(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093143
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】生地の接合構造及びその用途
(51)【国際特許分類】
D06M 17/00 20060101AFI20240702BHJP
A41H 43/04 20060101ALI20240702BHJP
A41D 31/18 20190101ALI20240702BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20240702BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20240702BHJP
B32B 7/05 20190101ALI20240702BHJP
D06M 17/10 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
D06M17/00 H
A41H43/04 Z
A41D31/18
A41D31/00 502A
B32B5/26
B32B7/05
D06M17/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209332
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 誠
(72)【発明者】
【氏名】北山 裕教
(72)【発明者】
【氏名】片岡 暁
(72)【発明者】
【氏名】田中 君枝
(72)【発明者】
【氏名】古閑 豊
【テーマコード(参考)】
4F100
4L032
【Fターム(参考)】
4F100AK51C
4F100BA03
4F100CB00C
4F100DC30C
4F100DG11A
4F100DG11B
4F100GB72
4F100GB74
4F100GB87
4L032AA06
4L032AB01
4L032AB03
4L032AC01
4L032BA05
4L032BA09
4L032BB00
4L032BD01
4L032BD03
4L032DA00
4L032DA01
4L032EA00
4L032EA06
(57)【要約】
【課題】 生地の縦方向及び横方向における伸縮性を保ちつつ生地の重なり領域を接合でき、さらに、前記重なり領域の縁部が捲れ難い生地の接合構造を提供する。
【解決手段】 縦方向及び横方向に伸縮性を有する第1生地51と第2生地52を重ね合わせた帯状の重なり領域6が接着剤からなる接着部を介して接合された生地の接合構造において、前記重なり領域6の一方の縁部である第1縁部61が、前記重なり領域6の延在方向に沿って互いに間隔を開けて設けられた複数の線状の第1接着部1によって接合され、前記重なり領域6のもう一方の縁部である第2縁部62が、前記重なり領域6の延在方向に沿って互いに間隔を開けて設けられた複数の線状の第2接着部2によって接合されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向及び横方向に伸縮性を有する第1生地と第2生地を重ね合わせた帯状の重なり領域が接着剤からなる接着部を介して接合された生地の接合構造において、
前記重なり領域の一方の縁部である第1縁部が、前記重なり領域の延在方向に沿って互いに間隔を開けて設けられた複数の線状の第1接着部によって接合され、
前記重なり領域のもう一方の縁部である第2縁部が、前記重なり領域の延在方向に沿って互いに間隔を開けて設けられた複数の線状の第2接着部によって接合されている、生地の接合構造。
【請求項2】
前記重なり領域の第1縁部と第2縁部の間である中間部が、前記重なり領域の延在方向に沿って間隔を開けて設けられた複数の第3接着部によって接合されている、請求項1に記載の生地の接合構造。
【請求項3】
前記第3接着部が、前記延在方向に対して傾斜した方向に延びる傾斜線状接着部を有する、請求項2に記載の生地の接合構造。
【請求項4】
前記第1接着部と第3接着部と第2接着部が、一筆書きの線状を成した一連接着部とされ、前記一連接着部が、前記重なり領域の延在方向に沿って互いに間隔を開けて複数設けられている、請求項2に記載の生地の接合構造。
【請求項5】
前記第3接着部が、前記延在方向に沿って線状に延びる複数の線状接着部を有し、
前記複数の線状接着部が、前記重なり領域の幅方向中央部において、前記重なり領域の延在方向に沿って互いに間隔を開けて設けられている、請求項2に記載の生地の接合構造。
【請求項6】
前記第3接着部が、環状を成した環状接着部を有する、請求項2に記載の生地の接合構造。
【請求項7】
前記第3接着部が、前記第1接着部及び第2接着部のそれぞれから間隔を開けて設けられている、請求項2に記載の生地の接合構造。
【請求項8】
前記第1接着部の端部の縁及び第2接着部の端部の縁が、弧状に形成されている、請求項1に記載の生地の接合構造。
【請求項9】
前記重なり領域における前記接着部の、単位面積当たりに占める面積割合が、20%以上90%以下である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の生地の接合構造。
【請求項10】
前記接着剤が、ウレタン系接着剤を含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の生地の接合構造。
【請求項11】
前記複数の第1接着部が、等間隔を開けて設けられ、且つ、前記複数の第2接着部が、等間隔を開けて設けられている、請求項1に記載の生地の接合構造。
【請求項12】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の生地の接合構造を有する衣服。
【請求項13】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の生地の接合構造を有する履物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦方向及び横方向に伸縮性を有する第1生地と第2生地が接着剤にて接合されている生地の接合構造などに関する。
【背景技術】
【0002】
衣服などは、生地を接合することによって形成される。例えば、2つの生地を重ね合わせ、その重なり領域を接合し、最終的に、生地を衣服の製品形状に形作る。生地の接合は、伝統的には縫製によるが、接着剤を用いて重なり領域を接合することも行われている。また、伸縮性を有する生地を接着剤にて接合する場合、前記重なり領域における生地の伸縮性を保ちつつ前記領域を接合することが好ましい。
例えば、特許文献1には、接着剤により伸縮性材料同士が連続的に接着される接着部と、前記接着部により平面視において開口形成され且つ前記伸縮性材料同士が前記接着剤により接着されない非接着部と、からなり、接着部が、前記材料の伸縮方向である縦方向に連続的にジグザグ状に設けられている伸縮性材料の貼り合わせ構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
特許文献1の構造は、接着部がジグザグ状に設けられているので、貼り合わせられた重なり領域の縁部が捲れるおそれがあり、さらに、その縁部に埃や糸屑などが溜まるおそれがある。このような構造を有する衣服などを使用しているうちに、前記重なり領域の縁部に捲れ癖が付き、衣服などの使用感を低下させる。また、特許文献1の構造では、縦方向における生地の伸縮性が接着部によって阻害され難いが、横方向における生地の伸縮性が阻害されるおそれがある。
なお、衣服などに加工された生地は使用時に引張られるので、前記重なり領域は、衣服などの使用に耐え得る程度の強度で接合されることが望まれる。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、生地の縦方向及び横方向における伸縮性を保ちつつ生地の重なり領域が接着剤によって接合され、前記重なり領域の縁部が捲れ難い生地の接合構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、縦方向及び横方向に伸縮性を有する第1生地と第2生地を重ね合わせた帯状の重なり領域が接着剤からなる接着部によって接合された生地の接合構造を提供する。前記接合構造は、1つの実施形態では、前記重なり領域の一方の縁部である第1縁部が、前記重なり領域の延在方向に間隔を開けて設けられた複数の第1接着部によって接合され、前記重なり領域のもう一方の縁部である第2縁部が、前記重なり領域の延在方向に間隔を開けて設けられた複数の第2接着部によって接合されている。
前記縦方向は、第1生地及び第2生地のそれぞれの面内において、任意の1つの方向をいい、前記横方向は、面内において前記縦方向と直交する方向をいう。前記延在方向は、帯状の重なり領域が延びる方向をいう。
【0007】
前記重なり領域の第1縁部及び第2縁部が、複数の第1接着部及び第2接着部によってそれぞれ接合されているので、重なり領域の第1縁部及び第2縁部が捲れ難くなり、また、第1縁部及び第2縁部に埃などが溜まることを防止できる。さらに、第1接着部及び第2接着部は、延在方向に沿って間隔を開けて設けられ、その間隔が開けられた部分は非接合となるので、伸縮性を確保しつつ重なり領域が接合された接合構造を提供できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の生地の接合構造によれば、重なり領域の縁部が捲れ難く、また、生地の重なり領域における縦方向及び横方向における伸縮性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)は、第1生地と第2生地の重なり領域の一例を示す参考斜視図、(b)は、同重なり領域の他例を示す参考斜視図。
【
図2】(a)は、第1生地と第2生地の重なり領域の一例を示す参考平面図、(b)は、IIa-IIa線で切断した断面図。
【
図3】第1実施形態の第1例の接着部の平面視形状を示す平面図。
【
図4】(a)は、第1実施形態の第2例の接着部の平面視形状を示す平面図、(b)は、同第3例の接着部の平面視形状を示す平面図。
【
図5】接着剤を第1生地に塗布し、第1生地と第2生地の重なり領域を接合する手順を示す参考図。
【
図6】第2実施形態の第1例の接着部の平面視形状を示す平面図。
【
図7】(a)は、第2実施形態の第2例の接着部の平面視形状を示す平面図、(b)は、同第3例の接着部の平面視形状を示す平面図。
【
図8】第2実施形態の第1例の接着部の平面視形状を示す平面図。
【
図9】(a)乃至(c)は、第3実施形態の第2例乃至第4例の接着部の平面視形状を示す平面図。
【
図10】(a)乃至(c)は、第3実施形態の第5例乃至第7例の接着部の平面視形状を示す平面図。
【
図11】(a)及び(b)は、第3実施形態の第8例及び第9例の接着部の平面視形状を示す平面図。
【
図12】第4実施形態の第1例の接着部の平面視形状を示す平面図。
【
図13】(a)乃至(c)は、第4実施形態の第2例乃至第4例の接着部の平面視形状を示す平面図。
【
図14】(a)及び(b)は、第4実施形態の第5例及び第6例の接着部の平面視形状を示す平面図。
【
図15】第5実施形態の第1例の接着部の平面視形状を示す平面図。
【
図16】(a)乃至(c)は、第5実施形態の第2例乃至第4例の接着部の平面視形状を示す平面図。
【
図17】第6実施形態の接着部の平面視形状を示す平面図。
【
図21】実施例及び比較例で作製した接着部の形状パターンを示す平面図。
【
図22】実施例及び比較例で作製した生地片から試験用サンプルを切り出すことを説明した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、適宜図面を参照しつつ説明する。
本明細書において、「平面視」は、生地を平坦状にした状態を基準にして、生地面に対して鉛直方向から見ることをいい、「平面視形状」は、その方向から見たときの形状をいう。また、縦方向や横方向などの各種の方向については、前記のように生地を平坦状にした状態を基準にして、生地の面内における方向をいう。本明細書において、接着部の形状を説明する際、その形状は、(特に記載がなくても)平面視形状を意味する。
各図における、厚み及び大きさなどの寸法は、実際のものとは異なっている場合があることに留意されたい。
【0011】
[第1実施形態]
本発明の接合構造は、複数の接着部によって接合された、伸縮性を有する第1生地と第2生地の重なり領域を有する。
前記第1生地と第2生地の重なり領域の一方の縁部は、前記重なり領域の延在方向に沿って互いに間隔を開けて設けられた複数の線状の接着部によって接合され、前記重なり領域のもう一方の縁部は、前記重なり領域の延在方向に沿って互いに間隔を開けて設けられた複数の線状の接着部によって接合されている。重なり領域の一方の縁部を「第1縁部」といい、重なり領域のもう一方の縁部を「第2縁部」といい、第1縁部に設けられた線状の接着部を「第1接着部」といい、第2縁部に設けられた線状の接着部を「第2接着部」という。なお、第1縁部と第2縁部は、重なり領域の幅方向で向かい合った重なり領域の縁部である。
第1実施形態の接合構造は、重なり領域の第1縁部及び第2縁部が第1接着部によって接合されていると共に、前記重なり領域の第1縁部及び第2縁部の間の領域である中間部が、第3接着部によって接合されている。そして、前記第1接着部と第2接着部と第3接着部が平面視で一筆書きした一体的な線状を成している。
【0012】
<生地>
第1生地及び第2生地は、いずれも縦方向及び横方向に伸び縮み可能な生地である。前記第1生地及び第2生地は、前記縦方向に対して傾斜する方向にも伸び縮み可能であってもよい。また、第1生地及び第2生地は、それぞれ独立して、縦方向と横方向が同程度の伸び易さであってもよく、或いは、縦方向及び横方向の何れか一方が他方よりも伸び易いものでもよい。前記伸縮性を有する生地の種類は、特に限定されず、例えば、伸縮性の編物、伸縮性の織物、伸縮性のシートなどが挙げられる。伸縮性の編物又は織物としては、例えば、ポリウレタン糸などの弾性糸を含むツーウェイの編物又は織物などを例示できる。前記伸縮性のシートとしては、伸縮性を有する合成皮革、合成ゴム(エラストマーを含む)などからなるシートなどを例示できる。なお、第1生地及び第2生地は、縦方向及び横方向に伸縮性を有する同種の生地でもよく、或いは、縦方向及び横方向に伸縮性を有する異種の生地でもよい。
【0013】
<重なり領域>
図1は、第1生地51と第2生地52の重なり領域6を表した参考斜視図である。
重なり領域6は、
図1に示すように、第1生地51と第2生地52を重ね合わせた2重部位である。第1生地51と第2生地52の重ね合わせ方式は特に限定されない。
図1(a)に示す重なり領域6は、第1生地51の側部の第1面(例えば表面)に第2生地52の側部の第2面(例えば裏面)を重ね合わせて構成されている(いわゆる封筒貼り)。
図1(b)に示す重なり領域6は、第1生地51の側部の第2面と第2生地52の側部の第2面を重ね合わせて構成されている(いわゆる合掌貼り)。
図1(a)の重なり領域6は、第1生地51の縁51aと第2生地52の縁52aの間の領域であり、
図1(b)の重なり領域6は、2つの生地51,52の縁51a,52aと第1生地51の折り返し縁51bの間の領域である。
重なり領域6は、
図2に示すように、平面視で任意の方向に延びる帯状である。前記帯状は、同図に示すように、平面視で生地の縦方向に延びる直線状でもよく、或いは、特に図示しないが平面視で生地の縦方向に延びる曲線状であってもよい。以下、帯状の重なり領域6が延びる方向を「延在方向」という。図示例では、前記延在方向は生地の縦方向であるが、生地の横方向でもよく、或いは、生地の縦方向に対して傾斜する方向でもよい。
【0014】
重なり領域6の全幅Wは、適宜設定されるが、例えば、3mm以上15mm以下であり、好ましくは5mm以上12mm以下である。また、重なり領域6の第1縁部61の幅W1は、前記重なり領域6の全幅Wの0.3倍(全幅W×0.3)であり、重なり領域6の第2縁部62の幅W2は、前記重なり領域6の全幅Wの0.3倍(全幅W×0.3)である。なお、重なり領域6の中間部63(第1縁部61と第2縁部62の間の領域)の幅は、前記全幅Wから幅W1とW2を減算することにより求められる。前記重なり領域6の全幅Wや第1縁部61などの幅は、幅方向における長さをいう。幅方向は、重なり領域6の延在方向に対して直交する方向をいう。
重なり領域6を構成する第1生地51と第2生地52の間には、接着剤からなる接着部が介在されており、前記接着部によって重なり領域6が接合されている。
【0015】
<接着剤>
接着剤は、第1生地51と第2生地52の間に介在して両生地を接着できるものであれば特に限定されない。接着剤としては、固化方式による分類に従えば、ホットメルト型接着剤、湿式硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、溶媒揮発型接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤などが挙げられる。溶媒(有機溶剤や水など)を含まず、取り扱い易いことから、ホットメルト型接着剤を使用することが好ましい。また、前記接着剤は、生地に使用されることから、弾性を有することが好ましい。弾性を有する接着剤としては、ポリウレタン系接着剤、変成シリコーン系接着剤などを例示でき、弾性及び耐衝撃性に優れることからポリウレタン系接着剤などが好ましい。
弾性を有するホットメルト型接着剤として、例えば、湿式硬化性のホットメルト型接着剤を使用できる。湿式硬化性のホットメルト型接着剤は、接着力に優れ、一般的なホットメルト型接着剤に比してリワーク性にも優れている。前記湿式硬化性のホットメルト型接着剤は、湿気と反応して硬化するイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含み、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含んでいてもよい。前記ウレタンプレポリマーは、例えば、ポリオール(分子内に2個以上のヒドロキシ基を有する化合物)に由来する構造単位とポリイソシアネート(分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物)に由来する構造単位とを含む重合鎖と、イソシアネート基と、を有する。
【0016】
<第1実施形態の接着部>
図3は、第1例の接着部の平面視形状の一例を示す平面図である。
図3は、
図1(a)で示した重なり領域6を表しているが、接着部を判りやすく表すために第2生地を透視した状態の平面図であり(ただし重なり領域6の両側を省略)、また、第1生地51の縁51aを一点鎖線で示している(接着部の平面視形状を示す他の平面図についても同様)。
図3を参照して、重なり領域6は、接着部を介して接合されている。
接着部は、第1接着部1と、第2接着部2と、を有し、必要に応じて、さらに第3接着部3を有する。具体的には、接着部は、重なり領域6の第1縁部61に沿って設けられた複数の線状の第1接着部1と、重なり領域6の第2縁部62に沿って設けられた複数の線状の第2接着部2と、重なり領域6の中間部63に設けられた複数の第3接着部3と、を有する。
平面視で線状の第1接着部1は、重なり領域6の延在方向に沿って互いに間隔を開けて複数設けられており、平面視で線状の第2接着部2は、重なり領域6の延在方向に沿って互いに間隔を開けて複数設けられている。また、第3接着部3は、重なり領域6の延在方向に沿って互いに間隔を開けて複数設けられている。
【0017】
本実施形態では、第1接着部1と第3接着部3と第2接着部2が、平面視で一筆書きの線状を成している。詳しくは、第3接着部3の一方の端部が第1接着部1の一方の端部に繋がり、第3接着部3の他方の端部が第2接着部2の一方の端部に繋がっている。以下、この一筆書きで連なった第1乃至第3接着部1,2,3を纏めて「一連接着部4」という。前記一連接着部4は、重なり領域6の延在方向に沿って互いに間隔を開けて複数設けられている。以下、重なり領域6の延在方向及び幅方向を、単に「延在方向」及び「幅方向」という場合ある。
【0018】
第1接着部1及び第2接着部2は、上述のように線状であれば、特に限定されず、図示例のように平面視で直線状のほか、波線状や曲線状などであってもよい。なお、第3接着部3が第1接着部1及び第2接着部2に連続している場合の第1接着部1及び第2接着部2と第3接着部3との概念上の境界を、
図3の1つの一連接着部4の中に破線で示している。
直線状の第1接着部1及び第2接着部2は、その線軸が重なり領域6の延在方向(延在軸)と平行に延びている。直線状、曲線状、波線状などの線状の第1接着部1の線軸A1は、
図3に示すように、第1接着部1の両端部を結んだ仮想直線に相当する。第2接着部2も同様に、直線状、曲線状、波線状などの線状の第2接着部2の線軸A2は、第2接着部2の両端部を結んだ仮想直線に相当する。なお、上記<重なり領域>の欄で説明した曲線状に延びる重なり領域6に関して、その延在方向は、前記第1接着部1及び第2接着部2に対応する箇所における重なり領域6の曲線の接線方向をいう。また、前記第1接着部1の端部の縁1a及び第2接着部2の端部の縁2aは、それぞれ平面視で弧状に形成されている。
【0019】
線状の第1接着部1の長さL1及び第2接着部2の長さL2は、特に限定されず、適宜設定されるが、それぞれ独立して、例えば、1mm以上20mm以下であり、好ましくは、3mm以上10mm以下である。複数の第1接着部1は、その長さが同じでもよく、或いは、異なっていてもよい。複数の第2接着部2は、その長さが同じでもよく、或いは、異なっていてもよい。第1接着部1の長さ及び第2接着部2の長さL1,L2は、それぞれ、その線軸A1,A2に沿った方向の長さをいう。図示例では、複数の第1接着部1の各々の長さL1は同じであり、複数の第2接着部2の各々の長さL2は同じである。
【0020】
また、延在方向において隣り合う第1接着部1の間隔S1及び延在方向において隣り合う第2接着部2の間隔S2は、特に限定されず、適宜設定される。延在方向に隣り合う第1接着部1の間隔S1及び第2接着部2の間隔S2は、第1接着部1の数及び第2接着部2の数に対応して複数存在するが、その複数の間隔は、それぞれ独立して、例えば、0.5mm以上10mm以下であり、好ましくは、1mm以上2mm以下である。以下、隣り合う第1接着部1の間隔S1を「第1間隔S1」といい、隣り合う第2接着部2の間隔S2を「第2間隔S2」という場合がある。複数の第1間隔S1は、同じでもよく、或いは、異なっていてもよい。複数の第2間隔S2は、同じでもよく、或いは、異なっていてもよい。図示例では、複数の第1間隔S1は異なっており、複数の第2間隔S2も異なっている。具体的には、複数の第1間隔S1について、延在方向に沿って数えたときの奇数箇所における第1間隔S1同士が同じで且つ偶数箇所における第1間隔S1同士が同じであるが、奇数箇所の第1間隔S1と偶数箇所の第1間隔S1とは異なっている。なお、複数の第2間隔S2も同様である。間隔が開けられた部分は、接着剤(接着部)を有さず、第1生地51と第2生地52が接しているが接合されていない部分である。以下、重なり領域6において第1生地51と第2生地52が接合されていない部分を「非接合部分」という場合がある。非接合部分は、接着剤(接着部)による規制がなく、第1生地51及び第2生地52そのものが有する伸縮性を有する。
【0021】
線状の第1接着部1の太さは、第1縁部61の幅W1以下であり、線状の第2接着部2の太さは、第2縁部62の幅W2以下である。具体的な数値では、第1接着部1及び第2接着部2の太さは、それぞれ独立して、例えば、0.1mm以上3mm以下であり、好ましくは、0.5mm以上1.5mm以下である。なお、第1接着部1の長さL1は、第1接着部1の太さよりも大きくなるように、例えば、「1.3×(第1接着部1の太さ)≦L1≦20×(第1接着部1の太さ)」の範囲で設定され、より好ましくは、「2×(第1接着部1の太さ)≦L1≦10×(第1接着部1の太さ)」の範囲で設定される。第2接着部2の長さL2についても同様である。
また、縁部が捲れ難い重なり領域6を構成する観点から、第1接着部1及び第2接着部2は、重なり領域6の縁の近くに設けられていることが好ましい。例えば、第1接着部1と重なり領域6の一方の縁との隙間S3は、0mm以上2mm以下であり、好ましくは、0mm以上1mm以下である。例えば、第2接着部2と重なり領域6のもう一方の縁との隙間S4は、0mm以上2mm以下であり、好ましくは、0mm以上1mm以下である。
前記第1接着部1と重なり領域6の一方の縁との隙間が延在方向において均等でない場合には、前記隙間S3の数値は、最小値を意味する。同様に、前記第2接着部2と重なり領域6のもう一方の縁との隙間が延在方向において均等でない場合には、前記隙間S4の数値は、最小値を意味する。
【0022】
第3接着部3は、重なり領域6の中間部63を接合する。複数の第3接着部3は、延在方向に沿って間隔を開けて設けられている。延在方向において間隔を開けて設けられている複数の第3接着部3の間隔は、特に限定されず、適宜設定される。なお、本実施形態において、第3接着部3の間隔とは、延在方向において隣り合う第3接着部3同士の間隔のうち、最小となる部分の間隔をいう。隣り合う第3接着部3の間隔は、第3接着部3の数に対応して複数存在する。また、第2実施形態以降において後述するように、第3接着部3が第1接着部1に対して間隔を開けて設けられる場合、第3接着部3が第2接着部2に対して間隔を開けて設けられる場合、幅方向で隣り合う第3接着部3が間隔を開けて設けられる場合などにおいても、それぞれ間隔は複数存在する。このような第3接着部3が関係する間隔を「第3間隔」という場合がある。前記複数の第3間隔は、それぞれ独立して、例えば、0.1mm以上2mm以下であり、好ましくは、0.5mm以上1mm以下である。複数の第3間隔は、同じでもよく、或いは、異なっていてもよい。図示例では、複数の第3間隔は同じである。つまり、複数の第3接着部3は、延在方向に等間隔を開けて設けられている。
【0023】
なお、第3接着部3は、重なり領域6の中間部63に設けられているが、その少しの部分が第1縁部61及び/又は第2縁部62にまで及んでいてもよい。本実施形態のように、第3接着部3が第1接着部1及び第2接着部2に連続している場合には、
図3に示すように、第1接着部1に繋がる第3接着部3の一方の端部が第1縁部61にまで及んでおり、第2接着部2に繋がる第3接着部3の他方の端部が第2縁部62にまで及んでいる。
【0024】
本実施形態の第3接着部3は、平面視で線状を成した線状接着部を有する。線状の第3接着部3は、図示例のように平面視で直線状のほか、波線状や曲線状などであってもよい。線状の第3接着部3の太さは、特に限定されず、例えば、0.1mm以上3mm以下であり、好ましくは、0.5mm以上1.5mm以下である。図示例の線状の第3接着部3は、平面視で3つの線状接着部の組み合わせから構成されている。具体的には、第3接着部3は、延在方向に沿って線状に延びる線状接着部31と、延在方向と直交する方向である幅方向に沿って線状に延びる2つの線状接着部32と、からなる。以下、延在方向に沿って平行に延びる線状接着部31を「第3-1線状接着部31」といい、幅方向に沿って平行に延びる線状接着部32を「第3-2線状接着部32」という。第3-1線状接着部31は、重なり領域6の幅方向中央部において、前記重なり領域6の延在方向に沿って互いに間隔を開けて設けられている。1つの第3-2線状接着部32は、第1接着部1の一方の端部と第3-1線状接着部31の一方の端部とに繋がり、両端部の間に介在されている。もう1つの第3-2線状接着部32は、第2接着部2の一方の端部と第3-1線状接着部31の他方の端部とに繋がり、両端部の間に介在されている。第3-1線状接着部31と第3-2線状接着部32との概念上の境界を、
図3の1つの一連接着部4の中に破線で示している。
【0025】
第3-1線状接着部31は、その線軸が延在方向と平行であり、第3-2線状接着部32は、その線軸が幅方向と平行である。第3接着部3の様々な線状接着部の線軸は、第1接着部1の軸線などと同様に、線状接着部の両端部を結んだ仮想直線に相当する。
【0026】
延在方向において隣り合う一連接着部4に関して、1つの一連接着部4の2つの端部間の距離(D)が、当該一連接着部4の1つの端部と当該一連接着部4と隣り合う一連接着部4の1つの端部との間の距離(d)よりも大きいことが好ましい。つまり、D>dの関係を満たしていることが好ましい。具体的には、0<dn/Dn≦0.5の関係を満たしていることが好ましく、0.1≦d/D≦0.3の関係を満たしていることがより好ましい。
ただし、前記距離D及び距離dは、次の式で表される。
式:D=((SX
n-EX
n)
2+(SY
n-EY
n)
2)
1/2
式:d=((SX
n+1-EX
n)
2+(SY
n+1-EY
n)
2)
1/2
各式の前提条件として、平面視で重なり領域6の延在方向をX軸とみなし、幅方向をY軸とみなし、1つの一連接着部4をn番目とし、それに隣り合う一連接着部4をn+1番目とする。
図3を参照して、前記SX
n,SY
nは、n番目の一連接着部4の1つの端部のX座標,Y座標を表し、前記EX
n,EY
nは、前記n番目の一連接着部4のもう1つの端部のX座標,Y座標を表し、前記SX
n+1,SY
n+1は、n+1番目の一連接着部4の1つの端部のX座標,Y座標を表す。
【0027】
別の観点では、一連接着部4の1つ又は2つ以上が1つのリピート基本パターンを構成し、このリピート基本パターンが延在方向に間隔を開けて並んで設けられている。リピート基本パターンを構成する一連接着部4の数の上限は、特に限定されないが、例えば、4つ以下である。
図3において、1つのリピート基本パターンを構成する一連接着部4に、便宜上、ドットを付している。図示例では、1つのリピート基本パターンは、平面視で数字の2を形作った一連接着部4と、平面視で数字の5を形作った一連接着部4と、からなる。このリピート基本パターンが、間隔を開けて延在方向に繰り返して設けられている。特に、前記リピート基本パターンは、等間隔を開けて延在方向に繰り返して設けられている。
また、前記1つのリピート基本パターンを構成する2つの一連接着部4は、延在方向において、鏡像の関係となっている。
【0028】
前記重なり領域6における接着部の、単位面積当たりに占める面積割合は、重なり領域6を十分なはく離強度で接合する観点から、20%以上90%以下であり、好ましくは、40%以上60%以下である。接着部の面積割合が20%以上であることにより、重なり領域6を十分なはく離強度で接合できる。接着部の面積割合が90%以下であることにより、重なり領域6中に適切な非接合部分を生じさせることができる。例えば、重なり領域6のはく離強度は、1kgf/cm以上であり、好ましくは、3kgf/cm以上である。
接着部の面積割合は、(接着部の面積/重なり領域6の面積)×100で求められる。前記接着部の面積は、重なり領域6に第1接着部1と第2接着部2と第3接着部3が設けられる場合にはそれらの面積の合計であり、重なり領域6に第1接着部1と第2接着部2のみが設けられる場合にはそれらの面積の合計である。
なお、前記接着部の面積割合は、重なり領域6の任意の箇所から延在方向の長さを30mmとしたサンプル片を切り出し、そのサンプル片から求めるものとする。
【0029】
<第1実施形態委の変形例>
図4(a)は、第1実施形態の第2例の接着部の平面視形状の一例を示す平面図であり、
図4(b)は、第3例の接着部の平面視形状の一例を示す平面図である。
図4(a)を参照して、第1実施形態の第2例にかかる接着部について説明する。この例の接着部においては、一連接着部4が、重なり領域6の延在方向に間隔を開けて設けられている。第2例の第3接着部3は、平面視で延在方向に対して傾斜した方向に線状に延びる傾斜線状接着部33からなる。以下、延在方向に対して傾斜した方向に線状に延びる傾斜線状接着部33を「第3傾斜線状接着部33」という。第3傾斜線状接着部33は、図示例のように平面視で直線状のほか、波線状や曲線状などであってもよい。第2例の一連接着部4は、第3傾斜線状接着部33の両端部が第1接着部1の一方の端部に繋がり且つ第2接着部2の一方の端部に繋がっている。
図4(a)において、第3傾斜線状接着部33と第1接着部1との概念上の境界及び第3傾斜線状接着部33と第2接着部2との概念上の境界を、破線で示している。
なお、
図4(a)において、隣り合う第1接着部1の間隔(第1間隔S1)は、いずれも同じであり、隣り合う第2接着部2の間隔(第2間隔S2)は、いずれも同じである。つまり、
図4(a)では、複数の第1接着部1が延在方向に等間隔を開けて設けられ、且つ、複数の第2接着部2が延在方向に等間隔を開けて設けられている場合を図示している。
【0030】
図4(b)を参照して、第1実施形態の第3例にかかる接着部について説明する。この例の接着部においては、一連接着部4は、第3傾斜線状接着部33と、2つの第3-2線状接着部32と、からなる。1つの第3-2線状接着部32が、第1接着部1の一方の端部に繋がり、もう1つの第3-2線状接着部32が、第2接着部2の一方の端部に繋がり、第3傾斜線状接着部33の両端部が第1接着部1のもう一方の端部に繋がり且つ第2接着部2のもう一方の端部に繋がっている。
【0031】
図4(a)及び(b)に示す複数の一連接着部4も、上述のD>dの関係を満たしていることが好ましい。
また、
図4(a)及び(b)に示す一連接着部4も、リピート基本パターンを構成し(例えば、2つの一連接着部4がリピート基本パターンを構成する)、そのリピート基本パターンが間隔を開けて延在方向に繰り返して設けられている。特に、前記リピート基本パターンは、等間隔を開けて延在方向に繰り返して設けられている。さらに、
図4(a)及び(b)に示す1つのリピート基本パターンを構成する2つの一連接着部4は、延在方向において、鏡像の関係となっている。なお、
図4(a)及び(b)において、リピート基本パターンを構成する接着部に、ドットを付している。
【0032】
<重なり領域の接合方法>
例えば、ホットメルト型接着剤を使用する場合には、
図5に示すように、ホットメルトアプリケーターのノズル71から接着剤を吐出して、第1生地51の側部に接着剤を塗布する。接着剤の吐出及び吐出停止を行ないながらノズル71を生地面に沿って移動させることにより、接着剤を所定の平面視形状に塗布でき、所望形状の接着部を形成できる。なお、ノズル71の移動に代えて、第1生地51を移動させてもよく、或いは、ノズル71と第1生地51の双方を相対的に移動させてもよい。第1生地51に接着剤を塗布した後、第2生地52の側部を重ね合わせ、重なり領域6を押圧ローラ72に通して加圧することにより、重なり領域6を接合できる。
【0033】
<第1実施形態の接着部の効果>
上述のように、重なり領域6の第1縁部61及び第2縁部62が、延在方向に沿って間隔を開けて設けられた第1接着部1及び第2接着部2によってそれぞれ接合されているので、重なり領域6の両縁部が捲れ難くなる。さらに、複数の第1接着部1及び第2接着部2が延在方向に等間隔で設けられている場合には、第1縁部61及び第2縁部62の全体に亘って略均等に捲れ難い効果を期待できる。
【0034】
また、接着部が存在する部分は一般に生地の伸縮性が阻害されるところ、第1接着部1及び第2接着部2が、それぞれ間隔を開けて延在方向に沿って設けられているので、重なり領域6の延在方向(例えば生地の縦方向)における伸縮性を確保できる。
詳しくは、間隔の部分は非接合部分であるので、その部分の伸縮が接着部によって阻害され難く、重なり領域6を延在方向に伸長させることができる。また、重なり領域6の中間部63に設けられた第3接着部3も、間隔を開けて延在方向に設けられているので、重なり領域6の中間部63を延在方向に伸長させることができる。つまり、重なり領域6の延在方向において隣り合う接着部(第1接着部1、第2接着部2及び第3接着部3)の間に非接合部分が存在するので、重なり領域6を延在方向に引張ると、良好に伸長するようになる。なお、延在方向に重なり領域6を伸長させると、重なり領域6の幅方向において縮まる力が作用するが、後述するように、第3接着部3が形状変形し易いので、延在方向に引張った際には重なり領域6が幅方向において収縮し、重なり領域6が延在方向に良好に伸長するようになる。
【0035】
他方、中間部63に設けられた第3接着部3は、第1接着部1及び第2接着部2のそれぞれと連続しているが、当該第3接着部3は、全体として幅方向及び延在方向と平行な直線状でなく、
図3のように屈曲している又は
図4のように傾斜している。このため、重なり領域6の幅方向(例えば生地の横方向)に生地が引張られたときに、第3接着部3がその引張りに応じて形状変形し易く、重なり領域6を幅方向に伸長させることができる。なお、幅方向に重なり領域6を伸長させると、重なり領域6の延在方向において縮まる力が作用するが、上述のように延在方向において隣り合う接着部の間に非接合部分が存在するので、幅方向に引張った際には重なり領域6が延在方向において収縮し、重なり領域6が幅方向に良好に伸長するようになる。
また、第1接着部1の端部の縁及び第2接着部2の端部の縁が弧状に形成されているので、重なり領域6が引張られた際に、第1接着部1の端部又は/及び第2接着部2の端部から剥がれることを効果的に防止できる。
【0036】
さらに、第3接着部3が設けられていることにより、重なり領域6の第1縁部61及び第2縁部62だけでなく重なり領域6の中間部63も接着剤で接合され、重なり領域6のはく離強度が高まる。このため、前記重なり領域6を有する生地を用いた衣服などの使用時に、前記重なり領域6が不用意に剥がれることを防止できる。
また、第3-1線状接着部31が重なり領域6の幅方向中央部において間隔を開けて設けられている場合、重なり領域6の中間部63の幅方向中央部が、第3-1線状接着部31にて接合される。重なり領域6の第1縁部61と中央部と第2縁部62の3つのラインが、それぞれ延在方向に間隔を開けた線状の接着部(第1接着部1、第3-2線状接着部32、第2接着部2)にて接合されるので、重なり領域6の延在方向におけるはく離強度が高まるようになる。
【0037】
さらに、第1乃至第3接着部1,2,3が一筆書きの一連接着部4とされているので、例えば、上述のように接着剤をノズルによって塗布する場合、接着剤の吐出と吐出停止の動作回数を少なくしつつ第1乃至第3接着部1,2,3を形成できる。このため、ノズルの制御が簡易になる上、塗布効率を高くすることができる。
【0038】
また、一連接着部4がD>dの関係を満たしていることにより、接着剤をノズルによって塗布する場合において、ノズルの移動距離を比較的短くできる。ノズルの移動距離が短くなると、比較的短時間で効率的に接着剤を第1生地51に塗布でき、衣服などの製造効率を高めることができる。
【0039】
さらに、接着部がリピート基本パターンの繰り返しパターンから構成されている場合、例えば、接着剤をデザインコート(パターンコートともいう)で塗布することも可能である。つまり、接着部をデザインコートで形成することも可能である。デザインコートは、例えば、凸版ロールなどの印刷方式で接着剤を生地に転写する方式である。特に、ホットメルト型接着剤を用いる場合、(インキなどに比して)塗布方式が制限されるが、前記デザインコートを用いることにより、接着剤の塗布(接着部の形成)をより短時間で行なうことができる。
【0040】
次に、本発明の第2実施形態、第3実施形態などを説明するが、その説明に於いては、主として先に記載した実施形態と異なる構成及び効果について説明し、同様の構成などについては、用語又は符号をそのまま援用し、その構成の説明を省略する場合がある。また、各図中、同一又は相当部分に同一符号を付している。
【0041】
[第2実施形態]
第2実施形態の接合構造は、第3接着部3が第1接着部1又は第2接着部2の何れか一方のみに連続している形態である。
第2実施形態において、生地などに関しては、上記第1実施形態の<生地>、<重なり領域>、<接着剤>、<重なり領域の接合方法>と同様である。
【0042】
<第2実施形態の接着部>
図6は、第2実施形態の第1例の接着部の平面視形状の一例を示す平面図であり、
図7(a)は、第2例の接着部の平面視形状の一例を示す平面図であり、
図7(b)は、第3例の接着部の平面視形状の一例を示す平面図である。
図6及び
図7を参照して、本実施形態の接着部は、第1接着部1と第3接着部3が一筆書きの線状を成した線状接着部41と、第2接着部2と第3接着部3が一筆書きの線状を成した線状接着部42と、を有する。以下、第1接着部1と第3接着部3が一筆書きの線状を成した線状接着部41を「第1部分一連接着部41」といい、第2接着部2と第3接着部3が一筆書きの線状を成した線状接着部42を「第2部分一連接着部42」という。第1部分一連接着部41は、延在方向に間隔を開けて複数設けられており、第2部分一連接着部42は、延在方向に間隔を開けて複数設けられている。また、第1部分一連接着部41と第2部分一連接着部42は、幅方向において間隔を開けて設けられている。
【0043】
図6の第1部分一連接着部41は、第1接着部1と、その両端部に連続して設けられた2つの第3-2線状接着部32と、からなる。
図6の第2部分一連接着部42は、第2接着部2と、その両端部に連続して設けられた2つの第3-2線状接着部32と、からなる。第1部分一連接着部41と第2部分一連接着部42は、延在方向及び幅方向において間隔を開けて、延在方向に沿って並んで設けられている。また、
図6の第1部分一連接着部41と第2部分一連接着部42は、互いの第3-2線状接着部32が延在方向において隣り合って配置されている。
【0044】
図7(a)の第1部分一連接着部41は、第1接着部1と、その両端部に連続して設けられた2つの第3傾斜線状接着部33と、からなる。
図7(a)の第2部分一連接着部42は、第2接着部2と、その両端部に連続して設けられた2つの第3傾斜線状接着部33と、からなる。
図7(a)の接着部に関して、その余の点は
図6と同様である。
【0045】
図7(b)の第1部分一連接着部41は、第1接着部1と、その両端部に連続して設けられた2つの第3-2線状接着部32と、からなる。
図7(b)の第2部分一連接着部42は、第2接着部2と、その両端部に連続して設けられた2つの第3-2線状接着部32と、からなる。第1部分一連接着部41と第2部分一連接着部42は、延在方向及び幅方向において間隔を開けて、延在方向に沿って並んで設けられている。また、
図7の第1部分一連接着部41と第2部分一連接着部42は、互いの第3-2線状接着部32が幅方向において隣り合って配置されている。
なお、
図6及び
図7において、第1接着部1及び第2接着部2と第3接着部3との概念上の境界を、1つの第1部分一連接着部41の中に破線で示している。
【0046】
図6及び
図7に示す第1部分一連接着部41及び第2部分一連接着部42も、リピート基本パターンを構成しており、そのリピート基本パターンが間隔を開けて延在方向に繰り返して設けられている。特に、前記リピート基本パターンは、等間隔を開けて延在方向に繰り返して設けられている。なお、
図6及び
図7において、リピート基本パターンを構成する接着部に、便宜上、ドットを付している。
【0047】
<第2実施形態の接着部の効果>
本実施形態の接合構造においても、第1縁部61及び第2縁部62に第1接着部1及び第2接着部2が設けられているので、重なり領域6の両縁部が捲れ難く、また、重なり領域6の伸縮性も確保できる。さらに、第3接着部3が設けられているので、重なり領域6のはく離強度が高まる。さらに、第1接着部1と第3接着部3、及び、第2接着部2と第3接着部3が一筆書きの線状とされているので、ノズルによる接着剤の吐出と吐出停止の動作回数を少なくしつつ第1乃至第3接着部1,2,3を形成できる。また、接着部がリピート基本パターンの繰り返しパターンから構成されているので、例えば、接着剤をデザインコートで塗布することも可能となる。
【0048】
[第3実施形態]
第3実施形態の接合構造は、環状を成した第3接着部3を有する形態である。
第3実施形態において、生地などに関しては、上記第1実施形態の<生地>、<重なり領域>、<接着剤>、<重なり領域の接合方法>と同様である。
【0049】
<第3実施形態の接着部>
図8は、第3実施形態の第1例の接着部の平面視形状の一例を示す平面図である。
図8を参照して、本実施形態の接着部は、複数の第1接着部1と、複数の第2接着部2と、複数の第3接着部3と、を有する。本実施形態の第3接着部3は、線状を成した線状接着部と、環状を成した環状接着部と、を有する。以下、平面視で環状を成した第3接着部を「第3環状接着部35」という。図示例では、前記線状を成した線状接着部は、幅方向に沿って線状に延びている(第3-2線状接着部32に相当)。
【0050】
図示例の第1接着部1及び第2接着部2は、平面視で波線状であり、それぞれの線軸が重なり領域6の延在方向と平行である。第3-2線状接着部32は、平面視で波線状であり、その線軸が幅方向と平行である。第3接着部3は、第3-2線状接着部32と、第3環状接着部35と、を有する。第3環状接着部35は、平面視で、閉塞環状(閉じられた領域を画成する環状)である。図示例では、第3環状接着部35は、平面視で円環状である。
第3-2線状接着部32と第3環状接着部35は、延在方向において間隔を開けて交互に設けられている。また、第3-2線状接着部32と第3環状接着部35は、いずれも第1接着部1及び第2接着部2と連続しておらず、第1接着部1及び第2接着部2のそれぞれから間隔を開けて設けられている。
図8に示す第1接着部1、第2接着部2及び第3接着部3も、リピート基本パターンを構成しており、そのリピート基本パターンが間隔を開けて延在方向に繰り返して設けられている。特に、前記リピート基本パターンは、等間隔を開けて延在方向に繰り返して設けられている。なお、
図8において、リピート基本パターンを構成する接着部に、便宜上、ドットを付している。
【0051】
図9乃至
図11は、本実施形態の接着部の様々な変形例を示している。
図9乃至
図11の各接着部について、
図8の接着部と異なる点を抽出して説明する。
図9(a)の第1接着部1及び第2接着部2は直線状であり、それぞれの線軸が重なり領域6の延在方向に対して若干傾斜している。また、
図9(a)では、
図8の第3-2線状接着部32が設けられた箇所に、第3傾斜線状接着部33が設けられている。この第3傾斜線状接着部33は、平面視で直線状である。
【0052】
図9(b)の第1接着部1及び第2接着部2は直線状であり、それぞれの線軸が重なり領域6の延在方向と平行である。また、
図9(b)では、第3-2線状接着部32が平面視直線状である。第3環状接着部35は、平面視で矩形環状であり、より具体的には、正方形環状である。このような正方形環状の第3環状接着部35は、概念上、第3-1線状接着部と第3-2線状接着部を含んでおり、第3-1線状接着部と第3-2線状接着部が連続して組み合わされた形状を成していると言える。
【0053】
図9(c)の第3環状接着部35は、平面視で矩形環状である。
【0054】
図10(a)の第1接着部1及び第2接着部2は直線状であり、それぞれの線軸が重なり領域6の延在方向に対して若干傾斜している。また、
図10(a)では、
図8の第3-2線状接着部32が設けられた箇所に、第3傾斜線状接着部33が設けられている。この第3傾斜線状接着部33は、平面視で直線状である。第3環状接着部35が、平面視で矩形環状である。
【0055】
図10(b)の第1接着部1及び第2接着部2は直線状であり、それぞれの線軸が重なり領域6の延在方向と平行である。また、
図10(b)では、第3-2線状接着部32が平面視直線状であり、第3環状接着部35が、平面視で三角環状である。第3環状接着部35は、より具体的には、正三角形環状である。このような正三角形環状の第3環状接着部35は、概念上、第3-1線状接着部及び第3傾斜線状接着部を含んでおり、第3-1線状接着部と2つの第3傾斜線状接着部が連続して組み合わされた形状を成していると言える。
【0056】
図10(c)の第3環状接着部35は、平面視で三角環状である。
【0057】
図11(a)の第1接着部1及び第2接着部2は直線状であり、それぞれの線軸が重なり領域6の延在方向に対して若干傾斜している。また、
図11(a)では、
図8の第3-2線状接着部32が設けられた箇所に、第3傾斜線状接着部33が設けられている。この第3傾斜線状接着部33は、平面視で直線状である。第3環状接着部35が、平面視で三角環状である。
【0058】
図11(b)の第1接着部1及び第2接着部2は直線状であり、それぞれの線軸が重なり領域6の延在方向と平行である。第3環状接着部35は、平面視で、部分的に開放された環状を成している。
図11(b)では、第3環状接着部35は、例えば、複数箇所(例えば4箇所)で開放された円環状である。このように第3環状接着部35は、閉塞環状に限られず、少しの部分が開放された環状であってもよい。この開放された部分は、第1生地51と第2生地52が接合されておらず、生地の伸縮性を阻害しない非接合部分となっている。図示例では、第3接着部3が、第3環状接着部35のみからなる。
【0059】
図9乃至
図11に示す第1接着部1、第2接着部2及び第3接着部3も、リピート基本パターンを構成しており、そのリピート基本パターンが間隔を開けて延在方向に繰り返して設けられている。なお、
図9乃至
図11において、リピート基本パターンを構成する接着部に、便宜上、ドットを付している。
【0060】
<第3実施形態の接着部の効果>
本実施形態の接合構造においても、第1縁部61及び第2縁部62に第1接着部1及び第2接着部2が設けられているので、重なり領域6の両縁部が捲れ難く、また、重なり領域6の伸縮性も確保できる。さらに、第3接着部3が設けられているので、重なり領域6のはく離強度が高まる。特に、本実施形態の第3接着部3は第3環状接着部35を有する。環状に形成された第3環状接着部35は、その面積の割には生地間を接合する効果が高く、重なり領域6のはく離強度をより高めることができる。また、第3環状接着部35は、その環状で囲われた領域が非接合部分となっているので、前記はく離強度を高める一方で伸縮性を確保するための非接合部分も内在させている。このため、第3環状接着部35を有する本実施形態は、重なり領域6のはく離強度を高めつつ、延在方向及び幅方向の伸縮性も良好になる。
また、第3接着部3が、第1接着部1及び第2接着部2のそれぞれから間隔を開けて設けられているので、第3接着部3と第1接着部1及び第2接着部2との間に非接合部分が存在する。このため、重なり領域6を幅方向に引張ると、良好に伸長するようになる。
【0061】
[第4実施形態]
第4実施形態の接合構造は、第1接着部1及び第2接着部2のいずれにも連続していない線状の第3接着部3を有する形態である。
第4実施形態において、生地などに関しては、上記第1実施形態の<生地>、<重なり領域>、<接着剤>、<重なり領域の接合方法>と同様である。
【0062】
<第4実施形態の接着部>
図12は、第4実施形態の第1例の接着部の平面視形状の一例を示す平面図である。
図12を参照して、本実施形態の接着部は、複数の第1接着部1と、複数の第2接着部2と、複数の第3接着部3と、を有する。本実施形態の第3接着部3は、線状を成した異なる種類の線状接着部を有する。
【0063】
図示例の第1接着部1及び第2接着部2は、平面視で直線状であり、それぞれの線軸が重なり領域6の延在方向と平行である。第3接着部3は、第3-2線状接着部32と、2つの線状接着部が交差した形状の線状接着部36と、を有する。以下、前記2つの線状接着部が交差した形状の線状接着部36を「第3交差線状接着部36」という。第3交差線状接着部36は、例えば、平面視で十字状である。
第3-2線状接着部32と第3交差線状接着部36は、延在方向において間隔を開けて交互に設けられている。また、第3-2線状接着部32と第3交差線状接着部36は、いずれも第1接着部1及び第2接着部2と連続しておらず、第1接着部1及び第2接着部2のそれぞれから間隔を開けて設けられている。
図12に示す第1接着部1、第2接着部2及び第3接着部3も、リピート基本パターンを構成しており、そのリピート基本パターンが間隔を開けて延在方向に繰り返して設けられている。特に、前記リピート基本パターンは、等間隔を開けて延在方向に繰り返して設けられている。なお、
図12において、リピート基本パターンを構成する接着部に、便宜上、ドットを付している。
【0064】
図13及び
図14は、本実施形態の接着部の様々な変形例を示している。
図13及び
図14の各接着部について、
図12の接着部と異なる点を抽出して説明する。
図13(a)の接着部は、第1接着部1及び第2接着部2が波線状であり、第3-2線状接着部32も波線状である。
【0065】
図13(b)の第1接着部1及び第2接着部2は直線状であるが、それぞれの線軸が重なり領域6の延在方向に対して若干傾斜している。また、
図13(b)では、
図12の第3-2線状接着部32が設けられた箇所に、第3傾斜線状接着部33が設けられている。
【0066】
図13(c)の第1接着部1及び第2接着部2は直線状であるが、それぞれの線軸が重なり領域6の延在方向に対して若干傾斜している。また、
図13(c)では、
図12の第3-2線状接着部32が設けられた箇所に、第3傾斜線状接着部33が設けられている。さらに、第3交差線状接着部36が、平面視で×状である。
【0067】
図14(a)の第1接着部1及び第2接着部2は波線状であり、第3-2線状接着部32も波線状である。さらに、第3交差線状接着部36が、平面視で×状である。
【0068】
図14(b)の接着部は、重なり領域6の中間部63に、傾斜向きの異なる2つの第3傾斜線状接着部33が延在方向に間隔を開けて交互に並んで設けられている。
【0069】
図12乃至
図14に示す第1接着部1、第2接着部2及び第3接着部3も、リピート基本パターンを構成しており、そのリピート基本パターンが間隔を開けて延在方向に繰り返して設けられている。なお、
図12乃至
図14において、リピート基本パターンを構成する接着部に、便宜上、ドットを付している。
【0070】
<第4実施形態の接着部の効果>
本実施形態の接合構造においても、第1縁部61及び第2縁部62に第1接着部1及び第2接着部2が設けられているので、重なり領域6の両縁部が捲れ難く、また、重なり領域6の伸縮性も確保できる。さらに、第3接着部3が設けられているので、重なり領域6のはく離強度が高まる。また、第3接着部3が、第1接着部1及び第2接着部2のそれぞれから間隔を開けて設けられているので、重なり領域6の伸縮性を良好に確保できる。さらに、接着部がリピート基本パターンの繰り返しパターンから構成されているので、例えば、接着剤をデザインコートで塗布することも可能となる。
【0071】
[第5実施形態]
第5実施形態の接合構造は、線状でない第3接着部3を有する形態である。
第5実施形態において、生地などに関しては、上記第1実施形態の<生地>、<重なり領域>、<接着剤>、<重なり領域の接合方法>と同様である。
【0072】
<第5実施形態の接着部>
図15は、第5実施形態の第1例の接着部の平面視形状の一例を示す平面図である。
図15を参照して、本実施形態の接着部は、複数の第1接着部1と、複数の第2接着部2と、複数の第3接着部3と、を有する。本実施形態の第3接着部3は、塗り潰し状のものを含んでいる。以下、塗り潰し状の第3接着部を「第3潰し状接着部38」という。
【0073】
図示例の第1接着部1及び第2接着部2は、平面視で直線状であり、それぞれの線軸が重なり領域6の延在方向と平行である。第3接着部3は、第3-2線状接着部32と、平面視で接着剤にて塗り潰した如くの第3潰し状接着部38と、を有する。第3潰し状接着部38は、例えば、平面視で矩形状である。
第3-2線状接着部32は、幅方向において間隔を開けて2つ設けられており、第3潰し状接着部38は、幅方向及び延在方向に間隔を開けて複数設けられている。つまり、幅方向において隣り合う第3-2線状接着部32は、連続しておらず間隔を開けて設けられ、幅方向において隣り合う第3潰し状接着部38は、連続しておらず間隔を開けて設けられている。また、第3-2線状接着部32と第3潰し状接着部38は、いずれも第1接着部1及び第2接着部2と連続しておらず、第1接着部1及び第2接着部2のそれぞれから間隔を開けて設けられている。
【0074】
図16は、本実施形態の接着部の様々な変形例を示している。
図16の各接着部について、
図15の接着部と異なる点を抽出して説明する。
図16(a)の第3潰し状接着部38は、平面視で円状である。
図16(b)の第3潰し状接着部38は、平面視で略円状である。すなわち、第3潰し状接着部38は、平面視で円縁から内側に向かって切り込みが形成されている部分切り欠き円状である。
図16(c)の接着部は、幅方向及び延在方向において隣り合う第3潰し状接着部38が、部分的に繋がっている。
【0075】
図15及び
図16に示す第1接着部1、第2接着部2及び第3接着部3も、リピート基本パターンを構成しており、そのリピート基本パターンが間隔を開けて延在方向に繰り返して設けられている。なお、
図15及び
図16において、リピート基本パターンを構成する接着部に、便宜上、ドットを付している。
【0076】
<第5実施形態の接着部の効果>
本実施形態の接合構造においても、第1縁部61及び第2縁部62に第1接着部1及び第2接着部2が設けられているので、重なり領域6の両縁部が捲れ難く、また、重なり領域6の伸縮性も確保できる。特に、幅方向において隣り合う第3-2線状接着部32及び第3潰し状接着部38が間隔を開けて設けられ、それらの間に非接合部分を有するので、重なり領域6の伸縮性も良好になる。さらに、第3接着部3が設けられているので、重なり領域6のはく離強度が高まる。さらに、接着部がリピート基本パターンの繰り返しパターンから構成されているので、例えば、接着剤をデザインコートで塗布することも可能となる。
【0077】
[第6実施形態]
上記各実施形態では、重なり領域6の中間部63に第3接着部3が設けられているが、第3接着部3を有さず、重なり領域6に第1接着部1及び第2接着部2のみが設けられていてもよい。
例えば、
図17に示すように、接着部が、重なり領域6の第1縁部61に設けられ且つ延在方向に沿って互いに間隔を開けて設けられた複数の線状の第1接着部1と、重なり領域6の第2縁部62に設けられ且つ延在方向に沿って互いに間隔を開けて設けられた複数の線状の第2接着部2と、のみから構成されていてもよい。
なお、
図17では、線状の第1接着部1及び第2接着部2として平面視で波線状のものを例示しているが、上述のように、第1接着部1及び/又は第2接着部2は、直線状などであってもよく、また、第1接着部1及び/又は第2接着部2は線軸が延在方向に対して傾斜するように設けられていてもよい。さらに、上述のように、複数の第1接着部1は、その長さが同じでもよく、或いは、異なっていてもよい。延在方向において隣り合う第1接着部1の間隔は、同じでもよく、或いは、異なっていてもよい。延在方向において隣り合う第2接着部2の間隔は、同じでもよく、或いは、異なっていてもよい。
【0078】
その他、上記様々な実施形態から選ばれる2つ以上の構成(実施形態)を適宜組み合わせてもよく、或いは、上記様々な実施形態から選ばれる1つ又は2つ以上の構成を、それ以外の実施形態に置換してもよい。
【0079】
[第7実施形態]
本発明の生地の接合構造は、生地を用いる様々な加工品に適用できる。代表的な用途は、衣服や履物が挙げられる。ただし、衣服や履物に限定されず、本発明の接合構造を、例えば、スポーツバックなどのカバン類の生地接合部などに適用することもできる。
本発明の生地の接合構造を有する衣服において、当該接合構造を適用する箇所は特に限定されない。幾つかの例を示すと、
図18に示すように、タイツ81のクロッチ部811、ウエスト部812、裾部813、側部814などに本発明の接合構造を適用できる。また、同図に示すように、シャツ82の襟ぐり部821、袖部822(アームホール部)、側部823などに本発明の接合構造を適用できる。
また、本発明の生地の接合構造を有する履物において、当該接合構造を適用する箇所は特に限定されない。幾つかの例を示すと、
図19及び
図20に示すシューズの、矢印で示した箇所の生地同士の接合に本発明の接合構造を適用できる。
【0080】
[その他]
上述した各実施形態の説明には、以下の態様が含まれる。
第1形態の生地の接合構造は、縦方向及び横方向に伸縮性を有する第1生地と第2生地を重ね合わせた帯状の重なり領域が接着剤からなる接着部を介して接合された生地の接合構造において、前記重なり領域の一方の縁部である第1縁部が、前記重なり領域の延在方向に沿って互いに間隔を開けて設けられた複数の線状の第1接着部によって接合され、前記重なり領域のもう一方の縁部である第2縁部が、前記重なり領域の延在方向に沿って互いに間隔を開けて設けられた複数の線状の第2接着部によって接合されている。
第1形態の接合構造によれば、重なり領域の第1縁部及び第2縁部が捲れ難く、さらに、第1接着部及び第2接着部が間隔を開けて延在方向に沿って設けられているので、重なり領域の延在方向及び幅方向の伸縮性を確保できる。
【0081】
第2形態の生地の接合構造は、上記第1形態の接合構造において、前記重なり領域の第1縁部と第2縁部の間である中間部が、前記重なり領域の延在方向に沿って間隔を開けて設けられた複数の第3接着部によって接合されている。
第2形態の接合構造によれば、重なり領域の中間部が第3接着部によって接合されているので、重なり領域のはく離強度を高めることができ、さらに、第3接着部が間隔を開けて設けられているので、重なり領域の中間部における伸縮性を確保できる。
【0082】
第3形態の生地の接合構造は、上記第2形態の接合構造において、前記第3接着部が、前記延在方向に対して傾斜した方向に延びる第3傾斜線状接着部を有する。
第3形態の接合構造によれば、重なり領域を延在方向及び幅方向に引張った際に、延在方向に対して傾斜した第3傾斜線状接着部が、その引張りに応じて形状変形し易く、重なり領域の伸縮性を確保できる。
【0083】
第4形態の生地の接合構造は、上記第2又は第3形態の接合構造において、前記第1接着部と第3接着部と第2接着部が、一筆書きの線状を成した一連接着部とされ、前記一連接着部が、前記重なり領域の延在方向に沿って互いに間隔を開けて複数設けられている。
第4形態の接合構造によれば、接着剤をノズルから塗布する方式によって第1乃至第3接着部(一連接着部)を形成し易く、また、一連接着部が延在方向に間隔を開けて設けられているので、重なり領域の延在方向における伸縮性を確保できる。
【0084】
第5形態の生地の接合構造は、上記第2乃至第4形態のいずれかの形態の接合構造において、前記第3接着部が、前記延在方向に沿って線状に延びる複数の線状接着部を有し、前記複数の線状接着部が、前記重なり領域の幅方向中央部において、前記重なり領域の延在方向に沿って互いに間隔を開けて設けられている。
第5形態の接合構造によれば、重なり領域の中間部の幅方向中央部が、線状接着部によって接合されるので、第1縁部及び第2縁部に設けられた第1接着部及び第2接着部との相乗で、重なり領域の延在方向におけるはく離強度を高めることができる。
【0085】
第6形態の生地の接合構造は、上記第2乃至第5形態のいずれかの形態の接合構造において、前記第3接着部が、環状を成した第3環状接着部を有する。
第6形態の接合構造によれば、第3環状接着部を有するので、重なり領域のはく離強度をより高めることができ、また、第3環状接着部の環状で囲われた領域は非接合部分であるため、重なり領域の伸縮性を良好に確保できる。
【0086】
第7形態の生地の接合構造は、上記第2乃至第6形態のいずれかの形態の接合構造において、前記第3接着部が、前記第1接着部及び第2接着部のそれぞれから間隔を開けて設けられている。
第7形態の接合構造は、第3接着部と第1接着部及び第2接着部との間に間隔を有するので、重なり領域の伸縮性を良好に確保できる。
【0087】
第8形態の生地の接合構造は、上記第1乃至第7形態のいずれかの形態の接合構造において、前記第1接着部の端部の縁及び第2接着部の端部の縁が、弧状に形成されている。
第8形態の接合構造によれば、第1接着部の端部及び第2接着部の端部から剥がれることを効果的に防止できる。
【0088】
第9形態の生地の接合構造は、上記第1乃至第8形態の接合構造において、前記複数の第1接着部が、等間隔を開けて設けられ、且つ、前記複数の第2接着部が、等間隔を開けて設けられている。
第9形態の接合構造によれば、第1縁部及び第2縁部の全体に亘って略均等に捲れ難い効果を期待できる。
【0089】
第10形態の生地の接合構造は、上記第1乃至第9形態のいずれかの形態の接合構造において、前記重なり領域における前記接着部の、単位面積当たりに占める面積割合が、20%以上90%以下である。
第10形態の接合構造によれば、重なり領域における接着部の面積割合が20%以上90%以下であるため、衣服などの使用に耐え得るはく離強度で重なり領域を接合できる。
【実施例0090】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を更に詳述する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0091】
[使用材料]
第1生地及び第2生地:ポリウレタンとポリエステルの混合糸によって編まれた市販のニット。
接着剤:湿式硬化性のポリウレタンホットメルト接着剤。
【0092】
[実施例1]
ホットメルトアプリケーターを用いて第1生地の側部に、接着剤を塗布した後、この側部に第2生地の側部を重ね合わせて重なり領域を形成し、この重なり領域を押圧ローラに通し、第1生地側及び第2生地側から重なり領域を押圧した。なお、接着剤は、アプリケーターに附随するノズルを移動させることにより、所定のパターンで塗布した。その後、室温、大気圧下で、24時間養生し、重なり領域が接合された実施例1の生地片を作製した。
図21(a)は、実施例において、第1生地に接着剤を塗布した際の平面図であり、第1接着部1及び第2接着部2を等間隔で繰り返して形成した。各寸法は、下記の通りである。
重なり領域6の全幅W:9.3mm。
第1接着部1及び第2接着部2の長さL1,L2:それぞれ4.3mm。
第1間隔S1及び第2間隔S2:それぞれ2.0mm
重なり領域6の縁と第1接着部1の隙間S3及び重なり領域6の縁と第2接着部2の隙間S4:それぞれ0.75mm。
第1接着部1及び第2接着部2の太さ:それぞれ2mm。
【0093】
[実施例2及び3]
実施例2については
図21(b)に示すように第1接着部1及び第2接着部2を波線状に、実施例3については同図(c)に示すように第1接着部1及び第2接着部2を傾斜直線状に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、重なり領域で接合された生地片を作製した。
【0094】
[実施例4]
実施例4については
図21(d)に示すような形状の一連接着部4の繰り返しパターンに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、重なり領域で接合された生地片を作製した。
ただし、
図21(d)の各寸法は下記の通りである。
重なり領域6の全幅W:9.3mm。
第1接着部1及び第2接着部2の長さL1,L2:それぞれ10mm。
第1間隔S1-1及び第2間隔S2-1:それぞれ5mm。
第1間隔S1-2及び第2間隔S2-2:それぞれ1.25mm。
隙間S3-1及び隙間S4-1:それぞれ1mm。
一連接着部4の太さ:1mm。
【0095】
[比較例]
図21(e)に示すように、重なり領域6の両縁部に連続した直線状の接着部を形成した(接着剤を線状にべた塗りした)こと以外は、実施例1と同様にして、重なり領域で接合された生地片を作製した。
ただし、比較例の接着剤の線の太さは、1mmとした。
【0096】
[試験例1]
図22に示すように、実施例及び比較例の生地片から、縦×横=6.5cm×4cmの試験用サンプル(1)と、縦×横=4cm×6.5cmの試験用サンプル(2)を切り出した。
このサンプル(1)の長手方向の両端部を万能型試験機(株式会社島津製作所製の商品名「AG-IS」)のチャックにて保持し(チャック間距離:40mm)、クロスヘッド速度100mm/min、伸長ひずみ量100%で引っ張り、縦方向の荷重(kgf)を測定した。
サンプル(2)の長手方向の両端部をチャックにて保持し、同様にして、横方向の荷重(kgf)を測定した。
【0097】
[試験例2]
図22に示すように、実施例及び比較例の生地片から、縦×横=6.5cm×1cmの試験用サンプル(3)を切り出した。
このサンプル(3)の長手方向一方端部を構成する第1生地の端部と第2生地の端部とを強制的にはく離し、はく離した第1生地の端部と第2生地の端部を万能型試験機(株式会社島津製作所製の商品名「AG-IS」)のチャックにて保持し(チャック間距離:10mm)、クロスヘッド速度50mm/minで引っ張り、はく離強度(kgf/cm)を測定した。
【0098】
実施例及び比較例の、10%伸長時、20%伸長時、30%伸長時、40%伸長時の生地の伸縮性を示す指標を表1に示す。指標は、下記式から求めた値であり、伸縮性について接着剤の塗布量と概ね線形関係にあるはくり強度で規格化している。
指標=(縦方向の荷重+横方向の荷重)/はく離強度。
表1に示すように、実施例の生地片の重なり領域は、比較例の生地片の重なり領域よりも伸縮性に優れていることが判る。
【0099】