて、実施例3で使用した立体形状の基材を準備した。それ以外は、実施例2と同様に部分メッキ部品を製造した。
【0075】
[実施例5]
前処理を付与する工程において、スポンジを用いる方法に代えて、スポイトを用いて前処理液を付与した。具体的には、40℃に調整した前処理液を、スポイトで2ml吸い取り、図4の領域C(基材の下端から2/3の面積の領域)に滴下した。これを3回行い、前処理液の液だまりを取り除いた状態で1分間基材を静置した。それ以外は、実施例1と同様に部分メッキ部品を製造した。
【0076】
[実施例6]
メッキ触媒液を付与する工程において、塩化パラジウム水溶液に基材を浸漬するのに代えて、スポイトを用いて塩化パラジウム水溶液を付与した。具体的には、40℃に調整した塩化パラジウム水溶液を、スポイトで2ml吸い取り、図4の領域C(基材の下端から2/3の面積の領域)に滴下した。これを3回行い、前処理液の液だまりを取り除いた状態で1分間基材を静置した。それ以外は、実施例1と同様に部分メッキ部品を製造した。
【0077】
[実施例7]
表面処理として、レーザー描画に代えて、以下に説明する紫外線照射(UV照射)を行った。具体的には、樹脂製のマスクを基材に被せた状態で、紫外線装置(江藤電気株式会社製、KOL4-200、UVランプ波長254nm及び185nm)を使用して、図4と同じ配線パターンとなるように照射した。また、メッキ触媒液を付与する工程において、浸漬時間を3分間とした。それ以外は、実施例1と同様に部分メッキ部品を製造した。
【0078】
[実施例8]
前処理を付与する工程において、スポンジを用いる方法に代えて、40℃に調整した前処理液に基材を1分間浸漬した。それ以外は、実施例2と同様に部分メッキ部品を製造した。
【0079】
[実施例9]
液晶ポリマー(LCP)(上野製薬株式会社製、UENO LCP(登録商標)UA201)を射出成形し、50mm×80mm×2mmの平板形状の基材を得た。一方の面が鏡面加工、他方の面がシボ加工の金型を用いて成形を行い、片面がシボ形状の基材とした。また、触媒失活剤を付与する工程を省略した。その他は、実施例1と同様に部分メッキ部品を製造した。
【0080】
[比較例1]
前処理を付与する工程において、スポンジを用いる方法に代えて、40℃に調整した前処理液に基材を3分間浸漬した。また、メッキ触媒液を付与する工程において、塩化パラジウム水溶液への浸漬時間を3分間とした。それ以外は、実施例1と同様に部分メッキ部品を製造した。
【0081】
[比較例2]
メッキ触媒液を付与する工程において、塩化パラジウム水溶液への浸漬時間を1分間とした。それ以外は、比較例1と同様に部分メッキ部品を製造した。
【0082】
[比較例3]
平板形状の基材に代えて、実施例3で使用した立体形状の基材を準備した。それ以外は、比較例1と同様に部分メッキ部品を製造した。
【0083】
[比較例4]
液晶ポリマー(LCP)(上野製薬株式会社製、UENO LCP(登録商標)UA201)を射出成形し、50mm×80mm×2mmの平板形状の基材を得た。一方の面が鏡面加工、他方の面がシボ加工の金型を用いて成形を行い、片面がシボ形状の基材とした。また、触媒失活剤を付与する工程を省略した。その他は、比較例3と同様に部分メッキ部品を製造した。
【0084】
[比較例5]
前処理液を付与する工程において、スポンジを用いる方法に代えて、40℃に調整した前処理液に基材を3分間浸漬した。それ以外は、実施例7と同様に部分メッキ部品を製造した。
【0085】
[評価]
以上のように製造した部分メッキ部品の表面を目視及びマイクロスコープにて観察し、以下の評価基準にしたがって無電解メッキの反応性及び選択性を評価した。なお、「異常析出」は、図4図6の領域B以外の領域(基材の裏面等を含む。)での析出を意味する。
【0086】
<反応性の評価基準>
○:配線パターン内に無電解メッキ膜が形成されていない部分がなく、無電解メッキ膜が安定に形成されている。
△:配線パターンの0%超10%未満の領域に無電解メッキ膜が形成されていない部分がある。
×:配線パターンの10%以上の領域に無電解メッキ膜が形成されていない部分がある。
【0087】
<選択性の評価基準>
○:異常析出がなく、かつ、配線パターンにおいて隣接する配線間の短絡(繋がり)がない。
△:異常析出が存在するか、又は、配線パターンの0%超10%未満の領域に隣接する配線間の短絡(繋がり)が存在する。
×:異常析出が存在し、かつ、配線パターンの10%以上の領域に隣接する配線間の短絡(繋がり)が存在する。
-:反応性が不十分なため、評価できない。
【0088】
結果を表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
実施例1~4、6、8及び9の部分メッキ部品は、無電解メッキ膜が安定に形成されており、かつ、短絡や異常析出が観察されなかった。
【0091】
実施例5及び7の部分メッキ部品は、配線パターンの0%超10%未満の領域に無電解メッキ膜が形成されていない部分が観察されたが、許容範囲内であった。
【0092】
比較例1の部分メッキ部品は、異常析出を確認した。これは、メッキ触媒液を付与する工程において、塩化パラジウム水溶液への浸漬時間が長すぎたためと考えられる。
【0093】
比較例2の部分メッキ部品は、配線パターンの10%以上の領域に無電解メッキ膜が形成されていない部分が存在した。これは、メッキ触媒液を付与する工程において、塩化パラジウム水溶液への浸漬時間が短すぎたためと考えられる。
【0094】
比較例1及び2に示すように、前処理液の付与とメッキ触媒液の付与とを両方浸漬にした場合には、反応性と選択性とを両立できる条件を見つけることができなかった。
【0095】
比較例3~5においても、配線の一部での短絡及び異常析出の少なくも一方が認められた。
【0096】
以上、本発明についての実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態のみに限定されず、発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0097】
10 基材
10a 第1領域
10b 第2領域
10c 第3領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-12-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0071
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0071】
(8)無電解メッキ
65℃に調整した無電解ニッケルメッキ液(奥野製薬工業株式会社製、ICPニコロンLTN-NP、還元剤:次亜リン酸ナトリウム)に、基材を2分間浸漬し、基材表面に無電解ニッケルメッキ膜を約0.5μm成長させ、部分メッキ部品を得た。