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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093102
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ウエブ搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 27/00 20060101AFI20240702BHJP
   B65H 20/02 20060101ALI20240702BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B65H27/00 B
B65H20/02 Z
F16C13/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209259
(22)【出願日】2022-12-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】518165682
【氏名又は名称】若水技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】清水 康男
(72)【発明者】
【氏名】清水 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】清水 賢二
【テーマコード(参考)】
3F103
3F104
3J103
【Fターム(参考)】
3F103BA01
3F103BA34
3F103BA35
3F104JB01
3F104JC06
3F104JD17
3J103AA02
3J103AA12
3J103AA65
3J103AA72
3J103AA85
3J103BA46
3J103FA30
3J103GA02
3J103GA32
3J103GA52
3J103HA03
3J103HA12
3J103HA15
3J103HA31
3J103HA53
(57)【要約】
【課題】 ウエブを低張力で搬送しつつ、液切りを確実に行うことができるウエブ搬送装置を提供する。
【解決手段】 処理槽60に貯留される処理液61の液面下に帯状のウエブ50を案内するガイドロール10と、ガイドロール10により案内されたウエブ50を処理液から引き上げる引上ロール20と、引上ロール20により引き上げられたウエブ50に付着する処理液の液切りを行う液切りロール30とを備えるウエブ搬送装置1であって、液切りロール30は、ウエブ50との間に介在する処理液を収容して排水する複数の排水溝が外周面に形成されており、ウエブ50との近接箇所における回転方向がウエブ50の移動方向と逆方向である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽に貯留される処理液の液面下に帯状のウエブを案内するガイドロールと、
前記ガイドロールにより案内されたウエブを処理液から引き上げる引上ロールと、
前記引上ロールにより引き上げられたウエブに付着する処理液の液切りを行う液切りロールとを備えるウエブ搬送装置であって、
前記液切りロールは、ウエブとの間に介在する処理液を収容して排水する複数の排水溝が外周面に形成されており、ウエブとの近接箇所における回転方向がウエブの移動方向と逆方向であるウエブ搬送装置。
【請求項2】
前記排水溝の周方向の幅は、50~2000μmである請求項1に記載のウエブ搬送装置。
【請求項3】
前記排水溝は、前記液切りロールの外周面を展開した状態で直線状に形成されており、前記液切りロールの軸線に対する角度が0度以上90度未満である請求項1または2に記載のウエブ搬送装置。
【請求項4】
複数の前記排水溝は、前記液切りロールの軸方向中央部から一方端に向けて軸線に対して傾斜して延びる複数の第1溝と、前記液切りロールの軸方向中央部から他方端に向けて前記第1溝と逆方向に傾斜して延びる複数の第2溝とを備えており、
前記第1溝および第2溝は、前記液切りロールの軸方向中央部において、軸方向にオーバーラップしつつ互いに分断されている請求項1または2に記載のウエブ搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエブ搬送装置に関し、より詳しくは、帯状のウエブを処理液から引き上げて搬送するウエブ搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエブを処理液から引き上げて搬送する装置として、特許文献1には、長尺基板を処理液の液面下にガイドするガイドロールと、ガイドされた長尺基板の液面下での走行方向を下向きから上向きに反転させる反転ロールと、反転された長尺基板を処理液の液面上に引き上げる引上ロールとからなるロールユニットが開示されている。
【0003】
引上ロールによって引き上げられる長尺基板には処理液が付着しているため、上記のロールユニットには、反転ロールから引上ロールまでの長尺基板の搬送経路上に、少なくとも1つの液切ロールが設けられている。この液切ロールは、外周面が弾性体で被覆されており、長尺基板に作用する搬送方向の張力によって長尺基板が弾性体に密着し、液切りが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-3066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近のウエブ搬送装置に対しては、ウエブに対する品質要求の高まり等から、高速搬送を維持しつつ、より低張力で搬送することのニーズが増加しつつある。ところが、上記特許文献1に開示されたロールユニットは、長尺基板を低張力で搬送しようとすると、長尺基板と液切ロールとの密着度が低下して液切りが不十分になるおそれがあった。このため、引上ロールと長尺基板との間で滑りが生じ、長尺基板が蛇行により損傷するおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、ウエブを低張力で搬送しつつ、液切りを確実に行うことができるウエブ搬送装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、処理槽に貯留される処理液の液面下に帯状のウエブを案内するガイドロールと、前記ガイドロールにより案内されたウエブを処理液から引き上げる引上ロールと、前記引上ロールにより引き上げられたウエブに付着する処理液の液切りを行う液切りロールとを備えるウエブ搬送装置であって、前記液切りロールは、ウエブとの間に介在する処理液を収容して排水する複数の排水溝が外周面に形成されており、ウエブとの近接箇所における回転方向がウエブの移動方向と逆方向であるウエブ搬送装置により達成される。
【0008】
このウエブ搬送装置において、前記排水溝の周方向の幅は、50~2000μmであることが好ましい。
【0009】
前記排水溝は、前記液切りロールの外周面を展開した状態で直線状に形成されており、前記液切りロールの軸線に対する角度が0度以上90度未満であることが好ましい。
【0010】
複数の前記排水溝は、前記液切りロールの軸方向中央部から一方端に向けて軸方向に対して傾斜して延びる複数の第1溝と、前記液切りロールの軸方向中央部から他方端に向けて前記第1溝と逆方向に傾斜して延びる複数の第2溝とを備えることが好ましく、前記第1溝および第2溝は、前記液切りロールの軸方向中央部において、軸方向にオーバーラップしつつ互いに分断されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ウエブを低張力で搬送しつつ、液切りを確実に行うことができるウエブ搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るウエブ搬送装置の概略構成図である。
図2図1に示すウエブ搬送装置が備える液切りロールの平面図である。
図3図2のA-A断面の要部拡大図である。
図4図3に示す排水溝を説明するための模式図である。
図5】液切りロールの変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るウエブ搬送装置の概略構成図である。図1に示すウエブ搬送装置1は、エッチング装置に組み込まれたものであり、帯状のガラスフィルム、金属フィルム、樹脂フィルム等からなるウエブ50を、ロールトゥロール方式により2つの処理槽60に順次搬送して、エッチング処理を行うことができる。処理槽60の数は、特に限定されるものではなく、単一あるいは3つ以上であってもよい。
【0014】
ウエブ搬送装置1は、繰出ロール2から繰り出されたウエブ50を、処理槽60に貯留されたエッチング液からなる処理液61の液面下に案内するガイドロール10と、ガイドロール10により案内されて処理液61に浸漬されたウエブ50をエッチング液61から引き上げる引上ロール20と、引上ロール20により引き上げられたウエブ50に付着する処理液の液切りを行う液切りロール30とを備えている。エッチング処理が行われたウエブ50は、巻取ロール4に巻き取られる。ウエブ50の厚みは特に限定されないが、例えば、5~100μmである。
【0015】
液切りロール30は、処理液61の液面Lよりも上方で、引上ロール20の搬送方向上流側に配置されており、上昇するウエブ50に対して外周面が所定の抱き角で液膜を介して近接する。抱き角とは、ウエブ50が液切りロール30の外周面に液膜を介して接触する円弧状部分の中心角であり、例えば3~30度であり、より好ましくは5~15度であるが、必ずしもこの角度範囲に限定されるものではない。液切りロール30は、ウエブ50との近接箇所における水平軸周りの回転方向が、ウエブ50の移動方向と逆方向となるように回転駆動される。
【0016】
本実施形態においては、各処理槽60に対して、処理液61の液面Lと引上ロール20との間に液切りロール30を2つ配置し、それぞれがウエブ50の両面に接触して液切りを行うように構成しているが、引上ロール20を1つだけ配置して、ウエブ50の一方面(例えば、引上ロール20と接触する面)のみ液切りを行ってもよい。液切りロール30は、ゴムロール等の弾性ロールであることが好ましいが、金属ロール等であってもよい。ゴムロールを使用する場合には、ゴム硬度が70度以下のものを好ましく使用することができる。
【0017】
図2は、図1に示す液切りロール30の平面図である。図2に示すように、液切りロール30の外周面には、複数の排水溝31が形成されている。排水溝31は、液切りロール30の軸方向中央部から一方端に向けて軸線Cに対して傾斜して延びる複数の第1溝32と、液切りロール30の軸方向中央部から他方端に向けて傾斜して延びる複数の第2溝33とを備えている。第1溝32および第2溝33は、液切りロール30の軸方向中央部において、軸方向にオーバーラップしつつ互いに分断されている。
【0018】
第1溝32および第2溝33は、液切りロール30の端部側よりも中央側が回転方向下流側となるように、軸線Cに対して互いに逆方向に傾斜しており、ウエブに付着した処理液を収容して、液切りロール30の中央部から両端部に向けてそれぞれ案内して排出する。第1溝32および第2溝33は、液切りロール30の表面を展開した状態で、いずれも直線状である。この展開状態において、液切りロール30の軸線Cに対する第1溝32および第2溝33の角度αは、第1溝32および第2溝33が軸線Cの方向に一致する場合を0度とすると、0度以上で90度未満であることが好ましく、45~60度であることがより好ましい。第1溝32および第2溝33は、いずれも液切りロール30の周方向に沿って等間隔に複数配置されている。
【0019】
図3は、図2のA-A断面の要部拡大図であり、図4は、図3に示す排水溝31を模式的に示す図である。図3に示す排出溝31は、図2に示す第1溝32に対応しているが、第2溝33も第1溝32と同様の断面形状を有している。本実施形態においては、第1溝32および第2溝33の断面形状を矩形状としているが、三角形状など他の形状であってもよい。
【0020】
図4に示すように、各排出溝31は、液切りロール30の接線方向Gに対する回転方向下流側の内壁面のなす角度βが鋭角となるように形成されており、この部分に掻取部32が設けられている。図3および図4に示すように、ウエブ50に付着して液切りロール30の外周面との隙間Sに介在する処理液は、ウエブ50の移動方向Dに対して液切りロール30が逆方向(回転方向F)に回転することにより、掻取部32で掻き取られて、矢示Eで示すように排出溝31内に収容される。但し、上記の角度βは、必ずしも鋭角に限定されるものではなく、接線方向Fに対して直角または鈍角であってもよい。
【0021】
液切りロール30とウエブ50との隙間Sに介在する処理液は、液切りロール30に対するウエブ50の相対移動によって排出溝31に連続的に押し込まれ、排出溝31内を液切りロール30の軸方向中央部から両端部に向けて移動しながら落下し、処理槽60に向けて排水される。こうして、ウエブ50に作用する搬送張力が低い場合であっても、ウエブ50に付着した処理液の液切りを確実に行うことができる。
【0022】
図4に示す排水溝31の周方向の幅wは、大きすぎると、排水溝31へのウエブ50の落ち込みが過大になるために、ウエブ50が排水溝31の開口縁部との当接によって損傷し易くなる一方、小さすぎると、処理液が排水溝31に収容され難くなる。したがって、排水溝31の周方向の幅Wは、50~2000μmであることが好ましい。
【0023】
また、図4に示す排水溝31の径方向の深さdは、幅wに応じて適宜設定可能であるが、小さすぎると、隙間Sに介在する処理液を十分収容できないおそれがある一方、大きすぎると、加工が困難になり易いことから、排水溝31の周方向の幅Wの1~5倍程度であることが好ましい。
【0024】
排水溝31の断面積は、液切りロール30に対するウエブ50の相対移動によりウエブ50に付着する処理液が排水溝31を通過する際に、この処理液を排水溝31に確実に収容可能な大きさを確保することが好ましい。具体的には、液切りロール30とウエブ50との隙間Sの高さを、隙間Sに液体が介在する場合の浮上量hとして、下記の式(1)により算出する。式(1)において、Rは液切りロール30の半径、ηは処理液の粘性係数、Uはウエブ50の搬送速度と液切ロール30の表面速度との合計、Tはウエブ50の張力である。
h=0.643R(6ηU/T)2/3 ・・・ (1)
【0025】
複数の排水溝31が一定のピッチpで形成されている場合、各排水溝31の断面積をp×hよりも大きくすることで、ウエブ50に付着する処理液の全てを排水溝31に収容して排出することができる。1ピッチp分の処理液が、ウエブ50と液切りロール30との抱き角の範囲で、排水溝31を複数回通過することで、処理液の排水をより確実に行うことができる。
【0026】
本実施形態の排水溝31は、液切りロール30の軸方向中央部において軸方向にオーバーラップしつつ互いに分断された第1溝32および第2溝33を備えることにより、液切りロール30の軸方向中央部においてもウエブ50に処理液を残留させることなく確実に液切りを行うことが可能である。但し、水切ロール30の排水溝31の平面視形状は、必ずしも本実施形態のものには限定されない。例えば、図5(a)に示すように、排水溝31を構成する第1溝32および第2溝33の端部同士が液切りロール30の軸方向中央部で接合されて、平面視V字型のダブルヘリカル状に形成されたものであってもよく、この場合も、排水溝31に収容された処理液を、水切ロール30の中央部から軸方向両側に向けて確実に排出することができる。あるいは、図5(b)に示すように、水切ロール30の軸方向の一方端から他方端に向けて一方向に傾斜する形状であってもよく、排水溝31に収容された処理液を、水切ロール30の軸方向一方側から他方側に向けて確実に排出することができる。図5(a)および(b)に示す排水溝31についても、液切りロール30の軸線Cに対する角度αは、0度以上90度未満であることが好ましい。
【0027】
本実施形態のウエブ搬送装置1は、エッチング装置に組み込まれた例を示しているが、処理槽に貯留される処理液の液面下に帯状のウエブを案内した後に引き上げて搬送する種々の用途に使用することが可能であり、例えば、めっき槽に貯留されためっき液にウエブを搬送する装置として使用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 ウエブ搬送装置
10 ガイドロール
20 引上ロール
30 水切ロール
31 排水溝
32 第1溝
33 第2溝
50 ウエブ
60 処理槽
61 処理液
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-08-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽に貯留される処理液の液面下に帯状のウエブを案内するガイドロールと、
前記ガイドロールにより案内されたウエブを処理液から引き上げる引上ロールと、
前記引上ロールにより引き上げられたウエブに付着する処理液の液切りを行う液切りロールとを備えるウエブ搬送装置であって、
前記液切りロールは、ウエブとの間に介在する処理液を収容して排水する複数の排水溝が外周面に形成されており、ウエブとの近接箇所における回転方向がウエブの移動方向と逆方向であり、
複数の前記排水溝は、前記液切りロールの軸方向中央部から一方端に向けて軸線に対して傾斜して延びる複数の第1溝と、前記液切りロールの軸方向中央部から他方端に向けて前記第1溝と逆方向に傾斜して延びる複数の第2溝とを備えており、
前記第1溝および第2溝は、前記液切りロールの軸方向中央部において、軸方向にオーバーラップしつつ互いに分断されているウエブ搬送装置。
【請求項2】
前記排水溝の周方向の幅は、50~2000μmである請求項1に記載のウエブ搬送装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の前記目的は、処理槽に貯留される処理液の液面下に帯状のウエブを案内するガイドロールと、前記ガイドロールにより案内されたウエブを処理液から引き上げる引上ロールと、前記引上ロールにより引き上げられたウエブに付着する処理液の液切りを行う液切りロールとを備えるウエブ搬送装置であって、前記液切りロールは、ウエブとの間に介在する処理液を収容して排水する複数の排水溝が外周面に形成されており、ウエブとの近接箇所における回転方向がウエブの移動方向と逆方向であり、複数の前記排水溝は、前記液切りロールの軸方向中央部から一方端に向けて軸線に対して傾斜して延びる複数の第1溝と、前記液切りロールの軸方向中央部から他方端に向けて前記第1溝と逆方向に傾斜して延びる複数の第2溝とを備えており、前記第1溝および第2溝は、前記液切りロールの軸方向中央部において、軸方向にオーバーラップしつつ互いに分断されているウエブ搬送装置により達成される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】