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特開2024-93111光学積層体、表示装置、ディスプレイ、光学積層体の製造方法
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  • 特開-光学積層体、表示装置、ディスプレイ、光学積層体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093111
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】光学積層体、表示装置、ディスプレイ、光学積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/115 20150101AFI20240702BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20240702BHJP
   C23C 14/10 20060101ALI20240702BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20240702BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20240702BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G02B1/115
G02B1/14
C23C14/10
C23C14/06 A
C23C14/08 E
C23C14/08 J
C23C14/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209277
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100141999
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 敬一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 崚
(72)【発明者】
【氏名】石森 拓
(72)【発明者】
【氏名】徳竹 房重
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 廉
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 匡明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 嗣人
【テーマコード(参考)】
2K009
4K029
【Fターム(参考)】
2K009AA02
2K009AA15
2K009BB28
2K009CC02
2K009CC03
2K009CC09
2K009CC24
2K009DD04
4K029AA11
4K029BA43
4K029BA46
4K029BA48
4K029BA60
4K029CA05
4K029CA06
4K029DC03
4K029DC05
4K029DC12
4K029EA01
4K029EA03
4K029EA04
4K029EA05
(57)【要約】
【課題】ディスプレイ消灯時の黒色度を向上させ、また、汎用的な静電容量式のタッチパネルを備えたディスプレイに適用した場合にも、その動作を阻害しない反射防止フィルムとして有用な光学積層体、及び当該光学積層体を備えた表示装置、並びに光学積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】この光学積層体は、透明基材と、第一の高屈折率層と、第一の低屈折率層と、第二の高屈折率層と、第二の低屈折率層とをこの順に備える光学積層体であって、さらに前記第一の高屈折率層に接する位置と、前記第二の高屈折率層に接する位置と、の少なくとも一方に透過率調整層を備え、シート抵抗が10Ω/□以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、第一の高屈折率層と、第一の低屈折率層と、第二の高屈折率層と、第二の低屈折率層と、をこの順に備える光学積層体であって、
さらに前記第一の高屈折率層に接する位置と、前記第二の高屈折率層に接する位置と、の少なくとも一方に透過率調整層を備え、
シート抵抗が10Ω/□以上である、光学積層体。
【請求項2】
視感反射率が1%以下であり、視感透過率が30~85%である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記透過率調整層が、前記第一の低屈折率層と、前記第二の高屈折率層と、に挟持されている、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記透過率調整層がチタン化合物からなり、
X線光電分光法のナロースペクトル測定に於ける、前記透過率調整層のTiNとTiOの合計値が50%以下である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項5】
X線光電分光法のナロースペクトル測定に於ける、前記透過率調整層のTiOの値が20%以下である、請求項4に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記第一の高屈折率層及び前記第二の高屈折率層は、Nbで構成され、
前記第一の低屈折率層及び前記第二の低屈折率層は、SiOで構成されている、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記透明基材に接するハードコート層をさらに備える、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項8】
前記第一の高屈折率層の前記透明基材に近い側の面に接する密着層をさらに備える、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の光学積層体を備えた、表示装置。
【請求項10】
請求項9に記載の表示装置を備え、タッチパネルが搭載されている、ディスプレイ。
【請求項11】
高屈折率層と、低屈折率層と、前記高屈折率層と接する透過率調整層と、を備える光学積層体の製造方法であって、
金属ターゲットを用いて、不活性ガスと酸素と窒素の混合ガス下にてスパッタリングを行なう、透過率調整層形成工程を有する、光学積層体の製造方法。
【請求項12】
前記金属ターゲットとして、チタン、ニオブ、タンタル、クロム、アルミニウム、スズ、マンガン、モリブデン、タングステン、鉄、及びゲルマニウムからなる群から選択されるいずれかの金属又は合金を用いる、請求項11に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項13】
前記透過率調整層形成工程において、不活性ガスと窒素ガスと酸素ガスの合計流量に対する酸素ガスの割合は1.5%以上8.0%以下である、請求項11に記載の光学積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体、およびこれを備えた表示装置、ディスプレイ、光学積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ等に於いて、表面の反射防止用に光学積層体が設けられる。反射防止用の光学積層体にあっては、透明な基材に、金属酸化物や金属窒化物などの材料からなる高屈折率層と、高屈折率層より低屈折率の材料を用いた低屈折率層を相互に積層した多層膜を備えたものが知られている。
【0003】
ところで、フラットパネルディスプレイの用途として、自動車などの輸送機器のメーターパネルやセンターコンソールに設けられるディスプレイが挙げられる。この用途では、ディスプレイ(表示部)と、ディスプレイの周囲に設けられる額縁部との間で色相の統一感が求められることがある。額縁部の色としては黒が多く用いられ、消灯状態にあるディスプレイも黒いほうが好まれる。この時、額縁部とディスプレイの色の差は小さいほうが好ましい。
【0004】
消灯時のディスプレイの色相を黒に近づけるためには、ディスプレイの透過率を敢えて低下させる方法がある。光学基材に於いて、透過率を低下させるために各種の方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【0005】
特許文献1には、Mo及びWからなるA群から選択される少なくとも1つの酸化物と、Si、Nb、Ti、Zr、Ta、Al、Sn及びInからなるB群から選択される少なくとも1つの酸化物、の混合酸化物を透過率制御膜として積層させた反射防止膜が記載されている。
特許文献2には、窒化チタン膜を透過率制御膜として積層させた反射防止膜が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第7052361号公報
【特許文献2】特開平10-186103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のような反射防止膜は、透過率を調整するために、2種類以上の金属元素の化合物からなる層を備えているが、複数種類の金属元素を含有するため、コスト、製造プロセス面で不利である。
【0008】
特許文献2のように窒化チタンからなる層を備える光学基材を特に広く用いられている静電容量型のタッチパネルと組み合わされたディスプレイに用いると、その導電性により接触した際の静電容量の変化が保存されず、タッチパネルが動作しなくなってしまう。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされた発明であり、ディスプレイ消灯時の黒色度を向上させ、また、汎用的な静電容量式のタッチパネルを備えたディスプレイに適用した場合にも、その動作を阻害しない反射防止フィルムとして有用な光学積層体、及び当該光学積層体を備えた表示装置、ディスプレイ、並びに該光学積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を提供する。
【0011】
(1)本発明の一態様に係る光学積層体は、透明基材と、第一の高屈折率層と、第一の低屈折率層と、第二の高屈折率層と、第二の低屈折率層とをこの順に備える光学積層体であって、さらに前記第一の高屈折率層に接する位置と、前記第二の高屈折率層に接する位置と、の少なくとも一方に透過率調整層を備え、シート抵抗が10Ω/□以上である。
【0012】
(2)上記(1)の光学積層体は、視感反射率が1%以下であり、視感透過率が30~85%であってもよい。
【0013】
(3)上記(1)又は(2)の光学積層体において、前記透過率調整層が、前記第一の低屈折率層と、前記第二の高屈折率層と、に挟持されていてもよい。
【0014】
(4)上記(1)~(3)のいずれかに記載の光学積層体において、前記透過率調整層がチタン化合物からなり、X線光電分光法のナロースペクトル測定に於ける、前記透過率調整層のTiNとTiOの合計値が50%以下であってもよい。
【0015】
(5)上記(1)~(4)のいずれかに記載の光学積層体において、X線光電分光法のナロースペクトル測定に於ける、前記透過率調整層のTiOの値が20%以下であってもよい。
【0016】
(6)上記(1)~(5)のいずれかに記載の光学積層体において、前記第一の高屈折率層及び前記第二の高屈折率層は、Nbで構成され、前記第一の低屈折率層及び前記第二の低屈折率層は、SiOで構成されていてもよい。
【0017】
(7)上記(1)~(6)のいずれかに記載の光学積層体は、前記透明基材に接するハードコート層をさらに備えていてもよい。
【0018】
(8)上記(1)~(7)のいずれかに記載の光学積層体は、前記第一の高屈折率層の前記透明基材に近い側の面に接する密着層をさらに備えていてもよい。
【0019】
(9)本発明の一態様に係る表示装置は、上記態様に係る光学積層体を備える。
【0020】
(10)本発明の一態様に係るディスプレイは、上記態様に係る表示装置を備え、タッチパネルが搭載されている。
【0021】
(11)本発明の一態様に係る光学積層体の製造方法は、高屈折率層と、低屈折率層と、前記高屈折率層と接する透過率調整層と、を備える光学積層体の製造方法であって金属ターゲットを用いて、不活性ガスと酸素と窒素の混合ガス下にてスパッタリングを行なう、透過率調整層形成工程を有する。
【0022】
(12)上記(11)の光学積層体の製造方法は、前記金属ターゲットとして、チタン、ニオブ、タンタル、クロム、アルミニウム、スズ、マンガン、モリブデン、タングステン、鉄、及びゲルマニウムからなる群から選択されるいずれかの金属又は合金を用いてもよい。
【0023】
(13)上記(11)又は(12)の光学積層体の製造方法は、前記透過率調整層形成工程において、不活性ガスと窒素ガスと酸素ガスの合計流量に対する酸素ガスの割合は1.5%以上8.0%以下であってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ディスプレイ消灯時の黒色度を向上させ、また、汎用的な静電容量式のタッチパネルを備えたディスプレイに適用した場合にも、その動作を阻害しない反射防止フィルムとして有用な光学積層体、及び当該光学積層体を備えた表示装置、ディスプレイ、並びに光学積層体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る光学積層体の構成の一例を示す断面図である。
図2図1の光学積層体の変形例の断面図である。
図3図1の光学積層体の変形例の断面図である。
図4図1の光学積層体の変形例の断面図である。
図5図1の光学積層体の変形例の断面図である。
図6図5の光学積層体の変形例の断面図である。
図7図7(a)は、実施例1の試験体の表示部及び額縁部の色相差を示す図であり、図7(b)は、比較例4の試験体の表示部及び額縁部の色相差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材質、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。各図において、同様の構成は、同様の符号を付し、説明を省略する。
【0027】
[光学積層体]
図1は、本発明の一実施形態に係る光学積層体の断面図である。
図1に示される光学積層体100は、透明基材11、第一の高屈折率層14a、第一の低屈折率層15a、第二の高屈折率層14b、第二の低屈折率層15bをこの順に備える光学積層体であって、さらに第一の高屈折率層14aに接する位置と、第二の高屈折率層14bに接する位置と、の少なくとも一方に透過率調整層16を備え、シート抵抗が10Ω/□以上である。本実施形態において、第一の高屈折率層14a、第一の低屈折率層15a、第二の高屈折率層14b、第二の低屈折率層15bをこの順に備えるとは、それぞれの層が直接接するように積層される構成、及び、他の層を介して積層される構成のいずれも包含する。
【0028】
光学積層体100において、透過率調整層16は、第一の低屈折率層15a及び第二の高屈折率層14bに接する位置に配列されている。すなわち、透過率調整層16は、第一の低屈折率層15a及び第二の高屈折率層14bに挟持されている。第一の低屈折率層15a及び第二の高屈折率層14bに透過率調整層16が挟持されて光学積層体は、製造プロセスが簡便になるため好ましい。
【0029】
本実施形態では、第一の高屈折率層14a及び第二の高屈折率層14bを含む高屈折率層、第一の低屈折率層15a及び第二の低屈折率層15bを含む低屈折率層、並びに透過率調整層で構成された多層膜を光学機能多層膜20と呼称する。本実施形態において、第一の高屈折率層14a及び第二の高屈折率層14bを区別しない場合、総称して高屈折率層14という。同様に、第一の低屈折率層15a及び第二の低屈折率層15bを区別しない場合、総称して低屈折率層15という。
【0030】
図2は、図1の光学積層体の変形例を示す断面図である。
図2に示される光学積層体101は、透明基材11、ハードコート層12、密着層13、第一の高屈折率層14a、第一の低屈折率層15a、透過率調整層16、第二の高屈折率層14b、第二の低屈折率層15b、及び防汚層17が、この順に積層されてなるものである。
【0031】
図3は、図1の光学積層体の変形例を示す断面図である。
図3に示される光学積層体102は、光学機能多層膜20Bの配列が、光学積層体101の光学機能多層膜20の配列と異なっている。光学機能多層膜20Bにおいて、透過率調整層16は、第二の高屈折率層14b及び第二の低屈折率層15bに挟持されている。
【0032】
図4は、図1の光学積層体の変形例を示す断面図である。
図4に示される光学積層体103は、光学機能多層膜20Cの配列が、光学積層体101の光学機能多層膜20の配列と異なっている。光学機能多層膜20Cにおいて、透過率調整層16は、第一の高屈折率層14a及び第一の低屈折率層15aに挟持されている。
【0033】
図5は、図1の光学積層体の変形例を示す断面図である。
図5に示される光学積層体104は、光学機能多層膜20Dの配列が、光学積層体101の光学機能多層膜20の配列と異なっている。光学機能多層膜20Dは、第一の高屈折率層14aと接する位置に設けられた第一の透過率調整層16a及び第二の高屈折率層14bと接する位置に設けられた第二の透過率調整層16bを備える。第一の透過率調整層16a及び第二の透過率調整層16bは、例えば、同じ材料で構成されている。第二の透過率調整層16bの厚みは、例えば、第一の透過率調整層16aの厚み以上であり、第一の透過率調整層16aの厚みの倍以上であることが好ましい。本実施形態において、第一の透過率調整層16a及び第二の透過率調整層16bを区別しない場合、総称して透過率調整層16という。
【0034】
図6は、図5の光学積層体の変形例を示す断面図である。
図6に示される光学積層体105は、光学機能多層膜20Eの配列が、光学積層体104の光学機能多層膜20Dの配列と異なっている。光学機能多層膜20Eにおいて、第二の透過率調整層16bは、第二の高屈折率層14b及び第二の低屈折率層15bの間に配列されている。
【0035】
上記のように、光学積層体の光学機能多層膜は、複数の高屈折率層、複数の低屈折率層、及び上記複数の高屈折率層のいずれかに接する透過率調整層を備えており、複数の高屈折率層に含まれる高屈折率層及び複数の低屈折率層に含まれる低屈折率層は、直接又は他の層を介して交互に積層されている。高屈折率層及び低屈折率層の積層数は、2層以上の任意の層数である。光学機能多層膜には、少なくとも一つの透過率調整層16が備えられており、その位置は、高屈折率層と接する位置であれば、任意の位置であり、好ましくは、第一の低屈折率層15a及び第二の高屈折率層14bに挟持される位置に設けられている。
以下、図2に示される光学積層体101を例に本実施形態について説明する。なお、以下の記載で、厚みに係る記載は光学厚みでなく物理的な厚みである。
【0036】
透明基材11は、可視光波長域の光を透過可能な透明材料から形成されればよく、例えば、可視光線の透過率が88%以上の高分子フィルムが好適に用いられる。高分子フィルムの構成材料の具体例としては、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、が挙げられる。
【0037】
より具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアラミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリシクロオレフィン(COC、COP)などが挙げられる。
【0038】
透明基材11の厚みは、特に限定されないが、例えば、20μm以上、1000μm以下の範囲であることが好ましい。透明基材11の厚みが20μm以上であると、基材自体の剛性が確保され、光学積層体101に応力が加わっても皺が発生し難くなる。
【0039】
ロールtoロールで光学積層体101を製造する場合、透明基材11の厚みが1000μm以下であると、製造途中の光学積層体101および製造後の光学積層体101をロール状に巻きつけやすく、効率良く光学積層体101を製造できる。また、透明基材11の厚みが1000μm以下であると、光学積層体101の薄膜化、軽量化が可能となる。透明基材11の厚みが600μm以下であると、より効率良く光学積層体101を製造できるとともに、より一層の薄膜化、軽量化が可能となり、好ましい。
【0040】
光学特性を著しく損なわない限りにおいて、透明基材11には補強材料が含まれていても良く、例えば、セルロースナノファイバー、ナノシリカ等が挙げられる。特に、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。具体的には、トリアセチルセルロース(TAC)基材が好適に用いられる。
【0041】
なお、透明基材11は、光学的機能や物理的機能が付与されたフィルムであっても良い。光学的機能や物理的機能を有する基材の例としては、例えば、偏光板、位相差補償フィルム、熱線遮断フィルム、輝度向上フィルム、バリア性向上フィルムなどが挙げられる。
【0042】
ハードコート層12は、透明基材11に接する。ハードコート層12としては、公知のものを用いることができ、ハードコート層12が設けられることにより、反射防止フィルムの硬度や弾性率等の機械特性を向上できる。ハードコート層12は、バインダー樹脂のみからなるものであってもよいし、バインダー樹脂とともに、透明性を損なわない範囲でフィラーを含むものであってもよい。フィラーとしては、有機物からなるものを用いてもよいし、無機物からなるものを用いてもよいし、有機物および無機物からなるものを用いてもよい。
【0043】
ハードコート層12に用いられるバインダー樹脂としては、透明性のものが好ましく、例えば、紫外線、電子線により硬化する樹脂である電離放射線硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などを用いることができる。
【0044】
ハードコート層12の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.5μm以上であることが好ましく、より好ましくは1μm以上である。ハードコート層12の厚みは、100μm以下であることが好ましい。ハードコート層12の厚みが0.5μm以上であると、十分な硬度が得られるため、製造上のひっかき傷が発生し難くなる。また、ハードコート層12の厚みが100μm以下であると、光学積層体の薄膜化、軽量化が可能となる。また、ハードコート層12の厚みが100μm以下であると、製造途中の光学積層体が曲がった際に発生するハードコート層12のマイクロクラックが生じにくく、生産性が良好となる。
【0045】
ハードコート層12は、単一の層であってもよく、複数の層が積層されたものであってもよい。また、ハードコート層12には、例えば、紫外線吸収性能、屈折率調整機能、硬度調整機能など公知の機能が更に付与されていてもよい。
また、ハードコート層12に付与される機能は、単一のハードコート層中に付与されていてもよいし、複数の層に分割して付与されていてもよい。
【0046】
密着層13は、透明基材11またはハードコート層12と光学機能多層膜20との密着性を向上させるために形成する層である。密着層13は、例えば、第一の高屈折率層14aの透明基材11に近い側の面に接する。密着層13は、例えば、酸素欠損状態の金属酸化物もしくは金属からなるものであることが好ましい。酸素欠損状態の金属酸化物とは、化学量論組成よりも酸素数が不足した状態の金属酸化物をいう。酸素欠損状態の金属酸化物としては、例えば、SiOx、AlOx、TiOx、ZrOx、CeOx、MgOx、ZnOx、TaOx、SbOx、SnOx、MnOxなどが挙げられる。また、金属としては、Si、Al、Ti、Zr、Ce、Mg、Zn、Ta、Sb、Sn、Mn、Inなどが挙げられる。密着層は、例えば、SiOxにおけるxが、0を超え2.0未満であるものであってもよい。
【0047】
密着層13の厚みは、透明性を維持し、良好な光学特性を得る観点から、例えば、0.1nm超え20nm以下であることが好ましく、1nm以上10nm以下であることが特に好ましい。
【0048】
光学機能多層膜20は、光学機能を発現させる層である。ここでいう光学機能とは、光の性質である反射と透過、屈折をコントロールする機能であり、例えば、反射防止機能、選択反射機能、防眩機能、レンズ機能などが挙げられる。
光学機能多層膜20は、反射防止層、選択反射層、防眩などであればよい。本実施形態においては、光学機能多層膜20は、反射防止機能を発現させる層である。
【0049】
高屈折率層14としては、例えば、五酸化ニオブ(Nb、屈折率2.33)、二酸化チタン(TiO、屈折率2.49)、酸化タングステン(WO、屈折率2.2)、酸化セリウム(CeO、屈折率2.2)、五酸化タンタル(Ta、屈折率2.16)、酸化亜鉛(ZnO、屈折率2.1)、酸化ジルコニウム(ZrO、屈折率2.2)などを用いることができる。高屈折率層14としては、五酸化ニオブまたは二酸化チタンからなる層を用いることが好ましい。汎用性やコストの点では五酸化ニオブからなる層が好ましく、二酸化チタンからなる層であれば、製造過程でターゲットの数を少なくすることが出来るため好ましい。
【0050】
また、高屈折率層14の膜厚は、例えば、1nm以上200nm以下であり、反射防止機能を必要とする波長域や透過率調整層の構成に応じて適宜選択される。詳細を後述する通り、高屈折率層14の膜厚は視感透過率の設計値を得るために必要な透過率調整層16の膜厚に依存する。これは、透過率調整層16が高屈折率層14の屈折率を考慮して設計された層であり、高屈折率層14の屈折率に近い屈折率を有することが好ましく、透過率調整層16は高屈折率層14と同じく高屈折率層の膜として機能するためである。
【0051】
第一の高屈折率層14aの厚みは、1nm以上、40nm以下であることが好ましく、1nm以上、30nm以下であることがより好ましい。ただし、図5のように第一の高屈折率層14aに接して透過率調整層16が設けられている場合、該第一の高屈折率層14aと透過率調整層16の厚みの合計値が、1nm以上、40nm以下であることが好ましく、2nm以上、30nm以下であることがより好ましい。第二の高屈折率層14bの厚みは視感透過率の設計値を得るために必要な透過率調整層16の厚みを決定した上で選択され、該第二の高屈折率層14bに接する透過率調整層16との厚みの合計値が、例えば、50nm以上、140nm以下であることが好ましく、60nm以上、130nm以下になることがより好ましい。第二の高屈折率層14bと該第二の高屈折率層14bに接する透過率調整層16の厚みの合計値は、第一の高屈折率層14aの厚みより大きいことが好ましく、第一の高屈折率層14aの厚みの1.5倍以上であることがより好ましい。
尚、図5図6のように第一の高屈折率層14aに接する第一の透過率調整層16a及び第二の高屈折率層14bに接する第二の透過率調整層16bが設けられている場合、第二の高屈折率層14bと該第二の高屈折率層14bに接する第二の透過率調整層16bの厚みの合計値は、第一の高屈折率層14aと第一の透過率調整層16aの厚みの合計値の1.5倍以上であることが好ましい。
【0052】
低屈折率層15は、入手の容易さとコストの点からSiの酸化物を含むことが好ましく、SiO(Siの二酸化物)等を主成分とした層であることが好ましく、SiO2で構成されていることが好ましい。SiO単層膜は、無色透明である。例えば、低屈折率層15は、SiOを50質量%以上含んでいればよい。
【0053】
低屈折率層15は、SiO以外にも、例えば、耐久性向上の目的でNa、硬度向上の目的でZr、Al、またN、耐アルカリ性向上の目的で、Zr、Alを含有することも好ましい。
【0054】
低屈折率層15の屈折率は、好ましくは1.20~1.60であり、より好ましくは1.30~1.50である。
また、低屈折率層15の膜厚は、1nm以上200nm以下の範囲であればよく、反射防止機能を必要とする波長域に応じて適宜選択される。
【0055】
第一の低屈折率層15aの厚みは、5nm以上100nm以下であることが好ましく、15nm以上80nm以下であることがより好ましい。第二の低屈折率層15bの厚みは、50nm以上120nm以下であることが好ましく、60nm以上110nm以下であることがより好ましい。第二の低屈折率層15bの厚みは、第一の低屈折率層15aの厚みより大きいことが好ましく、第一の低屈折率層15aの厚みの1.5倍以上であることがより好ましい。
【0056】
光学機能多層膜20は、上記の通り、高屈折率層14及び低屈折率層15が直接又は他の層を介して交互に積層されている構成である。当該構成によって、表層側から入射した光、例えば、外光は、光学機能多層膜20の内部でその一部が反射し、表面において互いに位相を打ち消すように干渉することで反射が実質的に抑制される。従って、表層側から入射した外光が反射されることを防止する反射防止機能を得られる。
【0057】
透過率調整層16は、例えば、絶縁性を有し、光吸収作用を持ち、屈折率が当該透過率調整層16と接する高屈折率層14に近い材料で構成されている。透過率調整層16は、例えば、チタン、ニオブ、タンタル、クロム、アルミニウム、スズ、マンガン、モリブデン、タングステン、鉄、及びゲルマニウムからなる群から選択される金属化合物で構成されている。用いることのできる金属化合物は、金属の酸化物、窒化物であり、透過率調整層16はこれらの混合物で構成される。透過率調整層16中の金属元素は、Ti又はTaであることが、コストと完成物の耐久性の観点で好ましい。以下、上記混合物を総じてMNy、MON又はMNOと表すこともあるが、X線光電分光法のナロースペクトル測定では単一の化合物ではなく、前述の混合物からなる。式中、Mは、Ti,Nb,Ta,Cr,Al,Sn,Mn,Mo,W,Fe,及びGeからなる群から選択されるいずれかの金属元素であり、Ti又はTaであることが、コストと完成物の耐久性の観点で好ましい。
【0058】
透過率調整層16が金属MとしてTiを含む場合、X線光電分光法のナロースペクトル測定を行うと、例えば、TiN,TiO,Ti及びTiOから選択される組成物が検出される。透過率調整層16において、上記ナロースペクトル測定におけるTiNとTiOの合計値は、例えば、60%以下であり、50%以下であることが好ましく、45%以下であることがより好ましい。上記ナロースペクトル測定におけるTiNとTiOの合計値が過剰であると、タッチパネルを備えたディスプレイに適用した際、タッチパネルを操作できなくなってしまう。このとき、光学積層体101のシート抵抗は、10Ω/□よりも大きい値となる。
【0059】
上記ナロースペクトル測定における透過率調整層16のTiNの値は、例えば、15%以上40%以下であり、20%以上35%以下であることが好ましい。TiNは、透過率が低い一方、導電性の高い組成物である。透過率調整層16においてTiNの含有量を多く含有することで、透過率を小さく抑えることができ、光学積層体101が実装される額縁部及びディスプレイの色相差を抑える効果を得られやすい。また、TiNの含有量が15%以上であることで、他の層との光学的なバランスを確保しやすい。一方、TiNの含有量を少なくすることで、当該透過率調整層16が導電性の低い材料となる。
【0060】
また、上記ナロースペクトル測定における透過率調整層16のTiOの値は、例えば、25%以下であり、20%以下であることが好ましく、14%以下であることがより好ましい。TiOは、導電性であり、吸収特性が悪いことから下限に関する測定限界値の規定が難しいが、検出されなくてもよい。またTiOは、成膜時の窒素、酸素、不活性ガスの混合ガスとTiとの反応によって生じる副次的な生成物である。TiOは、TiNと同様、導電性を有するため、タッチパネルを備えたディスプレイに適用する場合、小さいことが好ましい。
【0061】
上記ナロースペクトル測定における透過率調整層16のTiO及びTiの合計値は、例えば、40%以上70%以下であり、50%以上60%以下であることが好ましい。ここで、透過率調整層16には、TiO及びTiのいずれか一方が含まれていなくてもよい。Ti及びTiOは、TiN及びTiOと比べ、導電性が低く、これらの含有量を上記範囲内にすることで、光学積層体101のシート抵抗を大きくし、光学積層体101を静電容量式のタッチパネルに適用した際にタッチパネルとしての動作を阻害しない効果に繋がる。
【0062】
透過率調整層16の厚みは、例えば、10nm以上160nm以下が好ましく、20nm以上140nm以下であることがより好ましい。
【0063】
透過率調整層16の屈折率は、例えば、2.00~3.00の範囲である。透過率調整層16の屈折率は、隣接する高屈折率層14に近いことが好ましく、隣接する高屈折率層14の屈折率との差が0.3以下であることが好ましく、0.2以下であることがより好ましい。このことにより透過率調整層16は透過率を調整する役割に加えて、高屈折率層14と同様の役割も担う。
【0064】
透過率調整層16は、光学機能多層膜20において、高屈折率層14と接する位置であれば、積層する位置を任意に選択できるが、第一の低屈折率層15a及び第二の高屈折率層14bの間に設けられることが好ましい。透過率調整層16が第一の低屈折率層15a及び第二の高屈折率層14bの間に設けられることで、視感反射率低減の効果を高められるとともに、製造プロセスを効率的にできる。
【0065】
また、図5及び図6に示されるような第一の透過率調整層16a及び第二の透過率調整層を含む複数の透過率調整層16を有する場合、透明基材11から離れた位置の透過率調整層の厚みほど大きいことがから好ましい。例えば、第一の透過率調整層16aの厚みは、1nm以上20nm以下が好ましく、2nm以上10nm以下であることがより好ましい。第二の透過率調整層16bの厚みは、例えば、10nm以上160nm以下が好ましく、20nm以上140nm以下であることがより好ましい。第二の透過率調整層16bの厚みは、第一の透過率調整層16aの厚みより大きいことが好ましく、第一の透過率調整16aの厚みの4倍以上であることがより好ましい。これは、一般的に低屈折率層と高屈折率層が2層ずつ積層した反射防止層の設計において、透明基材11から離れた高屈折率層の方が厚い膜厚の時、視感反射率が低下しやすいためである。
【0066】
防汚層17は、例えば、フッ素変性有機鎖を有するアルコキシシラン化合物からなる被覆層である。フッ素変性有機鎖を有するアルコキシラン化合物として、例えば、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物が挙げられる。パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を用いて、光学機能多層膜20の表面を被覆することにより、光学積層体101の光学機能多層膜20が設けられた側の表面の水接触角が、例えば110度以上の撥水性を示すようになり、防汚性を向上させることができる。
【0067】
防汚層17は、光学機能多層膜20の最外面に形成され、光学機能多層膜20の汚損を防止する。また、防汚層17は、タッチパネル等に適用される際に、耐摩耗性によって光学機能多層膜20の損耗を抑制する。
【0068】
本実施形態の光学積層体は、透明基材11の他面に、選択反射、防眩、偏光、位相差補償、視野角補償又は拡大、導光、拡散、輝度向上、色相調整などの機能を有する層を更に形成しても良い。
【0069】
また、光学機能多層膜20の表面形状は、平滑な形状以外にも、モスアイ、防眩機能を発現するナノオーダーの凹凸構造を有する形状でもよい。また、レンズ、プリズムなどのマイクロからミリオーダーの幾何学形状であっても良い。形状は、例えば、フォトリソグラフィーとエッチングの組み合わせ、形状転写、熱プレス等によって形成できる。本実施形態においては、真空成膜により成膜するため、基材に例えば凹凸形状がある場合でも、その凹凸形状を維持できる。
【0070】
本実施形態に係る光学積層体は、例えば、視感反射率が2%以下であり、1%以下であることが好ましい。本実施形態に係る光学積層体は、例えば、視感透過率が20~90であり、30~85%であることが好ましい。
【0071】
本実施形態に係る光学積層体は、液晶表示パネル、有機表示パネル等の表示装置や、窓ガラス、ゴーグル、太陽電池の受光面、スマートホンの画面やパーソナルコンピューターのディスプレイ、情報入力端末、タブレット端末、AR(拡張現実)デバイス、VR(仮想現実)デバイス、電光表示板、ガラステーブル表面、遊技機、航空機や電車などの運行支援装置、ナビゲーションシステム、計器盤、光学センサーの表面などに適用可能である。
【0072】
上記光学積層体を備えた表示装置によれば、額縁及びディスプレイの色相差を小さくすることができる。また、上記光学積層体を備えたタッチディスプレイによれば、額縁及びディスプレイの色相差を小さくするとともに、タッチパネルの動作が阻害されず、高い感度を示す。
【0073】
[光学積層体の製造方法]
次に、上記実施形態に係る光学積層体の製造方法について説明する。
本実施形態に係る光学積層体の製造方法は、高屈折率層と、低屈折率層と、該高屈折率層と接する透過率調整層と、を備える光学積層体の製造方法であって、金属ターゲットを用いて、不活性ガスと酸素と窒素の混合ガス下にてスパッタリングを行なう、透過率調整層形成工程を有する。
【0074】
以下、ロール状に巻き付けられた透明基材を用いて光学積層体を製造してロール状に巻き取る、いわゆるロールtoロール方式のものを例に挙げて、本実施形態に係る光学積層体の製造方法を説明するが、バッチ式の製造方法であってもよい。
【0075】
先ず、ロール状に巻き付けられた透明基材を巻き出す。そして、図2図6に示されるような、ハードコート層を有する光学積層体を形成する場合、公知の方法により透明基材上にハードコート層となる材料を含むスラリーを塗布し、ハードコート層となる材料に対応する公知の方法により硬化させる。このことにより、ハードコート層を形成する(ハードコート層形成工程)。その後、表面にハードコート層の形成された透明基材を、公知の方法によりロール状に巻き取る。
【0076】
次に、ハードコート層上に密着層を形成する密着層形成工程を行う。
次に、密着層上に光学機能多層膜を形成する。光学機能多層膜を形成する工程は、高屈折率層を形成する高屈折率層形成工程、低屈折率層を形成する低屈折率層形成工程、及び透過率調整層を形成する、透過率調整層形成工程を有する。高屈折率層形成工程、低屈折率層形成工程、及び透過率調整工程は、所望の光学機能多層膜の配列に対応した順序で行う。ここで、上記実施形態に係る光学積層体は、透過率調整層が高屈折率層に接する構成であるため、透過率調整層形成工程を高屈折率層形成工程の直前、又は、直後に行う。
次に、光学機能多層膜上に防汚層を形成する、防汚層形成工程を行う。
【0077】
本実施形態に係る光学積層体の製造方法において、密着層形成工程、高屈折率層形成工程、低屈折率層形成工程、透過率調整工程は、蒸着やスパッタリング等のドライプロセスによって成膜を行う。例えば、スパッタリング装置を用いて、それぞれの層を構成する材料を含むターゲットに電圧を印加し、所定の反応性ガス及びプラズマを生成するアルゴンガスを所定の流量で供給することにより、それぞれの層を形成することができる。
【0078】
例えば、透過率調整層形成工程では、チタン、ニオブ、タンタル、クロム、アルミニウム、スズ、マンガン、モリブデン、タングステン、鉄、及びゲルマニウムからなる群から選択される金属又は合金をスパッタリングターゲットとし、アルゴン等の不活性ガス、窒素、及び酸素の混合ガス環境下で、スパッタリングを行って成膜を行うことが、形成する透過率調整層が所望の組成となるように制御しやすいため好ましい。透過率調整層形成工程をスパッタリング法により行う場合、混合ガス中の窒素ガスと酸素ガスの合計流量に対する酸素ガスの流量割合は、例えば4%以上、21%以下であり、5%以上、16%以下であることが好ましい。このとき、混合ガス中の不活性ガス、窒素ガス及び酸素ガスの合計流量に対する酸素ガスの流量割合は、例えば、1.5%以上、8%以下が好ましく、2.0%以上、6%以下であることがより好ましい。
【0079】
上記工程を経ることにより、上記実施形態に係る光学積層体が製造される。
【0080】
本実施形態に係る光学積層体によれば、透明基材11と、第一の高屈折率層14a、第一の低屈折率層15a、第二の高屈折率層14b、及び第二の低屈折率層15bをこの順に備える光学積層体において、さらに第一の高屈折率層14aに接する位置と、第二の高屈折率層14bに接する位置と、の少なくとも一方に透過率調整層16を備え、シート抵抗が10Ω/□以上であることで、反射防止膜としての十分な光学特性を得られるとともに、ディスプレイ消灯時の黒色度を向上させ、また、汎用的な静電容量式のタッチパネルを備えたディスプレイに適用した場合にも、その動作を阻害しない反射防止フィルムとして有用なものを提供することができる。
【実施例0081】
以下、本発明の実施例を説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0082】
[実施例1]
先ず、厚さ80μmの透明基材(TAC)に酸化ケイ素微粒子を含むアクリル樹脂製被膜(ハードコート層)を4μm厚で形成したロール状の樹脂フィルムを用意した。次いで、ロールtoロール方式で、以下に示す方法により、スパッタリング装置を用いてこのハードコート層が形成された透明基材上に、密着層を形成する工程並びに光学機能多層膜を形成する工程を行った。
【0083】
密着層を形成する工程並びに光学機能多層膜を形成する工程で用いたスパッタリング装置は、排気系がターボ分子ポンプとロータリーポンプで構成され、5×10-4Pa以下にまで排気することが可能である。真空槽(成膜チャンバー)内には4つのカソードが配置されており、それぞれに直径2インチのターゲット材料を設置することが可能である。
【0084】
真空槽にはガス供給配管がつながっており、アルゴンガス、酸素ガス、窒素ガスなどの反応ガス、キャリアガスを供給することができる。各ガスは、ガスボンベと真空槽の間に設置したマスフローメータによって流量を精密に制御することができる。各ターゲット材料による薄膜の厚みは、成膜時の印加電力、ガス流量等で精密に制御し、一定のライン速度で光学機能多層膜を形成することで再現性良く製造が可能である。
【0085】
密着層を形成する工程並びに光学機能多層膜を形成する工程では、透明基材をスパッタリング装置に設置後、5×10-4Pa以下になるまで排気し、アルゴンガス、窒素ガス及び酸素ガスを必要に応じて導入して反応性スパッタ法により成膜を行った。密着層形成工程では、Siターゲットを用い、アルゴンガスの流量を450sccmとした。また、高屈折率層形成工程においては、Nbターゲットを用い、アルゴンガスを150sccmとし、酸素ガスを15sccmとした。低屈折率層形成工程においては、Siターゲットを用い、アルゴンガスの流量を150sccmとし、酸素ガスの流量は25sccmとした。透過率調整層形成工程では、Tiターゲットを用い、流量は、アルゴンガス100sccm、窒素ガス50sccm、酸素ガス3sccmとした。これらのターゲットは、スパッタリング装置内に所望の光学機能多層膜の積層順序に対応するように配列した。
ここで、実施例1の光学機能多層膜の積層順序は、透明基材側から順に以下の通りであり、その詳細な構成、製造条件については、表1に纏める。実施例1において、透過率調整層は、第一の低屈折率層及び第二の高屈折率層に挟持されている。実施例1では、上記手段により、第一の高屈折率層及び第二の高屈折率層として、Nbで構成された層を形成し、第一の低屈折率層及び第二の低屈折率層としてSiOで構成された層を形成し、透過率調整層として、チタンの酸化物、窒化物の混合物で構成された層を形成した。チタンの窒化物であるTiNの含有量は29.8%、チタンの酸化物であるTiOは13.7%、TiOは56.8%であった。
(透明基材/密着層/)第一の高屈折率層/第一の低屈折率層/透過率調整層/第二の高屈折率層/第二の低屈折率層
【0086】
次いで、光学機能多層膜上に、コイルバー(ロッドNo.7、株式会社安田精機製作所製)を用いて塗布液を塗布し、80℃で2分間乾燥させる方法により、膜厚5nmの防汚層を形成した。塗布液としては、フッ素溶剤(商品名:フロリナートFC-3283:スリーエムジャパン株式会社製)中に、パーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物(商品名:オプツールDSX、ダイキン工業株式会社製)を0.1質量%含む溶液を用いた。
上記手順により、実施例1の光学積層体を得た。
【0087】
[実施例2]
光学機能多層膜の各層の厚みを変更した点を除き、実施例1と同様の手順で光学積層体を作製した。光学機能多層膜の構成は、表1に纏める。
【0088】
[実施例3]
光学機能多層膜を形成する工程において、ターゲットの配列を変更することにより光学機能多層膜の積層順序を変更した点及び各層の厚みを変更した点を除き、実施例1と同様の手順で光学積層体を作製した。光学機能多層膜の詳細な構成は、表1に纏めるが、実施例3では、透明基材側から以下の順に積層された光学機能多層膜を備える光学積層体を形成した。
(透明基材/密着層/)第一の高屈折率層/第一の低屈折率層/第二の高屈折率層/透過率調整層/第二の低屈折率層
【0089】
[実施例4]
光学機能多層膜を形成する工程において、ターゲットの配列を変更することにより光学機能多層膜の積層順序を変更した点及び各層の厚みを変更した点を除き、実施例1と同様の手順で光学積層体を作製した。光学機能多層膜の詳細な構成は、表1に纏めるが、実施例3では、透明基材側から以下の順に積層された光学機能多層膜を備える光学積層体を形成した。
(透明基材/密着層/)透過率調整層/第一の高屈折率層/第一の低屈折率層/透過率調整層/第二の高屈折率層/第二の低屈折率層
【0090】
[比較例1]
光学機能多層膜を形成する工程において、スパッタ条件を変更して、チタンの窒化物TiNを増やし、チタンの酸化物TiOを減じたチタン化合物の混合物層を形成した点を除き、実施例1と同様の手順で、光学積層体を作製した。
(透明基材/密着層/)第一の高屈折率層/第一の低屈折率層/混合物層/第二の高屈折率層/第二の低屈折率層
尚、比較例1では、反応ガスのうち酸素ガスの流量のみ変更し、1sccmにした。混合物層に於けるチタンの窒化物であるTiNの含有量は42.6%、チタンの酸化物であるTiOは32.0%、Tiは56.8%であった。
【0091】
[比較例2]
光学機能多層膜を形成する工程において、及びスパッタ条件を変更して、チタンの窒化物TiNを増やし、チタンの酸化物TiOを減じたチタン化合物の混合物層を形成した点を除き、実施例1と同様の手順で、透明基材側から以下の順に積層された光学機能多層膜を備える光学積層体を作製した。
(透明基材/密着層/)第一の高屈折率層/第一の低屈折率層/混合物層/第二の高屈折率層/第二の低屈折率層
また、比較例2では、反応ガスのうち酸素ガスの流量のみ変更し、2sccmにした。
【0092】
[比較例3]
光学機能多層膜を形成する工程において、ターゲットの配列を変更した点及びスパッタ条件を変更した点を除き、実施例1と同様の手順で、透明基材側から以下の順に積層された光学機能多層膜を備える光学積層体を作製した。
(透明基材/密着層/)第一の高屈折率層/第一の低屈折率層/混合物層/第二の高屈折率層/第二の低屈折率層
また、比較例3では、反応ガスのうち酸素ガスの流量のみ変更し、0sccmにした。すなわち、比較例3では、酸素ガスを用いなかった。
【0093】
[比較例4]
光学機能多層膜を形成する工程において、透過率調整層形成工程を行わなかった点、及び反応ガスの流量等のスパッタ条件を変更した点を除き、実施例1と同様の手順で、透明基材側から以下の順に積層された光学機能多層膜を備える光学積層体を作製した。
(透明基材/密着層/)第一の高屈折率層/第一の低屈折率層/第二の高屈折率層/第二の低屈折率層
【0094】
(反射特性の測定)
実施例1~実施例4及び比較例1~比較例4の光学積層体に対して、それぞれ光学積層体の透明基材側の面にそれぞれアクリル系透明粘着剤を用いて黒色のアクリルパネルの表面に貼付し、裏面反射が除去される試験体とした。そして、各光学積層体の透明基材と反対側の面から、分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製、商品名:UH4150)を用いて、分光反射率(測定波長380nm~1000nm、入射角5°)を測定した。測定した分光反射率と、CIE標準イルミナントD65の相対分光分布を用いて、JIS Z8701で規定されているXYZ表色系における、反射による物体色の視感反射率Y(三刺激値Y)を算出した。測定した視感反射率を表中に示す。
【0095】
(透過特性の測定)
実施例1~実施例4及び比較例1~比較例4の光学積層体に対して、それぞれ光学積層体の透明基材側の面から入射光が透過する向きで分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製、商品名:UH4150)を用いて、分光反射率(測定波長380nm~1000nm、入射角5°)から分光透過率を測定した。測定した分光透過率と、CIE標準イルミナントD65の相対分光分布を用いて、JIS Z8701で規定されているXYZ表色系における、透過による物体色の視感透過率Y(三刺激値Y)を算出した。測定した分光透過率を表中に視感透過率として示す。
【0096】
(タッチパネルの反応性試験)
実施例1~実施例4及び比較例1~比較例4の光学積層体に対して、光学積層体の透明基材側の面にそれぞれアクリル系透明粘着剤を用いて、市販の静電容量方式型タッチパネル搭載のタブレット端末の表面に貼付し、タッチパネルによる操作が可能であるか否かを評価した。
【0097】
(光学積層体のシート抵抗試験)
実施例1~実施例4及び比較例1~比較例4の光学積層体に対して、抵抗率計(三菱化学アナリテック社製、装置名:ハイレスタUP(MCP-HT450型)を用いてシート抵抗値を測定した。光学積層体の防汚層側の表面の平面視中心にプローブをあて、100Vで10秒間通電して測定した。
【0098】
(Tiの結合状態解析試験)
実施例1~実施例4及び比較例1~比較例3の光学積層体に対して、走査型X線光電子分光分析装置(アルバック・ファイ社製、装置名:PHI5000VersaProbe III)を用いてArイオンによる表面エッチングを行いTiが検出された深さにおけるTiの結合状態をナロースペクトル測定により解析した。測定時の条件は表2のとおりである。
【0099】
実施例1~実施例4及び比較例1~比較例4の光学積層体の構成及び試験結果を表1に纏める。表中、タッチパネル反応性の項目が○であるデータは、タッチパネルによる操作が可能であったことを意味し、×であるデータは、タッチパネルによる操作を出来なかったことを意味する。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
先ず、実施例1~実施例4及び比較例1~3を比較例4と対比することにより、透明基材、第一の高屈折率層、第一の低屈折率層、第二の高屈折率層、第二の低屈折率層、をこの順に備える光学積層体であって、さらに前記第一の高屈折率層に接する位置と、前記第二の高屈折率層に接する位置と、の少なくとも小さくするとともに一方に透過率調整層を備えることで、視感透過率を小さくできることが確認された。このうち、シート抵抗値が10Ω/□未満である比較例1~比較例3では、タッチパネルによる操作を出来なかったのに対し、シート抵抗値が10Ω/□以上である実施例1~実施例4は、タッチパネルによる操作が可能であった。
【0103】
実施例1~実施例4では、ナロースペクトル測定に於ける透過率調整層のTiN及びTiOの合計割合が50%以下であり、上記合計割合の高い比較例1~比較例3と比べてタッチパネル反応性が良好であった。さらに、ナロースペクトル測定における透過率調整層のTiOの割合が14%以下である実施例1、実施例3及び実施例4は、特にシート抵抗値が高く、タッチパネルディスプレイに適用した場合の操作のしやすさが高いことが期待される。一方、実施例2では、視感透過率を低く抑えることができ、ディスプレイに適用した場合の表示部及び額縁部の色相差を抑えやすいことが期待される。
【0104】
(色相差試験)
実施例1~実施例4の光学積層体が視感透過率低減により、表示装置に適用した場合に表示部及び額縁部における反射色相差を低減できているかを確認するために、実施例1及び比較例4の光学積層体に対して、反射色相差を測定する色相差試験を行った。色相差試験は、光学積層体の透明基材側の面にそれぞれアクリル系透明粘着剤を用いて、表示部(V/A)及び額縁部(B/M)からなる10インチサイズのディスプレイ表面に貼付した。このディスプレイの表示部(V/A)における明度及び色度は、L*:28.6, a*:-0.1, b*:-0.2であり、額縁部(B/M)における明度及び色度は、L*:28.4,a*:0.1,b*:0.9であった。さらに、上記反射特性の測定の結果を利用し、表示部(V/A)及び額縁部(B/M)における反射色相差ΔE* abを比較した。表示部(V/A)及び額縁部(B/M)における反射色相差ΔE* abは、以下の式を利用して算出した。
ΔE* ab={(L* 2-L* 1)2 +(a* 2-a* 1)2+(b* 2-b* 1)2}1/2
(式中、L* 1: 表示部の明度,L* 2: 額縁部の明度,a* 1: 表示部の色度,a* 2: 額縁部の色度,b* 1: 表示部の色度,b* 2: 額縁部の色度である。)
【0105】
図7(a)は、実施例1の試験体の色相差を示す図であり、図7(b)は、比較例4の試験体の色相差を示す図である。また、実施例1及び比較例4における透過率及び表示部(V/A)及び額縁部(B/M)の反射色相差ΔE* abを表3に纏める。
【0106】
図7(a)に示される通り、実施例1では、表示部(V/A)及び額縁部(B/M)の反射色相差が小さく、表示部(V/A)及び額縁部(B/M)の境界を識別しづらくすることができた。一方、透過率調整層が設けられていない比較例4では、表示部(V/A)及び額縁部(B/M)の反射色相差ΔE* abが大きく、表示部(V/A)及び額縁部(B/M)の境界がはっきりと表れた。
【0107】
【表3】
【符号の説明】
【0108】
100,101,102,103,104:光学積層体
11:透明基材
12:ハードコート層
13:密着層
14a:第一の高屈折率層
14b:第二の高屈折率層
15a:第一の低屈折率層
15b:第二の低屈折率層
16:透過率調整層
16a:第一の透過率調整層
16b:第二の透過率調整層
17:防汚層
20,20B,20C,20D,20E:光学機能多層膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
光学積層体100において、透過率調整層16は、第一の低屈折率層15a及び第二の高屈折率層14bに接する位置に配列されている。すなわち、透過率調整層16は、第一の低屈折率層15a及び第二の高屈折率層14bに挟持されている。第一の低屈折率層15a及び第二の高屈折率層14bに透過率調整層16が挟持されている光学積層体は、製造プロセスが簡便になるため好ましい。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
低屈折率層15は、入手の容易さとコストの点からSiの酸化物を含むことが好ましく、SiO(Siの二酸化物)等を主成分とした層であることが好ましく、SiO で構成されていることが好ましい。SiO単層膜は、無色透明である。例えば、低屈折率層15は、SiOを50質量%以上含んでいればよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
透過率調整層16が金属MとしてTiを含む場合、X線光電分光法のナロースペクトル測定を行うと、例えば、TiN,TiO,Ti及びTiOから選択される組成物が検出される。透過率調整層16において、上記ナロースペクトル測定におけるTiNとTiOの合計値は、例えば、60%以下であり、50%以下であることが好ましく、45%以下であることがより好ましい。上記ナロースペクトル測定におけるTiNとTiOの合計値が過剰であると、タッチパネルを備えたディスプレイに適用した際、タッチパネルを操作できなくなってしまう。このとき、光学積層体101のシート抵抗は、10Ω/□よりも小さい値となる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0060
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0060】
また、上記ナロースペクトル測定における透過率調整層16のTiOの値は、例えば、25%以下であり、20%以下であることが好ましく、14%以下であることがより好ましい。TiOは、導電性であり、吸収特性が悪いことから下限に関する測定限界値の規定が難しいが、検出されなくてもよい。またTiOは、成膜時の窒素、酸素、不活性ガスの混合ガスとTiとの反応によって生じる副次的な生成物である。TiOの含有量は、TiNと同様、導電性を有するため、タッチパネルを備えたディスプレイに適用する場合、少ないことが好ましい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0065】
また、図5及び図6に示されるような第一の透過率調整層16a及び第二の透過率調整層16bを含む複数の透過率調整層16を有する場合、透明基材11から離れた位置の透過率調整層の厚みほど大きいことがから好ましい。例えば、第一の透過率調整層16aの厚みは、1nm以上20nm以下が好ましく、2nm以上10nm以下であることがより好ましい。第二の透過率調整層16bの厚みは、例えば、10nm以上160nm以下が好ましく、20nm以上140nm以下であることがより好ましい。第二の透過率調整層16bの厚みは、第一の透過率調整層16aの厚みより大きいことが好ましく、第一の透過率調整16aの厚みの4倍以上であることがより好ましい。これは、一般的に低屈折率層と高屈折率層が2層ずつ積層した反射防止層の設計において、透明基材11から離れた高屈折率層の方が厚い膜厚の時、視感反射率が低下しやすいためである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0070
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0070】
本実施形態に係る光学積層体は、例えば、視感反射率が2以下であり、1以下であることが好ましい。本実施形態に係る光学積層体は、例えば、視感透過率が20~90であり、30~85%であることが好ましい。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0085
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0085】
密着層を形成する工程並びに光学機能多層膜を形成する工程では、透明基材をスパッタリング装置に設置後、5×10-4Pa以下になるまで排気し、アルゴンガス、窒素ガス及び酸素ガスを必要に応じて導入して反応性スパッタ法により成膜を行った。密着層形成工程では、Siターゲットを用い、アルゴンガスの流量を450sccmとした。また、高屈折率層形成工程においては、Nbターゲットを用い、アルゴンガスを150sccmとし、酸素ガスを15sccmとした。低屈折率層形成工程においては、Siターゲットを用い、アルゴンガスの流量を150sccmとし、酸素ガスの流量は25sccmとした。透過率調整層形成工程では、Tiターゲットを用い、流量は、アルゴンガス100sccm、窒素ガス50sccm、酸素ガス3sccmとした。これらのターゲットは、スパッタリング装置内に所望の光学機能多層膜の積層順序に対応するように配列した。
ここで、実施例1の光学機能多層膜の積層順序は、透明基材側から順に以下の通りであり、その詳細な構成、製造条件については、表1に纏める。実施例1において、透過率調整層は、第一の低屈折率層及び第二の高屈折率層に挟持されている。実施例1では、上記手段により、第一の高屈折率層及び第二の高屈折率層として、Nbで構成された層を形成し、第一の低屈折率層及び第二の低屈折率層としてSiOで構成された層を形成し、透過率調整層として、チタンの酸化物、窒化物の混合物で構成された層を形成した。チタンの窒化物であるTiNの含有量は29.8%、チタンの酸化物であるTiOは13.7%、TiOは56.%であった。
(透明基材/密着層/)第一の高屈折率層/第一の低屈折率層/透過率調整層/第二の高屈折率層/第二の低屈折率層
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0090
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0090】
[比較例1]
光学機能多層膜を形成する工程において、スパッタ条件を変更して、チタンの窒化物TiNを増やし、チタンの酸化物TiOを減じたチタン化合物の混合物層を形成した点を除き、実施例1と同様の手順で、光学積層体を作製した。
(透明基材/密着層/)第一の高屈折率層/第一の低屈折率層/混合物層/第二の高屈折率層/第二の低屈折率層
尚、比較例1では、反応ガスのうち酸素ガスの流量のみ変更し、1sccmにした。混合物層に於けるチタンの窒化物であるTiNの含有量は42.6%、チタンの酸化物であるTiOは32.0%、Ti25.4%であった。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0091
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0091】
[比較例2]
光学機能多層膜を形成する工程において、スパッタ条件を変更して、チタンの窒化物TiNを増やし、チタンの酸化物TiOを減じたチタン化合物の混合物層を形成した点を除き、実施例1と同様の手順で、透明基材側から以下の順に積層された光学機能多層膜を備える光学積層体を作製した。
(透明基材/密着層/)第一の高屈折率層/第一の低屈折率層/混合物層/第二の高屈折率層/第二の低屈折率層
また、比較例2では、反応ガスのうち酸素ガスの流量のみ変更し、2sccmにした。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0092
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0092】
[比較例3]
光学機能多層膜を形成する工程において、ターゲットの配列を変更した点及びスパッタ条件を変更した点を除き、実施例1と同様の手順で、透明基材側から以下の順に積層された光学機能多層膜を備える光学積層体を作製した。
(透明基材/密着層/)混合物層/第一の高屈折率層/第一の低屈折率層/第二の高屈折率層/第二の低屈折率層
また、比較例3では、反応ガスのうち酸素ガスの流量のみ変更し、0sccmにした。すなわち、比較例3では、酸素ガスを用いなかった。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0094
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0094】
(反射特性の測定)
実施例1~実施例4及び比較例1~比較例4の光学積層体に対して、それぞれ光学積層体の透明基材側の面にそれぞれアクリル系透明粘着剤を用いて黒色のアクリルパネルの表面に貼付し、裏面反射が除去される試験体とした。そして、各光学積層体の透明基材と反対側の面から、分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製、商品名:UH4150)を用いて、分光反射率(測定波長380nm~1000nm、入射角5°)を測定した。測定した分光反射率と、CIE標準イルミナントD65の相対分光分布を用いて、JIS Z8701で規定されているXYZ表色系における、反射による物体色の視感反射率Y(三刺激値Y)を算出した。測定した視感反射率を表中に示す。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0100
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0100】
【表1】
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0102
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0102】
先ず、実施例1実施例4及び比較例1~3を比較例4と対比することにより、透明基材、第一の高屈折率層、第一の低屈折率層、第二の高屈折率層、第二の低屈折率層、をこの順に備える光学積層体であって、さらに前記第一の高屈折率層に接する位置と、前記第二の高屈折率層に接する位置と、の少なくとも一方に透過率調整層を備えることで、視感透過率を小さくできることが確認された。このうち、シート抵抗値が10Ω/□未満である比較例1比較例3では、タッチパネルによる操作を出来なかったのに対し、シート抵抗値が10Ω/□以上である実施例1~実施例4は、タッチパネルによる操作が可能であった。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0103
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0103】
実施例1~実施例4では、ナロースペクトル測定に於ける透過率調整層のTiN及びTiOの合計割合が50%以下であり、上記合計割合の高い比較例1比較例3と比べてタッチパネル反応性が良好であった。さらに、ナロースペクトル測定における透過率調整層のTiOの割合が14%以下である実施例1、実施例3及び実施例4は、特にシート抵抗値が高く、タッチパネルディスプレイに適用した場合の操作のしやすさが高いことが期待される。一方、実施例2では、視感透過率を低く抑えることができ、ディスプレイに適用した場合の表示部及び額縁部の色相差を抑えやすいことが期待される。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0104
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0104】
(色相差試験)
実施例1実施例4の光学積層体が視感透過率低減により、表示装置に適用した場合に表示部及び額縁部における反射色相差を低減できているかを確認するために、実施例1及び比較例4の光学積層体に対して、反射色相差を測定する色相差試験を行った。色相差試験は、光学積層体の透明基材側の面にそれぞれアクリル系透明粘着剤を用いて、表示部(V/A)及び額縁部(B/M)からなる10インチサイズのディスプレイ表面に貼付した。このディスプレイの表示部(V/A)における明度及び色度は、L*:28.6, a*:-0.1, b*:-0.2であり、額縁部(B/M)における明度及び色度は、L*:28.4,a*:0.1,b*:0.9であった。さらに、上記反射特性の測定の結果を利用し、表示部(V/A)及び額縁部(B/M)における反射色相差ΔE* abを比較した。表示部(V/A)及び額縁部(B/M)における反射色相差ΔE* abは、以下の式を利用して算出した。
ΔE* ab={(L* 2-L* 1)2 +(a* 2-a* 1)2+(b* 2-b* 1)2}1/2
(式中、L* 1: 表示部の明度,L* 2: 額縁部の明度,a* 1: 表示部の色度,a* 2: 額縁部の色度,b* 1: 表示部の色度,b* 2: 額縁部の色度である。)