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特開2024-93137冷凍回路中の蒸発器における冷媒流量を制御する装置
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  • 特開-冷凍回路中の蒸発器における冷媒流量を制御する装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093137
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】冷凍回路中の蒸発器における冷媒流量を制御する装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20240702BHJP
   F25B 41/39 20210101ALI20240702BHJP
   F25B 41/34 20210101ALI20240702BHJP
【FI】
F25B1/00 304L
F25B41/39
F25B41/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209320
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】503021102
【氏名又は名称】五和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 稔
(57)【要約】
【課題】冷凍回路の安全運転を確保しつつ、蒸発器によって冷却された気体の精密な温度制御が行えるようにする。
【解決手段】冷凍回路1中に配置された蒸発器2における冷媒流量を制御する装置であって、蒸発器の冷媒入口及び冷媒出口にそれぞれ配置された入口側及び出口側温度センサ3、4と、蒸発器によって冷却された気体の温度を測定する温度センサ5と、冷凍回路における凝縮器11及び蒸発器間に直列に配置された一対の電子膨張弁6、7と、入口側及び出口側温度センサの測定値から算出した蒸発器の冷媒出口の冷媒の過熱度に基づいて一対の電子膨張弁のうちの上流側の電子膨張弁6の開度を制御する第1の膨張弁制御部8と、温度センサの測定値に基づいて一対の電子膨張弁のうちの下流側の電子膨張弁7の開度を制御する第2の膨張弁制御部9を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍回路中に配置された蒸発器における冷媒流量を制御する装置であって、
前記蒸発器の冷媒出口、または前記冷媒出口および冷媒入口に配置され、前記冷媒出口の冷媒の過熱度を測定する過熱度センサと、
前記蒸発器によって冷却された気体の温度を測定する温度センサと、
前記冷凍回路における凝縮器および前記蒸発器間に直列に配置された一対の電子膨張弁と、
前記過熱度センサの測定値に基づいて前記一対の電子膨張弁のうちの上流側の電子膨張弁の開度を制御する第1の膨張弁制御部と、
前記温度センサの測定値に基づいて前記一対の電子膨張弁のうちの下流側の電子膨張弁の開度を制御する第2の膨張弁制御部と、を備えたものであることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記過熱度センサは、
前記蒸発器の前記冷媒入口に配置された入口側温度センサと、
前記蒸発器の前記冷媒出口に配置された出口側温度センサと、からなり、
前記第1の膨張弁制御部は、前記入口側および前記出口側温度センサのそれぞれの測定値から前記蒸発器の前記冷媒出口の冷媒の過熱度を算出し、前記過熱度が予め設定された一定値となり、または予め設定された数値範囲内にあるように、前記上流側の電子膨張弁の開度を制御することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記過熱度センサは、
前記前記蒸発器の前記冷媒出口に配置された出口側温度センサおよび圧力センサからなり、
前記第1の膨張弁制御部は、前記出口側温度センサおよび前記圧力センサのそれぞれの測定値から前記蒸発器の前記冷媒出口の冷媒の過熱度を算出し、前記過熱度が予め設定された一定値となり、または予め設定された範囲内にあるように、前記上流側の電子膨張弁の開度を制御することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍回路中に配置された蒸発器における冷媒の流量を制御する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷凍回路は、圧縮機、凝縮器、膨張弁および蒸発器がこの順に管路によって環状に接続されたものからなり、冷凍回路内に封入された冷媒ガスが圧縮、凝縮、膨張および蒸発のサイクルを繰り返して循環し、回路内に高温部と低温部を生じさせる。
【0003】
圧縮機では、低圧の気体状冷媒が圧縮され、高温高圧の気体状冷媒が排出される。高温高圧の気体状冷媒は、凝縮器に流入し、そこで外気や冷却水によって冷却されて凝縮し、高圧の液体状冷媒となる。
【0004】
高圧の液体状冷媒は膨張弁を通過することで急速減圧され、その際、一部の冷媒は気化し、気化熱で冷媒自身が冷却されて低温低圧の気液混合状態になる。気液混合状態の冷媒は蒸発器に入り、蒸発器内で熱を吸収しながら蒸発し続け蒸発器内を冷却する。
【0005】
冷媒は、蒸発器から流出した時点で全てが気化して、低圧の気体状冷媒になる。その後、低圧気体状冷媒は圧縮機に吸入され再び高温高圧の気体状冷媒となり、サイクルが繰返される。
【0006】
蒸発器は室内の空気を循環させる空調機内に配置され、蒸発器において冷媒が気化する間に室内の空気が冷却される。
【0007】
この構成によれば、蒸発器における冷却負荷と冷媒流量のバランスがとれず、冷媒流量が冷却負荷に対して過剰になる(室内空気の温度に対して冷媒流量が多い)と、冷媒が蒸発器で完全に気化しきれずに残り、一部の冷媒が液体状態で圧縮機に流入し(いわゆる「液バック」の発生)、液圧縮によって圧縮機が故障するおそれがある。
【0008】
液バックの発生は、蒸発器における冷媒の加熱度(蒸発器の出口での冷媒の温度と、蒸発器の入口での冷媒の温度との差)を測定すれば検出が可能であり、過熱度が予め設定された一定値となり、または予め設定された数値範囲内にあるように蒸発器の冷媒流量を制御することで液バックの発生が防止できる。
【0009】
そして、従来技術においては、冷凍回路中の蒸発器において、液バックの発生を防止しつつ、室内空気の温度を所定値に保つように冷媒流量を制御する装置が知られている。
この種の装置として、例えば、電子膨張弁を備えた冷凍機と、冷凍機で冷却される室内の温度を検出する第1温度センサと、第1温度センサの温度検出値と、設定温度とを比較して、室内温度を設定温度に近づけるための冷凍機の出力の目標値を求める温度演算部と、冷凍機内の蒸発器の出口の温度を検出する第2温度センサと、蒸発器の出口の温度を検出する第3温度センサと、第2温度センサの温度検出値と第3温度センサの温度検出値から蒸発器の出口での冷媒の過熱度を求め、過熱度と設定過熱度に基づき電子膨張弁の開度を抑制するための抑制値を求める開度抑制演算部と、抑制値を超えない範囲で冷凍機の出力が目標値に近づくように電子膨張弁の開度を制御する出力制御部と、を有する装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
しかしながら、この装置においては、電子膨張弁の開度の制御が室内温度と蒸発器の出口での冷媒の過熱度とを関係づけながら行われるが、室内空気の温度を精密に制御することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008-32285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の課題は、冷凍機の安全運転を確保しつつ、蒸発器によって冷却された気体の精密な温度制御が行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明によれば、冷凍回路中に配置された蒸発器における冷媒流量を制御する装置であって、前記蒸発器の冷媒出口、または前記冷媒出口および冷媒入口に配置され、前記冷媒出口の冷媒の過熱度を測定する過熱度センサと、前記蒸発器によって冷却された気体の温度を測定する温度センサと、前記冷凍回路における凝縮器および前記蒸発器間に直列に配置された一対の電子膨張弁と、前記過熱度センサの測定値に基づいて前記一対の電子膨張弁のうちの上流側の電子膨張弁の開度を制御する第1の膨張弁制御部と、前記温度センサの測定値に基づいて前記一対の電子膨張弁のうちの下流側の電子膨張弁の開度を制御する第2の膨張弁制御部と、を備えたものであることを特徴とする装置が提供される。
【0014】
本発明の好ましい実施例によれば、前記過熱度センサは、前記蒸発器の前記冷媒入口に配置された入口側温度センサと、前記蒸発器の前記冷媒出口に配置された出口側温度センサと、からなり、前記第1の膨張弁制御部は、前記入口側および前記出口側温度センサのそれぞれの測定値から前記蒸発器の前記冷媒出口の冷媒の過熱度を算出し、前記過熱度が予め設定された一定値となり、または予め設定された数値範囲内にあるように、前記上流側の電子膨張弁の開度を制御し、前記第2の膨張弁制御部は、前記温度センサの測定値が予め設定された一定値となるように、前記下流側の電子膨張弁の開度を制御する。
【0015】
本発明の別の好ましい実施例によれば、前記過熱度センサは、前記前記蒸発器の前記冷媒出口に配置された出口側温度センサおよび圧力センサからなり、前記第1の膨張弁制御部は、前記出口側温度センサおよび前記圧力センサのそれぞれの測定値から前記蒸発器の前記冷媒出口の冷媒の過熱度を算出し、前記過熱度が予め設定された一定値となり、または予め設定された範囲内にあるように、前記上流側の電子膨張弁の開度を制御し、前記第2の膨張弁制御部は、前記温度センサの測定値が予め設定された一定値となるように、前記下流側の電子膨張弁の開度を制御する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、冷凍回路中に一対の電子膨張弁を直列に配置し、一対の電子膨張弁のうちの上流側の電子膨張弁の開度を、蒸発器の冷媒出口の冷媒の過熱度に基づいて制御するとともに、一対の電子膨張弁のうちの下流側の電子膨張弁の開度を、蒸発器によって冷却された気体の温度に基づいて制御するので、冷却すべき気体の精密な温度制御と、冷凍回路(冷凍機)の安全運転の確保という2つの目的を同時に達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明が適用された冷凍回路の1例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の構成を好ましい実施例に基づいて説明する。
図1は、本発明が適用された冷凍回路の1例を示す図である。
図1を参照して、本発明は冷凍回路1中の蒸発器2における冷媒流量を制御する装置に係るものであり、本発明によれば、蒸発器2の冷媒入口に配置された入口側温度センサ3と、蒸発器2の冷媒出口に配置された出口側温度センサ4と、蒸発器2によって冷却された気体の温度を測定する温度センサ5とが備えられる。
【0019】
この場合、入口側温度センサ3の測定値tと出口側温度センサ4の測定値tとの差Δt=t-tは、蒸発器2の冷媒出口の冷媒の過熱度を表しており、入口側温度センサ3および出口側温度センサ4は過熱度センサを構成している。
【0020】
この実施例では、過熱度センサが、蒸発器2の冷媒入口および冷媒出口にそれぞれ配置した入口側および出口側温度センサ3、4から構成されているが、過熱度センサの構成はこれに限定されず、それの代わりに、例えば、蒸発器2の冷媒出口に配置した出口側温度センサおよび圧力センサから過熱度センサを構成することもできる。
【0021】
本発明によれば、さらに、冷凍回路1における凝縮器11および蒸発器2間に直列に配置された一対の電子膨張弁6、7が備えられる。
なお、図1中、10は圧縮機である。
【0022】
さらに、本発明によれば、入口側および出口側温度センサ3、4のそれぞれの測定値から蒸発器2の冷媒出口の冷媒の過熱度を算出し、過熱度が予め設定された一定値となり、または予め設定された数値範囲内にあるように、一対の電子膨張弁6、7のうちの上流側の電子膨張弁6の開度を制御する第1の膨張弁制御部8と、温度センサ5の測定値が予め設定された一定値となるように、一対の電子膨張弁6、7のうちの下流側の電子膨張弁7の開度を制御する第2の膨張弁制御部9とが備えられる。
【0023】
本発明によれば、冷凍回路2中に一対の電子膨張弁6、7を直列に配置し、一対の電子膨張弁6、7のうちの上流側の電子膨張弁6の開度を、蒸発器の冷媒出口の冷媒の過熱度に基づいて制御するとともに、一対の電子膨張弁6、7のうちの下流側の電子膨張弁7の開度を、蒸発器2によって冷却された気体の温度に基づいて制御するので、冷却すべき気体の精密な温度制御と、冷凍回路2(冷凍機)の安全運転の確保という2つの目的を同時に達成できる。
【符号の説明】
【0024】
1 冷凍回路
2 蒸発器
3 入口側温度センサ
4 出口側温度センサ
5 温度差センサ
6 上流側の電子膨張弁
7 下流側の電子膨張弁
8 第1の膨張弁制御部
9 第2の膨張弁制御部
10 圧縮機
11 凝縮器
図1