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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093131
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】原稿搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/12 20060101AFI20240702BHJP
   H04N 1/12 20060101ALI20240702BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B65H7/12
H04N1/12
H04N1/00 L
H04N1/00 567J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209311
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】玉井 昌徳
【テーマコード(参考)】
3F048
5C062
5C072
【Fターム(参考)】
3F048AA08
3F048AB02
3F048AB05
3F048BA13
3F048BB09
3F048BB10
3F048CC01
3F048CC02
3F048DA04
3F048DB03
3F048DB07
3F048DB09
3F048DB11
3F048DC00
3F048DC05
3F048DC13
3F048EB12
5C062AA05
5C062AA31
5C062AA35
5C062AA37
5C062AB03
5C062AB10
5C062AB20
5C062AB23
5C062AB30
5C062AB31
5C062AB32
5C062AB33
5C062AB35
5C062AB36
5C062AB38
5C062AC02
5C062AC05
5C062AC09
5C062AC11
5C062AC15
5C062AC66
5C062AC69
5C062AC70
5C062AE01
5C062AE15
5C062AF10
5C072AA01
5C072BA13
5C072CA05
5C072DA25
5C072EA05
5C072EA07
5C072FB23
5C072FB25
5C072NA01
5C072NA04
5C072RA02
5C072VA03
5C072VA05
(57)【要約】
【課題】重送と誤判断せずにプラスチックカードを検出する。
【解決手段】原稿検知センサ60が原稿Sを検知してから一定時間以内に原稿の通過を検出したセンサの個数を計測するためのセンサ検知個数計測手段と、いずれかの原稿検知センサ60が原稿を検出してから、すべての原稿検知センサ60が原稿Sを検出しなくなるまでの時間を計測するためのセンサ通過時間計測手段(S311)と、超音波の受信波形から超音波減衰量を検知するための超音波減衰量検知手段と、センサ検知個数計測手段とセンサ通過時間計測手段と超音波減衰量検知手段とにより、原稿Sが特定原稿であるか否かを判定する特定原稿判定手段とを備えることを特徴とする原稿搬送装置。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を搬送するための搬送路と、
前記搬送路内の原稿搬送方向と直交する方向に離間して複数配置され、原稿を検知する原稿検知センサ群と、
前記原稿検知センサ群に含まれるいずれかの原稿検知センサが原稿を検出してから一定時間以内に原稿の通過を検出したセンサの個数を計測するためのセンサ検知個数計測手段と、
前記原稿検知センサ群に含まれるいずれかの原稿検知センサが原稿を検出してから、前記原稿検知センサ群に含まれるすべての原稿検知センサが原稿を検出しなくなるまでの時間を計測するためのセンサ通過時間計測手段と、
前記原稿検知センサ群に対して原稿搬送方向に離間した位置に配置され、超音波を発信する発信器と、前記発信器から発信された超音波を受信する受信器と、
前記受信器で受信した超音波の受信波形から超音波減衰量を検知するための超音波減衰量検知手段と、
前記センサ検知個数計測手段と前記センサ通過時間計測手段と前記超音波減衰量検知手段とにより、前記原稿が特定原稿であるか否かを判定する特定原稿判定手段とを備えることを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項2】
前記搬送方向に対し前記原稿検知センサ群と異なる位置に配置された他の原稿検知センサと、
前記受信器または前記発信器の少なくともいずれか一方が、前記原稿検知センサ群および前記他の原稿検知センサに対し前記搬送方向上流側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の原稿搬送装置。
【請求項3】
前記特定原稿判定手段は、
前記超音波減衰量検知手段において特定原稿と判断するための閾値である第一超音波減衰量閾値を有し、
前記超音波減衰量が前記第一超音波減衰量閾値以上となっている状態の継続時間が所定の時間を超えるときに前記原稿が前記特定原稿であると判定することを特徴とする請求項1または2に記載の原稿搬送装置。
【請求項4】
前記特定原稿判定手段は、特定原稿通過時間条件を有し、
前記センサ通過時間計測手段で計測された時間が前記特定原稿通過時間条件を満たした場合に前記原稿が前記特定原稿であると判定することを特徴とする請求項1に記載の画像読取原稿搬送装置。
【請求項5】
前記特定原稿通過時間条件として、第一特定原稿通過時間条件と第二特定原稿通過時間条件とを有し、
前記第一特定原稿通過時間条件の下限値は、前記第二特定原稿通過時間条件の下限値以下であり、
前記第一特定原稿通過時間条件の上限値は、前記第二特定原稿通過時間条件の上限値以下であることを特徴とする請求項4に記載の原稿搬送装置。
【請求項6】
前記特定原稿判定手段は、
前記原稿が前記特定原稿ではないと判断しない場合に重送と判断するための超音波減衰量の閾値である第二超音波減衰量閾値を有し、
前記第二超音波減衰量閾値は、前記第一超音波減衰量閾値より大きいことを特徴とする請求項3に記載の原稿搬送装置。
【請求項7】
前記特定原稿の長辺の長さよりも短い距離内に配置される前記原稿検知センサ群に含まれる原稿検知センサの個数Nに対し、
前記特定原稿判定手段は、原稿を検知した前記原稿検知センサの数がNよりも大きい場合に、前記センサ通過時間計測手段による時間計測と、前記超音波減衰量検知手段による超音波減衰量の検知を実施しないことを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の原稿搬送装置
【請求項8】
前記原稿検知センサ群に含まれる第一原稿検知センサと、
前記搬送路内の原稿搬送方向と直交する方向である第一の方向に対し、前記第一原稿検知センサから第一の方向に距離w_ab離れて配置された前記原稿検知センサ群に含まれる第二原稿検知センサと、
前記搬送路内の原稿搬送方向と直交し、かつ前記第一の方向と逆の方向である第二の方向に対し、前記第一原稿検知センサから第二の方向に距離w_ac離れて配置された前記原稿検知センサ群に含まれる第三原稿検知センサと、
前記原稿の短辺の長さをYとしたときに、Y<w_abかつY<w_acを満たし、かつ前記原稿の長辺の長さをXとしたときに、X<w_ab+w_acを満たすことを特徴とする請求項7に記載の原稿搬送装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿を搬送可能な原稿搬送装置における原稿検出制御に関する。
【背景技術】
【0002】
大量にある文書類を順次搬送しながら画像読み取りするADF(Auto Document Fedder)付きのドキュメントスキャナが知られている。ADF付きのドキュメントスキャナでは異種の文書(例えばサイズ違いの原稿や、材質違いの原稿類)を原稿給紙部に載置して順次搬送して読み取りを実施する原稿種の混載読取が可能な物もある。
【0003】
一方、原稿を順次搬送しながら画像を読取るために、給紙部で原稿を分離しながら給紙を行う必要があるが、原稿によっては静電気等の影響で正しく1枚毎に分離できずに原稿が2枚重なったまま給紙され読取られてしまう事がある。いわゆる重送である。重送状態を検出する手法として搬送原稿を透過する超音波信号の減衰状態を検知して、原稿が1枚だけ搬送されているか、もしくは複数枚重なって原稿が搬送されているかを判断する重送検出手段が知られている。
【0004】
ところが原稿によっては超音波の減衰状態が大きい物がある。例えばプラスチックカードである。プラスチックカードは厚みがあるため超音波の減衰が大きく、1枚搬送時においても超音波の減衰量が通常の紙の原稿に比べて大きく、場合によっては重送状態と判定する信号レベルになってしまい、誤って重送と判断してしまうことがあった。
【0005】
そこで、読み取った画像からエッジを判断して、そのエッジからカード原稿か否かを判断して、その結果に基づいて超音波重送判定の有効無効を切り替える手段が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-42067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
超音波センサによる重送検知機能を有した原稿搬送装置において、搬送されている原稿がプラスチックカードであった場合に重送と判断しない制御が求められているが、特許文献1の手法では画像処理による原稿エッジ判断が入るため演算処理部の処理負荷が高く、特に高速に原稿を搬送する装置では処理負荷がより大きくなり、画像取得の速度が低下してしまうことが懸念される。よって処理負荷がより少ない手法で、搬送されている原稿がカードか否かを判断し、重送検知機能を無効にして重送と判断しない検知手段が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記を鑑み、本発明に係る原稿搬送装置は、
原稿を搬送するための搬送路と、
前記搬送路内の原稿搬送方向と直交する方向に離間して複数配置され、原稿を検知する原稿検知センサ群と、
前記原稿検知センサ群に含まれるいずれかの原稿検知センサが原稿を検出してから一定時間以内に原稿の通過を検出したセンサの個数を計測するためのセンサ検知個数計測手段と、
前記原稿検知センサ群に含まれるいずれかの原稿検知センサが原稿を検出してから、前記原稿検知センサ群に含まれるすべての原稿検知センサが原稿を検出しなくなるまでの時間を計測するためのセンサ通過時間計測手段と、
前記原稿検知センサ群に対して原稿搬送方向に離間した位置に配置され、超音波を発信する発信器と、前記発信器から発信された超音波を受信する受信器と、
前記受信器で受信した超音波の受信波形から超音波減衰量を検知するための超音波減衰量検知手段と、
前記センサ検知個数計測手段と前記センサ通過時間計測手段と前記超音波減衰量検知手段とにより、前記原稿が特定原稿であるか否かを判定する特定原稿判定手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、取得した画像で特定原稿のサイズ判断を実施せずに特定原稿であることが判定できるため、演算処理の負荷を軽減しつつ、かつ特定原稿を誤って重送状態であると判断することがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る原稿搬送装置(画像読取装置)の構成を概略的に示す部分断面図。
図2】本発明の実施形態に係る画像読取装置の制御部のブロック図。
図3】本発明の第1実施形態に係る原稿搬送時のシーケンスチャート。
図4】本発明の第1実施形態に係る搬送経路RT内部の構造の模式図。
図5】本発明の第2実施形態に係る原稿搬送時のシーケンスチャート。
図6】本発明の第3実施形態に係る搬送系とRT内部の構造の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、添付図面を参照して本発明を実施するための形態について詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を実施するための一例であり、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲において本発明が使用される装置の構成や各種条件によって適宜修正又は変更されるべきものである。
【0012】
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1実施形態に係る原稿搬送装置について説明する。
【0013】
図1は、本発明の第1実施形態に係る原稿搬送装置(画像読取装置)の構成を概略的に示す部分断面図である。
【0014】
<装置の構成>
画像読取装置Aは、載置台1に積載された一つ又は複数の搬送媒体Sを1つずつ装置内に搬送路6で構成される搬送経路RTにて搬送してその画像を読み取り、積載部材としての排出トレイ2に排出する装置である。
【0015】
読み取る搬送媒体Sは、例えば、写真、OA紙、チェック、小切手、名刺、カード類等のシートであり、厚手のシートであっても、薄手のシートであってもよい。カード類は、例えば、保険証、免許証、クレジットカード等を挙げることができる。搬送媒体Sには、また、パスポートなどの冊子も含まれる。冊子を対象とする場合、不図示の透明なホルダ200、いわゆるキャリアシートを用いることができる。透明なホルダ200に見開き状態の冊子を収容して載置台1に載置することで、冊子が透明なホルダ200と共に搬送され、その画像を読み取ることができる。
【0016】
<給紙>
経路RTに沿って搬送媒体Sを給送する給送機構としての第1搬送部10が設けられている。第1搬送部10は本実施形態の場合、送りローラ11と、送りローラ11に対向配置される分離ローラ12と、を備え、載置台1上の搬送媒体Sを搬送方向D1(原稿搬送方向)に一つずつ順次搬送する。送りローラ11には、モータ等の駆動部3から伝達部5を介して駆動力が伝達され、図中矢印方向(経路RTに沿って搬送媒体Sを搬送させる正方向)に回転駆動される。伝達部5は例えば電磁クラッチであり、駆動部3からの送りローラ11への駆動力を断続する。
【0017】
<駆動部>
駆動部3と送りローラ11とを接続する伝達部5は、例えば、本実施形態では、通常時において駆動力が伝達される状態とし、搬送媒体Sを逆送または停止する場合には駆動力を遮断する。送りローラ11は伝達部5により駆動力の伝達が遮断されると、自由回転可能な状態となる。なお、このような伝達部5は、送りローラ11を一方向のみに駆動させる場合には設けなくてもよい。
【0018】
<分離構造>
送りローラ11に対向配置される分離ローラ12は、搬送媒体Sを1枚ずつ分離するためのローラであり、送りローラ11に対して一定圧で圧接している。この圧接状態を確保するため、分離ローラ12は揺動可能に設けると共に送りローラ11へ付勢されるように構成される。分離ローラ12は、トルクリミッタ12aを介して駆動部3から駆動力が伝達され、実線矢印方向(送りローラ11の正方向とは逆方向))に回転駆動される。
【0019】
分離ローラ12はトルクリミッタ12aにより駆動力伝達が規制されるため、送りローラ11と当接している際は送りローラ11に連れ回りする方向(破線矢印方向)に回転する。これにより、複数の搬送媒体Sが送りローラ11と分離ローラ12との圧接部に搬送されてきた際には、一つを残して2つ以上の搬送媒体Sが下流に搬送されないようにせき止められる。
【0020】
なお、本実施形態では分離ローラ12と送りローラ11とで分離機構を構成したが、このような分離機構は必ずしも設けなくてもよく、経路RTに搬送媒体Sを1つずつ順次給送する給送機構であればよい。また、分離機構を設ける場合においては、分離ローラ12のような構成の代わりに、搬送媒体Sに摩擦力を付与する分離パッドを送りローラ11に圧接させて、同様の分離作用を持たせるようにしてもよい。
【0021】
<搬送構造>
第1搬送部10の搬送方向下流側にある搬送機構としての第2搬送部20は、駆動ローラ21と、駆動ローラ21に従動する従動ローラ22とを備え、第1搬送部10から搬送されてきた搬送媒体Sをその下流側へ搬送する。駆動ローラ21にはモータ等の駆動部4から駆動力が伝達され、図中矢印方向に回転駆動される。従動ローラ22は駆動ローラ21に対して一定圧で圧接し、駆動ローラ21に連れ回る。この従動ローラ22は、バネ等の付勢ユニット(不図示)によって駆動ローラ21に対して付勢された構成としてもよい。
【0022】
このような第2搬送部20よりも搬送方向下流側にある第3搬送部30は、駆動ローラ31と、駆動ローラ31に従動する従動ローラ32とを備え、第2搬送部20から搬送されてきた搬送媒体Sを排出トレイ2へ搬送する。つまり、この第3搬送部30は排出機構として機能する。
【0023】
駆動ローラ31にはモータ等の駆動部4から駆動力が伝達され、図中矢印方向に回転駆動される。従動ローラ32は駆動ローラ31に対して一定圧で圧接し、駆動ローラ31に連れ回る。この従動ローラ32は、バネ等の付勢ユニット(不図示)によって駆動ローラ31に対して付勢された構成としてもよい。
【0024】
搬送媒体Sを積載する排出トレイ2は、画像読取装置Aに対して回動可能なように、画像読取装置Aの下方に設けられた第1ヒンジ101を介して軸支されている。また、第1ヒンジ101側の第1排出トレイ2aとその先端側に接続された第1延長トレイ2b、第2延長トレイ2c、第3延長トレイ2dとから構成されている。第1延長トレイ2bは第1排出トレイ2aに対して摺動して収納可能に支持されており、第2延長トレイ2cは第1延長トレイ2bに対して摺動して収納可能に支持されており、第3延長トレイ2dは第2延長トレイ2cに対して摺動して収納可能に支持されている。この排出トレイ2は回転可能なように軸支されていなくとも良く、また延長可能なように構成されていなくても良い。つまり搬送媒体Sを積載可能な構成であればよい。
【0025】
<画像読取構造、制御>
本実施形態の画像読取装置Aでは、第2搬送部20と第3搬送部30との間に配置される画像読取ユニット70によって画像の読取を行うため、第2搬送部20及び第3搬送部30は搬送媒体Sを定速搬送する。搬送速度は常に第1搬送部10の搬送速度以上とすることで、先行搬送媒体Sに後続搬送媒体Sが追いついてしまう事態を確実に回避できる。例えば、本実施形態では、第2搬送部20及び第3搬送部30による搬送媒体Sの搬送速度を、第1搬送部10による搬送媒体Sの搬送速度よりも速くなるように速度制御するようにした。
【0026】
なお、第2搬送部20及び第3搬送部30による搬送媒体Sの搬送速度と、第1搬送部10による搬送媒体Sの搬送速度とを同一条件とした場合でも、駆動部3を制御して後続搬送媒体Sの給送開始タイミングを間欠的にずらすことにより先行搬送媒体Sと後続搬送媒体Sとの間に最低限の間隔を形成することも可能である。
【0027】
<超音波減衰量検出>
第1搬送部10と第2搬送部20との間に配置される超音波センサ40は、超音波の発信器41とその受信器42とを備え、搬送媒体Sが第1搬送部10を通過してきた場合に搬送媒体Sによる超音波減衰量を検出するためのセンサである。
【0028】
紙等の搬送媒体Sが重送されている場合、カードなどの特定原稿が搬送されている場合、通常の1枚に分離されて搬送されている場合とで、搬送媒体Sを通過する超音波の減衰量が異なることを原理として重送または特定原稿の判断に用いられる。なお、重送または特定原稿の判断の詳細については図3にて後述する。
【0029】
<原稿検知センサ>
前述の超音波センサ40よりも搬送方向下流側に配置される原稿検知センサ50は第2搬送部20よりも上流側で、第1搬送部10よりも下流側に配置された搬送路RT上流側の検知センサ(シートの挙動や状態を検出するセンサ)としての例であり、第1搬送部10により搬送される搬送媒体Sの位置、詳細には、原稿検知センサ50の検出位置に搬送媒体Sの端部が到達又は通過したか否か、を検出する。
【0030】
原稿検知センサ50としては、種々のものが利用可能であるが、本実施形態の場合には光学センサであり、発光部51とその受光部52とを備え、搬送媒体Sの到達又は通過により受光強度(受光量)が変化することを原理として搬送媒体Sを検出する。
【0031】
本実施形態の場合、搬送媒体Sの先端が原稿検知センサ50で検出された時点で、搬送媒体Sが超音波センサ40により重送を検出可能な位置に到達しているように、上記の原稿検知センサ50は超音波センサ40の近傍かつ、その下流側に設けられている。
【0032】
なお、この原稿検知センサ50は、上記の光学センサに限定されず、例えば、搬送媒体Sの端部が検知できるセンサ(イメージセンサ等)を用いてもよいし、経路RTに突出したレバー型のセンサでもよい。また、搬送方向に直交する方向に複数個設けて媒体が搬送路に対して斜行していることを検知しても良い。
【0033】
原稿検知センサ50とは別の原稿検知センサ群である原稿検知センサ群60が画像読取ユニット70よりも上流側に配置されている。第2搬送部20よりも下流側に配置された下流側の検知センサとしての一例であり、第2搬送部20により搬送される搬送媒体Sの位置を検出する。
【0034】
原稿検知センサ群60としては、種々のものが利用可能であるが、本実施形態の場合、原稿検知センサ50と同様に光センサであり、発光部61と受光部62とを備え、搬送媒体Sの到達又は通過により受光強度(受光量)が変化することを原理として搬送媒体Sを検出する。
【0035】
ここで原稿検知センサ群60は搬送方向D1に直交する方向に原稿検知センサ60a~60cを離間して3個設けられている。夫々発光部61(61a、61b、61c:図4参照)とそれらに対向配置された受光部62(62a、62b、62c 不図示)を有している。
【0036】
このように搬送方向D1と直交する方向に複数配置された原稿検知センサ群60を有することで、搬送媒体S(以下、原稿と同義)が斜めに搬送路6に送出された場合であっても、より搬送媒体Sの先頭部分で搬送媒体Sを検知しやすくなる。
【0037】
さらに図4を用いて説明する。図4は搬送経路RT内部の下面側の構造を示した模式図である。搬送方向上流側より、超音波センサ40の発信器41、原稿検知センサ50の発光部51、駆動ローラ21、原稿検知センサ群60の発光部61aから61cの順で配置されている。
【0038】
ここで、前述の様に原稿検知センサ群60は複数の原稿検知センサを含んでおり、それらは搬送方向D1に直交する面内に配置されている。
【0039】
また、超音波センサ40の発信器41、原稿検知センサ50の発光部51、原稿検知センサ群60の発光部61aは搬送方向D1に沿う同一線上に並んで配置されている。但し、これらは搬送方向D1に沿う同一線上に並んで配置されていなくとも良い。
【0040】
また、ここでは超音波センサ40の発信器41としたが受信器42でもよく、また、原稿検知センサ50の発光部51は受光部52でもよく、原稿検知センサ群60の発光部61aから61cは受光部62aから62cであっても良い。これらの場合、それぞれに対向して配置される発信器、発光部も同様に上面側に配置される。
【0041】
図4(a)はプラスチックカードである搬送媒体Sが横向きに搬送された場合、図4(b)はプラスチックカードである搬送媒体Sが縦向きに搬送された場合、図4(c)はプラスチックカードより大きい搬送媒体Sが搬送された場合を模式的に示している。
【0042】
図4(a)、(b)では搬送媒体Sはプラスチックカードとしている。プラスチックカードは85.4mm×54mmのサイズの物が一般的である。図中、xで示される長さがプラスチックカードの長辺(85.4mm)、yで示される長さがプラスチックカードの短辺(54mm)である。図4(c)中のzはプラスチックカードより大きい搬送媒体Sの幅であり、プラスチックカードの長辺であるx(85.4mm)よりも大きいサイズである。
【0043】
原稿検知センサ群60の発光部61aは前記搬送経路RTの中心部(図中左右方向の中心部)に配置される。残りの原稿検知センサの発光部61b、61cは媒体搬送方向D1に直交する面内で図中左右方向に原稿検知センサの発光部61aから離間して配置される。
【0044】
このとき発光部61bから61cまでの離間距離は前述のプラスチックカードの長辺xである85.4mmよりも広く取られている。つまり、発光部61aから61bまでの距離をw_ac、発光部61aから61cまでの距離をw_acとしたとき、x<w_ab+w_acの関係であり、プラスチックカードが搬送された時に原稿検知センサの発光部61bと61cは同時に原稿を検知する事が出来ない距離関係になっている。
【0045】
また、y<w_ab<xかつy<w_ac<xの関係がある。つまりプラスチックカードが縦向きに搬送された時に原稿検知センサ61aと61bまたは61cが同時に2つ以上原稿を検知する事が出来ない距離関係になっており、プラスチックカードが搬送路6の概ね中央を横向きに搬送された時に、発光部61aから61cのいずれかによって検知できるようになっている。
【0046】
<CISの配置>
次に、図1に戻り画像読取ユニット70であるCISについて説明する。原稿検知センサ群60よりも下流側にある画像読取ユニット70は、例えば、光学的に走査し、電気信号に変換して画像データとして読み取るものであり、内部にLED等の光源、イメージセンサ、レンズアレー等を備えている。画像読取ユニット70はコンタクトイメージセンサ(CIS)ユニットである。
【0047】
ここでは画像読取ユニット70はCISユニットとしたが、例えばイメージセンサとしてCCDを用いたユニットであっても良く、イメージセンサの種別を限定するものではない。本実施形態の場合、画像読取ユニット70(以下、CISと同義)は経路RTの両側に一つずつ配置されており(70a、70b)、搬送媒体Sの表裏面を読み取る。しかし、経路RTの片側にのみ一つ配置して、搬送媒体Sの片面のみを読み取る構成としてもよい。また、本実施形態では、画像読取ユニット70を経路RTの両側に対向配置した構造としているが、例えば、経路RTの方向に間隔をあけて配置してもよい。
【0048】
<ブロック図の説明>
次に、図2を参照して画像読取装置Aの制御ブロックについて説明する。
【0049】
制御部80は記憶部82、通信部84、アクチュエータ部86(駆動部3、4、伝達部5)、操作部83、画像読取ユニット70(70a、70b)、超音波センサ40(41、42)、原稿検知センサ50、60(51、52及び61a~61c、62a~62c)と接続される。
【0050】
制御部80は記憶部82に記憶されたプログラムを実行することにより、画像読取装置Aの読取制御、媒体の搬送等、操作者への報知等の種々の機能の制御を行う。
【0051】
ここで、制御部80はいわゆる演算処理部であり、複数の演算処理部で構成されても良い。また制御部80は複数の記憶部、通信部、インターフェイス部と接続されても良く、例えば1つの演算処理部にて装置Aの読取制御や媒体の搬送制御、別の演算処理部にて操作者への報知等を行うようにしても良い。つまり複数の演算処理部で機能を分割して制御を行っても良い。
【0052】
操作部83は、例えば、スイッチ83cやタッチパネル83aや表示装置83b等で構成され、操作者への情報表示と、操作者からの操作の受け付けを行う。
【0053】
通信部84は、制御部80に接続された外部装置との情報通信を行うインターフェイスである。外部装置としてPC(パソコン)を想定した場合、通信部84としては、例えば、USBインターフェイスやSCSIインターフェイスを挙げることができる。またLANに代表される有線通信のネットワークインターフェイスや無線LANに代表される無線通信のインターフェイスを上げることもできる。なお通信部84は複数の通信インターフェイスを備えても良い。
【0054】
アクチュエータ86としては駆動部3,4や伝達部5があげられる。制御部80は搬送媒体Sの分離、搬送、停止といった搬送制御を実施する。
【0055】
また制御部80は画像処理部88を有し。読取ユニット70a、70bと接続される。読取ユニット70a、70bで読取った画像を画像処理部88がデータの並び替えや画像処理を実施し読取画像データとして出力する。
【0056】
また制御部80は超音波センサ40を用いて重送または特定原稿の判断などの原稿判定を行う特定原稿判定手段として機能する。
【0057】
また原稿検知センサ50、60を用いて搬送媒体Sが搬送路6内部に挿入してきたことを検知し、読取ユニット70での読取開始や終了のタイミングを計る。
【0058】
<PCからの開始指示受信による駆動>
画像読取装置Aの基本的な動作について説明する。制御部80は、例えば画像読取装置Aが接続された外部パソコンから画像読取開始指示を受信すると、第1乃至第3搬送部10乃至30の駆動を開始する。載置台1に積載された搬送媒体Sはその最も下に位置する搬送媒体Sから1つずつ搬送される。ここで外部パソコンとの接続は制御部80に含まれる通信部84、例えばUSBインターフェイスやSCSIインターフェイス、LANや無線LANなどを用いてなされる。
【0059】
<装置操作からの開始指示受信による駆動>
また、外部パソコンからの読取開始の指示のかわりに画像読取装置Aの操作部83に設けられたスイッチ83cもしくはタッチパネル83aからの入力等によって画像読取開始指示を受け取って画像読取動作を開始してもよい。
【0060】
ここで画像読取開始指示には読取の解像度設定や、カラーやモノクロといった色分解能や色補正の情報等が含まれる。これらの指示に応じた制御を制御部80が実施することで指示された画像データを取得する事が可能となる。
【0061】
<原稿検知センサの出力に応じた読取開始>
制御部80は、画像読取ユニット70によって第2搬送部20により搬送されてきた搬送媒体Sを読取る。ここで読取の開始は、原稿検知センサ群60の検出結果に基づくタイミングとなる。制御部80は画像読取指示で指定された設定に基づき、読取の解像度と搬送媒体Sの移動速度に応じて一定間隔で画像読取ユニット70から画像を読取る。
【0062】
<読取画像の画像処理>
画像読取ユニット70で読取られた画像は画像処理部88で種々の画像処理が施され通信部84を介して外部の制御機器に送信される。画像読取ユニット70a、70bは第2搬送部20を挟んで配置されており、搬送媒体Sの両面を読取るようになっている。操作者は搬送媒体Sを載置台1に載置する際、搬送媒体Sの表面を載置台に接するように、つまり操作者からは載置台1に搬送媒体Sが載置された時に裏面が見える向きに載置されるように指示されている。よって搬送媒体Sは搬送され、画像読取ユニット70aにて搬送媒体Sの表面が読み取られ、画像読取ユニット70bにて裏面が読み取られる構成となる。
【0063】
<読取画像の送信・保存>
制御部80は、原稿検知センサ群60の検出結果に基づくタイミングで、第2搬送部20により搬送されてきた搬送媒体Sの、画像読取ユニット70による画像の読取を開始し、読み取った画像データを画像処理部88で画像処理し、記憶部82に一次記憶して順次装置外部へ送信する。一次記憶された画像データは通信部84を介して、接続されている外部のパソコンまたはネットワーク機器に送信される。
【0064】
ここで、外部パソコンは受信した読取画像を表示した後に保存しても良く、また外部パソコンは受信した読取画像をあらかじめ決まった場所に直接保存しても良い。また、ネットワーク上のデバイス、例えばネットワークに直接接続された外部記憶装置やFTPサーバ等、のあらかじめ決まった場所に保存しても良い。なお画像読取ユニット70で読取った画像データに対する画像処理は制御部80で実施しても、外部のパソコンや外部の機器で実施しても良い。当然複数の機能を分割して複数の制御部80や外部パソコンや外部機器で実施しても良い。
【0065】
<搬送手順>
以下、本実施形態の画像読取装置Aによる搬送手順を図3のフローチャートを用いてより詳しく説明する。図3は、本実施形態の画像読取装置Aによる読取手順の一例を説明するフローチャートである。なお、図3に示す処理は、制御部80が記憶部82に記憶されたプログラムを実行することにより実現されるものである。
【0066】
画像読取の開始指示を受信すると、制御部80は画像読取を行うために、指示された解像度や色数情報等に合わせてアクチュエータ86や画像読取ユニット70、原稿検知センサ50および60、重送検出センサ40の制御を開始し、載置台1に載置された搬送媒体Sの最も下に位置する搬送媒体Sの1枚を搬送開始する。ここから図3のフローチャートに記載の制御が開始される。
【0067】
上記の通り搬送が開始されると、ステップS301で超音波センサ40である超音波の発信器41と超音波の受信器42の制御を開始する。制御部80は超音波の発信器41から超音波を発信させる制御を実施し、超音波の受信器42が受信した超音波の強度を測定する。
【0068】
制御部80は受信器42で受信した超音波の減衰量に対して第一超音波減衰量である閾値Uss1(第一超音波減衰量閾値)以上の状態の継続時間tus1と、前記減衰量に対して第二超音波減衰量である閾値Uss2(第二超音波減衰量閾値)以上の状態の継続時間tus2の測定を開始する。本実施例では、搬送媒体Sが超音波センサ40に到達していない時(つまり搬送開始直後)の超音波の受信強度を基準として、制御部80は減衰量を確認する。
【0069】
なお閾値Uss1はプラスチックカードが超音波の発信器41と受信機42の間に挿入された時の減衰量より小さく、且つ、OA紙などの紙状の搬送媒体Sが1枚だけ挿入された時の減衰量より大きく設定される。つまり、紙状の搬送原稿が1枚だけ挿入された時、制御部80はtus1の測定は開始されず、一方プラスチックカードが挿入された時はtus1の計測を開始することになる。
【0070】
一方、閾値Uss2は紙状の搬送原稿Sが2枚以上挿入された時の減衰量より小さく、プラスチックカードが挿入された時の減衰量より大きく設定される。つまり減衰閾値Uss1とUss2はUss1≦Uss2の関係を持っている。なお、プラスチックカードの超音波の減衰量は紙状原稿が2枚以上の時の減衰量よりわずかながら低いため上記の関係を満たすように設定する事が最良である。
【0071】
次にステップS302で原稿検知センサ50が原稿有になるまで待つ。原稿検知センサ50が原稿を検知し、原稿ありとなると次ステップであるステップS303へ進む。
【0072】
本フローチャートでは搬送制御について主眼を置いて記載しているため、画像の読取処理に関して割愛しているが、ステップS302で原稿検知センサ群60のいずれかの原稿検知センサが原稿を検知した時点で、制御部80は画像処理部88に対して画像の読取開始を指示する。画像処理部88は指示を元に、タイミング調整を行ったうえで画像読取ユニット70からの読取を開始する。
【0073】
前記のタイミング調整とは、読取開始原稿検知センサ群60から搬送媒体Sが画像読取ユニット70の読取部にかかるまでの時間である。通常搬送媒体Sが画像読取ユニット70に到達する前に読取を開始するように制御する。これにより、読取られた画像の先端にマージンが生まれる。この先端のマージンにより搬送媒体Sが斜めに搬送路6内に搬送されてきたときに、画像の先端がかけてしまうことを防ぐことが可能となる。
【0074】
以後、本シーケンスと並列して制御部80および画像処理部88は搬送媒体Sの画像の取得を行う。本画像の取得は搬送が完了するまで継続される。
【0075】
本実施例のステップS302では搬送媒体Sが超音波センサ40に到達していない時の超音波の強度の測定のみを行い、原稿検知センサ50で原稿を検知した時点から継続時間tus1およびtus2の測定を開始する。
【0076】
ステップS303で原稿検知センサ60a~60cのいずれかが搬送媒体S(原稿)を検出するまで待つ。原稿検知センサ60a~60cのいずれかが搬送媒体Sを検出すると、ステップS304へ進む。
【0077】
ステップS304で制御部80は時間を計測するタイマt1を起動する。全ての原稿検知センサ60a~60cが搬送媒体Sを検知しなくなるまでの時間であるセンサ通過時間t2の測定を開始する。
【0078】
次にステップS305でタイマt1がT1を超えるまで待つ。タイマt1がT1を超えるとステップS306へ進む。また、タイマt1の計測を停止する。ここでタイマt1は原稿先端部の10mm進むまでの時間T1を測定するためのタイマである。時間T1は原稿Sの搬送速度v(mm/秒)であった場合T1=10mm÷v(mm/秒) (秒)であらわされる。
【0079】
ここでは原稿先端部が10mm進むまでの時間と例示したが、10mmに限らず変更可能で、また同様に搬送速度に応じて時間が変わるような例示をしたが、搬送速度に関らず固定の時間T1であっても構わない。しかし余り長い時間を設定すると以降のステップの実行が付随的に遅れて実行され、また特定原稿であるプラスチックカードの長さ以上の原稿を搬送する時間よりも長くしてしまうと無駄な待ち時間となってしまうため、本実施形態ではプラスチックカードの長さを搬送する時間よりも短く設定する。
【0080】
次にステップS306でセンサ検知個数計測手段として、原稿検知センサ60a~60cの検知個数を判断する。まず原稿検知センサ60a~60cの全てが原稿の通過を検知したかを判断する。ここで、原稿検知センサ60a~60cの全てが原稿の通過を検知した場合、前述したようにプラスチックカードの長辺xより幅広い搬送媒体Sが搬送されていることが分かり、NOに進み、後述のステップS321を実行する。
【0081】
一方、全ての原稿検知センサ60a~60cのうち中心部にある原稿検知センサ60aのみ、または原稿検知センサ60aと、原稿検知センサ60bまたは原稿検知センサ60cのいずれか一方のみ原稿の通過を検知した場合、ステップS309へ進む。
【0082】
ステップS309は原稿検知センサ群60が原稿を検知し続けているセンサ継続時間t2が特定原稿の長さに相当する第一特定原稿通過時間上限値T_s_highを上回り、且つ第二特定原稿通過時間上限値T_l_highを上回るかを判断する。この判定がYESの場合は後述のステップS322に進む。また、判定がNO、つまり搬送原稿Sの長さが特定原稿(プラスチックカード)の長さ以下ならステップS310に進む。
【0083】
ステップS309において、搬送されている原稿が第一特定原稿通過時間上限値T_s_highを上回り、且つ第二特定原稿通過時間上限値T_l_highを上回るということは、現在搬送されている搬送媒体Sが特定原稿(プラスチックカード)のいずれの辺よりも長い搬送媒体(原稿)であり、プラスチックカードではないことを示している。
【0084】
次にステップS310に進んだ場合を説明する。ステップS310ではセンサ通過時間計測手段として全ての原稿検知センサ60a~60cが原稿の検知をしなくなるまで待つ。原稿検知センサ群60のいずれかが原稿の検出をしている場合(NOの場合)は、ステップS309に戻る。次にステップS311に進む。
【0085】
全ての原稿検知センサ60a~60cを原稿の検知しなくなる状態は搬送媒体Sが原稿検知センサ60a~60cよりも搬送経路RTの下流側に搬送されたことを示す。
【0086】
このとき全ての原稿検知センサ60a~60cが原稿を検知しなくなったタイミングでセンサ通過時間t2(図中では原稿通過時間)が確定される(ステップS311)。
【0087】
次にステップS312へすすむ。ステップS311で確定したセンサ通過時間t2は搬送媒体Sの長さ方向を表している。ステップS312ではセンサ通過時間t2がプラスチックカードの短辺y(54mm)に相当するかを判断する。短辺y(54mm)に相当すると判定した場合、YESに進みステップS313へ、相当しないと判定した場合、NOに進みステップS314を実行する。
【0088】
ここで短辺yに相当するか否かの判断は、センサ通過時間t2が第一特定原稿通過時間条件の下限値T_s_lowから上限値T_s_highの範囲にあるか否かで判断する。本条件に合致すれば搬送媒体Sがプラスチックカードの短辺yと同じ長さであることが分かる。
【0089】
ここで第一特定原稿通過時間条件の下限値T_s_lowと上限値T_s_highは、搬送媒体Sの搬送速度をv(mm/秒)とすると、T_s_lowは(54mm-3mm)÷v(mm/秒)、T_s_highは(54mm+3mm)÷v(mm/秒)である。ここで、3mmはカードと判定するためにあらかじめ設定された値であり、これに限られない。
【0090】
ステップS313では搬送媒体Sのサイズが特定原稿(プラスチックカード)で、横流しされていると推測し、超音波センサ40の減衰量が第一超音波減衰量である減衰閾値Uss1以上である継続時間tus1の判定範囲の下限T_us_lowと上限T_us_highを設定する。これに設定する値はそれぞれ次に説明するT_uslとT_ushである。
【0091】
ここでT_uslとT_ushはセンサ通過時間t2を基に決定する。T_uslはt2-Δt1、T_ushはt2+Δt2とする。ここでΔt1とΔt2は超音波センサ40の検知精度と判定の余裕度によって決定する。
【0092】
ステップS312でNoであった場合、ステップS314でセンサ通過時間t2がプラスチックカードの長辺x(85.4mm)に相当するかを判断する。長辺x(54mm)に相当すると判定した場合、YESに進みステップS315へ、相当しないと判定した場合、NOに進みステップS325を実行する。
【0093】
ここで長辺xに相当するか否かの判断は、センサ通過時間t2が第二特定原稿通過時間条件の下限値T_l_lowから上限値T_l_highの範囲にあるか否かで判断する。本条件に合致すれば搬送媒体Sがプラスチックカードの長辺xと同じ長さであることが分かる。
【0094】
ここで第二特定原稿通過時間条件の下限値T_l_lowは(85.4mm-3mm)÷v(mm/秒)、上限値T_l_highは(85.4mm+3mm)÷v(mm/秒)である。
【0095】
ステップS315では特定原稿(プラスチックカード)のサイズで、縦流しされていると推定し、超音波センサ40の減衰量が第一超音波減衰量である減衰閾値Uss1以上である継続時間tus1の判定範囲T_us_lowとT_us_highを設定する。設定する値はそれぞれ次に説明するT_ullとT_ulhである。
【0096】
ここでT_ullとT_ulhはセンサ通過時間t2を基に決定する。T_ullはt2-Δt3、T_ulhはt2+Δt4とする。ここでΔt3とΔt4は超音波センサ40の検知精度と判定の余裕度によって決定する。
【0097】
ここでステップS312とS314でセンサ通過時間t2を判断する範囲として短辺側の判断範囲である第一特定原稿通過時間条件T_s_low~T_s_highと長辺側の判断範囲である第二特定原稿通過時間条件T_l_low~T_l_highを設定したが、これらの判断範囲はT_s_low≦T_l_lowかつ、T_s_high≦T_l_highである。
【0098】
しかし第一特定原稿通過時間条件と第二特定原稿通過時間条件の判断範囲が重ならないT_s_low<T_s_high<T_l_low<T_l_highであることが望ましい。つまり、ここでは搬送媒体Sの長さ(奥行)が特定原稿(プラスチックカード)の長辺なのか短辺なのかを明確に判断するために、上記の判断範囲にすることが望ましい。
【0099】
ステップS313とS315の次にステップS318を実行する。ステップS318は超音波減衰量検知手段として、超音波センサ40の受信器42が受信した超音波の受信波形の減衰量が第一超音波減衰量である閾値Uss1以上の状態を継続する継続時間tus1がステップS313またはS315で設定した範囲閾値T_us_low~T_us_highの間にあるかを判断する。継続時間tus1が上記範囲内であった場合はYESに進みステップS319へ進む。
【0100】
ステップS318において、超音波の受信減衰量が閾値Uss1以上である場合は、搬送媒体Sの材質がプラスチックカードであると推定できる。かつ上記の範囲閾値T_us_low~T_us_highの間に継続時間tus1が入っている場合は、搬送媒体Sの材質がプラスチックでありその長さが特定原稿であるプラスチックカードの長さに相当すると推定可能となる。
【0101】
ステップS319では、ステップS318で搬送媒体Sがプラスチックカードであると判断できため、プラスチックカードに応じた様々な追加の処理を実行する。例えば制御部80の画像処理部88の処理内容を変更してプラスチックカードに最適な画像処理を行ことが考えられる。
【0102】
ステップS319での特定原稿S(プラスチックカード)への処理に続いてステップS340に進み、現在の搬送媒体Sの搬送を終了する。ここでは不図示ではあるが、ステップS310で全ての原稿検知センサが原稿なしを検知してから、搬送媒体Sが排出トレイ4に排出されるまでの時間が経過したことをステップS340の搬送完了の条件に付加してもよい。
【0103】
再度、ステップS318の説明に戻る。範囲閾値T_us_low~T_us_highの間に継続時間tsu1が入っていない場合は、搬送媒体Sの材質がプラスチックではない、もしくは搬送媒体Sの材質がプラスチックで、長さが特定原稿(プラスチックカード)の長さに一致するものではないため、搬送媒体Sはプラスチックカードではないと判定し、NOに進み、前述のステップS325を実行する。
【0104】
ステップS318がNOということは特定原稿であるプラスチックカードに類似したサイズの原稿であることを判断したこととなる。
【0105】
ここで再度ステップS306がYESであった場合に戻る。この場合ステップS321を実行する。この時点で搬送媒体Sはプラスチックカードではないため通常の搬送原稿の搬送処理に移る。
【0106】
ステップS321では原稿搬送タイマtsheetを起動する。原稿搬送タイマtsheetは原稿検知センサ60a~60cの全てが原稿を検知しなくなるまでの時間を計測するタイマである。この時点でS304からのカウントを引き継ぐために初期値はt1とする。また、併せて原稿通過時間タイマt2の測定を停止する。
【0107】
タイマtsheetは搬送媒体Sの長さを測定するタイマとなっている。ここでの搬送媒体Sの長さは特定原稿(プラスチックカード)の長さ(奥行)を検出するためではなく、単純に搬送媒体Sが画像読取装置Aで搬送可能な長さ、または、搬送媒体Sが搬送路6内に留まる、いわゆる搬送ジャム状態にあるか否かを判断するために使用される。
【0108】
続いてステップS324では、ステップS301で開始した超音波センサ40の受信波形の減衰量が第一超音波減衰量である減衰閾値Uss1以上である継続時間tus1の測定を停止する。
【0109】
前述したようにステップS306でYESとなったことにより、搬送媒体Sは特定原稿(プラスチックカード)ではないと判断出来ているため、特定原稿を推定するための継続時間tus1の測定は搬送中の搬送媒体Sに関しては不要となることから測定を停止する。勿論、tus1の測定を継続しても支障はない。
【0110】
次にステップS325に進み、重送判定処理を実施する。重送判定処理は超音波センサ40の受信波形の減衰量が第二超音波減衰量である減衰閾値Uss2以上である状態が連続する継続時間tus2が重送継続時間の閾値を超えたか否かを判断する。
【0111】
継続時間tus2が重送継続時間を超えていた場合、YESとなりステップS329へ進み、継続時間tus2が重送継続時間を超えない場合、NOとなり重送判定処理の結果がYESの場合はステップS329へ、NOの場合はステップS326へ進む。
【0112】
なお、不図示ではあるが、ステップS325に到達する前に重送判定部は継続時間tus2が重送継続時間を超えているか否かだけを判断し記憶しておき、ステップS325に到達した時点で記憶されていた判断結果からステップS325の判定処理を実施してもよい。
【0113】
ステップS329ではステップS325において搬送媒体Sが重送されていると判定されているため、搬送媒体Sの搬送を停止し、作業者に重送が発生したことを報知し、現在の搬送媒体Sの搬送を終了する。なお、搬送している搬送媒体Sについては装置外に排出した後で搬送を停止し、重送が発生したことを報知してもよい。
【0114】
ステップS326では全ての原稿検知センサ60a~60cが原稿を検知しなくなっているか否かを判断する。全ての原稿検知センサ60a~60cが原稿を検知しなくなっていれば、搬送媒体Sは搬送完了したと判断し、前述のステップS340に進み、いずれかの原稿検知センサ60a~60cが原稿を検知していれば、搬送媒体Sは搬送途中であると判断しステップ327へ進む。
【0115】
ステップS326でNoの場合、つまり搬送媒体Sが搬送中で原稿検知センサ群60のいずれかが原稿を検出し続けている場合、はステップS327で搬送媒体の長さを測定するタイマであるtsheetがTsheet_errorを超えていないか確認する。タイマtsheetがTsheet_errorを超えている場合はYESとなりステップS328に進み、超えてない場合はNOとなり、前述のステップS325に戻り重送判定を再実施する。
【0116】
ここでTsheet_errorは画像読取装置Aが搬送媒体Sを搬送可能な最大の長さに相当している。無論、無限長の長さを搬送できる場合はステップS326をスキップしても良い。ここで搬送可能な最大の長さをLmax(mm)、搬送速度v(mm/秒)とするとTsheet_errorはLmax(mm)÷v(mm/秒)であらわされる。
【0117】
ステップS328では搬送ジャム処理を実施する。ステップS327でYESであったため、搬送媒体Sの長さが搬送可能な最大の長さを超えている状態であるため搬送媒体Sの搬送を停止する。
【0118】
ここで、搬送可能な最大の長さを超えているということは、搬送中に搬送媒体Sは搬送路6内で紙詰まりといった原稿のジャムが発生していると判断し、前述のとおり搬送を停止した後、使用者に対して原稿が最大長を超えている、または、紙詰まり等のジャムが発生していることを報知する。
【0119】
また、この時点で搬送を停止するため、重送判定用の継続時間tus2の測定を停止する。
【0120】
次にステップS309で、判定がYESであった場合の説明に戻る。ステップS309の処理を開始する直前においては、搬送媒体Sの幅が特定原稿であるプラスチックカードの幅である可能性があるため、特定原稿を検出するための処理が継続されている。
【0121】
ステップS309でYesの場合、つまり搬送媒体の長さが特定原稿(プラスチックカード)の長さ(奥行)より長く、プラスチックカードではないと判断された場合、ステップS322へ進む。
【0122】
次のステップS322では制御部80は搬送媒体の長さを測定するタイマである原稿搬送タイマtsheetの初期値をこの時点までのカウントを引き継ぐためにタイマt2の値に設定してスタートする。その後、前述したステップS324以降を実施する。
【0123】
なお、ステップS329で例示した方法と異なり重送と判断した場合は現在の搬送媒体Sの搬送を完了させ、載置台1に積載された次の搬送媒体Sの搬送を開始しない方法でも良い。
【0124】
なお、ステップS340では全ての原稿検知センサ60a~60cが原稿を検知しなくなったら即座に搬送完了としているが、一定の時間搬送を継続した後に搬送完了としても良い。つまり、ステップS326の判定は全ての原稿検知センサ60a~60cが原稿を検知しなくなって規定の時間を経過したか否かを判断しても良い。このように制御する理由としては、原稿検知センサ群60は排紙機構である第3搬送部30より搬送方向D1の上流側にあるため第3搬送部30を搬送原稿Sの後端部が抜けきるまでの時間分を待つことが望ましいためである。
【0125】
なお、本実施形態ではステップS313とS315においてステップS318で使用する判定閾値T_us_lowとT_us_highを設定し、ステップS318で超音波減衰量検知手段として超音波センサ40の受信器42からの超音波の受信波形の減衰量が第一超音波減衰量である閾値Uss1以上の状態の継続時間tus1を範囲閾値T_us_low~T_us_highの間にあるかを判断して、上記範囲内の場合にステップS319で搬送媒体が特定原稿(プラスチックカード)であるか判断する例を示したが、超音波減衰量検知手段として、ステップS318の代わりに、超音波の受信波形の減衰量が第一超音波減衰量である閾値Uss1以上の状態が発生したことを検知したことだけを以って、搬送媒体Sが特定原稿(プラスチックカード)であると判断しても良い。これは、S312かS314でYesとなった結果S318に到達している、すなわち特定原稿のサイズを満たすとの判定が済んでいる状態であるため、超音波の受信波形の減衰量が閾値Uss1以上となったことにより即座に特定原稿であると判断してもよいことによる。なお、この態様においては特定原稿と同サイズの原稿としては例えば名刺などの重送しにくい原稿に限られることから、超音波の受信波形の減衰量が閾値Uss1以上となったことによって特定原稿であると判断しているが、同サイズの原稿の重送を考慮して超音波の受信波形の減衰量が閾値Uss1以上となり、Uss2以上とならない場合に特定原稿であると判断するように構成してもよい。
【0126】
また、ステップS301では搬送媒体Sが超音波センサ40に到達していない時の超音波の強度の測定のみを行い、ステップS302において原稿検知センサ50で原稿を検知した時点から継続時間tus1とtus2の測定を開始するようにしても良い。
【0127】
また、ステップS302において、原稿検知センサa(原稿検知センサ50)が一定時間以上原稿を検知しない場合、給紙異常と判断して、搬送を停止し、使用者に報知しても良い。同様に、ステップS303において、一定時間以上原稿が検知できなければ紙詰まり等による搬送媒体Sの搬送異常と判断して、搬送媒体Sの搬送を停止し、使用者に搬送異常であることを報知しても良い。
【0128】
また、ステップS310で規定の時間以上待っても、原稿検知センサ60a~60cの少なくともいずれか1つ以上が原稿を検知し続けていた場合は、搬送媒体Sが搬送路6内で搬送されなくなり、留まり続けている搬送異常と判断して搬送媒体Sの搬送を停止し、使用者に搬送異常であることを報知しても良い。
【0129】
また、ステップS312において、T_s_lowとT_s_highの設定方法として±3mmの範囲をもって設定する例示をしたが、これは3mmである必要は無く、また、-0mm~+5mmの範囲のように範囲の中心をずらした設定であっても良い。これは原稿検知センサの精度や制御部80の処理精度によって合わせることが可能である。
【0130】
同様に、ステップS314においてT_l_lowとT_l_highの設定方法として±3mmの範囲をもって設定する例示をしたが、これは3mmである必要は無く、また、-0mm~+5mmの範囲のように範囲の中心をずらした設定であっても良い。これは原稿検知センサの精度や制御部80の処理精度によって合わせることが最適である。
【0131】
また、ステップS313では通過時間t2を基にT_uslとT_ushを決定する例示をしたが、T_uslとT_ushはセンサ通過時間t2に関らず固定的な時間として設定しても良い。例えば、プラスチックカードの短辺に対応する時間範囲としても良い。同様に、ステップS315ではセンサ通過時間t2を基にT_ullとT_ulhを決定する例示をしたが、T_ullとT_ulhはセンサ通過時間t2に関らず固定的な時間として設定しても良い。例えばプラスチックカードの長辺に対応する時間範囲としても良い。
【0132】
また、ステップS318において閾値Uss1以上の状態の継続時間tus1を判定せずに、閾値Uss1以上の状態が発生したこともって特定原稿であると判断する例では、継続時間tus1の測定および判定閾値の設定が不要となり、より処理負荷が少ない状態で特定原稿を判定可能となる。
【0133】
以上のように、第1実施形態によれば、原稿検知センサを搬送方向に直交する方向に所定の距離離間して配置し、搬送媒体が原稿検知センサを通過する個数から、搬送媒体が特定原稿(ここではプラスチックカード)の幅か否か推測し、特定原稿かつ搬送媒体が原稿検知センサ群60を通過する時間から搬送媒体の長さ(奥行)が特定原稿(ここではプラスチックカード)の長さ(奥行)に合致しているかを判定し、さらに超音波センサ40の減衰量から特定原稿または重送であることを判定する。
【0134】
これにより、容易かつ処理負荷を高めることなく、誤って重送状態であると判断することなく、特定原稿(プラスチックカード)であることを判断可能である。
【0135】
また、原稿検知センサ群60および超音波センサ40よりも搬送方向D上流側に別の原稿検知センサ50を配置することで、超音波減衰量検知手段による減衰量低下時の継続時間の計測開始を確実に行えるようになり、さらに特定原稿を正確に判別することが可能になる。
【0136】
また、超音波減衰量検知手段による減衰量が閾値以上となっている期間の継続時間をもとに原稿判定手段の判断を行うことにより、特定原稿であるカードと類似するサイズの原稿、例えば名刺など、に付箋が貼付されているような場合に、超音波の減衰量が閾値以上である時間から特定原稿であると誤検知することがなくなる。
【0137】
また、搬送媒体Sが原稿検知センサ群60を通過する時間の判定範囲を、特定原稿の長辺、短辺のそれぞれに対応する判定範囲として複数設け、さらにこれらの判定範囲が重ならないようにすることで、特定原稿の縦送り、横送りを判断可能となり、より厳密に特定原稿の判定が可能となる。
【0138】
また、原稿検知センサ群60に含まれる原稿検知センサの離間距離を特定原稿であるプラスチックカードのサイズを元に決定することで、より厳密に搬送媒体の幅を判定可能となる。
【0139】
〔第2実施形態〕
第2実施形態は、第1実施形態の変形例である。第1実施形態との違いは原稿検知センサ群60に含まれる原稿検知センサの個数を増やし、搬送媒体Sの幅が特定原稿(プラスチックカード)の長辺か短辺かを判別できるようにした点である。図5図6を使用して説明する。なお、詳細な説明は第1実施形態との違いについてのみ記載するものとし、同様の構成については同じ符号を用いて説明する。
【0140】
<第2実施形態における原稿検知センサ>
第2実施形態における搬送経路RT内部の構造について図6を用いて説明する。第1実施形態との違いは、原稿検知センサ群60が含む原稿検知センサの個数が増えている点である。
【0141】
原稿検知センサ群60は、搬送方向D1に直交する同一面内に離間して5個設けられてた原稿検知センサ60a、60b、60c、60d、60eからなる。夫々発光部61(61a、61b、61c、61d、61e)と受光部62(不図示)を有している。
【0142】
搬送媒体Sはここではプラスチックカードとしている。プラスチックカードは85.4mm×54mmのサイズの物が一般的である。図6(a)はプラスチックカードが横向きに搬送された場合、図6(b)はプラスチックカードが縦向きに搬送された場合、図6(c)はプラスチックカードより幅の広い原稿が搬送された場合を模式的に示している。
【0143】
搬送媒体Sは搬送経路RTの媒体搬送方向D1に直交する向きの中心部(図中左右方向の中心部)を通過するように搬送される。原稿検知センサの発光部61aは前記搬送経路RTの中心部(図中左右方向の中心部)に配置される。残りの原稿検知センサの発光部61b~eは媒体搬送方向D1に直交する面内で図中左右方向に原稿検知センサの発光部61aから離間して配置される。
【0144】
このとき発光部61dから61eまでの離間距離は前述のプラスチックカードの長辺xである85.4mmよりも広くとられている。つまり、発光部61aから61dまでの距離をw_ad、発光部61aから61eまでの距離をw_aeとしたとき、x<w_ad+w_aeの関係である。また、発光部61bと61cとの離間距離は前述のプラスチックカードの短辺yである54mmよりも広く、且つプラスチックカードの長辺xである85.4mmよりも狭く取られている。つまり、発光部61aから61bまでの距離をw_ab、発光部61aから61cまでの距離をw_acとしたとき、y<w_ab+w_ac<xの関係である。
【0145】
このことからプラスチックカードが搬送された時に、搬送方向D1に直交する幅方向が長辺xであった場合(図6(a))は、原稿検知センサ群60の発光部61dと61eは同時に、前述した配置上の位置関係から、原稿通過を検知できない位置関係であり、幅方向が短辺であった場合(図6(b))は、原稿検知センサ群60の発光部60bと60cは同時に原稿を検知する事が出来ない距離関係になっている。
【0146】
つまり、原稿検知センサ群60a~60eのうち、通過した個数で搬送媒体Sの幅を推定可能な関係になっている。なお、原稿検知センサ群60aは搬送路の幅方向中心部付近にあることが望ましく、60bと60cは搬送路幅方向中心線に対して対称な位置に、60dと60eも搬送路幅方向中心線に対して対称な位置に配置される。
【0147】
<第2実施形態における搬送手順>
搬送開始が指示されると図5のフローチャートが開始される。搬送手順はステップS301から開始する。次にステップS302を実施するが第1実施形態で説明済みの為、詳細は割愛する。
【0148】
次にステップS403~S406を実施するが、これらのステップはそれぞれ第1実施形態のステップS303からS306までと概ね同じである。違いは第1実施形態では原稿検知センサ60a~cであったところが本実施形態では原稿検知センサ60a~eに変更になっている点である。
【0149】
ステップS406がYesの場合、搬送媒体Sの幅が特定原稿(プラスチックカード)の長辺xより広い原稿でありプラスチックカードの幅でないと判断し、ステップS321に進む。続いてステップS324~ステップS329を実施する。これらは第1実施形態で説明済みである。
【0150】
ステップS406の判定がNo、つまり搬送媒体Sの幅が特定原稿(プラスチックカード)の幅である可能性がある場合はS408へ進む。
【0151】
ステップS408では原稿検知センサ60aが原稿を検知し、かつ原稿検知センサ60bと60cのいずれも原稿を検知していない状態かを判定する。この条件を満たす場合、YESとなり、ステップS410に進む。それ以外の原稿検知センサ群60が原稿を検知した場合はNOとなり、ステップS423へ進む。
【0152】
ステップS408でYESとなるのは、原稿検知センサ60aが原稿を検知し、かつ原稿検知センサ60bと60cの両方が原稿を検知していない状態であるから、搬送媒体Sの幅が特定原稿(プラスチックカード)の短辺yに相当する原稿が搬送されていると推定される。一方、この条件を満たさない、つまり原稿検知センサ60aおよび少なくとも60bおよび60cの一方が原稿を検知している場合は、搬送媒体Sの幅が特定原稿(プラスチックカード)の長辺xに相当していると推定され、ステップS423に進む。
【0153】
ステップS408でYESとなった場合、ステップS410に進み、センサ通過時間t2の判定閾値範囲T_lowとT_highを第二特定原稿通過時間条件であるT_l_lowとT_l_highに設定する。T_l_lowとT_l_highは第1実施形態のステップS312の説明部で詳細を説明しているため割愛するが、つまりは搬送原稿Sの長さが特定原稿(プラスチックカード)の長辺xに相当するかを表す範囲となっている。
【0154】
次に、ステップS411に進み、超音波センサ40の減衰量が第一超音波減衰量である減衰閾値Uss1以上である継続時間tus1の判定範囲T_us_lowとT_us_highを設定する。設定する値はそれぞれT_ullとT_ulhである。ここでは継続時間t2は確定していないため、固定的な値として、特定原稿(プラスチックカード)の長辺の長さに相当する時間とする。詳細に関しては第1実施形態に記載されているため割愛する。次に、ステップS412に進む。
【0155】
ここで一度ステップS408に戻り、判定がNO、つまり搬送媒体Sの幅が特定原稿(プラスチックカード)の長辺xに相当すると判断した場合について説明する。この場合、ステップS423へ進む。
【0156】
ステップS423では、センサ通過時間t2の判定閾値範囲T_lowとT_highを夫々第一特定原稿通過時間条件であるT_s_lowとT_s_highに設定する。
【0157】
T_s_lowとT_s_highは第1実施形態のステップS314の説明部で詳細を説明しているため割愛するが、つまりは長さ(奥行)が特定原稿(プラスチックカード)の短辺yに相当するかを表す範囲となっている。
【0158】
次に、ステップS424に進み、超音波センサ40の減衰量が第一超音波減衰量である減衰閾値Uss1以上である継続時間tus1の判定範囲T_us_lowとT_us_highを設定する。設定する値はそれぞれT_uslとT_ushである。ここでは継続時間t2は確定していないため、固定的な値として、特定原稿(プラスチックカード)の短辺yの長さに相当する時間とする。次に、ステップS412に進む。
【0159】
ステップS412ではステップS410とS423で設定した継続時間t2の判定閾値範囲の上限であるT_highをセンサ通過時間t2が超えているかを随時確認する。センサ通過時間t2がT_highを超えた場合、YESとなり前述のステップS322に進む。超えていない場合はNoとなりステップS310に進む。
【0160】
ここでステップS412がYESとなるということは、センサ通過時間t2がT_highを超えており、搬送媒体Sの長さが想定される特定原稿(プラスチックカード)の長さを超えていると判断でき、搬送媒体Sは特定原稿(プラスチックカード)では無いとなったことを意味する。
【0161】
ステップS412でNo、つまり搬送媒体Sが特定原稿(プラスチックカード)の長さを超えてなければステップS310に進み、全ての原稿検知センサ60a~60eが原稿を検知しなくなるまでステップS412に戻り、ステップS310を繰り返す。
【0162】
ステップS310で全ての原稿検知センサ60a~60eが原稿を検知しなくなると、ステップS311に進み、継続時間t2が確定する。
【0163】
次にステップS415に進み、センサ通過時間時間t2がT_lowを上回っていることを確認する。もし、継続時間t2がT_lowを下回っている場合はNoとなり前述のステップS322に進む。一方、継続時間t2がT_low以上である場合はYesとなりステップS417に進む。
【0164】
ここで、ステップ415でNoということは、搬送媒体Sの長さが想定される特定原稿(プラスチックカード)の長さより短いと判断でき、搬送媒体Sは特定原稿(プラスチックカード)ではないとなる。一方、YESの場合は、搬送媒体Sの長さが想定される特定原稿(プラスチックカード)の長さの下限閾値より長いこととなり、特定原稿の可能性があることになる。
【0165】
ステップS415でYesとなると、ステップS417に進む。ステップS417では超音波センサ40の受信器42からの超音波の受信量の減衰量に対して第一超音波減衰量である減衰閾値Uss1以上の状態の継続時間tus1がステップS411またはS424で設定した範囲閾値T_us_lowとT_us_highの間にあるかを判断する。
【0166】
上記の範囲に継続時間tus1が入っている場合は、YESとなり前述のステップS319に進む。一方上記範囲に継続時間tus1が入っていない場合は、NOとなりステップS420へ進む。
【0167】
ここで、上記の範囲に継続時間tus1が入っているということは、超音波センサ40の結果よりプラスチックカードに相当する減衰状態が、プラスチックカードに相当する長さ継続したことを示しており、搬送媒体Sがプラスチックカードであると判定できる。
【0168】
一方、ステップS417で説明した範囲閾値に継続時間tsu1が入っていない場合は、超音波センサ40の結果よりプラスチックカードに相当する減衰状態が、プラスチックカードに相当する長さだけ継続していない、つまり搬送媒体Sがプラスチックカードではないと判断する。
【0169】
ステップS420では特定原稿(プラスチックカード)の判定が完了しているため、特定原稿を判定するための減衰量閾値Uss1以上の継続時間tus1の測定を停止しステップS325に進む。
【0170】
なお、本実施形態の例ではステップS411とS424で超音波センサ40の減衰量がUss1以上である継続時間tus1の判定範囲T_us_lowとT_us_highを継続時間t2によらず、ステップS408の判定を基に搬送媒体の幅推定から搬送される媒体の長さが特定原稿(プラスチックカード)の長辺か短辺かで判定範囲を設定する例を示した。しかし第1実施形態で例示したステップS311で継続時間t2が確定した後に継続時間t2に基づいてT_us_lowとT_us_highを設定しても良い。
【0171】
本実施形態では原稿検知センサ群60は5個の例を示したが、これは5個に限るものではなく、より多く配置しても良い。より多く配置することで、より精度よく搬送媒体Sの幅を検知可能である。
【0172】
この場合、ステップS406において搬送媒体Sの幅が特定原稿(プラスチックカード)の長辺より広いかを搬送媒体Sが通過する原稿検知センサ群60の位置で判断する例を示したが、例えば原稿検知した原稿検知センサのうち最も離間している原稿検知センサ間の距離が特定原稿(プラスチックカード)の長辺を判定する上限値以上か否かで判断してもよい。
【0173】
同様にステップS408を、原稿を検知した原稿検知センサのうち最も離間している原稿検知センサ間の距離が特定原稿の短辺を判定する範囲内か否かで判断して、合致する場合はステップS410に進み、特定原稿の長辺を判定する下限閾値以上か否かを判断し、この条件に合致する場合はステップS423に進み、それ以外はステップS321へ進むようにしてもよい。
【0174】
以上のように、第2実施形態によれば、原稿検知センサ群60に含まれる原稿検知センサを多く配置することで搬送媒体の幅をより厳密に判断可能で、搬送媒体の幅が、特定原稿(プラスチックカード)の短辺なのか、長辺なのか、それとも特定原稿(プラスチックカード)ではないのかをより正確に判断でき、演算処理の負荷を上げることなく、より厳密に特定原稿を判断可能となる。
【符号の説明】
【0175】
A 画像読取装置
S 搬送媒体
RT 搬送経路
D1 搬送方向
1 載置台
6 搬送路
40 重送検出センサ
41 発信器
42 受信器
50、60a、60b、60c、60d、60e 原稿検知センサ
51、61a、61b、61c、61d、61e 発光部
52、62 受光部
60 原稿検知センサ群
70 画像読取ユニット
80 制御部
82 記憶部
86 アクチュエータ
88 画像処理部

図1
図2
図3
図4
図5
図6